特許第6876603号(P6876603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876603
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】バチルス属細菌芽胞の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20210517BHJP
   C12R 1/11 20060101ALN20210517BHJP
   C12R 1/07 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   C12R1:11
   C12R1:07
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-511100(P2017-511100)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2016061604
(87)【国際公開番号】WO2016163534
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-79951(P2015-79951)
(32)【優先日】2015年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】森下 康行
(72)【発明者】
【氏名】塚越 裕樹
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−079879(JP,A)
【文献】 特開昭48−075720(JP,A)
【文献】 特開2008−199980(JP,A)
【文献】 WAKISAKA Y et al.,Appl. Environ. Microbiol., 1982, 43(6), pp.1473-1480, ISSN: 1098-5336
【文献】 FARRERA RR et al.,Appl. Microbiol. Biotechnol., 1998, 49(6), pp.758-765, ISSN: 1432-0614
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)を、C/N比(炭素含量と窒素含量の重量比)が4.5以上9.5未満であり、カリウムを含み、カリウム含量が1.9g/L以下である液体培地を用いて培養する工程を含む、バチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項2】
培養に用いる液体培地のC/N比が4.5以上7.5以下である、請求項1に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項3】
培養に用いる液体培地のC/N比が6.0以上7.5以下である、請求項1に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項4】
液体培地における炭素含量が50g/L以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項5】
液体培地における炭素含量が25g/L以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項6】
液体培地に含まれる炭素源および窒素源はバチルス・シンプレックスが異化しうる炭素源および窒素源である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項7】
バチルス・シンプレックスが異化しうる炭素源は、でんぷん、グルコース、ラクトース、アラビノース、リボース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、セロビオース、マルトース、スクロース、トレハロース、アルコール、有機酸、有機酸塩、およびアルカンからなる群より選択される一種類以上の炭素源であり、バチルス属細菌が異化しうる窒素源は、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン由来成分、動植物タンパク質およびその分解物、アンモニウム塩、アンモニア、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、尿素からなる群より選択される一種類以上の窒素源である、請求項6に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【請求項8】
前記液体培地のカリウム含量が0.2g/L以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバチルス・シンプレックスの芽胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バチルス属細菌の芽胞を効果的に製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バチルス属細菌は酵素や有用物質の生産、発酵食品の生産、有機物の分解、微生物農薬や微生物肥料等、種々の分野に利用されている。このような、微生物農薬、微生物肥料等の利用場面ではバチルス属細菌の芽胞を利用することが一般的である。しかし、このような用途に優れた性能を発揮する菌株であっても、効率的に芽胞を形成できなければ、製品化することが難しかった。
【0003】
バチルス属細菌の液体培養によく用いられる培地として、Nutrient Broth(DIFCO)、Luria Bertani broth、Trypticase Soy Broth(ベクトン・ディッキンソン)などが挙げられるが、これらの培地では十分な増殖性が得られず、ほとんど芽胞形成が見られない場合があった。
【0004】
特許文献1において、増殖後に溶存酸素濃度を低下させる工程を含む培養を行うことで芽胞形成させる方法が示されているが、ある種のバチルス属細菌においては、同様の手法を用いても効率的に芽胞を形成させることが難しい。また、本方法では培養工程において撹拌や通気条件の調整が必要なため、製造工程が煩雑になりうる。
【0005】
特許文献2において、炭素源を消費しつくしたのちに長時間培養を継続することで芽胞形成させる方法が示されているが、培養が長期化するために培養コストが高くなり、実製造に向かない。また、ある種のバチルス属細菌においては、同様の手法を用いても芽胞を形成させることが難しい。
【0006】
特許文献3において、培養液のリン酸塩濃度の範囲および培養条件として酸素供給量、撹拌速度の範囲を規定することで芽胞を生産する方法が示されているが、ある種のバチルス属細菌においては、同様の手法を用いても効率的に芽胞を形成させることが難しい。また、実施に当たっては、規定される培養条件を達成しうる培養設備を用いることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-236286号公報
【特許文献2】特開2000-217567号公報
【特許文献3】特開2007-195542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般的な細菌用液体培地では芽胞形成が難しいバチルス属細菌について、効率的に芽胞を生産できる培養方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一般的な細菌用液体培地を用いた培養において芽胞の生産効率が十分でないバチルス属細菌についても、効率的に菌体を増殖させ、かつ芽胞を形成させるのに適した液体培地組成を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]バチルス属細菌を、C/N比(炭素含量と窒素含量の重量比)が4.0より大きく9.5未満である液体培地を用いて培養する工程を含む、バチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[2]培養に用いる液体培地のC/N比が4.5以上9.5未満である、[1]に記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[3]培養に用いる液体培地のC/N比が4.5以上7.5以下である、[1]に記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[4]培養に用いる液体培地のC/N比が6.0以上7.5以下である、[1]に記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[5]液体培地における炭素含量が50g/L以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[6]液体培地における炭素含量が25g/L以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[7]液体培地におけるカリウム含量が2.0g/L未満である、[1]〜[6]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[8]液体培地におけるカリウム含量が1.9g/L以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[9]液体培地に含まれる炭素源および窒素源はバチルス属細菌が異化しうる炭素源および窒素源である、[1]〜[8]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[10]バチルス属細菌が異化しうる炭素源は、でんぷん、グルコース、ラクトース、グリセロール、アラビノース、リボース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、セロビオース、マルトース、スクロース、トレハロース、キシリトール、アルコール、有機酸、有機酸塩、およびアルカンからなる群より選択される一種類以上の炭素源であり、バチルス属細菌が異化しうる窒素源は、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン由来成分、動植物タンパク質およびその分解物、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アンモニア、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、尿素等からなる群より選択される一種類以上の窒素源である、[9]に記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[11]バチルス属細菌が、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・シュリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ピチノティ(Bacillus pichinotyi)、バチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・アルカリコラ(Bacillus alkalicola)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・アゾトフォーマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・シアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・バタビエンシス(Bacillus bataviensis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シクロヘプタニカス(Bacillus cycloheptanicus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ アネウリニリティカス(Bacillus aneurinilyticus)、バチルス・ミグラヌス(Bacillus migulanus)、バチルス・アビッサリス(Bacillus abyssalis)、バチルス・アエスツアリイ(Bacillus aestuarii)、バチルス・ポリミグザ(Bacillus polymyxa)、またはバチルス・エスピー(Bacillus sp.)である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
[12]バチルス属細菌が、バチルス・シアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)またはバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)である、[1]〜[10]のいずれかに記載のバチルス属細菌の芽胞の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バチルス属細菌の安定的な増殖、芽胞形成が見られ、さらに高濃度に増殖させ、高い割合で芽胞を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、バチルス属細菌としてはバチルス属に分類される細菌であれば特に制限されないが、例えば、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・シュリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・ピチノティ(Bacillus pichinotyi)、バチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・アルカリコラ(Bacillus alkalicola)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・アゾトフォーマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・シアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・バタビエンシス(Bacillus bataviensis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シクロヘプタニカス(Bacillus cycloheptanicus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ アネウリニリティカス(Bacillus aneurinilyticus)、バチルス・ミグラヌス(Bacillus migulanus)、バチルス・アビッサリス(Bacillus abyssalis)、バチルス・アエスツアリイ(Bacillus aestuarii)、バチルス・ポリミグザ(Bacillus polymyxa)、またはバチルス・エスピー(Bacillus sp.)が挙げられる。
この中では、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)、バチルス・シアメンシス(Bacillus siamensis)またはバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)が好ましい。
【0013】
本発明において、培養にはC/N比(炭素含量と窒素含量の重量比)が4.0より大きく9.5未満である液体培地を用いる。ここで、C/N比は4.5以上9.5未満であることが好ましく、4.5以上7.5以下であることがより好ましく、6.0以上7.5以下であることがさらに好ましい。
C/N比は以下の通り算出される。
C/N比=各培地成分に含まれる炭素含量の合計÷各培地成分に含まれる窒素含量の合計。
【0014】
本発明において使用される液体培地においては、炭素含量が50g/L以下であることが好ましく、25g/L以下であることがより好ましい。一方、炭素含量は、3g/L以上であることが好ましい。
【0015】
培養に用いる液体培地の炭素源および窒素源はバチルス属細菌が異化しうるものを使用することができるが、異化可能な炭素源して、バチルス属細菌が異化しうる糖(でんぷん、グルコース、ラクトース、グリセロール、アラビノース、リボース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、セロビオース、マルトース、スクロース、トレハロース、キシリトールなど)、アルコール、有機酸、有機酸塩、アルカンまたは他の一般的な炭素源が例示され、異化可能な窒素源して、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン由来成分、動植物タンパク質およびその分解物、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アンモニア、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、グルタミン酸ナトリウム、尿素等が例示される。
【0016】
また、本発明において使用される液体培地においては、さらなる高芽胞化率を達成するため、カリウム含量が2g/L未満であることが好ましく、1.9g/L以下であることがより好ましい。カリウム含量は0.2g/L以上であることが好ましい。カリウムの供給源として、例えば、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン由来成分、動植物タンパク質およびその分解物、KHPO、KHPO、KClなどから少なくとも1種類以上を選択して培養を行う。
【0017】
その他の培地成分としては、芽胞形成に悪影響を及ぼさない限り、バチルス属細菌の培養に通常使用される微量金属塩等の培地成分を添加してもよく、さらに、必要に応じて、アミノ酸またはビタミン等を添加することができる。
【0018】
培養条件としては、通常のバチルス属細菌の液体培養に使用される条件であればよいが、例えば、20〜40℃で、好気条件(例えば、酸素濃度15〜50%)で、撹拌しつつ、10〜100時間培養する条件が例示される。培地のpHは6.5〜8.5が好ましく、7.0〜8.0がより好ましい。
なお、上記C/N比の液体培地で培養する前に、前培養を行ってもよい。
【0019】
このようにして、高い芽胞化率(例えば、50%以上、好ましくは80%以上)のバチルス属細菌の菌体が得られる。このような高い芽胞化率のバチルス属細菌の菌体は、適宜、培地の濃縮または除去、乾燥等の操作を行ったうえで、所望の目的に使用することができる。
【0020】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
<バチルス・シンプレックスNBRC15720株の評価>
500ml三角フラスコを用い、表1に記載の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、脱脂大豆粉(味の素ヘルシーサプライ)、酵母エキス(Difco)、CSL(Corn Steep Liquor:ROQUETTE)、ペプトン(Difco)、KH2PO4(和光純薬)を含有し、さらにMnCl2(和光純薬)を100ppm、NaCl(和光純薬)を400ppm、MgCl2(和光純薬)を250ppm、CaCl2(和光純薬)を75ppm、FeSO4(和光純薬)を0.3ppm含有させた培地をそれぞれ100mlずつ作製し、シリコ栓をしてオートクレーブ滅菌を行った(グルコースはメイラード反応を避けるため、別途滅菌の上、無菌的に混合した)。
【0022】
まず、普通寒天平板培地上に生育させたバチルス・シンプレックスNBRC15720株のコロニーより1白金耳をとり、表1の培地条件1に記載の培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
得られた前培養液より3mlを、表1に記載の各種培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで40時間〜72時間晩振とう培養を行い、培養液を得た。
培養後、光学顕微鏡および細菌用セルカウンターを用いて、培養液中の菌体濃度および菌体の芽胞化率を計測した。
【0023】
菌体濃度、芽胞濃度、芽胞化率の測定方法は以下のとおりである。
培養液中に増殖したバチルス・シンプレックス菌を滅菌水、0.01%Tween20液等で希釈したのちに、菌体濃度(栄養細胞および芽胞)、芽胞濃度を細菌用セルカウンターでカウントした。芽胞化率は芽胞濃度÷菌体濃度で算出した。
【0024】
C/N比は各培地成分に含まれる炭素含量と窒素含量の重量比より算出した。
C/N比=各培地成分に含まれる炭素含量の合計÷各培地成分に含まれる窒素含量の合計。
各培地成分の炭素含量の測定は、酸中で加水分解したのちソモギー法にて還元糖濃度を定量後、全糖量に0.4を掛けて算出した。
各培地成分の窒素含量の測定は、ケルダール法により行った。
【0025】
各培地成分に含まれるカリウム含量の測定は、原子吸光光度法(測定波長766.5nm)により行った。
【0026】
【表1】
【0027】
結果を表2に示す。C/N比が9.5以上の条件において、菌体の増殖は見られるものの、芽胞化率の低下が認められた。一方、C/N比が4.0以下の条件において、菌体の増殖は見られるものの、芽胞化率の低下が認められた。また、カリウム含量は0.2〜1.9g/Lの範囲がよいことが分かった。
【0028】
【表2】
【実施例2】
【0029】
<バチルス・シンプレックスNBRC104473株の評価>
500ml三角フラスコを用い、表3に記載の培地条件1〜3の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、脱脂大豆粉(味の素ヘルシーサプライ)、酵母エキス(Difco)、CSL(ROQUETTE)、ペプトン(Difco)、KH2PO4(和光純薬)を含有し、さらにそれぞれMnCl2(和光純薬)を100ppm、NaCl(和光純薬)を400ppm、MgCl2(和光純薬)を250ppm、CaCl2(和光純薬)を75ppm、FeSO4(和光純薬)を0.3ppm含有させた培地をそれぞれ100mlずつ作製し、シリコ栓をしてオートクレーブ滅菌を行った(グルコースはメイラード反応を避けるため、別途滅菌の上無菌的に混合した)。
【0030】
普通寒天平板培地上に生育させたバチルス・シンプレックスNBRC104473株のコロニーより1白金耳をとり、表3に記載の培地条件1に記載の培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。得られたバチルス・シンプレックスNBRC104473株の前培養液よりそれぞれ3mlを、表3に記載の各培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで40時間〜72時間晩振とう培養を行い、培養液を得た。培養後、光学顕微鏡および細菌用セルカウンターを用いて、培養液中の菌体濃度および菌体の芽胞化率を計測した。
【0031】
【表3】
【0032】
結果を表4に示す。NBRC104473株についても実施例1と同様の傾向が見られた。
【0033】
【表4】
【実施例3】
【0034】
<大容量培養系での評価>
5L容培養槽を用い、表5に記載の培地条件1〜3の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、脱脂大豆粉(味の素ヘルシーサプライ)、酵母エキス(Difco)、CSL(ROQUETTE)、ペプトン(Difco)、KH2PO4(和光純薬)を含有し、さらにそれぞれMnCl2(和光純薬)を100ppm、NaCl(和光純薬)を400ppm、MgCl2(和光純薬)を250ppm、CaCl2(和光純薬)を75ppm、FeSO4(和光純薬)を0.3ppm含有させた培地をそれぞれ2,000mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースはメイラード反応を避けるため、別途滅菌の上無菌的に混合した)。
【0035】
普通寒天平板培地上に生育させたバチルス・シンプレックスNBRC15720のコロニーより1白金耳をとり、500ml容三角フラスコに作製した実施例1(表1)に記載の培地条件1の培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。得られたバチルス・シンプレックスNBRC15720株の前培養液よりそれぞれ60mlを、表5に記載の各培地に無菌的に稙菌し、37℃、400rpmの条件で40時間、通気撹拌培養を行い、培養液を得た。培養後、光学顕微鏡および細菌用セルカウンターを用いて、培養液中の菌体濃度および菌体の芽胞化率を計測した。
【0036】
【表5】
【0037】
結果を表6に示す。C/Nが一定の範囲であれば、大容量培養系でも、バチルス・シンプレックスNBRC15720株の50%以上の芽胞化率が得られた。
【0038】
【表6】
【実施例4】
【0039】
<大容量培養系でのバチルス・シアメンシスの評価>
5L容培養槽を用い、表7に記載の培地条件1〜3の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、脱脂大豆粉(味の素ヘルシーサプライ)、酵母エキス(Difco)、CSL(ROQUETTE)、ペプトン(Difco)、KH2PO4(和光純薬)を含有し、さらにそれぞれMnCl2(和光純薬)を100ppm、NaCl(和光純薬)を400ppm、MgCl2(和光純薬)を250ppm、CaCl2(和光純薬)を75ppm、FeSO4(和光純薬)を0.3ppm含有させた培地をそれぞれ2,000mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースはメイラード反応を避けるため、別途滅菌の上無菌的に混合した)。
【0040】
普通寒天平板培地上に生育させたバチルス・シアメンシスのコロニーより1白金耳をとり、500ml容三角フラスコに作製した表7に記載の培地条件1の培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。得られたバチルス・シアメンシスの前培養液よりそれぞれ60mlを、表7に記載の各種培地に無菌的に稙菌し、37℃、400rpmの条件で40時間、通気撹拌培養を行い、培養液を得た。培養後、光学顕微鏡および細菌用セルカウンターを用いて、培養液中の菌体濃度および菌体の芽胞化率を計測した。
【0041】
【表7】
【0042】
結果を表8に示す。C/Nが一定の範囲であれば、大容量培養系で、バチルス・シアメンシスの88%以上の芽胞化率が得られた。
【0043】
【表8】
【実施例5】
【0044】
<大容量培養系でのバチルス・メガテリウムの評価>
5L容培養槽を用い、表9に記載の培地条件1〜3の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、脱脂大豆粉(味の素ヘルシーサプライ)、酵母エキス(Difco)、CSL(ROQUETTE)、ペプトン(Difco)、KH2PO4(和光純薬)を含有し、さらにそれぞれMnCl2(和光純薬)を100ppm、NaCl(和光純薬)を400ppm、MgCl2(和光純薬)を250ppm、CaCl2(和光純薬)を75ppm、FeSO4(和光純薬)を0.3ppm含有させた培地をそれぞれ2,000mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースはメイラード反応を避けるため、別途滅菌の上無菌的に混合した)。
【0045】
普通寒天平板培地上に生育させたバチルス・メガテリウムのコロニーより1白金耳をとり、500ml容三角フラスコに作製した表9に記載の培地条件1の培地に無菌的に稙菌し、37℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。得られたバチルス・メガテリウムの前培養液よりそれぞれ60mlを、表9に記載の各種培地に無菌的に稙菌し、37℃、400rpmの条件で40時間、通気撹拌培養を行い、培養液を得た。培養後、光学顕微鏡および細菌用セルカウンターを用いて、培養液中の菌体濃度および菌体の芽胞化率を計測した。
【0046】
【表9】
【0047】
結果を表10に示す。C/Nが一定の範囲であれば、大容量培養系で、バチルス・メガテリウムの78%以上の芽胞化率が得られた。
【0048】
【表10】