特許第6875705号(P6875705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875705粒子処理装置、並びに触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875705
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】粒子処理装置、並びに触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20210517BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20210517BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20210517BHJP
   B01J 37/14 20060101ALI20210517BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20210517BHJP
【FI】
   B01J37/02 301P
   B01J23/745 M
   B01J37/16
   B01J37/14
   C01B32/162
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-501646(P2018-501646)
(86)(22)【出願日】2017年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2017005992
(87)【国際公開番号】WO2017145952
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-36479(P2016-36479)
(32)【優先日】2016年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】野田 優
(72)【発明者】
【氏名】川端 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】大沢 利男
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】本郷 孝剛
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−530182(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030821(WO,A1)
【文献】 特開2003−146635(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かって内径が小さくなるテーパ部を有し、前記テーパ部内に収容物として担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を収容可能であるともに、前記テーパ部の底部に配置された排出口から前記収容物を排出可能に構成された調製器と、
前記テーパ部の前記排出口に連結された第1配管と、
前記第1配管に接続された、少なくとも1つの調製器ガス供給管を有し、前記テーパ部の前記排出口から、前記テーパ部内に収容されている前記収容物に向けて調製器ガスを供給する、調製器ガス供給機構と、を備え、
前記調製器ガス供給管と前記第1配管との接続部よりも上側に、前記担体粒子及び前記触媒担持体の移動を遮断するための部材を備えず、
前記調製器の上端が開放しており、前記調製器ガス供給管と前記第1配管との接続部よりも下側に配置された粒子収容器により、前記第1配管の下端側が閉塞されてなる、粒子処理装置。
【請求項2】
前記調製器ガス供給機構が、前記収容物の少なくとも一部を前記調製器内に保持するとともに、該調製器内において前記収容物の少なくとも一部を流動させうるガス流量にて、前記調製器ガスを供給可能な、調製器ガス供給制御機構を備える、請求項1に記載の粒子処理装置。
【請求項3】
前記調製器が、前記収容物を加熱する加熱機構を更に備える、請求項1又は2に記載の粒子処理装置。
【請求項4】
前記調製器ガス供給制御機構が、還元性ガス、酸素元素含有ガス、触媒材料ガス、及び炭素原料含有ガスのうち少なくとも1種を供給可能な、請求項に記載の粒子処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の粒子処理装置を用いて触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体を製造する方法であって、
加熱状態の前記調製器内に、担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を供給する供給工程(1)と、
前記調製器内にて、前記担体粒子及び前記粒子状の触媒担持体の少なくとも一方と前記調製器ガスとを接触させて触媒担持体及び繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を得る接触工程(2)と、
前記調製器内の、前記接触工程(2)で得られた前記触媒担持体及び前記繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を流下させて前記調製器外へと排出させる回収工程(3)を含む、
触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記調製器ガスが、触媒材料ガス、還元性ガス、酸素元素含有ガス、及び/又は、炭素原料含有ガスを含み、
前記接触工程(2)は、触媒担持ステップ(i)、還元処理ステップ(ii)、酸化処理ステップ(iii)、および、繊維状炭素ナノ構造体合成ステップ(iv)の少なくともいずれか1つのステップを有し、
前記触媒担持ステップ(i)は、前記調製器ガスとして前記触媒材料ガスを供給することにより、前記担体粒子に触媒を担持するステップであり、
前記還元処理ステップ(ii)は、前記調製器ガスとして前記還元性ガスを供給することにより、前記担体粒子を還元処理するステップであり、
前記酸化処理ステップ(iii)は、前記調製器ガスとして前記酸素元素含有ガスを供給することにより、前記担体粒子を酸化処理するステップであり、
前記繊維状炭素ナノ構造体合成ステップ(iv)は、前記調製器ガスとして前記炭素原料含有ガスを供給することにより、前記触媒担持体上にて繊維状炭素ナノ構造体を合成するステップである、請求項5に記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記調製器ガスを一定の流量及び/又は組成で供給し、前記工程(1)〜(3)及び/又は前記ステップ(i)〜(iv)の内の複数を同時に行う、請求項5又は6に記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記調製器ガスの流量及び/又は種類を切り替えるガス切替工程をさらに含み、
前記工程(1)〜(3)及び/又は前記ステップ(i)〜(iv)の内の何れか2つ以上を時間的に分けて行う、請求項5又は6に記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記調製器ガスの流量及び/又は種類を切り替えるガス切替工程をさらに含み、
前記工程(1)〜(3)及び/又は前記ステップ(i)〜(iv)の内の何れか2つ以上を時間的に分けて行い、
前記酸化処理ステップは、前記還元処理ステップ、及び/又は、前記触媒担持ステップの前に実施し、
前記還元処理ステップは、前記酸化処理ステップ、及び/又は、前記触媒担持ステップの後に実施する、請求項に記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記担体粒子が、触媒成分の付着していない担体粒子、触媒前駆体付着済みの担体粒子、及び/又は失活した触媒の付着した担体粒子である、請求項5〜9のいずれかに記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記触媒材料ガスは、Fe、及び/又はAlを含み、
前記還元性ガスは、水素、アンモニア、及び/又は炭化水素を含み、
前記酸素元素含有ガスは、空気、酸素、水蒸気、及び/又は二酸化炭素を含む、請求項に記載の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記接続部にて、前記調製器ガス供給管が前記第1配管に対して直交して、或いは、下方に傾斜して接続されてなる、請求項1に記載の粒子処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子処理装置、並びに触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法に関するものである。特に、本発明は、調製器内に収容された粒子を処理する粒子処理装置、並びにかかる粒子処理装置を用いた触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性、熱伝導性および機械的特性に優れる材料として、繊維状炭素材料、特にはカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の繊維状炭素ナノ構造体が注目されている。CNTは、炭素原子により構成される筒状グラフェンシートからなり、その直径はナノメートルオーダーである。
【0003】
ここで、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体は、概して、製造コストが高いため他の材料よりも高価であった。このため、上述したような優れた特性を有するにもかかわらず、その用途は限られていた。さらに、近年、比較的高効率でCNT等を製造することができる製造方法として、触媒を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法(以下、「触媒CVD法」と称することがある)が用いられてきた。しかし、触媒CVD法でも、製造コストを十分に低減することができなかった。
【0004】
そこで、粒子状の支持体により流動層を形成し、かかる流動層に対して触媒原料を含むガスを供給して支持体表面にて触媒層を形成する方法が提案されてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。具体的には、特許文献1〜3では、下部に多孔質板を備える、粒子状の支持体が充填された反応器内を加熱雰囲気として、下部から触媒金属を構成元素に含む触媒前駆体蒸気(以下、触媒材料とも称する)を供給して、触媒前駆体蒸気の分解により粒子状の支持体上に触媒粒子を形成する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/110591号
【特許文献2】国際公開第2013/191247号
【特許文献3】国際公開第2013/191253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、多孔質板のような部材を設けて流動層を支持すれば、多孔質板の孔径を適切に選択することによって、流動層内に支持体を確実に保持するとともに、流動層内に触媒原料ガスを供給して、支持体を流動させることで粒子状の支持体に対して触媒を担持させることができた。しかしながら、その一方で、触媒前駆体蒸気に含まれる金属が多孔質板の孔にも堆積し、多孔質板に目詰まりが生じる虞があった。そして、多孔質板に目詰まりが生じれば、支持体に対して触媒を担持させる工程の効率が著しく低下する虞があった。
【0007】
そこで、本願発明は、調製器内に収容された粒子を効率的に処理することができる、粒子処理装置、並びに、かかる粒子処理装置を用いた触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、粒子処理装置の下部にテーパ部を設け、かつ特定の区間において粒子の移動を遮断するための部材を設けないことで、上述したような目詰まりの問題を回避することができることに想到し、本願発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の粒子処理装置は、下方に向かって内径が小さくなるテーパ部を有し、前記テーパ部内に収容物として担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を収容可能であるともに、前記テーパ部の底部に配置された排出口から前記収容物を排出可能に構成された調製器と、前記テーパ部の前記排出口に連結された第1配管と、前記第1配管に接続された、少なくとも1つの調製器ガス供給管を有し、前記テーパ部の前記排出口から、前記テーパ部内に収容されている前記収容物に向けて調製器ガスを供給する、調製器ガス供給機構と、を備え、前記調製器ガス供給管と前記第1配管との接続部よりも上側に、前記担体粒子及び前記触媒担持体の移動を遮断するための部材を備えない、ことを特徴とする。本発明の粒子処理装置は、調製器ガス供給管と第1配管との接続部よりも上側に粒状物の移動を遮断するための部材を備えないので、調製器に対して調製器ガスを効率的に供給することができ、調製器内の収容物である粒子を効率的に処理することができる。
【0010】
また、本発明の粒子処理装置は、前記調製器ガス供給機構が、前記収容物の少なくとも一部を前記調製器内に保持するとともに、該調製器内において前記収容物の少なくとも一部を流動させうるガス流量にて、前記調製器ガスを供給可能な、調製器ガス供給制御機構を備えることが好ましい。粒子を調製器内に確実に保持することで、一層効率的に処理することができるからである。
【0011】
また、本発明の粒子処理装置は、前記調製器が、前記収容物を加熱する加熱機構を更に備えることが好ましい。調製器内を効率的に加熱することで、一層効率的に粒子を処理することができるからである。
【0012】
また、本発明の粒子処理装置は、前記調製器ガス供給制御機構が、還元性ガス、酸素元素含有ガス、触媒材料ガス、及び炭素原料含有ガスのうち少なくとも1種を供給可能でありうる。
【0013】
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法は、上述した粒子処理装置を用いて触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体を製造する方法であって、加熱状態の前記調製器内に、担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を供給する供給工程(1)と、前記調製器内にて、前記担体粒子及び前記粒子状の触媒担持体の少なくとも一方と前記調製器ガスとを接触させて触媒担持体及び繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を得る接触工程(2)と、前記調製器内の、前記接触工程(2)で得られた前記触媒担持体及び前記繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を流下させて前記調製器外へと排出させる回収工程(3)を含む、ことを特徴とする。かかる製造方法によれば、調製器内の粒子を効率的に処理して高効率で触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体を製造することができる。
【0014】
また、本発明の製造方法において、前記調製器ガスが、触媒材料ガス、還元性ガス、酸素元素含有ガス、及び/又は、炭素原料含有ガスを含み、前記接触工程(2)は、触媒担持ステップ(i)、還元処理ステップ(ii)、酸化処理ステップ(iii)、および、繊維状炭素ナノ構造体合成ステップ(iv)の少なくともいずれか1つのステップを有し、前記触媒担持ステップ(i)は、前記調製器ガスとして前記触媒材料ガスを供給することにより、前記担体粒子に触媒を担持するステップであり、前記還元処理ステップ(ii)は、前記調製器ガスとして前記還元性ガスを供給することにより、前記担体粒子を還元処理するステップであり、前記酸化処理ステップ(iii)は、前記調製器ガスとして前記酸素元素含有ガスを供給することにより、前記担体粒子を酸化処理するステップであり、前記繊維状炭素ナノ構造体合成ステップ(iv)は、前記調製器ガスとして前記炭素原料含有ガスを供給することにより、前記触媒担持体上にて繊維状炭素ナノ構造体を合成するステップであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の製造方法において、前記調製器ガスを一定の流量及び/又は組成で供給し、前記工程(1)〜(3)及び/又は前記ステップ(i)〜(iv)の内の複数を同時に行うことが好ましい。製造効率を一層高めることができるからである。
【0016】
また、本発明の製造方法において、前記調製器ガスの流量及び/又は種類を切り替えるガス切替工程をさらに含み、前記工程(1)〜(3)及び/又は前記ステップ(i)〜(iv)の内の何れか2つ以上を時間的に分けて行うことが好ましい。得られる製造物の均一性を高めることができるからである。
【0017】
また、本発明の製造方法において、前記酸化処理ステップは、前記還元処理ステップ、および/または、前記触媒担持ステップの前に実施し、前記還元処理ステップは、前記酸化処理ステップ、および/または、前記触媒担持ステップの後に実施する、ことが好ましい。良好に粒子を処理することができるからである。
【0018】
また、本発明の製造方法において、前記担体粒子が、触媒成分の付着していない担体粒子、触媒前駆体付着済みの担体粒子、及び/又は失活した触媒の付着した担体粒子でありうる。
【0019】
また、本発明の製造方法において、前記触媒材料ガスは、Fe、および/またはAlを含み、前記還元性ガスは、水素、アンモニア、および/または炭化水素を含み、前記酸素元素含有ガスは、空気、酸素、水蒸気、および/または二酸化炭素を含みうる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、調製器内の粒子を効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の粒子処理装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明の粒子処理装置を用いて調製した触媒担持体をCNT合成用流動層装置に導入してCNTを合成した結果を示すSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
図3】スパッタリングを経て調製した触媒担持体を本発明の粒子処理装置に導入してCNTを合成した結果を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の粒子処理装置は、調製器内に収容された収容物である担体粒子に対して触媒を付着させることができる。また、本発明の粒子処理装置は、調製器内に収容された収容物である担体粒子を酸化し、或いは担体粒子に付着した触媒を活性化させることができる。さらに、本発明の粒子処理装置は調製器内に収容された収容物である触媒担持体上にて繊維状炭素ナノ構造体を合成することができる。本発明の粒子処理装置によれば、収容物である担体粒子を流動させることなく、上述したような各種処理を行うことも可能であるし、収容物である担体粒子を流動状態として、即ち調製器内にて流動層を形成することで、各種処理を行うことも可能である。
ここで、本明細書において、「担体粒子」とは、本発明の粒子処理装置による被処理対象である、触媒成分の付着していない担体粒子、触媒前駆体付着済みの担体粒子、及び/又は失活した触媒の付着した担体粒子を指すために用いる用語である。かかる担体粒子は、例えば、既に触媒材料が付着している担体粒子、及び未だ触媒材料を付着させていない担体粒子でありうる。特に、触媒前駆体付着済みの担体粒子は、一般的な湿式担持法にて触媒材料を付着させ、焼成処理を施す前の粒子である。すなわち、本発明の粒子処理装置は、未だ触媒材料を付着させていない状態の担体粒子に対して触媒材料を付着させるために用いることもできるし、既に触媒材料が付着している担体粒子に対して、更に触媒材料を付着させるために用いることもできる。
換言すると、本発明の粒子処理装置は、触媒担持体を用いて繊維状炭素ナノ構造体を形成する際の触媒担持体の繰り返し使用に際して、1回目の触媒担持に用いることもできるし、2回目以降の触媒担持に用いることができることを意味する。
さらに、本発明の粒子処理装置は、触媒材料を付着した触媒担持体を供給して、触媒を活性化するためにも用いることもできる。
本明細書において、「触媒担持体」とは、還元処理前の触媒担持体、及び/又は、還元処理後の触媒担持体を指すために用いる用語である。特に、還元処理前の触媒担持体とは、触媒材料の付着した担体粒子を焼成したものであり、また、例えば、金属酸化物を触媒成分として担持してなる、触媒担持体である。
【0023】
なお、本発明において、「粒子状」とは、アスペクト比が5未満であることをいう。なお、担体粒子のアスペクト比は、例えば、顕微鏡画像上で、任意に選択した100個の担体粒子について(最大長径/最大長径に直交する幅)の値を算出し、その平均値を算出することで、確認することができる。また、本発明の触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法は、本発明の粒子処理装置を用いて実施することができる。
また、本発明の粒子処理装置及び製造方法を用いて形成した触媒担持体は、例えば、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノファイバー等の繊維状炭素ナノ構造体の製造に好適に使用することができる。
【0024】
(粒子処理装置)
図1(a)は、本発明の粒子処理装置の構成の一例を示す概略図である。本発明の粒子処理装置100は、調製器10、第1配管20、及び調製器ガス供給管30を備える。第1配管20と調製器ガス供給管30とは接続部40にて接続されており、粒子処理装置100は、かかる接続部40の下端よりも上側に、担体粒子及び触媒担持体(即ち、粒子50)の移動を遮断するための部材を備えない。換言すれば、粒子処理装置100は、調製器10内から流下しうる担体粒子及び触媒担持体の移動を遮断するための物理的な機構を備えない。なお、調製器10、第1供給管20、及び調製器ガス供給管30は、特に限定されることなく、例えば、断面形状が円形であるガラス管やステンレス管により構成される。
【0025】
ここで、本明細書において、粒子処理装置100の「上」及び「下」は、流動層を形成する調製器10の長手方向を基準として、接続部40からみて調製器10の方向を「上」方向とし、粒子収容器70の方向を「下」方向として説明する。粒子処理装置100は、まず、調製器10内に担体粒子を収容し、かかる担体粒子に対して調製器ガス供給管30及び第1配管20を経て供給された調製器ガスを下側から供給して、調製器内で流動させることで、担体粒子に対して触媒を付着させる。以下、粒子処理装置100の各構成部についてより詳細に説明する。
【0026】
<調製器>
調製器10は、本体と下方に向かって外径が小さくなるテーパ部11とを有し、本体とテーパ部またはテーパ部にて粒子50を収容可能である。テーパ部11は、粒子50を収容可能であるともに、テーパ部11の底部に配置された排出口12から得られた触媒担持体を排出可能に構成されている。粒子50は、調製器内に収容された収容物であり、担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を含む。
【0027】
粒子50は、テーパ部11を含む調製器10の内部において流動層を形成している。具体的には、粒子50は、少なくとも一部が排出口12を介して下方向から吹きあげられて位置13にて支持され、調製器10の内部に留まり流動する。この流動により、粒子50の表面上に、調製器ガスが接触する。ここで、粒子50は、特に限定されることなくあらゆる粒子でありうる。例えば、粒子処理装置を用いてCNT等の繊維状炭素ナノ構造体の合成に使用するための粒子を処理する場合には、粒子50としては、アルミナビーズやムライトビーズのようなセラミック粒子を使用し得る。また、粒子50の粒子径は、特に限定されることなく、例えば、2mm以下であり、好ましくは1mm以下であり、通常、10μm以上でありうる。また、調製器ガスは、触媒材料ガス、還元性ガス、酸素元素含有ガス、及び/又は炭素原料含有ガスを含みうる。調製器ガスとして触媒材料ガスを供給すれば、担体粒子表面に触媒材料を付着させることができる。また、調製器ガスとして還元性ガスを供給すれば、担体粒子上の触媒を還元状態とすることができる。さらに、調製器ガスとして酸素元素含有ガスを供給すれば、担体粒子表面を酸化させることができる。さらにまた、調製器ガスとして炭素原料含有ガスを供給すれば、触媒担持体上にて繊維状炭素ナノ構造体を合成することができる。以下、各種調製器ガスについて詳述する。
【0028】
調製器ガスとして供給しうる触媒材料ガスとしては、特に限定されることなく、Si、Al、Mg、Fe、Co、及びNiを含む群より選択される少なくとも一種の元素を含有する化合物の蒸気が挙げられる。調製器ガスには、かかる化合物の蒸気を複数種含有させることもできる。ここで、触媒を担持させるにあたり、繊維状炭素ナノ構造体の製造時に繊維状炭素ナノ構造体の合成に寄与する触媒として機能する触媒成分に先立って、かかる触媒成分を担体粒子上に良好に担持させるための金属酸化物成分を担体粒子上に付着させることが好適である。そして、触媒材料として列挙した上記成分の中でも、Si、Al、及びMgが、このような金属酸化物成分を構成しうる成分として有効である。
【0029】
他方、上記成分の中でも、Fe、Co、及びNiは、担体粒子上にて触媒を形成しうる成分である。そのような成分を含む化合物としては、例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、ビス(シクロペンタジエニル)鉄(II)(以下、「フェロセン」とも称する)、塩化鉄(III)、及び鉄カルボニル等のFe含有触媒材料、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、及び塩化コバルト(II)等のCo含有触媒材料、及び、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル(II)、及びビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)等のNi含有触媒材料などが挙げられる。
【0030】
さらに、調製器ガスとして供給して担体粒子上に触媒を担持させるために用いる成分としては、Al及びFeが特に好ましい。より具体的には、Alを含む化合物の蒸気により、金属酸化物である酸化アルミニウムからなる層を形成し、かかる層によりFe触媒を担持させれば、得られた触媒担持体の触媒活性が良好となるからである。
【0031】
また、調製器ガスとしての還元性ガスは水素、アンモニア、及び/又はメタン等の炭化水素でありうる。触媒材料を付着させた担体粒子に対し、調製器ガスとして還元性ガスを供給して加熱すると、触媒原料を還元して触媒粒子を形成することができ、活性化された触媒担持体を得ることができる。
【0032】
さらに、調製器ガスとしての酸素元素含有ガスは、空気、酸素、水蒸気、及び/又は、二酸化炭素でありうる。調製器ガスとして酸素元素含有ガスを供給して粒子50表面を酸化することで、担体粒子表面の不純物や残留炭素成分を除去することができる。或いは、未使用かつ触媒を担持していない状態の担体粒子、即ち、無垢の担体粒子の表面を酸化すれば、触媒を担持するための金属酸化物や触媒を担体粒子表面上において良好に担持することができるようになる。
【0033】
さらにまた、調製器ガスとしての炭素原料含有ガスとしては、アルキン及びアルケン(オレフィン炭化水素)、アルカン(パラフィン炭化水素)、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、芳香族、及び一酸化炭素の中から選択される1種以上の炭素原料を含むガスを用いることができる。炭素原料含有ガスは、これらの炭素原料に加えて、アルゴン等の希ガス及び窒素等の不活性ガス、水素等の還元性ガス及び/又は二酸化炭素等の酸素元素含有ガスを含んでも良い。
【0034】
調製器10内で粒子50により流動層を形成するにあたり、粒子50の全てが自重で落下する速度以上であって、粒子50が調製器10外に飛ばされうる速度未満の速度で、調製器ガスを調製器10内に流入させることが好ましい。これにより、流動層を形成する粒子50の少なくとも一部を調製器10内にて流動状態を保つことが可能となる。なお、落下の速度は粒子50の大きさや密度に基づいて決定することができる。さらに、必要とする粒子50の量や、所望の処理時間等により、調製器10の容積も定めることができる。このように、テーパ部11の形状及び調製器10の管径及び容積は、必要とする粒子50の処理量、粒子の粒子径、及び粒子密度等に応じて適宜決定することができる。
【0035】
さらに、調製器ガスの流速の調節を容易にする観点から、例えば、調製器10の内径及び排出口12における内径の比率(調製器10の内径:排出口12の内径)は、3:1以上であることが好ましく、通常30:1以下である。ガス流速はガスが通過する管の断面積に応じて異なる。したがって、テーパ部11の上下において径の比率が3:1である場合には、テーパ部の下部に相当する排出口12におけるガス流速はテーパ部11よりも上側におけるガス流速の約10倍となる。よって、排出口12におけるガス流速を微調整することで、調製器10内におけるガス流速を適度に段階的に調節することができ、流動層を流動状態に保つために必要十分であるガス流速に設定することが容易になる。なお、テーパ部11の上部の管径が下部の管径の3倍未満であれば、調製器ガスの流量の調節が難しくなる虞がある。また、テーパ部11の上部の内径が下部の内径の30倍超であれば、粒子50の均一な流動や、粒子50の回収が難しくなることがある。
【0036】
さらに、調製器10は、調製器10内部を加熱する加熱機構14をさらに備えることが好ましい。加熱機構14は、特に限定されることなく、例えば各種ヒーターにより構成されうる。さらに、加熱機構14は調製器10の内部を反応温度まで加熱することができる。なお、反応温度は、通常、400℃以上1200℃以下である。
【0037】
<第1配管>
第1配管20は、テーパ部11の排出口12に連結されている。さらに、第1配管20は、調製器10と一体であっても良いし、別個の部品として形成されたものが調製器10と接続されたものであっても良い。
【0038】
<調製器ガス供給機構>
テーパ部11の排出口12からテーパ部11内に収容されている粒子50に向けて調製器ガスを供給可能な調製器ガス供給機構は、調製器ガス供給管30を含んでなる。調製器ガス供給管30は、接続部40にて第1配管20に対して接続されている。さらに、調製器ガス供給管30は、調製器ガス供給制御機構31、及び調製器ガス源(図示しない)を備えることが好ましい。調製器ガス供給制御機構31は、ガス流量を調節できる限りにおいて特に限定されることなく、例えば、バルブ、インバーターつきのポンプ、及びシャッター等により構成されうる。さらに、調製器ガス源は、特に限定されることなく、各種ガスを充てんしたボンベやタンクでありうる。図1(a)では、調製器ガス供給管を単一の管として示したが、調製器ガス供給管は、各種調製器ガス源とそれぞれ接続された複数のガス供給管として実装されても良い。この場合、調製器ガス供給機構は、各種ガスを切り替え可能な分岐手段を有しうる。
【0039】
また、図1(a)では、接続部40にて調製器ガス供給管30と第1配管20とが直交する態様を示すが、かかる接続部40では、これらの管は必ずしも直交していなくても良い。すなわち、調製器ガス供給管30と第1配管20とは、調製器ガス供給管30を経て第1配管20に導入された調製器ガスが、調製器10内へと導かれる限りにおいて、あらゆる配置態様とすることができる。例えば、調製器ガス供給管30は、接続部40にてやや下方に傾いて第1配管20に接続されていると、粒子50の移送時に調製器ガス供給管30に触媒担持体が入ることを防止できて、一層好適である。ここで、調製器ガス供給管30を経て第1配管20に導入された調製器ガスを、調製器10方向、即ち上方向に方向づけるためには、第1配管20内において、接続部40の上側と下側との間に圧力勾配を形成する必要がある。より具体的には、第1配管20内の管圧が、接続部40の上側で比較的低く、接続部40の下側で比較的高くなっている必要がある。図1(a)に示すように、第1配管20を中心として粒子処理装置100を見た場合に、装置の上側では、調製器10の上端が開放しており、反対に、装置の下側では、後述する粒子収容器70により閉塞している。このため、調製器ガス供給管30を介して、調製器ガスを粒子処理装置100内に導入すれば、第1配管内の管圧は、接続部40の下側で比較的高くなる。よって、調製器ガス供給管30を経て第1配管20に導入された調製器ガスは、上方向に方向づけられる。なお、接続部40より下側で、第1配管20に対してバルブ(図示しない)等の第1配管閉塞機構を設けることで、このような圧力勾配を一層容易に形成することができる。
【0040】
<粒子収容器>
粒子収容器70は、調製器10内で製造された、触媒を担持した触媒担持体を収容する。調製器ガス供給管から供給する調製器ガスの流速を小さくする、或いは調整器ガスの供給を停止すれば、図1(b)に示すように、調製器10内の粒子50が落下して、粒子収容器70内へと移動する。なお、第1配管20が、接続部40よりも下側にバルブを有する場合には、調製器ガスの流速を小さくする、或いは調整器ガスの供給を停止することに先立って、かかるバルブを開放する。粒子50により第1配管20に目詰まりが生じることを回避するためである。粒子収容器70は、特に限定されることなく、任意の形状のガラスやスチール等の材質により構成することができる。さらに、粒子収容器70は、蓋71を有することが好ましい。蓋71は、第1供給管20と粒子収容器70とを気密に連結できる限りにおいて、特に限定されることなく、任意の材質及び形状にて構成することができる。
【0041】
(触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法)
本発明の粒子処理装置を用いた触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法は、調製器10内部を反応温度まで加熱する工程(加熱工程)、加熱状態の調製器10内に、担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方を供給する供給工程(粒子供給工程)、調製器10内にて、担体粒子及び粒子状の触媒担持体の少なくとも一方と調製器ガスとを接触させて触媒担持体及び繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を得る接触工程(調製器ガス接触工程)、及び調製器ガスの流量を調節して調製器10内の触媒担持体及び前記繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体の少なくとも一方を流下させる工程(回収工程)を含みうる。より具体的には、本発明の粒子処理装置を用いた触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の製造方法にあたり、まず、調製器10内を加熱状態に保持する。そして、上記粒子供給工程にて、調製器10に対して中程度の流量で調製器ガスを供給しつつ粒子を供給し、調製器ガスを大流量で供給して粒子に接触させ、上記回収工程にてガス流量を低下又はゼロとして処理済粒子を流下させて回収することが好ましい。そして、上記粒子供給工程から回収工程までの操作を繰り返すことが好ましい。
以下、各工程について詳述する。なお、各工程において用いる各種ガスとしては、上述したガスと同様のガスを用いることができる。
【0042】
<粒子供給工程>
粒子供給工程では、加熱状態の調製器10内に、粒子を供給する。この際、調製器10内に調製器ガスを供給しつつ、粒子を供給することができる。なお、粒子としては、担体粒子及び触媒担持体の少なくとも一方を供給し得る。
【0043】
<調製器ガス接触工程>
調製器ガス接触工程では、供給するガスの種類を選択又は変更することで、1)担体粒子の表面を酸化させる、2)担体粒子に金属酸化物又は触媒を担持させる、3)担体粒子を還元処理する、及び/又は、4)触媒担持体上にて繊維状炭素ナノ構造体を合成することができる。なお、担体粒子表面を酸化する目的において供給する酸素元素含有ガスを含む調製器ガス中における酸素元素含有ガスの濃度は、通常、1体積%以上であり、好ましくは、5体積%以上である。酸化処理を効率的に実施することができるからである。
【0044】
また、担体粒子表面に金属酸化物を担持させるにあたり供給する調製器ガスは、通常、Si、Al、及びMgの中から選択される1種以上の元素を含有するガスを、0.01体積%以上10体積%以下、酸素元素含有ガスを、0.01体積%以上21体積%以下含みうる。これらの他に、調製器ガスは、窒素などの不活性ガスを、通常、69体積%以上含みうる。なお、Si、Al、及びMgの中から選択される1種以上の元素を含有するガスとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド(化学式:Al(O-i-Pr)3[i-Prはイソプロピル基−CH(CH])が挙げられる。
【0045】
また、担体粒子に触媒を担持させるにあたり供給する調製器ガスは、通常、Fe、Co、及びNiを含む群より選択される少なくとも一種の元素を含有する化合物の蒸気を、0.001体積%以上10体積%以下、酸素元素含有ガスを、0.01体積%以上21体積%以下含みうる。これらの他に、調製器ガスは、窒素などの不活性ガスを、通常、69体積%以上含みうる。具体的には、調製器ガスとして、Feを含有する化合物であるフェロセンを気体化して得たガスを導入すれば、担体粒子表面にFe触媒を担持させることができる。このようにして、調製器ガス接触工程において担体粒子に触媒を付着させることができる。
【0046】
さらに、触媒を担持させた担体粒子に対して、調製器ガスとして水素、アンモニア、メタン等の還元性ガスを含有するガスを供給すれば、調製器10にて還元状態の触媒担持体を製造することができる。なお、この場合、調製器ガスの好ましくは1%以上が還元性ガスであればよく、100%が還元性ガスであってもよい。
【0047】
さらにまた、触媒担持体に対して、調製器ガスとして上述したような炭素原料含有ガスを供給すれば、調製器10内にて繊維状炭素ナノ構造体を合成することができる。炭素原料含有ガス中における炭素原料の濃度は、特に限定されることなく、通常、0.5体積%以上である。なお、炭素源を含む原料ガスの送気圧力は、特に限定されることなく、例えば、0.001MPa以上1.500MPa以下とすることができる。そして、合成工程に要する時間や、第2ガス中における炭素原料濃度等は、所望の繊維状炭素ナノ構造体の性状及び製造効率に応じて、適宜設定することができる。例えば、合成工程の時間を長くすることで繊維状炭素ナノ構造体の長さを長くすることができる。また、炭素原料ガス中における炭素原料濃度を上げることで、製造効率を向上させることができる。
【0048】
<回収工程>
そして、調製器10内に導入する調製器ガスの流速を小さくする、或いは調整器ガスの供給を停止することで、調製器10内で得られた処理済粒子を、第1配管20を通じて粒子収容器70に移送することができる。
【0049】
なお、調製器ガスを低流速で供給することで、粒子の供給工程、調製器ガス接触工程、回収工程を同時に実施しても良いし、調製器ガス接触工程の最中に調製器ガスの流速を小さくすることで、回収工程を実施しても良いし、調製器ガス接触工程を完了した後に回収工程を実施しても良い。例えば、調製器ガス接触工程の最中に回収工程を実施する際には、調製器ガスの流速を、調製器10から一定速度で触媒担持体が流下するような流速に設定して、一定速度で粒子を回収するようにすることができる。さらにこのとき、一定速度で調製器10に対して粒子を投入することができる。このようにすれば、一定の速度で処理対象の粒子を「連続的に」処理することができる。なお、「連続的」な処理では、粒子の投入量と流下量とが略同一となるように調節して、調製器10内に滞留する粒子量が略一定となるようにすることが好ましい。
【0050】
一方、調製器ガス接触工程を完了した後に回収工程を実施する場合には、調製器10に対して、粒子を一旦導入した後に、調製器ガス接触工程を終了するまでは追加で導入することなく、目的に応じた各種ガスを切り替えて調製器ガスとして供給し、所定時間反応させた後に、調製器ガスの流速を小さくし、或いは調整器ガスの供給を停止して、調製器10内の粒子の略全量を流下させることで、目的の処理を経た処理済粒子を回収することができる。かかる処理によれば、一旦加熱工程を行った後に、「半連続的に」目的の処理を経た処理済粒子を得ることができる。なお、半連続的な製造方法によれば、同じ投入タイミングで投入された粒子について、処理時間を略同一に揃えることができる。そして、このような半連続的な製造方法を繰り返した場合に、各回の処理時間を同一とすれば、得られる触媒担持体及び/又は繊維状炭素ナノ構造体の性状を略均一に揃えることができる。このため、例えば、得られた触媒担持体を、繊維状炭素ナノ構造体の合成に用いた場合、或いは、調製器10内にて繊維状炭素ナノ構造体の合成を行った場合に、得られる繊維状炭素ナノ構造体の径や長さ等の属性を均一化することができる。
【0051】
(触媒担持体を用いたカーボンナノチューブの合成)
ここで、上述した粒子処理装置を用いて触媒担持体を得て、得られた触媒担持体を本発明の粒子処理装置とは別の合成器を用いてカーボンナノチューブを合成する際の手順の一例を以下に説明する。まず、上述のようにして得られた触媒担持体を合成器内に配置する。ここで、合成器は、粒子状の触媒担持体を用いて繊維状炭素ナノ構造体を合成できる容器である限りにおいて特に限定されることなく、例えば、気流層合成器、固定層合成器、移動層合成器、及び流動層合成器等でありうる。以下、流動層合成器を用いたものとして説明する。
【0052】
まず、炭素源を含む原料ガスを流動層合成器内に送気して、触媒担持体と接触させて触媒担持体上に繊維状炭素ナノ構造体を成長させる。炭素源としては、上述した本発明の粒子処理装置100を用いて繊維状炭素ナノ構造体を合成する場合に、上記調製器ガスとして供給し得る炭素原料含有ガスを用いることができる。以下、流動層合成器内に送気するガスを「合成器ガス」とも称する。なお、合成器ガスとしての炭素源を含む原料ガスの送気圧力も、上記調製器ガスとしての炭素原料含有ガスと同様とすることができる。
【0053】
そして、得られた繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体は、例えば、アルゴン等の希ガスや、窒素等の不活性ガスを一時的に大流量で供給して分離器に移送し、回収することができる。分離器で不活性ガス流から重力沈降、遠心分離、ろ過などにより分離された繊維状炭素ナノ構造体を有する触媒担持体は、特に限定されることなく、例えば、振とうする、液中に投入して撹拌する等の比較的簡易な方法で繊維状炭素ナノ構造体と触媒担持体とに分離することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
実施例1において、粒子処理効率、触媒担持体の均一性、金属酸化物層の換算厚み、及びCNTの収量は以下の方法により評価した。
【0056】
<処理効率>
触媒担持に使用した粒子処理装置における、目詰まりが発生しないことを確認した。目詰まりの発生が無ければ粒子処理効率に優れる。
<触媒担持体の均一性>
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)付属のエネルギー分散X線分光装置(アメテック社製、EDAX Genesis)を用いて、実施例で得られた触媒担持体について元素分析を行い、触媒担持が均一であることを確認した。
【0057】
<触媒層及び金属酸化物層の換算厚み>
「触媒層の触媒金属換算厚み」は、1つの触媒層の単位面積あたりの触媒金属の量がa(g/cm)、触媒金属の真密度がb(g/cm)の場合、両者の比a/b(cm)=10a/b(nm)が「触媒金属換算厚み」となる。走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)付属のエネルギー分散X線分光装置(アメテック社製、EDAX Genesis)を用いて、触媒担持体についての特性X線強度を測定し、得られた特性X線強度測定値を予め得たFe標準膜を用いて得た検量線と比較して、触媒層の触媒金属換算厚みを測定した。同様にして、金属酸化物層の金属酸化物換算厚みも測定した。なお、触媒層の触媒金属換算厚みについては、Fe標準膜を用いて得た検量線を基準とし、金属酸化物層の金属酸化物換算厚みについては、Al標準膜を用いて得た検量線を基準として、それぞれの換算厚みを測定した。
【0058】
<カーボンナノチューブの収量>
CNT合成用流動層装置よりCNT合成中に排気されるガスについて、水素炎イオン化型検出器を備えるガスクロマトグラフ(島津製作所社製、GC−2014)により分析した。分析値より、排気ガス中における炭素含有成分の質量を算出し、CNTの合成に際してCNT合成用流動層装置に導入した炭素原料の質量(C)から差し引いてCNTに転化したと考えられる炭素原料の質量(CCNT,gas)を算出した。そして、得られた値について(CCNT,gas/C)×100を計算して炭素原料の転換率を算出した。また、CNT合成前後の触媒担持体の質量変化を電子天秤(島津製作所製、型番AUW120D)で測定し、CNTの質量(CCNT,powder)を求め、(CCNT,powder/Cs)×100を計算して、CNTの収率を算出した。
【0059】
<触媒担持体の製造>
[準備工程]
粒子処理装置として、図1(a)に示したような構成を有する粒子処理装置を利用した。担体粒子として、メーカー公称粒子径150μmのムライト粉末(伊藤忠セラテック株式会社製、「ナイガイセラビーズ60」、#750)70gを準備した。そして、ムライト粉末70gを、テーパ上部の管内径が5.1cm、下端の管内径が0.6cmのガラス管よりなる調製器を有する粒子処理装置に充填し、酸素4体積%、窒素96体積%雰囲気下で800℃まで40℃/分で昇温した。
[調製器ガス接触工程]
アルミニウムイソプロポキシド(和光純薬工業社製、「012-16012」、化学式:Al(O-i-Pr)3[i-Prはイソプロピル基−CH(CH])の蒸気を0.03体積%(設定値)、酸素を3.8体積%、及び窒素を96.2体積%含有するガスを10.5slmで5分間供給して、支持体としてのムライト粉末上に、金属酸化物としての酸化アルミニウムを形成した。
次いで、フェロセン(和光純薬工業社製、「060-05981」)蒸気を0.009体積%(設定値)、酸素を3.9体積%、窒素を96.1体積%含有するガスを10.2slmで5分間供給して、Feにより形成される微粒子を含む触媒層を形成した。なお、調製器ガス接触工程では、触媒担持体を調製器内に追加で導入しなかった。かかる調製器ガス接触工程をさらに4回繰り返した。得られた触媒担持体を、上述した方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0060】
<CNTの合成>
そして、触媒担持体を、管内径2.2cmのガラス管よりなるカーボンナノチューブ合成用流動層装置に層高3cmになるように充填した。CNT合成用流動層装置内を、水素10体積%、窒素90体積%を含む雰囲気下で800℃に昇温し、触媒担持体を還元した。そして、CNT合成用流動層装置内に、炭素源としてのアセチレン(C22)を0.7体積%と、水素10体積%と、二酸化炭素3体積%と、窒素86.3体積%とを含む合成器ガスを2slmで10分間供給して、CNTを合成した。CNT合成後、粒子処理装置を冷却してCNT付き触媒担持体を回収した。得られたCNTについて、上述した方法に従って各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例1に従って得られた表面にCNTを有する触媒担持体のSEM画像を図2に示す。図2によれば、触媒担持体粒子の全面にて、CNTが成長していることがわかる。
【0061】
【表1】
【0062】
よって、表1により、調製器ガス供給管と第1配管との接続部よりも上側に、触媒担持体の移動を遮断するための部材を備えない本発明による粒子処理装置によれば、効率的に担体粒子を処理できることが明らかとなった。また、得られた触媒担持体は、良好な触媒活性を呈し得ることが分かった。
【0063】
(実施例2)
本発明の粒子処理装置ではなく、ドラムスパッタ装置を用いて得た触媒担持体用いた。そして、かかる触媒担持体を、本発明に従う粒子処理装置に導入して、CNTを合成した。
<触媒担持体の調製>
担体粒子である直径0.3mmのAlビーズ100gをドラムスパッタ装置内に充填した。ドラムスパッタ装置により、Alビーズ表面に、金属酸化物層であるAl層と触媒層であるFe層を交互に4層形成した。層構成は以下の通りとなるように、ドラムスパッタ装置を操作した。
第1層(担体粒子表面に隣接する層):Al層(平均膜厚:15nm)
第2層:Fe層(平均膜厚:0.6nm)
第3層:Al層(平均膜厚:15nm)
第4層:Fe層(平均膜厚:2.1nm)
<CNTの合成>
CNT合成を行うための粒子処理装置として、図1(a)に示したような構成を有する粒子処理装置を利用した。調製器のテーパ上部の管内径は4cmであった。電気炉のプログラム温度調整器により、調製器を昇温し、プログラム温度調整器の温度が300℃に到達した時点で、窒素ガスを5slmで流通を開始し、上述のようにして得られた触媒担持体30gを調製器内に投入した。そして、1分間パージした後に、流入ガスの組成が、水素10体積%、二酸化炭素1体積%、窒素89体積%となるように調節した。そして、昇温開始から10分後の時点で、プログラム温度調整器の温度が725℃に到達したことを確認し、流入ガスの流量を3slmに変更して、5分間アニーリングした。さらに、流入ガスを、流量:2.5slm、組成:アセチレン1体積%、水素10体積%、二酸化炭素1体積%、窒素88%となるように調節して、20分間保持し、CNTを合成した。その後、粒子処理装置を冷却し、CNT付き触媒担持体を回収した。粒子処理効率を実施例1と同様に評価したところ、粒子処理装置に目詰まりは発生しておらず、粒子処理効率に優れていた。実施例2に従って得られた、表面にCNTを有する触媒担持体のSEM画像を図3に示す。
図3より、本発明に従う粒子処理装置を用いて、CNTを合成可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、調製器内の粒子を効率的に処理することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 調製器
11 テーパ部
12 排出口
13 位置
14 加熱機構
20 第1配管
30 調製器ガス供給管
31 調製器ガス供給制御機構
40 接続部
50 粒子
70 粒子収容器
71 蓋
100 粒子処理装置
図1
図2
図3