(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロール状のパルプ成形体のロール曲面もしくはロール端面の少なくとも一面における表層部分、又はベール状のパルプ成形体の少なくとも一面における表層部分を除去した状態にあるパルプを裁断又は粉砕してシート状、チップ状又は粉末状のセルロースパルプを得る工程と、
前記セルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液と接触させてアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースとアルキル化剤を反応させて反応混合物を得る工程と、
前記反応混合物を精製してセルロースエーテルを得る工程と
を少なくとも含んでなるセルロースエーテルの製造方法。
前記ロール状のパルプ成形体における表層部分が、前記ロール曲面からロール半径の2.5〜25%内側にわたる部分、又は前記ロール端面からロール幅の1.25〜12.5%内側にわたる部分である請求項1に記載のセルロースエーテルの製造方法。
前記ベール状のパルプ成形体が、底面が四角形の六面体であり、前記ベール状のパルプ成形体における表層部分が、前記ベール状のパルプ成形体の最外面から、ベール状のパルプ成形体の高さ、又は横幅、又は奥行の1.25〜12.5%内側にわたる部分である請求項1に記載のセルロースエーテルの製造方法。
【背景技術】
【0002】
メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の熱可逆ゲル化特性を有するセルロースエーテルは、比較的少ない添加量で増粘性、保水性、潤滑性といった機能を発揮するため、食料品分野、建築材料分野等の幅広い分野でバインダーとして利用されている。
【0003】
工業的に製造されているセルロースエーテルの重合度は幅広く、使用目的に応じて適切な添加量と粘度を有する品種が選択されている。セルロースエーテルの重合度が高い程、すなわちその粘度が高い程、少ない添加量で目的の粘度の溶液を得られることが知られており、使用量削減の観点から、より安価で、より重合度の高いセルロースエーテルの供給が望まれている。
【0004】
セルロースエーテルの製造方法としては、セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロースを調製し、得られたアルカリセルロースをアルキル化剤と反応させてエーテル化反応を行い、得られた反応混合物を精製する手法が一般的に知られている。
スループットを高めて生産効率を上げる観点から、セルロースエーテルの工業的な反応容器は一般に内容積が大きく、20m
3又は25m
3の内容積を有する内部撹拌型反応容器でセルロースエーテルを製造している例がある(特許文献1)。これに対して原料のセルロースパルプは、一般的に数十〜数百kgのロール状又はベール状の成形体の形態で流通するため、工業的なセルロースエーテルの製造では、通常1バッチでパルプ成形体を複数個使用することになる。
【0005】
高粘度のセルロースエーテルの製造方法として、原料パルプの重合度を上げることが一般的に知られている。また、製造工程でセルロースエーテルの粘度を上昇させる検討も盛んに行われており、長鎖アルキル基をセルロースエーテルに導入する方法(特許文献2)や、多ハロゲン化アルキルを反応させてセルロースエーテルを部分的に架橋する方法(特許文献3)が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
セルロースパルプは、木材パルプ、リンターパルプ等、通常のセルロースエーテルの材料となるものである。また、セルロースパルプの重合度の指標となる固有粘度は、目標とするセルロースエーテルの粘度に応じて適宜選択することができるが、25℃における固有粘度が好ましくは1000mL/g以上、より好ましくは1400mL/g以上である。セルロースパルプの固有粘度は、JIS P8215のA法に準拠の方法で測定することができる。
【0012】
パルプ成形体は、一般にロール状又はベール(bale)状で保管されるが、本発明者らは、ロール状又はベール状のパルプ成形体のパルプが、時間経過とともに中心付近よりも表層部分における重合度が低下することを見出した。ここで、ロール状のパルプ成形体は、曲面部と両端面部を備える円筒状の成形体である。一方、ベール状のパルプ成形体は、パルプをブロック状に成形したものであり、断面形状が三角形、四角形等の多角形であるものを含み、ロール状のパルプ成形体以外のパルプ成形体を意味するが、通常は底面が四角形の六面体(好ましくは立方体又は直方体)のパルプ成形体である。また、ベール状のパルプ成形体は、ブロック状に成形したものの集合体であってもよい。時間経過とともにパルプ成形体の表層部分の重合度が低下する理由としては、表層部分は直接外気に曝されるため、酸素や熱等の外部要因によってセルロース鎖の解重合が進行することが考えられる。一方、パルプ成形体の中心部分は、酸素や熱の影響を直接受けにくいために解重合が進行しづらく、パルプ成形体製造時の重合度を維持できると考えられる。除去するロール状のパルプ成形体のロール曲面もしくはロール端面の表層部分、又はベール状のパルプ成形体の表層部分は、外気に曝された表層部分であり、外気に曝された少なくとも一面の表層部分、好ましくは外気に曝された全ての面の表層部分を除去することにより、製造時の重合度に近似するパルプ成形体の利用が可能となる。
【0013】
除去すべき表層部分は、ロール曲面においては、ロール曲面からロール半径の長さの好ましくは2.5〜25%内側、より好ましくは7〜25%内側、さらに好ましくは13〜25%内側にわたる部分である。ロール状のパルプ成形体の除去すべき表層部の例を
図1に示す。
図1では、ロール状のパルプ成形体1のロール半径rにおいてロール曲面から径方向への距離r
1だけ内側である表層部を示す。除去部分が2.5%より少ないと有意に粘度低下を抑えることができない場合があり、25%を超えると生産性が低下する場合がある。
除去すべき表層部分は、1つのロール端面においては、ロール端面からロール幅の長さの好ましくは1.25〜12.5%内側、より好ましくは5〜12.5%内側、さらに好ましくは7〜12.5%内側にわたる部分である。
図1では、ロール曲面2を挟むロール端面3と4の距離であるロール幅wにおいて、ロール端面3からロール幅方向への距離w
3だけ内側であるか、又は端面4からロール幅方向への距離w
4だけ内側である表層部を示す。ロール端面を除去する場合には、より高粘度のセルロースエーテルを製造できる点で、除去すべき表層部分が各端面について上記範囲内になるように、両端から等しく除去することがより好ましい。
ロール状のパルプ成形体の場合、さらに高粘度のセルロースエーテルを製造できる点でロール曲面及びロール端面の両面における表層部分を除去することが特に好ましい。
【0014】
除去すべき表層部分は、ベール状のパルプ成形体が、底面が四角形の六面体(好ましくは立方体又は直方体)であるときを例にとると、ベール状のパルプ成形体の任意の最外面から、ベール状パルプの高さ、横幅、又は奥行の長さの1.25〜12.5%内側、好ましくは5〜12.5%内側、より好ましくは7.5〜12.5%内側にわたる部分である。例えば、ベール状のパルプ成形体の上底面又は下底面を除去しようとした場合はベール状のパルプ成形体の高さを、右側面又は左側面を除去しようとした場合はベールの状パルプ成形体の横幅を、前面又は背面を除去しようとした場合はベール状パルプ成形体の奥行を表層部分の基準とする。ベール状のパルプ成形体のどの面から表層部分を除去するかは特に限定されず、表層部分を除去する最外面の数や組み合わせは適宜選択することができるが、酸素や熱等の外部要因の影響を受ける面積が大きい面を除去することが効果的である。
ベール状のパルプ成形体が立方体又は直方体である場合の除去すべき表層部の例を
図2に示す。
図2では、ベール状のパルプ成形体10の高さhにおいて上底面から下底面方向への距離h
1だけ内側であるか、もしくは下底面から上底面方向への距離h
2だけ内側であるか、又は横幅Lにおいて左側面から右側面方向への距離L
1だけ内側であるか、もしくは右側面から左側面方向への距離L
2だけ内側であるか、又は奥行dにおいて前面から背面方向への距離d
1だけ内側であるか、もしくは背面から前面方向への距離d
2だけ内側である表層部を示す。
ベール状のパルプ成形体が立方体又は直方体の場合、さらに高粘度のセルロースエーテルを製造できる点で、ベール状パルプの高さ方向の上下両底面、横幅方向の左右両側面及び奥行方向の前後両背面における表層部分を除去することが特に好ましい。
【0015】
ロール状のパルプ成形体のロール直径及びロール幅は、それぞれ好ましくは50cm以上である。ベール状のパルプ成形体(好ましくは立方体又は直方体)の各辺の長さは、好ましくは50cm以上である。これは、パルプ成形体が大きい程、酸素や熱等の外部要因の影響がパルプ成形体内部にまで及びにくく、パルプ製造時の重合度を維持している部分が多く存在する為、粘度が高いセルロースエーテルを製造しやすい点から好ましいからである。
【0016】
表層部分の除去の方法としては、カッター等の裁断装置でパルプ成形体を切断して行うことができ、用いる裁断装置の種類は特に限定されない。
また、ロール状のパルプ成形体及びベール状のパルプ成形体のいずれの場合も、除去部分ごとに除去量を変えても構わないが、最外面に近い部分ほど重合度が低下しているので、より効果的にパルプ成形体製造時の重合度を維持するためには、最外面からの距離が等しい方が好ましい。具体的には、ロール状のパルプ成形体の場合には、ロール曲面に対しては同心円状に、ロール端面に対しては端面に平行に、ベール状のパルプ成形体の場合には、各任意の一面に対して平行に表層部分を除去することが好ましい。なお、除去された表層部分は、より低粘度のセルロースエーテルを製造する際の原料として使用することができる。
【0017】
ロール状のパルプ成形体のロール曲面もしくはロール端面の少なくとも一面における表層部分、又はベール状のパルプ成形体の少なくとも一面における表層部分を除去した状態にあるパルプを裁断又は粉砕してシート状、チップ状又は粉末状のセルロースパルプを得る。
ロール状のパルプ成形体又はベール状のパルプ成形体は、裁断装置でシート状に裁断されてシート状パルプとなり、さらにシート状パルプを裁断装置で裁断してチップ状パルプとなる。裁断装置の種類は特に限定されないが、スリッターカッター、ロータリーダイカッター等が挙げられる。
得られたチップ状パルプの平面積は、特に限定されない。チップ状パルプの平面積とは、一片のチップ状パルプを六面体としてとらえた場合、六面のうち最も面積の大きい面の面積である。
シート状のセルロースパルプを粉砕すると粉末状パルプが得られる。粉末状パルプは、ナイフミル、カッティングミル、ハンマーミル、ボールミル及び竪型ローラーミル等の粉砕機でシート状のセルロースパルプを粉砕して製造することができる。用いる粉砕機の種類は特に限定されず、また、得られた粉末状パルプの粒径、嵩密度も特に限定されない。
【0018】
このようにして表層部分が除かれたセルロースパルプは、アルカリ金属水酸化物溶液と接触させてアルカリセルロースを製造することができる。
アルカリ金属水酸化物溶液とセルロースパルプの接触方法としては、粉末状パルプ又はチップ状パルプに必要量のアルカリ金属水酸化物溶液を添加する方法や、シート状のセルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液に浸し、余剰のアルカリ金属水酸化物溶液を圧搾等の手法により除く方法が挙げられるが、アルカリ金属水酸化物の添加量の制御が容易である点で、粉末状パルプ又はチップ状パルプにアルカリ金属水酸化物溶液を添加することが好ましい。
【0019】
粉末状パルプ又はチップ状パルプにアルカリ金属水酸化物溶液を配合する方法として、アルカリ金属水酸化物溶液を滴下する方法や、アルカリ金属水酸化物溶液をスプレー状に噴霧する方法があるが、得られるアルカリセルロースの均一性が良い点で、スプレー状に噴霧する方法が望ましい。
【0020】
用いるアルカリ金属水酸化物に特に制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用できるが、経済的な観点から水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、取扱い及びエーテル化反応の効率の面から、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。アルカリ金属水酸化物溶液を得るためにアルカリ金属水酸化物を溶解するための溶媒は、水が通常用いられるが、低級アルコール(好ましくは炭素数1〜4のアルコール)やその他の不活性溶媒を使用したり、これらを組み合わせてもよい。
【0021】
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させる工程は、内部撹拌構造を有する反応器内で行うことが好ましい。反応器には、内部の温度を測定できるような測定機具が装着されていることが望ましい。
また、アルカリ金属水酸化物溶液とセルロースパルプを接触させる前に、反応器内の空気を真空ポンプ等で除去し、不活性ガス、好ましくは窒素で置換することにより、アルカリ金属水酸化物と酸素の存在下で生じるセルロースの解重合を抑制することが望ましい。
【0022】
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させる時の温度は、均一なアルカリセルロースを得る観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは30〜70℃である。
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液の接触時間は、均一なアルカリセルロースを得る観点から、好ましくは5秒〜30分間であり、より好ましくは10秒〜20分間である。
アルカリ金属水酸化物溶液の添加終了後、アルカリセルロースをより均一な状態にするために5〜30分間撹拌を続けることも可能である。
【0023】
得られたアルカリセルロースとアルキル化剤を反応させて、公知の方法でエーテル化反応を行うことにより、セルロースエーテルを製造することができる。セルロースエーテルとしては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0024】
アルキルセルロースとしては、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2のメチルセルロース、エトキシ基(DS)が2.0〜2.6のエチルセルロース等が挙げられる。なお、DSとは、置換度(degree of substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりの、その水素原子がアルキル基で置換された水酸基の平均個数である。
【0025】
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.05〜3.0のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.05〜3.3のヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。なお、MSとは、置換モル数(molar substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルキル基の平均モル数である。MSとDSは、第17改正日本薬局方のヒプロメロースに記載されている測定方法を用いて測定された結果から換算できる。
【0026】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシプロピルエチルセルロース等が挙げられる。
【0027】
また、カルボキシメトキシ基(DS)が0.2〜2.0のカルボキシメチルセルロースも、セルロースエーテルの例として挙げられる。
【0028】
アルキル化剤としては、塩化メチル、ヨウ化エチル等のハロゲン化アルキル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、モノクロロ酢酸等が挙げられる。
【0029】
アルキル化剤を反応させる時の反応器内温は、反応制御の観点から、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。
アルキル化剤の配合方法は、アルキル化剤をアルカリセルロースに添加する方法が好ましく、アルキル化剤の添加時間は、反応制御性及び生産性の観点から、好ましくは5〜120分間、より好ましくは10〜90分間である。
【0030】
アルカリセルロースとアルキル化剤を反応させて得られた反応混合物は、エーテル化反応を完了させるために、アルキル化剤の添加後も撹拌混合を続けることが望ましい。アルキル化剤添加後の撹拌時間は生産性の点から、好ましくは20〜120分間、より好ましくは30〜100分間である。
また、アルキル化剤添加後の撹拌の際の反応器内温は、反応制御性の点から好ましくは80〜120℃であり、より好ましくは85〜100℃である。
【0031】
得られた反応混合物は、通常の粗セルロースエーテルの精製方法と同様の手法で精製してセルロースエーテルとすることができる。精製は、例えば反応混合物を好ましくは90℃以上、より好ましくは90〜98℃の熱水を含む容器に移し、懸濁させることにより副反応物の塩を熱水に溶解させ、次いで、得られた懸濁液に対して分離操作を行うことで行われる。分離操作には、例えば加圧回転式フィルター、フィルタープレス、吸引濾過機等を使用することができる。
【0032】
得られたセルロースエーテルは乾燥後、必要に応じて、例えばボールミルやローラーミル、衝撃粉砕機のような通常の粉砕装置を用いて粉砕することができる。次いで、篩により分級することにより、所望の粒度に調整することができる。
セルロースエーテルの粘度は、第十七改正日本薬局方のヒプロメロースに関する分析方法によって測定することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
ロール半径が55cm、ロール幅が75cmのロール状のパルプ成形体について、ロール曲面からの距離が1.38cm(ロール半径の2.5%)内側の部分を除去した。ロール状のパルプ成形体の残りの部分を、メッシュミルで排気温度が80℃を超えないようにして粉砕し、得られた粉末状セルロースパルプを内部撹拌装置を有するジャケット付きの耐圧反応器に投入した。耐圧反応器内部を真空窒素置換した後、セルロースパルプを撹拌しながら、セルロースの無水仕込み量に対し1.40質量部の48質量%水酸化ナトリウム水溶液を20分間かけて噴霧してアルカリセルロースを製造した。得られたアルカリセルロースに、セルロースの無水仕込み量に対し0.35質量部のジメチルエーテルを加えてから内温を60℃まで上昇させた。続いて、セルロースの無水仕込み量に対し1.20質量部の塩化メチルと0.235質量部の酸化プロピレンを加え、80分間かけて内温を90℃まで昇温した後、30分間内温を90℃に保って反応を進行させて粗ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」ともいう。)を得た。粗HPMCに98℃の熱水を加えてスラリー溶液を調製した後、分離操作を行って塩及び有機副生成物の除去を行い、次いで80℃の送風乾燥機で乾燥させ、乾燥したHPMCを衝撃粉砕機で粉砕して、HPMCを製造した。得られたHPMCの1質量%水溶液を調製し、20℃、12rpmにおける粘度をBrookfield型回転粘度計にて測定したところ、24200mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0034】
実施例2
ロール曲面からの距離が8.25cm(ロール半径の15%)内側の部分を除去する以外は、実施例1と同様の方法でHPMCを製造し、得られたHPMCの1重量%水溶液の粘度を測定したところ、24900mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0035】
実施例3
ロール曲面からの距離が13.8cm(ロール半径の25%)内側の部分を除去する以外は、実施例1と同様の方法でHPMCを製造し、得られたHPMCの1質量%水溶液の粘度を測定したところ、25300mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0036】
実施例4
ロール曲面の表層部の除去に代えて、ロールの両端面について、各端面からの距離が9.4cm(ロール幅の12.5%)内側の部分を除去する以外は、実施例1と同様の方法でHPMCを製造し、得られたHPMCの1質量%水溶液の粘度を測定したところ、24600mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0037】
実施例5
奥行70cm×幅80cm×高さ70cmのベール状のパルプ成形体から、上底面からの距離が8.75cm(ベール高さの12.5%)内側の部分と、下底面からの距離が8.75cm(ベール高さの12.5%)内側の部分を除去し、ベール状のパルプ成形体の残りの部分をメッシュミルで排気温度が80℃を超えないようにして粉砕し、得られた粉末状セルロースパルプを内部撹拌装置を有するジャケット付きの耐圧反応器に投入した。耐圧反応器内部を真空窒素置換した後、セルロースパルプを撹拌しながら、セルロースの無水仕込み量に対し1.35質量部の48質量%水酸化ナトリウム水溶液を15分間かけて噴霧してアルカリセルロースを製造した。得られたアルカリセルロースに、セルロースの無水仕込み量に対し0.5質量部のジメチルエーテルを加えてから内温を60℃まで上昇させた。続いて、セルロースの無水仕込み量に対し1.08質量部の塩化メチル、0.187質量部の酸化エチレンを加え、90分間かけて内温を90℃まで昇温した後、30分間内温を90℃に保って反応を進行させて粗ヒドロキシエチルメチルセルロース(以下、「HEMC」ともいう。)を得た。粗HEMCに98℃の熱水を加えてスラリー溶液を調製した後、分離操作を行って塩及び有機副生成物の除去を行い、次いで80℃の送風乾燥機で乾燥させ、乾燥したHEMCを衝撃粉砕機で粉砕してHEMCを製造した。得られたHEMCの1質量%水溶液を調製し、20℃における粘度をBrookfield型回転粘度計にて測定したところ、23500mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0038】
実施例6
ベールパルプの上底面からの距離が8.75cm(ベール高さの12.5%)内側の部分、下底面からの距離が8.75cm(ベール高さの12.5%)内側の部分、左側面からの距離が10cm(ベール幅の12.5%)内側の部分、右側面からの距離が10cm(ベール幅の12.5%)内側の部分、前面からの距離が8.75cm(ベール奥行の12.5%)内側の部分、背面からの距離が8.75cm(ベール奥行の12.5%)内側の部分を全て除去する以外は、実施例5と同様の方法でHEMCを製造し、得られたHEMCの20℃における1質量%水溶液の粘度を測定したところ、24700mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0039】
比較例1
ロール状のパルプ成形体の表層部分を除かずそのまま原料として使用する以外は、実施例1と同様の方法でHPMCを製造し、得られたHPMCの20℃における1質量%水溶液の粘度を測定したところ、23600mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0040】
比較例2
ベール状のパルプ成形体の表層部分を除かずそのまま原料として使用する以外は、実施例5と同様の方法でHEMCを製造し、得られたHEMCの20℃における1質量%水溶液の粘度を測定すると、22200mPa・sであった。得られた結果を表1に示す。
【0041】
【表1】