(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マトリクス樹脂は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ−4−メチルペンテン、天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の気体分離膜の製造方法。
前記(c)工程において、デンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子の混合液中の含有率は、1質量%〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の気体分離膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジー研究の一還として、平均粒子径が1nmから数百nm位までのナノメートルオーダーの粒子径を有する微粒子(ナノ粒子)に関する研究が盛んに行われている。素材をナノサイズ化したナノ粒子では、従来のバルク材料とは異なり、様々な機態、特性を発現、付与できることが知られており、幅広い産業分野での応用が期待されている。
【0003】
ナノ粒子は、一次粒子としての製造は可能であるが、その微細さに由来して凝集性が強く、放置しておくとマイクロオーダーの粒子径を有する凝集体となってしまう。例えば、上述したような無機物ナノ粒子を有機成分中に添加した場合、耐熱性の向上や機械的強度の向上が期待できる一方で、無機物粒子は、その凝集性の強さから、そのままでは有機溶媒中や高分子マトリクス中でマイクロオーダーの凝集体を形成し、結果として期待したような有機−無機複合材料の特性、性能を得られない可能性がある。このため、一次粒子としての分散性を維持するために、粒子表面に対して均一な化学修飾を行うことが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
加えて、現在、無機成分と有機成分をナノレベル又は分子レベルで混ぜ合わせることによって、両者のメリットを相乗的に高めることのできる有機−無機複合材料が注目を集めている。この概念は、エネルギー・環境問題を解決する上でその有用性が注目されている高分子気体分離膜にも適応がなされており、高分子マトリクス中に無機物ナノ粒子を添加した有機−無機複合材料の作製によって、既存の方法では達成できなかった高い機械的強度や熱的安定性、気体透過特性の達成が望まれている。
【0005】
高分子膜の気体透過特性を利用して気体を分離する方法は、気体の相変化を伴わずに気体の分離・回収ができ、他の気体分離法に比べて操作が簡便で装置の小型化が可能であり、また、連続的に気体分離を行うことができるため、環境負荷が少ないという特性を有している。このような省エネルギー型の高分子気体分離膜法は、近年、特に温室効果ガスの分離・回収や酸素富化空気の作製、天然ガスの精製技術として注目を集め、実用化が期待されているが、さらに気体分離性能及び気体透過量の点での改善が必要とされる。
【0006】
前記したように、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させることにより気体透過特性を改善する試みもなされているが、前記ナノ粒子の凝集の問題は、有機−無機複合気体分離膜の作製においても同様に問題となっており、既存の有機−無機複合気体分離膜では、高分子マトリクス中で無機物ナノ粒子が凝集することにより、膜強度の低下や、高い粒子含有率を達成できないことから、気体透過性を数倍程度までしか向上できないことが課題となっている。
【0007】
例えば、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させて気体分離膜特性を改善する方法として、シリカナノ粒子の表面をアミノ基含有シランカップリング剤で処理して表面をシリル化し、さらにこのシリル化粒子をポリマーで処理することにより、ポリマーグラフトシリカ粒子を作製し、こうして得られたれポリマーグラフトシリカ粒子をポリマー中に分散させて樹脂膜とし、この膜の気体分離膜としての性能を調べた報告がなされている(非特許文献1を参照。)が、気体の透過量などにおいて十分といえる結果は得られていない。
【0008】
これらの課題を解決する方法として、シリカナノ粒子の表面に対して嵩高いハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子を結合させることにより、有機溶媒中や高分子マトリクス中での凝集がなく、均一分散性に優れ、気体の透過量が大きく改善された気体分離膜が提唱されている(特許文献2を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させて気体分離膜特性を改善する方法として特許文献2に記載の技術を検証する中で、製造工程中で粒子を乾燥させているためにシリカナノ粒子が凝集し、高分子マトリクス中での分散が不均一となりやすく、また、修飾シリカの含有量が30質量%より高くなると気体分離膜が破損してしまうために、修飾シリカの含有量が30質量%以下に限られるため、気体透過量において十分な結果が得られていないことを突き止めた。
【0012】
本発明は、高分子マトリクス中での凝集がなく、均一分散性に優れた表面修飾シリカナノ粒子を含有する、気体透過量の特性において極めて優れた気体分離膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を行った結果、シリカナノ粒子を溶媒中に分散させた状態で嵩高いハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子を結合させ、樹脂マトリクスに混合させることにより、均一分散性に優れ、気体の透過量が大きく改善された気体分離膜の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、以下の第1観点〜至第14観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法に関する。
第1観点:下記の(a)、(b)、(c)及び(d)工程を含むことを特徴とする気体分離膜の製造方法:
(a)工程:第1溶媒に分散されたシリカナノ粒子の表面を、前記第1溶媒に分散された状態のまま反応性官能基含有化合物により処理して、反応性官能基修飾シリカナノ粒子を調製して反応性官能基修飾シリカナノ粒子の第1溶媒分散液を得る工程、
(b)工程:前記(a)工程で得られた反応性官能基修飾シリカナノ粒子の第1溶媒分散液の分散媒を乾燥させることなく第2溶媒に置換後、第2溶媒存在下で反応性官能基修飾シリカナノ粒子にデンドリマー形成用モノマー又はハイパーブランチ形成用モノマーを反応させて、前記反応性官能基にデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子を調製してデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子付加シリカナノ粒子を得る工程、
(c)工程:前記(b)工程で得られた前記デンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子付加シリカナノ粒子をマトリクス樹脂と混合する工程、
(d)工程:前記(c)工程で得られた混合液を基材に塗布後、溶媒を除去する工程。
【0015】
第2観点:前記第1溶媒は、水及び炭素原子数1〜4のアルコールから選択される少なくとも1種であることを特徴とする第1観点に記載の気体分離膜の製造方法。
第3観点:前記第2溶媒は、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びγ―ブチロラクトンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする第1観点又は第2観点に記載の気体分離膜の製造方法。
第4観点:前記反応性官能基含有化合物は、シランカップリング剤であることを特徴とする第1観点〜第3観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第5観点:前記反応性官能基含有化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする第1観点〜第4観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
【0016】
【化1】
(式(1)中、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表す。)
【0017】
第6観点:前記(a)工程において、前記式(1)で表される反応性官能基含有化合物による処理後に、前記第1溶媒に分散された状態のまま更に下記の一般式(2)で表される化合物又はその酸無水物である反応性官能基含有化合物により処理して、反応性官能基修飾シリカナノ粒子を調製して反応性官能基修飾シリカナノ粒子の第1溶媒分散液を得ることを特徴とする第5観点に記載の気体分離膜の製造方法。
【0018】
【化2】
(式(2)中、R
3は炭素原子数1〜20のアルキレン基、又は芳香族基を表す。)
【0019】
第7観点:前記デンドリマー形成用モノマーとして、2個以上のカルボキシル基を有する化合物と2個以上のアミノ基を有する化合物を用いることを特徴とする第1観点〜第6観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第8観点:前記デンドリマー形成モノマーとして、2個以上のアミノ基を有する化合物と2個以上のカルボキシル基を有する化合物を用いることを特徴とする第1観点〜第6観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第9観点:前記ハイパーブランチ形成用モノマーとして、1個のカルボキシル基と2個以上のアミノ基又はハロゲン原子を有する化合物を用いることを特徴とする第1観点〜第6観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第10観点:前記ハイパーブランチ形成用モノマーとして、1個のアミノ基と2個以上のカルボキシル基又はハロゲン原子を有する化合物を用いることを特徴とする第1観点〜第6観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第11観点:前記マトリクス樹脂は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ−4−メチルペンテン、天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1観点〜第10観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第12観点:前記(c)工程において、デンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子の混合液中の含有率は、1質量%〜70質量%であることを特徴とする第1観点〜第11観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第13観点:前記(d)工程において、溶媒の除去が加熱により行われることを特徴とする第1観点〜第12観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
第14観点:前記(d)工程において、溶媒の除去が真空中で行われることを特徴とする第1観点〜第13観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により製造された気体分離膜は、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されたシリカナノ粒子が凝集することなく、マトリクス樹脂中に均一に分散しており、気体分離特性に優れており、気体透過量の極めて大きい気体分離膜となっている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で用いられるデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子を形成するために用いられるシリカナノ粒子は、従来、高分子膜の形成の際に充填剤などとして用いられている、一次粒子径がナノオーダーのシリカナノ粒子である。
【0023】
本発明において、デンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子の調製は、シリカナノ粒子が溶媒分散状態のまま、シリカナノ粒子の表面に存在するシラノール基と反応して共有結合を形成する基とデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子を形成する際の結合基として機能する反応性官能基を1分子内に有する化合物を用いて、まずシリカナノ粒子を処理して、反応性官能基修飾シリカナノ粒子を形成し、その後、反応性官能基修飾シリカナノ粒子が溶媒分散状態のまま、この反応性官能基にデンドリマー形成用モノマー又はハイパーブランチ形成用モノマーを反応させることにより行うことができる。
【0024】
以下、シリカナノ粒子を用いて、デンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子を製造する方法を、具体的に説明する。
【0025】
本発明において用いられるシリカナノ粒子は、ナノオーダーの粒子径を有するものであればよいが、気体透過特性などを考えると、その平均一次粒子径(窒素吸着法)は、2nm〜500nm、好ましくは5nm〜300nm程度、より好ましくは5nm〜100nmである。
【0026】
本発明において用いられるシリカナノ粒子は、表面修飾反応の均一性を向上させるために、第1溶媒に分際状態のまま用いる。ここで、第1溶媒としては、親水性の溶媒を用い、水及び炭素原子数1〜4のアルコールからなる群から選択される少なくとも一種を用いるのが好ましく、混合溶媒としてもよい。
【0027】
なお、シリカナノ粒子は、第1溶媒に分散されて製造されたものを用いてもよいし、他の溶媒に分散されたシリカナノ粒子を溶媒置換して第1溶媒の分散液としたものを用いてもよい。
【0028】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノールが挙げられる。
【0029】
シリカナノ粒子は、先ず、第1溶媒に分散された状態のまま、ハイパーブランチ形成用モノマー又はデンドリマー形成用モノマーと反応する官能基を有する反応性官能基含有化合物で処理されて、シリカナノ粒子の表面に反応性官能基が付加される。なお、第1溶媒に分散されたシリカナノ粒子を、後述する反応性官能基含有化合物での処理工程の途中で、異なる第1溶媒に溶媒置換してもよい。
【0030】
好ましい反応性官能基含有化合物としては、シランカップリング剤であり、例えば、一般式(1)で表される、末端にアミノ基を有する化合物である。
【0031】
【化1】
(式中、R
1はメチル基又はエチル基を表し、R
2は炭素数1〜5のアルキレン基、アミド基、アミノアルキレン基を表す。)
【0032】
一般式(1)で表されるシランカップリング剤において、アミノ基は末端にあることが好ましいが、末端になくてもよい。
【0033】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。その他のアミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランなどが代表的なものとして挙げられる。
【0034】
また、本発明に用いられる反応性官能基含有化合物としては、アミノ基以外にも、例えばイソシアネート基、メルカプト基、グリシジル基、ウレイド基、ハロゲン基などの他の基を有するものであってもよい。
【0035】
アミノ基以外の官能基を有するシランカップリング剤としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
また、用いられる反応性官能基含有化合物は、前記一般式(1)のようなトリアルコキシシラン化合物でなくてもよく、例えば、ジアルコキシシラン化合物、モノアルコキシシラン化合物であってもよい。
【0037】
シリカナノ粒子のシラノール基と反応する反応性官能基含有化合物の官能基は、アルコキシ基以外の基、例えば、イソシアネート基、メルカプト基、グリシジル基、ウレイド基、ハロゲン原子などであってもよい。
【0038】
シリカナノ粒子の反応性官能基含有化合物による処理においては、シリカナノ粒子は水又は炭素原子数1〜4のアルコールに分散した液中に反応性官能基含有化合物を投入し、攪拌することにより行われる。
【0039】
シリカナノ粒子表面への反応性官能基の付加は、上記のように1段階反応によってもよいし、必要に応じ2段階以上の反応で行われてもよい。2段階反応の具体例をカルボキシル基修飾シリカナノ粒子の調製で説明すると、例えば、上記のように、先ず、シリカナノ粒子をアミノアルキルトリアルコキシシランで処理して、アミノ基修飾シリカナノ粒子を調製し、次いで一般式(2)で表されるジカルボン酸化合物又はその酸無水物で処理することにより、シリカナノ粒子に付加された反応性官能基の末端がカルボキシル基であるシリカナノ粒子を調製することができる。
【0040】
【化2】
(式中、R
3は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表す。)
【0041】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、マロン酸、アジピン酸、テレフタル酸などが挙げられる。ジカルボン酸化合物は、上記式で挙げられたものに限定されるものではない。
【0042】
2段を超える反応でシリカナノ粒子表面への反応性官能基を付加する場合は、下記一般式(3)で表される末端にアミノ基を2つ有するモノマーを、前記式(1)、次いで前記式(2)で表される化合物で処理されたシリカナノ粒子に付加することにより、表面修飾基の末端がアミノ基であるシリカナノ粒子を調製し、前記の反応を繰り返すことにより行うことができる。
【0043】
【化3】
(式中、R
4は炭素原子数1〜20のアルキレン基、又は(C
2H
5−O−)
pおよび/又は(C
3H
7−O−)
qを表し、p、qは各々独立に1以上の整数である。)
【0044】
前記一般式(3)で表されるモノマーの例としては、エチレンジアミン、ポリオキシエチレンビスアミン(分子量2,000)、o,o’−ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコール−ブロック−ポリエチレングリコール(分子量500)などが挙げられる。
【0045】
このようにして調製した反応性官能基修飾シリカナノ粒子の第1溶媒分散液は、その分散媒を乾燥させることなく第2溶媒に置換される。
【0046】
第2溶媒は、第1溶媒より疎水性の溶媒であり、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びγ−ブチロラクトン(GBL)のうち1種以上から選択される少なくとも一種であることが好ましく、混合溶媒でもよい。
【0047】
このように溶媒置換した後、反応性官能基修飾シリカナノ粒子の第2溶媒分散液を用い、第2溶媒存在下で、反応性官能基修飾シリカナノ粒子に、多分岐構造のデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加される。すなわち、反応性官能基修飾シリカナノ粒子にデンドリマー形成用モノマー又はハイパーブランチ形成用モノマーを反応させて、前記反応性官能基にデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子が付加されたシリカナノ粒子を調製してデンドリマー高分子又はハイパーブランチ高分子付加シリカナノ粒子の第2溶媒分散液を得る。
【0048】
デンドリマーの合成法には、Divergent法とConvergent法があり、Divergent法は、中心にある核分子から外側に向かってビルディングブロックの保護−脱保護を行い反応させる方法である。Convergent法は、デンドリマーのサブユニットであるデンドロンを外側から合成し、最後に核分子とカップリング反応を行う方法である。
【0049】
一方、ハイパーブランチ高分子は、基本的にAB2型モノマーの自己縮合により合成され、デンドリマーと比較すれば、はるかに容易に合成することができる。構造の規制、分子量分布については、デンドリマーほど精密ではないため、分子量や分岐度の異なる化合物の混合物であり、いわゆる高分子として取り扱うことができる。製造の容易性から、本発明ではハイパーブランチ高分子を付加することが好ましい。
【0050】
本発明で用いられるハイパーブランチ形成用モノマーとして、下記の一般式(4)で示されるカルボキシル基を1個、アミノ基を2個有する化合物を用いることが好ましく、アミノ基を3個以上有する化合物であってもよいし、R
5は炭素原子数1〜20のアルキレン基、芳香族基以外の基であってもよい。下記一般式(4)で表されるハイパーブランチ形成用モノマーの例としては、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ−4−メチル安息香酸などが挙げられる。
【0051】
【化4】
(式(4)中、R
5は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表す。)
【0052】
さらに、ハイパーブランチ形成用モノマーとして、下記の一般式(5)で表されるカルボキシル基を1個、ハロゲン原子を2個有する化合物を用いることもできる。
【0053】
【化5】
(式中、R
6は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表し、X
1およびX
2はハロゲン原子を表す。)
【0054】
上記一般式(5)で表される化合物としては、例えば、3,5−ジブロモ−4−メチル安息香酸、3,5−ジブロモサリチル酸、3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ−安息香酸などが挙げられる。
【0055】
また、ハイパーブランチ形成用モノマーは、上記1個のカルボキシル基と2個以上のアミノ基、又は1個のカルボキシル基と2個以上のハロゲン原子を含有する化合物に限られるものではなく、シリカナノ粒子に修飾された反応性官能基に応じて、ハイパーブランチ高分子が形成可能なモノマーが適宜用いられればよい。
【0056】
さらに、2段階反応でカルボキシル基による表面修飾が行われたシリカナノ粒子の場合には、下記の一般式(6)で表される1個のアミノ基と2個のカルボキシル基を有する化合物を用いて、ハイパーブランチ高分子を付加することができる。
【0057】
【化6】
(式中、R
7は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表す。)
【0058】
上記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、2−アミノテレフタル酸、4−アミノテレフタル酸、DL−2−アミノスベリン酸などが挙げられる。
【0059】
また、下記の一般式(7)に示すように、他のモノマー種として、アミノ基を1つ、ハロゲンを2つ以上有するモノマーもハイパーブランチ高分子形成用モノマーとして使用することができる。
【0060】
【化7】
(式中、R
8は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表し、X
1およびX
2はハロゲン原子を表す。)
【0061】
上記一般式(7)で表される化合物としては、例えば、3,5−ジブロモ−4−メチルアニリン、2,4−ジブロモ−6−ニトロアニリンなどが挙げられる。
【0062】
上記2段階反応でカルボキシル基による表面修飾が行われたシリカナノ粒子を用いる場合においても、上記1段階で表面アミノ基修飾がなされたシリカナノ粒子を用いる場合と同様に、上記一般式(6)および(7)におけるカルボキシル基、ハロゲン原子は2個以上でもよいし、さらにカルボキシル基と反応するアミノ基以外の官能基を有する他のモノマーが用いられてもよい。
【0063】
これらの反応により形成されるハイパーブランチ高分子1本鎖の重量平均分子量は、例えば、200〜2,000,000程度が好ましく、また分岐度としては、0.5〜1程度が好ましい。
【0064】
反応は、ハイパーブランチモノマーを、第2溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びγ−ブチロラクトン(GBL)のうち1種以上の溶媒に溶解させ、続いてカルボン酸活性化試薬のBenzotriazol−1−yloxytris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate(BOP)と求核試薬のトリエチルアミンを添加して攪拌し、この溶液にアミノ基修飾シリカナノ粒子を投入し、撹拌することにより行うことができる。前記BOPとトリエチルアミンの組み合わせ以外に、カルボン酸活性化試薬がトリフェニルホスフィンでもよく、求核試薬はピリジンを用いても良い。
【0065】
次にデンドリマー高分子が付加されたシリカナノ粒子について説明する。以下では、先ず、アミノ基修飾シリカナノ粒子へのデンドリマー付加を説明する。
【0066】
本発明において、アミノ基修飾シリカナノ粒子に対してデンドリマー付加を行うにあたり、先ず、アミノ基修飾シリカナノ粒子に対し、例えば、下記の一般式(8)で表されるカルボキシル基を3個有するモノマー、又はカルボキシル基を4個以上有するモノマーを付加することが必要となる。使用されるモノマーの例としては、トリメシン酸やピロメリット酸などが挙げられる。
【0067】
【化8】
(式中、R
9は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表す。)
【0068】
前記カルボキシル基を3個有するモノマー、又はカルボキシル基を4個以上有するモノマーの付加に続いて、下記の一般式(3)で表される末端にアミノ基を2つ有するモノマーを付加する。これらの付加を繰り返すことで、デンドリマー修飾シリカナノ粒子が調製される。
【0069】
【化9】
(式中、R
4は炭素原子数1〜20のアルキレン基、又は(C
2H
5−O−)
pおよび/又は(C
3H
7−O−)
qを表し、p、qは各々独立に1以上の整数である。)
【0070】
前記の2段階反応により官能基としてカルボキシル基により修飾されたシリカナノ粒子を用いた場合には、カルボキシル基修飾シリカナノ粒子を下記の一般式(9)で表されるアミノ基を3個有するモノマー、又はアミノ基を4個以上有するモノマーを用いて処理する。前記一般式(9)で表されるモノマーとしては、1,2,5−ペンタントリアミンや1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどが挙げられる。
【0071】
【化10】
(式中、R
10は炭素原子数1〜20のアルキレン基又は芳香族基を表す。)
【0072】
次いで、この粒子に対して下記の一般式(10)で表される末端にカルボキシル基を2つ有するモノマーを付加する。前記モノマーの例としては、こはく酸、レブリン酸、o,o’−ビス[2−(スクシニルアミノ)エチル]ポリエチレングリコール(分子量2,000)などが挙げられる。
【0073】
【化11】
(式中、R
11は炭素原子数1〜20のアルキレン基、又は(C
2H
5−O−)
pおよび/又は(C
3H
7−O−)
qを表し、p、qは各々独立に1以上の整数である。)
【0074】
以下、これらの付加を繰り返すことで表面デンドリマー修飾シリカナノ粒子が調製される。なお、デンドリマー形成モノマーとしては、アミノ基、カルボキシル基以外の基を用いてもよい。
【0075】
こうして調製されたハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されたシリカナノ粒子の第2溶媒分散液のシリカナノ粒子は、乾燥後にマトリクス樹脂と混合され、最終的に製膜される。なお、マトリクス樹脂と混合される前に、他の第2溶媒又は第2溶媒以外の溶媒と、少なくとも部分的に溶媒置換してもよい。
【0076】
マトリクス樹脂としては、例えば、従来、気体分離膜を形成するために用いられている公知の樹脂を適宜用いればよい。具体的には、例えば、ポリイミド、ポリスルホン、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ−4−メチルペンテン、天然ゴムなど種々のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
ポリイミドは、他の樹脂と比較して、強度、耐久性、耐熱性に特に優れており、また、各種気体透過選択性にも優れていることから、本発明の気体分離膜のマトリクス樹脂として好ましいものである。このようなポリイミドのアミン構造は特に限定されないが、アミン基官能基に対し、オルト位片側がアルキル基で置換されたフェニレンジアミン、オルト位すべての位置がアルキル基又は芳香族基で置換されたフェニレンジアミン、3か所以上が水素以外の基で置換されたビフェニル構造を有するジアミン、ナフチジン構造を有するジアミン、特定のブロモ化ジアミンがあげられる。
【0078】
特にガス分離性能の観点から、1,3,5−トリメチルフェニレンジアミン、2,5−ジ―t−ブチル1,4−フェニレンジアミンが望ましい。
【0079】
また、使用する酸二無水物について特に限定されないが、ピロメリット酸無水物、ナフタレン酸二無水物、または4,4‘−(ヘキサフルオロイソピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が望ましい。特にガス分離性能の観点から、6FDAが望ましい。
【0080】
またこれらのジアミンと酸二無水物を使用している際、5%以内で他の酸二無水物、ジアミンを使用し共重合してもよい。共重合は、ランダム共重合、ブロック共重合とも構わない。
【0081】
ポリスルホンとしては、下記式(11)の繰り返し単位など、分子構造内に少なくとも1つに(−SO
2−)部位を有する樹脂であればよく、特に限定されない。
【0082】
【化12】
(式中、R
12は脂肪族基、芳香族基などを表し、mは0又は1以上の整数である。)
【0083】
具体的には、例えば、下記のような繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
【0085】
本発明に用いられるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されたシリカナノ粒子は、マトリクス樹脂を溶解した溶液に投入され、攪拌、混合されて均一な溶液とされた後、基材に塗布され、製膜される。このとき用いられる溶媒としては、上記ハイパーブランチ高分子を付加する際の反応において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0086】
ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されたシリカナノ粒子の膜中の含有率は、成膜可能な量であればよく、特に限定されるものではないが、通常、膜の全組成の1質量%〜70質量%である。
【0087】
基材に塗布された後の乾燥の温度は、溶媒が揮発する温度であれば特に限定はされないが、10℃〜300℃、好ましくは30℃〜200℃の温度で行われる。
【0088】
また、乾燥時の雰囲気は特に制限されないが、マトリクス樹脂の酸化を防ぐために、不活性ガス中又は真空中で行われることが好ましく、溶媒の揮発の観点から真空中で行うことがより好ましい。
【0089】
製造される樹脂膜の厚さは、適宜でよいが、通常、10μm〜100μm程度である。
【0090】
こうして製造された樹脂膜は、気体選択性および二酸化炭素透過量など、気体透過性能に優れている。特に二酸化炭素透過量については、顕著に改善された効果を示す。これは、シリカナノ粒子の表面修飾を乾燥工程を経ずに溶媒存在下で行うことにより、高分子マトリクス中への表面ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子修飾シリカナノ粒子の分散性が改善されたことが一つの要因と考えられるが、これは付加した高分子鎖同士の排除体積効果によって、有機溶媒中および高分子マトリクス中においてシリカ微粒子が会合することなく均一に分散することによるものと推測される。しかし、これら推測により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕(湿式法による3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)修飾シリカナノ粒子の合成)
【0093】
200mLナス型フラスコにシリカのイソプロパノール(IPA)分散液(IPA−ST、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:30質量%、平均一次粒子径12nm)33mLを量り取り、IPA166mLで希釈した。ここに超純水0.36gとAPTES(東京化成工業(株)製)3.14mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、5分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を12回繰り返すことにより、APTES修飾シリカナノ粒子の水分散液400mLを得た。作製したAPTES修飾シリカナノ粒子のAPTES修飾状況を確認するために、得られたAPTES修飾シリカナノ粒子の水分散液を110℃で15時間真空乾燥後、TGA装置(DTG−60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、APTES修飾シリカナノ粒子の重量内訳は、APTES4.3質量%、シリカナノ粒子95.7質量%であった。
【0094】
200mL反応容器に得られたAPTES修飾ナノシリカ粒子の水分散液200mLを量り取り、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)50mLを添加し、エバポレーターを用いて水を留去することにより、NMPに分散したAPTES修飾シリカナノ粒子40mLを得た。次いで80mL反応容器にNMP6mLと1,3−ジアミノ安息香酸(DABA)(Aldrich製)1.71g、トリエチルアミン(TEA)(関東化学(株)製)15.7mL、Benzotriazol−1−yloxytris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate(BOP)(東京化成工業(株)製)4.97gを量り取り、これにNMPに分散したAPTES修飾シリカナノ粒子40mLを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、マイクロウェーブ反応器(Discover SP、Chem,Japan(株)製)を用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA修飾シリカナノ粒子分散液100mLを得た。110℃で15時間真空乾燥後、DABA修飾シリカナノ粒子を0.65g得た。作製したDABA修飾シリカナノ粒子のDABA修飾状況を確認するために、TGA装置(DTG−60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DABA修飾シリカナノ粒子の重量内訳は、DABA12.8質量%、APTES3.8質量%、シリカナノ粒子83.4質量%であった。
【0095】
10mLバイアルビンに乾燥させたDABA修飾シリカナノ粒子0.0167gとテトラヒドロフラン(THF、関東化学製)3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに構造式1に示すポリイミド(6FDA−3MPA、数平均分子量2.5×10
5、重量平均分子量/数平均分子量=1.7)0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾シリカナノ粒子含有ポリイミド溶液をガラスシャーレ(直径6.1cm)上に流し入れ、40℃に設定したオーブン内にこのガラスシャーレを入れ、4時間かけて真空にして複合膜を作製した。作製した複合膜は超純水を用いてシャーレから剥がした後、150℃、15時間の熱処理を行った。
【0096】
【化14】
【0097】
上記で得られた複合膜の気体透過測定を行った。測定には気体透過測定装置(K−315N−01C、理科精機工業(株)製)を用い、測定温度35℃、測定圧力76cmHg、供給気体を二酸化炭素、窒素、酸素として測定を行った。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例2〕
DABA修飾シリカナノ粒子のNMP分散液の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、実施例1と同様に行って複合膜を作製し、その気体透過測定を行った。
【0099】
〔実施例3〕
DABA修飾シリカナノ粒子のNMP分散液の配合を膜組成の全固形分に対して50質量%とした以外は、実施例1と同様に行って複合膜を作製し、その気体透過測定を行った。
【0100】
〔比較例1〕
2Lナス型フラスコにナノシリカの水分散液(スノーテックス−O、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:20質量%、平均一次粒子径12nm)100gを量り取り、超純水750mLで希釈した。ここにAPTES(東京化成工業(株)製)131.2mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、20分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、APTES修飾シリカナノ粒子の水分散液950mLを得た。作製したAPTES修飾シリカナノ粒子のAPTES修飾状況を確認するために、得られたAPTES修飾シリカナノ粒子の水分散液を110℃で15時間真空乾燥後、TGA装置(DTG−60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、表面APTES修飾シリカナノ粒子の重量内訳は、APTES8.9質量%、シリカナノ粒子91.1質量%であった。
【0101】
100mLナスフラスコに乾燥させたAPTES修飾シリカナノ粒子2.70gと1−メチル−2−ピロリドン(NMP、関東化学(株)製)21.5mLを量り取り、30分間超音波洗浄器をかけることにより分散処理を行った。ここにトリエチルアミン(TEA、関東化学(株)製)0.87mLとBenzotriazol−1−yloxytris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate(BOP、東京化成工業(株)製)2.50g、DABA(Aldrich製)0.87gを量り取り、これを室温下で5分間撹拌した後、マイクロウェーブ反応器(Discover SP、Chem,Japan(株)製)を用いて、80℃、0.5時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、1時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返した後、110℃、15時間の真空乾燥を行うことにより、DABA修飾シリカナノ粒子の乾燥物を得た。作製した表面DABA修飾シリカナノ粒子のシリカナノ粒子表面に対するDABA修飾状況を確認するために、TGA装置(DTG−60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、表面DABA修飾シリカナノ粒子の重量内訳を概算したところ、DABA5.30質量%、APTES8.40質量%、シリカナノ粒子86.3質量%であった。0.15gの6FPDA−3MPAを3.21mLのTHFに溶解した後、このポリマー溶液にDABA修飾シリカナノ粒子の乾燥物0.0167gを添加し、1時間の超音波処理を行い、複合膜の作製、気体透過測定は実施例1と同様に行った。
【0102】
〔比較例2〕
DABA修飾シリカナノ粒子の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、比較例1と同様に行って複合膜を作製し、その気体透過測定を行った。
【0103】
〔比較例3〕
DABA修飾シリカナノ粒子の配合を膜組成の全固形分に対して40質量%とした以外は、比較例1と同様に行って複合膜を作製したが、膜が破損したため、気体透過測定を行うことはできなかった。
【0104】
【表1】
P:気体透過係数
Barrer=1×10
−10(cm
3(STP)cm/cm
2・sec・cmHg)
【0105】
表1より、各気体に対して、気体透過係数が向上していることが確認された。