(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、実施例について説明する。
【0015】
[プラズマ処理装置]
図1を参照して、プラズマ処理装置1の構成について説明する。
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、処理部10と解析部20と入力部30と出力部31と通信インタフェース部(通信IF部)32と処理結果取得部33を有し、これらはバス34を介して相互に接続されている。
【0016】
処理部10は、プラズマ処理部11と分光器12と制御部13と装置状態管理部14と記憶部
15とインタフェース部(IF部)110とを有する。プラズマ処理部11はプラズマを発生させてウェハ(試料)を加工し、分光器12はプラズマ処理が行われる間にプラズマの発光データや、ウェハ表面又はプラズマ処理部11の内壁面での反射光である分光データを取得する。分光データはIF部
210を介して解析部20の有する記憶部22に格納される。
【0017】
制御部13は、プラズマ処理部11での処理を制御する。制御部13は、後述の予測モデルを用いてプラズマ処理の処理結果指標を予測し、プラズマ処理条件を調整する予測及び制御処理(APC:Advanced Process Control)を行う。記憶部15の予測モデル記憶領域16には、予測モデルを特定する情報が格納される。
【0018】
解析部20は、予測モデルの切換えに用いる装置状態管理項目とその判定基準を特定する処理を行う。解析部20は、データを解析する演算部21と、記憶部22、インタフェース部(IF部)210を有する。
【0019】
記憶部22は、過去のプラズマ処理の結果を示す処理履歴記憶領域23と、解析処理の結果を示す解析結果記憶領域
24を有する。
【0020】
演算部21は、処理履歴記憶領域23を用いて装置状態管理項目とその判定基準を決定する解析処理を行う。演算部21の行う解析処理の詳細については、後述する。
【0021】
入力部30は、ユーザ操作による情報入力を受け付ける例えばマウスやキーボード等である。出力部31は、ユーザに対して情報を出力するディスプレイやプリンタ等である。通信IF部32は、バス34や外部ネットワーク等を介して他の装置やシステム(既存の生産管理システム等とも接続可能である)と接続し情報送受信を行うためのインタフェースである。
【0022】
バス34は、各部(10、20、30、31、32、33)を連結する。各部のIF部(110、210)は、バス34を介して情報送受信を行うためのインタフェースである。処理結果取得部33は、処理結果指標を計測する検査装置等から処理結果指標を取得するインタフェースである。なお、解析部20を解析装置として独立させて、プラズマ処理部10を有するプラズマ処理装置にIF部210を介して接続される形態としても良い。
【0023】
[プラズマ処理部]
処理部10は、プラズマ処理部11と分光器12と制御部13と記憶部
15とIF部110とを備えている。プラズマ処理部11は、
図2に示すように、真空排気手段(図示せず)で内部を真空に排気されるチャンバ111と、電源(図示せず)により高周波電力が印加されて真空に排気されたチャンバ111の内部にプラズマを発生させる1対の電極112a及び112bと、チャンバ111の内部を外側から観察する窓115と、真空に排気されたチャンバ111の内部にウェハ(試料)114をプラズマ処理するためのプラズマ処理ガスを供給するガス供給器117とを備えている。なお、ガス供給部117は、複数の種類のガス(CF4、CHF3、Ar等)をそれぞれ供給することが可能となっている。
【0024】
このような構成において、制御部13からの指示によってプラズマ処理部11は、ウェハ114をチャンバ111の内部に格納してチャンバ111の内部を排気手段で真空に排気した状態で、ガス供給器117からプラズマ処理ガスを供給し、電源により電極112a及び112bに高周波電力を印加する。これにより、電極112aと112bとの間でプラズマ処理ガスをプラズマ化させる。プラズマ化したガス113をウェハ114に化学的及び物理的に反応させることでウェハ114を加工する。
【0025】
プラズマ化したガス113は、ガス供給器117から供給されたプラズマ処理ガスに含まれるエレメントやウェハ114から加工の過程で発生したエレメントを含んでおり、プラズマ化したガス113に含まれているエレメントに応じた波長の光116を発生させる。発生した光116は窓115を通して分光器12にて計測され、IF部110を介して解析部20の記憶部22の処理履歴記憶領域23に記憶される。なお、外部光源(図示せず)を用いてチャンバ111の壁面やウェハ114に光を照射し、分光器12でその反射光や透過光を計測するようにしても良い。この場合は、プラズマ処理をされたウェハ114やチャンバ111の壁面の状態に応じた分光データが得られる。
【0026】
制御部13は、プラズマ処理部11への指示に加えて、分光器12で計測された分光データを入力としてプラズマ処理条件を変更する処理を行う。
【0027】
装置状態管理部14は、プラズマ処理部11の状態として、クリーニングからのプラズマ処理の回数(例えば、ウェハ114の処理回数)や、プラズマ処理部11の待機時間を測定又は保持する。ここで、装置状態管理部14による装置状態管理とは、例えば、プラズマ処理部11の状態を管理することである。これらのデータの値は、予測及び制御処理に利用されるだけでなく、IF部110を介して解析部20の記憶部22の処理履歴記憶領域23に記憶される。
【0028】
記憶部15は、処理結果指標の予測値を算出するための予測モデルと、予測モデルを切換えに用いる装置状態管理項目と判定基準が記憶される。これらの情報は、予測モデル記憶領域16に記憶される。
【0029】
図4を参照して、予測モデル記憶領域16の例について説明する。
図4に示すように、予測モデル記憶領域16は、予測モデル切換テーブル16−1aと予測モデルテーブル16−2aで構成される。予測モデル切換テーブル16−1aには、予測モデルを切換えに用いる装置状態管理項目(装置状態管理項目欄16−1b)と判定基準(判定基準欄16−1c)と、それぞれの判定基準に合致する場合に利用される予測モデルのID(予測モデルID欄16−1d)が格納される。
【0030】
予測モデルテーブル16−2aには、予測モデルのID(予測モデルID欄16−2b)と、その予測モデルに用いる分光データの波長(波長欄16−2c)と、分光データから処理結果指標を計算するための計算式(計算式欄16−2d)が格納される。計算式は、波長16−2cにおける分光データの発光強度の平均値を入力として、処理結果指標を算出する形式である。以降では、分光データの発光強度の平均値を分光モニタ値と呼ぶ。
【0031】
ここで、
図16に、分光器12で計測された分光データの例を示す。分光データは、各波長について計測された発光強度の値を表している。
【0032】
プラズマ処理の終了後には、処理されたウェハ114はチャンバ111から取り出されて別の装置(検査装置など)に搬送され、また新たな別のウェハ114がプラズマ処理部11に格納されてプラズマ処理が行われる。処理されたウェハ114は、別の装置(検査装置など)にてプラズマ処理の結果として得られるパターンの形状の寸法などが計測される。この形状の寸法などは処理結果指標のデータとして、処理結果取得部33を介して、記憶部22の処理履歴記憶領域23に記憶される。
【0033】
[予測及び制御処理(APC)]
図3を参照して、制御部
13にて行われるAPCの処理の例について説明する。 ウェハ114のプラズマ処理が完了すると、APCを実行するように設定されている場合には、制御部13は予測モデル切換えの判定を行う(S101)。
【0034】
S101では、装置状態管理部
14から装置状態管理項目のデータを取得し、予測モデル切換テーブル16−1aの判定基準欄16−1cについて、基準を満たす行を特定し、それに対応する予測モデルID欄16−1dの情報を予測に用いる予測モデルとして特定する。
【0035】
更に、制御部13は、特定した予測モデルと分光データを用いて処理結果指標を予測する(S102)。S102では、特定された予測モデルについて、予測モデルテーブル16−2aの波長欄16−2cから予測に用いる波長の情報を取得する。そして、分光データから当該波長の分光モニタ値を算出し、計算式欄16−2dで特定される計算式に代入することで処理結果指標の予測値を算出する。なお、発光強度の最大値や最小値、中央値を分光モニタ値としてもよい。また、波長はプラズマに含まれるエレメント(ArやSi)の発光波長を利用できる。また、ウェハ114やチャンバ111の壁面から反射された光の強度を用いる場合には、ウェハ114やチャンバ111の壁面の状態によって強度が異なる波長が利用できる。また複数の波長における発光強度の比を用いても良い。
【0036】
次に、制御部13は記憶部
15に格納されている予測モデルで指定された係数を、分光モニタ値に掛けることで、処理結果指標の予測値を算出する(S102)。
【0037】
さらに、制御部13は、処理結果指標の予測値と目標値の差分に従って、プラズマ処理条件を調整する(S103)。プラズマ処理条件としては、例えばガス供給器117から供給するプラズマ処理ガスの流量(ガス流量)が調整される。また、S103においては、プラズマ処理条件の調整をするだけでなく、処理結果指標の予測値と目標値の差分が予め定めた閾値よりも大きい場合に、異常としてアラームを出力する構成としても良い。また、プラズマ処理条件を調整せずに、プラズマ処理装置の後の装置のために、処理結果指標の予測値を出力する構成としても良い。
【0038】
[予測及び制御処理(APC)の画面]
前述の予測及び制御処理を行う場合には、生産工程でプラズマ処理装置1を用いて複数のウェハ114を順次プラズマ処理する前の段階で予め装置管理者によって、予測モデルの切換えに用いる装置状態管理項目や判定基準、予測モデルの計算式を入力する必要がある。
【0039】
図8を参照して、装置管理者による入力画面D100の例について説明する。
装置管理者は、切換え項目欄D101で、予測モデルを切換えに用いる装置状態管理項目や判定基準を入力し、予測モデル欄D102にて分光モニタ値の算出に用いる波長や予測モデルの計算式を入力する。入力後、予測のみを行う場合はD103にて指示し、APCを行う場合は、D104にて指示をする。
【0040】
図9を参照して、予測やAPCの結果を示す画面の例について説明する。
予測のみを行った場合の例が、D200である。ここでは、処理結果指標の実測値と予測値を合わせて表示している。また、予測に用いた予測モデルを該当する区間について表示している。例えば、今回のようにウェハ114の処理回数の前半と後半で、装置状態の変化に起因する処理結果指標の変化のトレンドが異なる場合には、前半と後半で異なる予測モデルを用いることで予測精度を向上できる。例えば、
図9に示すように、前半で予測モデル1を用い、後半で予測モデル2を用いる。
【0041】
APCを行った場合の例が、D300である。ここでは、処理結果指標の実測値と予測に用いた予測モデルを表示している。装置状態の変化に合わせて予測モデルを切換えることで、D200に示したように予測精度を向上でき、その結果D300に示したように制御結果のばらつきも低減できる。このAPCの設定は、次の解析部20の解析処理にて過去の処理履歴から作成される。
【0042】
[解析部]
図1に示すように、解析部20は、演算部21と記憶部22とIF部
210を有する。記憶部22は、処理履歴記憶領域23と解析結果記憶領域24とを備えている。処理履歴記憶領域23には、プラズマ処理をしたウェハごとに、プラズマ処理中に分光器12で計測された分光モニタ値と、そのときの装置状態管理項目の値と、計測装置で計測された処理結果指標の値を特定する情報が格納される。
【0043】
図6は、処理履歴記憶領域23の例である処理履歴データテーブル23aを示す。本テーブルは、ウェハID欄23b、分光モニタ値欄23c、装置状態管理項目値欄23d、処理結果指標欄23e、等の各フィールドを有する。
【0044】
ウェハID欄23bには、ウェハ114を特定する情報が格納される。分光モニタ値欄23cには、分光器12で計測された分光器計測データを特定する情報が格納される。分光モニタ欄23cは、
図6に示すように波長ごとにフィールドが分割されており、それぞれのフィールドには各波長における発光強度をプラズマ処理時間で平均した値が格納される。また、各行がその分光データを計測したウェハのIDと対応付いている。
【0045】
なお、格納される分光データは、ウェハ114を加工するためのプラズマ処理の際に得られた分光データであってもよいし、ウェハ114を加工する前にプラズマ処理部11の状態を整えるために行われるプラズマ処理の際に得られた分光データであってもよい。
【0046】
また、それぞれの波長は、プラズマに含まれるエレメント(ArやSi)の発光波長が格納される。また、ウェハ114やチャンバ111の壁面から反射された光の強度を用いる場合には、ウェハ114やチャンバ111の壁面の状態によって強度が異なる波長が格納される。また、複数の波長における発光強度の比を用いても良い。
【0047】
また、格納される値は発光強度のプラズマ処理時間での平均値ではなく最大値や最小値、中央値であってもよいし、プラズマ処理の中間時点での発光強度の値など、ある指定した時間における発光強度の値であってもよい。
【0048】
装置状態管理項目値欄23dには、それぞれのウェハの処理を行ったときの装置状態管理部14の管理値や測定値を特定する情報が格納される。装置状態管理項目欄
23dは、
図6に示すように、管理項目ごとにフィールドが分割されており、それぞれ該当する管理項目の値が格納される。管理項目としては、例えばクリーニングからのプラズマ処理の回数や、前回のプラズマ処理からの待機時間などが利用される。
【0049】
処理結果指標欄23eには、プラズマ処理の結果を特定する情報が格納される。例えば、プラズマ処理後にプラズマ処理装置1に接続された計測装置などを用いて、ウェハID欄23bにて特定されるウェハ114の表面形状を計測した結果(例えば、測長SEMや光学式計測装置などの計測装置で計測したウェハ114上に形成されたパターンの寸法、パターン間の寸法など)が格納される。ウェハ114ごとに表面形状の寸法情報が、処理結果取得部33を介して処理結果指標欄23eに格納される。
【0050】
また、ウェハ114ごとにプラズマ処理条件が調整された場合には、プラズマ処理条件の調整量と処理結果指標の変更量の間の関数を用いてプラズマ処理条件の調整量による処理結果指標の変更量を算出し、計測された処理結果指標を処理結果指標の変更量で補正した値を、処理結果指標欄23eに格納してもよい。
【0051】
図7は、解析結果記憶領域24の例である解析結果データテーブル24aを示す。本テーブルは、波長欄24b、装置状態管理項目欄24c、判定基準閾値欄24d、決定係数欄24e、ロバスト性評価欄24f、分布間距離評価欄24g、係数評価欄24h、等の各フィールドを有する。
【0052】
波長欄24b、装置状態管理項目欄24c、判定基準閾値欄24dに格納される値は、予測モデルの分光モニタ値を算出する波長、予測モデルを切換える装置状態管理項目、切換えの判定基準の閾値を表している。
【0053】
また、判定基準閾値欄24d、決定係数欄24e、ロバスト性評価欄24f、分布間距離評価欄24g、係数評価欄24hに格納される値は、前期の波長欄24b、装置状態管理項目欄24c、判定基準閾値欄24dの組合せの良否を特定するための情報が格納される。本データテーブルの値は、後述の解析処理の中で格納される。
【0054】
[解析部20の解析処理]
実施例による解析処理は、プラズマを用いてウェハ114を加工するプラズマ処理において、処理結果指標を予測する予測モデルの切換えに用いる装置状態管理項目とその判定基準の閾値を特定する。
【0055】
実施例による解析処理は、分光データの波長と装置状態管理項目とその判定基準の閾値の組合せそれぞれについて、当該波長の分光モニタ値と処理結果指標の間の相関の強さやそのロバスト性などを評価する。これにより、予測モデルの切換えに用いる装置状態管理項目とその判定基準の閾値を特定する。
【0056】
以下に、実施例による解析処理の方法を、具体的に説明する。
生産工程でプラズマ処理装置1を用いて複数のウェハ114を順次プラズマ処理する前の段階として、プラズマ処理装置1を扱う装置管理者が、予測に用いる装置状態管理項目とその判定基準の閾値と予測モデルを作成するために、解析部20において解析処理を実行する。
【0057】
予測モデルとその切換えの条件は、プラズマ処理の対象であるウェハ114の表面上の膜の構成などによって変化するため、プラズマ処理の立上げ時には、適宜、本解析処理を実行することが必要になる。
【0058】
次に、
図5を参照して、解析部20において実行される解析処理の流れについて説明する。
図10に示すような表示画面D400上で装置管理者が解析対象となる波長(D401)と装置状態管理項目(D402)を入力し、解析処理の実行を指示する(D403)と解析部20は解析処理を行う。
【0059】
はじめに、入力された波長と装置状態管理項目を元に、波長と装置状態管理項目と閾値の組み合わせを作成し(S201)、それぞれの組合せについて、S203以降の処理を行う(S
202)。
【0060】
まず、解析対象となる処理履歴を装置状態管理項目とその閾値で2つに層別し(S203)、層別したそれぞれのデータについて、評価対象の波長における分光モニタ値と処理結果指標の相関の強さである決定係数を算出する(S204)。
【0061】
更に、閾値を微変更したときの相関のロバスト性の評価(S205)と、層別データ間の距離(S206)と、層別データの回帰式の評価(S207)を、全ての組み合わせについて計算し(S208)、評価の最も良い波長と装置状態管理項目と閾値の組合せを特定する(S209)。特定した組合せで予測モデルを切換える設定と、予測モデルデータを作成し、装置管理者に表示画面D500(
図11参照)で提示することで(S210)、解析処理を終了する。
【0062】
次に、各ステップの詳細を説明する。
S201では、演算部21は、
図10に示す表示画面400上で装置管理者によって入力された波長と装置管理項目を取得する。入力された装置管理項目については、その閾値の候補を設定する。例えば、装置管理項目の最大値と最小値の間をN分割(N=5、10など)するように閾値の候補を設定する。この閾値の候補と、波長と装置管理項目を用いて、波長と装置管理項目とその閾値の全組合せを作成する。作成した組合せを、解析結果データテーブル24a(
図7参照)の波長欄24b、装置状態管理項目欄24c、判定基準閾値欄24dに格納する。解析結果データテーブル24aの各行は、それぞれの組合せを表すことになる。
【0063】
S202では、演算部21は、S201で作成した全ての組合せについて、すなわち解析結果データテーブル24a(
図7参照)の各行について、それらの組合せの良否を評価する。以下では計算対象となっている波長を波長Wi,装置状態管理項目を項目Hj,装置状態管理項目の閾値を閾値HjTkと記載する。
【0064】
S203では、演算部21は、処理履歴データテーブル23a(
図6参照)のデータを、装置状態管理項目値欄23dを基準に2つに層別(分割)する。装置状態管理項目値欄23dの項目Hjの値が閾値HjTkよりも大きいデータと、閾値HjTk以下となるデータの2つに層別する。
【0065】
S204では、演算部21は、層別した処理履歴データテーブル23a(
図6参照)のデータそれぞれについて、波長Wiにおける分光モニタ値と処理結果指標を取得する。このデータは、
図12aに示すように、2つのグループに層別される。それぞれのグループについて相関の強さを示す決定係数を算出し、2つのグループの決定係数の平均を、この組合せの評価指標として解析結果データテーブル24aの決定係数欄24eに格納する。
【0066】
S205では、演算部21は、閾値HjTkの値を微変更(例えば+−5%増減)した場合の相関のロバスト性を評価する。具体的には、微変更した閾値においても、S203、S204と同じ処理を行い、決定係数の平均値を算出する。この決定係数とS204の決定係数の差分が、予め定めた閾値よりも大きい場合には、相関のロバスト性が低いとして、解析結果データテーブル24aのロバスト性評価欄24fに×を格納する。
【0067】
閾値HjTkを微変更した場合に、例えば
図12bのように、層別したデータのグループが変更されると決定係数の差分が大きくなり、ロバスト性が低いと評価される。前記の差分が小さい場合は、ロバスト性が大きいとして○を格納する。
【0068】
装置状態管理項目の種類によっては、外乱により予測モデル切換えのタイミングがばらつく可能性もある。その様な場合にも予測精度を悪化させないために、ロバスト性の高い組合せを特定する。
【0069】
S206では、演算部21は、層別した2つのデータの距離を評価する。例えば、それぞれの重心間のユークリッド距離を算出し、それが予め定めた閾値よりも大きい場合は、距離が大きいとして、分布間距離評価欄24gに○を格納し、そうでなければ×を格納する。距離が小さい場合の例を
図12cに示す。距離が大きいほど予測モデル切換えの効果が大きいために、そのような組合せを選択する。
【0070】
S207では、演算部21は、層別した2つのデータにおける回帰式の係数を評価する。ここでは2つのデータについて作成した単回帰式の傾きを評価する。その傾きの差分が予め定めた閾値よりも小さい場合は、傾きが小さいとして係数欄24fに○を格納し、そうでなければ×を格納する。傾きの差が大きい例を
図12dに示す。これは、分布モニタ値と処理結果指標の相関関係の変化が小さいものを選択するためのである。
【0071】
S208では、演算部21は、波長と装置状態管理項目、閾値の全ての組合せについてS204からS207の処理を行う。処理が完了した場合にはS209に進む。
【0072】
S209では、演算部21は、最も良い波長と装置状態管理項目、閾値の組合を特定する。具体的には、解析結果データテーブル24aのロバスト性評価24f、分布間距離評価24g、係数24hが全て満たす(○である)波長と装置状態管理項目、閾値の組合せのうち、決定係数欄24eが最も大きい組合せを特定する。
【0073】
S210では、演算部21は、S209で特定した組合せを表示画面D500の切換え項目欄に表示する。また、波長と装置状態管理項目、閾値の組合せで作成される層別されたデータについて、
図13に示すようにそれぞれ単回帰式(r1、r2)を作成し、その数式を予測モデル欄D502に表示する。
【0074】
装置管理者は、この予測モデルを用いてAPCを行う場合はD503(
図11参照)で指示をする。APCを行う場合、
図11に示す画面(D501,D502)に表示された情報は、予測モデル記憶領域16に格納され、制御に利用される。
【0075】
以上で解析処理の説明であるが、層別したデータを更に同様の手法で層別して、切換える予測モデルを3つ以上にすることも可能である。
【0076】
このようにして、装置管理者は、容易に予測モデル切換えに用いる装置状態管理項目とその判定基準となる閾値を特定することができる。
【0077】
以上説明したように、実施例のプラズマ処理装置1(解析部20)は、装置状態に応じて予測モデルを切換えることにより、処理結果指標の予測精度を向上できる。具体的には、ウェハ(試料)をプラズマ処理するプラズマ処理部11と、プラズマ処理を制御する制御部13とを備え、制御部13は、プラズマ処理部11の状態に基づいてプラズマ処理の結果を予測する複数の予測モデルの中から一つを選択し、選択された予測モデルを用いてプラズマ処理の結果を予測する。また、予測モデルを切換えるための装置状態管理項目と判定基準となる閾値も処理履歴から作成できる。これにより、APCを行うときの処理結果指標を更にばらつきを小さく制御できるようになる。
【0078】
なお、実施例としては、装置管理者がモデル切換の装置状態管理項目及び閾値の特定と予測モデルの作成を指示したが、処理履歴のデータが蓄積された段階で、装置状態管理項目で項目及び閾値の特定と予測モデルの作成を行う構成としても良い。
【0079】
また、
図14に示すように、予測モデルの切換え判定(S101)を、処理結果取得部33から取得した処理結果指標の値にしたがって行う構成としても良い。
【0080】
具体的には、
図14に示す処理部10を含むプラズマ処理装置1は、プラズマ処理を行うチャンバ111内の発光を計測する分光器12と、検査装置(図示せず)からプラズマ処理の結果の指標を取得する処理結果取得部33とを有する。制御部
13は、処理結果取得部33が取得したプラズマ処理の結果の指標に基づいて予測モデルを切換え、切換えた予測モデルに分光データを入力してプラズマ処理の結果を予測する。
【0081】
また、予測モデルの予測誤差を逐次計算し、予測誤差の大きさにしたがって予測モデルの切換え判定(S101)を行う構成としても良い。
【0082】
あるいは、
図15に示すように、
図1にて処理部10内に位置していた制御部13、装置状態管理部14、記憶部15をネットワークで接続されたシステム上に移動し、そこで予測及び制御をする構成としても良い。
【0083】
具体的には、
図15に示すプラズマ処理システムは、処理部10を含むプラズマ処理装置1と、処理部2とがネットワーク33を介して接続されている。処理部10は、ウェハ114をプラズマ処理して加工するプラズマ処理部11と、プラズマ処理部11のチャンバ111内の発光を計測する分光器12とを含む。また、処理部2は、プラズマ処理部11でのプラズマ処理を制御する制御部13と、プラズマ処理部11の状態を示す管理値を保持する装置状態管理部14とを含む。
【0084】
制御部13は、プラズマ処理の結果を予測するための複数の予測モデルを有し、装置状態管理部14に保持された管理値の閾値に基づいて予測モデルを切換え、切換えた予測モデルに分光データを入力してプラズマ処理の結果を予測する。
【0085】
上記実施例によれば、プラズマ処理装置の状態の変化に追随して処理結果指標を高精度で予測することができる。