特許第6875325号(P6875325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6875325-パターン形成方法 図000063
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875325
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/38 20060101AFI20210510BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210510BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G03F7/38 512
   G03F7/004 521
   G03F7/004 501
   G03F7/20 521
【請求項の数】7
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2018-97444(P2018-97444)
(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公開番号】特開2019-203935(P2019-203935A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 司
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−035956(JP,A)
【文献】 特開2018−013751(JP,A)
【文献】 特開2017−107140(JP,A)
【文献】 特開2000−347406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00 − 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光パターンが形成された塗布膜上に金属膜パターンを得るためのパターン形成方法であって、
(1)酸不安定基で保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する熱硬化性化合物、酸発生剤、及び増感剤を含む第1のレジスト材料を被加工基板の上に塗布し、ベーク処理して有機溶剤に対して溶解しない第1のレジスト膜を形成する工程、
(2)前記第1のレジスト膜に波長3〜15nmの真空紫外線を光源とする高エネルギー線、又は電子線の照射によりパターン露光を行い、前記第1のレジスト膜のパターン露光部において前記水酸基及び/又は前記カルボキシル基を脱保護する工程、
(3)前記パターン露光を行った前記第1のレジスト膜上に、(A)金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含む第2のレジスト材料を塗布し、ベーク処理して第2のレジスト膜を形成するとともに、前記パターン露光部上に前記(A)成分と前記脱保護された水酸基及び/又はカルボキシル基とが架橋反応した架橋部分を形成する工程、及び
(4)前記第2のレジスト膜を現像液で現像し、前記架橋部分からなる金属膜パターンを得る工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記工程(1)及び/又は前記工程(3)におけるベーク処理温度を50℃以上とすることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記(A)成分を、下記一般式(A−1)で示される金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上、及び/又は、下記一般式(A−2)で示される金属化合物と前記一般式(A−1)で示される金属化合物との縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式中、MはTi、Zr又はHfであり、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【化2】
(式中、M´はTi、Zr又はHfであり、Xは下記一般式(A−3)で示される2価又は3価のアルコールである。)
【化3】
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20のm価の有機基である。mは2又は3の整数である。)
【請求項4】
前記増感剤を、下記一般式(B−1)で示されるものから選ばれる1種類以上のものとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【化4】
(式中、M´´n+はMg、Ca、Ce、Zn、Cu、In、Fe、Yb、Y、Tm、Sn、Ni、Sc、Hf、Nb、Ti、Zr、Ba、Ho、Tb、Lu、La、Ag、Eu、Dy、Gd、Rb、Sr、Csから選ばれる金属イオンであり、Yは少なくとも1個のフッ素原子を有するアルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルスルホンイミド酸イオン、アルキルスルホンメチド酸イオンであり、nは1≦n≦4を満たす整数である。)
【請求項5】
前記一般式(B−1)中のYを、下記一般式(B−1−1)〜(B−1−3)で示されるものとすることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【化5】
(式中、R1Bは少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数5〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、又は炭素数6〜30のアリール基、アラルキル基であり、ハロゲン原子、エーテル基、チオール基、エステル基、カーボネート基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アジド基、カーバメート基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、スルホン酸エステル基、スルトン基、ラクトン環又はラクタム環を含んでいてもよい。R2B、R3B、R4B、R5B、R6Bはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、オクタフルオロブチル基、又はノナフルオロブチル基であり、R2B、R3Bが結合して環を形成してもよい。)
【請求項6】
前記工程(4)における前記現像液として、有機溶剤を用いることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記有機溶剤を、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上とすることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの微細加工プロセスに有用な薄膜加工性及びエッチング耐性を具備したレジストパターン形成方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、用いられる光源に対して如何により微細かつ高精度なパターン加工を行うかについて種々の技術開発が行われている。
【0003】
微細化の進行と共に、酸の拡散による像のボケが問題になっている(非特許文献1)。寸法サイズ45nm以降の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている(非特許文献2)。しかしながら、化学増幅型レジスト材料は、酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポージャベーク(PEB)温度や時間を短くして酸拡散を極限まで抑えようとすると感度とコントラストが著しく低下する。
【0004】
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効である。そこで、ポリマーに重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤を共重合することが提案されている。しかし、寸法サイズ16nm以降のレジスト膜のパターン形成においては、酸拡散の観点から化学増幅型レジスト膜ではパターン形成ができないと考えられており、非化学増幅型レジスト材料の開発が望まれている。
【0005】
非化学増幅型レジスト材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を挙げることができる。PMMAは、EUV照射によって主鎖が切断し、分子量が低下することによって有機溶剤の現像液への溶解性が向上するポジ型レジスト材料であるが、環構造を有していないためにエッチング耐性が低いことが欠点である。
【0006】
ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ)は、EUV照射によって生じたシラノールの縮合反応による架橋によってアルカリ現像液に不溶となるネガ型レジスト材料である。また、塩素置換したカリックスアレーンもネガ型レジスト材料として機能する。これらのネガ型レジスト材料は、架橋前の分子サイズが小さく酸拡散によるボケが無いため、エッジラフネスが小さく解像性が非常に高く、露光装置の解像限界を示すためのパターン転写材料として用いられている。しかしながら、これらの材料は感度が不十分であり、更なる改善が必要である。
【0007】
EUVリソグラフィーを用いた微細化において、レジストには、まず高感度で高分解能が要求されるが、それに加えて寸法精度を低下させるラインエッジラフネス(LER)を抑制することも重要である。また、微細化によるパターン倒れ防止も重要な課題である。パターン倒れは、レジストパターンのアスペクト比増加が要因の1つである。そのためレジスト材料には、薄膜化が求められるが、後続のエッチングプロセスの負担を増加させることが大きな課題となっている。
【0008】
これまで半導体リソグラフィー用のフォトレジスト材料において、金属が導入されたレジスト材料を用いることは、金属原子が基板に移動することによって半導体の動作不良が起きる可能性があるために不可能であった。しかしながら半導体以外の用途、例えばLCD用レジスト材料(非特許文献3)として、透明電極ZnOを形成するためのパターン形成材料として、ネオデカン酸亜鉛が用いられている。特許文献1においては、珪素、チタン、ジルコニウム、タンタル、バリウム、ストロンチウム、ハフニウムのアセチルアセトン配位子によるパターン形成例が示されている。更には、特許文献2においては、銅、クロム、セリウム、イットリウム、バリウム、アルミニウム等のカルボキシル基を有する配位子、アミノ基を有する配位子による塩を用いたパターン形成例が示されている。パターン形成後に300℃の加熱処理を行うことによってメタル酸化物のパターンを形成している。
【0009】
特許文献3においては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの部分縮合物にジオール又はトリオールを配位させたポジ型レジスト材料のパターン形成例が示されている。これらの材料は、高解像度かつエッジラフネスの小さいパターン形成が可能だが、感度が不十分であり、更なる改善が望まれる。
【0010】
特許文献4においては、被加工体上に金属酸化物形成用組成物を用いて金属酸化物含有膜を形成し、該金属酸化物含有膜上に上層レジスト膜材料を用いて上層レジスト膜を形成した後、該上層レジスト膜を露光してレジストパターンを形成し、該レジストパターンを前記金属酸化物含有膜にパターン転写し、パターン転写された金属酸化物含有膜をエッチングマスクとして下層の被加工体をエッチング加工するパターン形成方法が示されている。これらのパターン形成方法は、エッチング選択性に優れるため、サイズ交換差を生じさせることなく上層レジスト膜で形成されたパターンを被加工体上に形成可能だが、パターン形成ステップ数が多いことや、上層レジストの解像度が不十分であり、更なる改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2005−505691号公報
【特許文献2】米国特許第5534312号明細書
【特許文献3】特許第6119544号公報
【特許文献4】特許第5756134号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】SPIE Vol.5039 p1 (2003)
【非特許文献2】SPIE Vol.6520 p65203L−1 (2007)
【非特許文献3】J.Vac.Sci.Technol.B27(6),Nov/Dec p2986−2989 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
EUV露光による微細加工では、解像度、感度、及びパターンアスペクト比の増加にともなうパターン倒れが課題となっている。特にパターン倒れを防止するには、薄膜化が1つの手法であるが、従来の化学増幅型レジストではエッチング耐性の不足により達成が困難である。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高解像度でありながら高感度である薄膜レジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明では、
露光パターンが形成された塗布膜上に金属膜パターンを得るためのパターン形成方法であって、
(1)酸不安定基で保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する熱硬化性化合物、酸発生剤、及び増感剤を含む第1のレジスト材料を被加工基板の上に塗布し、ベーク処理して有機溶剤に対して溶解しない第1のレジスト膜を形成する工程、
(2)前記第1のレジスト膜に波長3〜15nmの真空紫外線を光源とする高エネルギー線、又は電子線の照射によりパターン露光を行い、前記第1のレジスト膜のパターン露光部において前記水酸基及び/又は前記カルボキシル基を脱保護する工程、
(3)前記パターン露光を行った前記第1のレジスト膜上に、(A)金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含む第2のレジスト材料を塗布し、ベーク処理して第2のレジスト膜を形成するとともに、前記パターン露光部上に前記(A)成分と前記脱保護された水酸基及び/又はカルボキシル基とが架橋反応した架橋部分を形成する工程、及び
(4)前記第2のレジスト膜を現像液で現像し、前記架橋部分からなる金属膜パターンを得る工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0016】
このようなパターン形成方法であれば高解像度でありながら高感度である薄膜レジストパターンの形成方法とすることができる。
【0017】
また、前記工程(1)及び/又は前記工程(3)におけるベーク処理温度を50℃以上とすることが好ましい。
【0018】
このようなベーク処理温度とすれば、第1のレジスト膜、及び第2のレジスト膜をより効率的に形成することができる。
【0019】
また、前記(A)成分を、下記一般式(A−1)で示される金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上、及び/又は、下記一般式(A−2)で示される金属化合物と前記一般式(A−1)で示される金属化合物との縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上とすることが好ましい。
【化1】
(式中、MはTi、Zr又はHfであり、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【化2】
(式中、M´はTi、Zr又はHfであり、Xは下記一般式(A−3)で示される2価又は3価のアルコールである。)
【化3】
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20のm価の有機基である。mは2又は3の整数である。)
【0020】
このような(A)成分をレジスト材料に用いることで、良好な形状の微細パターンを形成することができる。
【0021】
また、前記増感剤を、下記一般式(B−1)で示されるものから選ばれる1種類以上のものとすることが好ましい。
【化4】
(式中、M´´n+はMg、Ca、Ce、Zn、Cu、In、Fe、Yb、Y、Tm、Sn、Ni、Sc、Hf、Nb、Ti、Zr、Ba、Ho、Tb、Lu、La、Ag、Eu、Dy、Gd、Rb、Sr、Csから選ばれる金属イオンであり、Yは少なくとも1個のフッ素原子を有するアルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルスルホンイミド酸イオン、アルキルスルホンメチド酸イオンであり、nは1≦n≦4を満たす整数である。)
【0022】
このような増感剤であれば、第1のレジスト材料の感度をより向上させることができる。
【0023】
このとき、前記一般式(B−1)中のYを、下記一般式(B−1−1)〜(B−1−3)で示されるものとすることが好ましい。
【化5】
(式中、R1Bは少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数5〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、又は炭素数6〜30のアリール基、アラルキル基であり、ハロゲン原子、エーテル基、チオール基、エステル基、カーボネート基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アジド基、カーバメート基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、スルホン酸エステル基、スルトン基、ラクトン環又はラクタム環を含んでいてもよい。R2B、R3B、R4B、R5B、R6Bはフッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、オクタフルオロブチル基、又はノナフルオロブチル基であり、R2B、R3Bが結合して環を形成してもよい。)
【0024】
このような増感剤であれば、第1のレジスト材料の感度をさらに向上させることができる。
【0025】
また、前記工程(4)における前記現像液として、有機溶剤を用いることが好ましい。
【0026】
このような現像液であれば、第2のレジスト膜をより効率的に現像することができる。
【0027】
このとき、前記有機溶剤を、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上とすることが好ましい。
【0028】
このような現像液であれば、第2のレジスト膜をさらに効率的に現像することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のパターン形成方法は、高感度、高解像性、良好な形状の微細パターン、及び優れた薄膜加工性を提供する。特に、水酸基、カルボキシル基、又はその両方を持つ熱硬化性化合物を含むレジスト膜と金属レジスト間の架橋反応により形成されるパターンは、従来法では達成が困難であった薄膜加工性とエッチング耐性の両立が可能となる。また、パターン形成に用いたレジスト材料は、製造装置に接続している期間においても、特性の変化がなく保存安定性に優れる。従って、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料、EUV露光用のパターン形成材料として好適なネガ型レジスト材料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のパターン形成方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上述のように、高解像度でありながら高感度である薄膜レジストパターンの形成方法の開発が求められていた。
【0032】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性化合物膜を被加工体上へ形成し、EUV露光あるいはEB照射により水酸基、カルボキシル基、又はその両方を発生させた後、特定構造を有する金属化合物を塗布し、発生したこれら酸性官能基との間で架橋反応を発生させるパターン形成方法が、優れた薄膜加工性を示し、有機溶剤現像において優れた溶解コントラストを示し、優れたエッチング耐性を示し、かつ良好なパターン形成ができることを見出した。
【0033】
即ち、本発明は、
露光パターンが形成された塗布膜上に金属膜パターンを得るためのパターン形成方法であって、
(1)酸不安定基で保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する熱硬化性化合物、酸発生剤、及び増感剤を含む第1のレジスト材料を被加工基板の上に塗布し、ベーク処理して有機溶剤に対して溶解しない第1のレジスト膜を形成する工程、
(2)前記第1のレジスト膜に波長3〜15nmの真空紫外線を光源とする高エネルギー線、又は電子線の照射によりパターン露光を行い、前記第1のレジスト膜のパターン露光部において前記水酸基及び/又は前記カルボキシル基を脱保護する工程、
(3)前記パターン露光を行った前記第1のレジスト膜上に、(A)金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含む第2のレジスト材料を塗布し、ベーク処理して第2のレジスト膜を形成するとともに、前記パターン露光部上に前記(A)成分と前記脱保護された水酸基及び/又はカルボキシル基とが架橋反応した架橋部分を形成する工程、及び
(4)前記第2のレジスト膜を現像液で現像し、前記架橋部分からなる金属膜パターンを得る工程、
を含むパターン形成方法である。
【0034】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法について、図1を用いてさらに詳細に説明する。まず、被加工基板101の上に、第1のレジスト材料を塗布、ベーク処理して有機溶剤に溶解しない第1のレジスト膜102を形成する(A、B)。次に、第1のレジスト膜102に対して、高エネルギー線、又は電子線を照射(パターン露光)して第1のレジスト膜102にパターン露光部102´を形成する(C)。パターン露光部102´においては、脱保護された水酸基、及び/又はカルボキシル基が生成している。その後、第2のレジスト材料を第1のレジスト膜102上に塗布、ベーク処理して第2のレジスト膜103を形成する(D)。第2のレジスト膜103の形成と同時に、第2のレジスト膜中の(A)成分と、パターン露光部102´中の脱保護された水酸基、及び/又はカルボキシル基とが架橋反応することによって、パターン露光部102´の上(表面)に、架橋部分104が形成される(E)。そして、例えば有機溶剤現像により第2のレジスト膜103を除去し、必要であれば加熱して脱保護反応により脱離した保護基を除去することによって、架橋部分104のみが残り、これが金属膜パターン105となる(F)。その後、エッチング加工により、第1のレジスト膜102を除去し、所望のパターンを形成することができる(G)。
【0036】
以下に、本発明のパターン形成方法に用いる第1のレジスト材料、第2のレジスト材料について、さらに詳細に説明する。
【0037】
[第1のレジスト材料]
第1のレジスト材料は、酸不安定基で保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する熱硬化性化合物、酸発生剤、及び増感剤を含むものである。
【0038】
<熱硬化性化合物>
熱硬化性化合物は、酸不安定基により保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方、又はその両方を有する単位(酸不安定基により保護され、露光により発生した酸の作用により、保護基が脱離し、酸性官能基である水酸基、カルボキシル基、又はその両方が発生する単位)を含むものである。このような単位の最も好ましいものとして、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化6】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。Zは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は−C(=O)−O−Z´−を表す。Z´はヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合、もしくはラクトン環を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基、もしくはナフチレン基である。sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Bは単結合、又はエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。cはc≦5+2t−eを満足する整数である。eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を表すが、そのうちの1つ以上は酸不安定基を表す。)
【0039】
上記一般式(1)又は(2)で示される単位は、水酸基あるいはカルボキシル基の少なくとも1つを酸不安定基で保護したものであり、酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性官能基を与えるものを、基本的にはいずれも使用することができるが、アルキル基が好ましい。上記一般式(1)で表される単位としては、下記式(A−10)で表されるものが、上記一般式(2)で表される単位としては、下記式(B−10)で表されるものが好ましい。
【0040】
【化7】
【0041】
酸不安定基Xとしては、1級、2級、又は3級のアルキル基が好ましい。上記のフェノール性水酸基、カルボキシル基のいずれの場合も、3級アルキル基により保護された単位を与える重合用モノマーは、蒸留によって得るために、3級アルキル基は、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素の置換アルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0042】
好ましい1級、又は2級のアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アミル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基を挙げることができ、また、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0043】
<酸発生剤>
本発明に用いる第1のレジスト材料に配合できる酸発生剤としては、下記一般式(Z1)、(Z2)、又は(Z3)で示される酸発生剤が挙げられる。特に、これらの酸発生剤のうち下記一般式(Z3)で示される光酸発生剤を含むことが好ましい。
【化8】
(式中、R200は水素原子、フッ素原子、あるいはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。W、Wはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基のいずれかを示す。kは1〜4の整数を示す。R201、R202及びR203は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18の、アリール基、アラルキル基及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示す。あるいはR201、R202及びR203のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。R204及びR205はそれぞれ独立に、ヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R206はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。R207はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、R204、R205及びR206のうちのいずれか2つ以上が互いに結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。L’は単結合又はヘテロ原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。A’は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)
【0044】
上述の配合できる酸発生剤としては、具体的には下記に示す構造のものが挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化9】
(式中、Acはアセチル基、Phはフェニル基を示す。)
【0045】
【化10】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
【0046】
【化11】
(式中、Phはフェニル基を示す。)
【0047】
【化12】
【0048】
酸発生剤(光酸発生剤)の配合量は、ベース樹脂(熱硬化性化合物)100質量部に対して0〜30質量部が好ましく、0〜20質量部が特に好ましい。
【0049】
<増感剤>
本発明に用いる第1のレジスト材料に含まれる増感剤としては、下記一般式(B−1)で表される金属塩の増感剤が挙げられる。これによって、第1のレジスト材料の感度を向上させることができる。
【化13】
(式中、M´´n+はMg、Ca、Ce、Zn、Cu、In、Fe、Yb、Y、Tm、Sn、Ni、Sc、Hf、Nb、Ti、Zr、Ba、Ho、Tb、Lu、La、Ag、Eu、Dy、Gd、Rb、Sr、Csから選ばれる金属イオンであり、Yは少なくとも1個のフッ素原子を有するアルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルスルホンイミド酸イオン、アルキルスルホンメチド酸イオンであり、nは1≦n≦4を満たす整数である。)
【0050】
としては、下記式(B−1−1)〜(B−1−3)のいずれかで表されるものが好ましい。
【化14】
【0051】
式(B−1−1)中、R1Bは少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数5〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基、又は炭素数6〜30のアリール基、アラルキル基であり、ハロゲン原子、エーテル基、チオール基、エステル基、カーボネート基、カルボニル基、アミド基、アミノ基、アジド基、カーバメート基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、スルホン酸エステル基、スルトン基、ラクトン環又はラクタム環を含んでいてもよい。
【0052】
式(B−1−1)で表されるスルホン酸イオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
【化15】
【0054】
【化16】
【0055】
【化17】
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
【化20】
【0059】
【化21】
【0060】
【化22】
【0061】
【化23】
【0062】
【化24】
【0063】
【化25】
【0064】
【化26】
【0065】
【化27】
【0066】
【化28】
【0067】
【化29】
【0068】
【化30】
【0069】
【化31】
【0070】
【化32】
【0071】
【化33】
【0072】
【化34】
【0073】
【化35】
【0074】
【化36】
【0075】
式(B−1−2)中、R2B及びR3Bは、それぞれ独立に、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、オクタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基であり、R2BとR3Bとが、互いに結合して−SOSO−と共に環を形成してもよく、この場合、R2BとR3Bとが結合して−(CF−(kは、2〜5の整数である。)を形成することが好ましい。
【0076】
式(B−1−3)中、R4B、R5B及びR6Bは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、オクタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基である。
【0077】
増感剤の含有量は、ベース樹脂(熱硬化性化合物)100質量部に対し、0.01〜100質量部が好ましく、0.1〜50質量部がより好ましい。増感剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
[第2のレジスト材料]
第2のレジスト材料は、(A)金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含むものである。
【0079】
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(A−1)で示される金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上、及び/又は、下記一般式(A−2)で示される金属化合物と前記一般式(A−1)で示される金属化合物との縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上とすることが好ましい。
【化37】
(式中、MはTi、Zr又はHfであり、R1Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【化38】
(式中、M´はTi、Zr又はHfであり、Xは下記一般式(A−3)で示される2価又は3価のアルコールである。)
【化39】
(式中、R2Aは0又は1個の水酸基を有する炭素数2〜20のm価の有機基である。mは2又は3の整数である。)
【0080】
上記一般式(A−1)中の1価の有機基R1Aは、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、シクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等の1価飽和炭化水素基;シクロヘキセニル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘプテニル基、シクロペンタジエニル基等の1価不飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、メトキシベンジル基等のアラルキル基;テトラヒドロフルフリル基等の1価複素環含有基等が挙げられる。
【0081】
1価の有機基は、1個の水酸基(ヒドロキシ基)を有していてもよい。水酸基を有する1価の有機基としては、特に3級アルコール構造を有するものが好ましい。
【0082】
Mがチタンの場合、上記一般式(A−1)で表される金属化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンペントキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタン2−エチル−1,3−ヘキサンジオレート、チタン2−エチルヘキソキシド、チタンテトラヒドロフルフリルオキシド、チタンビス(トリエタノールアミネート)ジイソプロポキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2,4−ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2,4−ペンタンジオネート等が挙げられる。
【0083】
Mがジルコニウムの場合、上記一般式(A−1)で表される金属化合物としては、メトキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、プロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウム、フェノキシジルコニウム、ジルコニウムジブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)等が挙げられる。
【0084】
Mがハフニウムの場合、上記一般式(A−1)で表される金属化合物としては、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムブトキシド、ハフニウムペントキシド、ハフニウムヘキシロキシド、ハフニウムシクロペントキシド、ハフニウムシクロヘキシロキシド、ハフニウムアリロキシド、ハフニウムフェノキシド、ハフニウムメトキシエトキシド、ハフニウムエトキシエトキシド、ハフニウムジプロポキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジプロポキシビス2,4−ペンタンジオネート、ハフニウムジブトキシビス2,4−ペンタンジオネート等が挙げられる。
【0085】
一般式(A−3)中、R2Aは、炭素数2〜20のm価の有機基である。mは、2又は3である。m価の有機基としては、炭素数2〜20の炭化水素から水素原子がm個脱離して得られる基が好ましい。m価の有機基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、アルカン、アルケン、アルキン等の脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素から誘導される基が挙げられる。特に、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン及びイコサンから選ばれるアルカンから誘導される基が好ましい。
【0086】
式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化40】
【0087】
【化41】
【0088】
【化42】
【0089】
【化43】
【0090】
【化44】
【0091】
【化45】
【0092】
【化46】
【0093】
【化47】
【0094】
【化48】
【0095】
【化49】
【0096】
【化50】
【0097】
これらのうち、式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールとしては、3級アルコール構造を含むものが好ましい。特に好ましいものとして、以下に示すものが挙げられる。
【化51】
【0098】
レジスト材料の保存安定性の観点から、式(A−1)で表される金属化合物及び式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールの一方、又はその両方が、1つ以上の3級アルコール構造を含むことが好ましい。通常、酸素原子を介して金属原子に結合している有機基中の炭素原子は、その周りの骨格構造により溶剤に対する溶解性や熱に対する安定性が異なる。また、金属化合物の溶剤(特に有機溶剤)に対する溶解性は、有機基中に含まれる炭素原子又は作用させるアルコール中の炭素原子のとる骨格構造が、1級アルコール構造、2級アルコール構造、3級アルコール構造となる順に高くなり、3級アルコール構造が導入されていると、金属化合物の有機溶剤に対する溶解性が向上し、金属化合物の析出等をより効果的に防止できる。また、金属化合物の熱分解温度は、炭素原子のとる骨格構造が、1級アルコール構造、2級アルコール構造、3級アルコール構造となる順に低くなり、3級アルコール構造が導入されていると、一般的な半導体装置製造プロセスで使用可能な100〜350℃の温度範囲においてより確実な成膜が可能となる。
【0099】
一般式(A−1)で表される金属化合物の加水分解物若しくは加水分解縮合物は、一般式(A−1)で表される金属化合物を無触媒、酸又はアルカリ触媒の存在下、加水分解又は加水分解して縮合(以下、加水分解縮合ともいう)することで製造することができる。
【0100】
一般式(A−1)の金属化合物と一般式(A−2)の金属化合物との反応物は、一般式(A−1)で表される金属化合物、又は該金属化合物の加水分解物や加水分解縮合物と、一般式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールとの反応物として得ることができる。このような反応物は、一般式(A−1)で表される金属化合物、又は該金属化合物の加水分解物や加水分解縮合物と一般式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールとを、無触媒、酸又はアルカリ触媒の存在下、加水分解又は加水分解して縮合(以下、加水分解縮合ともいう)することで製造することができる。
【0101】
上記酸触媒としては、無機酸、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる1種以上の化合物を使用することができる。具体的な酸触媒としては、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、例えば、チタンモノマー1モルに対し、好ましくは10−6〜10モル、より好ましくは10−5〜5モル、更に好ましくは10−4〜1モルである。
【0102】
上記アルカリ触媒としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、例えば、チタンモノマー1モルに対して好ましくは10−6〜10モル、より好ましくは10−5〜5モル、更に好ましくは10−4〜1モルである。
【0103】
上記原料化合物から加水分解又は加水分解縮合により目的化合物を得るときの水の量は、原料化合物に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜10モルが好ましく、0.05〜5モルがより好ましく、0.1〜3モルが更に好ましい。10モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的であり、かつ、金属化合物の安定性を損なうことがないため好ましい。
【0104】
操作方法として、触媒水溶液に原料化合物を添加して加水分解縮合反応を開始させる方法が挙げられる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、原料化合物を有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは5〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。原料化合物の滴下時に5〜150℃に温度を保ち、その後20〜150℃で1〜12時間熟成させる方法が好ましい。
【0105】
また、別の反応操作としては、原料化合物に、又は原料化合物を含む有機溶剤に、水又は含水有機溶剤を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒は原料化合物に、又は原料化合物を含む有機溶剤に添加してもよいし、水又は含水有機溶剤に添加しておいてもよい。反応温度は好ましくは0〜200℃、より好ましくは5〜150℃である。原料化合物の滴下時に5〜150℃に温度を保ち、その後20〜150℃で1〜12時間熟成させる方法が好ましい。
【0106】
触媒水溶液に加えることのできる、又は金属化合物を希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びこれらの混合物等が好ましい。
【0107】
なお、有機溶剤の使用量は、金属化合物1モルに対し、0〜1,000mLが好ましく、0〜500mLがより好ましい。有機溶剤の使用量が1,000mL以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0108】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行う。このとき、中和に使用することのできる酸、アルカリの量は、触媒として使用された酸、アルカリに対して0.1〜2当量が好ましく、中性になるものであれば、任意の物質でよい。
【0109】
続いて、反応溶液から加水分解縮合反応で生成したアルコール等の副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応溶液を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で生成した副生物の種類によるが、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜150℃、更に好ましくは15〜150℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及び副生物の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去される副生物量を正確に知ることは難しいが、生成した副生物のおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0110】
副生物を除いた後、前記反応溶液に加える最終的な溶剤として好ましいものとして、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジペンチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0111】
一般式(A−1)で表される金属化合物の加水分解縮合物や、これと一般式(A−3)で表される2価又は3価のアルコールとの反応物の分子量は、金属化合物の選択だけでなく、加水分解縮合時の反応条件制御により調整することができる。得られる化合物は、その重量平均分子量(Mw)が100,000以下のものが好ましく、200〜50,000のものがより好ましく、300〜30,000のものが更に好ましい。Mwが100,000以下であれば、異物の発生や塗布斑が生じることがない。なお、本発明においてMwは、検出器としてRI、溶離溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いてポリスチレン換算で測定した値である。
【0112】
このような(A)成分をレジスト材料に用いることで、長期において特性の変化がなく保存安定性に優れ、良好な形状の微細パターンを形成することができる。また、このようなレジスト材料を用いて形成されたレジスト膜は、反応を促進させる場合においても、その際の加熱をより低温域で行うことができる。
【0113】
<その他の成分>
本発明に用いる第1のレジスト材料、第2のレジスト材料には、更に溶剤を添加してもよい。本発明で使用される溶剤としては、溶剤以外の各成分を溶解できるものであれば特に限定されないが、熱硬化性化合物や(A)成分を作製する際に最終的に加える溶剤と同一のものであることが好ましい。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジペンチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0114】
有機溶剤を含む場合、その含有量は、熱硬化性化合物や(A)成分100質量部に対し、100〜10,000質量部が好ましく、500〜7,000質量部がより好ましい。有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0115】
更に、本発明に用いる第1のレジスト材料、第2のレジスト材料には、必要に応じて界面活性剤を添加することが可能である。このようなものとして、具体的には、特開2009−126940号公報の段落[0129]に記載されている材料を添加することができる。
【0116】
[工程(1)〜(4)]
以下に、本発明のパターン形成方法の各工程(1)〜(4)について、さらに詳細に説明するが、本発明のパターン形成方法は、これらに限定されず、例えば、種々の集積回路製造やマスク製造等に用いられる公知のリソグラフィー技術に適用することができる。
【0117】
<工程(1)>
工程(1)は、酸不安定基で保護された水酸基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する熱硬化性化合物、酸発生剤、及び増感剤を含む第1のレジスト材料を被加工基板の上に塗布し、ベーク処理して有機溶剤に対して溶解しない第1のレジスト膜を形成する工程である。
【0118】
例えば、本発明に用いた熱硬化性化合物を含む第1のレジスト材料を、集積回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)や、マスク回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO等)上に、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜350℃、10秒〜30分間、好ましくは100〜300℃、30秒〜20分間プリベークし、第1のレジスト膜(熱硬化性化合物膜)を形成する。
【0119】
<工程(2)>
工程(2)は、第1のレジスト膜に波長3〜15nmの真空紫外線を光源とする高エネルギー線、又は電子線の照射によりパターン露光を行い、第1のレジスト膜のパターン露光部において水酸基及び/又はカルボキシル基を脱保護する工程である。
【0120】
例えば、第1のレジスト膜(熱硬化性化合物膜)を、高エネルギー線で目的とするパターンを所定のマスクを通じて、又は直接露光する。高エネルギー線としては、KrF、ArF、Xe、F、Ar等のエキシマレーザー、EUV、EB等が挙げられる。露光のエネルギーによって酸官能基を発生させ、その上に塗布した金属化合物間で架橋反応が進行することで有機溶剤への不溶性が高まる。これによってネガ型レジスト材料として機能する。この場合、高エネルギー線としては、波長3〜15nmのEUVや加速電圧1〜150kVのEB、好ましくは加速電圧5〜120kV、より好ましくは50kV以下のEB、特には10kV以下の低加速のEBが好ましい。これらはエキシマレーザーよりも波長が短く、エネルギー密度が高いEUVやEBで露光した方が水酸基及び/又はカルボキシル基の脱保護反応の効率が高いため好ましく用いることができる。高エネルギー線の露光量は、1mJ/cm〜1J/cm程度、特に10〜500mJ/cm、又は0.1〜1mC/cm程度、特に0.5〜500μC/cmが好ましい。
【0121】
露光した第1のレジスト膜をホットプレート上でベーク(PEB)してもよい。PEBは、好ましくは60〜350℃で10秒〜30分間、より好ましくは100〜300℃で30秒〜20分間処理することで行うことができる。
【0122】
<工程(3)>
工程(3)は、パターン露光を行った第1のレジスト膜上に、(A)金属化合物、及び該金属化合物の加水分解物、縮合物、加水分解縮合物から選ばれる1種類以上を含む第2のレジスト材料を塗布し、ベーク処理して第2のレジスト膜を形成するとともに、パターン露光部上に前記(A)成分と脱保護された水酸基及び/又はカルボキシル基とが架橋反応した架橋部分を形成する工程である。
【0123】
塗布、及びベーク処理は、工程(1)で用いたのと同様の条件で行うことができる。
【0124】
<工程(4)>
工程(4)は、第2のレジスト膜を現像液で現像し、架橋部分からなる金属膜パターンを得る工程である。
【0125】
例えば、有機溶剤現像液を用い、好ましくは0.1〜3分間、より好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することによって、未露光部分が溶解するネガ型パターンが基板上に形成される。前記現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル(酢酸アミル)、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル(酢酸イソアミル)、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル(ギ酸アミル)、ギ酸イソペンチル(ギ酸イソアミル)、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル(乳酸アミル)、乳酸イソペンチル(乳酸イソアミル)、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等が好ましい。
【0126】
現像の終了時には、リンスを行うことが好ましい。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0127】
炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。
【0128】
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0129】
炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。
【0130】
芳香族系の溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等が挙げられる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、Mwは、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0132】
[1](A)成分の合成
[合成例1]
チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業(株)製)284gの2−プロパノール(IPA)500g溶液に攪拌しながら、脱イオン水27gのIPA500g溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2,4−ジメチル−2,4−オクタンジオール180gを添加し、室温で30分攪拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)1,200gを加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物A1のMIBC溶液1,000g(化合物濃度25質量%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,200であった。
【0133】
[合成例2]
チタンテトライソプロポキシド(東京化成工業(株)製)284gのIPA500g溶液に攪拌しながら、脱イオン水27gのIPA500g溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2−メチル−2,4−ペンタンジオール120gを添加し、室温で30分攪拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、MIBC1,200gを加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物A2のMIBC溶液1,000g(化合物濃度20質量%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0134】
[合成例3]
チタンテトラブトキシドテトラマー(東京化成工業(株)製)40gの1−ブタノール(BuOH)10g溶液に2,4−ジメチル−2,4−ヘキサンジオール24gを添加し、室温で30分攪拌した。この溶液を減圧下、50℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)200gを加え、50℃、減圧下でBuOHが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物A3のPGMEA溶液160g(化合物濃度25質量%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,000であった。
【0135】
[合成例4]
チタンテトラブトキシドテトラマー(東京化成工業(株)製)243gのBuOH500g溶液にピナコール130gを添加し、室温で30分攪拌した。この溶液を減圧下、40℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで、PGMEA1,200gを加え、50℃、減圧下でBuOHが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物A4のPGMEA溶液1,000g(化合物濃度22質量%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,150であった。
【0136】
[2]レジスト材料の調製
熱硬化性化合物X1〜X4、光酸発生剤P1、金属塩増感剤B1、並びに溶剤を表1に示す組成で混合し、第1のレジスト材料として、レジスト材料1−1〜1−6、比較レジスト材料1−1〜1−3を調製した。また、(A)成分としてチタン含有化合物A1〜A4、並びに溶剤を表1に示す組成で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、第2のレジスト材料として、レジスト材料2−1〜2−6、比較レジスト材料2−1〜2−3を調製した。
【化52】
【化53】
【化54】
【0137】
【表1】
【0138】
[3]表面分析(パターンの元素分析と膜厚評価)
[実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−3]
直径8インチ(200mm)のSi基板上に、レジスト材料1−1〜1−6、比較レジスト材料1−1〜1−3をクリーントラックACT8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上で200℃、60秒間ベークして、100nmの第1のレジスト膜(熱硬化性化合物膜)を作製した。これを、NXE3300(ASML製)を用いてEUV露光を行い、膜中に酸性官能基を発生させた。次に、露光した膜上に、レジスト材料2−1〜2−6、比較レジスト材料2−1〜2−3をスピンコートし、150℃、60秒間ベークして、100nmの第2のレジスト膜(金属酸化物含有化合物膜)を作製した。次に、180℃、60秒間ポストエクスポージャベークを施した。その後、PGMEA溶液を膜表面にキャストし、可溶部を洗い流し、XPS K−ALPHA Surface Analysis(Thermo SCIENTIFIC製)を用いて表面の元素比を算出した。また、AFM NX20(Park Systems製)を用いて露光部と未露光部の厚み差から金属パターンの膜厚を算出した。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
[4]EB描画評価(パターン形成)
[実施例2−1〜2−6、比較例2−1〜2−3]
直径8インチ(200mm)のHMDSベーパープライム処理したSi基板上に、レジスト材料1−1〜1−6、比較レジスト材料1−1〜1−3をクリーントラックACT8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上で180℃で60秒間ベークして、100nmの第1のレジスト膜(熱硬化性化合物膜)を作製した。これに、JBX−9000MV((株)日本電子製)を用いて加速電圧50kVで真空チャンバー内描画を行った。次に、レジスト材料2−1〜2−6、比較レジスト材料2−1〜2−3を、描画した膜上にスピンコートし、180℃で60秒間ベークして第2のレジスト膜(金属化合物膜)を作製した。クリーントラックACT8(東京エレクトロン(株)製)を用いて酢酸ブチルで20秒間パドル現像を行い、230℃で60秒間ベークすることでネガ型パターンを得た。得られた金属レジストパターンを次のように評価した。100nmのラインアンドスペース(LS)を1:1で解像する露光量を感度とし、露光量における、最小の寸法を解像度とし、100nmLSのエッジラフネス(LWR)をSEM((株)日立ハイテクフィールディング製)で測定した。
【0141】
実施例1−1〜1−6の結果から、本発明のパターン形成方法では、金属(Ti)を含有する、薄膜の金属膜パターンを形成できることが分かった。また、実施例2−1〜2−6の結果から、本発明のパターン形成方法は、良好な薄膜加工性を有し、高感度、かつ十分な解像度を有していることが分かった。
【0142】
一方、比較例1−1〜1−3では、第1のレジスト材料が酸不安定基で保護された水酸基やカルボキシル基を有する熱硬化性化合物を有していないため、(A)成分との架橋部分が形成されなく、金属膜パターンを形成することができなかった。また、そのような第1のレジスト材料を用いているために、比較例2−1〜2−3においても、実施例のような感度、解像度は得られなかった。
【0143】
以上の結果から、本発明のパターン形成方法は、良好な薄膜加工性を有し、高感度、かつ十分な解像度を有することが明らかになった。
【0144】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0145】
101…被加工基板、 102…第1のレジスト膜、 102´…パターン露光部、
103…第2のレジスト膜、 104…架橋部分、 5…金属膜パターン。
図1