(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の各実施の形態について以下、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示す断面図である。
【0025】
図1を用いて本実施の形態1のプラズマ処理装置の構成について説明すると、プラズマ15を生成して被処理基板(被処理体)となる半導体ウエハ(以降、単にウエハと呼ぶ)4にプラズマ処理が行われる処理室7には、ウエハ4を載置するための試料台であるステージ6が設置されている。ステージ6には、その温度を調節するヒータ(図示せず)や冷媒流路(図示せず)と、ステージ6とウエハ4の間に伝熱ガスであるHe(ヘリウム)を供給するためのHe供給用配管(第1配管)60とが備えられている。そして、He供給用配管60にはバルブ61が設けられており、Heを供給する場合はバルブ61を開き、Heの供給を止める場合はバルブ61を閉じる。ステージ6とウエハ4の間に供給されたHeを排気するためのHe排気用配管(第2配管)80は、処理室7内を真空排気するための排気用配管10に接続されている。
【0026】
また、排気用配管10とHe排気用配管80にガスを供給するガス供給源95が備えられており、ガス供給源95はバルブ91を介してガス供給用配管90に接続されている。ガス供給用配管90は、排気用配管10と処理室7の接続部と、真空と大気を遮断するバルブ17およびバルブ19との間に接続されている。そして、バルブ91の開閉動作は、制御装置150によって制御される。
【0027】
また、プラズマ処理装置は、処理室7に処理ガスを供給する処理ガス供給部である処理ガス供給源52と、処理室7に接続された排気用配管10を介して処理室7を減圧し、かつ温度調節されたステージ6の熱を伝熱するためにウエハ4の裏面に供給される伝熱ガスを排気用配管10を介して排気する伝熱ガス排気部と、上記伝熱ガスをステージ6に供給する伝熱ガス供給部と、を備えている。
【0028】
つまり、上記伝熱ガス排気部は、排気用配管10と、上記伝熱ガスをステージ6に供給するためのHe供給用配管(第1配管)60と、を連通させるHe排気用配管(第2配管)80に繋がっている。さらに、プラズマ処理装置は、処理室7内の真空度を高い真空度に排気するターボ分子ポンプ12を備えている。
【0029】
また、プラズマ処理装置は、排気用配管10の大気に曝される箇所をパージするための第1ガス(例えば、N
2ガスやドライエアー)を供給する第1ガス供給機構141を備えている。そして、制御装置150は、処理室7の大気開放を伴う処理室7のウェットクリーニングを行う場合、処理室7の大気開放後から処理室7の排気を開始するまでの間、排気用配管10の大気に曝される箇所に上記第1ガスを供給し続けるように第1ガス供給機構141を制御する。なお、制御装置150は、排気用配管10やHe排気用配管80のそれぞれの一部(例えば、
図1に示すP部)に連通して設けられている。
【0030】
また、ステージ6には、プラズマ処理中にウエハ4に高周波電圧を印加するためのインピーダンス整合器13と高周波電源14が接続されている。
【0031】
また、処理室7の真空を保持するために処理室7の上部にセラミックプレート3が備えられており、セラミックプレート3の下方に間隙8を形成するような位置に複数の貫通孔9が設けられたセラミックプレート2が備えられている。なお、処理ガスは、処理ガス供給源52によって供給され、さらにガス流量制御手段(図示せず)で流量制御され、処理ガス供給用配管50に設けられたバルブ51が開いて間隙8を介して貫通孔9から処理室7に均一に供給される。
【0032】
また、処理室7には、配管70が接続されており、高真空の圧力を検知するための高真空圧力検知手段(圧力検知部)75と、低真空の圧力を検知するための低真空圧力検知手段(圧力検知部)76とが、配管70を介して備えられている。さらに、各圧力検知手段と処理室7の間にそれぞれバルブ71とバルブ72が備えられている。なお、大気圧から所定の圧力までは低真空圧力検知手段76が用いられ、所定の圧力から高真空までは高真空圧力検知手段75が用いられ、プラズマ処理中は高真空圧力検知手段75によって処理室7内の圧力を検知する。
【0033】
また、中真空の圧力を検知するための中真空圧力検知手段およびバルブを備える場合もあり、プラズマ処理中の圧力を中真空圧力検知手段によって検知することもある。
【0034】
そして、処理室7の圧力を制御するため、処理室7には圧力調整機構である圧力調整手段16と、排気手段であるターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)12とが備えられている。また、ドライポンプ(DP:Dry Pump)11との間にバルブ18が設けられている。ここで、DP11は、上記伝熱ガス排気部である。
【0035】
また、圧力調整手段16はバルブの役目も兼用している。排気用配管10に接続されているバルブ17とバルブ19のうち、バルブ17は、処理室7を大気圧から真空にDP11でゆっくり排気するためのスロー排気用のバルブであり、バルブ19は、DP11で高速に排気するためのメイン排気用のバルブである。
【0036】
ウエハ4は、図示しない搬送装置によって処理室7内に搬送され、ステージ6上に載置される。ステージ6内には静電吸着用の電極(図示せず)が設けられており、ステージ6に載置されたウエハ4は、電極に電圧を印加することによって保持される。伝熱ガス供給部であるHe供給源62からウエハ4とステージ6との間にHe(伝熱ガス)を供給し、Heを介してステージ6の熱をウエハ4に伝えることでウエハ4の温度を調節する。
【0037】
また、処理室7の周囲には、マイクロ波を出力するマグネトロン発振器20と、マイクロ波を処理室7まで伝搬させるための導波管21とが備えられている。また、処理室7の上方と側方に磁場発生手段であるソレノイドコイル22とソレノイドコイル23が備えられている。マグネトロン発振器20から発振されたマイクロ波は、導波管21内を伝搬し、セラミックプレート3およびセラミックプレート2を介して処理室7に放射される。マイクロ波によって生じる電界とソレノイドコイル22、ソレノイドコイル23により生成された磁界との相互作用によって電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)を生じさせることによりプラズマ15が生成される。
【0038】
処理室7内にプラズマ15を生成し、ステージ6に載置されたウエハ4に高周波電圧を印加することによって、ウエハ4上に形成された処理パターンに沿ってエッチング処理が行われる。このエッチング処理によって、処理室7内に反応生成物が付着する。また、例えば、処理室7に接続された配管である排気用配管10やHe排気用配管80の内面にもわずかに反応生成物が付着する。
図5に反応生成物の一例を示す。これらの反応生成物は参考文献により吸湿性があることが知られている(参考文献:改訂4版、化学便覧基礎編1、日本化学会編)。
【0039】
上記エッチング処理の終了後は、マイクロ波、磁場、高周波電圧および処理ガスの供給を停止し、処理室7の高真空排気を行う。その際、ウエハ4とステージ6の間に供給されたHeは、バルブ61を閉じた後、バルブ81を開けて、He排気用配管80と排気用配管10を介して処理室7内に排気される。別の方法としては、Heは、バルブ61とバルブ81を閉じた状態でバルブ82を開けて、DP11で一度排気した後に、バルブ82を閉じてバルブ81を開ける。これにより、処理室7は、He排気用配管80と排気用配管10を介して高真空に排気される。
【0040】
高真空排気後にウエハ4を取り出し、処理室7内のプラズマクリーニングを行う。プラズマクリーニングは、ダミーのウエハ4をステージ6上に載置した後に実施してもよいし、ダミーのウエハ4を使用せずに実施してもよい。
【0041】
なお、処理室7内に付着した反応生成物はプラズマクリーニングによって除去できるが、例えば、処理室7に接続された排気用配管10や、排気用配管10に接続されているHe排気用配管80の内面のプラズマクリーニングは困難である。そのため、1回のエッチング処理で付着する反応生成物が僅かであっても、処理を重ねるうちに反応生成物の付着量は徐々に増えていくことになる。しかしながら、このような反応生成物は、目視で確認することが困難なほどの付着量である。
【0042】
次に、
図2は
図1に示すプラズマ処理装置のウェットクリーニングを開始してから終了するまでの手順の一例を示すものである。まず、プラズマ処理装置の状態が正常か判断するため、エッチレート、CD形状、異物、汚染などの検査(S100)を実施する。検査の結果、各種数値のうち1つでも管理値を外れた場合、プラズマ処理装置の状態を正常に復帰させるためのシーズニング処理やダミー処理が行われるが、このような処理を実施しても正常な状態に復帰しない場合、プラズマ処理装置の大気開放を伴うウェットクリーニングを実施する。
【0043】
ウェットクリーニングを開始する前に、装置立下げ作業(S101)が行われる。装置立下げ作業(S101)では、処理室7内に付着した反応生成物や吸着したガス分子を除去するためのプラズマクリーニング等を実施する。また、処理ガス供給用配管50内の残留ガスを排気するために、N
2 などのガスの供給と排気を繰り返すパージ排気なども実施する。装置立下げ作業(S101)が完了した後のプラズマ処理装置は、バルブ31、バルブ51、バルブ61、バルブ81、バルブ82、バルブ17、バルブ19、バルブ91、バルブ72が閉じた状態である。
【0044】
次に処理室7の大気開放(S102)を実施する。ここでは、真空排気を停止するため、圧力調整手段16、バルブ71を閉じて、バルブ72を開ける。その後、バルブ31を開き、N
2 やドライエアーなどのガス供給源35から、処理室7に接続されたベント配管30を介して処理室7内にガスを供給する。この時、低真空圧力検知手段76によって処理室7の圧力を検知し、大気圧になった時点で、バルブ31を閉じる。
【0045】
ここで、
図9は本願発明者が比較検討を行った比較例のプラズマ処理装置の模式的な構成を示す断面図である。
図9に示す比較例のプラズマ処理装置では、排気用配管10にガスを供給せずに、処理室7を構成する、例えばセラミックプレート3を取り外すことになるため、大気が排気用配管10に到達することになる。プラズマ処理装置が設置されているクリーンルームは温度と湿度が管理された空間であるが、クリーンルーム中の湿度は30〜50%となる。上述したように、排気用配管10の内面は反応生成物が付着しているため、大気中の水分によって排気用配管10の内面に付着した反応生成物が吸湿してしまう。
【0046】
そこで、
図1に示す本実施の形態1のプラズマ処理装置では、処理室7内を大気圧にした後、セラミックプレート(処理室7を構成する部品)3を取り外す前に、バルブ91を開けて、N
2 やドライエアーなどのガスのガス供給源95からガス供給用配管90を介して、少なくとも排気用配管10にガス(第1ガス)を供給する(S103)。なお、ガス供給源95とガス供給源35は同一であってもよいし、別々のものでもよい。処理室7内に大気が混入する前に、排気用配管10にガスを供給することによって、セラミックプレート(部品)3を取り外した後(S104)においても、排気用配管10やの内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。また、セラミックプレート3を取り外した後も、排気用配管10にガスを供給し続けるため、処理室7を構成する部品を取り外してから清浄な部品を取り付ける(S105)までの間も排気用配管10の内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。そして、処理室7を構成するセラミックプレート3などの各種部品を取り付け、処理室7内に大気が混入する恐れが無くなった時点で、バルブ91を閉じて排気用配管10に供給しているガスを停止する(S106)。これによって、排気用配管10に付着している反応生成物の水分の吸湿を抑制することができる。
【0047】
次に、処理室7内の真空排気(S107)を実施する。真空排気(S107)では、バルブ18を閉じて、スロー排気用のバルブ17を開ける。バルブ17を開けて、DP11により排気用配管10を介して処理室7内を大気圧からゆっくり(第1速度)と真空排気することによって、急激な圧力変動または気流の乱れに起因する異物の舞い上がりもしくは水分凝縮などを抑制することができる。処理室7内の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ17を閉じ、メイン排気用のバルブ19を開ける。バルブ19を開けて高速(第1速度より速い第2速度)で排気することで、真空排気時間の短縮を図ることができる。処理室7内の圧力が所定の圧力、例えば100Paに到達するまでバルブ19を介してDP11により真空排気を行う。処理室7内の圧力が100Paに到達すると、バルブ72を閉じてバルブ71を開けて高真空圧力検知手段(圧力検知部)75により処理室7内の圧力を検知する。また、バルブ19を閉じてバルブ18を開けた後に、圧力調整手段16を開けて、TMP12によって処理室7内を高真空排気する。
【0048】
高真空排気後に、処理室7内のリークレートを確認し(S108)、所定の管理値を満たすことができなければ、再度処理室7の大気開放(S102)が実施される。リークレートが管理値を満たすことができれば、製品着工のための装置立上げ作業(S109)が実施される。装置立上げ作業(S109)では、プラズマ処理装置の温度調節やシーズニング処理またはダミー処理などが実施される。その後、エッチレート、CD形状、異物、汚染などの立上げ検査(S110)が実施される。検査の結果、所定の管理値を満たすことができなければ、シーズニング処理もしくはダミー処理などの装置立上げ作業(S111)および立上げ検査(S112)が実施される。検査結果が所定の管理値を全て満たすことができれば、製品の着工(S113)を開始する。
【0049】
ここで、本実施の形態1の特徴である大気開放中に排気用配管10にガスを供給する効果について検討した結果を述べる。本実験では、実際のウェットクリーニングを模擬して処理室7の大気開放時間を4時間とし、大気開放後に処理室7内をTMP12で真空排気している最中の水分量を測定した。
【0050】
なお、
図3は
図1に示すプラズマ処理装置のターボ分子ポンプにおける排気時間と水分量の関係の一例を示すグラフである。つまり、
図3は、比較例(
図9に示すプラズマ処理装置を用いた場合)と本実施の形態1(
図1に示すプラズマ処理装置を用いた場合)において、四重極型質量分析計(QMS:Quadrupole Mass Spectrometer)にてTMP12による真空排気中の水分量(Mass No.18)を測定した結果を示している。
図3の縦軸は、QMSにて計測された水(H
2 O)のイオン電流値を規格化した値であり、横軸は、TMP12による真空排気を開始してからの経過時間である。
図3に示す3−1は、ウェットクリーニング時に処理室7の大気開放中にHe供給用配管60と排気用配管10およびHe排気用配管80のそれぞれにガスを供給していない時の結果である。
図3に示す3−2は、He供給用配管60のみにガスを供給した時の結果である。
図3に示す3−3は、He供給用配管60と排気用配管10およびHe排気用配管80のそれぞれに同時にガスを供給した時の結果である。本実施の形態1では排気用配管10にガスを供給することを特徴とするが、
図3の3−2と
図3の3−3の結果の差から排気用配管10とHe排気用配管80にガスを供給することによる真空排気中の水分量の抑制効果を確認することができる。
【0051】
図3の結果から、大気開放中にガスを供給しない場合(
図3の3−1)と大気開放中にHe供給用配管60のみにガスを供給した場合(
図3の3−2)において、真空排気中に減少していく水分量はほぼ同等であることが分かる。つまり、上記比較例のように大気開放中に配管内面がクリーンな状態であるHe供給用配管60にガスを供給しても、真空排気中の水分量を低減する効果は小さいことを示している。一方、大気開放中にHe供給用配管60のみにガスを供給した場合(
図3の3−2)と、He供給用配管60と排気用配管10ならびにHe排気用配管80に同時にガスを供給した場合(
図3の3−3)において、真空排気中の水分量を比較すると、TMP12による排気を開始してから全ての経過時間で、
図3の3−3の水分量が25〜30%低減できていることが分かる。
図3の3−1と
図3の3−2の結果から、He供給用配管60にガスを供給しても真空排気中の水分量を低減する効果が小さいことが判明しているため、
図3による結果は、大気開放中に排気用配管10とHe排気用配管80にガスを供給したことによって、真空排気中の水分量を低減する効果が得られたことを示している。つまり、大気開放中に排気用配管10とHe排気用配管80にガスを供給することによって、排気用配管10とHe排気用配管80に付着した反応生成物の吸湿を抑制できるため、真空排気中の水分量を低減することができると言える。なお、大気開放中に排気用配管10のみにガスを供給することによっても、排気用配管10に付着した反応生成物の吸湿を抑制できることは言うまでもない。
【0052】
次に、
図4は本発明の実施の形態1に係るリークレートを示すグラフであり、詳細には、処理ガスを供給し、エッチング処理が可能になる所定の管理値を満たした時のリークレートを示すものである。このリークレートは、TMP12による真空排気を開始してから4時間後の結果である。
図4の縦軸はリークレートを規格化した値である。
図4に示す4−1は、ウェットクリーニング時に処理室7の大気開放中にHe供給用配管60と排気用配管10ならびにHe排気用配管80にガスを供給していない時の結果である。
図4に示す4−3は、He供給用配管60と排気用配管10ならびにHe排気用配管80に同時にガスを供給した時の結果である。なお、
図4の4−1は、比較例と同様のHe供給用配管60のみにガスを供給した時のリークレートの結果ではないが、
図3の結果から
図4の4−1の結果と、He供給用配管60のみにガスを供給した時のリークレートの結果とは、同等の結果になると推測される。
【0053】
図4の結果から、TMP12による真空排気を開始してから4時間後の所定の管理値を満たしたリークレートは、大気開放中にガス供給がない場合と、He供給用配管60と排気用配管10ならびにHe排気用配管80に同時にガスを供給した場合とでほぼ同等であることが分かる。
図3の結果で4時間後の水分量には30%程度の差があるのにも関わらず、リークレートは管理値を満たしているため、比較例のプラズマ処理装置においても、処理室7内の水分が十分に低減できていない状態で処理ガスを供給することが可能になる。その結果、比較例のプラズマ処理装置において、処理ガスを供給すると、処理ガスと水分が反応して処理室7を構成する基材や配管が腐食する原因となる。
【0054】
本実施の形態1の
図1に示すプラズマ処理装置では、リークレートが管理値を満たすとともに、処理室7内の水分も十分に低減できているため、処理ガスを供給しても、処理ガスと水分の反応が起こることがないため、処理室7を構成する基材や配管の腐食を防止することができる。
【0055】
このように本実施の形態1では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、排気用配管10にガスを供給することにより、配管に付着した反応生成物が大気の混入によって吸湿することを抑制できるため、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生を低減することができる。また、真空排気時の水分の低減により、処理ガスを供給しても処理室7を構成する基材や配管の腐食を防止することができ、異物やコンタミの発生を抑制できる。これによって、パターン欠陥やデバイス性能の劣化を抑制することができ、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態1では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、排気用配管10のみにガス(第1ガス)を供給する場合について述べたが、排気用配管10とHe排気用配管(第2配管)80とにガスを供給してもよいことは言うまでもない。例えば、
図2のプラズマ処理装置の処理手順 において、S103とS106の排気用配管が、排気用配管10とHe排気用配管80の両方を表している場合である。このように排気用配管10とHe排気用配管80とにガスを供給することにより、両方の配管のそれぞれにおいて、付着した反応生成物が大気の混入によって吸湿することを抑制できるため、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生をさらに低減することができる。
【0057】
なお、本実施の形態1では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、排気用配管10にガスを供給する場合について述べたが、処理室7に接続された高真空圧力検知手段75および低真空圧力検知手段76を備えた配管70においても本発明を適用することができる。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続された高真空圧力検知手段75および低真空圧力検知手段76を備えた配管70に対して本発明を適用する場合を説明する。
【0059】
図6は本発明の実施の形態2に係るプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示す断面図である。
図6に示すプラズマ処理装置の大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、配管70にガスを供給する場合を説明する。なお、
図6において、
図1と同じ符号を付した構成は実施の形態1で説明したものと同じ機能を備えるためその説明を省略する。
【0060】
図6に示す本実施の形態2のプラズマ処理装置では、処理室7に配管70が接続されており、この配管70に高真空圧力検知手段75と低真空圧力検知手段76とが接続されている。さらに、配管70には、N
2 やドライエアーなどのガスを供給するガス供給源95が備えられている。ガス供給源95は、バルブ93を介してガス供給用配管92に接続されている。ガス供給用配管92は、配管70と処理室7の接続部と、真空と大気を遮断するバルブ71との間(例えば、
図2に示すQ部)に接続されている。さらに、配管70には、第2ガス供給機構142が連通して設けられている。第2ガス供給機構142は、処理室7の圧力を検知する圧力検知部と処理室7とが連通するための配管70の大気に曝される箇所をパージするための第2ガスを供給するものである。上記第2ガスは、例えば、N
2 やドライエアーなどである。そして、第2ガス供給機構142は、制御装置150によって制御される。これにより、バルブ93の開閉動作は、制御装置150によって制御される。ここで、制御装置150は、処理室7の大気開放を伴う処理室7のウェットクリーニングを行う場合、処理室7の大気開放後から処理室7の排気を開始するまでの間、配管70の大気に曝される箇所に上記第2ガスを供給し続けるように第2ガス供給機構142を制御するものである。なお、ガス供給源95は、実施の形態1で述べたガス供給源95と同一であってもよいし、別々のものでもよい。
【0061】
エッチング処理によって、処理室7に接続されている配管70の内面には、わずかに反応生成物が付着する。配管70の内面は、排気用配管10やHe排気用配管80の内面と同様にプラズマクリーニングが困難であるため、したがって、エッチング処理を重ねるうちに反応生成物の付着量が徐々に増えていくことになる。しかしながら、このような反応生成物は、目視で確認することが困難なほどの付着量である。
【0062】
このような状態で大気開放を伴う処理室7のウェットクリーニングを実施すると、例えばセラミックプレート(部品)3を取り外した際に、大気が配管70に到達することになる。上述したように、配管70の内面は反応生成物が付着しているため、大気中の水分によって配管70の内面に付着した反応生成物が吸湿してしまう。
【0063】
本実施の形態2では、処理室7内を大気圧にした後、セラミックプレート3を取り外す前に、バルブ93を開けて、N
2 やドライエアーなどのガス供給源95からガス供給用配管92を介して、配管70にガスを供給する。そして、処理室7内に大気が混入する前に、配管70にガスを供給することによって、セラミックプレート(部品)3を取り外した後においても、配管70の内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。また、セラミックプレート3を取り外した後も、配管70にガスを供給し続けるため、処理室7を構成するセラミックプレート3などの部品を取り外してから清浄な部品を取り付けるまでの間も配管70の内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。その後、処理室7を構成するセラミックプレート3などの各種部品を取り付け、処理室7内への大気が混入する恐れが無くなった時点で、バルブ93を閉じて配管70に供給しているガスを停止する。これによって、配管70に付着している反応生成物の水分の吸湿を抑制することができる。
【0064】
このように本実施の形態2で説明した処理室7に接続された高真空圧力検知手段75や低真空圧力検知手段76などの圧力検知部を備えた配管70においても、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、配管70にガスを供給することにより、配管70に付着した反応生成物が大気の混入によって吸湿することを抑制できる。これにより、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生を低減することができる。また、真空排気時の水分の低減により、処理ガスを供給しても処理室7を構成する基材や配管の腐食を防止でき、異物やコンタミの発生を抑制できる。これによって、パターン欠陥やデバイス性能の劣化を抑制でき、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態2では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続された上記圧力検知部を備えた配管70にガスを供給する場合について述べたが、処理室7に接続されたベント配管30においても本発明を適用することができる。
【0066】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続されたベント配管30に対して本発明を適用する場合を説明する。
【0067】
図7は本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理装置の模式的な構成の一例を示す断面図である。
【0068】
図7に示すプラズマ処理装置の大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、ベント配管30にガスを供給する場合を説明する。なお、
図7において、
図1と同じ符号を付した構成は実施の形態1で説明したものと同じ機能を備えるためその説明を省略する。
【0069】
図7に示す本実施の形態3のプラズマ処理装置では、処理室7にベント配管30が接続されており、このベント配管30にN
2 やドライエアーなどのガスを供給するガス供給源95が備えられている。ガス供給源95はバルブ96を介してガス供給用配管94に接続されている。そして、ガス供給用配管94は、ベント配管30と処理室7の接続部と、真空と大気を遮断するバルブ31との間(例えば、
図7に示すR部)に接続されている。さらに、ベント配管30には、第3ガス供給機構143が連通して設けられている。第3ガス供給機構143は、処理室7を大気開放するために処理室7内に供給されるガスの供給用配管であるベント配管30の大気に曝される箇所をパージするための第3ガスを供給するものである。上記第3ガスは、例えば、N
2 やドライエアーなどである。そして、第3ガス供給機構143は、制御装置150によって制御される。これにより、バルブ96の開閉動作は、制御装置150によって制御される。ここで、制御装置150は、処理室7の大気開放を伴う処理室7のウェットクリーニングを行う場合、処理室7の大気開放後から処理室7の排気を開始するまでの間、ベント配管30の大気に曝される箇所に上記第3ガスを供給し続けるように第3ガス供給機構143を制御するものである。なお、ガス供給源95は、実施の形態1および実施の形態2で述べたガス供給源95と同一であってもよいし、別々のものでもよい。
【0070】
エッチング処理によって、処理室7に接続されているベント配管30の内面には、わずかに反応生成物が付着する。ベント配管30の内面は、排気用配管10、He排気用配管80、配管70の内面と同様にプラズマクリーニングが困難であるため、エッチング処理を重ねるうちに反応生成物の付着量が徐々に増えていくことになる。しかしながら、このような反応生成物は、目視で確認することが困難なほどの付着量である。
【0071】
このような状態で大気開放を伴うウェットクリーニングを実施すると、例えばセラミックプレート(部品)3を取り外した際に、大気がベント配管30に到達することになる。上述したように、ベント配管30の内面は反応生成物が付着しているため、大気中の水分によってベント配管30の内面に付着した反応生成物が吸湿してしまう。
【0072】
そこで、本実施の形態3では、処理室7内を大気圧にした後、セラミックプレート3を取り外す前に、バルブ96を開けて、N
2 やドライエアーなどのガス供給源95からガス供給用配管94を介して、ベント配管30にガスを供給する。処理室7内に大気が混入する前に、ベント配管30にガスを供給することによって、セラミックプレート3を取り外した後においても、ベント配管30の内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。また、セラミックプレート3を取り外した後も、ベント配管30にガスを供給し続けるため、処理室7を構成するセラミックプレート3などの部品を取り外してから清浄な部品を取り付けるまでの間もベント配管30の内面に付着した反応生成物が大気中の水分を吸湿することを抑制できる。その後、処理室7を構成するセラミックプレート3などの各種部品を取り付け、処理室7内への大気が混入する恐れが無くなった時点で、バルブ96を閉じてベント配管30に供給しているガスを停止する。これによって、ベント配管30に付着している反応生成物の水分の吸湿を抑制することができる。
【0073】
本実施の形態3では、ベント配管30にバルブ96、ガス供給用配管94を備えてガスを供給する場合の装置構成を示したが、ガス供給源35から供給されるN
2 ガスやドライエアーなどのガスをベント配管30に供給してもよい。
【0074】
ここで、
図8は、本発明の実施の形態3に係る変形例のプラズマ処理装置の模式的な構成を示す断面図である。
図8に示す変形例のプラズマ処理装置において、ガス供給源35から供給されるガスは、処理室7を大気にするためのものであり、大流量のガスが供給されることになるが、
図8に示すように、バルブ31と並列にバルブ32を設け、バルブ32とガス供給源35との間にマスフローコントローラー36を設ければよい。
【0075】
つまり、ガス供給源35からN
2 ガスやドライエアーなどのガスをベント配管30に供給する場合、バルブ31を閉じた状態で、バルブ32を開けて、マスフローコントローラー36により供給する流量を設定することによって、ベント配管30に大流量のガスが供給されることを防止できる。
【0076】
このように、本実施の形態3および変形例で説明した処理室7に接続されたベント配管30においても、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、ベント配管30にガスを供給することにより、ベント配管30に付着した反応生成物が大気の混入によって吸湿することを抑制できるため、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生を低減することができる。また、真空排気時の水分の低減により、処理ガスを供給しても処理室7を構成する基材や配管の腐食を防止でき、異物やコンタミの発生を抑制できる。これによって、パターン欠陥やデバイス性能の劣化を抑制でき、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0077】
以上、実施の形態1〜3に係るプラズマエッチング装置およびそのウェットクリーニング方法では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続された配管にN
2 やドライエアーなどのガスを供給することにより、配管に付着した反応生成物が大気の混入によって吸湿することを抑制できるため、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生を低減することができる。また、真空排気時の水分の低減により、処理ガスを供給しても処理室7を構成する基材や配管の腐食を防止でき、異物やコンタミの発生を抑制できる。これによって、パターン欠陥やデバイス性能の劣化を抑制でき、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0079】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0080】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる。
【0081】
また、本発明では、ウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続された配管にN
2 やドライエアーなどのガスを供給し、配管の内面に付着した反応生成物の吸湿を抑制することを特徴としているが、He供給用配管60や処理ガス供給用配管50にも本発明を適用することができる。すなわち、ウェットクリーニングにおいて、He供給用配管60や処理ガス供給用配管50にガスを供給することによって、配管の内面に大気中の水分が吸着することを抑制することができる。
【0082】
また、本発明は、上述した電子サイクロトロン共鳴型プラズマ処理装置に限定されるものではなく、例えば、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)処理装置、容量結合型プラズマ(Capacitively Coupled Plasma:CCP)処理装置などに対しても適用可能である。さらに本発明は、半導体デバイスの製造や検査の分野に限定されるものではなく、フラットパネルディスプレイの製造や、プラズマを用いた処理装置など、様々な分野に適用可能である。
【0083】
また、上記実施の形態1〜3では、それぞれのプラズマ処理装置において、第1ガス供給機構141が設けられている場合、第1ガス供給機構141と第2ガス供給機構142が設けられている場合、第1ガス供給機構141と第2ガス供給機構142と第3ガス供給機構143が設けられている場合をそれぞれ一例として説明した。そして、排気用配管10、He排気用配管80、配管70もしくはベント配管30のそれぞれの大気に曝される箇所にガスを供給する場合について説明した。
【0084】
しかしながら、上記実施の形態1〜3のそれぞれのプラズマ処理装置においては、例えば、第1ガス供給機構141と第3ガス供給機構143が設けられていてもよい。そして、その場合、第1ガス供給機構141と第3ガス供給機構143は、それぞれ別個に設けられたガス供給機構であってもよいし、あるいは同一のガス供給機構であってもよい。
【0085】
さらに、第1ガス供給機構141と第2ガス供給機構142と第3ガス供給機構143が設けられている場合に、それらは、同一のガス供給機構であってもよい。
【0086】
また、上記実施の形態1〜3では、大気開放を伴うウェットクリーニングにおいて、処理室7に接続された配管にN
2 やドライエアーなどのガスを供給する際、大気開放後から処理室7の排気を開始するまでの間、排気用配管10にガスを供給する場合について説明したが、大気開放前から処理室7の排気を開始するまでの間、上記配管にガスを供給するようにしてもよい。すなわち、
図10に示す変形例のウェットクリーニングの手順に示すように、処理室の大気開放S103の前に排気用配管にガス供給を開始する(S102)。これにより、大気開放前から上記配管にガスを供給しているため、真空排気時の水分起因のアウトガスの発生をさらに低減することができる。
【0087】
また、上記実施の形態1〜3では、ウェットクリーニングに伴う大気開放の場合について述べたが、ウェットクリーニング以外にプラズマ処理中に異常を検出して装置を停止し、プラズマ処理時の反応生成物が処理室内に残存するような状態で処理室を大気開放する必要がある場合等にも上記実施の形態1〜3に係る発明を適用可能なことは言うまでもない。