(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニトリル系化合物が、マロノニトリル、スクシノニトリル、エトキシメチレンマロノニトリル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、フタロニトリル、及び4−フルオロフタロニトリルから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固体電解質。
【背景技術】
【0003】
電解質は電気化学デバイスにおける重要な構成要素である。現在、リチウム二次電池の電解質は、主に有機溶媒とリチウム塩からなるが、有機溶媒は、沸点が低く、引火点が低く、燃えやすく揮発しやすく、リチウム二次電池の安全性に非常に大きな影響を与える。同時に、リチウム二次電池の適用分野の拡大に伴い、電池の出力密度とエネルギー密度も向上し続けており、有機電解質に起因するセキュリティリスクがますます顕著となっている。
【0004】
有機電解質による着火、爆発、液漏れ等のセキュリティリスクは、高比エネルギーのリチウムイオン電池の発展を厳しく制約している。そのため、安全性が高く、柔軟性が良く、リチウムデンドライトの成長を抑制できる等の利点を有する固体電解質が広く注目されている。しかしながら、今のところ、固体電解質には、室温でのイオン導電率が低めであり、電極/固体電解質の界面抵抗が大きすぎる等の問題が普遍的に存在し、実際にリチウムイオン電池に適用することが制限されている。
【0005】
リチウム二次電池用固体電解質は、良好な機械特性と高い安全性を有するため、電解液のリークを防止でき、且つセパレータを必要としないため、すでに広く注目されている。しかしながら、固体電解質の多くは、室温でのイオン導電率が比較的低く(10
−5〜10
−6Scm
−1)、実際に適用することは制限されている。これまでに、例えば、フィラーのドーピング、重合体のブレンド、共重合および架橋等の対策をとり、そのイオン導電率を向上させてきたが、しかしながら、イオン導電率は依然として理想的ではない。
【0006】
イオン液体は、基本的に不揮発性である、耐熱性が高い、燃えにくい、電気化学的安定性が良い等の一連の優れた特性を有し、リチウム塩と複合して電解質としてリチウム二次電池に適用することで、電池の安全性を高めることができる。これまで、先行技術におけるイオン液体には、モノカチオンイオン液体とジカチオンイオン液体が存在する。しかしながら、この種の電解質はリチウム二次電池中では依然として液相で存在しており、電池の液漏れ問題を解決することはできず、電池の安全性と安定性を確保することは困難である。
【0007】
ニトリル系化合物は高い極性を有し、複数種のリチウム塩を溶解する良好な能力を有する。
【0008】
例えば、研究により、スクシノニトリル/リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド系の電解質は、室温におけるイオン導電率が10
−3Scm
−1に達する(Nature materials, 2004, 3, 476-481)ことを見出した。
【0009】
例えば、電解質中にポリアクリルニトリル(ElectrochemistryCommunications, 2008, 10, 1912-1915)とスクシノニトリルを含む電解質や、キチン(Journal of Membrane Science, 2014, 468, 149-154)とスクシノニトリルを含む電解質など、スクシノニトリルが重合体マトリックスに取り込まれた電解質も存在する。
【0010】
最近、研究者により、In−Situ合成技術を用いて作製したニトリル系固体電解質(AdvancedEnergy Materials, 2015, 5, 1500353)が開発されている。この種の固体電解質は、シアノエチル化ポリビニルアルコール(PVA−CN)モノマーをスクシノニトリル固体電解質に溶解させて前駆体を形成し、さらに前駆体をポリアクリロニトリル電界紡糸繊維膜ネットワークに浸し、In−Situ重合を行って製造されたものである。しかし、リチウム二次電池に適用する場合、電池の室温及び低い充放電レート(0.1C)での放電比容量はまずまずであるが、充放電レート(例えば0.5C及び1.0C)が高くなるにつれて、その放電比容量は大幅に低下する。
【0011】
そのため、製造したリチウム二次電池が、高い充放電レートにおいても放電比容量が低下せず、高い充放電レートにおいても高い放電比容量と良好なサイクル特性を有する電解質を開発できることが切に要求されている。
【0012】
リチウム二次電池にとって、当該電池が高い充放電レートにおいて高い放電比容量と優れたサイクル特性を有することは至極重要である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0032】
本発明は、イオン液体重合体、ニトリル系化合物及びリチウム塩を含む固体電解質を提供する。
【0033】
<イオン液体重合体>
前記イオン液体重合体は、下記式(1)の重合体、及び下記式(2)の重合体から選ばれる一種である。本発明において、イオン液体重合体とは、イオン液体を構成する陽イオン種または陰イオン種に重合性不飽和基を導入し、これらを重合したものである。
【化3】
【化4】
但し、式(1)中、nは300≦n≦4000である。
但し、式(2)中、mは50≦m≦2000であり、R
1は水素原子若しくはC1−C10の直鎖脂肪族アルキル基であり、R
2はC1−C10の直鎖脂肪族アルキル基若しくはエーテル基である。
【0034】
nは、300〜4000の整数を示し、500〜3900であることが好ましく、1000〜3700であることがより好ましく、1500〜3500であることが更に好ましく、2000〜3000であることが特に好ましい。mは、50〜2000の整数を示し、200〜1800であることが好ましく、500〜1500であることがより好ましい。
【0035】
式(1)及び(2)中のB
−は、BF
4−、PF
6−、(CF
3SO
2)
2N
−、(FSO
2)
2N
−、[C(SO
2F)
3]
−、CF
3BF
3-、C
2F
5BF
3-、C
3F
7BF
3-、C
4F
9BF
3-、[C(SO
2CF
3)
3]
−、CF
3SO
3-、CF
3COO
-、CH
3COO
-のいずれかが挙げられる。
【0036】
前記のC1−C10の直鎖脂肪族アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基である。前記直鎖脂肪族アルキル基はC1−C5の直鎖脂肪族アルキル基が好ましく,例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
【0037】
前記R
2のエーテル基は例えば−CH
2OCH
3、−CH
2CH
2OCH
3、−CH
2CH
2OCH
2CH
3、−CH
2CH
2OCH
2CH
2CH
3若しくは−CH
2CH
2CH
2OCH
3であり、−CH
2CH
2OCH
3若しくは−CH
2CH
2OCH
2CH
3が好ましい。
【0038】
R
1は、水素原子若しくはメチル基が好ましい。R
2は、メチル基、エチル基、若しくは−CH
2CH
2OCH
3のエーテル基が好ましい。
【0039】
<イオン液体重合体の作製方法>
前記イオン液体重合体の作製方法は、特に限定されるものではなく、以下のような製造方法であってよい。
【0040】
一般式(1)のイオン液体重合体の製造方法は、例えば文献A.-L. Pont, R. Marcilla,I. De Meatza, H. Grande, D. Mecerreyes, 電源技術学報(Journalof Power Sources) (2009, 188, 558-563)に記載の製造方法を用いることができる。
【0041】
一般式(1)のイオン液体重合体は、以下の製造方法により製造できる。
ポリジメチルジアリルアンモニアクロライド水溶液(濃度20.00質量%)を脱イオン水に溶解し、攪拌してポリジメチルジアリルアンモニアクロライド含有溶液を形成する。
別途、リチウム塩を脱イオン水に溶解し、攪拌してリチウム塩含有溶液を形成する。
ポリジメチルジアリルアンモニアクロライドとリチウム塩とのモル比が1:1.2〜1:2.0となる割合で前記製造した二つの溶液を混合して調合し、2〜8時間攪拌反応させ、固体が生成すると固体をろ過収集する。その後、脱イオン水を用いて、硝酸銀検出で洗浄物にハロゲンアニオンが含まれなくなるまで洗浄し、最後に12〜48時間真空乾燥し、一般式(1)のイオン液体重合体を製造する。
【0042】
前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロほう酸リチウム等を用いることができる。
【0043】
本発明の一般式(1)のイオン液体重合体の粘度平均分子量M
vは、1.0×10
5〜5.0×10
6g mol
−1であることが好ましく、3.0×10
5〜1.0×10
6g mol
−1(ポリメタクリル酸メチルを標準物質とする)であることがより好ましい。1.0×10
5g mol
−1以上であると、イオン液体重合体を溶媒に溶解し、塗布乾燥により形成したイオン液体重合体のシート強度が十分に担保でき、5.0×10
6g mol
−1以下であるとイオン液体重合体を溶媒に溶解しやすく、また塗布形成のハンドリング性を向上できる。
前記イオン液体重合体(1)の確認方法は、
1H NMRスペクトル図である。
【0044】
一般式(2)のイオン液体重合体の製造方法は、例えば文献K. Yin, Z. X. Zhang,L. Yang, S.-i. Hirano、電源技術学報(Journal of PowerSources)(2014, 258, 150-154)に記載の製造方法を用いることができる。
【0045】
一般式(2)の重合体のイオン液体重合体は、以下の製造方法により製造できる。
第一段階:エチレン性不飽和基含有イミダゾール系モノマーを溶媒に溶解し、開始剤が前記エチレン性不飽和基含有イミダゾール系モノマーの質量の0.2〜1.0%を占める割合で開始剤を加え、ラジカル重合反応を行う。アルゴンガス等保護ガスの保護下において、60〜90℃で、還流状態の下、6〜12時間攪拌反応させ、固体すなわち析出した重合体が生成してからろ過し、その後溶媒を用いて重合体を洗浄し、60〜90℃で12〜48時間真空乾燥し、イミダゾール構造を含む重合体を製造する。
【0046】
エチレン性不飽和基含有イミダゾール系モノマーは、1−ビニルイミダゾール、1−プロペニルイミダゾール等であってもよい。
重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプタノニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルであってよい。
【0047】
溶媒はトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、アセトン、ガンマブチロラクトン、N−メチルピロリドン等であってよい。その中でもアセトンが好ましい。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
製造した重合体の分子量は、粘度平均分子量M
vが1.0×10
4〜5.0×10
5g mol
−1(ポリメタクリル酸メチルを標準物質とする)である。
【0049】
第二段階:第一段階で製造したイミダゾール構造を含む重合体と、ハロゲン化炭化水素若しくはハロゲン化エーテルとをモル比1:1.5〜1:2.0で溶媒に溶解し、40〜80℃で24〜72時間攪拌反応させ、溶媒を減圧留去する。固体、すなわち析出した重合物を収集し、その固体を無水ジエチルエーテルで3回洗浄し、回転蒸発によりジエチルエーテルを除去し、12〜48時間真空乾燥し、ハロゲンアニオン含有イオン液体重合体を得る。
【0050】
ここでの溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール等が挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素は、ブロモエタン、ブロモプロパン、ブロモブタン等であってよい。
前記ハロゲン化エーテルは、2−ブロモエチルメチルエーテル、ブロモメチルメチルエーテル,2−ブロモエチルエチルエーテル等であってよい。
【0051】
製造したハロゲンアニオン含有イオン液体重合体の分子量は、粘度平均分子量M
vが1.0×10
5〜5.0×10
6g mol
−1(ポリメタクリル酸メチルを標準物質とする)であることが好ましい。
【0052】
第三段階:第二段階で得られたハロゲンアニオン含有イオン液体重合体及びリチウム塩をモル比1:1.2〜1:2.0で脱イオン水に溶解し、2〜8時間攪拌反応させ、固体が生成すると固体(析出した重合体)をろ過収集し、その後脱イオン水を用いて、硝酸銀検出で洗浄物にハロゲンアニオンが含まれなくなるまで洗浄する。最後に12〜48時間真空乾燥し、一般式(2)のイオン液体重合体を得る。
【0053】
前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロほう酸リチウム等であってよい。
【0054】
本発明の一般式(2)のイオン液体重合体は、粘度平均分子量M
vが1.0×10
5〜5.0×10
6g mol
−1(ポリメタクリル酸メチルを標準物質とする)であることが好ましく、1.0×10
5〜1.0×10
6g mol
−1あることがより好ましい。1.0×10
5g mol
−1以上であると、イオン液体重合体を溶媒に溶解し、塗布乾燥により形成したイオン液体重合体のシート強度が十分に担保でき、5.0×10
6g mol
−1以下であるとイオン液体重合体を溶媒に溶解しやすく、また塗布形成のハンドリング性を向上できる。
前記イオン液体重合体の確認方法は、
1H NMRスペクトル図である。
【0055】
本発明で用いるニトリル系化合物は、マロノニトリル、スクシノニトリル、エトキシメチレンマロノニトリル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、フタロニトリル及び4−フルオロフタロニトリルから選ばれる一種であり、好ましくは、エトキシメチレンマロノニトリル若しくはスクシノニトリルである。
前記ニトリル系化合物は通常の製造方法により製造してもよいし、市場から直接購入してもよい。
【0056】
例えば、本発明で用いるニトリル系化合物におけるスクシノニトリルは、福建創▲シン▼科技開発有限公司が生産したスクシノニトリルを用いてもよい。本発明のマロノニトリル、エトキシメチレンマロノニトリル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、フタロニトリル及び4−フルオロフタロニトリルは、アラジン社が生産したニトリル系化合物を商品として直接購入して用いることができる。また、東京化成工業株式会社製のスクシノニトリル、マロノニトリル、エトキシメチレンマロノニトリル、テレフタロニトリル、イソフタロニトリル、フタロニトリル及びテトラフルオロフタロニトリル(4−フルオロフタロニトリル)を使用することもできる。
【0057】
本発明の固体電解質で用いるリチウム塩としては、リチウムイオン電池用の電解液の電解質として使用可能なリチウム塩であれば特に制限はないが、以下に示す無機リチウム塩、含フッ素有機リチウム塩やオキサラトボレート塩等が挙げられる。
【0058】
無機リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6等の無機フッ化物塩や、LiClO
4、LiBrO
4、LiIO
4等の過ハロゲン酸塩や、LiAlCl
4等の無機塩化物塩等が挙げられる。
【0059】
含フッ素有機リチウム塩としては、LiCF
3SO
3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2---、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
9)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(SO
2F)
3、等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF
5(CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
3)
3]、Li[PF
5(CF
2CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
2CF
3)
3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等が挙げられる。
【0060】
オキサラトボレート塩としては、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等が挙げられる。
【0061】
本発明の固体電解質で用いるリチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが好ましく、いずれも森田化工(張家港)有限公司が生産したリチウム塩を商品として直接購入して用いることができる。また、東京化成工業株式会社が販売するリチウム塩を用いることもできる。
【0062】
本発明において、前記イオン液体重合体と前記ニトリル系化合物との質量比は、好ましくは1:0.1〜1:2.0であり、より好ましくは1:0.2〜1:1.8であり、更に好ましくは1:0.3〜1:1.5である。前記ニトリル系化合物の質量比が0.1より大きいと電解質膜の電気化学特性が向上し、0.3以上であると、電気化学特性がより向上する。前記ニトリル系化合物の質量比が2.0より小さいと、電解質膜の粘つきを抑制して、ダイから剥がしやすくなり、1.5以下であるとより良い。
【0063】
前記イオン液体重合体と前記リチウム塩との質量比は、1:0.1〜1:1.0であり、より好ましくは1:0.2〜1:0.9であり、更に好ましくは1:0.3〜1:0.8である。前記リチウム塩の質量比が0.1より小さいと、固体電解質内のリチウムイオンキャリア濃度が低くなり、イオン伝導度が低下する傾向にあり、リチウム塩の質量比が1.0を超えると、固体電解質膜が脆くなる傾向にある。
【0064】
本発明は前記の固体電解質を含有する電解質膜をも提供する。
本発明は以下の工程を含む前記固体電解質膜の製造方法をも提供する。
(1)イオン液体重合体とニトリル系化合物との質量比は好ましくは、1:0.1〜1:2.0であり、より好ましくは1:0.2〜1:1.8であり、更に好ましくは1:0.3〜1:1.5である。そして、イオン液体重合体とリチウム塩との質量比は好ましくは1:0.1〜1:1.0であり、より好ましくは1:0.2〜1:0.9であり、更に好ましくは1:0.3〜1:0.8である。上記の割合となるように前記イオン液体重合体、前記ニトリル系化合物及び前記リチウム塩を溶媒に溶解し、均一に混合して混合液を製造する工程。
(2)工程(1)で得られた混合液を型板上に塗布し、固体電解質膜を製造する工程。
固体電解質膜の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0065】
本発明の固体電解質は、リチウム二次電池に適用される、即ち、本発明は前記のイオン液体重合体固体電解質膜を含有するリチウム二次電池をも提供する。
本発明の固体電解質はLi/LiFePO
4電池に用いるのが好ましい。
【0066】
また、本発明の固体電解質は難燃性を有することから、リチウム二次電池の安全性の向上に寄与することができる。更に、本発明の電解質は固体であることから、バイポーラ電極を用いることができる。バイポーラ電極を用いることで、従来のリチウム二次電池では実現できない高エネルギー密度の電池を作製できる。
【0067】
<リチウム二次電池の作製及び組立方法>
本実施形態のリチウム二次電池の構成例について、
図8を参照しながら説明するが、リチウム二次電池は
図8の構成に限定されるものではない。
図8に示すリチウム二次電池では、負極活物質層2と正極活物質層4との間に固体電解質膜3が配置されている。負極活物質層2は、負極集電体1上に形成されており、正極活物質層4は、正極集電体5上に形成されている。(以下、負極集電体1上に形成された負極活物質層2も含めて負極シートとも呼び、正極集電体5上に形成された正極活物質層4も含めて正極シートとも呼ぶ。)
【0068】
以下、本発明のリチウム二次電池について、構成を説明する。
1.固体電解質層
本発明のリチウム二次電池における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。固体電解質層は固体電解質膜を含み、例えば、固体電解質を電極に塗布して形成された形態であってもよい。本発明においては、固体電解質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0069】
2.正極シート
本発明のリチウム二次電池における正極シートは、少なくとも正極活物質を含有する層(即ち、正極活物質層)である。また、正極物質層は、正極活物質の他に、導電材および結着剤の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。
【0070】
正極活物質の種類は、特に限定されるものではないが、例えば酸化物活物質を挙げることができ、酸化物活物質としては、例えばLiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、LiVO
2、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2等の岩塩層状型活物質、LiMn
2O
4、Li(Ni
0.5Mn
1.5)O
4等のスピネル型活物質、LiFePO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、LiCuPO
4等のオリビン型活物質等を挙げることができる。熱安定性の観点からはリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を用いることが好ましい。
【0071】
導電材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを挙げることができる。
【0072】
一方、結着剤としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材を挙げることができる。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。また、正極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0073】
また、正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。
【0074】
3.負極シート
本発明における負極シートは、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材および結着材の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。
【0075】
負極活物質の種類は、特に限定されるものではないが、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物等を挙げることができる。金属活物質に含まれる金属元素としては、例えば、Li、Al、Mg、In、Si、Sn等を挙げることができる。負極活物質としては、Li金属、カーボン、Li
4Ti
5O
12を用いることが好ましい。
【0076】
導電材および結着剤については、上述した正極活物質層に記載した材料と同様の材料を用いることができる。また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。また、負極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0077】
また、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。
【0078】
4.その他の構成
電池ケースの材料は、一般的な材料であればよく、例えばSUSやAlラミネートフィルム等を挙げることができる。本発明のリチウム二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
【0079】
本発明のリチウム二次電池の組み立て方法は、以下のとおりであってもよい。
アルゴンガスにより保護されているグローブボックスにおいて、電池の正極蓋、正極シート、得られた電解質膜、負極シート、負極蓋をこの順で下から上に積み重ねて積層を形成した後、積層をプレス機にセットしてプレスし、電池の正負極蓋を互いにしっかりと密閉させ、本発明のリチウム二次電池の作製組立を完了する。具体的には、負極シートを直径1.6cmの円形に、正極シートを直径1.4cm、電解質膜を直径1.9cmの円形に各々切断する。ついで、直径2.0cm、厚さ0.3cm(CR2032型)のステンレス製コイン外装容器内に、正極シート、電解質膜、負極シート、(さらにスペーサーとして直径1.4cmの円形に切断した銅箔を)この順番に重ね合わせる。ついで、ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップ(負極蓋)を容器に被せ、プレスで容器を密封する。これにより、リチウム二次電池(コインセル)を作製する。
【0080】
上記で用いた正極蓋、正極シート、負極シート、負極蓋等本発明の電解質膜以外の電池部品は、いずれも公知の方法によって製造された関連の電池部品を用いてよく、各種販売先から入手してもよい。
【0081】
また、負極合材層と、固体電解質、正極合材層とを積層した単セルを複数積層したバイポーラ型とすることもできる。
【0082】
<分子量の測定>
粘度平均分子量試験方法:
ポリメタクリル酸メチルを標準物質として用いて、ウベローデ粘度計を使用して25℃における重合体の粘度[η]を測定した後、式[η]=KM
v(ここで、Kは拡張因子を表した。その値は温度、重合体、溶媒性質に関わる。M
vは粘度平均分子量を表し、[η]は重合体の粘度を表す。)により、粘度平均分子量M
vが得られる。
【0083】
<本発明の電解質のガラス転移温度T
gの測定>
示差走査熱量分析(DSC)法を用いて、TA Instruments Q2000型示差熱量分析計により測定する。まず、電解質サンプルを室温から−80℃に降温し、10分間恒温し、その後10℃/分の速度で200℃まで昇温し、5分間恒温した後、10℃/分の速度で−80℃まで降温するサイクルを1回目のサイクルとする。上述した操作を一度繰り返して2回目のサイクルとする。通常2サイクル行い、2回目のサイクルのDSC曲線データを用いてガラス転移温度を得る。
【0084】
<本発明の電解質のイオン導電率の測定>
電解質のイオン導電率は交流インピーダンス法を用いて測定するが、用いる計器はCHI600D電気化学ワークステーションである。測定するサンプルとして、ステンレス電極/電解質/ステンレス電極の組成順となるようにしてモデル電池を構成し、そして当該モデル電池に対し、25℃で交流インピーダンスの測定を行う。測定前に、モデル電池を各温度ごとに1h恒温で静置し、周波数の範囲は1Hz〜100KHz、交流振幅は5mVとする。導電率の計算式は、
【数1】
である。
式中Rは固体電解質本体抵抗(Ω)であり、Lは固体電解質膜の厚さ(cm)を表し、Sは固体電解質膜の有効面積(cm
2)を表す。
【0085】
<放電比容量の測定>
電池の放電比容量は以下の方法により測定する。
得られた固体電解質から電池を作製し、この電池を25℃の温度中に置いて、2.5−4.0Vの電圧範囲且つ0.1C、0.5C若しくは1.0Cの定流で充放電を行い、CT2001A(武漢市藍博測試設備有限公司、LAND電池試験システム−CT2001A)の充放電設備を用いて、電池の初回放電容量及び10サイクルまで繰り返した放電容量を測定する。
放電比容量の計算式:
放電比容量(mAh g
−1)=実放電容量(mAh)/正極シートにおける活物質の質量(g)。
【0086】
添付図面中のサイクル特性図のデータは以下のように得られる。
上述で得られた放電比容量のデータを縦座標とし、サイクル数を横座標として、サイクル特性図を作成した。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0088】
<実施例1>
[1]ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)基固体電解質の作製
[1−1]ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)イオン液体重合体の作製:
250.00mLビーカーに、ポリジメチルジアリルアンモニアクロライド:
【化5】
の水溶液(20質量%)(Aldrich社製品)20.00g及び脱イオン水100.00mLを加え、1時間磁力攪拌し、ポリジメチルジアリルアンモニアクロライド含有溶液を形成した。
【0089】
別の50.00mLビーカーにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(森田化工(張家港)有限公司製品)8.52g(29.68mmol)及び脱イオン水10.00mLを順に加えて磁力攪拌し、完全に溶解させ、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド含有溶液を形成した。
【0090】
前記二種類の溶液を混合し、2時間イオン交換を行い、固体(析出した重合物)が生成すると固体をろ過収集し、その後水を用いて、硝酸銀検出で洗浄物に塩化物イオンが含まれなくなるまで洗浄し、最後に105℃で72時間真空乾燥した。得られたイオン液体重合体ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)の構造式は、
【化6】
である。
【0091】
前記イオン液体重合体の粘度平均分子量は2.11×10
6g mol
−1である。
当該イオン液体重合体の化学構造は、
1H NMRスペクトル図によって特徴づけられ、
図1に示すとおりである。
実施例1で作製した固体電解質の
1H NMRスペクトルは、Bruker BioSpin社製のAVANCEIII HD 400を用い、以下の方法で測定した。
重溶媒:重アセトン
共鳴周波数:6〜440MHz
分解能:<0.005Hz
パルス幅:1H≦9μsec
化学シフト値基準:テトラメチルシラン(TMS)0ppm
スペクトル
図1の結果が希望する構造に一致していることが分かる。
【0092】
[1−2]固体電解質の作製:
一ツ口丸底フラスコの中に作製したポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)1.00gを加え、溶媒としてアセトン20.00gを加え、磁力攪拌して溶解した後、ニトリル系化合物としてスクシノニトリル(福建創▲シン▼科技開発有限公司製品)1.00g及びリチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(森田化工(張家港)有限公司製品)0.50gを加え、25℃で磁力攪拌し、12時間混合したところ、透明な混合液であるポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)電解質を得た。
【0093】
[1−3]固体電解質膜の作製:
ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)電解質をポリテトラフルオロエチレン型板の上に塗布し、その後30℃で48時間真空乾燥し、固体電解質膜を得た。当該電解質膜のガラス転移温度T
gは−80℃より低く、25℃におけるイオン導電率は5.74×10
−4S cm
−1であった。
【0094】
[1−4]リチウム二次電池の作製:
リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を正極材料として含む正極シート、作製した電解質膜、リチウム(Li)を負極材料とした負極シートを、この順で下から上に積み重ねて積層型電極を形成し、そして積層型電極をプレス機にセットしてプレスを行い、Li/LiFePO
4電池を得た。
作製したLi/LiFePO
4電池を、25℃、2.5−4.0Vの電圧範囲で定流充放電試験に供し、0.1C、0.5C及び1.0Cの充放電レートで10サイクルずつ試験を行った。
実施例1の測定データの結果を表2〜表3及び
図1〜2にまとめる。
【0095】
<実施例2>
[2]ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾールビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)基固体電解質の作製
[2−1]ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾールビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)イオン液体重合体の作製:
(1)1−ビニルイミダゾールを反応性モノマー、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤、トルエンを反応溶媒としてラジカル重合反応を行った。このうち、開始剤はモノマー質量の0.5%を占める。Ar雰囲気保護で65℃において8時間攪拌還流反応させた。固体が生成してからろ過し、その後アセトンで洗浄し、75℃で24時間真空乾燥し、ポリビニルイミダゾールを得た。
ポリビニルイミダゾールの粘度平均分子量M
vは3.39×10
5g mol
−1であった。
【0096】
(2)作製したポリビニルイミダゾール4.00g及び2−ブロモエチルメチルエーテル(63.83mmol)8.90gを60.00mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、60℃で48時間攪拌反応させ、溶媒を減圧留去し、固体を収集し、無水ジエチルエーテルで3回洗浄し、回転蒸発によりジエチルエーテルを除去し、24時間真空乾燥して、ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)を得た。
ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)の粘度平均分子量M
vは、5.62×10
5g mol
−1であった。
【0097】
(3)作製したポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)3.50g及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(森田化工(張家港)有限公司製品)5.17g(18.02mmol)を20.00mLの脱イオン水に溶解し、室温で6時間磁力攪拌し、固体が生成すると固体をろ過収集した。その後脱イオン水を用いて、硝酸銀検出で洗浄物にハロゲンアニオンが含まれなくなるまで洗浄し、最後に75℃で24時間真空乾燥した。得られたイオン液体重合体ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾールビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)の構造式は、
【化7】
である。
【0098】
当該イオン液体重合体の化学構造は、
1H NMRスペクトル図によって特徴づけられ、
図3に示すとおりである。
実施例2で作製した固体電解質の
1H NMRスペクトルは、Bruker BioSpin社製AVANCE III HD 400を用い、以下の方法で測定した。
重溶媒:重ジメチルスルホキシド
共鳴周波数:6〜440MHz
分解能:<0.005Hz
パルス幅:≦9μsec
化学シフト値基準:テトラメチルシラン(TMS)0ppm
スペクトル図の結果が希望する構造と一致していることが分かる。
前記イオン液体重合体の粘度平均分子量M
vは7.32×10
5g mol
−1である。
【0099】
[2−2]固体電解質の作製:
一ツ口丸底フラスコの中に作製したポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾールビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)1.00gを加え、アセトン20.00gを加え、磁力攪拌して溶解した後、エトキシメチレンマロノニトリル(アラジン社製品)0.60g及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(森田化工(張家港)有限公司製品)0.50gを加え、25℃で磁力攪拌し、12時間混合したところ、透明で均一な混合液であるポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾールビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)電解質を得た。
【0100】
[2−3]固体電解質膜の作製:
得られた透明で均一な電解質をポリテトラフルオロエチレン型板の上に塗布し、その後25℃で48時間真空乾燥し、電解質膜を得た。当該電解質膜のガラス転移温度T
gは−80℃より低く、25℃におけるイオン導電率は2.98×10
−4S cm
−1であった。
【0101】
[2−4]リチウム二次電池の作製:
リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を正極材料として含む正極シート、作製した電解質膜、リチウム(Li)を負極材料とした負極シートを、この順で下から上に積み重ねて積層型電極を形成し、そして積層をプレス機にセットしてプレスを行い、Li/LiFePO
4電池を得た。
作製したLi/LiFePO
4電池を、25℃、2.5−4.0Vの電圧範囲で定流充放電試験に供し、0.1C、0.5C及び1.0Cの充放電レートで10サイクルずつ試験を行った。
実施例2の測定データの結果を表2〜表3及び
図3〜4にまとめる。
【0102】
<実施例3>
[3]ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)基固体電解質の作製
[3−1]ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)イオン液体重合体の作製:
(1)1−ビニルイミダゾールを反応性モノマー、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤、トルエンを反応溶媒とし、ラジカル重合反応を行った。このうち、開始剤はモノマー質量の0.5%を占める。Ar雰囲気保護で65℃において8時間攪拌還流反応させた。固体が生成してからろ過し、その後アセトンで洗浄し、75℃で24時間真空乾燥し、ポリビニルイミダゾールを得た。
ポリビニルイミダゾールの粘度平均分子量M
vは、3.39×10
5g mol
−1であった。
【0103】
(2)作製したポリビニルイミダゾール4.00g及び2−ブロモエチルメチルエーテル(63.83mmol)8.90gを60.00mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、60℃で48時間攪拌反応させ、溶媒を減圧留去し、固体を収集し、無水ジエチルエーテルで3回洗浄し、回転蒸発によりジエチルエーテルを除去し、24時間真空乾燥して、ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)を得た。
ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)の粘度平均分子量M
vは、5.62×10
5g mol
−1であった。
【0104】
(3)作製したポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムブロミド)3.50g及びヘキサフルオロリン酸リチウム(森田化工(張家港)有限公司製品)2.74g(18.02mmol)を20.00mLの脱イオン水に溶解し、室温で6時間磁力攪拌し、固体が生成すると固体をろ過収集した。その後、脱イオン水で硝酸銀検出で洗浄物にハロゲンアニオンが含まれなくなるまで洗浄し、最後に75℃で24時間真空乾燥して得られたイオン液体重合体ポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)の構造式は、
【化8】
である。
【0105】
当該イオン液体重合体の化学構造は、
1H NMRスペクトル図により特徴づけられ、
図5に示すとおりである。
実施例3で作製した固体電解質の
1H NMRスペクトルは、Bruker BioSpin社製AVANCE III HD 400を用い、以下の方法で測定した。
重溶媒:重ジメチルスルホキシド
共鳴周波数:6〜440MHz
分解能:<0.005Hz
パルス幅:≦9μsec
化学シフト値基準: テトラメチルシラン(TMS)を0ppm
スペクトル図の結果と希望する構造が一致していることが分かる。
前記イオン液体重合体の粘度平均分子量M
vは、6.35×10
5g mol
−1であった。
【0106】
[3−2]固体電解質の作製:
一ツ口丸底フラスコの中に作製したポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)1.00gを加え、アセトン20.00gを加え、磁力攪拌して溶解した後、エトキシメチレンマロノニトリル(アラジン社製品)0.60g及びヘキサフルオロリン酸リチウム(森田化工(張家港)有限公司製品)0.40gを加え、25℃で磁力攪拌し、12時間混合したところ、透明な混合液であるポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)電解質を得た。
【0107】
[3−3]固体電解質膜の作製:
得られたポリ(1−(2−メトキシエチル)−3−ビニルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)固体電解質をポリテトラフルオロエチレン型板の上に塗布し、その後30℃で48時間真空乾燥し、固体電解質膜を得た。当該固体電解質膜のガラス転移温度T
gは−80℃より低く、25℃におけるイオン導電率は1.08×10
−4S cm
−1であった。
【0108】
[3−4]リチウム二次電池の作製:
リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)を正極材料として含む正極シート、作製した電解質膜、リチウム(Li)を負極材料とした負極シートを、この順で下から上に積み重ねて積層型電極を形成し、そして積層型電極をプレス機にセットしてプレスを行い、Li/LiFePO
4電池を得た。
【0109】
実施例3の測定データの結果を表2〜表3及び
図5〜6にまとめる。
【0110】
<実施例4>
実施例1の前記重合体とスクシノニトリルとの重量比を1:1.5に変更した以外、他はすべて実施例1と同様にして固体電解質と固体電解質膜とリチウム二次電池とを形成した。
当該固体電解質膜のガラス転移温度T
gは−80℃より低く、25℃におけるイオン導電率は3.56×10
−4S cm
−1であった。
実施例4の電解質の測定データの結果を表2〜表3及び
図7にまとめる。
【0111】
<実施例5>
実施例2の前記重合体とエトキシメチレンマロノニトリルとの重量比を1:0.3に変更した以外、他はすべて実施例2と同様にして電解質及び電解質膜を形成した。
当該固体電解質膜のガラス転移温度T
gは−80℃より低く、25℃におけるイオン導電率は1.01×10
−4S cm
−1であった。
実施例5の測定データの結果を表2にまとめる。
【0112】
<比較例>
比較例の固体電解質の組成及び関連する作製については、引用文献<AdvancedEnergy Materials>(2015, 5, 1500353)を参考にできる。
その固体電解質組成は、ポリアクリロニトリル(J&KScientific Ltd.製品)、シアノエチル化ポリビニルアルコール(Shin−Etsu Chemical製品)、スクシノニトリル(アラジン社製品)及びLiTFSIリチウム塩(TCI社製品)である。シアノエチル化ポリビニルアルコール:スクシノニトリル:LiTFSI =5:83:10(質量比)である。比較例1では、本発明のイオン液体重合体を使用も含有もしていない。
【0113】
ポリアクリロニトリルをマトリックス、シアノエチル化ポリビニルアルコールを架橋成分として、スクシノニトリル、リチウム塩と複合し、固体電解質を作製し、得られた固体電解質をLi/LiFePO
4電池に用いた。
25℃で、2.4〜4.2Vの電圧範囲において、0.1Cで定流充放電により測定した電池の初回放電比容量は155mAh g
−1であり、10サイクル後の放電比容量は150mAh g
−1であった。そして、0.5C及び1.0Cでの放電比容量はそれぞれ125mAh g
−1及び98mAh g
−1であり、10サイクル後の放電比容量はそれぞれ120mAh g
−1及び85mAh g
−1であった。
これらを複合して固体電解質を作製したところ、電解質の25℃におけるイオン導電率は4.49×10
−4S cm
−1であった。
その結果を表2〜表3に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
図2は実施例1で作製した固体電解質により形成されたLi/LiFePO
4電池の異なる充放電レート(0.1C、0.5C及び1.0C)における放電比容量及びサイクル特性図である。
電池は、25℃において、0.1C、0.5C及び1.0Cのレートでそれぞれ定流充放電を行い、初回放電比容量はそれぞれ150mAh g
−1、132mAh g
−1及び121mAh g
−1であり、10サイクル後の放電比容量はそれぞれ152mAh g
−1、130mAh g
−1及び116mAh g
−1であった。
【0116】
図4は実施例2で作製した固体電解質により形成されたLi/LiFePO
4電池の異なる充放電レート(0.1C、0.5C及び1.0C)における放電比容量及びサイクル特性図である。
電池は、25℃において、0.1C、0.5C及び1.0Cのレートでそれぞれ定流充放電を行い、放電比容量はそれぞれ135mAh g
−1(0.1C)、129mAh g
−1(0.5C)及び119mAh g
−1(1.0C)であり、10サイクル後の放電比容量はそれぞれ143mAh g
−1(0.1C)、128mAh g
−1(0.5C)及び113mAh g
−1(1.0C)であった。
【0117】
図6は実施例3で作製した固体電解質により形成されたLi/LiFePO
4電池の異なる充放電レート(0.1C、0.5C及び1.0C)における放電比容量及びサイクル特性図である。
電池は、25℃において、0.1C、0.5C及び1.0Cのレートでそれぞれ定電流充放電を行い、放電比容量はそれぞれ132mAh g
−1(0.1C),128mAh g
−1(0.5C)及び112mAh g
−1(1.0C)であり、10サイクル後の放電比容量はそれぞれ138mAh g
−1(0.1C),126mAh g
−1(0.5C)及び110mAh g
−1(1.0C)であった。
【0118】
図7は実施例4で作製した固体電解質により形成されたLi/LiFePO
4電池の異なる充放電レート(0.1C、0.5C及び1.0C)における放電比容量及びサイクル特性図である。
電池は、25℃において、0.1C、0.5C及び1.0Cのレートでそれぞれ定電電流充放電を行い、放電比容量はそれぞれ145mAh g
−1(0.1C),127mAh g
−1(0.5C)及び116mAh g
−1(1.0C)であり、10サイクル後の放電比容量はそれぞれ146mAh g
−1(0.1C),126mAh g
−1(0.5C)及び111mAh g
−1(1.0C)であった。
【0119】
前記データを以下の表2及び表3にまとめる。
【0120】
【表2】
【0121】
実施例1〜5の固体電解質膜はアモルファス状であり、ガラス転移温度のみを有し、融点はない。
比較例の固体電解質膜は結晶重合体であり、融点を有する。
【0122】
【表3】
【0123】
表3から、本発明の実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の固体電解質により形成された電池は、0.5Cの充放電レートにおける初回放電比容量がいずれも125mAh g
−1以上と高い放電比容量であることが分かる。1.0Cの高充放電レートにおいても、実施例1〜4の電池の初回放電比容量はいずれも112mAh g
−1以上である。
一方、比較例では、0.5Cの充放電レートにおいては初回放電比容量が125mAh g
−1であるものの、1.0Cの高充放電レートにおいては初回放電比容量が100mAh g
−1以下に低下して98mAh g
−1となり、正常に動作しなかった。
【0124】
また、サイクル特性は、10サイクル後の放電比容量の減衰により評価した。
0.5Cの充放電レートでは、本発明の実施例1の減衰率は1.51%であり、実施例2は0.78%、実施例3は1.56%、実施例4は0.79%であった。これにより、実施例1〜4の平均減衰率は1.16%であり、10サイクル後であっても減衰が非常に少ないことが分かる。
一方、比較例においては、0.5Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率は4.00%であり、減衰が比較的に顕著で、サイクル特性が比較的に劣る。
【0125】
また、1.0Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰状況については、本発明の実施例1の減衰率は4.13%,実施例2は5.04%,実施例3は1.79%,実施例4は4.31%である。これにより、10サイクル後でも減衰率平均値が3.82%であり、4%程度しかないことが分かる。
一方、比較例においては、1.0Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率は13.27%であり、減衰が非常に顕著で、サイクル特性が悪い。
【0126】
以上の減衰データの分析から、以下のことが分かる。
(1)0.5Cの充放電レートにおいて、本発明の実施例1〜4の電池の10サイクル後の放電比容量減衰率の平均値が1.16%しかなく、比較例の4.00%と比べて非常に少ない。
(2)1.0Cの充放電レートにおいて、本発明の実施例1〜4の固体電解質により形成された電池は、1.0Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率の平均値が3.82%であり、比較例の0.5Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率(4.00%)程度しかない。
一方、比較例は、1.0Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率が13.27%であり、本発明の実施例1〜4の固体電解質により形成された電池の1.0Cの充放電レートにおける10サイクル後の放電比容量の減衰率の3.5倍であった。減衰の程度が激しく、電池のサイクル特性が非常に悪く、当該電池の繰り返し使用性が悪い。
【0127】
即ち、本発明の実施例1〜4の固体電解質により形成された電池は、10サイクル後,1.0Cの高充放電レートにおいても10サイクル後の放電比容量の減衰が比較的小さい。10サイクル後でも非常に安定した放電比容量を保つことができるのは、電池にとって非常に重要である。
【0128】
前記初回放電比容量データ及び初回放電比容量と10サイクル後の放電比容量の減衰率に対して行った分析から、本発明の固体電解質及びその電池は、高充放電レート(0.5C及び1.0C)において非常に良好な放電比容量及び優れたサイクル特性を有し、電池として使用するのに好適であり、特にリチウム二次電池に用いるのに好適であることが分かる。
【0129】
即ち、本発明は、固体電解質の新たな組成成分の組み合わせだけでなく、これら新たな組成成分の特定の比率をも提供し、これによりその電池は、先行技術及びその通常の重合体マトリックスと比べて、0.5C及び1.0Cの高充放電レートにおいて非常に良好な放電比容量及び優れたサイクル特性を有する。
【0130】
また、本発明の電解質はアモルファス状であり、ガラス転移温度(<−80℃)が非常に低く、電池リチウムイオンの泳動に有利であり、これにより本発明の電池は、高い充放電レート(0.5C及び1.0C)において非常に良好な放電比容量及び優れたサイクル特性を有する。