【実施例】
【0137】
[実施例1] 微小O/W型エマルションの調製
カチオン性脂質としてB−2、B−2−5、O−C3M、B−2−3、TS−P4C2又はL−PZ4C2を用い、カチオン性脂質:DOPE:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成のO/W型エマルションを調製した。本調製においては、モデル薬物として4−Methylumbelliferonを10モル%、PEG脂質としてDMG−PEG2000を10モル%およびDSG−PEG2000を2.5モル%を用い、脂質濃度に換算して1.0mM相当のエマルションを調製した。
【0138】
カチオン性脂質、DOPE、及びCholesterolの合計が1000nmolとなるようエタノール溶液を調製し、さらにモデル薬物及びPEG脂質を上記の量加えた。エタノールで全量を400μLとした後、氷温で15分静置した。同じく氷冷したリンゴ酸バッファー(20mM、pH3.0、30mM NaCl)を400μL、ボルッテクス下3秒以内に混合した。そこへ直ちにPBS(ニッスイ)を3200μL添加した。混合物に対しAmicon Ultra(ミリポア)を用いて限外濾過を行った。遠心条件として1000g、25℃を用いた。10分間の遠心の後3200μLのPBSを加える操作を二度行った後、サンプルを濃縮し500μL前後とした。質量が1000mgとなるようにPBSで希釈し、脂質濃度に換算して1mMのエマルションとした。
【0139】
作製したエマルションの粒子径分布をゼータサイザーナノZSを用いた動的光散乱法により計測した。測定条件として、1mMのエマルション40μLを25℃で計測した。その結果全ての組成において体積メディアン径は100nm以下であり、直鎖状頭部を用いた場合(即ち、式(I)のX
a及びX
bがX
1の場合)、粒子径は50nm以下であった。薬物回収率は85%以上であった(
図1、表2)。
【0140】
【表2】
【0141】
[比較例1] 従来型脂質DODAPおよびEPCを用いた調製
カチオン性脂質としてDODAPを用い、DODAP:DOPE:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成の粒子を調製した。本調製においては、モデル薬物として4−Methylumbelliferonを10モル%、PEG脂質としてDMG−PEG2000を10モル%およびDSG−PEG2000を2.5モル%用い、脂質濃度に換算して1.0mM相当の粒子懸濁液を調製した。粒子の調製、粒子径分布の取得については実施例1に記載の方法に従った。
【0142】
中性脂質としてEPCを用い、EPC:Cholesterol=3:2からなる組成の粒子を調製した。本調製においてはモデル薬物として4−Methylumbelliferonを10モル%、PEG脂質としてDSG−PEG2000を2.5モル%用い、脂質濃度に換算して1.0mM相当の粒子懸濁液を調製した。
【0143】
EPC及びCholesterolを1000nmolとなるよう混合し、さらにPEG脂質を加えた。脂質エタノール溶液と等量のクロロホルムを添加し、窒素通気下にて乾燥させた。乾燥後の脂質膜へPBSを1mL加え10分間静置の後、バスタイプソニケーターで3分間超音波処理を行い、粒子懸濁液とした。作製した粒子の粒子径分布を実施例1と同様に動的光散乱法により計測した。
【0144】
その結果DODAPの体積メディアン径は34.8nm、PdIは0.418、モデル薬物回収率は76.7%であった。EPCの体積メディアン径は48.1nmであったが、目視で凝集塊が認められた(
図2、表3)。
【0145】
【表3】
【0146】
[実施例2] O/W型エマルションに対するpHの影響
カチオン性脂質としてB−2を用い、カチオン性脂質:DOPE:Cholesterol=3:4:3(モル比)またはカチオン性脂質:DOPC:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成のO/W型エマルションを調製した。本調製においては、PEG脂質としてDMG−PEG2000を15モル%用い、脂質濃度にして0.5mMのエマルションを作製した。
【0147】
B−2、DOPE及びCholesterolの合計が500nmolになるようエタノール溶液を調製し、さらにPEG脂質を上記の量加えた。エタノールで全量を200μLとした後、氷温で15分静置した。同じく氷冷したリンゴ酸バッファー(20mM、pH3.0−pH5.0)を200μL、ボルッテクス下3秒以内に混合した。そこへ直ちにPBS(ニッスイ)を3600μL添加した。混合物に対しAmicon Ultra(ミリポア)を用いて限外濾過を行った。遠心条件として1000G、25℃を用いた。10分間の遠心の後3200μLのPBSを加える操作を二度行った後、サンプルを濃縮し500μL前後とした。質量が1000mgとなるようにPBSで希釈し0.5mMのエマルション溶液とした。
【0148】
作成したエマルション溶液の粒子径分布を実施例1と同様に動的光散乱により計測した。その結果DOPCを用いた場合、体積メディアン径はpHに依らず40nm付近を示した。DOPEを用いた場合は体積メディアン径にpH依存性が見られ、pH3.0で40nm程度の最も小さな粒子となった。このため、微小粒子を作成するための条件としてpH3.0が優れていた(
図3、表4)。
【0149】
【表4】
【0150】
[実施例3] B−2 O/W型エマルションに対する塩濃度の影響
カチオン性脂質としてB−2を用い、カチオン性脂質:DOPE:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成のO/W型エマルションを調製した。本調製においては、PEG脂質としてDMG−PEG2000を15モル%用い、脂質濃度にして0.5mMのエマルションを作製した。
【0151】
B−2、DOPE及びCholesterolの合計が500nmolになるようエタノール溶液を調製し、さらにPEG脂質を上記の量加えた。エタノールで全量を200μLとした後、氷温で15分静置した。同じく氷冷したリンゴ酸バッファー(20mM、pH3.0、0−1000mM NaCl)を200μL、ボルッテクス下3秒以内に混合した。そこへ直ちにPBS(ニッスイ)を3600μL添加した。混合物に対しAmicon Ultra(ミリポア)を用いて限外濾過を行った。遠心条件として1000G、25℃を用いた。10分間の遠心の後3200μLのPBSを加える操作を二度行った後、サンプルを濃縮し500μL前後とした。質量が1000mgとなるようにPBSで希釈し脂質濃度として0.5mMのエマルションとした。作製したエマルションの粒子径分布を、実施例1と同様に動的光散乱により計測した。
【0152】
その結果、体積メディアン径は60mM以下のNaCl濃度において30〜50nmとなることが示された。また500mM以下の塩濃度では、体積メディアン径を100nm以下に制御可能であることが示された(
図4、
図5)。
【0153】
[実施例4] 薬物放出と還元応答性試験
カチオン性脂質としてB−2、B−2−5、O−C3M、B−2−3、TS−P4C2又はL−PZ4C2を用い、カチオン性脂質:DOPC:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成のO/W型エマルションを調製した。本調製においてはPEG脂質としてDSG−PEG2000を9モル%用いた。また薬物モデル分子として4−Methylumbelliferon Palmitateを30モル%用い、粒子濃度による補正のために蛍光プローブDiDを1モル%用いた。
【0154】
カチオン性脂質、DOPE及びCholesterolの合計が1000nmolになるようエタノール溶液を調製し、さらにPEG脂質、薬物モデル分子及び蛍光プローブを上記の量加えた。エタノールで全量を400μLとした後、37℃で15分静置した。同じく加温したリンゴ酸バッファー(20mM、pH3.0、30mM NaCl)を400μL、ボルッテクス下3秒以内に混合した。そこへ直ちにPBS(ニッスイ)を3200μL添加した。混合物に対しAmicon Ultra(ミリポア)を用いて限外濾過を行った。遠心条件として1000g、25℃を用いた。10分間の遠心の後3200μLのPBSを加える操作を二度行った後、サンプルを濃縮し500μL前後とした。質量が1000mgとなるようにPBSで希釈し脂質濃度として1mMのエマルションとした。
【0155】
作製したエマルションの内400μLを分子量カットオフ1000の透析膜(Spectrum Lab)に入れ、40mLのPBSに対し37℃にて透析した。この際、還元に対する応答性を調べるため10mMグルタチオンを含む40mLのPBSに対しても同様に透析を行った。各タイムポイントにおいてにおいて透析チューブ内の溶液を30μL回収した。回収サンプルはPBSで3倍希釈した後、5μLを300μLのホウ酸バッファー(100mM、pH10.4)、150μLのエタノール、及び50μLの10%SDSと混合した(合計505μL)。60℃で30分浸透撹拌した後、溶液中の4MUおよびDiD量を蛍光測定により定量した(4MU:Ex385、Em450 DiD:Ex645、Em665)。4MUの残存量をDiDの残存量で除することにより粒子に対する薬物残存量とした。
【0156】
その結果、非還元環境下において本O/W型エマルションは24時間まで安定に薬物を保持する一方で、還元条件下では24時間でほぼ完全な薬物の放出が認められた(
図6、
図14)。このことから本O/W型エマルションは細胞内還元環境における薬物放出性を持つと考えられた。
【0157】
[比較例2] 薬物放出と還元応答性試験(DODAP、EPC)
従来型脂質としてDODAP、又はEPCを用い、従来型脂質:DOPC:Cholesterol=3:4:3(モル比)からなる組成の粒子懸濁液を調製した。本調製においてはPEG脂質としてDSG−PEG2000を9モル%用いた。また薬物モデル分子として4−Methylumbelliferon Palmitateを30モル%用い、粒子濃度による補正のために蛍光プローブDiDを1モル%用いた。
粒子の調製及び薬物放出試験は実施例3に記載の方法で行った。
その結果、還元に対する応答性は認められず、薬物モデル物質はどの条件においても24時間にわたってほぼ放出されなかった(
図7)。
【0158】
[試験例1] O/W型エマルションの粒子の臓器集積性
カチオン性脂質としてB−2およびB−2−5を用いた。従来型脂質としてDODAP及びEPCを用いた。O/W型エマルション及び粒子懸濁液(DODAP、EPC)の作製方法は実施例1および比較例1に記載の方法に従った。O/W型エマルション又は粒子懸濁液(DODAP、EPC)を構成する油滴の体内動態を可視化するため、蛍光色素DiRを脂質の0.2モル%分加えた。粒子濃度は脂質濃度にして4mMとなるよう調整した。
【0159】
担がんマウスとして4T1細胞(マウス乳がん)を用いた。Balb/cマウス(♀、4週齢)の右わき腹皮下へ1×10
6個の4T1細胞を移植した。移植から7日目に蛍光修飾粒子を含むO/W型エマルション又は粒子懸濁液(DODAP、EPC)を200μL(脂質800nmol)静脈内投与した。投与24時間後、肝脱血を行った後脾臓、肝臓、腫瘍を回収し、IVISで画像を取得した。平均蛍光強度はLiving Image Softwareを用いて算出した。
その結果B−2−5は肝臓への集積が認められた。EPCは脾臓への集積が認められ、粗大な凝集塊の寄与が考えられる。B−2およびDODAPは腫瘍へ良好に移行することが示された(
図8、9)。
【0160】
[試験例2] 腫瘍集積性のO/W型エマルションの粒子径依存性
カチオン性脂質としてB−2を用いた。O/W型エマルションの調製は実施例3に従い行った。本調製においては、モデル薬物として4−Methylumbelliferonを10モル%、PEG脂質としてDMG−PEG2000を10モル%およびDSG−PEG2000を2.5モル%を用い、脂質濃度に換算して4.0mM相当のエマルションを調製した。O/W型エマルション又は粒子懸濁液(DODAP、EPC)を構成する油滴の体内動態を可視化するため、蛍光色素DiRを脂質の0.2モル%分加えた。粒子作製時の塩(NaCl)濃度として30mM、150mM、750mMを選択し、それぞれ“Small”、 “Medium”、“Large”とした。粒子濃度は脂質濃度にして4mMとなるよう調整した。
【0161】
担がんマウスにおける臓器の分布性評価については試験例1と同様に行った。その結果、粒子径が小さくなるほど脾臓、肝臓への集積が低下した。一方で粒子径が小さくなるほど腫瘍への集積が増加し、最も集積性が高い粒子は“Small”であった。このことから微小なO/Wエマルションは腫瘍に対する薬物送達に適していることが示唆された(
図10)。
【0162】
[試験例3] 腫瘍内粒子分布
カチオン性脂質としてB−2およびB−2−5を用いた。従来型脂質としてDODAP及びEPCを用いた。O/W型エマルション及び粒子懸濁液(DODAP、EPC)は実施例1および比較例1に記載の方法に従い作製した。O/W型エマルション又は粒子懸濁液(DODAP、EPC)を構成する油滴の体内動態を可視化するため、蛍光色素DiDを脂質の1.0%分加えた。粒子濃度は脂質濃度にして4mMとなるよう調整した。
【0163】
担がんマウスの作製と静脈内投与は試験例1と同様に行った。投与24時間後、腫瘍を回収しマイクロスライサーで厚さ400μmの切片を作成した。DiDの蛍光を共焦点レーザースキャン顕微鏡(Nikon A−1)にて取得した。画像は10倍のレンズにて取得し、腫瘍全体にわたるラージイメージとして取得した。画像の定量はImageJにて行った。Coefficiency of variance(CV;画像内のムラの指標)は全ピクセル強度の分散をピクセル強度の平均値で除することで算出した。
その結果、B−2およびDODAPは画像のムラを表すCV値が低いことが明らかとなった。これは粒子の微小化により腫瘍への浸透性が向上したためと考えられた(
図11、
図12)。
【0164】
[試験例4] Dexamethasone Palmitate(DexPal)搭載粒子の抗腫瘍効果
1.DexPal搭載粒子の調製
カチオン性脂質としてB−2又はDODAPを用い、脂質のエタノール溶液として、5mMカチオン性脂質 60μL、5mM DOPC 80μL、5mM Chol 60μL、1mM DMG−PEG2000 100μL、1mM DSG−PEG2000 30μL、及び10mM DexPal 30μLを5mLチューブ内で混合し、エタノールを加えて400μLとした。中性脂質としてEPCを用い、5mM EPC 140μL、5mM Chol 60μL、1mM DMG−PEG2000 100μL、1mM DSG−PEG2000 30μL、及び10mM DexPal 30μLを5mLチューブ内で混合し、エタノールを加えて400μLとした。本脂質エタノール溶液を氷上で10分静置した。脂質エタノール溶液を撹拌しながら、氷冷20mM リンゴ酸緩衝液(pH 3.0、30mM NaCl)400μLを加え、数秒撹拌後、氷冷リン酸緩衝液(pH 7.4)2000μLを添加し数秒撹拌した。リン酸緩衝液(pH 7.4)1200μLを添加し、Amicon Ultra 4(Millipore社)を用い、以下の遠心条件(室温,1000g,3min)で約500μLまで繰り返し限外濾過し濃縮した。リン酸緩衝液(pH 7.4)4000μLを添加し、同条件で再度約500μLまで限外濾過し濃縮した。この操作を再度繰り返した。リン酸緩衝液(pH 7.4)で1000μLまでメスアップし、1mM DexPal搭載粒子(油滴)を含むO/W型エマルション及び粒子懸濁液を得た。
【0165】
2.DexPal搭載粒子の粒子径、及び表面電位の測定
体積メディアン径並びに表面電位は、実施例1と同様に動的光散乱法(Zetasizer Nano;Malvern社)を用いて測定した。調製された各種粒子の体積メディアン径、表面電位を表5に示す。
【0166】
【表5】
【0167】
3.DexPal搭載LNPのDexPal搭載率の測定
1mM DexPal搭載LNP 50μLをリン酸緩衝液(pH 7.4)50μLと混合し、うち50μLをMeOH 50μLと混合した。0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル 400μLを添加し、高速液体クロマトグラフィーによりDexPalを検出した(カラム:InertSustain C18、5μm、4.6mm×250mm(ジーエルサイエンス社)、移動相:MeOH:0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル=70:30、流速:1mL/min、検出器:240nm、注入量:200μL)。DexPalの検量線として、0.5mM、0.25mM、0.125mM、0.0625mM、DexPalエタノール溶液50μLをMeOH 50μLと混合し、うち50μLをリン酸緩衝液(pH 7.4)50μLと混合した。0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル 400μLを添加し、DexPal搭載LNPと同様の方法でDexPalを検出した。ピーク面積と濃度をプロットし、DexPal搭載LNP中のDexPal濃度、及び搭載率を算出した。各種DexPal搭載LNPの搭載率を表6に示す。
【0168】
【表6】
【0169】
4.DexPal搭載LNPのEG7−OVAリンパ腫に対する抗腫瘍効果の検証
EG7−OVA(OVA発現EL4リンパ腫)をC57BL/6L(6〜8週齢、♀)の右脇腹皮下に、8.0×10
5 cells移植し、1週間後に次の式に従い腫瘍体積を算出した:(長軸(mm
3))×(短軸(mm
3))
2×0.52)。腫瘍体積が100〜200mm
3である担癌マウスをランダムにグループ分けした。その24時間後、上記調製した、B−2、DODAP、又はEPCを含むDexPal搭載LNP、及び水溶性Dexamethasone製剤としてDexamethasone Sodium Phosphate(DexPhos)を、Dexamethasone換算で1mg/mLとなるように尾静脈内投与した。その24時間後、48時間後に同様のDexPal搭載LNP、及びDexPhosを投与し、最終投与24時間後に腫瘍体積を算出した。移植後1週間の腫瘍体積を100%とした際の、最終投与の24時間後における腫瘍体積の割合を
図13に示す。
【0170】
[実施例5] 4‐メチルウンベリフェロンコレステロールヘミコハク酸エステル(4MU−CHEMS)、デキサメタゾンコレステロールヘミコハク酸エステル(Dex−CHEMS)内封O/W型エマルションの作製
1.4MU−CHEMS内封O/W型エマルションの作製
B−2:DOPC:Chol=3:4:3にDSG−PEG2000を9モル%、4MU−CHEMSを30モル%加え、更に蛍光色素DiDを1モル%加え、実施例1と同様にエマルションを作製した。
【0171】
2.Dex−CHEMS内封O/W型エマルションの作製
脂質組成:B−2/DOPC/Chol=3/4/3、10mol% Dex−CHEMS、10mol% DMG−PEG2000及び3mol% DSG−PEG2000にて、実施例1と同様な方法でエマルションを作製した。
作製した粒子の平均粒子径を実施例1と同様に測定した結果を表7に示す。
【0172】
【表7】
【0173】
[試験例5] 血中滞留性試験:4−メチルウンベリフェロンパルミチン酸エステル(4MU−Pal)と4−メチルウンベリフェロンコレステロールヘミコハク酸エステル(4MU−CHEMS)の比較
B−2:DOPC:Chol=3:4:3の脂質混合物にDSG−PEG2000を9モル%、及び4MU−Palを30モル%加え、更に蛍光色素DiDを1モル%加え実施例1と同様な方法でエマルションを作製した。
B−2:DOPC:Chol:4MU−CHEMS=3:4:1.5:1.5の脂質混合物にDSG−PEG2000を15モル%加え、さらに蛍光色素DiDを1モル%加え、実施例1と同様な方法でエマルションを作製した。
粒子懸濁液の濃度を脂質濃度(B−2+DOPC+Chol)で4mMとした。ICRマウス♂4週齢に対し該懸濁液を尾静脈から250μLを投与した。各タイムポイントで血液を25μL回収し、pH10.4ホウ酸バッファー275μL、エタノール150μL、10%SDS50μLと混合した。60℃で30分インキュベーションすることにより、4MU−Palまたは4MU−CHEMSを加水分解した。生成する4-メチルウンベリフェロン、および粒子に修飾されたDiDの蛍光をそれぞれプレートリーダで計測し、検量線から血中残存量を調べた結果を
図15に示す。4MU−CHEMSは4MU−Palよりも長く血中を滞留した。
【0174】
[試験例6] 血中滞留性試験:4MU−CHEMSの腫瘍と血中濃度の比較
B−2:DOPC:4MU−CHEMS=3:4:3の脂質混合物に、DSG−PEG2000を20モル%加え、粒子を作製した。粒子懸濁液の濃度を脂質濃度で8mMとした。4T1細胞を皮下移植したBalb/cマウス(♀4週齢、移植7日)に尾静脈から200μL投与した。血中滞留性は試験例5と同様に調べた。腫瘍内濃度については、各タイムポイントで腫瘍を回収し、細断の後25mgを量り取った。pH10.4ホウ酸バッファー300μL、エタノール150μL、及び10%SDS50μLを加え、ホモジェナイズした。ホモジェネートを60℃で30分間インキュベーションした後、14000gで5分間遠心し上清の蛍光強度を調べ、検量線から存在量を見積もった。
【0175】
比較対象として4−メチルウンベリフェロンとDSG−PEG2000からなるミセルを用いた。2%DMSOを含むPBS中でDSG−PEG2000を1.6mM、4MUを2.4mMとなるようミセルを調製した。投与、定量に関しては粒子と同様に行った。
図16に結果を示した。B−2と4MU−CHEMSからなるエマルションは4−メチルウンベリフェロンとDSG−PEG2000からなるミセルと比較して、長く血中を滞留し、腫瘍へ集積した。
【0176】
[試験例7] 4MU−CHEMS内封エマルションの臓器分布
B−2:DOPC:4MU−CHEMS=3:4:3にDSG−PEG2000を20モル%加え、蛍光色素DiDを1モル%加え、実施例1と同様にエマルションを調製した。粒子懸濁液を脂質濃度で8mMとなるよう調整し、4T1細胞を皮下移植したBalb/cマウス(♀4週齢)に尾静脈から200μL投与した。ヘパリン/PBSで肝臓を脱血した後、肝臓、肺、心臓、腎臓、脾臓、腫瘍を取り出し、IVISによりDiDの蛍光を取得した。また、各臓器に関する平均ピクセル強度を算出した。さらに、それぞれの腫瘍を細断し、25mgを量り取った。Triton/PBSでホモジェナイズした後遠心し、上清に含まれるDiDの蛍光をプレートリーダーで取得した。結果を
図17に示した。B−2と4MU−CHEMSからなるエマルションは腫瘍に集積し、経時的に集積量が増大した。
【0177】
[試験例8] 血中滞留性評価
1.デキサメタゾンコレステロールヘミコハク酸エステル(Dex−CHEMS)とB−2からなるエマルションの調製
脂質組成が3mM B−2/DOPC/Chol=3/4/3 +10mol%Dex−CHEMS+10mol%DMG−PEG2000 +10mol%DSG−PEG2000 (1000 μL)の場合、以下のように脂質溶液を試験管内で混合した。
【0178】
【表8】
【0179】
溶媒を一度留去し、100 μLのCHCl
3で再溶解させた。N
2ガスを吹き付け、試験管壁に脂質薄膜を形成させた。デシケーターで数時間真空処理後、20mM Maric acid buffer (30mM NaCl,pH 3.0) 1000μLを添加し、10min室温でインキュベートした。バス型ソニケーターで30sec超音波処理後、プローブ型ソニケーターで5min超音波処理した(出力:30%)。4℃,15000g,5minで遠心後、上清を回収した。36mM NaOH/PBSを等量加えて中和を行なった。
【0180】
2.Dex−CHEMSの定量
各粒子100μLを1.5mLチューブへ移し、コンセントレーター(Heat:High)で30min乾燥した。0.1%TFA/Hexane:0.1%TFA/EtOH=9:1 100μLに溶解させ、HPLCを用いてDex−CHEMSのピーク面積を用いて回収率を算出した(HPLC条件…移動相:0.1%TFA/Hexane:0.1%TFA/EtOH=9:1、カラム:COSMOSIL SL−II、流速:1mL/min、分析時間:10min、カラム温度:40℃、検出波長:240nm、Dex−CHEMSのピーク:3.90min)。また、Dex−CHEMSの検量線として、0.5,0.25,0.125,0.0625mM Dex−CHEMS in 0.1%TFA/Hexane:0.1%TFA/EtOH:CHCl
3=8:1:1を用いた。
【0181】
3.投与、血液回収
Dex−CHEMSとB−2からなるエマルションをICRマウス(4w♂)に対して、25μgDex−CHEMS/mouseで投与した。26G注射針を用いて、投与後1min,1hr,6hr,24hrに尾静脈から40μLの血液を採取し、1μLの5000U/mLヘパリンナトリウム入りPCRチューブに素早く加え、タッピングにより混和後、氷上で保存した。
【0182】
4.Dex−CHEMSの測定
4℃,1000g,10minで遠心し血漿16.5μLを別の1.5mLチューブへ移した。DDWで50μLとし、62.5μLのCHCl
3、125μLの0.04mM 4−メチルウンベリフェロンパルミチン酸エステル(4MU−Pal) in MeOH(4MU−Palを標準物質として使用した)を加えたのち、30secボルテックスした。62.5μLのCHCl
3、62.5μLのDDWを加えたのち、30secボルテックスし、4℃,15000g,5minで遠心した。下層のCHCl
3 100μLを別のチューブに回収し、溶媒を留去後、0.1%TFA/Hexane:0.1%TFA/EtOH=9:1 100μLに溶解し、HPLCを用いてDex−CHEMSのピーク面積、及び4MU−Palのピーク面積を算出した。また0.5,0.25,0.125,0.0625nmolのDex−CHEMSを同様の方法でHPLCを用いてピーク面積を算出し、検量線として用いた。
(HPLC条件:移動相:0.1%TFA/Hexane:0.1%TFA/EtOH=9:1、カラム:COSMOSIL SL−II、流速:1mL/min、分析時間:10min、カラム温度:40℃、検出波長:240nm(Dex−CHEMS)又は280nm(4MU−Pal)、Dex−CHEMS:3.90min、4MU−Palのピーク:3.27min)。
【0183】
投与1分後を100%とした場合の1時間後の血中残存率を算出した結果を
図18に示した。上記と同様にB−2とデキサメタゾンパルミチン酸エステル(Dex−Pal)からなるエマルションを調製し、同様に評価したところ、Dex−Palは1時間後には血中から消失したのに対し、Dex−CHEMSは滞留を続けていた。
【0184】
[試験例9] PEG脂質の濃度の影響
B−2/DOPC/Chol=3/4/3+10mol% DMG−PEG2000+3〜9mol% DSG−PEG2000+10mol% Dex―CHEMSの組成にて、実施例1と同様にエマルションを作製した。各PEG量のエマルションをマウス尾静脈より投与し、1min,1hr,6hr,及び24hr後に血漿を回収、有機溶媒による抽出後、HPLCによりDex−CHEMS濃度を算出した。結果を
図19に示す。DSG−PEG2000の増量に伴い血中滞留性が向上し、DSG−PEG2000 6mol%と9mol%ではほぼ同等となった。
【0185】
[試験例10] mRNA発現評価
1.エマルションの作製
B−2/DOPC/Chol=3/4/3+10mol% DMG−PEG2000+6mol% DSG−PEG2000+10mol% Dex―CHEMSの組成にて、実施例1と同様にエマルションを作製した。
【0186】
2.腫瘍mRNA抽出
担癌マウスを頚椎脱臼により安楽死させ、解剖用ハサミを用いて腫瘍を摘出し、氷上のシャーレで皮膚を除去後細断した。約50mgの腫瘍をジルコニアビーズ入り自立型2mLチューブへ入れ、液体窒素で急速凍結させた。全サンプルを摘出後、液体窒素から取り出し、500μLのTRIzolを加えたのち、Microsmashを用いて破砕処理した(4800rpm,30sec,2times)。100μLのクロロホルムを加え。1minボルテックス後、5min静置した。チューブを4℃、12000g、15minで遠心し、上清200μLを1.5mLチューブへ移したのち、250μLのイソプロパノールを添加した。1minボルテックス後、5min静置し、4℃、12000g、15minで遠心後、上清を除いた。500μLの氷冷70%エタノールを添加し、ペレットを舞い上がらせたのち、4℃、12000g、10minで遠心し、上清を除いた。この操作を再度行い、100μLのRNase free waterでペレットを完全に溶解させた。250μLのエタノール、5μLの5M NaClを添加し、1minボルテックス後、5min静置し、4℃、12000g、15minで遠心し、上清を除いた。500μLの氷冷70%エタノールを添加し、ペレットを舞い上がらせたのち、4℃、12000g、10minで遠心し、上清を除いた。500μLのRNase free waterでペレットを完全に溶解させ、吸光度により濃度を測定した。
【0187】
3.逆転写反応
以下の組成で反応を行った。
【0188】
【表9】
【0189】
サーマルサイクラーの電源を入れ、プロトコルを開始し、蓋のプレインキュベートをおこなった(105℃)。total RNAを0.25μg/6μLとなるようにPCR tubeに入れ、65℃,5min→4℃,∞の条件で変性させた。
4×DN Master Mix(with gDNA remover)を2μL加え、軽く撹拌し37℃,5min→4℃,∞の条件で反応させた。
5×RT Master Mix IIを2μL加え軽く撹拌し、37℃,15min→50℃,5min→98℃,5min→4℃,∞の条件で反応させた。
別のPCR tube内で10倍希釈し、24時間以内に使う場合は4℃、それ以外の場合には−20℃で保存した。
【0190】
4.定量的リアルタイムPCR
定量的リアルタイムPCRは、THUNDERBIRD(登録商標) SYBR(登録商標) qPCR Mix(TOYOBO)、及びLight Cycler 480(Roche Diagnostics)、384well plateを用いて行なった。1wellあたり以下の組成となるように試薬を混合した。
【0191】
【表10】
【0192】
測定は全てduplicateで行なった。反応条件は以下のように行なった。ddCt法により解析を行なった。
【0193】
【表11】
【0194】
B−2とDex―CHEMSからなるエマルション、比較としてPBS、及び水溶性Dexamethasone製剤としてDexamethasone Sodium Phosphate(DexPhos)、B−2とDex―CHEMSからなるエマルションからDex―CHEMSを除いたエマルションを投与し、PBSでの値を1として比較した。結果を
図20に示す。いずれの指標においてもB−2とDex―CHEMSからなるエマルションが最も低い値を示した。
【0195】
[試験例11] 抗腫瘍効果
1.腫瘍移植
2日前に5.0×10
5cells/dishで播種したEG7−OVAを回収し、10 mLのPBSで2回洗浄した。セルカウントをおこない、8.0×10
5cells/40μLとなるようにPBSで懸濁した。C57BL/6J(6〜8週齢、♀)の右脇腹へ、8.0×10
5cells/40μLで投与した。
【0196】
2.DCワクチン
1.0×10
6cells/500μL/wellとなるように下記の方法で誘導した骨髄由来樹状細胞(BMDC)をnon−treated bottom 12well plateへ播種した。
【0197】
DOPE:Phosphatidic acid=7:2(モル比)となるように試験管中で混合し、溶媒を留去した。等量の0.12mg/mLのプロタミン溶液と0.8mg/mLのプラスミドDNA溶液をボルテックスミキサーにかけながら混合し、プラスミドDNA/プロタミン粒子懸濁液を調製した(いずれも10mM HEPES緩衝液を溶媒とした)。脂質濃度が0.55mMとなるようにプラスミドDNA/プロタミン粒子懸濁液を試験管内に加え、室温で10分間インキュベートした。バス型ソニケーターで超音波処理したのち、総脂質量の10mol%となるようにSTR−KALAを混合することでKALA修飾プラスミドDNA含有ナノ粒子を調製した。
【0198】
適切な濃度となるように、KALA修飾プラスミドDNA含有ナノ粒子を添加した(Serum(−),GM−CSF(+))。2時間後にmedium(serum(+))を添加した。その4時間後に各wellからBMDCを回収しPBSで2回洗浄後、セルカウントし適切な細胞濃度となるようにPBSで希釈した。C57BL/6J(6w,♀)をジエチルエーテルで麻酔し、両足の裏から40μLのBMDC懸濁液を皮下投与した。
【0199】
3.Dex−CHEMSとB−2からなるエマルションの投与
試験例1で作製したDex−CHEMSとB−2からなるエマルションをDexamethasone換算で0.5mg/kgに相当する量(200μL)を尾静脈より投与した。
腫瘍体積は以下の式に従い算出した。
Tumor volume(mm
3)=(major axis(mm))×(minor axis(mm))
2×0.52
【0200】
4.マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)の誘導
滅菌シャーレにRPMI−1640培地及びPBSをそれぞれマウス1匹につき10mL添加し、頚椎脱臼したC57BL/6J、あるいはBalb/cマウス(6〜10週齢)より大腿骨および頚骨を摘出し、70%エタノールで軽く消毒した後PBSに浸した。骨の両端を切断し、1mLシリンジ(26G針)により培地で骨髄細胞を押し出した。細胞懸濁液を40μmのセルストレイナーに通して50mLコニカルチューブに移した。遠心(450g,4℃,5min)後、上清を除去し、ACK Lysing Buffer 1mLを添加、混合し、室温で5min静置した。培地9mLを添加後、遠心して上清を除去し、さらに培地10mLで2回洗浄した。次に、細胞を培地10mLに懸濁し、10cm細胞培養ディッシュに添加し、37℃,5%,CO
2条件下で4時間以上培養した。軽くピペッティングして浮遊細胞のみを50mLコニカルチューブに回収し、遠心、上清除去後、培地10mLに懸濁してセルカウントした。1×10
6cells/mLとなるように培地で懸濁し、GM−CSF(終濃度10ng/mL)を添加後、24 well plateに1mLずつ播種し、37℃,5%,CO
2条件下で2日間培養した。2日後、4日後に細胞の凝集塊を残し、浮遊細胞を除去した後、新しいGM−CSF含有RPMI−1640培地1mLを添加した。GM−CSF存在下で培養開始後6日目の浮遊及び弱付着細胞を未成熟樹状細胞として実験に用いた。
未処理(non−treat)、免疫付与のみした群(immunization)、免疫付与せず試験例1で作製したDex−CHEMSとB−2からなるエマルションを投与した群(Dex−CHEMS)、免疫付与したうえで試験例1で作製したDex−CHEMSとB−2からなるエマルションを投与した群(immunization+Dex−CHEMS)の比較を
図21に示した。免疫付与したうえで試験例1で作製したDex−CHEMSとB−2からなるエマルションを投与した群(immunization+Dex−CHEMS)が最も高い抗腫瘍効果を示した。
【0201】
[参考例1]TS−PZ4C2の合成
<メシル化>
ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド15g(東京化成工業社製)(97mmol)にアセトニトリル143mLを加え、20〜25℃にて溶解させた。トリエチルアミン33.3g(関東化学社製)(328mmol)を加えた後、攪拌しながら10℃に冷却した。温度が20℃以下になるように塩化メタンスルホニル34.5g(関東化学社製)(300mmol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、20〜25℃で3時間反応させた。TLC分析(展開溶媒:クロロホルム、ヨウ素発色)により、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィドのスポットが消失していることを確認し、反応を終了した。反応溶液にエタノール29mLを加え、反応を停止させた後に、ろ過にて不溶物をろ別除去した。ろ液に10%重曹水150gを加え、5分攪拌した後、10分間静置した。水層を除去後、さらに4回重曹水で抽出精製を行った。得られた有機層に硫酸マグネシウム4.5gを加えて、脱水を行った。ろ過にて不溶物をろ別除去した後、エバポレーターを用いてろ液の溶媒を留去し、褐色固体(以下、「di−Ms体」と称する)を29.4g得た。
【0202】
<
1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
3)>
得られた化合物di−Ms体の
1H−NMRスペクトルの分析結果を以下に示す。
δ2.95〜3.20ppm(m、C
H3−SO
2−O−CH
2−C
H2−S−、10H)、δ4.45〜4.50ppm(t、CH
3−SO
2−O−C
H2−CH
2−S−、4H)
【0203】
<三級アミノ化>
di−Ms体1.2g(4mmol)にアセトニトリル31mLを加え、20〜25℃で溶解させた後、炭酸カリウム1.3g(関東化学工業社製)(10mmol)を加えて、5分間攪拌した。その後、4−ピペラジンエタノール5.0g(東京化成工業社製)(39mmol)を加え、25〜35℃で13時間反応させた。TLC分析(展開溶剤:クロロホルム/メタノール/28%アンモニア水=80/20/2(v/v/v)、ヨウ素発色)により、di−Ms体のスポットが消失していることを確認し、反応を終了した。ろ過にて不溶物をろ別除去した後、エバポレーターにてろ液の溶媒を留去した。得られた褐色液体をクロロホルム25mLに溶解させた後、蒸留水25mLを加え、5分攪拌した。攪拌後、10分静置した後、水層を除去した。その後、さらに2回蒸留水で抽出精製を行った。得られた有機層に硫酸マグネシウム0.6gを加えて、脱水を行った。ろ過にて不溶物をろ別除去した後、エバポレーターを用いてろ液の溶媒を留去し、淡黄色の液体(以下、「di−PZ4C2体」と称する)を1.0g得た。
【0204】
<
1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
3)>
得られた化合物di−PZ4C2体の
1H−NMRスペクトルの分析結果を以下に示す。
δ2.40〜2.66ppm(m、HO−CH
2−C
H2−N−C
H2−C
H2−N−、20H)、δ2.67〜2.72ppm(m、−N−CH
2−C
H2−S−、4H)、2.74〜2.85ppm(m、
HO−CH
2−、−N−C
H2−CH
2−S−、6H)、3.60〜3.65ppm(t、HO−C
H2−CH
2−、4H)
【0205】
<アシル化>
di−PZ4C2体3.0g(8mmol)とD−α−トコフェロールコハク酸エステル8.4g(SIGMA−ALDRICH社製)(16mmol)をクロロホルム45mLに20〜25℃で溶解させた。その後、4−ジメチルアミノピリジン0.4g(広栄化学工業社製)(3mmol)、EDC4.6g(東京化成工業社製)(24mmol)を加え、30℃で4時間反応させた。TLC分析(展開溶剤:クロロホルム/メタノール=9/1(v/v)、リン酸硫酸銅発色)により、D−α−トコフェロールコハク酸エステルのスポットが消失していることを確認し、反応を終了した。エバポレーターで反応溶媒を留去した後、ヘキサン200mLを加えた。その後、アセトニトリル100mLを加え、5分間攪拌した。10分間静置した後、ヘキサン層を回収し、エバポレーターにて溶剤を留去し、淡黄色の液体10.7gを得た。この液体9.0gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(溶離液:クロロホルム/メタノール=99/1〜98/2(v/v))し、目的物であるTS−PZ4C2を5.7g得た。
【0206】
<
1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
3)>
得られた化合物TS−PZ4C2の
1H−NMRスペクトルの分析結果を以下に示す。
δ0.83〜0.88ppm(m、(C
H3)
2CH−(CH
2)
3−(C
H3)CH−(CH
2)
3−(C
H3)CH−、24H)、δ1.03〜1.82ppm(m、(CH
3)
2C
H−(C
H2)
3−(CH
3)C
H−(C
H2)
3−(CH
3)C
H−(C
H2)
3−(C
H3)C−、−C−C
H2−CH
2−C−C−O−、52H)、δ1.95〜2.09ppm(m、Ar−C
H3、18H)、δ2.40〜2.60ppm(m、−N−C
H2−C
H2−N−、−C−CH
2−C
H2−C−C−O−、20H)、δ2.61〜2.68ppm(m、−O−CH
2−C
H2−N−、−N−CH
2−C
H2−S−、8H)、δ2.75〜2.84ppm(m、Ar−O−C(O)−C
H2−、−N−C
H2−CH
2−S−、8H)、δ2.91〜2.95ppm(m、Ar−O−C(O)−CH
2−C
H2−、4H)、δ4.21〜4.25ppm(t、−C(O)−C
H2−CH
2−N−、4H)
【0207】
[参考例2] L−PZ4C2の合成
<アシル化>
di−PZ4C2体2.5g(7mmol)とリノール酸3.7g(日油社製)(13mmol)をクロロホルム25mLに20〜25℃で溶解させた。その後、4−ジメチルアミノピリジン0.3g(3mmol)、EDC3.8g(20mmol)を加え、30℃で4時間反応させた。TLC分析(展開溶剤:クロロホルム/メタノール=9/1(v/v)、リン酸硫酸銅発色)により、リノール酸のスポットが消失していることを確認し、反応を終了した。エバポレーターで反応溶媒を留去した後、ヘキサン57mLを加えた。その後、アセトニトリル24mLを加え、5分間攪拌した。10分間静置した後、ヘキサン層を回収し、エバポレーターにて溶剤を留去し、淡黄色の液体4.9gを得た。この液体4.9gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(溶離液:クロロホルム/メタノール=99/1〜97/3(v/v))し、目的物であるL−PZ4C2を3.1g得た。
【0208】
<
1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
3)>
得られた化合物L−PZ4C2の
1H−NMRスペクトルの分析結果を以下に示す。
δ0.87〜0.91ppm(t、(C
H3−(CH
2)
3−CH
2−、6H)、δ1.25〜1.38ppm(m、CH
3−(C
H2)
3−CH
2−、−(C
H2)
4−CH
2−CH
2−C(O)−、28H)、δ1.58〜1.63ppm(m、−(CH
2)
4−C
H2−CH
2−C(O)−、4H)、δ2.00〜2.07ppm(m、−C
H2−CH=CH−CH
2−CH=CH−C
H2−、8H)、δ2.30〜2.32ppm(t、−(CH
2)
4−CH
2−C
H2−C(O)−、4H)、δ2.50〜2.70ppm(m、−N−C
H2−C
H2−N−、−N−CH
2−C
H2−S−、−O−CH
2−C
H2−N−、24H)、δ2.75〜2.84ppm(m、−CH=CH−C
H2−CH=CH−、−N−C
H2−CH
2−S−、8H)、δ4.18〜4.21ppm(t、−O−C
H2−CH
2−N−、4H)、δ5.30〜5.41ppm(m、−CH
2−C
H=C
H−CH
2−C
H=C
H−CH
2−、8H)
【0209】
[実施例6] O−PZ4C2の合成
di−PZ4C2体0.8g(2mmol)とオレイン酸1.2g(日油社製)(4mmol)をクロロホルム8mLに20〜25℃で溶解させた。その後、4−ジメチルアミノピリジン0.1g(1mmol)、EDC1.2g(6mmol)を加え、30℃で3時間反応させた。TLC分析(展開溶剤:クロロホルム/メタノール=9/1(v/v)、リン酸硫酸銅発色)により、オレイン酸のスポットが消失していることを確認し、反応を終了した。エバポレーターで反応溶媒を留去した後、ヘキサン12mLを加えた。その後、アセトニトリル5mLを加え、5分間攪拌した。10分間静置した後、ヘキサン層を回収し、エバポレーターにて溶剤を留去し、淡黄色の液体1.8gを得た。この液体1.7gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(溶離液:クロロホルム/メタノール=99/1〜97/3(v/v))し、目的物であるO−PZ4C2を1.1g得た。
【0210】
<
1H−NMRスペクトル(600MHz、CDCl
3)>
得られた化合物O−PZ4C2の
1H−NMRスペクトルの分析結果を以下に示す。
δ0.86〜0.90ppm(t、(C
H3−(CH
2)
6−CH
2−、6H)、δ1.25〜1.34ppm(m、CH
3−(C
H2)
6−CH
2−、−CH
2−(C
H2)
4−CH
2−CH
2−C(O)−、40H)、δ1.58〜1.64ppm(m、−CH
2−(CH
2)
4−C
H2−CH
2−C(O)−、4H)、δ1.99〜2.03ppm(m、−C
H2−CH=CH−C
H2−、8H)、δ2.28〜2.32ppm(m、−CH
2−(CH
2)
4−CH
2−C
H2−C(O)−、4H)、δ2.45〜2.70ppm(m、−N−C
H2−C
H2−N−、−O−CH
2−C
H2−N−、−N−CH
2−C
H2−S−、24H)、δ2.80〜2.85ppm(m、−N−C
H2−CH
2−S−、4H)、δ4.18〜4.21ppm(t、−O−C
H2−CH
2−N−、4H)、δ5.13〜5.38ppm(m、−CH
2−C
H=C
H−CH
2−、4H)
【0211】
[参考例3] 4−メチルウンベリフェロンコレステロールヘミコハク酸エステル(4MU−CHEMS)の合成
反応はアルゴン中で行った。ナスフラスコにコレステリルヘミサクシネート(CHEMS)を2.43g,5mmol、4−メチルウンベリフェロンを1.06mg,6mmol、無水DMF 20mLを加えた。さらにN,N−Dimethyl−4−aminopyridine(DMAP) 61.1mg,0.5mmolを加えた後、N,N−Diisopropylethylamine(DIPEA) 1.22mL,7mmol)、1−(3−Dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide hydrochloride(EDCl) 1.15g,6mmol)を加え、室温で一晩反応させた。薄層クロマトグラフィー(TLC) で原料の消失を確認した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製、乾燥後、目的物である4−メチルウンベリフェロンコレステロールヘミコハク酸エステルを得た。得られた4−メチルウンベリフェロンコレステロールヘミコハク酸エステルの
1H−NMRスペクトルの分析結果を
図22に、構造式を下に、それぞれ示す。
【0212】
【化5】
【0213】
[参考例4] デキサメタゾンコレステロールヘミコハク酸エステルの合成
反応はアルゴン中で行った。ナスフラスコにコレステリルヘミサクシネート(CHEMS)を608.4mg,1.25mmol、デキサメタゾンを588.7mg,1.5mmol、無水DMF 20mLを加えた。さらにN,N−Dimethyl−4−aminopyridine(DMAP) 15.2mg,0.124mmolを加えた後、N,N−Diisopropylethylamine(DIPEA) 0.305mL,1.75mmol)、1−(3−Dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide hydrochloride(EDCl) 287.6mg,1.5mmol)を加え、室温で一晩反応させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料の消失を確認した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製、乾燥後、目的物であるデキサメタゾンコレステロールヘミコハク酸エステルを得た。得られたデキサメタゾンコレステロールヘミコハク酸エステルの
1H−NMRスペクトルの分析結果を
図23に、構造式を下に、それぞれ示す。
【0214】
【化6】