特許第6876148号(P6876148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876148
(24)【登録日】2021年4月27日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】安定化高ドープ・シリコン・カーバイド
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20210517BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C30B29/36 A
   C30B23/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-556788(P2019-556788)
(86)(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公表番号】特表2020-503241(P2020-503241A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】US2017067189
(87)【国際公開番号】WO2018128797
(87)【国際公開日】20180712
【審査請求日】2019年8月30日
(31)【優先権主張番号】15/398,185
(32)【優先日】2017年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】バーク、アル
(72)【発明者】
【氏名】オロックリン、マイケル
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−048265(JP,A)
【文献】 特開2012−031014(JP,A)
【文献】 特開2015−067479(JP,A)
【文献】 特開2002−234800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン・カーバイドを製造する方法であって、
シードを成長ゾーン内に配置するステップと、
原料物質、窒素ドーパント及びひずみ補償成分を前記成長ゾーン内に導入するステップと、
シリコン・カーバイド結晶が該シリコン・カーバイド結晶内で1×1018cm−3から1×1021cm−3の窒素濃度で窒素ドーパントを含み、前記ひずみ補償成分が、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、リン、及びそれらの組合せを含むグループから選択されるように、前記成長ゾーンを加熱することによる昇華により、前記シード上の前記シリコン・カーバイド結晶を成長させるステップと、
を含み、
前記ひずみ補償成分は、前記窒素ドーパントと同数の電子をもつ元素及び/又は同一の多数キャリヤ型を有する元素を含み、前記シリコン・カーバイド結晶は、前記シリコン・カーバイド結晶内の前記ひずみ補償成分の濃度が2×1018cm−3から2×1020cm−3となるように成長させられる、シリコン・カーバイドを製造する方法。
【請求項2】
前記シリコン・カーバイド結晶をウェハに切り出すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ひずみ補償成分が、ゲルマニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン・カーバイド結晶の前記窒素の濃度が、1×1018cm−3から1×1020cm−3ある、請求項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シリコン・カーバイド(SiC)は、多くの魅力的な電気的、熱物理学的特性を示す。シリコン・カーバイドは、その物理的強度及び化学的攻撃に対する高耐性により特に有用である。シリコン・カーバイドは、耐放射性、高破壊電界、比較的広いバンド・ギャップ、高飽和電子ドリフト速度、高温動作、並びに青、紫、及び紫外線のスペクトル領域のエネルギー光子の吸収及び放射を含む、優れた電子特性を有する。いくつかのSiCの特性により、SiCは高出力密度の固体デバイスの製造に適したものになっている。
【背景技術】
【0002】
SiCは、多くの場合、シード昇華成長製法によって製造される。通常のシリコン・カーバイド成長技術では、基板及び原料物質は、両方共反応ルツボの内側に配置される。ルツボが加熱されたときに発生する熱的な傾斜は、材料の原料物質から基板への気相変動を促進し、基板上への凝縮及び結果としてもたらされるバルク結晶成長へと、その後に続く。
【0003】
不純物がSiC内にドーパントとして導入され得て、これらのドーパントが、一定の特性を調整し得ることが知られている。SiCが、直ぐ上で説明したような昇華成長製法で製造される場合、ドーパントは、任意の多様な方法でチャンバ内に導入され得て、その結果ドーパントがその製法で製造されたSiC結晶内に存在することになる。製法は、特定用途に向いた適正なドーパント濃度を提供するように制御される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例は、ひずみ補償成分を利用し、高ドーピングを可能にし、それによりSiC結晶及びウェハの高導電率を可能にする。いくつかの実施例では、SiC結晶製造方法は、成長ゾーン内にシードを配置するステップと、成長ゾーン内に原料物質を位置決めするステップとを含み、原料物質は、ドーパントとひずみ補償成分とを含む。SiC結晶は、SiC結晶がドーパントとひずみ補償成分とを含むように、シード上に成長させられる。SiC結晶は、次にSiCウェハに切断され得る。ひずみ補償成分は、SiC格子内に対向するひずみを導入する任意の元素であり得て、その結果全体での正味ひずみが削減される。これを実現するために、ひずみ補償元素の濃度は、ドーパント濃度の1%から20%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、1%から180%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。
【0005】
本発明のいくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、リン、及びそれらの組合せを含むグループから選択される。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1017cm−3から2×1021cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から2×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウムを含む。いくつかの実施例では、シリコン・カーバイド結晶内のゲルマニウム濃度は、1×1017cm−3から2×1021cm−3である。ゲルマニウムが使用されるいくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のゲルマニウム濃度は、2×1017cm−3から2×1020cm−3である。ゲルマニウムが使用されるいくつかの実施例では、SiC結晶内のゲルマニウム濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。
【0006】
いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパント濃度は、1×1018cm−3から1×1021cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパント濃度は、1×1018cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパント濃度は、1×1018cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパント濃度は、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパント濃度は、1×1018cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のドーパントは、窒素を含む。ドーパントが窒素を含むいくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内の窒素濃度は、1×1018cm−3から1×1021cm−3である。ドーパントが窒素を含むいくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内の窒素濃度は、1×1018cm−3から1.8×1020cm−3である。ドーパントが窒素を含むいくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内の窒素濃度は、1×1018cm−3から1×1020cm−3である。ドーパントが窒素を含むいくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内の窒素濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。
【0007】
いくつかの実施例によるSiCウェハは、50mmから300mmの寸法を有し、ひずみ補償成分及びドーパントを含む。いくつかの実施例では、SiCウェハ内のひずみ補償成分濃度は、ドーパント濃度の1%から180%であり、ひずみ補償成分は、ドーパントと同数の電子をもつ元素及び/又は同一の多数キャリヤ型を有する元素を含む。いくつかの実施例では、濃度は、1%から20%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、リン、及びそれらの組合せを含むグループから選択され、ドーパントは、n型ドーパントである。いくつかの実施例では、ドーパントは、窒素を含み、ひずみ補償成分は、ゲルマニウムを含む。
【0008】
いくつかの実施例によるSiCウェハは、50mmから300mmの寸法及び0.01ohm‐cm未満の抵抗率を有し、SiCウェハは、1×1018cm−3から1×1021cm−3の濃度で窒素を含む。いくつかの実施例では、窒素濃度は、1×1018cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、窒素濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。いくつかの実施例では、SiCウェハは、窒素濃度の1%から180%であるひずみ補償成分をさらに含む。いくつかの実施例では、濃度は、1%から20%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、リン、及びそれらの組合せを含むグループから選択される。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の実例の実施例による結晶の製造方法及び成長させられる結晶を示す図である。
図1B】本発明の実例の実施例による結晶の製造方法及び成長させられる結晶を示す図である。
図2】本発明の実施例による、ウェハの一例を示す図である。図2のウェハは、デバイスを形成するためにウェハから切り出され得るダイをさらに示す。
図3】本発明の実施例による、ウェハの別の実例を示す図である。図3のウェハは、デバイスを形成するためにウェハから切り出され得るダイをさらに示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例はこれから、本発明の実施例を示す添付図面を参照して、以下にさらに完全に説明されることになる。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で実施され得て、本明細書で表明される実施例に限定されないと解釈されるべきである。むしろ、これらの実施例は、本開示が完全且つ完璧となるように提供され、本発明の範囲を当業者に完全に伝えることになる。全体にわたり、類似の番号は、類似の要素を参照する。
【0011】
用語である第1の、第2の、などが、多様な要素を説明するために、本明細書で使用され得るが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきでないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためだけに使用される。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素は、第2の要素と呼ばれ得て、同様に、第2の要素は、第1の要素と呼ばれ得る。本明細書で用いられるとき、用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連する列挙された事項の何れか及び全ての組合せを包含する。
【0012】
層、領域、又は基板などの要素が、別の要素の「上に」ある、又は「上へ」延在すると記述された場合、他の要素の直上に存在し得る、又は直上へ延在し得る、又は介在要素がさらに存在し得ることを理解されたい。対照的に、要素が、別の要素の「直上に」ある、又は「直上へ」延在すると記述された場合、介在要素は存在しない。ことをさらに理解されたい。要素が、別の要素に「接続される」又は「結合される」と記述された場合、それは、直接的に接続され又は結合され得て、或いは介在要素が存在し得る。対照的に、要素が、別の要素の「直接接続される」、又は「直接連結される」と記述された場合、介在要素は存在しない。
【0013】
「の下に」又は「の上に」或いは「上側」又は「下側の」或いは「水平方向の」又は「垂直方向の」などの相対的用語は、本明細書では、図中で示すように、1つの要素、層、又は領域の、別の要素、層、又は領域に対する関係を説明するために使用され得る。これらの用語は、図内で示される方位に加え、デバイスの異なる方位を包含することが意図されることを理解されたい。
【0014】
本明細書で使用された専門用語は、具体的な実施例を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用したように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確にそうでないこと示さない限り、複数形も同様に含めることを意図する。さらに、用語「備える」(”comprises”)、「備えている」(”comprising”)、「含む」(”includes”)、及び/又は「含んでいる」(”including”)は、本明細書中で使用されているとき、具体的な特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は付加を排除しないことを理解されたい。
【0015】
別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的及び科学的な用語を含む)は、本発明の属する技術の当業者によって一般に理解される意味と同様の意味を有する。本明細書で用いられる用語は、本明細書及び関連技術の文脈でのその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明確にそう規定されない限り、理想化された又は過剰に形式張った意味で解釈されないことを、さらに理解されたい。
【0016】
別途明確に記述されない限り、「より少ない」及び「より大きな」などの比較的、量的用語は、質の概念を包含することを意図する。一例として、「より少ない」は、最も厳格な数学的意味での「より少ない」を意味するだけでなく、「より少ない又は同等の」をまた意味することがある。
【0017】
高濃度ドープされたn型SiCは、偏りがデバイス構造に適用されるとき、積層欠陥を形成することになる。この積層欠陥形成及び伝播は、結晶格子内のドーパント(例えば、窒素)の存在によって誘起される高い引張応力によると考えられている。本発明の実施例は、ひずみ補償成分を用いることで、高ドーピングを可能にし、これによりSiC結晶、ウェハ、及びデバイス内の高導電率を可能にする。ひずみ補償成分は、格子内に圧縮応力を誘起し、ドーパント原子によって誘起される引張応力を平衡させ、バイアス電圧が印加されたときに、応力を受けない、それゆえ安定化された材料をもたらす。材料は、高ドーピングにより高い導電率を有することになるが、積層欠陥を形成する傾向は存在しない。これらの特性は、材料が低デバイス電圧に使用されることになるとき、有益であり得る。
【0018】
多様な元素が、応力を平衡させる点で役立つ可能性がある一方で、ドーパントに関して反対の多数キャリヤ型の元素が、材料の導電率を損なうことになり、高ドーパント濃度を用いることによって獲得される導電率での任意の利得を削減又は帳消しにする。したがって、本発明の実施例は、ドーパントと同数の電子をもつ元素又は同一の多数キャリヤ型を有する元素、或いは2つの組合せである、ひずみ補償成分を使用する。ゲルマニウム、スズ、ヒ素、及びリンが実例である。ひずみ補償成分は、単一の元素又は複数元素の組合せであり得る。
【0019】
図1A及び図1Bは、本発明の実例の実施例による結晶成長製法を示す。図1Aでは、ルツボ100は、原料物質102を収容する。この実例では、ルツボの内部が成長ゾーンとして機能する。原料物質102は、シリコン、炭素、SiC、シリコン化合物、炭素化合物、又はそれらの何れか若しくは全ての組合せを含み得る。ドーパントとしての窒素などの他の元素及びひずみ補償成分としてのゲルマニウムは、原料物質内に含まれ得る。別法として、他元素の1つ、いくつか、又は全ては、原料物質内に含有させること以外の方法で、成長ゾーン内に導入され得る。シード104は、ルツボ蓋110に固定される。シード104を伴った蓋110は、シードがルツボ内で原料物質上につり下げられるように、ルツボ100上に配置され、ルツボ100は、加熱される。上で説明したように、ひずみ補償成分は、ドーパントと同数の電子をもつか、又は同一の多数キャリヤ型(n型又はp型のドーパント又はアクセプタ)を有するかの、何れかでなければならない。他の可能性のあるひずみ補償元素は、スズ、ヒ素、及びリンを含む。
【0020】
原料物質は、昇華し、シード上にSiCを形成する。昇華は、成長ゾーンが1800℃から2500℃の温度まで加熱されるとき、発生する。原料物質の温度が昇温される一方で、シードの成長面の温度は、原料物質の温度に近い温度まで、同様に昇温される。通常、シードの成長面は、1700℃から2400℃の温度まで加熱される。成長処理中、ルツボは、低速排気され、減圧される。原料物質及びSiCシードの成長面をそれらのそれぞれの温度に十分な時間維持することによって、所望の多型の単結晶SiCの巨視的成長が、シード上に形成されることになる。
【0021】
図1Bに目を向けると、SiC結晶は、物理的蒸気輸送処理を用いて、ルツボ内で原料物質から成長させられる。結晶成長は、成長結晶112がその所望の長さに達するまで実行される。長さの選択は、利用されることになる形成後処理の種類によってある程度決まる。結晶112の成長が停止されるべき時点は、ルツボのサイズ及び種類並びに原料物質102内のドーパント及びひずみ補償成分の任意の濃度などのパラメータによって決まる。この時点は、不純物濃度を決定する結晶112の検査を伴う試験成長を通して、予め決定され得る。
【0022】
SiCの昇華成長は、異なるサイズのルツボ、多様な材料のルツボの異なる種類、及び加熱変更を使用する方法を用いて、多様な成長システムを用いて実現され得る。特定の成長温度及び圧力が、これらの変数に適応するために、当業者によって適合され得る。通常の事例では、ルツボの種類又はサイズなどの変数が変更されると、試験的成長が、特定のシステムに最良の成長状態を確定するために、上述したように実行されることが必要となり得る。
【0023】
いくつかの実施例では、SiC結晶は、SiC結晶中のひずみ補償成分濃度が、1%から20%のドーパント濃度であるように成長させる。いくつかの実施例では、濃度は、1%から180%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1017cm−3から2×1021cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から2×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。
【0024】
いくつかの実施例では、SiC結晶は、50mmから300mmの寸法及び0.01ohm‐cm未満の抵抗率を有し、このときSiC結晶は、ドーパントとしての窒素を1×1018cm−3から1×1021cm−3の濃度で含むことになる。いくつかの実施例では、窒素濃度は、1×1018cm−3から1.8×1020cm−3となる。いくつかの実施例では、窒素濃度は、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3となる。SiC結晶は、1×1018cm−3から1×1021cm−3、1×1018cm−3から1×1020cm−3、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3、又は1×1018cm−3から1×1020cm−3の濃度のうちの任意のドーパントを含み得る。ルツボ内の原料物質は、それだけには限らないが、固体、粉末、又はガスを含む、任意の多様な形態で提供され得る。原料物質は、シリコン、炭素、SiC、シリコン化合物、炭素化合物、又はそれらの何れか若しくは全ての組合せを含み得る。ドーパントとしての窒素などの他の元素及びひずみ補償成分としてのゲルマニウムは、原料物質内に含まれ得る。別法として、他元素の1つ、いくつか、又は全ては、原料物質内に含有させること以外の方法で、成長ゾーン内に導入され得る。SiCの成長結晶が所望のサイズに到達したあと、システムが不活性ガスで充填し直されて昇圧され、温度が中間温度まで低速降温され、次に室温までより高速で降温される。中間温度は、約150℃から約500℃であり得る。いくつかの実施例では、中間温度は、約175℃から約225℃である。
【0025】
図2は、本発明の実施例により作成された結晶から切り出された、実質的に円形のウェハの概略図である。ウェハ200は、ダイに切断され得て、ダイ202は、デバイスを形成するために使用され得る。ウェハ切断前に、それだけには限らないが、半導体材料の追加層の堆積を含む、さらなる処理が、機能するデバイスを形成するために必要であり得る。使用されるためには、完成したデバイスは、実装及び/又は回路内部接続のための適切なコンタクトと共に、パッケージ内に封止されることがさらに必要とされ得る。
【0026】
図3は、本発明の実施例により作成された結晶から切り出された、実質的に長方形のウェハの概略図である。ウェハ300は、ダイに切断され得て、ダイ302は、デバイスを形成するためにやはり使用され得る。本発明のある実施例によるウェハは、多様な形状及びサイズであり得る。実質的に円形のウェハの場合、用語「寸法」は、50mmから300mmの寸法である、ように直径を示す。長方形ウェハの場合、寸法は、例えば長手側の長さの、片方の側面の長さを示す。ウェハ寸法は、実例として50mmから200mm、50mmから300mm、又は100mmから300mmであり得る。
【0027】
実例の実施例では、SiC材料は、結晶、ウェハ、又はダイの形状因子にかかわらず、1×1018cm−3から1×1021cm−3の濃度でドーパントを含む。いくつかの実施例では、ドーパント濃度は、1×1018cm−3から1×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ドーパント濃度は、1×1018cm−3から1×1019cm−3である。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハは、ひずみ補償成分を、ドーパント濃度が1%から20%でさらに含む。いくつかの実施例では、濃度は、1%から180%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、リン、及びそれらの組合せを含むグループから選択される。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分は、ゲルマニウムを含み、ドーパントは、窒素などのn型ドーパントである。
【0028】
材料は、ひずみ補償成分の点から、ゲルマニウム又は別の元素のどちらかに特定され得る。いくつかの実施例では、SiC結晶及び/又はウェハ内のひずみ補償成分濃度は、1×1017cm−3から2×1021cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、2×1017cm−3から1.8×1020cm−3である。いくつかの実施例では、ひずみ補償成分濃度は、1×1018cm−3から1.8×1019cm−3である。ひずみ補償成分のドーパントに対する割合は、1%から180%にやはり維持され得る。いくつかの実施例では、濃度は、1%から20%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、3%から120%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、5%から100%の間であり得る。いくつかの実施例では、濃度は、20%から100%の間であり得る。本明細書で説明した材料パラメータの任意の組合せを用いて、0.01ohm‐cm未満の抵抗率を有する結晶材料が製造され得る。0.05ohm‐cm未満の抵抗率を有する結晶及び/又はウェハが製造され得る。結晶は、0.001から0.01ohm‐cm、0.005から0.01ohm‐cm、又は0.005から0.05ohm‐cmの抵抗率をさらに有し得る。
【0029】
なお、ドーパントとしての窒素及び応力補償成分としてのゲルマニウムを用いると、窒素溶解性は、2.6×1020であり、すなわちここでSiC結晶内原子の約0.5%が窒素であるので、非常に高いドーピングが実現され得ることに留意されたい。本明細書で特定されるパラメータを考えると、窒素の最高達成可能濃度に起因する応力を補償するために必要なゲルマニウム原子の数は、適切にシリコン及び炭素原子の数の1%未満であることになり、これはゲルマニウムの固溶限界を超えない。しかしながら、ゲルマニウムの取り込みは、それが格子サイト上で一体となるので、ゲルマニウム原子によって誘起される応力(単位セルの膨張)により制限され得る。窒素の取り込みが反対の応力(単位セルの縮小)を発生させるので、高窒素濃度の存在が、材料内に取り込まれるさらに高いゲルマニウム濃度を可能にされる。事実上、窒素に起因する縮小を用いて、ゲルマニウムによる膨張を平衡させることによって、ゲルマニウム取り込みを、非平衡の材料で通常見られるより著しく高いレベルに到達させることが可能であり得るので、2×1018から2×1020cm−3の間のゲルマニウム濃度が達成されることが可能になる。ゲルマニウムとの窒素の固溶限界は、SiC抵抗率(及びゲルマニウムの固溶限界)をさらに低下させる1×1021より高い可能性がある。
【0030】
なお、本明細書で説明された材料、濃度、SiC成長状態、及びSiCウェハサイズの多様な組合せは、他の組合せを排除するものと解釈されるべきではないことにさらに留意されたい。例えば、任意の多様なサイズのウェハ内で、説明された任意のドーパント濃度は、説明された任意のひずみ補償成分濃度と組み合わされ得る。説明された各種実施例の各部分は、異なる方法で組み合わされ得る。なお、抵抗率、濃度、及び濃度比などの物理的特性は通常、所与の特性を有する結晶から切り出されたウェハに適用され、その逆もしかりであることに留意されたい。
【0031】
本明細書では特定の実施例が示され、説明されたが、同様の目的を実現するために計算された任意の配合は、示された特定の実施例に置換され得ること、及び本発明は、他の環境において他の用途を有することが当業者には認識されたい。本出願は、本発明の任意の改作物又は変形形態を含むことを意図する。以下の請求項は、決して本発明の範囲を本明細書で説明した特定の実施例に限定するものでない。
図1A
図1B
図2
図3