(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記極性物質を、水、エチレングリコール、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、蟻酸の少なくともいずれか1種とすることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドペーストの乾燥方法。
【背景技術】
【0002】
単結晶や多結晶半導体基板を用いた比較的高い光電変換効率を有する太陽電池構造の一つとして、正負の電極をすべて非受光面(裏面)に設けた裏面電極型太陽電池がある。この裏面電極型太陽電池の裏面の概観を
図2に示す。太陽電池100の裏面(太陽電池用半導体基板110の裏面)には、エミッタ層112およびベース層113が交互に配列され、それぞれの層上に沿って電極124、125(エミッタ電極124、ベース電極125)が設けられている。さらに、これらの電極から得られる電流を集電するためのバスバー電極134、135(エミッタ電極用バスバー134、ベース電極用バスバー135)が設けられている。機能上、バスバー電極は集電電極と直交していることが多い。エミッタ層112の幅は数mm〜数百μm、ベース層113の幅は数百μm〜数十μmであることが多い。また、電極幅は数百〜数十μm程度が一般的であり、該電極はフィンガー電極と呼ばれることが多い。
【0003】
太陽電池100の断面構造の模式図を
図3に示す。基板110の裏面の最表層近傍にエミッタ層112およびベース層113が形成されている。エミッタ層112およびベース層113の各層厚はせいぜい1μm程度であることが一般的である。各層上にはフィンガー電極124、125(エミッタ電極124、ベース電極125)が設けられ、非電極領域の表面は窒化シリコン膜やシリコン酸化膜等の誘電体膜(裏面保護膜)142で覆われる。受光面側には反射損失を低減する目的で、反射防止膜141が設けられる。
【0004】
フィンガー抵抗による内部抵抗ロスを改善するため、バスバーを複数設けた構造が例えば特許文献1で公知となっている。この太陽電池の裏面の構造は、後に詳述する
図5(c)に、模式的に示したような構造となっている。これは、相対するフィンガーとバスバーを絶縁膜を介して接続したものである。この構造の製法としては、フィンガー形成の後、ポリイミドペーストなどの絶縁ペーストをパターン状に印刷し乾燥、硬化させ、この上に低温硬化型導電ペーストでバスバーを形成する方法があり、詳細は後述する。
【0005】
太陽電池へのポリイミドペーストの適用例はほかにも、特許文献3〜5などで公知となっているが、いずれも微細なパターンを再現性よく形成する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリイミドペーストは印刷等の塗布の後、50〜300℃程度の温度での乾燥が必要であるが、高温に曝すと流動性が発現し、印刷物が所望とする形状よりも広がって(ダレて)しまうという問題があった。ダレ量は一定ではないため、あらかじめパターンを小さくしておけば解決できるというものではない。
【0008】
流動性を抑えるべく、低温で一定時間処理してある程度溶媒を揮発させた後高温で処理する方法が、特許文献2で公知となっている。この方法により印刷物のダレ問題は解消されるが、同時に処理時間の増大、処理装置の大型化、といった生産性の悪化が生じてしまう。
【0009】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、生産性を維持しつつも形状を維持できるポリイミドペーストの乾燥方法を提供することを目的とする。また、本発明は、太陽電池の構造の一部として硬化ポリイミド膜を含む太陽電池を製造する際に、生産性を維持しつつ形状を維持してポリイミドペーストを乾燥できる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂とを含み、乾燥及び加熱することにより硬化して硬化ポリイミドとなるポリイミドペーストを乾燥する方法であって、前記ポリイミドペーストを基材の表面に塗布する工程と、前記基材に対し、少なくとも前記ポリイミドペーストを塗布した箇所の表面に、極性物質を含む溶剤を塗布する工程と、前記極性物質を含む溶剤を塗布した後に、前記ポリイミドペースト及び前記極性物質を含む溶剤を乾燥する工程と、を含むことを特徴とするポリイミドペーストの乾燥方法を提供する。
【0011】
このようなポリイミドペーストの乾燥方法であれば、乾燥時のペーストのダレを抑制することができる。そのため、乾燥時間を増加させることなく、すなわち、生産性を維持しつつ所望の形状のパターンを再現性よく得ることができる。
【0012】
このとき、前記極性物質を、水、エチレングリコール、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、蟻酸の少なくともいずれか1種とすることが好ましい。
【0013】
このような極性物質を用いることにより、乾燥時のペーストのダレをさらに効果的に抑制することができる。
【0014】
また、前記極性物質を含む溶剤を、前記極性物質を1質量%以上含むものとすることが好ましい。
【0015】
このような割合で極性物質を用いることにより、乾燥時のペーストのダレをさらに効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明は、太陽電池の構造の一部として硬化ポリイミドからなる硬化ポリイミド膜を含む太陽電池の製造方法であって、前記硬化ポリイミド膜を形成する際に、上記のいずれかのポリイミドペーストの乾燥方法によりポリイミドペーストを乾燥する工程を有することを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
【0017】
また、より具体的には、本発明は、太陽電池の構造の一部として硬化ポリイミドからなる硬化ポリイミド膜を含む太陽電池の製造方法であって、半導体基板内にp型層とn型層を接合するpn接合を形成する工程と、前記p型層に電気的に接触するp型電極を形成する工程と、前記n型層に電気的に接触するn型電極を形成する工程とを有し、さらに、前記硬化ポリイミド膜を形成する際に、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂とを含み、乾燥及び加熱することにより硬化して前記硬化ポリイミドとなるポリイミドペーストを、前記半導体基板を含む構造体の表面に塗布する工程と、前記半導体基板を含む構造体に対し、少なくとも前記ポリイミドペーストを塗布した箇所の表面に、水、エチレングリコール、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、蟻酸の少なくともいずれか1種の極性物質を含む溶剤を塗布する工程と、前記極性物質を含む溶剤を塗布した後に、前記ポリイミドペースト及び前記極性物質を含む溶剤を乾燥する工程と、前記乾燥したポリイミドペーストを加熱して硬化させ、前記硬化ポリイミド膜を形成する工程とを含むことを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
【0018】
また、このとき、前記極性物質を含む溶剤を、前記極性物質を1質量%以上含むものとすることが好ましい。
【0019】
これらの太陽電池の製造方法であれば、ポリイミドペーストの乾燥時間を増加させることなく、従って、生産性を維持しつつ所望の形状の硬化ポリイミド膜のパターンを再現性よく得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリイミドペーストの乾燥方法であれば、乾燥時間を増加させることなく、従って、生産性を維持しつつ所望の形状のパターンを再現性よく得ることができる。従来は、ポリイミドペーストをダレを生じないように乾燥するには、温度を2段階に昇温する乾燥方法が必要であったが、本発明を用いることにより、最初から高温で乾燥することができるようになり、乾燥装置の小型化、乾燥時間の短縮化が可能となって生産性も向上する。
【0021】
本発明のポリイミドペーストの乾燥方法は太陽電池の製造に適用することができ、太陽電池製造の生産性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
以下の詳細な説明では、本発明の全体の理解、および特定の具体例でどのように実施するかを提供するために、多くの特定の細部が説明される。しかしながら、本発明は、それらの特定の細部無しに実施できることが理解されるであろう。以下では、公知の方法、手順、および技術は、本発明を不明瞭にしないために、詳細には示されない。本発明は、特定の具体例について特定の図面を参照しながら説明されるが、本発明はこれに限定されるものでは無い。ここに含まれ記載された図面は模式的であり、本発明の範囲を限定しない。また図面において、図示目的で幾つかの要素の大きさは誇張され、それゆえに縮尺通りではない。
【0025】
本発明のポリイミドペーストの乾燥方法において適用することができるポリイミドペーストは、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂とを含み、乾燥及び加熱することにより硬化して硬化ポリイミドとなるポリイミドペーストである。すなわち、このポリイミドペーストは、少なくともポリイミド分子と溶媒からなり、必要に応じチクソ剤等の他の成分が混合されてもよい。また、ポリイミドペーストは、粘度を30〜150Pa・sとすることでペースト状となり、任意の形状を描くとその形状を維持することができる。従って、印刷法などを用いれば、ポリイミドを基板上に所望のパターン状に形成することができる。ポリイミドペーストは、通常、50〜300℃で溶媒を揮発させ、250〜400℃で加熱することにより本硬化させて所望の特性を得る。しかし、最初に140℃以上の雰囲気に曝すと、粘度が低下し流動性が発現して、所望のパターンが得られなくなってしまう。この問題に対し、本発明は、ポリイミドペースト塗布直後の基板の塗布面に極性物質を含む溶剤を塗布した後、乾燥させるものである。乾燥は140℃以上で行うことが好ましい。
【0026】
より具体的には、本発明では、
図1に示した工程により、ポリイミドペーストを乾燥する。すなわち、まず、ポリイミドペーストを基材の表面に塗布する(工程S1)。ここでの基材は硬化ポリイミドを形成する対象物とすることができる。
【0027】
次に、基材に対し、少なくともポリイミドペーストを塗布した箇所の表面に、極性物質を含む溶剤を塗布する(工程S2)。この溶剤は、極性物質として水、エチレングリコール、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール(n−プロパノール)、2−プロパノール、1−ブタノール、蟻酸のいずれかを含むことが好ましい。これらの溶剤は蒸気圧が比較的低く、これらを塗布したことによる乾燥時間の増加は軽微である。また、その濃度は1質量%以上であることが好ましく、100%でもかまわない。
【0028】
次に、上記の極性物質を含む溶剤を塗布した後に、ポリイミドペースト及び極性物質を含む溶剤を乾燥する(工程S3)。
【0029】
上記のような極性物質(上記極性物質はそれ自体が極性のある溶剤でもある)をペーストに付着させると、ポリイミド分子がペースト中の溶媒から析出し、固化する。ペーストとしての流動性は失われるため、高温で処理しても形状が広がってしまうことはない。極性物質を含む溶剤の塗布方法としては、基材を溶剤に浸漬させる方法でもよいし、印刷法やスピンコート法でも可能であるが、少量を噴霧するだけでも十分効果が得られる。このように、本発明における溶剤の「塗布」とは、少なくともポリイミドペーストを塗布した箇所の表面に対し、溶剤を接触させて覆い被せるような状態とする手法を含む。また、ポリイミド塗布後、溶剤塗布前に、レベリング放置や真空脱泡などを適宜行ってもかまわない。
【0030】
上記方法は太陽電池の製造に適用することができる。すなわち、太陽電池の構造の一部として硬化ポリイミドからなる硬化ポリイミド膜を含む太陽電池の製造方法において、硬化ポリイミド膜を形成する際に、本発明のポリイミドペーストの乾燥方法を適用することができる。
【0031】
具体的には、太陽電池の構造の一部として硬化ポリイミドからなる硬化ポリイミド膜を含む太陽電池の製造方法であって、半導体基板内にp型層とn型層を接合するpn接合を形成する工程と、p型層に電気的に接触するp型電極を形成する工程と、n型層に電気的に接触するn型電極を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法に、本発明のポリイミドペーストの乾燥方法を適用することができる。すなわち、硬化ポリイミド膜を形成する際に、有機溶媒と、該有機溶媒に溶解されたポリイミド樹脂とを含み、乾燥及び加熱することにより硬化して硬化ポリイミドとなるポリイミドペーストを、半導体基板を含む構造体の表面に塗布する工程と、半導体基板を含む構造体に対し、少なくともポリイミドペーストを塗布した箇所の表面に、極性物質を含む溶剤を塗布する工程と、極性物質を含む溶剤を塗布した後に、ポリイミドペースト及び極性物質を含む溶剤を乾燥する工程と、乾燥したポリイミドペーストを加熱して硬化させ、硬化ポリイミド膜を形成する工程とを含む太陽電池の製造方法である。
【0032】
以下に、さらに具体的な本発明の太陽電池の製造方法を、特許文献1の太陽電池に適用した場合を例に
図4を用いて説明する。
【0033】
例えば、太陽電池の光電変換部として機能させるための基板310として、高純度シリコンにリンあるいはヒ素、アンチモンのようなV価元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}N型シリコン基板310を用意する。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。基板310は必ずしも単結晶シリコンである必要はなく、多結晶シリコンでもかまわない。
【0034】
次に、基板310の両主表面にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う(
図4(a))。テクスチャは微小なピラミッド形の構造を有し、結晶の面方位によってエッチング速度が異なることを利用して形成される。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10%、温度60〜100℃)中に10分から30分程度浸漬することで作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させてもよい。
【0035】
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。過酸化水素を混合し清浄度を向上させてもよい。
【0036】
この基板310の第一主表面(太陽電池とした時に非受光面(裏面)となる主表面)に、エミッタ層312を形成する(
図4(b))。エミッタ層312は基板310と逆の導電型(この場合P型)で厚みが0.05〜2μm程度である。エミッタ層312はBBr
3等を用いた気相拡散によって形成できる。基板310を2枚一組として重ね合わせた状態で熱処理炉に戴置し、BBr
3と酸素の混合ガスを導入して950〜1050℃で熱処理する。キャリアガスとしては窒素やアルゴンが好適である。また、ホウ素源を含有させた塗布剤を第一主表面に塗布し、950〜1050℃で熱処理する方法でも形成が可能である。塗布剤としては例えば、ホウ素源としてホウ酸1〜4%、増粘剤としてポリビニルアルコール0.1〜4%、を含有させた水溶液が使用できる。上記いずれかの方法でエミッタ層312を形成すると、エミッタ層312表面にはホウ素を含むガラス層も同時に形成される。
【0037】
エミッタ層312を形成したら、次工程であるベース層形成のためのマスク(拡散マスク、バリア膜)351、352を両主表面上に形成する(
図4(c))。マスク351、352としてはシリコン酸化膜もしくは窒化シリコン膜等を用いることができる。CVD法を用いれば、導入するガス種を適宜選択することにより、いずれの膜も形成可能である。シリコン酸化膜の場合は、基板310を熱酸化しても形成できる。基板310を酸素雰囲気中950〜1100℃、30分〜4時間熱処理することで100〜250nm程度のシリコン熱酸化膜が形成される。この熱処理は上記エミッタ形成のための熱処理に引き続いて同一バッチ内で実施してもかまわない。また、エミッタ層312の形成後には上記のように基板310表面にガラスが形成されるが、特にエミッタ層312がP型の場合、これはマスク形成前に除去しないことが好ましい。ガラス層を除去しないことにより、工数の増加を抑制し、基板310の少数キャリアライフタイムの低下を防止することができる。ガラス層がゲッタリング効果を付与していると考えられる。
【0038】
また、エミッタ層312のためのドーパントとしてホウ素を用いた場合、熱酸化によりマスク形成すると、Si中とSiO
2中の拡散係数と偏析係数の違いから、ホウ素の表面濃度が低下して表面での再結合速度が低下するので好ましい。
【0039】
次いで、
図4(d)に示すように、ベース領域となる部分のマスク352を開口する(マスク開口部354)。具体的には、開口幅が50〜200μm、0.6〜2.0mm程度の間隔で平行線状に開口する。開口にはフォトリソ法やエッチングペーストのような化学的な方法でもよいし、レーザーやダイサーのような物理的な方法いずれを用いてもかまわない。
【0040】
マスク352を開口したら、次に、
図4(e)に示すように、基板310を50〜90℃に加熱した高濃度(10〜30%)のKOH、NaOH等の水溶液であるアルカリ水溶液中に1〜30分間基板310を浸漬し、開口部の不要なエミッタ層312を除去(エッチング)してもよい(マスク開口部における凹部361)。上記拡散マスク351、352は、本工程においてはアルカリエッチングのマスクとしても機能する。このエッチングを行うと、
図4(e)のように基板310の表面に凹部が形成される。凹部の深さは、エミッタ層312の深さにより決定され、通常、0.5〜10μm程度である。開口部のP型ドーパントを除去することで、ベース層のドーパント濃度を制御しやすくなる。また、受光面側にもマスクが形成されているため、受光面のテクスチャがエッチングされることはない。
【0041】
次に、
図4(f)に示すように、ベース層313を形成する。ベース層313形成にはオキシ塩化リンを用いた気相拡散法が使用できる。830〜950℃、オキシ塩化リンと窒素および酸素混合ガス雰囲気下で基板310を熱処理することで、ベース層313となるリン拡散層(N
+層)が形成される。気相拡散法の他、リンを含有する材料をスピン塗布したり、印刷したりしてから熱処理する方法でも形成可能である。ベース層313形成時には受光面側にマスク351が形成されている(
図4(e)参照)ため、熱処理時にリンが受光面側にオートドープしたりすることはない。また、以降の工程でマスク351、352は不要であることから、必要以上に基板310を酸化したり、余分な製膜をする必要はない。すなわち、該ベース層形成のための熱処理終了時点で、ベース層上の酸化シリコン膜厚は95nm以下であってかまわない。なお、上記エッチング工程を経た場合は、
図4(f)のように凹部361の内表面にベース層が形成される。
【0042】
拡散層形成の後、マスクおよび表面に形成されるガラスをふっ酸などで除去する。これにより、
図4(f)に図示したようにマスク351、352は除去される。
【0043】
次いで、第二主表面(上記第一主表面とは反対の主表面)の反射防止膜341の形成を行う(
図4(g))。反射防止膜341としては、窒化シリコン膜やシリコン酸化膜等、が利用できる。窒化シリコン膜の場合はプラズマCVD装置を用い約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)およびアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、さらには、基板310に多結晶シリコンを用いた場合には基板310のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。シリコン酸化膜の場合は、CVD法でも形成できるが、熱酸化法により得られる膜の方が高い特性が得られる。表面の保護効果を高めるため、あらかじめ基板310の表面に酸化アルミニウム膜を形成してから窒化シリコン膜やシリコン酸化膜等を形成してもよい。
【0044】
第一主表面にも、基板表面を保護する膜(裏面保護膜)として窒化シリコン膜やシリコン酸化膜(裏面保護膜342)が利用できる(
図4(g))。裏面保護膜342の膜厚は50〜250nmとするのが好適である。裏面保護膜342の形成は、第二主表面(受光面)側の反射防止膜341と同様に、窒化シリコン膜の場合はCVD法で、シリコン酸化膜の場合は熱酸化法やCVD法で形成が可能である。また、この例のように基板がN型の場合は、P型層のパッシベーションとして有効な酸化アルミニウム膜をあらかじめ基板310の表面に形成してから、窒化シリコン膜、シリコン酸化膜等を形成してもよい。ベース(N型)層上にも酸化アルミニウム膜は形成されるが、表面(第一主表面)の大半がエミッタ(P型)層312であることから、これによる特性の低下は軽微である。
【0045】
次いで、以下のように、ベース電極325及びエミッタ電極324を形成する(
図4(h))。ベース電極325を、例えばスクリーン印刷法で形成する。例えば、開口幅30〜100μm、0.6〜2.0mm間隔の平行線パターンを有する製版を用意しておき、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストをベース層に沿って印刷する。同様にして、エミッタ電極324としてAgペーストを印刷する。ベース電極用Agペーストとエミッタ電極用Agペーストは同じでもよいし違うものを使用してもよい。以上の電極印刷の後、熱処理により窒化シリコン膜にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンを導通させる。焼成は、通常700〜850℃の温度で1〜5分間処理することで行われる。従来、コンタクト抵抗を下げるために第一主表面上の保護膜(裏面保護膜342)を除去する必要があった。しかしながら、テクスチャが形成されている部分にエミッタ層312が形成されていれば、保護膜(裏面保護膜342)を除去することなく低コンタクト抵抗が実現できる。なお、ベース層用電極325およびエミッタ層用電極324の焼成は別々に行うことも可能である。
【0046】
バスバー形成工程を
図5を用い説明する。
図5(a)は上記
図4(h)の工程後の基板310の上面図である。エミッタ領域(エミッタ層)312上にエミッタ電極324が、ベース領域(ベース層)313上にベース電極325が、それぞれ形成されている。この基板310にまず、ポリイミドペーストをパターン状に塗布する。Nバスバー(この場合ベース電極と接続するバスバー)がエミッタ電極324と導通しないように、さらに、Pバスバー(この場合エミッタ電極と接続するバスバー)がベース電極325と導通しないように、例えば
図5(b)において絶縁膜371の位置を示したパターンでポリイミドペーストを塗布すればよい。塗布にはスクリーン印刷法やインクジェット法等を用いることができる。ポリイミドペーストを例えばスクリーン印刷法等を用いて塗布した後、極性物質を含む溶剤を塗布する。その後、乾燥工程として、例えば140℃以上で乾燥させる。溶剤は水、エチレングリコール、酢酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール(n−プロパノール)、2−プロパノール、1−ブタノール、蟻酸、のいずれか含むことが望ましく、濃度は1質量%以上であることが好ましい。これによりポリイミドの流動性は失われ、高温で処理しても形状が広がってしまうことはない。溶剤の塗布方法としては、溶剤に浸漬させる方法でもよいし、印刷法やスピンコート法でも可能であるが、少量を噴霧するだけでも十分効果が得られる。
【0047】
最後に、バスバーを形成する。
図5(c)のように、Nバスバー(ベース電極用バスバー335)がベース電極325と、Pバスバー(エミッタ電極用バスバー334)がエミッタ電極324と接続され、Nバスバー(ベース電極用バスバー335)とエミッタ電極324ならびにPバスバー(エミッタ電極用バスバー334)とベース電極325は絶縁層371を介して接続される。バスバー材料としては、低温硬化型の導電性ペーストが使用できる。具体的には、Ag、Cu、Au、Al、Zn、In、Sn、Bi、Pbから選択される1種類以上の導電性物質と、さらにエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含有する材料からなるものが使用できる。以上のような材料を例えばスクリーン印刷法やディスペンサー等を用いてパターン状に塗布した後、100〜400℃で1〜60分程度硬化させる。バスバーを増やせば、隣接するバスバー間距離を短くできるから、フィンガー電極の細線化ができ、フィンガー電極の材料費を削減することができる。バスバー数増による材料費増加分とフィンガー電極細線化による材料費減のトレードオフで適宜バスバー数は決定できるが、4〜20の間が好ましい。このようにして、
図5(c)に示した太陽電池300が製造される。
【0048】
以上、基板がN型の場合を例に説明したが、基板がP型の場合も本発明は適用できる。すなわち、エミッタ層312としてN型層を、ベース層313としてP型層を設ければよい。
【0049】
本発明は、特許文献3の両面電極型太陽電池の製造方法にも適用できる。基板裏面にAlを製膜、熱処理してBSF層を形成した後、Alを除去する。ここに開口部を設けたポリイミドペーストを印刷する。開口の大きさは40〜300μm程度が好ましいが、印刷後すぐに乾燥させると、パターンがダレて開口が小さくなってしまう場合がある。本発明は、印刷後、当該印刷面に溶剤を噴霧するなどしてペーストを固化する。これによりダレが抑制され、安定した製造が可能となる。
【0050】
硬化ポリイミド膜形成後は、Alを蒸着して裏面電極とする。
【0051】
本発明は、特許文献4の裏面電極型太陽電池の製造方法にも適用できる。基板裏面にエミッタ層、ベース層を形成後、これらの上に酸化シリコン膜を形成する。この酸化シリコン膜上にポリイミドペーストをスクリーン印刷する。製版の開口は約200μmである。この場合も、印刷後すぐに乾燥させると、パターンがダレてパターンが大きくなってしまう場合がある。本発明は、印刷後、当該印刷面に溶剤を噴霧するなどしてペーストを固化する。これによりダレが抑制され、安定した製造が可能となる。
【0052】
硬化ポリイミド膜形成後は、酸化シリコン膜を部分的に開口し、電極を形成する。
【0053】
本発明は、特許文献5の裏面電極型太陽電池の製造方法にも適用できる。基板裏面にエミッタ層、ベース層、酸化シリコン膜を形成する。ポリイミドペーストをスクリーン印刷ないしインクジェット印刷により、ベース層にのみ開口したパターンで印刷する。開口は約30〜300μm程度が好ましいが、この場合も、印刷後すぐに乾燥させると、パターンがダレて開口が小さくなってしまう場合がある。本発明は、印刷後、当該印刷面に溶剤を噴霧するなどしてペーストを固化する。これによりダレが抑制され、安定した製造が可能となる。
【0054】
硬化ポリイミド膜形成後は、コンタクト部を部分的に開口し、電極を形成する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1〜9、比較例1、2)
溶剤噴霧によるポリイミドのダレの抑制効果を確認した。
【0057】
具体的には、株式会社ピーアイ技術研究所のスクリーン印刷用ポリイミドQ−IP−0997−Nを用い、スクリーン印刷法によりシリコン基板上への印刷を行った。印刷製版は、直径100μmの非開口部(非印刷部)を複数設け、これ以外の部分は全面印刷されるようなパターンとした。印刷直後の基板印刷面に各種溶剤を噴霧し、140℃のホットプレートで乾燥させ、顕微鏡にて印刷形状を観察した。各条件10箇所を観察し、得られた開口直径の平均値を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
極性物質を含む溶剤を噴霧しなかった比較例1は、ダレが発生し開口が小さくなってしまったのに対し、実施例1〜7の溶剤を噴霧することで、開口は100μm前後を維持することができた。また、比較例2のγ−ブチロラクトンは開口が小さくなってしまっており、ダレ抑制効果は見られない。しかし、実施例8、9に示すように、γ−ブチロラクトンに水を1%混合するだけでダレは抑制される。
【0060】
(実施例10)
本発明の方法を用い太陽電池の作製を行った。
【0061】
厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmの、リンドープ{100}N型アズカットシリコン基板に対し、72℃の2%水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬し両面にテクスチャ形成を行い、引き続き75℃に加熱した塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。
【0062】
次いで、基板を2枚一組として重ね合わせた状態で熱処理炉に戴置し、BBr
3と酸素とアルゴンの混合ガスを導入して1000℃で10分熱処理を行い、引き続いて1000℃3時間酸素雰囲気中で熱酸化してマスク形成した。四探針法で測定した結果、シート抵抗は50Ωとなった。
【0063】
裏面のマスクをレーザーで開口した。レーザー源はNd:YVO
4の第二次高調波を用いた。開口パターンは、間隔1.2mm平行線状とした。これを80℃濃度24%のKOHに浸漬して開口部のエミッタ層を除去した。
【0064】
次に、オキシ塩化リン雰囲気下、870℃で受光面同士を重ね合わせた状態で40分間熱処理し、開口部にリン拡散層を形成した。
【0065】
この後、濃度25%のふっ酸に浸漬することで表面ガラスおよびマスクを除去した。
【0066】
以上の処理の後、プラズマCVD装置を用いて酸化アルミニウム膜ならびに窒化シリコン膜を両面に形成した。膜厚は表裏ともそれぞれ10nm、100nmとした。
【0067】
次に、酸化アルミニウム/窒化シリコン膜を開口することなく、スクリーン印刷機を用いて、Agペーストをベース層上およびエミッタ層上にそれぞれ印刷して乾燥した。これを780℃の空気雰囲気下で焼成した。
【0068】
この基板に、スクリーン印刷機を用い、ポリイミドペーストをパターン状に印刷した。印刷後、印刷面に純水を一様に噴霧し、200℃のベルト炉にて5分間乾燥させた。
【0069】
最後に低温硬化型のAgペーストを、既設のフィンガー電極に直交するように直線状に6本、スクリーン印刷機で印刷し、300℃のベルト炉にて30分間硬化させ、バスバーとした。
【0070】
(比較例3)
実施例10において、ポリイミドペースト印刷後、純水を噴霧することなく200℃のベルト炉にて5分間乾燥させた。以降は実施例10と同様の方法でバスバーを形成した。
【0071】
以上のようにして得られた2種類の太陽電池のサンプルの外観を顕微鏡にて観察した。比較例においてはバスバーとフィンガーが接続されるべき箇所が硬化ポリイミド膜で塞がっている箇所が散見されたのに対し、実施例10はそのような場所は確認されなかった。
【0072】
次に、山下電装社製ソーラーシミュレータを用いてAM1.5スペクトル、照射強度100mW/cm
2、25℃の条件下で、電流電圧特性を測定し光電変換効率を求めた。得られた結果の平均値を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
比較例3に比べ、実施例10は変換効率が高い。比較例3は、上記のように、場所によりバスバーとフィンガーが電気的に接続できない箇所が発生したため、フィンガー抵抗による内部抵抗ロスを余分に受け、形状因子が低下し、変換効率が低下したものである。実施例はバスバーとフィンガーが確実に接続されているため、高い光電変換効率を示している。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。