特許第6876487号(P6876487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876487検査装置、検査方法、機能液吐出装置及び補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876487
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、機能液吐出装置及び補正方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20210517BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20210517BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20210517BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20210517BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210517BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B05C11/00
   B05C5/00 101
   B05C11/10
   G01B11/24 K
   B05D3/00 D
   B05D1/26 Z
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-69939(P2017-69939)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-217645(P2017-217645A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2020年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-112447(P2016-112447)
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄
(72)【発明者】
【氏名】林 輝幸
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−188263(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190837(WO,A1)
【文献】 特開2010−214350(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからの機能液の吐出状態を検査する検査装置であって、
前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像する撮像部と、
該撮像部での撮像結果に基づいて、前記液滴の形成状態を計測する計測部と、
前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち前記計測部での計測対象とする液滴を選択する選択部と、
前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択する基準画像選択部と、を備えることを特徴とする、検査装置。
【請求項2】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、256階調で表されたグレースケール画像であることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、各色が256階調で表されたカラー画像であることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
複数の前記ノズルと、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査装置と、
前記ノズル毎に、前記計測部での計測対象とする液滴として選択された液滴についての前記計測部での計測結果に基づいて、機能液の吐出条件を補正する制御部と、を備えることを特徴とする、機能液吐出装置。
【請求項5】
ノズルからの機能液の吐出状態を検査する検査方法であって、
前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像部で撮像するステップと、
前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち計測対象の液滴を選択するステップと、
選択された計測対象の液滴について、前記撮像部での撮像結果に基づいて、当該液滴の形成状態を計測するステップと、を含み、
前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択するステップをさらに含むことを特徴とする検査方法。
【請求項6】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、256階調で表されたグレースケール画像であることを特徴とする、請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、各色が256階調で表されたカラー画像であることを特徴とする、請求項5に記載の検査方法。
【請求項8】
ノズルからの機能液の吐出条件を補正する方法であって、
前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像部で撮像するステップと、
前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち計測対象の液滴を選択するステップと、
選択された計測対象の液滴について、前記撮像部での撮像結果に基づいて、当該液滴の形成状態を計測するステップと、
前記ノズル毎に、前記選択された計測対象の液滴についての、前記計測するステップでの計測結果に基づいて、機能液の吐出条件を補正するステップと、を含み、
前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択するステップをさらに含むことを特徴とする補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからの機能液の吐出状態を検査する検査装置、検査方法機能液吐出装置及び補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL(Electroluminescence)の発光を利用した発光ダイオードである有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)が知られている。かかる有機発光ダイオードを用いた有機ELディスプレイは、薄型軽量かつ低消費電力であるうえ、応答速度や視野角、コントラスト比の面で優れているといった利点を有していることから、次世代のフラットパネルディスプレイ(FPD)として近年注目されている。
【0003】
有機発光ダイオードは、基板上の陽極と陰極の間に有機EL層を挟んだ構造を有している。有機EL層は、例えば陽極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層が積層されて形成される。これらの有機EL層の各層(特に正孔注入層、正孔輸送層及び発光層)を形成するにあたっては、例えばインクジェット方式で有機材料の機能液を基板上に吐出するといった方法が用いられる。
【0004】
ところで、有機発光ダイオードは、有機EL層の各層がそれぞれ数十nmの薄膜にて形成されるため、各層のいずれかにおいて例えば機能液の吐出不良が生じていれば、その影響が製品を動作させた場合に顕著に現れてしまう。このため、かかる機能液の吐出不良を抑制するべく、検査用基板や検査用シートなどの被吐出体上に吐出された機能液によって形成された液滴の状態を観察し、機能液を吐出したノズルの状態すなわち機能液の吐出状態を検査し、検査結果に基づいて吐出条件を補正することが必要となる。なお、上記補正の際の被吐出体は、例えば検査用基板や検査用シートである。
【0005】
特許文献1には、上述したインクジェット方式で形成された液滴の状態に基づいて機能液の吐出状態を検査する装置が開示され、該装置では、検査基板上に着弾した機能液滴を撮像する撮像手段と、撮像された液滴の画像を用いて液滴の直径を解析する解析手段と、機能液滴の直径等に基づいて、機能液滴の体積を算出する算出手段を備えている。また、特許文献1には、算出された機能液滴の体積に基づいて、ノズルの駆動素子の駆動波形すなわち吐出条件を制御することが開示されている。
【0006】
しかしながら、機能液(インク)の性質やノズルの汚れ等により、液滴が適切な形状(例えば真円)にならないことが多々発生する。液滴が適切な形状でない場合、検査結果に基づいて吐出条件を補正することができない。補正したとしても補正後に良好な結果を得ることができない。
【0007】
それに対し、特許文献2には、機能液吐出ヘッドに設けた複数のノズルから機能を吐出させて基板に機能液の液滴を形成する機能液吐出方法であって、各ノズルから吐出されて検査用基板に着弾した各液滴の画像を取得する撮像工程と、撮像工程で取得した各液滴の画像の外形形状を、正常パターンの真円の外形形状と比較し、マッチング率が閾値に達しない画像を異常画像とし、マッチング率が閾値に達した画像を正常画像として選択する画像処理工程と、画像処理工程で正常画像として選択された画像に基づいて機能液の着弾面積を求め、当該着弾面積に基づいて当該機能液を吐出したノズルからの機能液の吐出量を制御する制御工程と、を有することにより、機能液の吐出量すなわち吐出条件を適切に補正できるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−119139号公報
【特許文献2】特開2010−188263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の方法では、図9(A)に示すようにノズルの状態等が正常であり撮像される液滴の画像(撮像画像)L1の外形形状が真円であれば該画像L1は正常パターンであると判定される。また、図9(B)に示すようにノズルの状態等が正常ではなく液滴の撮像画像L1の外形形状が真円でなければ該画像L1は異常パターンであると判定され、図9(C)に示すように、ノズルの状態等が正常であるが液滴の中に異物C1が存在することにより液滴の撮像画像L1の外形形状が真円でなければ該画像L1は異常パターンであると判定される。しかし、特許文献2に記載の方法では、図9(D)に示すように、ノズルの状態が正常であるが液滴の中に異物C1が存在するが液滴の撮像画像L1の外形形状が真円となる場合、正常パターンと判定されてしまう。異物C1が存在する分、液滴は大きく形成されるので、異物C1を含む液滴の撮像画像L1を正常パターンとして含めて、撮像画像に基づく吐出条件を補正すると、適切に補正することができない。
異物C1ではなく、検査用のシート等の被吐出体にキズ等が存在する部分に液滴が形成される場合も同様である。
【0010】
また、被吐出体として親液性の検査シートを用いると、機能液によっては、ノズルの状態の等、全てが正常である場合に、図10(A)に示すように、液滴の撮像画像L2が二重の同心円となる場合がある。
特許文献2に記載の方法では、図10(A)の画像L2は外形形状が真円であるため該画像L2は正常パターンであると判定され、また、図10(B)に示すように、小円の中心が大円の中心から大きくずれることにより外形形状が真円ではない液滴の撮像画像L2は異常パターンと判定される。しかし、特許文献2に記載の方法では、図10(C)に示すように同心でない二重円であって外形形状が真円である撮像画像L2は、正常パターンと判定されてしまう。
図10(A)の撮像画像L2が得られる場合と、図10(C)の撮像画像L2が得られる場合とでは、親液性の検査シートへの機能液の浸透態様が異なるため、これらの場合において撮像画像面積が同じであっても、検査シートへ浸透した機能液の量すなわち機能液の吐出量は異なる。したがって、図10(C)の撮像画像L2を正常パターンとして、撮像画像に基づく吐出条件を補正すると、適切に補正することができない。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、機能液滴の撮像結果を用いた、機能液の吐出状態の検査結果に基づいて、機能液の吐出条件をより適切に補正することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、ノズルからの機能液の吐出状態を検査する検査装置であって、前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像する撮像部と、該撮像部での撮像結果に基づいて、前記液滴の形成状態を計測する計測部と、前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち前記計測部での計測対象とする液滴を選択する選択部と、前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択する基準画像選択部と、を備えることを特徴としている。
【0014】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、256階調で表されたグレースケール画像であることが好ましい。
【0015】
前記撮像画像及び前記所定の形態を有する液滴の画像は、各色が256階調で表されたカラー画像であることが好ましい。
【0016】
また別な観点による本発明によれば、複数の前記ノズルと、上記検査装置と、前記ノズル毎に、前記計測部での計測対象とする液滴として選択された液滴についての前記計測部での計測結果に基づいて、機能液の吐出条件を補正する制御部と、を備える機能液吐出装置が提供される。
【0017】
さらに別な観点による本発明によれば、ノズルからの機能液の吐出状態を検査する検査方法であって、前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像部で撮像するステップと、前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち計測対象の液滴を選択するステップと、選択された計測対象の液滴について、前記撮像部での撮像結果に基づいて、当該液滴の形成状態を計測するステップと、を含み、前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択するステップをさらに含むことを特徴としている。
さらに別な観点による本発明によれば、ノズルからの機能液の吐出条件を補正する方法であって、前記ノズルから吐出された機能液により被吐出体上に形成された複数の液滴を撮像部で撮像するステップと、前記複数の液滴それぞれについて、前記撮像部での撮像画像全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、前記複数の液滴のうち計測対象の液滴を選択するステップと、選択された計測対象の液滴について、前記撮像部での撮像結果に基づいて、当該液滴の形成状態を計測するステップと、前記ノズル毎に、前記選択された計測対象の液滴についての、前記計測するステップでの計測結果に基づいて、機能液の吐出条件を補正するステップと、を含み、前記所定の形態を有する液滴の画像を、前記撮像部で撮像された前記複数の液滴の撮像画像の中から選択するステップをさらに含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検査のために吐出された機能液により被吐出体上に形成された液滴に異物が存在する場合や被吐出体にキズが存在する場合等においても、機能液滴の撮像結果を用いた機能液の吐出状態の検査結果に基づいて、機能液の吐出条件を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態に係る検査装置の構成の概略を示す模式図である。
図2】本実施の形態に係る検査方法の一例を説明するフローチャートである。
図3】本実施の形態に係る検査装置を備えた機能液吐出装置の構成の概略を示す模式側面図である。
図4図3の機能液吐出装置の模式平面図である。
図5】参考実施形態にかかる検査装置の構成の概略を示す模式図である。
図6】参考実施形態に係る検査方法の一例を説明するフローチャートである。
図7】機能液により形成された液滴の例を示す図である。
図8】参考実施形態の検査装置の技術的効果を説明する図である。
図9】検査吐出された機能液により形成された液滴の撮像画像の例を示す図である。
図10】検査吐出された機能液により形成された液滴の撮像画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
先ず、本実施の形態に係る検査装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、検査装置の構成の概略を示す模式図である。なお、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0022】
図1の検査装置1は、撮像部10と、制御部11とを有している。検査装置1は、検査シート20上に形成された検査用の複数の液滴21を撮像部10で撮像し、上記液滴21を形成する機能液の吐出状態を検査する。なお、各液滴21は、機能液をインクジェット方式でノズルから2回以上の所定回数吐出することにより形成される。また、検査シート20に形成される液滴21の数は例えば数十個である。検査シート20は本実施形態に係る「被吐出体」の一例である。
【0023】
撮像部10は、検査シート20の主面に対して当該撮像部10の光軸が垂直となる向きに配置され、本実施の形態においては検査シート20の鉛直上方に配置される。撮像部10には、種々のカメラを用いることができるが、例えばエリアスキャンカメラが用いられる。そして、撮像部10は、検査シート20の液滴21が形成された領域を撮像する。撮像部10で撮像された撮像画像は、制御部11に出力される。なお、検査シート20上の全ての液滴21についての撮像画像が撮像できるよう、検査装置1または検査シート20が載置されるステージが移動可能に構成されていることが好ましい。
【0024】
液滴を観察する光源は例えばLED光源、ハロゲン光源、紫外光源を使用し、光源の形態は、同軸落射あるいは透過光の面光源とし、観察時には液滴中の溶媒を検査シートに染み込ませた状態、あるいは、液滴中の溶媒を蒸散させた状態とすることで、液滴をより鮮明に観察することができる。
【0025】
制御部11は、検査装置1における撮像部10等の動作を制御する。また、制御部11は、計測部11aと選択部11bを有する。
【0026】
計測部11aは、撮像部10での撮像結果に基づいて、液滴21の形成状態を計測する。例えば、計測部11aは、選択された液滴21の大きさ及び形成位置を計測する。
【0027】
選択部11bは、複数の液滴21のうち計測部11aでの計測対象の液滴21を選択するものである。具体的には、選択部11bは、複数の液滴21それぞれについて、撮像部10で撮像した液滴21の画像(撮像画像)全体と、所定の形態を有する液滴の画像全体とのパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、複数の液滴21のうち計測部11aでの計測対象とする液滴21を選択する。
【0028】
上記所定の形態を有する液滴の画像とは、正常な機能液滴の形態が黒地の真円である場合(図9(A)参照)は黒地(図では白地)の真円の画像であり、正常な機能液滴の形態が白地の同心の二重円である場合(図10(A)参照)は白地の同心の二重円の画像である。なお、「形態」には、少なくとも形状及び色が含まれる。上記所定の形態を有する液滴の画像は、例えば、検査装置1に予め記憶されたものである。
【0029】
また、パターンマッチングは、例えば、液滴21の撮像画像及び上記所定の形態を有する液滴の画像として、256階調で表されたグレースケール画像を取得し、画素毎にマッチング度を算出して行われる。選択部11bは、例えば、算出したマッチング度の平均値が所定値を超えている場合に、当該画像に係る液滴21を計測対象として選択する。
なお、256階調で表されたグレースケール画像に代えて、各色が256階調で表されたカラー画像を用いるようにしてもよい。
【0030】
また、パターンマッチングの手法としては、公知の手法を任意に採用することができる。例えば、池田光二、他4名、「正規化相関演算の単調関数化による高速テンプレートマッチング」、電子情報通信学会論文誌 D、電子情報通信学会、2009年9月25日、J83−D2、第9号、p.1861−1869に記載の方法を採用することができる。
【0031】
なお、所定の形態を有する画像(以下、基準画像)は、上述では、予め記憶されたものであるとしたが、複数の液滴21の撮像画像の中から選択してもよい。選択する場合は、例えば、作業者が手動で選択する。また、制御部11に基準画像選択部11cを設けて、上述とは別のパターンマッチングを行って真円や二重の同心円に最も近い撮像画像を自動的に選択するようにしてもよい。
基準画像選択部11cは、以下のように基準画像を変更するものであってもよい。すなわち、基準画像選択部11cは、作業者が手動で選択した基準画像、または、該基準画像選択部11cが自動的に選択した基準画像に基づいて、前述のパターンマッチングと同様に、全ての液滴21の撮像画像について、画像全体に対するパターンマッチングを行い、マッチング度の分布を取得する。そして、基準画像選択部11cは、該マッチング度分布においてマッチング度が最高点のところにピークがない場合に、ピークとなるマッチング度を示す撮像画像の中から自動的に1つ画像を抽出し、該画像を新たな基準画像にするものであってもよい。具体的には、マッチング度の最高点が1000であるとした場合に、マッチング度分布においてマッチング度が900であるところにピークがある場合、マッチング度が900の撮像画像の中から画像を1つ抽出し、該画像を新たな基準画像にするものであってもよい。
【0032】
制御部11は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、撮像部10の動作を制御するためのプログラムに加えて、撮像画像を画像処理するプログラムや、当該画像処理されたデータに基づいて、液滴21の大きさ及び該液滴21の検査シート20上の位置を算出するプログラムなどが格納されている。また、プログラム格納部には、上記画像処理されたデータに基づいて、選択部11b及び基準画像選択部11cでのパターンマッチングを行うプログラムも格納されている。なお、上記前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部11にインストールされたものであってもよい。
【0033】
次に、以上のように構成された検査装置1を用いて行われる、機能液の吐出状態の検査方法について図2を用い図9及び図10を参照して説明する。図2は、上記検査方法の一例を説明するフローチャートである。
【0034】
検査用にノズルから機能液が吐出され、検査シート20に複数の液滴21が形成されると、撮像部10は、検査シート20上の液滴21を撮像する(ステップS1)。撮像部10での撮像は、検査シート20上の全ての液滴21について撮像が完了するまで行われる。撮像部10で撮像された撮像画像は、制御部11の計測部11a及び選択部11bに出力される。
【0035】
撮像部10で撮像される複数の液滴21は、図9に示すような異物C1が含まれておらず、検査シート20にキズ等がなく、該液滴21の撮像画像を取得したときに、図9(A)や図10(A)に示すように、撮像画像L1、L2が真円や同心の二重円となるのが理想的である。しかし、取得した撮像画像L1は、図9(B)及び図9(C)に示すように真円とならない場合や、図9(C)及び図9(D)に示すように異物C1を含む場合があり、また、取得した撮像画像L2は、図10(B)及び図10(C)に示すように二重の同心円とならない場合がある。
【0036】
そこで、選択部11bは、複数の液滴21それぞれの撮像画像について、基準画像を用いた画像全体に対するパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて、複数の液滴21の中から計測対象とする液滴21を選択する(ステップS2)。例えば、選択部11bは、各撮像画像に対応する液滴21を計測対象とするか否かを上記パターンマッチング結果に基づいて判定し、マッチング度が閾値を超えている撮像画像に対応する液滴21を計測対象として選択する。これにより、図9(A)や図10(A)の撮像画像L1、L2に似た撮像画像L1、L2に対応する液滴21のみを計測対象として選択/抽出することができる。
【0037】
計測部11aは、選択部11bで選択された撮像画像すなわち液滴21について、当該撮像画像に基づいて、当該液滴21の大きさ及び形成位置すなわち機能液の吐出量及び吐出曲りを算出/計測する(ステップS3)。
検査装置1を備える機能液吐出装置では、選択部11bで選択された液滴21の大きさ及び形成位置の計測結果に基づいて吐出条件を調整/補正する。これにより、検査のために吐出された機能液により被吐出体上に形成された液滴に異物が存在する場合や被吐出体にキズが存在する場合等においても、適切に機能液を吐出することができる。
【0038】
なお、ノズルは通常、1つの機能液吐出ヘッドに対して複数設けられている。したがって、ノズルからの機能液の吐出状態を検査する際、複数のノズルそれぞれから機能液を吐出し、複数の液滴をノズル毎に形成し、その複数の液滴の中から上述の方法で計測対象の液滴をノズル毎に選択するとよい。また、この際、パターンマッチングに用いる基準画像は、ノズル毎に異なってもよいし、全ノズルで共通であってもよい。
また、検査装置1での検査方法は検査シートが親液性であっても疎液性であっても適用することができる。
【0039】
次に、以上のように構成された検査装置1の適用例について図3及び図4を参照して説明する。図3は、検査装置1を備え機能液吐出装置の構成の概略を示す模式側面図である。図4は、図3の機能液吐出装置の模式平面図である。なお、以下においては、基板(以下ではワークと記載することがある)の主走査方向をX軸方向、主走査方向に直交する副走査方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向、Z軸方向回りの回動方向をθ方向とする。
【0040】
図3及び図4の機能液吐出装置100は、有機発光ダイオードの有機EL層のいずれか(例えば、正孔注入層や正孔輸送層、発光層)を形成するための有機材料を塗布する。なお、本実施の形態の有機材料は、有機EL層の各層を形成するための所定の材料を有機溶媒に溶解させた溶液である。
【0041】
機能液吐出装置100は、主走査方向(X軸方向)に延在して、ワークWを主走査方向に移動させるX軸テーブル30と、X軸テーブル30を跨ぐように架け渡され、副走査方向(Y軸方向)に延在する一対のY軸テーブル31、31とを有している。X軸テーブル30の上面には、一対のX軸ガイドレール32、32がX軸方向に延伸して設けられ、各X軸ガイドレール32には、X軸リニアモータ(図示せず)が設けられている。各Y軸テーブル31の上面には、Y軸ガイドレール33がY軸方向に延伸して設けられ、当該Y軸ガイドレール33には、Y軸リニアモータ(図示せず)が設けられている。
【0042】
一対のY軸テーブル31、31には、キャリッジユニット40と撮像ユニット50が設けられている。X軸テーブル30上には、ワークステージ60と、吐出検査ユニット70が設けられている。
【0043】
キャリッジユニット40は、Y軸テーブル31において、複数、例えば10個設けられている。各キャリッジユニット40は、キャリッジプレート41と、キャリッジ回動機構42と、キャリッジ43と、機能液吐出ヘッド44とを有している。
【0044】
キャリッジプレート41は、Y軸ガイドレール33に取り付けられ、当該Y軸ガイドレール33に設けられたY軸リニアモータによってY軸方向に移動自在になっている。
【0045】
キャリッジプレート41の下面の中央には、キャリッジ回動機構42が設けられ、当該キャリッジ回動機構42の下端部にキャリッジ43が着脱自在に取り付けられている。キャリッジ43は、キャリッジ回動機構42によってθ方向に回動自在になっている。
【0046】
キャリッジ43の下面には、複数の機能液吐出ヘッド44が設けられている。本実施の形態では、例えばX軸方向に3個、Y軸方向に2個、すなわち合計6個の機能液吐出ヘッド44が設けられている。機能液吐出ヘッド44の下面、すなわちノズル面には複数の吐出ノズル(図示せず)が形成され、当該吐出ノズルから機能液の液滴が吐出されるようになっている。
【0047】
撮像ユニット50は、撮像部10を有している。
撮像部10は、吐出検査ユニット70の検査シート20に検査吐出された液滴を撮像する。撮像部10は、一対のY軸テーブル31、31のうち、X軸正方向側のY軸テーブル31の側面に設けられたベース51に支持されており、検査シート20に検査吐出された全ての液滴を撮像できるよう構成されている。
【0048】
ワークステージ60は、例えば真空吸着ステージであり、ワークWを吸着して載置する。ワークステージ60は、当該ワークステージ60の下面側に設けられたステージ回動機構61によって、θ方向に回動自在に支持されている。
【0049】
ワークステージ60とステージ回動機構61は、ステージ回動機構61の下面側に設けられた第1のX軸スライダ62に支持されている。第1のX軸スライダ62は、X軸ガイドレール32に取り付けられ、当該X軸ガイドレール32に設けられたX軸リニアモータによってX軸方向に移動自在になっている。そして、ワークステージ60(ワークW)も、第1のX軸スライダ62によってX軸ガイドレール32に沿ってX軸方向に移動自在になっている。
【0050】
吐出検査ユニット70は、機能液吐出ヘッド44からの検査吐出を受けるユニットである。吐出検査ユニット70は前述の検査シート20が配置されている。
吐出検査ユニット70は、第2のX軸スライダ80に搭載されている。第2のX軸スライダ80は、X軸ガイドレール32に取り付けられ、当該X軸ガイドレール32に設けられたX軸リニアモータによってX軸方向に移動自在になっている。そして、吐出検査ユニット70も、第2のX軸スライダ80によってX軸ガイドレール32に沿ってX軸方向に移動自在になっている。
【0051】
以上の機能液吐出装置100には、上述した制御部11が設けられている。したがって、機能液吐出装置100の内部に設けられた検査装置1は、制御部11によって制御される。但し、この制御部11のプログラム格納部(図示せず)には、検査装置1を制御するためのプログラムに加えて、機能液吐出装置100における基板の処理を制御するプログラムも格納されている。したがって、制御部11は機能液吐出ヘッド44のノズルからの吐出条件も調整/制御する。
【0052】
また、制御部11は、データ格納部(図示せず)も有している。データ格納部には、例えば機能液吐出装置100で形成される液滴の大きさ及位置の正常データ、すなわち所望の大きさ及び位置に適合する描画データ(ビットマップデータ)が予め格納されている。この描画データの用途については後述する。
【0053】
次に、以上のように構成された機能液吐出装置100を用いて行われるワーク処理について説明する。以下の説明では、X軸テーブル30上において、Y軸テーブル31よりX軸負方向側のエリアを搬入出エリアA1といい、一対のY軸テーブル31、31間のエリアを処理エリアA2といい、Y軸テーブル31よりX軸正方向側のエリアを待機エリアA3という。
【0054】
先ず、搬入出エリアA1にワークステージ60を配置し、搬送機構(図示せず)により機能液吐出装置100に搬入されたワークWが当該ワークステージ60に載置される。続いて、X軸スライダ62によって、ワークステージ60を搬入出エリアA1から処理エリアA2に移動させる。処理エリアA2では、機能液吐出ヘッド44の下方に移動したワークWに対して、当該機能液吐出ヘッド44から液滴を吐出する。さらに、ワークWの全面が機能液吐出ヘッド44の下方を通過するように、ワークステージ60をさらに待機エリアA3側に移動させる。そして、ワークWをX軸方向に往復動させると共に、キャリッジユニット40を適宜、Y軸方向に移動させて、ワークWに所定のパターンが描画される。
【0055】
描画後、ワークステージ60を搬入出エリアA1に移動させる。
ワークステージ60が搬入出エリアA1に移動すると、描画処理が終了したワークWが機能液吐出装置100から搬出される。続いて、次のワークWが機能液吐出装置100に搬入される。
【0056】
このようにワークWの搬入出が行われている間、または、搬出前に、検査装置1によって、機能液吐出ヘッド44から吐出される機能液の吐出状態の検査が行われる。具体的には、まず、第2のX軸スライダ80によって、吐出検査ユニット70を待機エリアA3から処理エリアA2に移動させる。処理エリアA2では、吐出検査ユニット70の検査シート20を機能液吐出ヘッド44の下方に配置し、検査シート20の表面に対してノズルヘッド54から機能液を所定回数(複数回)検査吐出し液滴21を形成する(ステップS3)。機能液吐出ヘッド44には前述のようにノズルが複数設けられており、液滴21は、ノズル毎に複数形成される。
【0057】
その後、吐出検査ユニット70をX軸正方向側に移動させて、吐出検査ユニット70の検査シート20を撮像部10の下方に配置する。そして、複数の液滴21を撮像部10によって撮像する。撮像された撮像画像は制御部11の選択部11b及び計測部11aに出力される。
【0058】
選択部11bでは、ノズル毎に、該ノズルによって形成された複数の液滴21の撮像画像について、基準画像を用いた画像全体に対するパターンマッチングを行う。そして、選択部11bは、マッチング結果に基づいて、複数の液滴21のうち計測部11aでの計測対象とする液滴21を選択する。
【0059】
計測部11aでは、選択された液滴21について、該液滴の撮像画像に基づいて、該液滴21の大きさ及び検査シート20上の液滴21の位置が計測される。こうして、液滴21の形成状態に基づいて、各ノズルからの機能液の吐出状態の検査が行われる。なお、通常、選択部11bでは、複数の液滴21の中から2以上の液滴21が選択される。
【0060】
計測部11aで2以上の液滴21の大きさ及び位置がノズル毎に計測されると、続いて制御部11では、液滴21の大きさ及び位置の平均値をノズル毎に算出する。そして、制御部11では、液滴21の大きさの平均及び位置の平均の計測データと、予め格納された液滴の大きさ及び位置の正常データとの比較をノズル毎に行う。そして、計測データが正常データからずれている場合には、制御部11は、機能液吐出装置100の機能液吐出ヘッド44が正常な形態で機能液を吐出するように、機能液の吐出条件を調整する。なお、この機能液の吐出状態の検査と機能液の吐出条件の調整は、1枚の基板W毎に行ってもよいし、所定枚数の基板W毎に行ってもよい。
【0061】
以上の実施の形態によれば、機能液吐出装置100の内部に検査装置1を設けているので、当該機能液吐出装置100の機能液吐出ヘッド44のノズルから吐出される機能液の吐出状態を検査し、さらに機能液の吐出条件をフィードバック制御により調整することができる。したがって、機能液吐出装置100における機能液の吐出不良を抑制し、機能液の大きさ(すなわち、機能液の重量)及び基板Wに吐出される機能液の位置を適切に制御して、基板Wに有機材料を適切に塗布することができる。
【0062】
なお、機能液吐出装置100における、検査装置1による機能液の吐出状態の検査と機能液の吐出条件の調整は、上述の例では、基板Wに対する塗布処理の終了後に行っていたが、塗布処理前に行ってもよい。
また、以上の実施の形態の機能液吐出装置100のレイアウトは、図3及び図4に示したレイアウトに限定されず、任意に設定できる。
【0063】
また、検査装置1の適用例として、有機発光ダイオードの有機EL層を形成するための機能液吐出装置100を説明したが、検査装置1の適用例はこれに限定されない。例えばカラーレジストを塗布する基板処理装置などに検査装置1を適用してもよい。
【0064】
(参考実施形態)
先ず、参考の実施の形態に係る検査装置の構成について、図5を参照して説明する。図5は、検査装置の構成の概略を示す模式図である。なお、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0065】
図5の検査装置1´は、撮像部10と、制御部11´とを有している。検査装置1´は、検査シート20上に形成された検査用の複数の液滴21を撮像部10で撮像し、上記液滴21を形成する機能液の吐出状態を検査する。なお、各液滴21は、機能液をインクジェット方式でノズルから2回以上の所定回数吐出することにより形成される。また、検査シート20に形成される液滴21の数は例えば数十個である。
【0066】
撮像部10は、検査シート20の主面に対して当該撮像部10の光軸が垂直となる向きに配置され、本実施形態においては検査シート20の鉛直上方に配置される。撮像部10には、種々のカメラを用いることができるが、例えばエリアスキャンカメラが用いられる。そして、撮像部10は、検査シート20の液滴21が形成された領域を撮像する。撮像部10で撮像された撮像画像は、制御部11´に出力される。なお、検査シート20上の全ての液滴21についての撮像画像が撮像できるよう、検査装置1´または検査シート20が載置されるステージが移動可能に構成されていることが好ましい。
【0067】
液滴を観察する光源は例えばLED光源、ハロゲン光源、紫外光源を使用し、光源の形態は、同軸落射あるいは透過光の面光源とし、観察時には液滴中の溶媒を検査シートに染み込ませた状態、あるいは、液滴中の溶媒を蒸散させた状態とすることで、液滴をより鮮明に観察することができる。
【0068】
制御部11´は、検査装置1´における撮像部10等の動作を制御する。また、制御部11´は、計測部11aと選択部11b´を有する。
【0069】
計測部11aは、撮像部10での撮像結果に基づいて、液滴21の形成状態を計測する。例えば、計測部11aは、選択された液滴21の大きさ及び形成位置を計測する。
【0070】
選択部11b´は、複数の液滴21のうち計測部11aでの計測対象の液滴21を選択するものであり、撮像部10での撮像結果を用い、上記計測対象とする液滴21を当該液滴21の形成状態に基づいて選択する。例えば、選択部11b´は、計測対象とする液滴21を当該液滴21の形状に基づいて選択する。より具体的には、選択部11b´は、複数の液滴21それぞれの撮像部10での撮像画像について、所定の画像に基づくパターンマッチングを行い、マッチング結果に基づいて計測対象とする液滴21を選択する。上記所定の画像とは、所定の適切な形状(例えば真円)の液滴の画像であり、該所定の画像は、検査装置1に予め記憶されたものであってもよいし、複数の液滴21の撮像画像の中から選択してもよい。選択する場合は、例えば、作業者が手動で選択するようにしてもよいし、上述とは別のパターンマッチングを行って真円に最も近い撮像画像を自動的に選択するようにしてもよい。
【0071】
パターンマッチングの手法としては、公知の手法を任意に採用することができる。
【0072】
制御部11´は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、撮像部10の動作を制御するためのプログラムに加えて、撮像画像を画像処理するプログラムや、当該画像処理されたデータに基づいて、液滴21の大きさ及び該液滴21の検査シート20上の位置を算出するプログラムなどが格納されている。また、プログラム格納部には、上記画像処理されたデータに基づいて、選択部11b´でのパターンマッチングを行うプログラムも格納されている。なお、上記前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部11´にインストールされたものであってもよい。
【0073】
次に、以上のように構成された検査装置1´を用いて行われる、機能液の吐出状態の検査方法について図6及び図7を用いて説明する。図6は、上記検査方法の一例を説明するフローチャートである。図7は、機能液により形成された液滴の例を示す図である。
【0074】
検査用にノズルから機能液が吐出され、検査シート20に複数の液滴21が形成されると、撮像部10は、検査シート20上の液滴21を撮像する(ステップS1)。撮像部10での撮像は、検査シート20上の全ての液滴21について撮像が完了するまで行われる。撮像部10で撮像された撮像画像は、制御部11´の計測部11a及び選択部11b´に出力される。
【0075】
撮像部10で撮像される複数の液滴21は全て、図7(A)の液滴21のように平面視において真円状のものであれば理想的である。しかし、複数の液滴21には、図7(B)の液滴21のように平面視において円の外周に切り欠き部が設けられたような形状のもの、及び/又は、図7(C)の液滴21のように平面視において円の外周に耳部が設けられたような形状のものも含まれる。
【0076】
そこで、選択部11b´は、複数の液滴21それぞれの撮像画像について、検査装置1´に予め記憶された所定の画像に基づいて液滴21の形状に係るパターンマッチングを行い、計測対象とする液滴21を選択する(ステップS12)。例えば、選択部11b´は、各撮影画像に対応する液滴21を計測対象とするか否かを液滴21の形状に係るパターンマッチング結果に基づいて判定し、マッチング度が閾値を超えている撮像画像に対応する液滴21を計測対象として選択する。これにより、図7(A)の液滴21に近い形状の液滴21のみを計測対象として選択/抽出することができる。
【0077】
計測部11aは、選択部11b´で選択された撮像画像すなわち液滴21について、当該撮像画像に基づいて、当該液滴21の大きさ及び形成位置すなわち機能液の吐出量及び吐出曲りを算出/計測する(ステップS3)。
検査装置1´を備える機能液吐出装置では、選択部11b´で選択された液滴21の大きさ及び形成位置の計測結果に基づいて吐出条件を調整/補正する。これにより、適切に機能液を吐出することができる。
【0078】
図8は、検査装置1´の効果を説明する図であり、各図は液滴21の分布を示しており、横軸は面積、縦軸は頻度である。
複数の液滴21の中から図7(A)に近い形状を有する液滴21を抽出する方法としては、上述のように液滴21の形状に基づいて抽出する方法の他に、以下の面積に基づいて抽出する方法が考えられる。
【0079】
図7(B)のような形状を有する液滴21は、図7(A)のような形状を有する液滴21に比べて面積が小さく、また、図7(C)のような形状を有する液滴21は、図7(A)のような形状を有する液滴21に比べて面積が大きい。したがって、図7(A)に近い形状を有する液滴21を抽出する方法として、液滴21の面積に基づいて抽出する方法、より具体的には所定値より大きい面積を有する液滴21及び別の所定値より小さい面積を有する液滴21を測定対象から除外する方法が考えられる。
【0080】
図7(A)の形状の液滴21、図7(B)の形状の液滴21及び図7(C)の形状の液滴21を全て含む液滴21の分布P100が、図8(A)に示すように正規分布となっていれば、上述の面積に基づいて測定対象を選択する方法であっても、図7(B)、図7(C)の形状の液滴21を測定対象から除外することが可能と思われる。
【0081】
しかし、実際は、図7(A)の形状の液滴21、図7(B)の形状の液滴21及び図7(C)の形状の液滴21を全て含む液滴21の分布(以下、全体の分布)P1は、図8(B)に示すように正規分布ではない。図7(A)の形状の液滴21の分布P11、図7(B)の形状の液滴21の面積の分布P13、及び図7(C)の形状の液滴21の分布P12が正規分布となり、全体の分布P1は、これら正規分布を示す分布を重ね合わせたものである。
【0082】
したがって、面積に基づいて除外を行っても、図7(B)のような形状を有する液滴21や図7(C)のような形状を有する液滴21も完全に除外することが不可能である。
【0083】
一方、本実施形態に係る検査方法のように、液滴21の形状に基づいて抽出することにより、図8(B)の分布P11を示す液滴21のみ、すなわち、図7(A)の形状を有する液滴21のみを抽出することができる。
【0084】
したがって、本実施形態に係る検査方法では、図7(A)の形状を有する液滴21のみについて形成状態を計測することができ、よって、計測結果に基づいて機能液の吐出条件を適切に補正させることができる。
【0085】
なお、ノズルは通常、1つの機能液吐出ヘッドに対して複数設けられている。したがって、ノズルからの機能液の吐出状態を検査する際、複数のノズルそれぞれから機能液を吐出し、ノズル毎に複数の液滴を形成し、ノズル毎にその複数の液滴の中から該液滴の形状に基づいて計測対象の液滴を選択するとよい。また、この際、パターンマッチングに用いる所定の画像は、ノズル毎に異なってもよいし、全ノズルで共通であってもよい。
【0086】
なお、複数の液滴21のうち計測対象とする液滴21を、該液滴の大きさに基づいて決定する方法は、液滴21の全体の分布が正規分布を示すような場合(例えば図7(A)のような形状の液滴21のみ形成される場合)には有用である。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0088】
1…検査装置
10…撮像部
11a…計測部
11b…計測部
11c…基準画像選択部
11…制御部
20…検査シート
21…液滴
44…機能液吐出ヘッド
100…機能液吐出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10