【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、後述の実験は、以下に示す材料及び方法を用いて行った。
【0034】
(植物)
本発明のプラズマ処理等に供する植物組織は以下のとおりに調製した。
【0035】
タバコ(Nicotiana tabacum cv.Samsun NN)は、その種子を土に播種し、25℃、明16時間/暗8時間サイクル下で栽培し、後述のプラズマ処理には、播種後4〜8週間の葉(成熟葉)を、約1.5〜2cmの四角片になるようペーパータオル上で切断して供した。また、葉片の維持培養には、Murashige&Skoog(MS)の1/2塩濃度の平板培地を用いた。
【0036】
イネ(日本晴)は、27℃、明16時間/暗8時間サイクル下で水道水を使って水耕栽培し、後述のプラズマ処理には、播種後2〜3週間の根を、約0.5〜3cmの長さになるようスライド上で切断して供した。
【0037】
シロイヌナズナ(Col−0)は、その種子を土に播種し、22℃、明12時間/暗12時間サイクル下で栽培し、後述のプラズマ処理には、播種後4〜8週間の葉(成熟葉)を切り取ったものをそのまま供した。
【0038】
(sGFP−CyaA融合タンパク質の調製)
本発明のプラズマ処理によって前記植物組織に導入されるタンパク質は、以下のとおりに調製した。
【0039】
すなわち先ず、アデニル酸シクラーゼ(CyaA)と、スーパーフォルダー緑色蛍光タンパク質(sGFP)と、Hisタグとを融合させてなるタンパク質(Hisタグ融合sGFP−CyaAタンパク質)を調製した。より具体的にはsGFPをコードするDNA断片(配列番号:1)を、pGWB5(Nakagawa Tら、(2007)、Journal of Bioscience and Bioengineering 104,34−41.参照のほど)を鋳型として、BamHI−sGFP−Fプライマー(5’−TAGGATTCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGG−3’、配列番号:2)及びEcoRI−sGFP−Rプライマー(5’−TAGAATTCCTTGTACAGCTCGTCCATGCCG−3’、配列番号:3)を用いたPCRにより増幅した。また、pENTR3C−sGFPベクターを調製するため、前記にて増幅して得られた断片をBamHI及びEcoRIにて処理した上で、pENTR3Cベクター(Invitrogen社製)に挿入した。次に、CyaAのオープンリーデングフレーム(ORF、配列番号4)において、そのN末端400アミノ酸をコードする部分を、pHMCyA(Furutani Aら、Mol Plant Microbe Interact.(2009)Jan;22(1):96−106.参照のほど)を鋳型として、EcoRI−Cya−Fプライマー(5’−TAGAATTCATGCAGCAATCGCATCAGGC−3’、配列番号:5)及びXhoI−stop−Cya1200Rプライマー(5’−TCACTCGAGCTACTGGCGTTCCACTGCGCCC−3’、配列番号:6)を用いたPCRにより増幅した。このようにして増幅した断片をEcoRI及びXhoIにて処理し、pENTR3C−sGFPに挿入することにより、pENTR3C−sGFP−CyaAを調製した。次いで、該プラスミドをBamHI及びXhoIによって処理し、sGFP−CyaAのN末に6×ヒスチジン(Hisタグ)を融合させるため、その処理断片(sGFP−CyaA断片)をpET28aベクター(Novagen社製)に挿入し、pET28a−sGFP−CyaAプラスミドを調製した。
【0040】
また、さらに細胞透過性ペプチド アルギニン8アミノ酸(R8、配列番号:7)を融合させた、Hisタグ融合sGFP−CyaA−R8タンパク質を調製するため、R8をコードするDNA断片を、1本鎖DNA EcoRI−R8−stop−XhoI−FとXhoI−stop−R8−EcoRI−Rとをアニーリングさせることにより調製し、EcoRIとXhoIによって処理したpENTR3C−sGFPに挿入した。CyaAのN末端400アミノ酸をコードするORFを、pHMCyAを鋳型として、EcoRI−Cya−Fプライマー及びEcoRI−Cya1200Rプライマー(5’−TCGAATTCCTGGCGTTCCACTGCGCCC−3’、配列番号:8)を用いたPCRにより増幅した。このようにして増幅した断片をEcoRIによって処理し、EcoRIにて処理したpENTR3C−sGFP−R8に挿入した。次に、このようにして得られたプラスミドを更にBamHI及びXhoIによって処理することにより、sGFP−CyaA−R8断片を切り出し、それをpET28aベクターに入れ換え、pET28s−sGFP−CyaA−R8プラスミドを調製した。
【0041】
以上のとおりにして調製したプラスミド pET28a−sGFP−CyaA及びpET28a−sGFP−CyaA−R8を、大腸菌 BL21(DE3)に導入した。そして、これら大腸菌を培養することにより、これらプラスミドがコードする融合タンパク質 Hisタグ融合sGFP−CyaA及びHisタグ融合sGFP−CyaA−R8を各々発現させ、Hisタグタンパク質精製用クロマトグラフィー担体(GEヘルスケア社製、製品名:Niセファロースハイパフォーマンス)を用い、その説明書に記載の方法により、精製した。
【0042】
なお、これら精製タンパク質が、所望の融合タンパク質であることは、CBB染色及び抗GFP抗体(Abcam社製)を用いたイムノブロットにより、確認している(
図2 参照)。
【0043】
(プラズマ処理)
プラズマ処理は、Takamatsu T,Hirai H,Sasaki R,Miyahara H,Okino A (2013)「大気ダメージフリーマルチガスプラズマジェット源を用いた、ポリイミドフィルムの表面親水化」IEEE Trans.Plasma Sci 41:119−125、及び、Oshita T,Kawano H,Takamatsu T,Miyahara H,Okino A (2015)「温度制御可能な大気プラズマ源」IEEE Trans Sci43:1987−1992に記載の方法に沿って行った。
【0044】
より具体的には、
図1に示すとおり、プラズマ発生装置(株式会社プラズマコンセプト東京社製、ダメージフリーマルチガスプラズマジェット(ダメージフリープラズマ(日本登録商標第5409073号)、マルチガスプラズマ((日本登録商標5432585号)、製品番号:PCT−DFMJ02))の装置本体を接地し、装置本体より、所定の高電圧をプラズマ発生部の内部高圧電極を供給した。所定の高電圧とは、10〜30kHz及び最大9kVの変調された交流電圧であり、こうした電力がプラズマ発生部に供給され、グロー放電を発生させ、さらにアルゴン、水素、二酸化炭素、窒素、酸素、空気(Air)、及びそれらの混合気体等をガス種として、5L/分の流速にて1mm穴に通すことにより、安定した大気圧プラズマを生成した。
【0045】
なお、このようにして生成されたプラズマの温度(プラズマ照射口から5mmの所の温度)は、熱電対測定の結果、50℃以下であった。より低温(約20〜30℃)のプラズマを生成するため、液体窒素を用いた気体冷却装置により気体を冷却した。
【0046】
そして、上記のとおりにして調製した植物組織の直上5mmの所に照射口を設置し、プラズマ処理を施した。その後、前記精製融合タンパク質を含む又は含まないPBS溶液を、当該植物組織に接触させた。
【0047】
(cAMP酵素免疫アッセイ)
CyaAタンパク質は、細胞質に存在するカルモジュリンタンパク質及びATP依存的に、サイクリックAMP(cAMP)の産生を触媒する酵素である。そのため、CyaAを含む融合タンパク質を細胞内に導入した場合、その細胞のcAMP量を測定することにより、導入された該タンパク質量を評価することができる。
【0048】
そこで、前記プラズマ処理によって植物組織に導入された融合タンパク質を定量的に解析するため、cAMP量を、cAMPバイオトラック酵素免疫アッセイ(EIA)システム(アマシャム社製)を用い、その添付の説明書の方法に従って測定した。
【0049】
より具体的には、本発明の方法によりタバコの葉を処理した後、当該葉から直径13mmのリーフディスクを調製し、それを液体窒素と共に乳棒と乳鉢にてすり潰し、さらに、得られた粉末を、6%(w/v)トリクロロ酢酸 320μLにて処理した。次いで、200μLのホモジネートを4℃、2000gにて、15分間遠心した。得られた上清は、水で飽和した5倍量のジエチルエーテルにて4回洗浄した。次に、残った水抽出物を、55℃にて真空乾燥機により乾燥させた。そして、乾燥抽出物を、キット付属の200μLアッセイ用バッファーに溶解させ、各溶解抽出物の40μLをcAMP酵素免疫アッセイに供した。
【0050】
(共焦点顕微鏡)
植物組織に導入された融合タンパク質を解析するため、当該タンパク質に含まれるGFPが発する蛍光を検出した。具体的には、共焦点レーザー走査型顕微鏡FV−300及びフルオビューソフトウェア(共にオリンパス社製)を用いて、GFP画像、内在蛍光及び明視野像を取得した。
【0051】
(実施例1)
プラズマ処理による、タバコの葉へのタンパク質導入
低温(20〜30℃)マルチガスプラズマジェットを用いてプラズマ処理(照射時間:2〜30秒)したタバコ葉を、その照射を施してから1〜5秒後にHisタグ融合sGFP−CyaA−R8タンパク質含有PBS溶液に浮かべ、インキュベーションした(インキュベーション時間:12〜24時間、タンパク質溶液の濃度:50μg/ml、溶液量:400μl)。そして、当該インキュベーションしてから12〜24分後に共焦点顕微鏡によりGFPタンパク質由来の蛍光シグナルを検出した。なお、マルチガスプラズマジェットのガス源としては、CO
2、O
2、H
2とArとの混合ガス(体積百分率:5%H
2及び95%Ar)、N
2を用いた。
【0052】
その結果、
図3に示すとおり、いずれのガス源を用いてもプラズマ処理を行うことによって、タバコの葉にタンパク質を導入できることが明らかになった。特に驚くべきことは、特許文献1及び2において開示されているように細胞を物質存在下でプラズマ処理せずとも、植物細胞においては、プラズマ処理を施してから時間をおいて物質を接触させても、当該物質が細胞に導入されることが明らかになった。
【0053】
次に、導入効率の良いガス源を更に選択するため、前記同様、CO
2、O
2、H
2とArとの混合ガス、N
2をガス源として用い発生させたプラズマによりタバコの葉を処理し、当該葉における、cAMP量を定量的に解析した。
【0054】
その結果、
図4に示すとおり、
図3同様に、いずれのガス源を用いてもプラズマ処理を行うことによって、タバコの葉にタンパク質が導入されていることが確認された。特に、CO
2又はN
2から発生させたプラズマにより処理することによって、その処理時間を問わず、cAMP量は、それらガス処理によるcAMP量(コントロール)と比較して、有意に増加した。O
2、H
2とArとの混合ガスに関しては、発生させたプラズマにより20秒又は30秒処理することによってcAMP量の増加が認められたが、5秒又は10秒の処理時間ではコントロールとの差が認められ難い傾向にあった。
【0055】
(実施例2)
プラズマ処理による植物細胞への影響についての検証
CO
2又はN
2から発生させたプラズマは、微生物を不活化する能力があることが明らかになっている(Takamatsu T,Uehara K,Sasaki Y,Hidekazu M,Matsumura Y,Iwasawa A,Ito N,Kohno M,Azuma T,Okino A(2015)「マルチガスプラズマジェットによって誘導される、液相における微生物不活性化」PLoS One 10:e0135546.参照のほど)。
【0056】
また、物質の存在下にて哺乳動物細胞にプラズマを照射することによって、当該物質がその細胞内に導入されたことが報告されているものの、プラズマ処理は通常細胞に障害をもたらすものであり、例えば照射後の細胞の生存率は半分以下であることが示されている(特許文献2の[0076]欄の記載参照のほど)。そこで、これらプラズマが植物組織にダメージを与えるか否かについて調べた。具体的には、CO
2プラズマ又はN
2プラズマによって2秒又は5秒、タバコの葉を処理し、その後6日間当該葉における形態を観察した。
【0057】
その結果、
図5に示すとおり、プラズマ処理を施してから6日間経過しても、タバコの葉において有意なダメージは観察されなかった。したがって、かかるプラズマ処理は植物組織に障害をもたらさないことが明らかになった。
【0058】
(実施例3)
CPPを用いない、プラズマ処理によるタバコの葉へのタンパク質導入
本願出願前において、植物細胞への物質導入に関してはタンパク質導入が特に難しく、florigenタンパク質等と細胞透過性ペプチド(CPP)との懸濁液に、植物の茎頂分裂組織等を曝露することによって、当該タンパク質をこれら組織の細胞に導入できたことが報告されている(国際公開2013/118863号 参照のほど)。さらに、シリンジを用いたインフィルトレーションによって、ポリカチオン配列を含むCPPとタンパク質等との複合体を植物細胞に導入できたことも報告されている(Ng KKら、(2016)、PLoS One 11:e0154081.、国際公開2013/129698号 参照のほど)。また、プラズマ処理による哺乳動物細胞への物質導入において、CPPがその導入効率を促進することも示されている(特許文献2の[0082]欄の記載参照のほど)。
【0059】
そこで、プラズマ処理による植物細胞へのタンパク質導入において、CPPが必要であるか否かについて調べるため、CO
2プラズマ又はN
2プラズマによりタバコの葉片を処理した後、上記Hisタグ融合sGFP−CyaA−R8タンパク質含有PBS溶液の代わりに、Hisタグ融合sGFP−CyaAタンパク質含有PBS溶液に浮かべ、インキュベーションし、当該融合タンパク質導入の有無について検出した。
【0060】
図6に示した結果から明らかなとおり、CO
2プラズマ又はN
2プラズマによって処理した細胞のいずれにおいてもGFP由来の蛍光が検出された。さらに、
図7に示すとおり、CO
2プラズマ処理によって、そのガスにより処理した場合に比べて約4.0倍cAMP量は有意に増加した。またN
2プラズマ処理によって、そのガスにより処理した場合に比べて約1.3倍とcAMP量は有意に増加した。
【0061】
なお、プラズマ処理によるHis−sGFP−CyaA導入によって本当にcAMP量が増加していることを確認するため、プラズマ処理後タンパク質を添加しない葉片において、cAMP量を測定した。その結果、予期したとおり、プラズマ処理と未処理との間に有意な差は認められなかった(
図7のC 参照)。
【0062】
以上の結果から、プラズマ処理による植物細胞へのタンパク質導入において、CPPは必要でないことが明らかになった。特に驚くべきことは、植物細胞は細胞壁を備えているため、哺乳動物細胞より物質導入が困難であるにも関わらず、かかる方法によれば、CPPを用いることなく、植物細胞に物質を導入できることが明らかになった。
【0063】
また、ガス種をCO
2及びN
2からAir(体積百分率:80%N
2及び20%O
2)に代え、同様にプラズマ処理したタバコの葉におけるHisタグ融合sGFP−CyaAタンパク質の導入の有無を解析した。その結果、
図8に示すとおり、Airプラズマ処理(2秒)によっても、CPPを要することなく、タンパク質を植物細胞内に導入できることが明らかになった。
【0064】
(実施例4)
プラズマ処理による、イネの根及びシロイヌナズナの葉へのタンパク質導入
上述のタバコの葉同様に、他の植物、他の組織に対しても、プラズマ処理によってタンパク質を導入できることを確認すべく、イネの根及びシロイヌナズナの葉をプラズマ処理(処理時間:2〜5秒)することにより、タンパク質導入を試みた。なお、導入を試みたタンパク質は、Hisタグ融合sGFP−CyaAタンパク質である。
【0065】
その結果、
図9に示した結果から明らかなとおり、いずれの植物及び組織においてもGFP由来の蛍光が検出されたことから、本発明の方法は、植物及びその組織の種類を問わず、タンパク質を導入できることが確認された。
【0066】
(実施例5)
プラズマ処理による、植物細胞へのDNA導入
上述のタンパク質同様、本発明の方法によりDNAも植物細胞に導入されることを、以下の記載のとおり確認する。
【0067】
具体的には、植物細胞に導入されるDNAとしては、レポーター遺伝子をコードするプラスミドDNAを用いる。なお、レポーター遺伝子として、より具体的には、緑色蛍光タンパク質(sGFP)をコードするP
35S−sGFP−T
NOS、βグルクローニダーゼ(GUS)をコードするP
35S−GUS−T
NOS、ルシフェラーゼ(LUC)をコードするP
35S−LUC−T
NOSプラスミドDNAが用いられる。また、ここで、P
35Sは、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター配列を意味し、T
NOSはアグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子のターミネーター配列を意味する。
【0068】
そして、上述のタンパク質同様に、タバコの葉、イネの根、シロイヌナズナの葉について各切片を調製し、当該切片にN
2プラズマ又はCO
2プラズマを2〜5秒照射する。次いで、前記プラスミドDNAを1〜100μg/mlの濃度で含むPBS溶液に前記切片を浸す。その後、当該切片を寒天培地上に置き、27℃で1〜5日間維持する。
【0069】
プラスミドDNAの導入は、細胞内へ導入されたレポーター遺伝子が核内へと移行し、転写翻訳されてレポーター遺伝子によってコードされるタンパク質が細胞内で発現することを指標として確認する。sGFPタンパク質の発現は、27℃で維持した切片を共焦点顕微鏡で観察することで検出する。GUSタンパク質の発現は、27℃で維持した切片を発色基質であるX−GLUCで処理し、青色の発色として実体顕微鏡で観察する。LUCタンパク質の発現は、27℃で維持した切片をLUCの基質であるルシフェリンで処理し、高感度CCDカメラ(LAS−3000)等で化学発光を検出する。
【0070】
実際、上述のタンパク質同様に、タバコの葉について切片を調製し、当該切片にCO
2プラズマを5秒照射した。次いで、後述のプラスミドDNA(pUGW2−sGFP)を20μg/mlの濃度で含む1/4xPBS溶液に前記切片を浸した。その3〜8時間後に、当該切片をカルス形成培地[1xムラシゲ・スクーグ(MS)、1xMSビタミン(0.1μg/ml 塩酸チアミン,0.5μg/ml 塩酸ピリドキシン,0.5μg/ml ニコチン酸,2μg/ml グリシン,100μg/ml ミオイノシトール),0.1μg/ml α−ナフタレン酢酸,1μg/ml 6−ベンジルアミノプリン,30g/L スクロース,200μg/ml セフォタックス,8.5g/Lアガー,pH5.8]上に置き、室温で一晩おいた。その後、28℃、明16時間/暗8時間サイクル下に移してさらに1日間生育させ、前記切片におけるsGFPタンパク質の発現を、共焦点顕微鏡で観察することによって、検出を試みた。また、対照群として、前記CO
2プラズマ処理の代わりにCO
2ガス処理を施したもの、及びCO
2プラズマ処理後、下記プラスミドDNA(pUGW2−sGFP)を接触させなかったものも用意し、これら切片においてもsGFPタンパク質の発現の検出を試みた。得られた結果を
図10に示す。
【0071】
なお、導入したプラスミドDNA(pUGW2−sGFP)は、以下のようにして調製した。sGFPをコードするDNA断片(配列番号:1)を、上記pGWB5を鋳型として、EcoRI−sGFP−Fプライマー(5’−TAGGAATTCATGGTGAGCAAGGGCGAGG−3’、配列番号:9)及びXhoI−sGFP−Rプライマー(5’−AGTCTCGAGTTACTTGTACAGCTCGTCCATGC−3’、配列番号:10)を用いたPCRにより増幅した。次いで、増幅した断片をEcoRI及びXhoIにて処理し、pENTR3C(Invitorogen−Thermo Fisher Scientific社製)のEcoRIとXhoIサイトに挿入し、pENTR−sGFPエントリークローンを作製した。さらに、GatewayのLRクロナーゼ反応で、pUGW2デスティネーションベクター(Nakagawa et al(2007) Journal of Bioscience and Bioengineering 104,34−41.参照のほど)にsGFPを挿入することにより、pUGW2−sGFPを調製した。
【0072】
図10に示した結果から明らかなとおり、プラズマ処理を施したタバコの葉においてGFP由来の蛍光が検出されたことから、本発明の方法によれば、タンパク質のみならずDNAも、CPP等を特段用いることなく、植物細胞に導入できることが確認できた。