【文献】
Angew. Int. Ed. Engl.,1996年,Vol.35, No.17,pp.1956-1959
【文献】
Bulletin of the Chemical Society of Japan,2005年,Vol.78, No.12,pp.2188-2208
【文献】
Studies in Organic Chemistry,1986年,Vo.25 (New Syth. Methodol. Funct. Intere,pp.335-348
【文献】
Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry,2003年,Vol.47, Nos.3-4, pp.113-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)芳香環を部分構造として有する、前記(A)の化合物以外の化合物、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用組成物。
前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項9から請求項15のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする請求項16に記載のパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、副生物が発生せず、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜を形成できる化合物を提供することを目的とする。更に、本発明は当該化合物を用いた有機膜形成用組成物、半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、及びパターン形成方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、下記一般式(1−1)で示される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物を提供する。
【化1】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい1個以上の窒素原子を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は有機基との結合手を示す。Bは熱、酸のいずれか一方又は両方の作用により反応性カチオンを生成可能なアニオン性脱離基である。)
【0011】
このような化合物は、空気中や不活性ガス中での成膜条件で硬化し、副生物が発生せず、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜を形成できる。
【0012】
またこの場合、前記化合物が、下記一般式(1−2)で示される化合物であることが好ましい。
【化2】
(式中、AR1、AR2は炭素数が1〜30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ナフタレン環またはピリジン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。Yは炭素数が1〜30個のn価の有機基(このとき、n=2〜4である)、又は、n個の繰返し単位を持つ、有機基含有重合体(このとき、2≦n≦1000である)である。Rは水素原子又は炭素数が1〜30個の1価の有機基である。)
【化3】
【0013】
上記化合物としては、上記一般式(1−2)で示される化合物が好ましい。
【0014】
また、本発明は、有機膜形成用の組成物であって、(A)下記一般式(1−1)で示される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物、及び(B)有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用組成物を提供する。
【化4】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい1個以上の窒素原子を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は有機基との結合手を示す。Bは熱、酸のいずれか一方又は両方の作用により反応性カチオンを生成可能なアニオン性脱離基である。)
【0015】
このような本発明の組成物は、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、高いドライエッチング耐性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用組成物となる。
【0016】
またこの場合、前記(A)の化合物が、下記一般式(1−2)で示される化合物であることが好ましい。
【化5】
(式中、AR1、AR2は炭素数が1〜30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ナフタレン環またはピリジン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。Yは炭素数が1〜30個のn価の有機基(このとき、n=2〜4である)、又は、n個の繰返し単位を持つ、有機基含有重合体(このとき、2≦n≦1000である)である。Rは水素原子又は炭素数が1〜30個の1価の有機基である。)
【化6】
【0017】
前記(A)の化合物としては、上記一般式(1−2)で示される化合物が好ましい。
【0018】
また、本発明の有機膜形成用組成物は、更に、(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)芳香環を部分構造として有する、前記(A)の化合物以外の化合物、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0019】
本発明の有機膜形成用組成物は、その目的に応じて、上記(C)〜(F)成分のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0020】
この場合、前記(E)成分が、重量平均分子量500〜100,000のものであることが好ましい。
【0021】
このような(E)成分であれば、焼成による成膜中に(E)成分が膜外に揮発せず、且つ材料の熱流動性を確保できるため、更に優れた基板の埋め込み性能及び平坦化性能を有するものとなるため、好ましい。
【0022】
また本発明では、基板上に、前記有機膜形成用組成物が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板を提供する。
【0023】
このような本発明の半導体装置製造用基板は、高い耐熱性、高いドライエッチング耐性を有する、高度に平坦化された有機膜が形成されており、半導体装置製造に用いると歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【0024】
更に、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布し、該有機膜形成用組成物が塗布された被加工体を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒〜7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする、有機膜の形成方法を提供する。
【0025】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を回転塗布し、該有機膜形成用組成物が塗布された被加工体を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒〜600秒の範囲で熱処理して塗布膜形成し、続いて該塗布膜が形成された被加工体を不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒〜7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする、有機膜の形成方法を提供する。
【0026】
本発明の方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、高い耐熱性と高いドライエッチング耐性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0027】
また、この場合、前記不活性ガスとして、酸素濃度が1%以下のものを用いることが好ましい。
【0028】
本発明の有機膜形成用組成物であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物を発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0029】
前記被加工体として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工体を用いることとができる。
【0030】
本発明の有機膜形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0031】
また、本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0032】
更に、本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0033】
更に、本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0034】
更に、本発明では、被加工体上に前記有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0035】
本発明の有機膜形成用組成物は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【0036】
この場合、前記無機ハードマスクの形成を、CVD法又はALD法によって行うことが好ましい。
【0037】
本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスクを形成することができる。
【0038】
またこの場合、前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0039】
前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0040】
本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0041】
また、前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0042】
前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0043】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本発明の化合物は、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化し、高度な埋め込みおよび平坦化特性を併せ持つ有機下層膜を形成するために有用な化合物となる。また、この化合物を含む有機膜形成用組成物は、優れた埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の諸特性を兼ね備えた有機膜を形成する材料となる。そのため、例えば、2層レジスト法、ケイ素含有中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素含有中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における有機膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物から形成される有機膜は、耐熱性に優れるため、当該有機下層膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
上述のように、基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても副生物が発生することなく成膜でき、また、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れ、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機下層膜が必要とされている。更に、当該有機下層膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても分解による膜厚変動のない有機膜が必要とされており、それら特性を実現する化合物の開発が求められていた。
【0047】
通常、有機下層膜を形成する際には、有機膜形成用化合物を有機溶剤で溶解して組成物とし、これを半導体装置の構造や配線等が形成されている基板上に塗布して、焼成することで有機下層膜を形成する。組成物の塗布直後は基板上の段差構造の形状に沿った塗布膜が形成されるが、該塗布膜を焼成すると、硬化するまでの間に有機溶剤の殆どが蒸発し、基板上に残った有機膜形成用化合物によって有機膜が形成される。本発明者らは、このとき基板上に残った有機膜形成用化合物が十分な熱流動性を有するものであれば、熱流動によって塗布直後の段差形状を平坦化し、平坦な膜を形成することが可能であることに想到した。
【0048】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、三重結合を有する化合物においても、分子間架橋基として下記(1−1)で示される部分構造、即ち2個の芳香族置換基、1個の三重結合性炭素および反応性カチオンを生成できる脱離基を置換基とする4級炭素を含有する部分構造を分子内に2つ以上有する化合物は、空気中のみならず、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の熱硬化性能を示し、かつ、硬化反応の際に半導体装置の製造装置を汚染するような副生物が発生せず、また、熱流動性が良好であるため高度な埋め込み/平坦化特性を有し、良好なドライエッチング耐性を有し、CVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い耐熱性を併せ持つ有機膜を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0049】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
<化合物(1)>
本発明の化合物は、部分構造として、下記一般式(1−1)で示される構造を分子内に2つ以上有する化合物である(以下、化合物(1)とする)。
【化7】
(式中、Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい1個以上の窒素原子を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。破線は有機基との結合手を示す。Bは熱、酸のいずれか一方又は両方の作用により反応性カチオンを生成可能なアニオン性脱離基である。)
【0051】
Arはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい1個以上の窒素原子を含む芳香環を示し、2つのAr同士が連結して環構造を形成してもよい。このようなArとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等が挙げられる。
【0052】
破線は有機基との結合手を示す。本発明において「有機基」とは、少なくとも炭素を含む基の意味であり、更に水素を含み、また窒素、酸素、硫黄、ケイ素等を含んでもよい。
【0053】
また、Bは熱、酸のいずれか一方又は両方の作用により反応性カチオンを生成可能なアニオン性脱離基であれば特に限定されないが、例えば、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0054】
本発明の化合物は、より具体的には、下記一般式(1−2)で示される化合物である(以下、化合物(2))とする)。
【化8】
(式中、AR1、AR2は炭素数が1〜30個のアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基を有してもよいベンゼン環、ナフタレン環またはピリジン環であり、mは0又は1であり、m=0のとき、AR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成せず、m=1のとき、AR1、AR2はXを介してAR1とAR2の芳香環同士で橋かけ構造を形成し、Xは単結合又は下記式(3)のいずれかである。Yは炭素数が1〜30個のn価の有機基(このとき、n=2〜4である)、又は、n個の繰返し単位を持つ、有機基含有重合体(このとき、2≦n≦1000である)である。Rは水素原子又は炭素数が1〜30個の1価の有機基である。)
【化9】
【0055】
ここで示される化合物(1)または(2)としては、具体的には以下の構造を例示することができるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。
【0060】
【化14】
(式中、nは前述の通りである。)
【0061】
このような、化合物(1)又は化合物(2)は、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の硬化性能を示し、また、この化合物を用いて得られる有機膜が高い耐熱性および高い基板の埋め込み性能及び平坦化性能を有する。
【0062】
[化合物の製造方法]
本発明の化合物(1)の製造方法として、下記ケトン化合物(i)に対するエチニル化合物(ii)の付加反応によりアルコールである(iii)を得て(式1)、必要に応じて水酸基を保護して(iv)を得る(式2)方法を挙げることができる。
【化15】
(式中、Ar、破線、Bは上記の通りである。)
【0063】
より具体的には、本発明の化合物(2)の製造方法として、下記ケトン化合物(v)に対するエチニル化合物(vi)の付加反応によりアルコールである(vii)を得て(式3)、必要に応じて水酸基を保護して(viii)を得る(式4)方法を挙げることができる。
【化16】
(式中、AR1、AR2、m、n、X、Y、Rは上記の通りである。)
【0064】
上記(式1)、(式3)において、(i)又は(v)のケトン化合物1モルに対してエチニル化合物(ii)又は(vi)を0.2/n’〜40/n’モル、特に0.5/n’〜2/n’モル使用することが好ましい。尚、n’は、化合物(1)又は化合物(2)中に含まれる上記(1−1)で示される部分構造の数であり、2以上、特には上記nと同一である。
【0065】
ケトン化合物(i)又は(v)と、エチニル化合物(ii)又は(vi)との反応では、塩基を用いた付加反応が例示できる。用いられる塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコキシド、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合物、Grignard試薬、有機リチウム試薬、Li、Na等の金属が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。用いる塩基の量は、エチニル化合物(ii)又は(vi)1モルに対して0.2×n’〜10×n’モル、特に0.5×n’〜2×n’モルとすることが好ましい。
【0066】
反応方法としては、上記ケトン化合物、エチニル化合物、及び塩基を一括で仕込む方法、ケトン化合物とエチニル化合物を分散又は溶解後、塩基を一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法、又は塩基を分散又は溶解後、ケトン化合物とエチニル化合物を一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法が挙げられるが、エチニル化合物と塩基を反応させてアニオンを発生させた後、ケトン化合物を混合する方法が好ましい。
【0067】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、水、これらを単独または混合して用いることができる。反応温度は−50℃〜溶媒の沸点程度が好ましく、0℃〜100℃が更に好ましい。反応時間は、クロマトグラフィー等で反応を追跡し反応を完結させることが望ましいが、通常30分間から48時間実施するとよい。
【0068】
反応終了後、系内に存在する未反応の原料、酸触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液による水洗処理を行って回収することもできる。
分液洗浄の際に使用する有機溶剤としては、化合物を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0069】
続いて、溶剤への溶解性能向上、化合物の保存安定性の改善等のため、上記アルコール化合物(iii)又は(vii)の水酸基を必要に応じて保護し、(iv)又は(viii)としても良い。例えば、上記アルコール化合物(iii)又は(vii)とアルコールとを反応させてエーテル化合物に、あるいは塩化アシル又は酸無水物と反応させてカルボン酸エステル化合物に、メシル酸クロリド、トシル酸クロリドと反応させてスルホン酸エステル化合物に導くことが可能である。この場合、上記アルコール化合物(iii)又は(vii)を一度単離した後に保護化の反応を仕込んでも良いし、上記アルコール化合物(iii)又は(vii)を合成した後、水洗処理する前のアルコキサイドと上記試薬を反応させることで保護化の反応を実施しても良い。
【0070】
以上のように、本発明の化合物であれば、不活性ガス中においても十分な硬化性能を示し、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成可能な有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0071】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の化合物を含有する有機膜形成用組成物であれば、例えば、
図1に示されるように、基板1上に有機膜形成用組成物3’を塗布し、加熱して有機膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、
図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の化合物を含有する有機膜形成用組成物によって、平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0072】
<有機膜形成用組成物>
また、本発明では、有機膜形成用の組成物であって、(A)上述の化合物(即ち、上記一般式(1−1)で示される部分構造を分子内に2つ以上有する化合物)、及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成用組成物を提供する。更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)芳香環を部分構造として有する、前記(A)の化合物以外の化合物、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用組成物を提供する。
【0073】
なお、本発明の有機膜形成用組成物において、上述した本発明の(A)の化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明の有機膜形成用組成物において使用可能な(B)有機溶剤としては、前記のベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0075】
このような組成物であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の化合物を含有するため、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0076】
さらに、本発明の有機膜組成物には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤を混合して用いることが可能である)。高沸点有機溶剤としては、(A)の化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカ
ノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n−ノニル、エチレングリコー
ルモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0077】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃〜300℃であることが好ましく、さらに200℃〜300℃であることがより好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際に溶剤が瞬間的に揮発する恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であればベーク後も膜中に揮発せず残存することがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0078】
また、上記高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1〜30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が得られなかったり、一方で配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性が劣化するといった恐れがない。
【0079】
このような有機膜形成用組成物であれば、上記の有機膜形成化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、確実に高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0080】
本発明の有機膜形成用組成物においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0081】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、前記化合物(
A)100部に対して好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜10部である。
【0082】
本発明の有機膜形成用組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009−269953号公報中の(0142)〜(0147)記載のものを用いることができる。
【0083】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、(E)芳香環を部分構造として有する、前記(A)の化合物以外の化合物を添加することができ、有機下層膜形成用組成物用として公知の縮合樹脂、ラジカル重合体等の公知の芳香環含有単分子化合物、高分子化合物を用いることができる。この(E)成分としては、下記の繰り返し単位を有する化合物や、下記の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化17】
【化18】
【0084】
上記(E)成分は、重量平均分子量500〜100,000、更に好ましくは600〜50,000のものが好ましい。この範囲であれば焼成による成膜中に(E)成分が膜外に揮発せず、且つ材料の熱流動性を確保できるため、十分に高い基板の埋め込み性能及び平坦化性能を得ることができるため、好ましい。
【0085】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0086】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β−ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)
、2,2’−メチレンビス4,5−ジフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−フェニル−2−オキサゾリン、2,2’−メチレンビス−4−tertブチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、1,4−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0087】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013−253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0088】
また、本発明の有機膜形成用組成物には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300〜200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0089】
【化19】
(式中、R
6は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Y1は炭素数2〜30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0090】
【化20】
(式中、R
6aは炭素数1〜4のアルキル基である。Y
aは炭素数4〜10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。lは平均繰り返し単位数を表し、3〜500である。)
【0091】
以上のように、本発明の有機膜形成用組成物は、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するものである。従って、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスクを用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又はケイ素含有無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法に用いる有機下層膜の形成材料として、極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用組成物は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。
【0093】
有機膜を形成するための加熱成膜工程は、1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。1段ベークによる成膜は、50℃以上600℃以下の温度で5〜7200秒間の範囲、好ましくは150℃以上500℃以下の温度で10〜3600秒間の範囲で行うのが好ましい。本発明の有機膜形成用組成物は、空気中のみならず不活性ガス雰囲気下での加熱でも硬化が可能である。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。
【0094】
即ち、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、前記有機膜形成用組成物を回転塗布し、該有機膜形成用組成物が塗布された被加工体を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で5秒〜7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする、有機膜の形成方法が提供される。
【0095】
多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度で有機下層膜を成膜することが好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機下層膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による有機下層膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。また、ケイ素中間膜形成中に有機下層膜が熱分解を起こし副生成物を生じる恐れがない。
【0096】
CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機下層膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0097】
一方、2段ベークによる成膜において一段目のベークを空気中で行う場合、酸素による基板の腐食が起こり得る際には空気中での処理温度の上限は300℃以下、好ましくは250℃以下で5〜600秒間の範囲で行う。不活性ガス中での2段目のベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、600℃以下好ましくは500℃以下の温度で、10〜7200秒間の範囲で行うのが好ましい。多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素中間膜を適用する場合は、ケイ素中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機下層膜を成膜すると、ケイ素中間膜形成用組成物による有機下層膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。また、ケイ素中間膜形成中に有機下層膜が熱分解を起こし副生成物を生じる恐れがない。
【0098】
2段ベークでCVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機下層膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0099】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機下層膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、被加工基板を酸素濃度1%以下の不活性ガス雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0100】
この有機膜形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、300℃以下でベークした後、酸素濃度1%以下の雰囲気で2段目のベークをする。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0101】
また、本発明の有機膜形成方法では、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板に用いることが出来る。上述のように、本発明の有機膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、本発明の有機膜形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0102】
なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nmとすることが好ましく、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。
【0103】
また、上記の有機膜形成方法は、本発明の有機膜形成用組成物を用いて多層レジスト法の下層膜となる有機膜を形成する場合と、平坦化膜用の有機膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0104】
本発明の有機膜形成用組成物は、半導体装置の製造工程で使用される段差基板の表面を平坦化することのできる有機膜の形成に用いることができ、被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を回転塗布し、該有機膜形成用組成物を塗布した基板を50℃以上300℃以下の温度で5〜600秒間の範囲で空気中で熱処理し、続いて不活性ガス中200℃以上600℃以下の温度で10〜7200秒間熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法に適用できる。
【0105】
この有機膜形成方法では、まず、上述した本発明の有機膜形成用組成物を、被加工基板上に回転塗布する。回転塗布法を用いることで、良好な埋め込み特性を確実に得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、組成物中の溶媒を蒸発させることができるため、有機膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にもミキシングを防止することができる。
【0106】
<パターン形成方法>
[ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法]
本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有する膜形成材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法が可能である。
【0107】
被加工体としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α−Si、p−Si、SiO
2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0108】
被加工層としては、Si、SiO
2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0109】
なお、被加工体を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0110】
また、被加工体として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0111】
被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する際には、上述の有機膜形成方法を適用すればよい。
【0112】
次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用組成物として芳香族を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造又はポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0113】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料を回転塗布後、60〜180℃で10〜300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nmが好ましく、特に50〜400nmが好ましい。
【0114】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0115】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2レーザー光(157nm)、Kr
2レーザー光(146nm)、Ar
2レーザー光(126nm)、3〜20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0116】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤現像によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0117】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0118】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機物に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成することができる。
【0119】
次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工体にエッチングでパターンを転写する。次の被加工体(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工体がSiO
2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0120】
本発明の有機膜形成用組成物を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工体のエッチング時のエッチング耐性に優れたものである。
【0121】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0122】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0123】
有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いて回転塗布で形成することができる。
【0124】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また、本発明では、上述の有機膜形成用組成物を用いた3層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0125】
なお、この方法は、有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0126】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002−334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5〜200nm、より好ましくは10〜100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300〜500℃となるために、下層膜としては300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用組成物を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0127】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、上述の有機膜形成用組成物を用いた4層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法も可能である。
【0128】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0129】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0130】
ここで、3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を
図2(A)〜(F)に示す。3層レジスト法の場合、
図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、
図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、
図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、
図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、
図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、
図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0131】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0132】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例】
【0133】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0134】
合成例 硬化性有機化合物の合成
【0135】
[合成例1]化合物(A1)の合成
N
2雰囲気下、氷冷した1,3−ジエチニルベンゼン12.6gと9−フルオレノン36.0gとトルエン200gの混合液に、t−ブトキシカリウム24.7gを加え、氷浴にて3時間撹拌した。水を加えて反応を停止した。テトラヒドロフラン200mLを加え、水洗、減圧濃縮後、トルエンを加え、生じた固体をろ取、トルエン洗浄、減圧乾燥して42.3gの化合物(A1)を得た。
【化21】
合成した化合物(A1)のIR、1H NMR分析結果を以下に示す。
【0136】
IR(D−ATR):
ν=3310(br)、3069、3046、3023、1592、1477、1450、1047、1001、791、747、726cm
-1
1H NMR(600 MHz,DMSO−d6)δ7.78(d,J=7.4 Hz,4H),7.70(d,J=7.4 Hz,4H),7.43−7.40(m,4H),7.37−7.34(m,7H),7.32−7.29(m,1H),6.70(s,2H).
【0137】
[合成例2]化合物(A2)の合成
化合物(A1)9.7g、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン0.5g、ピリジン30gを混合し、70℃まで昇温した。反応混合物に無水酢酸6.1gを加え、80℃まで昇温して4時間撹拌した。冷却後、水を加えて反応を停止した。トルエン100mL、テトラヒドロフラン100mLを加え、水洗、減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥して9.4gの化合物(A2)を得た。
【化22】
【0138】
合成した化合物(A2)のIR、1H NMR分析結果を以下に示す。
IR(D−ATR):
ν=3065、1745、1592、1476、1450、1231、1209、1050、1008、969、794、769、755、733cm
-1
1H NMR(600 MHz,DMSO−d6)δ7.84(d,J=7.6 Hz,4H),7.81(d,J=7.6 Hz,4H),7.49−7.46(m,4H),7.41−7.37(m,7H),7.35−7.31(m,1H),2.02(s,6H).
【0139】
[合成例3]化合物(A3)の合成
N
2雰囲気下、氷冷した1,3−ジエチニルベンゼン6.3gとテトラヒドロフラン100gの混合液に、臭化エチルマグネシウム1Nテトラヒドロフラン溶液100mLを加え、徐々に室温に昇温した。チオキサントン20.2gを加え、40℃まで昇温して24時間撹拌した。冷却後、水を加えて反応を停止した。メチルイソブチルケトン200mLを加え、水洗、減圧濃縮後、ヘキサンを加え、生じた固体をろ取、ヘキサン洗浄、減圧乾燥し、目的物(A3)17.1gを得た。
【化23】
【0140】
合成した化合物(A3)のIR、1H NMR分析結果を以下に示す。
IR(D−ATR):
ν=3299(br)、3062、3027、1581、1457、1443、1354、1185、1055、992、789、755、748、736cm
-1
1H NMR(600 MHz,DMSO−d6)δ7.98(dd,J=7.8,1.4 Hz,4H),7.54(dd,J=7.8,1.4 Hz,4H),7.39(ddd,J=7.8,7.8,1.4 Hz,4H),7.33(ddd,J=7.8,7.8,1.4 Hz,4H),7.30−7.28(m,5H),7.21(br s,1H).
【0141】
[合成例4]化合物(A4)の合成
レゾルシノール711.0g、炭酸カリウム33.2g、N,N−ジメチルホルムアミド90gを混合し、55℃まで昇温した。プロパルギルブロマイド80%トルエン溶液35.7gをゆっくり滴下して、55℃で17時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン150gを加え、水洗、減圧濃縮し、プロパルギル体(B1)18.6gを得た。
N
2雰囲気下、氷冷したプロパルギル体(B1)18.6gと9−フルオレノン34.2gとテトラヒドロフラン100gの混合液に、t−ブトキシカリウム24.7gを加え、氷浴にて1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。メチルイソブチルケトン200mLを加え、水洗、減圧濃縮後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶剤置換し、固形分で47.4gの化合物(A4)を得た。
【化24】
【0142】
合成した化合物(A4)の1H NMR分析結果を以下に示す。
1H NMR(600 MHz,DMSO−d6)δ7.74(d,J=7.3 Hz,4H),7.59(d,J=7.3 Hz,4H),7.38(ddd,J=7.3,7.3,1.4 Hz,4H),7.32(ddd,J=7.3,7.3,1.4 Hz,4H),7.13(dd,J=8.5,8.5 Hz,1H),6.60(s,2H),6.54−6.50(m,3H),4.68(s,4H).
【0143】
比較合成例 高耐熱有機化合物の合成
【0144】
[比較合成例1]ビフェニル誘導体(B2)の合成
窒素雰囲気下、マグネシウム26.4g(1.09mol)を秤量した5Lの4つ口フラスコ内に脱水THF(テトラヒドロフラン)1,000mlで予め溶解した4,4’−ジブロモビフェニル168g(0.54mol)、塩化リチウム23.0g(0.54mol)をマグネシウムが浸る程度に加えた。ジブロモエタンを少量加え、反応をスタートさせた後、発熱を維持したまま残りのTHF溶液を3時間かけ滴下した。滴下終了後、THF500mlを加え、還流下で8時間熟成してGrignard試薬を調製した。内温55℃まで冷却した後、予め脱水THF400mlに溶解した9−フルオレノン150g(0.83mol)を2時間かけ滴下した。滴下終了後、還流下で5時間半熟成を行い、氷浴でフラスコを冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液1,000mlと純水1,000mlで反応をクエンチした。このとき溶液は白色の析出物が生じ、懸濁液となった。反応溶液にMIBK(メチルイソブチルケトン)150mlを追加し、懸濁液のまま分液ロートに移し変え、水層を抜き出し、更に純水500mlで分液水洗を行った後、有機層を減圧濃縮した。ジイソプロピルエーテルで再結晶を行い、生じた白色の結晶を濾別し、乾燥することでビフェニル誘導体(B2)を109g、収率51.0%で得た。
【化25】
【0145】
ビフェニル誘導体(B2):
IR(D−ATR):ν=3539,3064,3039,1605,1495,1447,1164,1030,909,820,771,754,736cm
−1。
1H−NMR(600 MHz,in DMSO−d
6):δ=6.34(2H,−OH,s),7.24(4H,t),7.27(8H,d),7.36(4H,t−t),7.45(4H,d),7.81(4H,d)ppm。
13C−NMR(150 MHz,in DMSO−d
6):δ=82.44,120.10,124.66,125.66,126.28,128.07,128.51,138.41,139.14,144.19,151.23ppm。
【0146】
[比較合成例2]化合物(A5)の合成
ビフェニル誘導体(B2)40.3g(78.4mmol)、2−ナフトール23.73g(164.6mmol)、1,2−ジクロロエタン240mlを1Lの3つ口フラスコに秤量した。30℃のオイルバス中で撹拌しながら、メタンスルホン酸7.3mlをゆっくり滴下した。滴下終了後オイルバスの温度を50℃に上げ、6時間反応を行った。室温まで放冷後、MIBK500mlで希釈し、不溶分を濾別して分液ロートに移し変え、300mlの超純水で分液水洗を9回繰り返した。有機層を減圧濃縮し、残渣にTHF 800ml加え、溶解させた後、ヘキサン2,500mlで晶出後、結晶を濾別、乾燥することでビフェニル誘導体化合物(A5)を51.6g、収率85.8%で得た。
【0147】
【化26】
【0148】
化合物(A5):
IR(KBr):ν=3528,3389,3059,3030,1633,1604,
1506,1493,1446,1219,1181,750,740cm
−1。
1H−NMR(600MHz,in DMSO−d6):δ=6.98(2H,d−d),7.05(2H,s−d),7.17(4H,d),7.24(2H,d−d),7.29(4H,t),7.38(4H,t),7.40(2H,s),7.45(4H,d),7.50(6H,d),7.58(2H,d),7.93(4H,d),9.72(2H,−OH,s)ppm。
13C−NMR(150MHz,in DMSO−d6):δ=64.59,108.35,118.77,120.58,125.19,126.11,126.36,126.62,126.94,127.16,127.71,127.88,128.20,129.35,133.39,138.14,139.26,139.59,144.82,150.56,155.39ppm。
【0149】
[比較合成例3]化合物(A6)の合成
ビフェニル誘導体化合物(A5)7.7g、炭酸カリウム3.0g、N,N−ジメチルホルムアミド40gを混合し、55℃まで昇温した。プロパルギルブロマイド80%トルエン溶液3.3gをゆっくり滴下して、55℃で14時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン150gを加え、水洗、減圧濃縮し、プロパルギル体(A6)8.4gを得た。
【化27】
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=966、Mw/Mn=1.09
【0150】
芳香環を部分構造として有する化合物(E1)の合成
9−フェニル−9−フルオレノール54.5g、1,2−ジクロロエタン200gを混合し、50℃まで昇温した。メタンスルホン酸20.3gをゆっくり滴下して、70℃で6時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン650gを加え、水洗、減圧濃縮し、化合物(E1)60.7gを得た。
【0151】
【化28】
【0152】
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(E1):Mw=2700、Mw/Mn=1.39
【0153】
有機膜材料(UDL−1〜7、比較UDL1〜3)の調製
上記化合物(A1)〜(A6)、(E1)、高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃または(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酸発生剤(AG1)0.05質量%、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶液中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜材料(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をそれぞれ調製した。
【0154】
【表1】
【0155】
以下に、酸発生剤(AG1)を示す。
【化29】
【0156】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1−1〜1−7、比較例1−1〜1−3)
上記で調製した有機膜材料(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0157】
【表2】
【0158】
表2に示されるように、本発明の有機膜材料(実施例1−1〜1−7)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して比較例1−1、1−3においてはPGMEA処理後の残膜率が50%未満となり十分な溶剤耐性が発現しなかった。これらの結果により、本発明の三重結合と反応性カチオンを生成できる脱離基とを含む構造により熱硬化反応が起き、溶剤耐性が発現し硬化膜を形成していることがわかる。
【0159】
実施例2 大気中ベークでの溶媒耐性測定(実施例2−1〜2−7、比較例2−1〜2−3)
上記で調製した有機膜形成用組成物(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をシリコン基板上に塗布し、大気中350℃で60秒間焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。これらの結果を表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
表3に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例2−1〜2−7)は、PGMEA処理後の残膜率が99%以上あり、大気中においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対して比較例2−1、2−3ではPGMEA処理後の残膜率が50%未満となり十分な溶剤耐性が発現しなかった。この結果より、本発明の三重結合と反応性カチオンを生成できる脱離基とを含む構造が大気中でも熱硬化反応を起こし、溶剤耐性が発現していることがわかる。
【0162】
実施例3 耐熱特性評価(実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−3)
上記の有機膜形成用組成物(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で焼成して115nmの塗布膜を形成し、膜厚を測定した。更に、この基板を酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で焼成し、膜厚を測定した(実施例3−1〜3−7、比較例3−1〜3−3)。これらの結果を表4に示す。
【0163】
【表4】
【0164】
表4に示されるように、本発明の有機膜材料(実施例3−1〜3−7)は、450℃での焼成後も膜厚減少が1%未満であり、本発明の有機膜材料は450℃の処理でも膜厚を保持していることから高い耐熱性を有していることがわかる。それに対して比較例
3−1〜
3−3では本発明の有機膜材料に比べて大きな膜厚減少が起きている。本発明の有機膜材料は窒素雰囲気下で450℃焼成においては180℃焼成後の膜厚を維持しており、不活性ガス下において優れた耐熱性を示すことがわかる。
【0165】
実施例4 埋め込み特性評価(実施例4−1〜4−7、比較例4−1〜4−3)
図3のように、上記の有機膜材料(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間焼成し、有機膜8を形成した。使用した基板は
図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表5に示す。埋め込み特性に劣る有機膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜材料を用いた場合は、本評価において、
図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例4−1〜4−7)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することが確認出来た。一方、比較例4−1〜4−3では、ボイドが発生し埋め込み特性が不良であることが確認された。この結果から、本発明の有機膜形成用組成物は、本発明の三重結合と反応性カチオンを生成できる脱離基とを含む構造の化合物により耐熱性が確保され、埋め込み特性が改善されていることがわかる。一方、比較例4−1〜4−3は、窒素雰囲気下では耐熱性が不足していることから、ボイドが発生し、良好な埋め込み特性が得られなかった。
【0168】
実施例5 平坦化特性評価(実施例5−1〜5−7、比較例5−1〜5−3)
図4に示される巨大孤立トレンチパターン(
図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に有機膜形成用組成物(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をそれぞれ塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下、450℃で60秒間焼成した。トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(
図4(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表6に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを通常膜厚約0.2μmの有機膜形成用組成物を用いて平坦化している。平坦化特性の優劣を評価するために厳しい条件を採用している。
【0169】
【表6】
【0170】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例5−1〜5−7)は、比較例5−1〜5−3に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。この結果から、平坦化特性においても、本発明の三重結合と反応性カチオンを生成できる脱離基とを含む構造の化合物の優位性が示された。また、高沸点溶剤を添加した実施例5−6〜5−7と添加していない実施例5−1と比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。
【0171】
実施例6 パターン形成試験(実施例6−1〜6−7、比較例6−1〜6−3)
上記の有機膜形成用組成物(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)を、それぞれ300nmのSiO
2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で60秒焼成し、有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にCVD−SiONハードマスクを形成し、更に、有機反射防止膜材料(ARC−29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0172】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表7の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0173】
【表7】
【0174】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【化30】
【0175】
液浸保護膜材料(TC−1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表8の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0176】
【表8】
【0177】
用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化31】
【0178】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm 1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0179】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD−SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして有機膜をエッチングして有機膜パターンを形成し、得られた有機膜パターンをマスクにしてSiO
2膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0180】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力10.0Pa
RFパワー1,500W
CF
4ガス流量75sccm
O
2ガス流量15sccm
時間15sec
【0181】
ハードマスクパターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー500W
Arガス流量75sccm
O
2ガス流量45sccm
時間120sec
【0182】
有機膜パターンのSiO
2膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー2,200W
C
5F
12ガス流量20sccm
C
2F
6ガス流量10sccm
Arガス流量300sccm
O
2ガス流量60sccm
時間90sec
【0183】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察した結果を表9に示す。
【0184】
【表9】
【0185】
表9に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例6−1〜6−7)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例6−1、6−3は、窒素雰囲気下では耐熱性が不足するとともに、実施例1で示した通り十分に硬化されていないことから、パターン加工時にパターン倒れが発生し良好なパターンを得ることが出来なかった。比較例6−2においては、耐熱性が不足するもののパターンを形成することはできた。
【0186】
実施例7 パターン形成試験(実施例7−1〜7−7、比較例7−1〜7−3)
トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に、上記の有機膜形成用組成物(UDL−1〜7、比較UDL−1〜3)をそれぞれ塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下にて450℃で60秒焼成した以外は、実施例6と同じ方法で積層膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行ない、出来上がったパターンの形状を観察した。
【0187】
【表10】
【0188】
表10に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物(実施例7−1〜7−7)は、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用組成物は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例7−2では溶剤耐性が得られており硬化膜となっているものであっても、パターンの埋め込みが不良であるためにパターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることが出来なかった。
【0189】
以上のことから、本発明の化合物を含有する本発明の有機膜形成用組成物であれば、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、酸素を含まない不活性ガス下においても450℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0190】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。