【文献】
M. Robert-de-Saint-Vincent et al.,Anisotropic 2D Diffusive Expansion of Ultracold Atoms in a Disordered Potential,Phys. Rev. Lett.,米国,APS,2010年 6月 2日,Vol. 104, No. 22,220602-1 - 220602-4
【文献】
武田俊太郎, 外7名,超高速量子シミュレーターの実現に向けた 87Rb 原子のunit filling モット絶縁体の生成,日本物理学会 第72 回年次大会(2017 年)概要集,日本,2017年 3月17日,19pB22-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記擬似スペックルパターン生成装置が、前記空間光変調器から出力された光を入力して擬似スペックルパターンを前記チャンバーの内部において結像する結像光学系を更に含む、
請求項1または2に記載の量子シミュレータ。
チャンバーの窓部から前記チャンバーの内部へ入射させた光により前記チャンバーの内部において擬似スペックルパターンを擬似スペックルパターン生成装置により生成させる擬似スペックルパターン生成ステップと、
前記チャンバーの内部において前記擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出装置により検出する検出ステップと、
を含み、
前記擬似スペックルパターン生成ステップにおいて、
設定可能な強度の変調分布を有する空間光変調器を用い、
生成すべき擬似スペックルパターンの光強度統計分布に応じた統計分布を有する擬似乱数パターンのフーリエ変換を第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンの自己相関関数に応じた相関関数のフーリエ変換の平方根のパターンを第2パターンとして、前記第1パターンと前記第2パターンとの積の逆フーリエ変換のパターンに基づく前記変調分布を前記空間光変調器に設定し、
光源から出力された光を前記変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を擬似スペックルパターンとして出力する、
量子シミュレーション方法。
チャンバーの窓部から前記チャンバーの内部へ入射させた光により前記チャンバーの内部において擬似スペックルパターンを擬似スペックルパターン生成装置により生成させる擬似スペックルパターン生成ステップと、
前記チャンバーの内部において前記擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出装置により検出する検出ステップと、
を含み、
前記擬似スペックルパターン生成ステップにおいて、
設定可能な強度の変調分布を有する空間光変調器を用い、
生成すべき擬似スペックルパターンの光強度統計分布に応じた統計分布を有する擬似乱数パターンを第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンの自己相関関数に応じた相関関数のフーリエ変換の平方根の逆フーリエ変換のパターンを第2パターンとして、前記第1パターンと前記第2パターンとの畳み込み積分のパターンに基づく前記変調分布を前記空間光変調器に設定し、
光源から出力された光を前記変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を擬似スペックルパターンとして出力する、
量子シミュレーション方法。
前記擬似スペックルパターン生成ステップにおいて、前記空間光変調器から出力された光を入力する結像光学系を用いて、擬似スペックルパターンを前記チャンバーの内部において結像する、
請求項8または9に記載の量子シミュレーション方法。
チャンバーの窓部から前記チャンバーの内部へ入射させた光により前記チャンバーの内部において擬似スペックルパターンを擬似スペックルパターン生成装置により生成させる擬似スペックルパターン生成ステップと、
前記チャンバーの内部において前記擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出装置により検出する検出ステップと、
を含み、
前記擬似スペックルパターン生成ステップにおいて、
設定可能な位相の変調分布を有する空間光変調器を用い、
生成すべき擬似スペックルパターンの光強度統計分布に応じた統計分布を有する擬似乱数パターンのフーリエ変換を第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンの自己相関関数に応じた相関関数のフーリエ変換の平方根のパターンを第2パターンとして、前記第1パターンと前記第2パターンとの積の逆フーリエ変換のパターンに基づく前記変調分布を前記空間光変調器に設定し、
光源から出力された光を前記変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力し、
前記空間光変調器から出力された光を入力する再生光学系により、擬似スペックルパターンを前記チャンバーの内部において再生する、
量子シミュレーション方法。
チャンバーの窓部から前記チャンバーの内部へ入射させた光により前記チャンバーの内部において擬似スペックルパターンを擬似スペックルパターン生成装置により生成させる擬似スペックルパターン生成ステップと、
前記チャンバーの内部において前記擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出装置により検出する検出ステップと、
を含み、
前記擬似スペックルパターン生成ステップにおいて、
設定可能な位相の変調分布を有する空間光変調器を用い、
生成すべき擬似スペックルパターンの光強度統計分布に応じた統計分布を有する擬似乱数パターンを第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンの自己相関関数に応じた相関関数のフーリエ変換の平方根の逆フーリエ変換のパターンを第2パターンとして、前記第1パターンと前記第2パターンとの畳み込み積分のパターンに基づく前記変調分布を前記空間光変調器に設定し、
光源から出力された光を前記変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力し、
前記空間光変調器から出力された光を入力する再生光学系により、擬似スペックルパターンを前記チャンバーの内部において再生する、
量子シミュレーション方法。
前記チャンバーの内部へ原子ガス供給装置により原子ガスを供給する原子ガス供給ステップを更に有する請求項8〜12の何れか1項に記載の量子シミュレーション方法。
前記チャンバーの内部の原子を捕捉する光ビームを光ビーム発生装置により発生させ、その光ビームを前記窓部から前記チャンバーの内部へ入射させる光ビーム発生ステップを更に有する請求項8〜13の何れか1項に記載の量子シミュレーション方法。
【背景技術】
【0002】
原子レベルのミクロな領域での物質の挙動は量子力学に従っていることが知られている。このようなミクロな領域での現象は、その距離スケールが現実世界のスケールと大きくかけ離れていることもあって、我々の目に直接触れる形で現れることは多くない。しかし、近年の科学技術の発展に伴い、量子力学的効果を利用する有効な技術が生み出されてきている。例えば、超電導、通信用素子、薬剤開発、新機能物質(特殊な電気伝導物質や強力な磁石など)など、その応用範囲は広範囲に亘っており、量子の挙動を知ることは新たな技術を生み出すための第一歩として、重要となりつつある。
【0003】
現実の物質内において、上記のような量子力学的効果は、多数の粒子が互いに相互作用を及ぼし合いながら生み出されている。このような状況でも量子力学によって現象を記述することは原理的には可能なはずであるが、複数の粒子からなる量子力学(量子多体問題)は極めて複雑であり、理論的・数値的にその挙動を予言することは、現実の系から大きく乖離した理想形を除いて、現実的には不可能といっていい。
【0004】
量子シミュレータは、このような複雑な量子力学的多体問題を研究するための手法として、近年注目を集めている。量子シミュレータでは、研究対象が持つ物理的特徴を備えたモデル系を準備して、そのモデルを実際に動かして如何なる現象が起こるかを観測する。たとえば、結晶中での量子力学的現象を研究する場合には、適当な原子を結晶構造に応じた空間配置に従って配列したモデル系を準備する。現実の結晶では原子間隔が小さく、その挙動を追うことは困難であるが、原子をマイクロメートル程度の間隔で配列することで、量子現象を制御および観測しやすいサイズのモデル系を構築することができる。
【0005】
量子シミュレータは、配列された原子の位置を制御したり、配列された各原子に何らかの刺激を与えたりすることにより、系全体に現れる影響を検出することができる。量子シミュレータにおいて原子を配列する手段として、光を集光して当該集光位置に原子を捕捉する光トラップ技術が用いられる。また、量子シミュレータにおいて原子に刺激を与える手段としては、所定の形状を持つ光パターンを生成し、配列された原子に照射する技術が用いられる。同条件下での検出プロセスを複数回数くり返すことで、例えば解析に重要な電子の存在確率を知ることができるため、原子を配列する手段および原子に刺激を与える両手段において、優れた制御性および再現性が求められる。
【0006】
現実の結晶における原子の配列は完全に周期的ではなく、部分的な欠落や歪みによる結晶欠陥の存在や、不純物の混入などにより、不規則な要素が存在する。さらに、有限温度領域では結晶中の原子は無秩序な力(熱振動)の作用を受けている。これら欠陥、不純物、熱振動等の不規則性は、電気伝導や光学特性などにも大きな影響を与えていることから、現実の物質の挙動を調べる上で無視できない要素となっている。したがって、不規則な複数の位置に原子を補足する、あるいは無秩序な熱振動による刺激を再現するために、不規則な光強度分布を生成する手段を確立することは、量子シミュレータによって現実の物質を調べる機能を実現する上で重要となっている。
【0007】
光トラップ技術において規則正しく配列された複数の位置に原子を捕捉する場合には、二光束を互いに干渉させて一方向の周期的な光の明暗の干渉縞を形成したり、干渉縞を三方向に重畳して形成することで三方向の周期的な明暗分布を形成したりする。後者の場合、単純な結晶構造である「単純立方格子」を再現することができる。また、近年では、計算機ホログラムを利用して様々な原子配列を再現することが試みられており、自然界の様々な結晶構造を模して原子を配列することが可能となってきている。
【0008】
光トラップ技術において不規則な複数の位置に原子を捕捉する場合、あるいは原子集団に無秩序な力場を与える場合には、非特許文献1〜4に記載されているように、ディフューザ(散乱媒体)およびレンズを用いてスペックルパターンを生成し、捕捉対象の原子に応じて適切に光波長を選択することで、スペックルパターンにおいて輝度が高い位置もしくは輝度が低い位置に原子を補足する、あるいはスペックルパターンによって形成される無秩序な力場の作用を与えることができる。以下では、輝度が高い位置に原子を捕捉した場合について記載する。また、非特許文献5,6には、ディフューザおよびレンズを用いてスペックルパターンを生成する技術が記載されている。非特許文献7には、空間光変調器およびレンズを用いてスペックルパターンを生成する技術が記載されている。
【0009】
なお、スペックルパターンは、レーザ光などのコヒーレントな光が拡散板等のディフューザにより散乱されたときに当該散乱光の多重干渉により生成されるものである。スペックルパターンにおける光強度の空間分布が乱数パターンに近い性質を有していることから、スペックルパターンは、干渉技術、超解像技術および光計測技術などにおいて利用され、また、最近では原子や粒子コロイドのトラップ等の光操作技術においても利用されている。
【0010】
スペックルパターンは、空間構造および光強度統計分布により特徴付けられる。空間構造は、スペックルパターンの自己相関関数の空間的形状により表され、光学系の点像分布を示す。光強度統計分布は、スペックルパターンにおける光強度のヒストグラムにより表され、指数分布に従う。なお、擬似乱数を2次元配列した2次元擬似乱数パターンの空間構造(自己相関関数)はデルタ関数で近似される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
先ず、量子シミュレータおよび量子シミュレーション方法の実施形態について説明し、量子シミュレータの動作例および量子シミュレーション方法の一例について説明する。これらの要部である擬似スペックル生成装置および擬似スペックル生成方法の実施形態については、その後に詳細を説明する。
【0030】
図1は、本実施形態の量子シミュレータ100の構成を示す図である。量子シミュレータ100は、擬似スペックルパターン生成装置1、主真空槽(チャンバー)2、原子ガス供給装置3、光ビーム発生装置4、光検出装置5および原子数検出装置6を備える。
【0031】
主真空槽(チャンバー)2は、外部と内部との間で光を透過させる窓部(第1窓部21および第2窓部22)を有する。第1窓部21は光ビーム発生装置4と光学的に接続されている。第2窓部22は擬似スペックルパターン生成装置1と光学的に接続されている。なお、第1窓部と第2窓部とは共通の窓部によって構成されていてもよい。主真空槽2は、真空排気系により内部の気体を排気するための排気用開口23を有し、ポンプによる排気やゲッターによるガスの吸着などによって内部を超高真空の状態に維持することができる。主真空槽2は、原子ガス供給装置3から供給される原子ガスを内部に導入するための原子ガス導入用開口24を有する。また、主真空槽2は、光と磁場の作用により原子を捕捉するためのMOT用磁気回路を含む。MOTとは「Magneto-Optical Trap」の略語であり、光と磁場の作用により原子集団を捕捉する技術である。
【0032】
原子ガス供給装置3は、主真空槽2の内部へ原子ガスを供給する。原子ガス供給装置3は、真空ガラスセルの内部または周辺に配置された、所望の金属原子あるいは所望の原子を含む化合物などを加熱して気体状の原子を発生するヒータ、および、電流を加えることにより磁場を生成するコイルなどを有する磁気回路を含む。原子ガス供給装置3は、ヒータにより金属原子を加熱して原子ガスを生成し、真空ガラスセルに照射したレーザ光の光圧および光と磁場の作用により金属ガスを捕捉する。そして、原子ガス供給装置3は、その捕捉した原子ガスを別のレーザ光の照射による光圧で所定の位置に輸送して、主真空槽2の原子ガス導入用開口24から主真空槽2の内部へ原子ガスを供給する。
【0033】
光ビーム発生装置4は、第1窓部21から主真空槽2の内部へ入射して主真空槽2の内部の原子を捕捉する光ビームを発生させる。光ビーム発生装置4から第1窓部21を経て主真空槽2の内部に入射される光ビームはレーザ光であるのが好適である。このレーザ光の光圧および光と磁場の作用により主真空槽2の内部の原子を捕捉する。また、その捕捉した原子を他のレーザ光の光圧により所定の位置に輸送または配列する。更に他のレーザ光および電波発生源からの電波により原子を励起してもよい。光ビーム発生装置4は、これらのレーザ光を発生させ、また、電波をも発生させる。
【0034】
擬似スペックルパターン生成装置1は、第2窓部22から主真空槽2の内部へ入射させた光により主真空槽2の内部において擬似スペックルパターンを生成する。擬似スペックルパターン生成装置1は、制御部10、光源11、ビームエキスパンダ12、空間光変調器15およびレンズ16を含む。
【0035】
光源11は、光を出力する。ビームエキスパンダ12は、光源11と光学的に接続され、光源11から出力される光のビーム径を拡大して出力する。空間光変調器15は、位相変調型のものであって、設定可能な位相の変調分布を有する。空間光変調器15は、ビームエキスパンダ12と光学的に接続され、光源11から出力されてビームエキスパンダ12によりビーム径を拡大された光を入力し、その入力した光を変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力する。
【0036】
レンズ16は、空間光変調器15と光学的に接続され、好適には高NAを有する対物レンズである。レンズ16は、空間光変調器15から出力された光を入力して、その光を第2窓部22から主真空槽2の内部へ入射させる。レンズ16は、主真空槽2の内部へ入射させた光により主真空槽2の内部において擬似スペックルパターンを再生する再生光学系である。制御部10は、2次元擬似乱数パターンに基づいて(好適には更に相関関数にも基づいて)得られる計算機ホログラムを空間光変調器15の変調分布として設定する。擬似スペックルパターン生成装置1の詳細については後述する。
【0037】
空間光変調器15とレンズ16との間の光路上にダイクロイックミラー51が挿入されている。ダイクロイックミラー51は、光源11から出力される光を透過させ、主真空槽2の内部の原子で発生する蛍光等の光を透過させる。光検出装置5は、主真空槽2の内部の原子で発生する蛍光等の光のうち第2窓部22を透過してダイクロイックミラー51で反射された光を受光する。光検出装置5は、受光した光の強度を検出してもよいし、受光した光のスペクトル(例えば蛍光スペクトルや吸収スペクトル)を検出してもよい。また、光検出装置5は、これらの2次元画像を検出することができるCCDカメラであってもよい。
【0038】
原子数検出装置6は、主真空槽2の内部に設けられたイオン化電極61およびイオン検出器62を含む。原子数検出装置6は、イオン化電極61が形成する電場、もしくは適当な波長を有するひとつ以上のパルス光を外部から照射することにより、所定の状態にある原子をイオン化させ、そのイオンの個数をイオン検出器62により計数する。光検出装置5および原子数検出装置6それぞれは、イオン化条件を変化させながら生成イオン数を計測することにより、主真空槽2の内部において擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出することができる。
【0039】
本実施形態の量子シミュレーション方法は、上記のような構成を有する量子シミュレータ100を用いて行われるものであり、原子ガス供給ステップ、光ビーム発生ステップ、擬似スペックルパターン生成ステップおよび検出ステップを含む。
【0040】
原子ガス供給ステップでは、真空状態とされた主真空槽2の内部へ原子ガス供給装置3により原子ガスを供給する。光ビーム発生ステップでは、主真空槽2の内部の原子を捕捉する光ビームを光ビーム発生装置4により発生させ、その光ビームを第1窓部21から主真空槽2の内部へ入射させる。この光ビーム照射により、原子を捕捉し、原子を輸送または配列し、または、原子を励起する。
【0041】
擬似スペックルパターン生成ステップでは、擬似スペックルパターン生成装置1により、第2窓部22から主真空槽2の内部へ入射させた光により主真空槽2の内部において擬似スペックルパターンを生成させる。この擬似スペックルパターン生成ステップでは、設定可能な位相の変調分布を有する空間光変調器15により、光源11から出力されてビームエキスパンダ12によりビーム径を拡大された光を変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力する。そして、空間光変調器15から出力された光を入力するレンズ16により、擬似スペックルパターンを主真空槽2の内部において再生する。また、制御部10により、2次元擬似乱数パターンに基づいて(好適には更に相関関数にも基づいて)得られる計算機ホログラムを空間光変調器15の変調分布として設定する。
【0042】
検出ステップでは、主真空槽2の内部において擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出装置(光検出装置5または原子数検出装置6)により検出する。擬似スペックルパターン生成後から検出までの時間差を変化させながら検出することで、擬似スペックルパターンの生成が原子に与える影響を検出することができる。
【0043】
測定手段としては以下の3つの態様が可能である。測定手段1では、原子ガス供給装置3により主真空槽2の内部に供給された原子を光ビーム発生装置4により規則性の有無を問わず配列させ、その原子の状態を光検出装置5または原子数検出装置6により測定する。測定手段2は、原子ガス供給装置3により主真空槽2の内部に供給された原子を光ビーム発生装置4により規則性の有無を問わず配列させ、擬似スペックルパターン生成装置1による擬似スペックルパターンの照射により原子に刺激を与え、所定時間が経過した後に原子の状態を光検出装置5または原子数検出装置6により測定する。また、測定手段3では、原子ガス供給装置3により主真空槽2の内部に供給された原子を光ビーム発生装置4により規則性の有無を問わず配列させ、擬似スペックルパターン生成装置1による擬似スペックルパターンの照射により原子を不規則に再配列させ、その再配列後の原子の状態を光検出装置5または原子数検出装置6により測定する。
【0044】
計測値としては以下の2つが可能である。計測値1は、光検出装置5による蛍光スペクトルまたは吸収スペクトルの計測値である。計測値2は、原子数検出装置6によるイオン数の計測値である。
【0045】
測定対象としては以下の4つの態様が可能である。測定対象1は、原子ガス供給装置3により供給された原子集団そのままである。測定対象2は、主真空槽2の内部に設けられたイオン化電極61によりイオン化された原子のイオン集団である。測定対象3はボーズアインシュタイン凝縮体(BEC: Bose-Einstein Condensation)である。BECは、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部に導入された原子の補足の為のレーザ光の強度を徐々に弱くしたときに運動量の小さい原子のみを選択的に捕捉(蒸発冷却)することで生成される。測定対象4はリュードベリ原子(Rydbergatom)集団である。リュードベリ原子は、原子種に応じて適切に選択した1つ以上の波長のレーザ光または適切に選択した1つ以上の周波数の電波を光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部の原子に対して多段階に照射することで生成され、電子が主量子数10以上の軌道に励起された高励起状態の原子である。
【0046】
測定対象に対する光学操作としては以下の2つの態様が可能である。光学操作1は、光の定在波による光の格子パターンに基づく測定対象の操作である。光学操作2は、ホログラムの再生による光パターンに基づく測定対象の操作である。これらは、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部に入射される光ビームにより行われる。
【0047】
測定対象に対する配列手段としては以下の7つの態様が可能である。配列手段1は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させる。配列手段2は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた状態を維持し、別のレーザ光の照射による光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。配列手段3は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた後にMOTを中断して、別のレーザ光の照射による光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。配列手段4は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた状態を維持し、別のレーザ光の照射に光学操作1を施した光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。配列手段5は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた後にMOTを中断して、別のレーザ光の照射に光学操作1を施した光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。配列手段6は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた状態を維持し、別のレーザ光の照射に光学操作2を施した光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。配列手段7は、主真空槽2の内部においてMOTにより測定対象を配列させた後にMOTを中断して、別のレーザ光の照射に光学操作2を施した光圧で測定対象を所定の位置に配列させる。
【0048】
本実施形態の量子シミュレータ100および量子シミュレーション方法では、これらの測定手段1〜3、計測値1,2、測定対象1〜4、光学操作1,2および配列手段1〜7を様々に組み合わせることにより、結晶構造の特徴を表すモデルを構築して、その結晶構造を研究することができる。すなわち、原子ガス供給ステップでは、原子ガス供給装置3から主真空槽2の内部へ原子ガスを供給し、光ビーム発生ステップでは、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部へ光ビームを照射して、配列手段1〜7の何れかにより主真空槽2の内部の原子を配列させる。また、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部へ光ビームまたは電波を照射して、その配列させた原子を測定対象1〜4の何れかに転化する。その後、擬似スペックルパターン生成ステップでは、擬似スペックルパターン生成装置1により、主真空槽2の内部に擬似スペックルパターンを生成して、主真空槽2の内部の原子を再配列させたり揺らぎを与えたりする。そして、検出ステップでは、光検出装置5または原子数検出装置6を用いて、測定手段1〜3の何れかにより、計測値1,2の何れかを取得する。これにより、無秩序性が測定対象または測定対象の配列に与える影響を解明することができる。
【0049】
より具体的な量子シミュレータ100の動作の一例および量子シミュレーション方法の一例は以下のとおりである。
図2は、量子シミュレータ100の動作の一例および量子シミュレーション方法の一例を説明する図である。原子ガス供給装置3から主真空槽2の内部へ原子ガスを供給した後、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部へ光ビームを照射して、例えば配列手段7により主真空槽2の内部の原子を5行5列に2次元配列させる。さらに、光ビーム発生装置4から主真空槽2の内部へポンプ光を照射して、その配列させた原子を測定対象4に転化する。ポンプ光を照射した時刻tをt=0とする。時刻t=t
1のタイミングで、擬似スペックルパターン生成装置1により、主真空槽2の内部に擬似スペックルパターンを生成する。t=t
1以降の所定の時刻t=t
2において、光ビーム発生装置4から主真空槽2内部の被測定地点へプローブ光を照射して、測定手段2により計測値2を取得する。ここで、プローブ光照射に対して、当該被測定地点における電子の存在確率に応じてイオンが生成されるため、原子ガスの供給から計測値2の取得までの手続きを複数回繰り返すことで、電子の存在確率を知ることが可能となる。さらに、プローブ光を照射する被測定地点の位置を変化させるとともに、プローブ光照射時刻t=t
2を時刻t=t
3など様々な時刻に変化させつつ計測値2を蓄積することで、無秩序性が測定対象または測定対象中の電子分布に与える影響の空間および時間的な変化を追跡することができる。
【0050】
次に、量子シミュレータ100が備える擬似スペックル生成装置1の実施形態、および、量子シミュレーション方法が含む擬似スペックル生成方法の実施形態について、詳細に説明する。本実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1および擬似スペックルパターン生成方法では、2次元擬似乱数パターンa(x,y)およびフィルタ関数F(u,v)に基づいて擬似スペックルパターンb(x,y)を光学的に生成する。
【0051】
本実施形態において生成される擬似スペックルパターンを説明する。
図3は、擬似スペックルパターンを計算により求める場合の計算手順のフローチャートである。なお、以下に登場する関数のうち、英小文字で表した関数は実空間における関数であり、英大文字で表した関数はフーリエ空間における関数である。また、(x,y)は実空間中の直交座標系で表した位置を示し、(u,v)はフーリエ空間中の直交座標系で表した位置を示す。
【0052】
ステップS11では、2次元擬似乱数パターンa(x,y)を生成する。具体的には、任意の生成方法により所定のシード数および統計分布に従う1次元の擬似乱数列を生成し、これらの擬似乱数を2次元に配列することで2次元擬似乱数パターンa(x,y)を生成する。1次元擬似乱数列の生成の際のシード数および統計分布ならびに2次元配列の際の配列規則が同じであれば、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の生成は再現性を有する。ステップS12では、a(x,y)をフーリエ変換してA(u,v)を得る((1)式)。
【0054】
ステップS21では、相関関数c(x,y)を準備する。ステップS22では、c(x,y)をフーリエ変換してC(u,v)を得る((2)式)。ステップS23では、C(u,v)の平方根を計算してフィルタ関数F(u,v)を得る((3)式)。
【0057】
ステップS31では、A(u,v)とF(u,v)とを乗算してB(u,v)を得る((4)式)。そして、ステップS32では、B(u,v)を逆フーリエ変換して擬似スペックルパターンb(x,y)を得る((5)式)。なお、フーリエ変換と逆フーリエ変換とは、数値計算をする場合には同様の計算処理で実現可能であり、また、光学系により実現する場合には同様の光学系により実現可能であるから、両者を区別する必要はない。
【0060】
このようにして生成された擬似スペックルパターンb(x,y)は、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布に応じた光強度統計分布と、フィルタ関数F(u,v)に対応する相関関数c(x,y)に応じた空間構造(自己相関関数)と、を有する。なお、ステップS23においてC(u,v)の平方根を計算してフィルタ関数F(u,v)を求めるのは、擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数と相関関数c(x,y)とを互いに一致させるためである。
【0061】
擬似スペックルパターンは、他の計算手順に従って求めることもできる。
図4は、擬似スペックルパターンを計算により求める場合の他の計算手順のフローチャートである。
【0062】
ステップS41では、2次元擬似乱数パターンa(x,y)を生成する。ステップS51では、相関関数c(x,y)を準備する。ステップS52では、c(x,y)をフーリエ変換してC(u,v)を得る((2)式)。ステップS53では、C(u,v)の平方根を計算してフィルタ関数F(u,v)を得る((3)式)。これらステップS41,S51,S52,S53は、ステップS11,S21,S22,S23と同様の処理である。
【0063】
ステップS54では、F(u,v)を逆フーリエ変換してf(x,y)を得る((6)式)。ステップS61では、a(x,y)とf(x,y)とを畳み込み積分して擬似スペックルパターンb(x,y)を得る((7)式)。
【0066】
このようにして生成された擬似スペックルパターンb(x,y)も、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布に応じた光強度統計分布と、相関関数c(x,y)に応じた空間構造(自己相関関数)と、を有する。
【0067】
本実施形態では、
図3および
図4の何れの計算手順に従って擬似スペックルパターンb(x,y)を求めてもよい。
【0068】
すなわち、生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布に応じた統計分布を有する2次元擬似乱数パターンa(x,y)のフーリエ変換(A(u,v))を第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数に応じた相関関数c(x,y)のフーリエ変換の平方根(F(u,v))のパターンを第2パターンとして、第1パターンと第2パターンとの積の逆フーリエ変換のパターンを擬似スペックルパターンb(x,y)とすることができる。
【0069】
或いは、生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布に応じた統計分布を有する2次元擬似乱数パターンa(x,y)を第1パターンとし、生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数に応じた相関関数c(x,y)のフーリエ変換の平方根の逆フーリエ変換(f(x,y))のパターンを第2パターンとして、第1パターンと第2パターンとの畳み込み積分のパターンを擬似スペックルパターンb(x,y)とすることができる。
【0070】
図5は、相関関数cおよびフィルタ関数Fの例を纏めた表である。この表に示される相関関数cは、実空間における原点(0,0)からの距離rのみを変数とする関数c(r)である。対応するフィルタ関数Fも、フーリエ空間における原点(0,0)からの距離kのみを変数とする関数F(k)である。各式において、r,kは非負の実数であり、η,ξは正の実数である。
【0071】
相関関数c(x,y)としては、フーリエ変換の結果であるC(u,v)が非負の実数の関数となるような関数が選ばれ、また、距離rが大きくなるに従い関数値が漸減する関数であるのが好ましい。相関関数cは、距離rのみを変数とする関数であるのが好ましい。相関関数cは、xおよびyを変数とする関数(例えばexp(-|x+y|/ξ))であってもよい。相関関数cは、原点(0,0)における関数値が1であってもよいが、その関数値が任意であってよい。相関関数cは、数式で表現することができないものであってもよい。
【0072】
図6(a)は、統計分布が正規分布に従う2次元擬似乱数パターンa(x,y)の一例を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)の2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(r)=exp(-r)を用いた場合に得られる擬似スペックルパターンb(x,y)を示す図である。
図7(a)は、
図6(a)の2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(r)=exp(-r/9)を用いた場合に得られる擬似スペックルパターンb(x,y)を示す図である。
図7(b)は、
図7(a)の擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布(輝度ヒストグラム)を示す図である。
【0073】
図8(a)は、ディフューザを用いて生成されたスペックルパターンの一例を示す図である。
図8(b)は、
図8(a)のスペックルパターンの光強度統計分布(輝度ヒストグラム)を示す図である。ディフューザを用いて生成されたスペックルパターンの光強度統計分布(
図8(b))は指数関数分布で近似することができるのに対して、擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布(
図7(b))は、正規分布で近似することができ、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布と略一致している。なお、
図7(b)および
図8(b)の光強度統計分布(輝度ヒストグラム)の横軸は、256階調の光強度を表している。
【0074】
図9(a)は、
図6(a)の2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(r)=exp(-r/3)を用いた場合の擬似スペックルパターンb(x,y)を示す図である。
図9(b)は、
図9(a)の擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関画像を示す図である。
図10は、
図9(b)の自己相関画像における強度プロファイルを示す図である。x方向およびy方向それぞれの強度プロファイルは、互いに略一致しており、また、相関関数c(r)=exp(-r/3)とも略一致している。すなわち、擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数は、相関関数cと略一致している。
【0075】
本実施形態の擬似スペックルパターン生成装置および擬似スペックルパターン生成方法では、2次元擬似乱数パターンa(x,y)およびフィルタ関数F(u,v)に基づく強度または位相の変調分布を有する空間光変調器を用いて、擬似スペックルパターンb(x,y)を光学的に生成する。以下に、量子シミュレータ100の擬似スペックルパターン生成装置1の第1〜第4の実施形態について説明する。なお、
図1には、擬似スペックルパターン生成装置1として、第4実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Dが示されている。
【0076】
図11は、第1実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Aの構成を示す図である。擬似スペックルパターン生成装置1Aは、制御部10、光源11、ビームエキスパンダ12および空間光変調器13を備え、空間光変調器13の出力面に擬似スペックルパターンb(x,y)を出力する。
【0077】
光源11は、光を出力する。光源11として、例えば、レーザ光源、ランプ光源、SLD(SuperluminescentDiode)光源等が用いられる。ビームエキスパンダ12は、光源11と光学的に接続され、光源11から出力される光のビーム径を拡大して出力する。このとき、ビームエキスパンダ12から出力される光は、ビーム断面において強度が均一化されるのが好ましい。
【0078】
空間光変調器13は、強度変調型のものであって、ステップS32またはS61で生成される擬似スペックルパターンb(x,y)に基づく強度の変調分布を有する。空間光変調器13として、例えば、変調媒体が液晶である変調器や、デジタルミラーデバイス(DMD)が用いられる。空間光変調器13は、ビームエキスパンダ12と光学的に接続され、光源11から出力されてビームエキスパンダ12によりビーム径を拡大された光を入力し、その入力した光を変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力する。
【0079】
このようにして空間光変調器13の出力面に生成される擬似スペックルパターンb(x,y)は、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布に応じた光強度統計分布を有するとともに、相関関数c(x,y)に応じた空間構造を有する。
【0080】
制御部10は、空間光変調器13と電気的に接続され、2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(x,y)から計算される擬似スペックルパターンb(x,y)に基づく強度変調分布を空間光変調器13に設定する。
【0081】
制御部10は、例えばコンピュータにより構成され、空間光変調器13と電気的に接続されて通信を行う通信部を備える他、演算部、記憶部、入力部および表示部を備える。演算部は、CPUまたはDSP等を含み、2次元擬似乱数パターンa(x,y)や相関関数c(x,y)の生成、フーリエ変換、平方根計算、乗算、畳み込み積分、自己相関関数の演算、強度統計分布の算出等を行う。記憶部は、例えばハードディスクまたはメモリなどを含み、2次元擬似乱数パターンa(x,y)や相関関数c(x,y)の生成条件や各パターンの演算結果等を記憶する。入力部は、例えばキーボードまたはポインティングデバイスなどを含み、上記生成条件等の入力を受け付ける。表示部は、例えば液晶ディスプレイを含み、a(x,y)、A(u,v)、c(x,y)、C(u,v)、F(u,v)、f(x,y)、B(u,v)およびb(x,y)等の各パターンを表示する。
【0082】
本実施形態では、2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(x,y)から計算される擬似スペックルパターンb(x,y)に基づいて空間光変調器13の強度変調分布を設定するので、生成される擬似スペックルパターンb(x,y)の空間構造または光強度統計分布の設定の自由度が高い。生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布に応じた統計分布を有する2次元擬似乱数パターンa(x,y)、および、生成すべき擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数に応じた相関関数c(x,y)を用いて、これらから計算される擬似スペックルパターンb(x,y)に基づいて空間光変調器13の強度変調分布を設定することにより、所望の光強度統計分布および所望の空間構造を有する擬似スペックルパターンb(x,y)を生成することができる。
【0083】
本実施形態の擬似スペックルパターン生成装置または擬似スペックルパターン生成方法では、生成される擬似スペックルパターンb(x,y)の空間構造または光強度統計分布の設定の自由度が高い。加えて、擬似スペックルパターンb(x,y)の空間構造または光強度統計分布を、制御部10により、再現性よく設定することができ、迅速に設定を変更することができる。本実施形態の擬似スペックルパターン生成装置または擬似スペックルパターン生成方法は、計測対象や光操作対象に適した擬似スペックルパターンb(x,y)を生成することができ、様々な検証方法に有効な計測技術や光操作技術において好適に用いることができる。また、本実施形態の擬似スペックルパターン生成装置または擬似スペックルパターン生成方法は、擬似スペックルパターンを構造化照明として用いる場合に、輝度が高く明るい擬似スペックルパターンを生成することもできるので、照明回数を少なくして、高感度で短時間の照明が可能となる。
【0084】
本実施形態により所望の空間構造および光強度統計分布を有する擬似スペックルパターンb(x,y)を生成することができることは、次のようにして確認することができる。すなわち、空間光変調器13の出力面に生成された擬似スペックルパターンb(x,y)をカメラにより撮像する。そして、制御部10により、撮像により得られた擬似スペックルパターンb(x,y)の自己相関関数を求めて、これを相関関数c(x,y)と比較する。また、制御部10により、撮像により得られた擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布を求めて、これを2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布と比較する。
【0085】
図12は、第2実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Bの構成を示す図である。擬似スペックルパターン生成装置1Bは、制御部10、光源11、ビームエキスパンダ12、空間光変調器13およびレンズ14a,14bを備え、光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)を生成する。
図11に示された第1実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Aの構成と比較すると、この
図12に示される第2実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Bは、レンズ14a,14bを更に備える点で相違する。
【0086】
空間光変調器13から光パターン生成面Pに至るまでの光学系は4f結像光学系を構成している。レンズ14a,14bは、空間光変調器13から出力される光を入力して擬似スペックルパターンb(x,y)を光パターン生成面Pに結像する。このようにレンズ14a,14bからなる結像光学系を用いることで、空間光変調器13の出力面と異なる位置にある光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)を生成することができる。
【0087】
図13は、第3実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Cの構成を示す図である。擬似スペックルパターン生成装置1Cは、制御部10、光源11、ビームエキスパンダ12、位相変調型の空間光変調器17、偏光板18,19およびレンズ14a,14bを備え、光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)を生成する。
図12に示された第2実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Bの構成と比較すると、この
図13に示される第3実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Cは、強度変調型の空間光変調器13に替えて位相変調型の空間光変調器17および偏光板18,19を備える点で相違する。位相変調型の空間光変調器17は、例えば、変調媒体が液晶である変調器が用いられる。
【0088】
位相変調型の空間光変調器17を挟んで偏光板18および偏光板19が設けられている。一般に変調媒質が液晶である空間光変調器17は特定の配向方向の液晶分子を有する。偏光板18,19は、この液晶分子の配向方向に対して相対的に45°の角度である偏光方向となるよう配置される。偏光板18,19それぞれの偏光方向は、互いに平行であってもよいし、互いに垂直であってもよい。このように位相変調型の空間光変調器17および偏光板18,19が配置されることで、これらは実質的に強度変調型の空間光変調器13Cとして機能する。制御部10は、空間光変調器13C(これを構成する空間光変調器17)と電気的に接続され、空間光変調器13Cの強度変調分布(空間光変調器17の位相変調分布)を設定する。
【0089】
なお、擬似スペックルパターン生成装置1B,1Cにおいて、擬似スペックルパターンb(x,y)が生成される光パターン生成面Pは、レンズ14bの後焦点面であってもよいが、その後焦点面と異なる面とすることもできる。例えば、強度変調分布にフレネルレンズパターンを加えたパターンを空間光変調器13,13Cに設定することにより、レンズ14bの後焦点面と異なる位置にある光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)を生成することができる。
【0090】
図14は、第4実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Dの構成を示す図である。擬似スペックルパターン生成装置1Dは、制御部10、光源11、ビームエキスパンダ12、空間光変調器15およびレンズ16を備え、光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)を生成する。
【0091】
空間光変調器15は、位相変調型のものであって、ステップS32またはS61で生成される擬似スペックルパターンb(x,y)に基づく位相の変調分布を有する。位相変調型の空間光変調器15は、例えば、変調媒体が液晶である変調器が用いられる。空間光変調器15は、ビームエキスパンダ12と光学的に接続され、光源11から出力されてビームエキスパンダ12によりビーム径を拡大された光を入力し、その入力した光を変調分布に応じて空間的に変調して、その変調後の光を出力する。レンズ16は、空間光変調器15から出力された光を入力して擬似スペックルパターンb(x,y)を光パターン生成面Pに再生する再生光学系である。
【0092】
制御部10は、2次元擬似乱数パターンa(x,y)および相関関数c(x,y)に基づいて得られる計算機ホログラムを空間光変調器15の変調分布として設定する。空間光変調器15に設定される位相変調分布は、空間光変調器15から出力された光をレンズ16(再生光学系)により光パターン生成面Pに擬似スペックルパターンb(x,y)として再生することができるような計算機ホログラムである。制御部10は、反復フーリエ変換法を用いて、擬似スペックルパターンb(x,y)を再生像とする計算機ホログラムを生成し、この計算機ホログラムを空間光変調器15に設定する。
【0093】
なお、
図14では空間光変調器15として透過型のものが示されているが、
図1に示されるように反射型の空間光変調器が用いられてもよい。
【0094】
図15は、第4実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Dの空間光変調器15に設定される計算機ホログラムの一例を示す図である。この図では、位相変調の大きさを濃淡で示している。ここでは、統計分布が正規分布に従う2次元擬似乱数パターンa(x,y)と相関関数c(x,y)=exp(-r/9)とを用いて擬似スペックルパターンb(x,y)を計算し、この擬似スペックルパターンb(x,y)に基づいて計算機ホログラムを求めた。
図16(a)は、第4実施形態の擬似スペックルパターン生成装置1Dの空間光変調器15に
図15の計算機ホログラムを位相変調分布として設定したときに光パターン生成面Pに再生される擬似スペックルパターンb(x,y)を示す図である。
図16(b)は、
図16(a)の擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布(輝度ヒストグラム)を示す図である。再生された擬似スペックルパターンb(x,y)の光強度統計分布は、2次元擬似乱数パターンa(x,y)の統計分布と同様に正規分布であることが確認できる。
【0095】
本実施形態の量子シミュレータ100および量子シミュレーション方法は、このような構成を有する擬似スペックルパターン生成装置1,1A〜1Dを用いることで、所望の空間構造または光強度統計分布を有する擬似スペックルパターンを主真空槽2の内部に生成することができ、主真空槽2の内部の原子に対して様々な操作をすることができるので、対象の特徴をよく表す好適なモデルを容易に構築することができる。加えて、擬似スペックルパターンを再現性よく生成することができるので、常時同条件の無秩序性を実験的に繰り返すことや、多様な無秩序性を実験的に比較することで、無秩序性の影響に対する評価精度を高めることができる。
【0096】
なお、上記の実施形態では擬似乱数パターンおよび擬似スペックルパターンは2次元であるとしたが、本発明では擬似乱数パターンおよび擬似スペックルパターンは1次元または3次元であってもよい。