特許第6875443号(P6875443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875443無機バインダー組成物のレオロジー制御用の櫛型ポリマーの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875443
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】無機バインダー組成物のレオロジー制御用の櫛型ポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20210517BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20210517BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C08F220/00
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 D
   C04B24/26 H
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-71548(P2019-71548)
(22)【出願日】2019年4月3日
(62)【分割の表示】特願2016-508083(P2016-508083)の分割
【原出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2019-143151(P2019-143151A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】13164078.1
(32)【優先日】2013年4月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フルンツ
(72)【発明者】
【氏名】ロイク ロルセ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ペトリオル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ゲビル
(72)【発明者】
【氏名】ワルテール ドゥ カルバロ
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−011129(JP,A)
【文献】 特表2014−518189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F301/00
C08G 81/00− 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛形ポリマーを少なくとも一つ含む、自己充填コンクリートであって、前記櫛形ポリマーが、無機バインダー組成物のスランプフロー及び/又は降伏点を実質的に変えずに流動速度を向上させ、かつ/又は粘度を低減させるための櫛形ポリマーであり、前記櫛形ポリマーは、酸性基を含む主鎖と、前記主鎖に結合している側鎖を有し、全ての側鎖の数平均分子量(M)は250〜800g/molであり、かつ前記酸性基の前記側鎖に対するモル比は0.5〜2の範囲であり、
前記櫛形ポリマーが、以下の構造サブユニットで構成される、自己充填コンクリート:
(a)aモル分率の式(I)の構造サブユニットS1
【化1】
(b)bモル分率の式(II)の構造サブユニットS2
【化2】
ここで、Rは、いずれの場合にもその他とは独立に、−COOM、−SO−OM、−O−PO(OM)及び/又は−PO(OM)であり、
、R、R及びRは、いずれの場合にも互いに独立に、H又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
及びRは、いずれの場合にも互いに独立に、H、−COOM又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、その他とは独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価若しくは3価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基であり、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
は、いずれの場合にも互いに独立に、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基若しくはアルキルアリル基、又は式−[AO]−Rの基であり、
ここで、AはC〜Cのアルキレン、RはH、C〜C20のアルキル基、シクロへキシル基又はアルキルアリル基であり、
かつnは2〜250である、
そして、ここでa及びbは、各構造サブユニットS1及びS2のモル分率である。
【請求項2】
前記側鎖が、エステル基、エーテル基、アミド基及び/又はイミド基を通じて、主鎖と結合していることを特徴とする、請求項1に記載の自己充填コンクリート。
【請求項3】
前記側鎖の少なくとも50mol%が、ポリアルキレンオキシド側鎖で構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自己充填コンクリート。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキシド側鎖中のエチレンオキシド単位の割合が、前記側鎖に存在している全てのアルキレンオキシド単位に基づいて、90mol%超であることを特徴とする、請求項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項5】
前記側鎖が、疎水性基を有さないことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項6】
がCOOM;R及びRが、互いに独立に、H、−CH又はそれらの混合であり;R及びRが、互いに独立に、H又は−CHであり;そして、R及びRが、互いに独立に、H又は−COOMであることを特徴とする、請求項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項7】
mが0、かつpが1であり、そしてR及びRが、40〜60mol%のHと、40〜60mol%の−CHとの組合せであることを特徴とする、請求項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項8】
前記櫛形ポリマーが、前記バインダー含有量に基づいて、0.01〜10wt%の割合で用いられることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項9】
前記無機バインダー組成物が、モルタル組成物又はコンクリート組成物であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項10】
前記無機バインダー組成物が、ブレーン粉末度が少なくとも1000cm/gである細粒材を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項11】
バインダー含有量に基づいて1wt%の添加レベルの場合において、前記櫛形ポリマーが、前記無機バインダー組成物の降伏点及び/又はスランプフローに15%未満の影響を与えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項12】
バインダー含有量に基づいて1wt%の添加レベルの場合において、前記櫛形ポリマーが、前記無機バインダー組成物の降伏点及び/又はスランプフローに5%未満の影響を与えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の自己充填コンクリート。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の自己充填コンクリートを、水を加えることで硬化させた成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機バインダー組成物の流動速度を向上させ、かつ/又は無機バインダー組成物の粘度を低減させるための、櫛型ポリマーの使用に関する。本発明のさらなる態様は、無機バインダー組成物及び上記櫛型ポリマーを含む硬化した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
分散剤又は流動化剤は、建設業界において、バインダー組成物、例えばコンクリート、モルタル、セメント、石膏及び石灰に対して、可塑剤又は減水剤として使用される。分散剤は一般に有機ポリマーであり、混合する水に加えられ又は固形でバインダー組成物に混合される。結果として、処理中のバインダー組成物の稠度を有利に修正するだけでなく、硬化状態における特性もまた有利に修正することが可能である。
【0003】
適している分散剤の選択及び添加レベルは、特に、個別の組成、処理技術又はバインダー組成物の使用目的によって決まる。これは、特別なバインダー組成物、例えば特殊コンクリート又は特殊モルタルの場合に、とりわけ困難な課題である。
【0004】
特殊コンクリートとして、例えばいわゆる「自己充填コンクリート」が挙げられる。自己充填コンクリートは、特有の流動性及び固有の圧密挙動を有する。その結果、自己充填コンクリートは、急速に流動し、そして分離せずに、単に重力に基づいて自動的に空洞を満たし、そして圧縮エネルギーの適用なしに脱気される。そのため従来のコンクリートでの場合のような、振動は必要ない。したがって、自己充填コンクリートは、高い敷設能力が必要とされる場合、複雑な幾何学的形態の場合、狭いメッシュ補強の場合、比較的薄い要素の場合、又は追加の圧縮エネルギーの適用が困難又は不可能である状況において、特に有利である。一般的なコンクリートと比較して、自己充填コンクリートは、改善された粒度曲線及び/又は比較的高いレベルの微細粒材料を一般的に示す。
【0005】
自己充填コンクリートを用いた場合、コンクリートの降伏点又はスランプフローと、粘度又は流動速度の両方が、規定の範囲内にそれぞれ同時に設定された場合に限って、最適な処理特性が達成される。そうしないと、コンクリート成分の分離又は解離が容易に起こる場合がある;不適切な流動挙動又は沈滞が生じる場合があり、又は不要な空気の含有が起こる場合がある。
【0006】
自己充填コンクリートにおいて適している分散剤の選択及びそれらの添加レベルは、したがって重要である。ポリカルボン酸エーテルの形態の高性能の可塑剤が、当分野で一般に用いられる。
【0007】
これに関連して、例えば、特許文献1では、とりわけセルフレベリング性バインダー組成物の粘度を低減するのに用いることができるポリカルボン酸系櫛型ポリマーに基づく分散剤を開示している。これら櫛形ポリマーはとりわけ、側鎖に疎水性基を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/044046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、多くの公知の分散剤では、完全な満足を提供できない。一方では、公知の分散剤は、同時に無機バインダー組成物のスランプフロー及び流動速度の両方に、しばしば影響を与える。そのため、降伏点又はスランプフローを変更することなく、無機バインダー組成物の目標とする流動速度の向上は、ほとんど不可能である。他の分散剤は、特別な化学基又は複雑な化学構造を必要とし、それらは今度は製造を複雑にし、そしてコストを増大させる。
【0010】
したがって、上記欠点を有さない、改善された分散剤に対する需要が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、以下の態様1の特徴によって、目的が達成されることを見出した。
【0012】
驚くべきことに、独立請求項1の特徴によって、目的が達成されることを見出した。
【0013】
本発明の本質は、流動速度を向上させ、かつ/又は無機バインダー組成物の粘度を低減するための櫛形ポリマーの使用にあり、その櫛形ポリマーは、酸性基を含む主鎖と、その主鎖に結合している側鎖を有し、全ての側鎖の数平均分子量(M)が120〜1000g/molであり、かつ酸性基の側鎖に対するモル比が0.5〜2の範囲である。
【0014】
示しているように、本発明の櫛形ポリマーを用いて、自己充填コンクリートの形態で、例えば非常に改善された充填能力及び流動速度を有する、無機バインダー組成物を得ることが可能である。これは、バインダー組成物の有意の分離若しくは解離、又は空気の含有なしに達成可能である。また特に驚くべきことは、流動速度における増加にもかかわらず、バインダー組成物の降伏点が用いる櫛形ポリマーによって実質的に影響されないことである。
【0015】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立的態様の主題である。特に好ましい本発明の実施態様は、その従属的態様の主題である。
本発明の実施態様としては以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
無機バインダー組成物の流動速度を向上させ、かつ/又は粘度を低減させるための櫛形ポリマーの使用であって、前記櫛形ポリマーは、酸性基を含む主鎖と、前記主鎖に結合している側鎖を有し、全ての側鎖の数平均分子量(M)は120〜1000g/molであり、かつ前記酸性基の前記側鎖に対するモル比は0.5〜2の範囲である、櫛形ポリマーの使用。
《態様2》
前記側鎖が、エステル基、エーテル基、アミド基及び/又はイミド基を通じて、主鎖と結合していることを特徴とする、態様1に記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様3》
前記側鎖の数平均分子量(M)が、250〜800g/mol、特に300〜750g/mol、とりわけ400〜600g/molの範囲であることを特徴とする、態様1又は2に記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様4》
前記側鎖の少なくとも50mol%、特に側鎖の少なくとも75mol%、好ましくは側鎖の少なくとも95mol%又は100mol%が、ポリアルキレンオキシド側鎖で構成されることを特徴とする、態様1〜3のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様5》
前記ポリアルキレンオキシド側鎖中のエチレンオキシド単位の割合が、前記側鎖に存在している全てのアルキレンオキシド単位に基づいて、90mol%超、特に95mol%超、好ましくは98mol%超、とりわけ100mol%であることを特徴とする、態様4に記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様6》
前記側鎖が、疎水性基を有さないこと、とりわけ3つ又はそれ以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドを有さないことを特徴とする、態様1〜5のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様7》
前記櫛形ポリマーが、以下の構造サブユニットで構成されるか、又は以下の構造サブユニットを含有することを特徴とする、態様1〜6のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用:
(a)aモル分率の式(I)の構造サブユニットS1
【化1】
(b)bモル分率の式(II)の構造サブユニットS2
【化2】
(c)随意にcモル分率の式(III)の構造サブユニットS3
【化3】
(d)随意にdモル分率の式(IV)の構造サブユニットS4
【化4】
ここで、Rは、いずれの場合にもその他とは独立に、−COOM、−SO−OM、−O−PO(OM)及び/又は−PO(OM)であり、
、R、R、R、R、R10、R13及びR14は、いずれの場合にも互いに独立に、H又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
、R、R11及びR15は、いずれの場合にも互いに独立に、H、−COOM又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、その他とは独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価若しくは3価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基であり、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
及びR12は、いずれの場合にも互いに独立に、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基若しくはアルキルアリル基、又は式−[AO]−Rの基であり、
ここで、AはC〜Cのアルキレン、RはH、C〜C20のアルキル基、シクロへキシル基又はアルキルアリル基であり、
かつnは2〜250である、
16は、その他とは独立に、NH、−NR又は−ORNRであり、
ここでR及びRは、互いに独立に、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリル基若しくはアリル基、又はヒドロキシアルキル基若しくはアセトキシエチル基(CH−CO−O−CH−CH)若しくはヒドロキシイソプロピル基(HO−CH(CH)−CH−)若しくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)である;
又はR及びRは、モルホリン環若しくはイミダゾリン環を構成するために、Nを一部有する環を互いに形成する;
は、C〜Cのアルキレン基であり、
及びRは、互いに独立にそれぞれ、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリル基若しくはアリル基又はヒドロキシアルキル基であり、
そして、ここでa、b、c及びdは、各構造サブユニットS1、S2、S3及びS4のモル分率であり、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.8)、特にa/b/c/d=(0.3〜0.9)/(0.1〜0.7)/(0〜0.6)/(0〜0.4)、好ましくはa/b/c/d=(0.4〜0.7)/(0.3〜0.6)/(0.001〜0.005)/0であり、かつa+b+c+d=1である。
《態様8》
がCOOM;R及びRが、互いに独立に、H、−CH又はそれらの混合であり;R及びRが、互いに独立に、H又は−CH、好ましくはHであり;そして、R及びRが、互いに独立に、H又は−COOM、好ましくはHであることを特徴とする、態様7に記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様9》
が、−[AO]−Rであり、AはCのアルキレン基、かつRはH又はCのアルキル基であり、そしてnは2〜30、特にnは5〜23、好ましくはnは8〜22、とりわけnは10〜15であることを特徴とする、態様7又は8に記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様10》
mが0、かつpが1であり、そしてR及びRが、40〜60mol%のHと、40〜60mol%の−CHとの混合であることを特徴とする、態様7〜9のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様11》
前記櫛形ポリマーが、前記バインダー含有量に基づいて、0.01〜10wt%、特に0.1〜7wt%又は0.2〜5wt%の割合で用いられることを特徴とする、態様1〜10のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様12》
前記無機バインダー組成物が、モルタル組成物又はコンクリート組成物、特に自己充填コンクリートであることを特徴とする、態様1〜11のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様13》
前記無機バインダー組成物が、細粒材を含み、好ましくは350kg/mより大きい細粒材、特に400〜600kg/mの細粒材を含むことを特徴とする、態様1〜12のいずれかに記載の櫛形ポリマーの使用。
《態様14》
態様1〜13のいずれかに記載の櫛形ポリマーを少なくとも一つ含む、自己充填コンクリート。
《態様15》
水の添加後に、態様14に記載の自己充填コンクリートを硬化させることによって得ることができる成形体。
【0016】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。特に好ましい本発明の実施態様は、その従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の態様は、流動速度を向上させ、かつ/又は無機バインダー組成物の粘度を低減するための櫛形ポリマーの使用に関し、その櫛形ポリマーは、酸性基を含む主鎖と、その主鎖に付随する側鎖を有し、全ての側鎖の数平均分子量(M)が120〜1000g/molであり、かつ酸性基の側鎖に対するモル比が0.5〜2の範囲である。
【0018】
流動速度の測定として現時点で考えられるのは、DIN EN 12350−8:2010−12(“Testing of fresh concrete - Part 8: Self-compacting concrete - Slump flow test”)に準拠するt500時間である。t500時間は、基本的に、混合された無機バインダー組成物又は処理加工可能な無機バインダー組成物が、500mm(直径)のスランプフローに到達する時間である。t500時間が短ければ短いほど、流動速度は大きくなる。
【0019】
DIN EN 12350−8:2010−12に従うと、さらに、流動速度は粘度の尺度である。t500時間が短ければ短いほど、流動速度は高くなり、そして、無機バインダー組成物の粘度は低くなる。
【0020】
櫛形ポリマーが、本発明に従って用いられる場合、水と混合された無機バインダー組成物は、向上した流動速度及び/又は比較的低い粘度を示す。これは、本発明の櫛形ポリマーの添加後に、その櫛形ポリマーを含まない類似の組成物と比較して、若しくは本発明の櫛形ポリマーではない櫛形ポリマーを含む類似の組成物と比較して、その組成物が比較的速く流れるか、又はその組成物が比較的低い粘度を有することを意味する。
【0021】
本発明の使用及びバインダー含有量に基づいて1wt%の添加レベルの場合において、櫛型ポリマーは、DIN EN 12350−8:2010−12に準拠して測定された無機バインダー組成物の降伏点及び/又はスランプフローに好ましくは影響を与え、、15%未満、とりわけ10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満又は1%未満で影響を与える。これは、無機バインダー組成物のスランプフロー及び/又は降伏点は、本発明の櫛形ポリマーの1wt%の添加の後に、本発明の櫛形ポリマーを含まない類似の組成物のスランプフローから、15%未満、とりわけ10%未満、好ましくは5%未満、特に2%未満又は1%未満だけ外れることを意味する。
【0022】
本発明に従って、側鎖の数平均分子量(M)は、120〜1000g/molである。これに関連して、120〜1000g/molの範囲の分子量を有する側鎖だけでなく、120g/mol未満及び/又は1000g/molを超える分子量を有する側鎖が存在することも可能である。しかし、概して、全ての側鎖の数平均分子量(M)は、常に120〜1000g/molの範囲である。
【0023】
一つの有利な実施態様によれば、最大限の側鎖の数平均分子量は、1000g/mol未満である。この場合、1000g/molを超える数平均分子量を有する側鎖はない。
【0024】
好ましくは、側鎖の数平均分子量(M)は、160〜900g/mol、好ましくは250〜800g/mol、より好ましくは300〜750g/mol、特に400〜600g/mol又は450〜550g/molの範囲である。その場合、流動速度における最適な増加が達成され、そして同時にスランプフローへの影響は最小化される。
【0025】
しかしながら、特定の用途に対して、他の分子量が適している場合もある。
【0026】
現時点で、重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)は、基準としてポリエチレングリコール(PEG)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。この技術は、当業者に知られている。
【0027】
酸性基の側鎖に対するモル比は、とりわけ0.75〜1.7、特に0.8〜1.6、好ましくは0.85〜1.5又は0.9〜1.2の範囲である。
【0028】
有利には、側鎖は、エステル基、エーテル基、アミド基及び/又はイミド基を通じて、主鎖と結合される。エステル基、エーテル基及び/又はアミド基はが好ましく、とりわけエステル基及び/又はエーテル基が好ましい。
【0029】
特に、側鎖は、ポリアルキレンオキシド側鎖を含む。好適には、側鎖の少なくとも50mol%、特に側鎖の少なくとも75mol%、好ましくは側鎖の少なくとも95mol%、とりわけ側鎖の少なくとも98mol%又は100mol%が、ポリアルキレンオキシド側鎖で構成される。
【0030】
そのポリアルキレンオキシド側鎖中のエチレンオキシド単位の割合は、側鎖に存在している全てのアルキレンオキシド単位に基づいて、好ましくは90mol%超、特に95mol%超、好ましくは98mol%超、とりわけ100mol%である。
【0031】
特にポリアルキレンオキシド側鎖は、疎水性基を有さず、とりわけ3つ又はそれ以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドを有さない。
【0032】
エチレンオキシド単位の高い割合、又は低濃度の3つ又はそれ以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドは、望まない空気の侵入リスクを低減する。
【0033】
ポリアルキレンオキシド側鎖は、特に、式−[AO]−Rに従う構造を有する。この式において、特に、AはC〜Cのアルキレンである。Rは、好ましくはH又はC〜C20のアルキル基、シクロへキシル基又はアルキルアリル基である。有利には、nは2〜250である。
【0034】
用語「酸性基」は現時点で、特に、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及び/又はホスホン酸基を包含する。その酸性基はそれぞれ、プロトン化された形態、脱プロトン化された形態(例えばアニオン)、及び/又はカウンターイオン若しくはカチオンを有する塩の形態であってよい。したがって、例えば酸性基は、部分的又は完全に中和された形態であってよい。
【0035】
特に、酸性基は、式−COOM、−SO−OM、−O−PO(OM)及び/又は−PO(OM)に従う構造を有する。非常に好ましい酸性基は、式−COOMに従う構造を有する。ここで各Mは、他のMとは独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価若しくは3価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基である。
【0036】
Mが有機アンモニウム基である場合、有機アンモニウム基は、特にアルキルアミン又はC−ヒドロキシル化アミンに由来し、より好ましくはヒドロキシアルキルアミン、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン若しくはトリエタノールアミンに由来する。
【0037】
櫛形ポリマーの重量平均分子量(M)は、とりわけ5000〜150000g/mol、好ましくは10000〜100000g/molである。櫛形ポリマーの数平均分子量(M)は、有利には3000〜100000g/mol、特に8000〜70000g/molである。
【0038】
その櫛形ポリマーは、好ましくは、以下の構造サブユニットで構成されるか、又は以下の構造サブユニットを含有する:
(a)aモル分率の式(I)の構造サブユニットS1
【化1】
(b)bモル分率の式(II)の構造サブユニットS2
【化2】
(c)随意にcモル分率の式(III)の構造サブユニットS3
【化3】
(d)随意にdモル分率の式(IV)の構造サブユニットS4
【化4】
ここで、Rは、いずれの場合にもその他とは独立に、−COOM、−SO−OM、−O−PO(OM)及び/又は−PO(OM)であり、
、R、R、R、R、R10、R13及びR14は、いずれの場合にも互いに独立に、H又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
、R、R11及びR15は、いずれの場合にも互いに独立に、H、−COOM又は1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mは、その他とは独立に、H、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、2価若しくは3価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基であり、
mは、0、1又は2であり、
pは、0又は1であり、
及びR12は、いずれの場合にも互いに独立に、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基若しくはアルキルアリル基、又は式−[AO]−Rの基であり、
ここで、AはC〜Cのアルキレン、RはH、C〜C20のアルキル基、シクロへキシル基又はアルキルアリル基であり、
かつnは2〜250である、
16は、その他とは独立に、NH、−NR又は−ORNRであり、
ここでR及びRは、互いに独立に、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリル基、アリル基、ヒドロキシアルキル基、アセトキシエチル基(CH−CO−O−CH−CH)、ヒドロキシイソプロピル基(HO−CH(CH)−CH−)又はアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)である;
又はR及びRは、モルホリン環若しくはイミダゾリン環を構成するために、Nを一部有する環を互いに形成する;
は、C〜Cのアルキレン基であり、
及びRは、互いに独立にそれぞれ、C〜C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリル基若しくはアリル基又はヒドロキシアルキル基であり、
そして、ここでa、b、c及びdは、各構造サブユニットS1、S2、S3及びS4のモル分率であり、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.8)、特にa/b/c/d=(0.3〜0.7)/(0.2〜0.7)/(0〜0.6)/(0〜0.4)、好ましくはa/b/c/d=(0.4〜0.7)/(0.3〜0.6)/(0.001〜0.005)/0であり、かつa+b+c+d=1である。
【0039】
一連の構造サブユニットS1、S2、S3及びS4は、交互、ブロック状又はランダムであってよい。さらに、構造サブユニットS1、S2、S3及びS4に加えて更なる構造サブユニットを有することも可能である。
【0040】
構造サブユニットS1、S2、S3及びS4は互いに、櫛型ポリマーの全重量の、好ましくは少なくとも50wt%、特に少なくとも90wt%、より好ましくは少なくとも95wt%の重量比を有する。
【0041】
a/(b+c+d)の比は、特に0.5〜2の範囲であり、好ましくは0.75〜1.7、とりわけ0.8〜1.6、より好ましくは0.85〜1.5又は0.9〜1.2である。
【0042】
櫛形ポリマーにおいて、特に、RはCOOM、RはH又はCH、そしてR=R=Hである。したがって、その櫛形ポリマーは、アクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーに基づいて調製することができ、これは、経済的観念から有利である。さらに、このような櫛形ポリマーを用いて、本明細書において、粘度における効果的な低減が行われる。
【0043】
さらに、R=COOM、R=H、R=H、そしてR=COOMである、櫛形ポリマーが有利である。そのような櫛形ポリマーは、メタクリル酸モノマーに基づいて調製することができる。
【0044】
有利には、RはH又はCH、そしてR=R=Hである。このような櫛形ポリマーは、例えば(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、(メタ)アリルエーテル又はイソプレノールエーテルを出発物質として調製することができる。
【0045】
S3を有する場合、特にRはH又はCH、そしてR10=R11=Hである。
【0046】
S4を有する場合、特にR13はH又はCH、そしてR14=R15=Hである。
【0047】
非常に有利には、R及びRは、HとCHとの混合である。その場合、好ましくは、40〜60mol%のHと、40〜60mol%の−CHとの混合である。対応する構造サブユニットを有する場合、これは特に、R及びR13にも当てはまる。好ましくは、さらにR及びRはHであり、そして、対応する構造サブユニットを有する場合、R及びR13はHである。
【0048】
さらに有利な実施態様によれば、RはCOOM、R=H、R=−CH、そしてR=R=R=R=Hである。
【0049】
その他に有利な実施態様について言えば、RはCOOM、R=R=H又は−CH、そしてR=R=R=R=Hである。
【0050】
特に、R及び/又はR12は、−[AO]−R、そして、好ましくはAはCのアルキレンであり、かつ/又はRはH又はCのアルキル基である。有利には、nは2〜30、特にnは5〜23、好ましくはnは8〜22、とりわけnは10〜15である。
【0051】
特に、mは0であり、かつpは1である。さらに有利には、mは1又は2、かつpは0であり、そして、特にRは−CHである。
【0052】
特に好ましい櫛形ポリマーに関して:
(a)RはCOOM;
(b)R及びRは、互いに独立に、H、−CH又はそれらの混合である。
非常に有利には、R及びRは、H及びCHの混合である。その場合に好適なのは、40〜60mol%のHと、40〜60mol%の−CHとの混合によって与えられる。構造サブユニットS3及び/又はS4を有する場合、これは特に、R及びR13にも当てはまる。
(c)R及びRは、Hである。構造サブユニットS3及び/又はS4を有する場合、これは特に、R10及び/又はR14にも当てはまる。
(d)R及びRは、互いに独立に、H又は−COOM、好ましくはHである。構造サブユニットS3及び/又はS4を有する場合、これは特に、R11及びR15にも当てはまる。
(e)Rは、−[AO]−Rであり、そして好ましくは、AはCのアルキレン基、かつ/又はRはH又はCのアルキル基である。有利には、nは2〜30、特にnは5〜23、好ましくはnは8〜22、とりわけnは10〜15である。構造サブユニットS3を有する場合、これは特に、R12にも当てはまる。
(f)mは0であり、かつpは1である。
【0053】
無機バインダー組成物は、特に、処理加工可能であり、かつ/又は水性の無機バインダー組成物である。
【0054】
無機バインダー組成物は、少なくとも1つの無機バインダーを含む。「無機バインダー」との表現は、特に、水の存在下で、水和反応において反応して、固体水和物又は水和物の相を与える、バインダーを意味する。これは、例えば水硬性のバインダー(例えば、セメント若しくは水硬性石灰)、潜在水硬性のバインダー(例えばスラグ)、ポゾランバインダー(例えばフライアッシュ)又は非水硬性のバインダー(石膏若しくはしっくい)であってよい。
【0055】
無機バインダー又はバインダー組成物は、特に、水硬性のバインダー、好ましくはセメントを含む。特に好ましくは、セメントクリンカーの割合が35wt%以上有するセメントである。特に、そのセメントは、CEM I型、CEM II型及び/又はCEM III型、CEM IV型又はCEM V型(規格EN 197−1に準拠)である。全体の無機バインダーの割合として、水硬性のバインダーの割合は、有利には、少なくとも5wt%、特に少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも35wt%、とりわけ少なくとも65wt%である。さらに有利な実施態様によれば、無機バインダーは、約95wt%以上の水硬性のバインダー、特に約95wt%以上のセメントクリンカーを含む。
【0056】
無機バインダー若しくは無機バインダー組成物が、その他のバインダーで構成されるか、又はその他のバインダーを含む場合にも有利となり得る。これらは、特に、潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダーである。適切な潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダーの例として、スラグ、フライアッシュ及び/又はシリカダストが挙げられる。バインダー組成物は、不活性物質、例えばライムストーン、微粉砕クォーツ及び/又は色素を含んでもよい。1つの有利な実施態様において、無機バインダーは、5〜95wt%、特に5〜65wt%、より好ましくは15〜35wt%の潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダーを含む。有利な潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダーは、スラグ及び/又はフライアッシュである。
【0057】
特に好ましい実施態様において、無機バインダーは、水硬性のバインダー、特にセメント若しくはセメントクリンカー、並びに潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダー、好ましくはスラグ及び/又はフライアッシュを含む。潜在水硬性のバインダー及び/又はポゾランバインダーの割合は、この場合において、水硬性のバインダーの、好ましくは5〜65wt%、より好ましくは15〜35wt%、一方で少なくとも35wt%、特に少なくとも65wt%である。
【0058】
無機バインダー組成物は、好ましくはモルタル組成物又はコンクリート組成物、特に自己充填コンクリートである。無機バインダー組成物は、特に加工処理可能であり、かつ/又は水と混合される無機バインダー組成物である。
【0059】
無機バインダー組成物における水のバインダーに対する重量比は、より好ましくは0.25〜0.7の範囲であり、特に0.26〜0.65、好ましくは0.27〜0.60、とりわけ0.28〜0.55の範囲である。
【0060】
櫛形ポリマーは、有利には、バインダー含有物に基づいて、0.01〜10wt%、特に0.1〜7wt%又は0.2〜5wt%の割合で用いられる。
【0061】
特に、無機バインダー組成物は、細粒材を含み、好ましくは350kg/mより大きく、特に400〜600kg/mの割合を有する細粒材を含む。この場合におけるセメント含有量は、特に320〜380kg/mである。
【0062】
細粒材は、特に、フライアッシュ、メタカオリン、シリカダスト及び/又は不活性な微粉砕石を含む。
【0063】
特に、細粒材は、セメントと同じくらい微細である。特に、レーザー粒度分布によって測定される、細粒材の最大粒子直径は、例えば0.125mm以下である。
【0064】
その細粒材のブレーン粉末度(Blaine fineness)は、好ましくは、少なくとも1000cm/g、特に少なくとも1500cm/g、好ましくは少なくとも2500cm/g、より好ましくは3500cm/g又は少なくとも5000cm/gである。
【0065】
さらなる態様において、本発明は、組成物に関し、特に、少なくとも1つの上記記載の櫛形ポリマー、及び無機バインダーを含む、モルタル組成物、コンクリート組成物又はセメント系組成物に関する。その無機バインダーは、好ましくは水硬性のバインダー、特にセメント、好ましくはポートランドセメントである。
【0066】
その組成物は、特に自己充填コンクリート組成物である。
【0067】
櫛形ポリマーは、有利には、バインダー含有量に基づいて、0.01〜10wt%、特に0.1〜7wt%又は0.2〜5wt%の割合を有する。
【0068】
特に、その組成物は、細粒材を含み、好ましくは350kg/mより大きく、特に400〜600kg/mの割合を有する細粒材を含む。この場合において、セメント含有量は、特に320〜380kg/mである。
【0069】
さらなる態様は、水の添加後に、上記記載の組成物、特に自己充填コンクリートを硬化させることによって得ることができる成形体に関する。
【0070】
用いられる櫛形ポリマーは、従来の方法で調製することができる。
【0071】
上記記載の櫛形ポリマーを調製するために、「ポリマー類似プロセス」として以下にも確認される第1のプロセスは、次の工程を含む:
(a)式Vの構造単位で構成されているか、又は式Vの構造単位を含むベースポリマーBPを与えること及び/又は調製すること
【化5】
ここで、M、R、R、R及びRは、上記に定義した通りであり、Rは特に−COOM、そしてm>2、特にm=20〜100である;
(b)式VIの化合物を用いてベースポリマーBPをエステル化して、櫛型ポリマーCPを得ること
HO−R (VI)
(c)随意に、式VIIの化合物を用いてベースポリマーBPをアミド化して、櫛型ポリマーCPを得ること
N−R12 (VII)
(d)随意に、式VIIIの化合物を用いてベースポリマーBPをアミド化及び/又はエステル化して、櫛型ポリマーCPを得ること
H−R16 (VIII)
ここで、R、R12及びR16は、上記に定義した通りである。
【0072】
工程(a)におけるベースポリマーBPは、特に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及び/又はアクリル酸とメタクリル酸のコポリマーである。式(V)のベースポリマーBPの数平均分子量(M)は、特に、500〜20000g/mol、とりわけ500〜10000g/mol、好ましくは3000〜6000g/molである。
【0073】
このようなベースポリマーBPは、アクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマーから従来の方法で調製することができる。しかし、例えばマレイン酸モノマー及び/又は無水マレイン酸モノマーを使用することも可能である。これは、それらの経済性及び安全性を含む観点から有利となり得る。
【0074】
ベースポリマーBPは、工程(a)において調製され、特に、例えばラジカル開始剤及び/又は連鎖移動剤の存在下、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の水性ラジカル重合によって調製される。
【0075】
工程(a)におけるラジカル開始剤は、特に、Na−、K−又はペルオキソ二硫酸アンモニウムを含む。さらに、工程(a)におけるラジカル開始剤として好適なのは、例えばH/Fe2+系レドックス対である。
【0076】
工程(a)における連鎖移動剤は、好ましくは、アルカリ金属亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩である。さらに有利なのは、ホスフィン酸誘導体である。工程(a)における連鎖移動剤は、チオール基を含む有機化合物であってもよい。
【0077】
対応するベースポリマーBPは、原理上、様々なサプライヤーから商業的に得ることもできる。
【0078】
工程(b)におけるエステル化のために加えることができる共通の化合物は、例えば触媒として、酸及び/又は塩基である。エステル化は、有利には、120〜200℃、特に160〜180℃の昇温条件で行われる。このようにして、有意に収率を改善することが可能である。
【0079】
工程(b)において用いられる、式V、VI及びVIIの化合物は、様々なサプライヤーから商業的に入手可能である。
【0080】
上記記載の櫛形ポリマーを調製するために、「共重合プロセス」として以下にも確認される第2のプロセスは、次の共重合を含む:
aモル分率の式IXのモノマーM1
【化6】
bモル分率の式XのモノマーM2
【化7】
随意に、cモル分率の式XIのモノマーM3
【化8】
随意に、dモル分率の式XIIのモノマーM4
【化9】
ここで、a、b、c及びdは、それぞれM1、M2、M3及びM4のモル分率を示しており、
a、b、c、d、M、R〜R16、m及びpは上記に定義した通りである。
【0081】
モノマーM2、M3及びM4は、式VI、VII若しくはVIII(上記参照)を用いてアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸のエステル化又はアミド化によって、従来の方法で調製することができる。
【0082】
共重合又は第2のプロセスに関して、第1のプロセスに関連してすでに上記に述べている、ラジカル開始剤及び/又は連鎖移動剤を使用することが可能である。
【実施例】
【0083】
1.測定方法
分子量の決定は、水性の溶離液を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーによって行った。厳密に校正したポリエチレングリコール標準物質を、校正に役立てた。用いた溶離液は、pH12の0.1Mの硝酸ナトリウム溶液であった。アイソクラチック流速は0.8ml/minであった。IGPCカラム:Varian Ultrahydrogel 7.8×300mm。Varian RI−4示差屈折計及びWaters SAT/IN Module紫外線検出器を用いて、ピークを定量化した。
【0084】
2.用いた原料
用いた出発原料は、以下の通りである:
−アクリル酸及びメタクリル酸単位(モル比1:1)で構成されるポリカルボン酸を用いた。そのポリカルボン酸は、公知の調製手順に従って、ラジカル重合によって調製した。用いたポリカルボン酸の平均モル質量は、5000g/molである。
−MPEG 500:平均モル質量が500g/molであるポリエチレングリコールモノメチルエーテル。エチレンオキシド(EO)含有量:〜11 EO基/mol。
【0085】
3.櫛形ポリマーの調製例
構造サブユニットS1、S2及びS3が約0.5/0.5/0.002のモル比で構成される櫛形ポリマーCP−1は、MPEG 500を用いて、約5000g/molのモル質量を有するポリカルボン酸のポリマー類似エステル化によって調製した。酸性基に基づくエステル化度:50%。
【0086】
メカニカルスターラ―、温度計、ガス導入チューブ及び蒸留管を取り付けた、2Lの容量を有する4つ口丸底フラスコを、340gのポリカルボン酸の水溶液(50wt%)で満たした。続いて、50℃まで加熱を行った後、500gのMPEG 500をすばやく加えて、そしてその混合物を窒素化で、45分間にわたって165℃まで加熱し、そして165℃で30分間維持した。その後、50%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液を4g加えて、そして続いて80mbarの減圧の同時適用とともに、180℃まで昇温させた。その後、この反応溶液を4時間にわたって180℃で維持し、その間内圧を70mbarまで落とした。
【0087】
90℃まで冷却を行った後、400gの溶解物を、400gの水にかき混ぜながら入れることによって、澄明な液に変えた。固体含有量:49.9%。
【0088】
4. 生コンクリートの試験
4.1 参照試料の調製
ポートランドセメント(CEM I、42.5;325kg/m)、スラグ(150kg/m)、Sikafume(25kg/m)及び骨材(0〜16mm)を、60秒間ミキサーでドライミックスすることによって、参照試料R1を調製した。その後、溶液中に従来の流動化剤(バインダー含有量に基づいて、2.5wt%)を含む、混合水(w/c=0.32)を加えて、そして生コンクリート組成物を3分間さらに機械的に混合した。
【0089】
用いた従来の流動化剤は、ポリエチレングリコール側鎖を有するポリカルボキシレート櫛形ポリマーである。側鎖の重量平均分子量は、約2000g/molであり、そして酸性基の側鎖に対するモル比は、約4.4である。
【0090】
4.2 櫛形ポリマーCP−1を有する生コンクリート試料の調製
試料P1は、参照試料と同様な方法で調製した。しかし、従来の流動化剤に加えて、1wt%(バインダー含有量に基づく)の櫛形ポリマーCP−1を混合水に溶解させ、そして生コンクリート組成物へ混合させた。
【0091】
4.3 生コンクリートの特性
櫛形ポリマーCP−1を有さない生コンクリート組成物(試料R1)及び櫛形ポリマーCP−1を有する生コンクリート組成物(試料P1)の流動挙動は、DIN EN 12350−8:2010−12に準拠したスランプフロー試験で決定し、そして、DIN EN 12350−9:2010−12に準拠したフローカップを用いて、混合後に直ちに行った。
【0092】
表1にその結果の概略を示す。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に記載のt500時間及びフロー時間から、特に、櫛型ポリマーCP−1のさらなる添加は、生コンクリート組成物の粘度を著しく低減し、そして流動速度を増加させることがわかる。さらに、これは、スランプフロー又は降伏点への影響なしに達成される。
【0095】
そのため、目標とする方法でCP−1を用いて、粘度又は流動速度を制御することが可能である。
【0096】
上記に記載された実施態様は、あくまで単に説明に役立つ例として理解され、本発明の範囲内において所望の方法に改変することができる。