特許第6876055号(P6876055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876055マルチビーム走査型電子顕微鏡におけるノイズ緩和方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876055
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】マルチビーム走査型電子顕微鏡におけるノイズ緩和方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20210517BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20210517BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20210517BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20210517BHJP
   H01J 37/073 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H01J37/22 502G
   H01J37/28 B
   H01J37/244
   H01J37/09 A
   H01J37/073
   H01J37/22 502H
【請求項の数】37
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-534468(P2018-534468)
(86)(22)【出願日】2016年9月19日
(65)【公表番号】特表2018-528596(P2018-528596A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】US2016052519
(87)【国際公開番号】WO2017053240
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年9月2日
(31)【優先権主張番号】62/221,599
(32)【優先日】2015年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/267,223
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッコード マーク エイ
(72)【発明者】
【氏名】ニッペルマイアー ライナー
(72)【発明者】
【氏名】マスナゲッティ ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ リチャード アール
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−133234(JP,A)
【文献】 特開平01−286244(JP,A)
【文献】 特開2011−049041(JP,A)
【文献】 特開2013−232422(JP,A)
【文献】 特開2004−356471(JP,A)
【文献】 特開2002−245960(JP,A)
【文献】 特開2011−187191(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0054458(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0320382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/28
H01J 37/09
H01J 37/244
H01J 37/073
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム走査型電子顕微鏡装置であって、
マルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムであり、
複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源、
サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージ、
上記複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分を上記サンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する電子光学アセンブリ、並びに
上記サンプルの表面に発する複数本の電子信号ビームを検出することで複数枚の画像を形成するよう且つその画像それぞれが上記複数本の電子ビームのうち1本の電子ビームにまつわるものとなるよう構成された検出器アセンブリ、
を備えるマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムと、
メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有するコントローラであり、当該一組のプログラム命令の実行により、当該1個又は複数個のプロセッサが、
上記検出器アセンブリから上記複数枚の画像を受け取り、
それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別し、且つ
識別した共通ノイズ成分を上記複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像から除去する、
コントローラと、
を備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通の位置ノイズ成分を識別するよう構成されている装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通強度変動を識別するよう構成されている装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、上記一組の電子光学素子が、
コンデンサレンズ及び対物レンズのうち少なくとも一方を含む装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
電子ビームを生成するよう構成された電界放出電子銃と、
その電界放出電子銃からの電子ビームを上記複数本の電子ビームへと分割するよう構成されたマルチビームアパーチャプレートと、
を備える装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
2個以上の電子銃を備える装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
検出器アレイを備える装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の二次電子検出器を備える装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の後方散乱電子検出器を備える装置。
【請求項10】
マルチビーム走査型電子顕微鏡装置であって、
マルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムであり、
複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源、
サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージ、
上記複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分を上記サンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する電子光学アセンブリ、並びに
上記サンプルの表面から来る複数本の電子信号ビームを検出することで複数枚の画像を形成するよう且つその画像それぞれが上記複数本の電子ビームのうち1本の電子ビームにまつわるものとなるよう構成された検出器アセンブリ、
を備えるマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムと、
メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有するコントローラであり、当該一組のプログラム命令の実行により、当該1個又は複数個のプロセッサが、
上記検出器アセンブリから上記複数枚の画像を受け取り、
それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別し、且つ
識別した共通ノイズ成分を通知する、
コントローラと、
を備える装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、上記複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像内の擬似欠陥を1個又は複数個識別するよう構成されている装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、上記コントローラが、識別した1個又は複数個の擬似欠陥を通知するよう構成されている装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、上記コントローラが、識別した1個又は複数個の擬似欠陥をユーザインタフェース及びレビューツールのうち少なくとも一方へと通知するよう構成されている装置。
【請求項14】
請求項10に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、上記複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像における合焦エラーを一通り又は複数通り識別するよう構成されている装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、上記コントローラが、識別した一通り又は複数通りの合焦エラーを通知するよう構成されている装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、上記コントローラが、識別した一通り又は複数通りの合焦エラーをユーザインタフェース及びレビューツールのうち少なくとも一方へと通知するよう構成されている装置。
【請求項17】
請求項10に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通の位置ノイズ成分を識別するよう構成されている装置。
【請求項18】
請求項10に記載の装置であって、上記コントローラが、上記画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通強度変動を識別するよう構成されている装置。
【請求項19】
請求項10に記載の装置であって、上記一組の電子光学素子が、
コンデンサレンズ及び対物レンズのうち少なくとも一方を含む装置。
【請求項20】
請求項10に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
電子ビームを生成するよう構成された電界放出電子銃と、
その電界放出電子銃からの電子ビームを上記複数本の電子ビームへと分割するよう構成されたマルチビームアパーチャプレートと、
を備える装置。
【請求項21】
請求項10に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
2個以上の電子銃を備える装置。
【請求項22】
請求項10に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
検出器アレイを備える装置。
【請求項23】
請求項10に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の二次電子検出器を備える装置。
【請求項24】
請求項10に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の後方散乱電子検出器を備える装置。
【請求項25】
マルチビーム走査型電子顕微鏡装置であって、
マルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムであり、
複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源、
サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージ、
上記複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分を上記サンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する電子光学アセンブリ、並びに
上記サンプルの表面に発する複数本の電子信号ビームを同時検出することで複数枚の同時捕捉画像を形成するよう且つ電子信号ビーム毎に一組のリピート画像を捕捉するよう構成された検出器アセンブリ、
を備えるマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムと、
メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有するコントローラであり、当該一組のプログラム命令の実行により、当該1個又は複数個のプロセッサが、
上記検出器アセンブリから上記複数枚の同時捕捉画像を受け取り、
それら複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上の比較を基にアライメント手順を決定し、
上記電子信号ビームのうち1本又は複数本に対応する2枚以上のリピート画像を対象にしてそのアライメント手順を実行し、且つ
上記複数枚のリピート画像を組み合わせることで電子信号ビーム毎に集成画像を形成する、
コントローラと、
を備える装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置であって、上記コントローラが、上記複数枚のリピート画像を組み合わせそれら複数枚のリピート画像を平均化することで電子信号ビーム毎に集成画像を形成するよう構成されている装置。
【請求項27】
請求項25に記載の装置であって、上記コントローラが、上記複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通の位置ノイズ成分を識別するよう構成されている装置。
【請求項28】
請求項25に記載の装置であって、上記コントローラが、上記複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上を比較することで、それら2枚以上の画像中に存する共通強度変動を識別するよう構成されている装置。
【請求項29】
請求項25に記載の装置であって、上記一組の電子光学素子が、
コンデンサレンズ及び対物レンズのうち少なくとも一方を含む装置。
【請求項30】
請求項25に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
電子ビームを生成するよう構成された電界放出電子銃と、
その電界放出電子銃からの電子ビームを上記複数本の電子ビームへと分割するよう構成されたマルチビームアパーチャプレートと、
を備える装置。
【請求項31】
請求項25に記載の装置であって、上記マルチビーム電子ビーム源が、
2個以上の電子銃を備える装置。
【請求項32】
請求項25に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
検出器アレイを備える装置。
【請求項33】
請求項25に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の二次電子検出器を備える装置。
【請求項34】
請求項25に記載の装置であって、上記検出器アセンブリが、
1個又は複数個の後方散乱電子検出器を備える装置。
【請求項35】
マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て複数枚の画像を同時捕捉するステップと、
それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別するステップと、
識別した共通ノイズ成分を上記複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像から除去するステップと、
を有する方法。
【請求項36】
マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て複数枚の画像を同時捕捉するステップと、
それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別するステップと、
識別した共通ノイズ成分を通知するステップと、
を有する方法。
【請求項37】
マルチビーム走査型電子顕微鏡システムの複数本の電子信号ビームで以て複数枚の画像を同時捕捉するステップと、
上記複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上の比較を基にアライメント手順を決定するステップと、
上記電子信号ビームのうち1本又は複数本に対応する2枚以上のリピート画像を対象にしてそのアライメント手順を実行するステップと、
上記複数枚のリピート画像を組み合わせることで電子信号ビーム毎に集成画像を形成するステップと、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して走査型電子顕微鏡に関し、具体的にはマルチビーム電子顕微鏡システムにおけるノイズ緩和に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願は、「マルチビーム撮像システムにおけるノイズ除去技術」(TECHNIQUE FOR NOISE REJECTION IN A MULTIPLE-BEAM IMAGING SYSTEM)と題しMark McCord、Rainer Knippelmeyer、Douglas Masnaghetti及びRichard Simmonsを発明者とする2015年9月21日付米国暫定特許出願第62/221599号に基づき、米国特許法第119条(e)の規定による優先権を主張し且つ通常(非暫定)特許出願を構成する出願であるので、この参照を以てその全容を本願に繰り入れることにする。
【0003】
半導体デバイス例えば論理デバイス及び記憶デバイスの製造においては、通常、多数の半導体製造プロセスを用い基板例えば半導体ウェハを処理することで、それら半導体デバイスの諸特徴及び階層群が形成される。半導体デバイスの小型化が進むにつれ、秀逸な検査及びレビュー装置及び手順を開発することが重要になってきている。そうしたテクノロジの一つが電子ビーム式検査システム、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)である。シングルビームSEMシステムでは、サンプルの表面を撮像するため、そのサンプルの表面から放出され又は同面で散乱された電子を収集及び分析する動作を、1本の一次ビームで以てサンプル上をスキャン(走査)しつつ行う。シングルビームSEMシステムでは、一般に、ノイズを画像情報から分離させるのが難しい。こうした困難が生じる所以は、i)偽像がノイズであり現実の画像特徴でないことを確認するのが難しいことと、ii)1枚の画像では特徴情報(例えば直線的な鋭いエッジ)が十分になくてノイズを抽出できないことにある。諸形態のマルチビームSEMシステムでは、サンプルの複数領域からの画像データの同時捕捉により検査時間が劇的に短縮されるものの、マルチビームSEMシステムにおけるノイズ緩和技術はその非実効性が明らかになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0054458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、マルチビームSEMシステムにてノイズを低減又は緩和するシステム及び方法を提供することが有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置が開示される。ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源を有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージを有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが電子光学アセンブリを有し、その電子光学アセンブリが、それら複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分をサンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルの表面に発する複数本の電子信号ビームを検出することで複数枚の画像を形成するよう構成された検出器アセンブリを有し、それぞれ複数本の電子ビームのうち1本の電子ビームにまつわる画像が複数枚形成される。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムがコントローラを有し、そのコントローラが、メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有し、当該1個又は複数個のプロセッサが、そのプログラム命令に従い、検出器アセンブリから複数枚の画像を受け取り、それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別し、そしてそれら識別済の共通ノイズ成分をそれら複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像から除去する。
【0007】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置が開示される。ある実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置はマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムを有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源を有する。また、ある実施形態では、マルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージを有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが電子光学アセンブリを有し、その電子光学アセンブリが、それら複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分をサンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルの表面からくる複数本の電子信号ビームを検出することで複数枚の画像を形成するよう構成された検出器アセンブリを有し、それぞれ複数本の電子ビームのうち1本の電子ビームにまつわる画像が複数枚形成される。また、ある実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置はコントローラを有し、そのコントローラが、メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有し、当該1個又は複数個のプロセッサが、そのプログラム命令に従い、検出器アセンブリから複数枚の画像を受け取り、それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別し、そしてそれら共通ノイズ成分の識別結果を通知する。
【0008】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置が開示される。ある実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置はマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムを有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、複数本の電子ビームを生成するよう構成されたマルチビーム電子ビーム源を有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルをしっかり保持するよう構成されたサンプルステージを有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが電子光学アセンブリを有し、その電子光学アセンブリが、それら複数本の電子ビームのうち少なくとも一部分をサンプルの一部分上へと差し向けるよう構成された一組の電子光学素子を有する。また、ある実施形態では、そのマルチビーム走査型電子顕微鏡サブシステムが、サンプルの表面に発する複数本の電子信号ビームを同時検出することで複数枚の同時捕捉画像を形成するよう且つ電子信号ビーム毎に一組のリピート画像を捕捉するよう構成された、検出器アセンブリを有する。また、ある実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡装置はコントローラを有し、そのコントローラが、メモリ内に格納されている一組のプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを有し、当該1個又は複数個のプロセッサが、そのプログラム命令に従い、検出器アセンブリから複数枚の同時捕捉画像を受け取り、それら複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上の比較を基にアライメント手順を決定し、電子信号ビームのうち1本又は複数本に対応する2枚以上のリピート画像を対象にしてそのアライメント手順を実行し、そしてそれら複数枚のリピート画像を組み合わせることで電子信号ビーム毎に集成画像を形成する。
【0009】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係る方法が開示される。ある実施形態に係る方法では、マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て複数枚の画像を同時捕捉する。また、ある実施形態に係る方法では、それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別する。また、ある実施形態に係る方法では、それら識別済の共通ノイズ成分をそれら複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像から除去する。
【0010】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係る方法が開示される。ある実施形態に係る方法では、マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て複数枚の画像を同時捕捉する。また、ある実施形態に係る方法では、それら画像のうち2枚以上を比較することで当該2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分を識別する。また、ある実施形態に係る方法では、それら共通ノイズ成分の識別結果を通知する。
【0011】
本件開示の1個又は複数個の例証的実施形態に係る方法が開示される。ある実施形態に係る方法では、マルチビーム走査型電子顕微鏡システムの複数本の電子信号ビームで以て複数枚の画像を同時捕捉する。また、ある実施形態に係る方法では、複数枚の同時捕捉画像のうち2枚以上の比較を基にアライメント手順を決定する。また、ある実施形態に係る方法では、電子信号ビームのうち1本又は複数本に対応する2枚以上のリピート画像を対象にしてそのアライメント手順を実行する。また、ある実施形態に係る方法では、それら複数枚のリピート画像を組み合わせることで電子信号ビーム毎に集成画像を形成する。
【0012】
ご理解頂けるように、上掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている発明にとり必須の限定事項ではない。添付図面は、明細書に組み込まれその一部を形成して本発明の諸実施形態を描出するものであり、その概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する役を負っている。
【0013】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、以下の添付図面を参照することで、本件開示に多々備わる長所をより好適に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本件開示の一実施形態に係るノイズ除去能付マルチビーム走査型電子顕微鏡システムのブロック図である。
図2】本件開示の一実施形態に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡画像データ内ノイズ成分識別及び除去の概念図である。
図3A】マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て捕捉された画像から本件開示の1個又は複数個の実施形態に従いノイズ成分を除去する方法を描いた処理フロー図である。
図3B】マルチビーム走査型電子顕微鏡システムで以て捕捉された画像中のノイズ成分を本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い通知する方法を描いた処理フロー図である。
図3C】本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い複数枚のリピート画像を平均化することでマルチビーム走査型電子システムのチャネル毎に集成画像を形成する方法を描いた処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に描かれている開示主題について詳細に説明する。図1図3Cを通じ示されているのは、本件開示に係るマルチビーム走査型電子顕微鏡(SEM)撮像システム内ノイズ緩和システム及び方法である。
【0016】
本件開示の諸実施形態で目指しているのは、マルチビームSEMシステムにおけるコモンモードノイズを低減又は除去することである。注記すべきことに、対象となるノイズは様々な源泉に由来するものであり得、その例としては振動ノイズ、音響ノイズ、電気的ノイズ(例.60Hzノイズ)、高電圧電源のエラー/誤動作、電子源又は電子銃に端を発する強度ノイズ等がある。それらノイズ成分は、(例.x方向、y方向及び/又はz方向(焦点方向)に沿った)位置的なものであることも、強度(即ち輝度)的なものであることもある。本件開示の更なる諸実施形態で目指しているのは、複数画像に存するノイズ成分を(例.画像処理を通じ)補正すること、例えばそのノイズが位置ノイズであるときにそうすることである。本件開示の更なる諸実施形態で目指しているのは、一通り又は複数通りのノイズ成分の識別を受け1枚又は複数枚の画像を再スキャンすること、例えばそのノイズが焦点ずれ又は高電圧誤動作に関連している場合にそうすることである。本件開示の更なる諸実施形態で目指しているのは、画像内擬似欠陥を識別することである。この場合、それら識別済の擬似欠陥を無視することが可能になる。
【0017】
図1に、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るマルチビームSEM撮像実行システム100を示す。
【0018】
実施形態に係るシステム100はマルチビーム走査型電子顕微鏡(SEM)サブシステム101及びコントローラ110を有している。マルチビームSEMサブシステム101は、本件技術分野で既知なマルチビームSEMサブシステム又はマルチビームSEMツールのいずれで構成されていてもよい。一例に係るマルチビームSEMサブシステム101はマルチビーム電子ビーム源102、電子光学アセンブリ104、サンプルステージ106及び検出器アセンブリ108を有しているが、これに限られるものではない。
【0019】
実施形態に係るコントローラ110はマルチビームSEMサブシステム101に可通信結合されている。コントローラ110の結合先は、例えばSEMサブシステム101に備わる検出器アセンブリ108の出力とする。コントローラ110を検出器アセンブリ108の出力に結合させる形態は(例.図1中に線で示す1個又は複数個の伝送媒体による)好適な形態、即ちコントローラ110が検出器アセンブリ108の捕捉出力を受け取れる形態であればどのような形態でもよい。
【0020】
実施形態に係るコントローラ110は、1個又は複数個のプロセッサ116並びに記憶媒体118(例えばメモリ)を有している。当該1個又は複数個のプロセッサ116は、記憶媒体118内に保持されている一組のプログラム命令を実行することで、本件開示の随所に記載の諸ステップのうち1個又は複数個を実行するよう、構成されている。
【0021】
実施形態の一つは、マルチビームSEMサブシステム101により捕捉されたSEM画像群で同時生起している一通り又は複数通りのコモンモードノイズ成分が1個又は複数個のプロセッサにより除去されるよう、プログラム命令が構成された実施形態である。例えば、検出器アセンブリ108から来る複数枚のSEM画像が1個又は複数個のプロセッサにより受け取られるよう、プログラム命令を構成する。また例えば、それらSEM画像のうち2枚以上が1個又は複数個のプロセッサにより相互比較され、ひいてはそれら2枚以上の画像中に存する共通ノイズ成分(例.位置ノイズや強度ノイズ)が識別されるよう、プログラム命令を構成する。また例えば、それら識別済の共通ノイズ成分が、それら2枚以上の画像(及び/又は複数個のSEM画像セットを構成する更なる諸画像)から1個又は複数個のプロセッサにより除去されるよう、プログラム命令を構成する。
【0022】
ここで注記すべきことに、マルチビームSEM計測の場合、ノイズ源及びグリッチの多くがコモンモードであるので、全ビームが等しく且つ同時に影響を受ける。コモンモードノイズの例としては、振動ノイズ、電磁干渉、一部材又は複数部材に係る高電圧、カソード放出電流の変動(全ビームが共有カソードで駆動される場合のそれ)等があるが、これらに限られるわけではない。例えば、よくあるようにシステム100の基板バイアスや対物レンズに係る高電圧接続は最もありふれたアーク放電源であり、それにより基板(例.ウェハ)からのガス抜けが起き放電アークが発生する。こうしたノイズに関しては、SEMサブシステム101により捕捉された画像をコントローラ110により分析することが可能である。単一画像の場合、ノイズを他の画像属性例えばラインエッジ粗さから分離できない可能性がある。しかし、同じノイズが複数画像内で識別されたのであれば(即ちそれら画像が共通ノイズ成分を含んでいるのであれば)、その偽像が実際にノイズであるとの合理的確証となるので、それを除去してもかまわない。例えば、SEMサブシステム101内でN本のビーム(例.2〜100本のビーム)が同時に稼働している場合、対応するN枚の画像が検出器アセンブリ108により同時捕捉されるので、それらN枚の画像をノイズに関し分析することができる。それら画像N枚のうち複数枚にて偽像が観測された場合、それらリピートする偽像を本物のノイズと見なすことができる。
【0023】
1枚又は複数枚の画像から除去されるノイズ成分の一例は位置ノイズである。そのノイズ成分の例としてはx方向及びy方向位置情報のノイズ等がある。x方向及びy方向位置ノイズの場合、1枚又は複数枚の画像(例.N枚の画像全て又はその部分集合)を識別済ノイズに対し逆方向に同じ距離分だけシフトさせればよい。一例として、図2に、複数枚のSEM画像からのx方向及びy方向位置ノイズの除去を概念的に示す。第1ステップ202では、4枚のSEM画像202がマルチビームSEMサブシステム101で以て捕捉される。第2ステップ204では、それら4枚のSEM画像に亘る共通ノイズ成分205が(左から右への順で)コントローラ110で以て識別される。その際には、本件技術分野で既知な何らかの画像比較アルゴリズムを用い、コントローラ110にてそれら画像のうち2枚以上を比較することで、複数画像に亘り共通な特徴又はパターンを識別すればよい。これを実行する経過で、それらSEM画像のうち2枚以上に共通な空間的特徴205が識別される。第3ステップ206では、ステップ204にて識別された共通ノイズ成分205が除去される。例えば位置ノイズの場合、影響を受けている画像全てを識別済ノイズ成分に対し逆方向に同じ距離分だけシフトさせればよい。結果としては、コントローラ110により、ステップ206に示すノイズ修正画像を生成することができる。注記すべきことに、諸画像に施す補正は、本件技術分野で既知な何らかの画像処理技術を用い実行すればよい。
【0024】
1枚又は複数枚の画像から除去されるノイズ成分の別例は強度ノイズである。共通強度変動の場合、画像N枚のうち2枚以上の画像の画素グレーレベル値に対し輝度補正を施すことができる。ここで注記すべきことに、位置ノイズ及び/又は強度ノイズは一般に所与画像内位置の関数となる。
【0025】
更に注記すべきことに、位置補正,強度補正双方を画像N枚のうち1枚又は複数枚に適用することで、位置ノイズ,強度ノイズを同時に補正できる。
【0026】
更に注記すべきことに、状況によっては、検出器アセンブリ108に係る増幅器が飽和し強度補正を適切に実行できなくなるかもしれない。この場合、関連する画素又は画素群を無視し、検査データ中でその画素又は画素群に「無視」とのフラグを立てればよい。
【0027】
もう一つの実施形態は、SEM画像複数枚にて同時に生起している共通ノイズ成分が1個又は複数個のプロセッサにより識別、通知されるよう、プログラム命令が構成された実施形態である。その一例は、画像N枚のうち複数枚に亘る共通ノイズ成分が識別された後に、コントローラ110のプログラム命令に従い1個又は複数個のプロセッサ116が共通ノイズ成分の識別結果を通知するものである。
【0028】
コントローラ110により共通ノイズ成分識別結果が通知される先の一例はユーザインタフェース119である。この構成では、共通ノイズ成分の識別結果をユーザインタフェース119に送り、ユーザインタフェース119に備わるディスプレイ上に表示させることで、そのノイズ成分をユーザによる分析に供することができる(図示せず)。
【0029】
コントローラ110により共通ノイズ成分識別結果が通知される先の別例は別のツールである。例えば、コントローラ110により共通ノイズ成分識別結果(或いはノイズ成分存在緩和命令)をレビューツール121やSEMサブシステム101自体へと通知するとよい。
【0030】
例えば、コントローラ110を、例えば、画像N枚のうち1枚又は複数枚の画像における擬似欠陥を1個又は複数個識別するよう構成しておく。この構成では、検出器アセンブリ108から来る画像のうち2枚以上をコントローラ110にて比較することで、それら複数枚の画像のうち1枚又は複数枚の画像内の擬似欠陥を1個又は複数個識別することができる。システム100が電子ビームインスペクタ(EBI)として構成されており、画像ノイズによりもたらされる「欠陥」が複数画像の同じ場所に見受けられる場合は、それら推定的な欠陥を「擬似欠陥」と認め除去することができる。この場合、コントローラ110がレビューツール121に対しそれら擬似欠陥を無視するよう指令し、マルチビームSEMサブシステム101により識別された実欠陥のレビューを行わせることができる。
【0031】
或いは、コントローラ110を、画像N枚のうち1枚又は複数枚の画像における合焦エラーを一通り又は複数通り識別するよう構成しておく。ここで注記すべきことに、ノイズがある種のもの例えば焦点変動である場合、そのノイズを除去するのは難しい。焦点変動の場合、一般に、焦点ずれ画像から焦点合い画像を再構築するのが難しいのである。その点、複数画像に共通する焦点変動の影響を緩和することは可能であり、それにはコントローラ110からマルチビームSEMサブシステム101に指令しサンプル107の再スキャンにより新規画像を捕捉させればよい。
【0032】
更に他の実施形態は、複数枚のリピートSEM画像が画像アライメント(整列)手順を通じ1個又は複数個のプロセッサにより平均化されるよう、プログラム命令が構成された実施形態である。
【0033】
一例としては、一次ビーム103及び信号ビーム117により画定されるチャネル毎に2枚以上の「リピート」画像を、SEMサブシステム101により捕捉すればよい。その上で、SEMサブシステム101のチャネル毎にそれら複数枚のリピート画像をコントローラ110が組み合わせ(例.平均化し)、そのSEMサブシステム101に備わる複数個のチャネル毎に集成画像を形成すればよい。例えば、1秒かけて1枚の低速画像を捕捉するのではなく、時間を1/10秒ずつかけて10枚の高速画像を捕捉し平均化することで、1枚の高品質画像を生成することができる。
【0034】
別例としては、SEMサブシステム101のチャネル複数個に亘り同時捕捉された画像であるN枚の同時捕捉画像のうち2枚以上(例.N枚の画像全て又はその部分集合)から、コントローラ110にてノイズ値を抽出するものがあろう。その平均ノイズ値(例.各画素の位置又は強度)を「グランドトゥルース」として用いることができる。更に注記すべきことに、ノイズ抽出を行うのに十分なコンテンツを含んでいない画像を無視することができる。注記すべきことに、マルチビームSEMは通常10〜100本のビームを有しているので、想定されているSEMサブシステムではノイズ抽出を行うのに十分な画像を捕捉できるはずである。
【0035】
同時捕捉画像中で識別されたノイズ成分を利用することで、例えば、組み合わせるのに先立ちそれらリピート画像を補正し又は整列することが可能となる。リピート画像のうち1枚又は複数枚を対象にアライメント工程を実行した上でそれらを一緒に平均化することで、例えば、各リピート画像内の低周波ノイズを除去することができる。
【0036】
更に注記すべきことは、多くの半導体イメージングアプリケーションで、ダイ横断的に多数個の規格上そっくりな構造が反復形成(リピート)されることである。そっくりな構造が複数フィールドに存しており且つノイズがコモンモードである場合、諸アルゴリズムに従い、それらそっくりな構造のグランドトゥルース形状をより効果的に判別すること、ひいてはそのノイズをより正確に識別してそれら画像から除去することができる。
【0037】
ここで注記すべきことに、前掲の図1に示されているマルチビームSEMサブシステム101のマルチビーム電子ビーム源102は、本件技術分野で既知なマルチビーム電子源のいずれで構成されていてもよい。例えば、マルチビーム電子ビーム源102を、電子銃(例.電界放出銃又はカソード)及びアパーチャプレートを有する構成等にすることができる。そうした構成では、複数個のアパーチャがアレイ状に配列されているアパーチャプレートにより、電子ビーム銃から来る初期電子ビームを複数本の電子ビーム103(即ち「ビームレット」)へと分割すすることができる。これに代え、電子ビーム源102に複数個の電子銃を具備させ、それらで複数本の電子ビーム103を発生させてもよい。
【0038】
マルチビームSEMサブシステム101のサンプルステージ106は、サンプル107をしっかり保持するのに適するものであれば、本件技術分野で既知なサンプルステージのいずれで構成されていてもよい。サンプル107は電子ビーム顕微鏡での検査/レビューに適するものであればどのようなサンプルでもよく、その例としては基板等があるが、これに限られるわけではない。その基板の例としてはシリコンウェハ等があるが、これに限られるわけではない。実施形態によってはそのサンプルステージ106がアクチュエータブルステージとされる。そのサンプルステージ106の例としては、一通り又は複数通りの直線方向(例.x方向、y方向及び/又はz方向)に沿いサンプル107を随時並進させるのに適した1個又は複数個の並進ステージ等がある。サンプルステージ106の別例としては、回動方向に沿いサンプル107を随時回動させるのに適した1個又は複数個の回動ステージ等がある。サンプルステージ106の別例としては、直線方向に沿いサンプルを随時並進させ及び/又は回動方向に沿いそのサンプル107を随時回動させるのに適した回動ステージ及び並進ステージを有するもの等がある。ここに注記すべきことに、本システム100は本件技術分野で既知な走査モードのいずれで稼働させてもよい。
【0039】
マルチビームSEMサブシステム101の検出器アセンブリ108は、サンプル107の表面から来る複数通りの電子信号を検出するのに適するものであれば、本件技術分野で既知な検出器アセンブリのいずれで構成されていてもよい。例えば、検出器アセンブリ108が電子検出器アレイを有する構成である。この構成では、検出器アセンブリ108が電子検出部のアレイを有することとなろう。更に、その検出器アセンブリ108に備わる検出器アレイの電子検出部それぞれが、入射電子ビーム103のうち1本に係る電子信号をサンプル107から検出するよう配置されることとなろう。この構成では、検出器アセンブリ108のチャネルそれぞれが、複数本ある電子ビーム103のうちある特定の電子ビームに対応することとなる。
【0040】
注記すべきことに、検出器アセンブリ108は二次電子検出器、後方散乱電子検出器等とすることができる。検出器アセンブリ108に具備させる電子検出器は本件技術分野で既知ないずれの種類のものでもよい。一例としては、検出器アセンブリ108にマイクロチャネルプレート(MCP)、PIN又はpn接合検出器アレイ、その一例たるダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード(APD)等を具備させることができる。別例としては、検出器アセンブリ108に高速シンチレータ/PMT型検出器を具備させることができる。
【0041】
電子光学アセンブリ104は、複数本の電子ビームで以てサンプルを照明しそれら複数本の電子ビームに係る複数枚の画像を捕捉するのに適するものであれば、本件技術分野で既知な電子光学アセンブリのいずれで構成されていてもよい。電子光学アセンブリ104の一例としては、複数本の電子ビーム103をサンプル107の表面上へと差し向ける一組の電子光学素子を有するものがある。それら一組の電子光学素子により電子光学カラム111を形成することができる。そのカラム111に備わる一組の電子光学素子によって、それら電子ビーム103のうち少なくとも一部分をサンプル107の複数部分上へと差し向けることができる。それら一組の電子光学素子は、一次電子ビーム103をサンプル107の諸エリア上へと合焦させ及び/又は差し向けるのに適するものであれば、本件技術分野で既知な電子光学素子のいずれを含んでいてもよい。一例としては、それら一組の電子光学素子に1個又は複数個の電子光学レンズを含める。当該1個又は複数個の電子光学レンズに含めうるものの例としては、マルチビーム源102から来る電子を集める1個又は複数個のコンデンサレンズ112(例.磁気コンデンサレンズ)等がある。当該電子光学レンズに含めうるものの別例としては、一次電子ビーム103をサンプル107の諸エリア上に合焦させる1個又は複数個の対物レンズ114(例.磁気対物レンズ)等がある。
【0042】
電子光学アセンブリ104の別例としては、複数本の一次電子ビーム103に応じサンプル107から放たれる電子(例.二次電子及び/又は後方散乱電子)を集め、それらの電子を検出器アセンブリ108へと差し向け及び/又は合焦させる一組の電子光学素子を、有するものがある。その電子光学アセンブリ104に含めうるものの一例としては、複数本の電子信号ビーム117を合焦させることでサンプル107の諸部分の画像複数枚を検出器アセンブリ108に形成させる1個又は複数個の投射レンズ115がある。
【0043】
注記すべきことに、システム100の電子光学アセンブリ104は図1に示した電子光学素子に限定されるわけではなく、後者は単なる例証目的で提示されている。更に注記すべきことに、本システム100には、複数本のビーム103をサンプル107上へと差し向け/合焦させ、それに応じ対応する信号ビーム117を集めて検出器アセンブリ108上に成像させるのに必要なものであれば、何個の電子光学素子、どのような種類の電子光学素子でも具備させることができる。
【0044】
例えば、電子光学アセンブリ104に1個又は複数個の電子ビーム走査素子(図示せず)を具備させることができる。当該1個又は複数個の電子ビーム走査素子の例としては、サンプル107の表面に対するビーム103の位置を制御するのに適した1個又は複数個の電子走査コイル又は静電偏向器等がある。当該1個又は複数個の走査素子を利用することで、更に、サンプル107上を電子ビーム103により指定パターンに従いスキャンすることができる。
【0045】
また例えば、電子光学アセンブリ104に、サンプル107の表面に発する複数通りの電子信号を複数本の一次電子ビーム103から分離させるビームセパレータ(図示せず)を、具備させることができる。
【0046】
コントローラ110に備わる1個又は複数個のプロセッサ116は、本件技術分野で既知な処理素子のいずれでも構成することができる。その意味で、当該1個又は複数個のプロセッサ116は、ソフトウェアアルゴリズム及び/又は命令を実行するよう構成されたものであれば、どのようなマイクロプロセッサ型デバイスでも構成することができる。当該1個又は複数個のプロセッサ116は、例えば、本件開示の随所に記載の如く本システム100を稼働させるよう構成されたプログラムを実行する構成されているものであれば、デスクトップコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他のコンピュータシステム(例.ネットワーク接続されたコンピュータ)のいずれでも構成することができる。ご認識頂けるように、本件開示の随所に記載の諸ステップは単一のコンピュータシステムで実行しても複数個のコンピュータシステムで実行してもかまわない。総じて、語「プロセッサ」は、非一時的記憶媒体118からもたらされるプログラム命令を実行する処理素子を1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広く定義することができる。
【0047】
記憶媒体118は、連携する1個又は複数個のプロセッサ116により実行可能なプログラム命令を格納しておくのに適するものであれば、本件技術分野で既知な格納媒体のいずれでも構成することができる。例えば、記憶媒体118が非一時的記憶媒体を有していてもよい。記憶媒体118の例としては、リードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光記憶デバイス(例.ディスク)、磁気テープ、固体ドライブ等がある。ここに注記すべきことに、記憶媒体118は、検出器アセンブリ108からもたらされる一通り又は複数通りの結果及び/又は本願記載の諸ステップのうち1個又は複数個の出力を格納しておけるよう、構成することができる。更に注記すべきことに、記憶媒体118は、1個又は複数個のプロセッサ116と共に共通コントローラハウジング内に収容することができる。これに代え、記憶媒体118を、当該1個又は複数個のプロセッサ116の物理的位置に対しリモートに配置してもよい。例えば、ネットワーク(例.インターネット、イントラネット等)を介しアクセス可能なリモートメモリ(例.サーバ)に1個又は複数個のプロセッサ116がアクセスするようにしてもよい。
【0048】
図1に示したシステム100の諸実施形態は、更に、本願記載の如く構成することができる。加えて、本システム100は、本願に記載されている1個又は複数個の方法実施形態(群)のいずれに備わるいずれの他ステップ(群)を実行するようにも、構成することができる。
【0049】
図3Aは、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い複数枚のSEM画像からコモンモードノイズ成分を除去する方法300にて実行される諸ステップを示すフロー図である。ここに注記すべきことに、方法300の諸ステップは全面的又は部分的にシステム100により実施することができる。とはいえ、やはりご認識頂けるように、別の又は代わりのシステムレベル実施形態により方法300の諸ステップを全面的又は部分的に実行してもよいのであるから、本方法300はシステム100に限定されない。
【0050】
ステップ302では複数枚のSEM画像を受け取る。図1に示す実施形態では、マルチ画像SEMサブシステム101で以て複数枚のSEM画像を捕捉する。それを受け、検出器アセンブリ108からコントローラ110に備わる1個又は複数個のプロセッサ116へと、そのマルチ画像データ捕捉の結果を送ればよい。実施形態によっては、コントローラ110が受け取った画像が、後刻の分析及び処理に備えメモリ118に格納されることとなろう。ステップ304では、複数枚のSEM画像を比較することでそれら画像中の共通ノイズ成分を識別する。図1に示す実施形態によれば、コントローラ110にてそれら同時捕捉画像のうち2枚以上を比較することで、一通り又は複数通りの共通ノイズ特徴(例.図2中のノイズ成分205)を識別することができる。ステップ306では、その識別済共通ノイズ成分をそれら同時捕捉画像のうち1枚又は複数枚から除去する。
【0051】
図3Bは、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い複数枚のSEM画像中のコモンモードノイズ成分を通知する方法310にて実行される諸ステップを示すフロー図である。ここに注記すべきことに、方法310の諸ステップは全面的又は部分的にシステム100により実施することができる。とはいえ、やはりご認識頂けるように、別の又は代わりのシステムレベル実施形態により方法310の諸ステップを全面的又は部分的に実行してもよいのであるから、本方法310はシステム100に限定されない。
【0052】
ステップ312では複数枚のSEM画像を受け取る。ステップ314では、複数枚のSEM画像を比較することでそれら画像中の共通ノイズ成分を識別する。ステップ306では、それら共通ノイズ成分の識別結果を通知する。一例としては、共通ノイズ成分の識別結果又はそれら共通ノイズ成分についての緩和/補正命令をツールに通知するとよい。例えば、共通ノイズ成分の識別結果又はそれら共通ノイズ成分についての緩和/補正命令を、コントローラ110に可通信結合されているレビューツール121に通知することで、そのレビューツール121にそれらノイズ成分の存在を調整させる(例.擬似欠陥が識別された場合は無視させる)ことができる。また例えば、共通ノイズ成分の識別結果又はそれら共通ノイズ成分についての緩和/補正命令をマルチビームSEMサブシステム101に通知することで、そのSEMサブシステム101にそれら画像を再スキャンさせる(例.合焦エラーが識別された場合に再スキャンさせる)ことができる。
【0053】
図3Cは、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い複数枚のSEM画像中のコモンモードノイズ成分を通知する方法320にて実行される諸ステップを示すフロー図である。ここに注記すべきことに、方法320の諸ステップは全面的又は部分的にシステム100により実施することができる。とはいえ、やはりご認識頂けるように、別の又は代わりのシステムレベル実施形態により方法320の諸ステップを全面的又は部分的に実行してもよいのであるから、本方法320はシステム100に限定されない。
【0054】
ステップ322では複数枚のSEM画像を受け取る。ステップ324では、2枚以上の同時捕捉SEM画像の比較を基にアライメント手順を決定する。例えば、SEMサブシステム101のチャネル複数個に亘り同時捕捉された画像たる同時捕捉画像のうち2枚以上から、コントローラ110によりノイズ値を抽出することができる。ステップ326では、1枚又は複数枚のリピート画像を対象にしてそのアライメント手順を実行する。例えば、それら同時捕捉画像の分析を通じ識別されたノイズ成分を用い、組合せに先立ちそれらリピート画像を補正又は整列させることができる。ステップ328では、整列した画像を組み合わせることで集成画像を形成する。例えば、それら整列しているリピート画像を平均化することで平均化画像を形成する。注記すべきことに、これは、SEMサブシステム101の各チャネルに沿った画像の同時捕捉が指定回数反復されるよう、SEMサブシステム101のチャネル毎に反復することができる。各チャネル沿いの諸リピート画像を整列させ次いで平均化することで、マルチビームSEMサブシステム101の諸チャネルに亘り一組の画像を形成することができる。
【0055】
本願記載の方法は、皆、その方法実施形態を構成する1個又は複数個のステップの結果を格納媒体118に格納するステップを、有するものとすることができる。それら結果が本願記載のどの実行結果を含んでいてもよいし、本件技術分野で既知ないずれの要領でその結果が格納されるのでもよい。結果格納後は、その格納媒体内の結果にアクセスすること、並びにそれを本願記載の方法又はシステム実施形態のうち任意のもので用いること、ユーザへの表示向けにフォーマットすること、他のソフトウェアモジュール、方法又はシステムで用いること等々ができる。更に、それら結果の格納は、「恒久的」なもの、「半恒久的」なもの、一時的なもの、或いは一定期間に亘るもののいずれでもよい。
【0056】
いわゆる当業者にはご認識頂けるように、現在の技術水準は、諸態様のシステムのハードウェア的実現形態とソフトウェア的実現形態との間にほとんど違いが残っていない点まで進歩しているし、ハードウェアを用いるのかそれともソフトウェアを用いるのかは、一般に(但しある種の状況下ではハードウェア・ソフトウェア間選択が重大になるので常にではない)コスト対効率のトレードオフを反映する設計的選択事項となっている。いわゆる当業者にはご承知頂けるように、本願記載のプロセス及び/又はシステム及び/又はその他のテクノロジを実行可能な手段は種々あるし(例.ハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェア)、どの手段が相応しいかは当該プロセス及び/又はシステム及び/又はその他のテクノロジが利用される状況によって変わるであろう。例えば、速度及び正確性が肝要であると実施者が判断している場合、その実施者は主としてハードウェア的及び/又はファームウェア的な手段を選択するであろうし、そうではなく柔軟性が肝要である場合は、実施者は主としてソフトウェア的な実現形態を選択するであろうし、そのいずれでもない場合は、実施者はハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアの何らかの組合せを選択するであろう。このように、本願記載のプロセス及び/又は装置及び/又はその他のテクノロジを実行・実現可能な潜在的手段が幾通りかあるなか、いずれかのものが他のものに比べ本質的に優れているわけではなく、どの手段を利用すべきかについては、その手段が重用される状況や実施者の具体的懸念(例.速度、柔軟性又は予測可能性)といった、変転しうる事項によって左右される選択的事項である。いわゆる当業者にはご認識頂けるように、諸実現形態の光学的諸態様では、通常、光学指向のハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアが採用されよう。
【0057】
いわゆる当業者にはご認識頂けるように、本願中で説明した形式で装置及び/又はプロセスを記述した上で、技術的慣行に則りデータ処理システム内にそれら記述された装置及び/又はプロセスを統合することが、本件技術分野では常識である。即ち、本願記載の装置及び/又はプロセスの少なくとも一部分を、相応量の実験を通じデータ処理システム内に統合することができる。いわゆる当業者にはご認識頂けるように、通常のデータ処理システムは、一般に、システムユニットハウジング、動画表示装置、メモリ例えば揮発性メモリ及び不揮発性メモリ、プロセッサ例えばマイクロプロセッサ及びディジタル信号プロセッサ、情報処理エンティティ例えばオペレーティングシステム、ドライバ、グラフィカルユーザインタフェース及びアプリケーションプログラム、1個又は複数個のインタラクティブデバイス例えばタッチパッド又はスクリーン、及び/又は、フィードバックループ及び制御モータ(例.位置及び/又は速度感知用のフィードバックや諸構成要素及び/又は諸量を動かし及び/又は調節するための用制御モータ)を有する制御システムのうち、1個又は複数個を有している。通常のデータ処理システムは、データ処理/通信及び/又はネットワーク情報処理/通信システムによく見られるそれをはじめ、あらゆる適切な市販部材を利用し実現することができる。
【0058】
信ずるところによれば、本件開示及びそれに付随する利点の多くが上掲の記述によって理解されるであろうし、明らかな通り、開示主題から離隔することなく又はその主要な長所全てを犠牲にすることなく諸部材の形態、構成及び配置に様々な改変を施すことができる。記載されている形態は単なる説明用のそれであり、後掲の特許請求の範囲の意図は、それら改変を包括及び包含することにある。
図1
図2
図3A
図3B
図3C