(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の測定システムであって、前記照明光源が、第2の量の照明光を前記試料上に設置された前記1つ以上の計測ターゲットに提供するようにさらに構成され、前記蒸気注入システムが、前記第2の量の照明光での前記1つ以上の計測ターゲットの照明の間、第2の気体流を前記1つ以上の計測ターゲットに提供するようにさらに構成され、前記検出器が、前記第2の量の照明光に応答して前記1つ以上の計測ターゲットから第2の量の集光された光を受け取り、前記第2の量の集光された光を示す測定信号の第2のセットを生成するようにさらに構成され、前記計算システムが、
前記測定信号の第1のセットおよび第2のセット、ならびにマルチターゲット測定モデルに少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の計測ターゲットの前記気孔率を示す値および前記1つ以上の計測ターゲットの限界寸法の値を推定するようにさらに構成されることを特徴とする測定システム。
請求項2に記載の測定システムであって、前記第1の気体流が、第1の分圧で前記第1の充填物質を含み、前記第2の気体流が、第2の分圧で前記第1の充填物質を含むことを特徴とする測定システム。
請求項2に記載の測定システムであって、前記第1の気体流が、前記第1の充填物質を含み、前記第2の気体流が、第2の充填物質を含むことを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記試料の温度が、前記第1の気体流内で蒸発される前記第1の充填物質の温度とおよそ同じ温度であることを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記蒸気注入システムが、不飽和パージガスの第1の流れを気相の前記第1の充填物質で飽和されたパージガスの第2の流れと混合して、前記第1の気体流を提供することを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記蒸気注入システムが、不飽和パージガスの流れと気相の前記第1の充填物質で飽和されたパージガスの流れとの比を変化させることによって、前記第1の気体流内の前記第1の充填物質の分圧を調整することを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記第1の充填物質が、水、エタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メタノール、およびベンゼンのうちのいずれかであることを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記気孔率および前記限界寸法の前記値の推定が、モデルベース回帰、モデルベースライブラリ検索、モデルベースライブラリ回帰、画像ベースの分析、および信号応答計測モデルのうちのいずれかを伴うことを特徴とする測定システム。
請求項1に記載の測定システムであって、前記測定システムが、分光エリプソメータ、分光反射計、角度分解反射計、暗視野検査システム、明視野検査システム、および撮像オーバーレイ測定システムのうちのいずれかとして構成されることを特徴とする測定システム。
請求項17に記載の方法であって、前記測定信号の第1のセットおよび前記測定モデルに少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の構造要素の限界寸法の値を推定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
請求項17に記載の方法であって、前記第1の気体流を提供するステップが、不飽和パージガスの第1の流れを気相の前記第1の充填物質で飽和されたパージガスの第2の流れと混合するステップを伴うことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
これより本発明の背景事例およびいくつかの実施形態について詳細に言及するが、これらの例は添付の図面内で例証されるものである。
【0023】
毛管凝縮プロセスによって凝縮物で充填される半導体構造体の気孔率測定を実施するための方法およびシステムが本明細書に提示される。気孔率の光学測定が実施されると同時に、目的とする構造体周辺の局所的な環境は、制御された量の充填物質を含むパージガスの流れで処理される。充填物質の一部分(すなわち凝縮物)は、測定下にある構造体上に凝縮し、構造的特徴部内の開口部、構造的特徴部間の開口部などを充填する。凝縮物の存在は、パージガスがいかなる充填物質も欠く測定シナリオと比較して、測定下にある構造体の光学特性を変化させる。
【0024】
いくつかの例において、異なる吸着状態について、構造体の複数の測定が実施される。言い換えると、各測定は、測定下にある構造体上に凝縮される異なる量の凝縮物に対応する。幾何特徴部が異なる量の凝縮物で充填されている構造体と関連付けられた測定信号情報を収集することによって、気孔率測定は、測定データの豊富なセットを用いて実施される。
【0025】
いくつかの例において、半導体構造体の気孔率の推定は、ローレンツ−ローレンツモデルを使用して未充填および充填両方の状態における構造体の測定に基づいて直接決定される。これらの例のいくつかにおいて、低k誘電体膜およびテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)膜などの平面膜の気孔率は、本明細書に説明される方法に基づいて決定される。気孔率測定は、細孔サイズ、細孔分布、細孔容積などの推定を含み得る。
【0026】
さらなる態様において、半導体構造体の気孔率および限界寸法測定は、組み合わされた測定モデルに基づいて実施される。モデルベース測定は、幾何特徴部が凝縮物で充填されている構造体から収集された測定信号を含む豊富なデータセットを用いて実施される。これにより浮動限界寸法および気孔率パラメータ間のパラメータ相関を低減し、測定精度を改善する。
【0027】
図1は、半導体ウェハの特性を測定するためのシステム100を例証する。
図1に示されるように、システム100は、ウェハ位置付けシステム110上に設置された半導体ウェハ112の1つ以上の構造体114の分光エリプソメトリ測定を実施するために使用され得る。この態様において、システム100は、発光体102を備えた分光エリプソメータ101および分光計104を含み得る。システム100の発光体102は、選択された波長範囲(例えば100〜2500nm)の照明を生成し、半導体ウェハ112の表面上に設置された構造体114に向けるように構成される。次に、分光計104は、半導体ウェハ112の表面から光を受け取るように構成される。発光体102から生じる光は、偏光照明ビーム106を生成するために偏光状態生成器107を使用して偏光されることにさらに留意されたい。ウェハ112上に設置された構造体114によって反射される放射線は、偏光状態分析器109を通って分光計104へ向けられる。回収ビーム108内の分光計104によって受け取られる放射線は、偏光状態に関して分析され、分析器による通過した放射線のスペクトル分析を可能にする。検出されたスペクトル111は、構造体114の分析のために計算システム116に渡される。
【0028】
計算システム130は、ガス吸着に起因して充填される試料112の構造体114の測定(例えば、限界寸法、膜厚、組成、プロセスなど)と関連付けられた測定データ111を受信するように構成される。1つの例において、測定データ111は、分光計104からの1つ以上のサンプリングプロセスに基づいた測定システム100による試料の測定されたスペクトル応答の指標を含む。いくつかの実施形態において、計算システム130は、測定データ111から構造体114の試料パラメータ値を決定するようにさらに構成される。1つの例において、計算システム130は、リアルタイム限界寸法設定(RTCD)を用いてモデルパラメータにリアルタイムでアクセスするように構成されるか、または、計算システム130は、ターゲット構造体114と関連付けられた少なくとも1つの目的とするパラメータの値を決定するために事前計算されたモデルのライブラリにアクセスし得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の目的とするパラメータの推定値は、メモリ(例えばメモリ132)に格納される。
図1に描写される実施形態において、1つ以上の目的とするパラメータの推定値115は、外部システム(図示せず)に通信される。
【0029】
一般に、エリプソメトリは、検査下にある試料の物理的性質を測定する間接的な方法である。ほとんどの場合、生の測定信号(例えば、α
measおよびβ
meas)は、試料の物理的性質を直接決定するために使用することができない。公称測定プロセスは、構造体(例えば、膜厚、限界寸法、材料特性など)および機械(例えば、波長、入射角、偏光角度など)のパラメータ化からなる。測定値(例えばα
measおよびβ
meas)を予測することを試みる測定モデルが作成される。式(1)および(2)に例証されるように、このモデルは、機械(P
machine)および試料(P
specimen)と関連付けられたパラメータを含む。
α
model=f(P
machine,P
specimen)(1)
β
model=g(P
machine,P
specimen)(2)
【0030】
機械パラメータは、計測ツール(例えばエリプソメータ101)を特徴付けるために使用されるパラメータである。例示的な機械パラメータとしては、入射角(AOI)、分析器角度(A
0)、偏光子角度(P
0)、照明波長、開口数(NA)、補償器または波長板(存在する場合)などが挙げられる。試料パラメータは、試料(例えば、構造体114を含む試料112)を特徴付けるために使用されるパラメータである。薄膜試料の場合、例示的な試料パラメータとしては、屈折率、誘電関数テンソル、すべての層の公称層厚、層順序などが挙げられる。CD試料の場合、例示的な試料パラメータとしては、異なる層と関連付けられた幾何学的パラメータ値、異なる層と関連付けられた屈折率などが挙げられる。測定目的の場合、機械パラメータは既知として扱われ、固定パラメータ、および試料パラメータのうちの1つ以上は、未知の浮動パラメータとして扱われる。
【0031】
いくつかの例において、浮動パラメータは、理論予測と実験データとの最良適合を生成する反復プロセス(例えば回帰)によって解明される。未知の試料パラメータP
specimenは変動し、モデル出力値(例えばα
modelおよびβ
model)は、試料パラメータ値のセットが、モデル出力値と実験的に測定した値(例えばα
measおよびβ
meas)との近い一致をもたらすと決定されるまで計算される。CD試料における分光エリプソメトリなどのモデルベース測定用途においては、回帰プロセス(例えば最小二乗回帰)は、機械パラメータ値の固定セットについてモデル出力値と実験的に測定した値との差を最小限にする試料パラメータ値を特定するために用いられる。
【0032】
いくつかの例において、浮動パラメータは、最も近い一致を見つけるために事前計算されたソリューションのライブラリを検索することによって解明される。CD試料における分光エリプソメトリなどのモデルベース測定用途においては、ライブラリ検索プロセスは、機械パラメータ値の固定セットについて事前計算した出力値と実験的に測定した値との差を最小限にする試料パラメータ値を特定するために用いられる。
【0033】
いくつかの他の例において、モデルベースライブラリ回帰または信号応答計測モデルが、目的とするパラメータの値を推定するために用いられる。
【0034】
モデルベース測定用途においては、十分なスループットを維持するために、多くの場合、仮説を単純化することが必要とされる。いくつかの例において、厳密結合波解析(RCWA)の打ち切りの次数は、計算時間を最小限にするために低減されなければならない。別の例では、ライブラリ関数の数または複雑性が、検索時間を最小限にするために低減される。別の例では、浮動パラメータの数が、特定のパラメータ値を固定することによって低減される。いくつかの例において、これらの仮説単純化は、1つ以上の目的とするパラメータ(例えば、限界寸法パラメータ、オーバーレイパラメータなど)の値の推定において容認できない誤差をもたらす。本明細書に説明されるようなガス吸着の対象となる構造体の測定を実施することによって、モデルベース測定モデルは、低減されたパラメータ相関および増大された測定精度により解決され得る。
【0035】
図1に描写されるように、計測システム100は、測定中に気体流126を構造体114に提供するように構成される蒸気注入システム120を含む。1つの態様において、気体流126は、パージガスおよびパージガス内で蒸発される充填物質を含む。気体流が構造体114と接触すると、吸着が発生し、充填物質の一部分(すなわち凝縮物)が、測定下にある構造体114上に凝縮する。凝縮物は、構造体114の1つ以上の構造的特徴部の少なくとも一部分を充填する。凝縮物の存在は、測定される構造体の光学特性を変化させる。
【0036】
いくつかの実施形態において、測定は、パージガス流が充填物質を含まない(例えば、純窒素ガスまたは清浄な乾燥空気)ときに実施され、別の測定は、パージガス流が充填物質を含み、その結果、凝縮物が測定下にある構造的特徴部間の開口部を完全に充填するときに実施される。これら2つの測定から収集された測定データは、計算システム130に通信され、測定データの両セットに基づいて1つ以上の目的とする構造パラメータの推定が行われる。
【0037】
いくつかの実施形態において、一連の測定は、測定下にある構造的特徴部上への凝縮の量が各測定で異なるように、異なる吸着条件下で実施される。一連の測定から収集された測定データは、計算システム130に通信され、収集された測定データに基づいて1つ以上の目的とする構造パラメータの推定が行われる。
【0038】
図1に描写されるように、ある量の充填物質123が、充填物質源121から蒸気注入システム120へ輸送される。加えて、パージガス124の流れは、パージガス源122から蒸気注入システムへ輸送される。蒸気注入システム120は、測定下にある構造体114に提供される気体流126を生成するために、充填物質をパージガスの流れ内へ蒸発させる。
図1に描写される実施形態において、パージガスの流れおよびパージガスの流れ内に蒸発される充填物質の量は、計算システム130から蒸気注入システム120へ通信される命令信号125によって制御される。したがって、命令信号125は、気体流126の所望の組成を制御する。
図1に描写されるように、気体流126は、適切な流れ特性で気体流126をウェハ110上の所望の場所へ向かわせるノズル105を通過する。
【0039】
図1は、測定下にある計測ターゲットに局所的に提供される気体流126を描写する。しかしながら、一般には、気体流126は、ウェハ全体にわたって、照明光源から検出器へのビーム経路の任意の部分を通って、またはそれらの任意の組み合わせで、提供され得る。パージガス流をウェハにわたっておよび照明光源と検出器との間のビーム経路を通って提供する様々な例は、ヒドン クァク(Hidong Kwak)らによる2010年7月13日発行の米国特許第7,755,764号に記載されており、その主題は、その全体において本願に引用して援用する。
【0040】
図1に例証されるシステム100の実施形態は、本明細書に説明されるようにさらに構成され得る。加えて、システム100は、本明細書に説明される方法実施形態のいずれかの任意の他のブロックを実施するように構成され得る。
【0041】
図2は、1つの実施形態における蒸気注入システム120を例証する図である。この実施形態において、測定下にあるウェハ112に提供される気体流126内で蒸発される充填物質の量(すなわち凝縮物の分圧)は調節される。充填物質の分圧を調節することによって、毛管凝縮によって充填される構造寸法が制御される。
【0042】
図2に描写される実施形態において、パージガス流(例えば、窒素ガス、清浄な乾燥空気など)内で蒸発される充填物質の分圧は、充填物質の液槽にわたる充填物質の平衡圧に等しく、パージガスはこの液槽を通じて気泡化される。1つの例において、バブラー型の蒸気注入システムは、Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri(USA)より市販されている1.2リットル容量ステンレス鋼バブラー、モデルZ553360である。
【0043】
図2に描写されるように、パージガス流124の部分146は、質量流量制御器148Aを通過し、パージガス流124の別の部分145は、質量流量制御器148Bを通過する。気体流146および145の流量は、それぞれ、質量流量制御器148Aおよび148Bの状態、例えば質量流量制御器の弁の位置などによって制御される。この様式では、充填物質がその中へ蒸発されるパージガス流124の量は、質量流量制御器148Bによって制御され、蒸発の対象とならないパージガス流124の量は、質量流量制御器148Bによって制御される。
図2に描写される実施形態において、計算システム130から蒸気注入システム120へ通信される命令信号125は、複数の信号149A〜Cを含む。信号149Aは、質量流量制御器148Aを通る所望の流れの指標を含む。それに応じて、質量流量制御器148Aは、所望の流れに、したがって充填物質がその中へ蒸発されないパージガス流の所望の割合に調整する。信号149Bは、質量流量制御器148Bを通る所望の流れの指標を含む。それに応じて、質量流量制御器148Bは、所望の流れに、したがって充填物質がその中へ蒸発されるパージガス流の所望の割合に調整する。パージガス流124の部分145は、チェック弁142、流量制御弁143を通過し、バブラー140内へと入る。バブラー140において、ある量の充填物質が、パージガス流124の部分145内へ蒸発されて、パージガスおよび充填物質の気体流147を生成する。気体流147は、バブラー140を通って流れなかったパージガスの部分146と組み合わされて気体流126を生成する。
【0044】
いくつかの実施形態において、質量流量制御器149Aおよび149Bは、パージガス流124の全体がバブラー140またはバイパスバブラー140のいずれかを完全に通って流れるように制御される。この様式では、気体流126が、充填物質のゼロ分圧を有する乾燥パージガス流124であるか、パージガス流124全体が充填物質の蒸発の対象となるかのいずれかである。
【0045】
充填物質がバブラー140内で蒸発され、気体流147として運び出されると、バブラー140内の一定の充填レベルを維持するために追加の充填物質123が充填物質源121から流れる。いくつかの実施形態において、充填レベルは、レベルセンサまたは流れ制御スキームに基づいて自動的に制御される。いくつかの他の実施形態において、充填レベルは、手動の充填動作によって定期的に維持される。
【0046】
1つの実施形態において、周囲温度T
aでの気体流126内の蒸発充填物質の飽和度は、充填物質がその中へ蒸発されるパージガス流145の、蒸発の対象とならないパージガス流146の部分に対する割合を調整することによって制御される。好ましい実施形態において、バブラー140内の充填物質の温度は、測定下にあるウェハと同じ温度(例えば周囲温度T
a)に維持される。これらの条件下で、気体流126内の充填物質の相対飽和p
0/pは、式(3)において説明され、式中、F
1は、完全に飽和した気体流147の流量であり、F
2は、不飽和気体流146の流量である。
【数1】
図2に例証されるように、気体流146および147は、組み合わされて、測定下にあるウェハに提供される気体流126を形成する。したがって、測定下にあるウェハに提供される総流量は、命令信号148Aおよび148Bを通信してF
1およびF
2の合計を調節することによって制御される。測定下にあるウェハに提供される流れの相対飽和は、命令信号148Aおよび148Bを通信してF
1およびF
2の比を調節することによって制御される。
【0047】
別の実施形態において、周囲温度T
aでの蒸発充填物質の飽和度は、液槽を周囲温度未満の温度Tに維持することによって制御される。純物質の平衡蒸気圧p
0と温度Tとの関係は、式(4)によって例証されるクラウジウス−クラペイロンの式によって得られ、式中、ΔHは、純物質の蒸発のエンタルピーであり、Rは理想のガス定数であり、これは8.31J/mole・°Kである。
【数2】
【0048】
式(4)に基づいて、周囲温度Ta未満である温度Tで飽和される充填物質についての相対飽和p/p
0は、式(5)によって例証される。
【数3】
【0049】
図4は、水、トルエン、およびエタノールの蒸発のエンタルピーΔHを含む表127を描写する。これらの物質の各々は、本明細書に説明されるような充填物質として好適であり得る。加えて、表127は、周囲温度が摂氏25度であり、充填物質の所望の相対飽和p/p
0が0.9であるときの周囲温度(すなわちウェハ温度)と槽温度との差を例証する。表127に例証されるように、槽温度を例証される量だけ周囲温度を下回って維持することによって、列挙された各充填物質について0.9の分圧が維持される。これらの物質のいずれかを充填物質として利用することは、これがウェハとバブラー140の液槽との間のおよそ摂氏2度の温度差を維持するのは比較的簡単なことであることから有利であり得る。この実施形態では、乾燥パージガス146の流れを飽和パージガス147の流れと組み合わせることなく、周囲温度T
aでの気体流126内の蒸発充填物質の飽和度を制御することが可能である。言い換えると、流れ146は、ゼロに設定され得、周囲温度T
aでの気体流126内の蒸発充填物質の飽和度は、バブラー温度とウェハ温度との間の温度差によって制御される。いくつかの他の例において、乾燥パージガス146の流れは、飽和パージガス147の流れと組み合わされ、周囲温度T
aでの気体流126内の蒸発充填物質の飽和度は、バブラー温度とウェハ温度との間の温度差ならびに気体流146および気体流147の流量の比の組み合わせによって制御される。
【0050】
いくつかの実施形態において、槽温度およびウェハ温度が測定されて、計算システム130に通信される。計算システムは、ウェハ温度と槽温度との間の差を決定し、所望のウェハ温度、槽温度、または両方を計算する。いくつかの実施形態において、計算システム130は、蒸気注入システム120に対する所望の槽温度を示す命令信号149Cを生成する。それに応じて、蒸気注入システム120は、局所加熱または冷却装置(図示せず)を使用して槽温度を所望の値に調整する。いくつかの実施形態において、計算システム130は、ウェハ調整サブシステム(図示せず)に対する所望のウェハ温度を示す命令信号(図示せず)を生成する。それに応じて、ウェハ調整サブシステムは、ウェハ加熱または冷却装置(図示せず)を使用してウェハ温度を所望の値に調整する。いくつかの実施形態において、計算システム130は、局所ウェハ加熱要素103に対する所望のウェハ温度を示す命令信号113(
図1に描写される)を生成する。それに応じて、加熱装置103は、放射加熱要素を使用してウェハ温度を局所的に(すなわち測定場所のごく近辺において)所望の値に調整する。
【0051】
いくつかの実施形態において、ウェハと槽との間の温度差の制御は、蒸気注入システム120と関連付けられた計算システムによって制御される。この意味で、計算システム130によるウェハと槽との間の温度差の制御は、非限定的な例として提供される。任意の好適な制御アーキテクチャおよび温度調節スキームは、本特許文書の範囲内で企図され得る。
【0052】
図3は、別の実施形態における蒸気注入システム120を例証する図である。同様の番号の付いた要素は、
図2を参照して説明されるものと類似している。
【0053】
図3に描写されるように、パージガス124の流れは、三方弁141を通過する。いくつかの実施形態において、三方弁141は、三方弁の位置に基づいて、バブラー140を通って流れるパージガス流124の部分145を、バブラー140を通って流れない部分146と比例させる。この様式では、充填物質がその中へ蒸発されるパージガス流124の量は、三方弁141によって制御される。
図3に描写される実施形態において、計算システム130から蒸気注入システム120へ通信される命令信号125は、複数の信号149C〜Dを含む。
図3に描写される実施形態において、信号149Dは、三方弁141の所望の位置の指標を含む。それに応じて、三方弁141は、所望の位置に、したがって充填物質がその中へ蒸発されるパージガス流の所望の割合に調整する。パージガス流124の部分145は、チェック弁142、流量制御弁143を通過し、バブラー140内へと入る。バブラー140において、ある量の充填物質が、パージガス流124の部分145内へ蒸発されて、パージガスおよび充填物質の気体流147を生成する。気体流147は、バブラー140を通って流れなかったパージガスの部分146と組み合わされて気体流126を生成する。
【0054】
いくつかの実施形態において、三方弁141は、パージガス流124の全体が、三方弁の位置に基づいて、バブラー140またはバイパスバブラー140のいずれかを完全に通って流れるように制御される。この様式では、三方弁141の状態に応じて、気体流126が、充填物質のゼロ分圧を有する乾燥パージガス流124であるか、パージガス流124全体が充填物質の蒸発の対象となるかのいずれかである。
【0055】
図3を参照して説明されるように、測定下にあるウェハに提供される充填物質の量は、充填物質の蒸発の対象となるパージガス流124の部分145をそうでないパージガス流124の部分146に対して調節することによって制御される。加えて、ウェハ温度での蒸発充填物質の飽和度は、ウェハ温度と槽温度との間の差を調節することによって制御される。
【0056】
別の実施形態において、周囲温度での蒸発充填物質の飽和度は、溶媒(すなわち充填物質)の液槽内に、溶媒のみの平衡蒸気圧と比較して溶媒の平衡蒸気圧を抑える不揮発性溶質を添加することによって制御される。1つの例において、溶媒としての水および不揮発性溶質(例えば、塩化ナトリウム、塩酸など)から形成される溶液は、純水の平衡蒸気圧より低い水の蒸気圧を呈する。
図5は、水槽内の塩酸の濃度の関数としての水の分圧のプロット128を描写する。水に溶解された塩化ナトリウムの溶液について同様の結果が存在する。例えば、水に溶解された6パーセント塩化ナトリウムの溶液は、90%の相対湿度p/p
0をもたらす。
【0057】
これらの実施形態において、蒸発充填物質(すなわち溶媒)の飽和度は、溶液中の溶質の濃度を制御することによって調節される。いくつかの実施形態において、槽内の溶媒の量は、所望の濃度、したがって蒸発溶媒の所望の分圧を維持するように制御される。これらの実施形態において、槽温度が名目上は周囲温度(すなわちウェハ温度)に維持される限りは正確な温度制御は必要ではない。
【0058】
一般には、任意の好適なパージガスおよび充填物質が、本明細書に説明されるような測定の実施における使用のために選択され得る。例示的なパージガスとしては、不活性ガス、窒素、および清浄な乾燥空気が挙げられる。好適なパージガスの選択は、半導体製作工場における可用性により主に決まる。例示的な充填物質としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。好適な充填物質の選択は、蒸気圧、空隙充填特性、光学特性、および充填物質と測定下にある試料との任意の化学的相互作用を制御する能力により決まる。
【0059】
例えば、液体充填物質は入射光を屈折させるだけでなく入射光を吸収するため、充填物質の屈折率および充填物質の吸収係数が、根本となる測定モデルにおいて考慮される。これらの特性の両方は、特に比較的短い照明波長(例えば、120ナノメートル〜190ナノメートルの範囲にわたる真空紫外波長)で、また比較的長い照明波長(例えば、2,500ナノメートルまで及ぶ、およびそれを超える赤外波長)でも、充填ありで実施される測定と充填なしで実施される測定との間に差を生み出す。したがって、屈折率および吸収係数の両方において空気とは実質的に異なる液体充填物質の選択は、マルチターゲット測定分析において低減されたパラメータ相関の有利な条件を提供する。加えて、屈折率および吸収係数の両方が照明波長の関数として変化する液体充填物質の選択は、スペクトル測定分析において低減されたパラメータ相関の有利な条件を提供する。いくつかの実施形態において、測定は、100ナノメートル〜2,500ナノメートルの幅広い範囲の波長を捕捉するいくつかの異なるスペクトル計測学技術を用いて、脱イオン水などの充填物質を使用して実施される。
【0060】
例示的な計測学技術としては、分光エリプソメトリ、ミュラー行列エリプソメトリ、分光リフレクトメトリ、角度分解リフレクトメトリなどが挙げられる。
【0061】
さらなる態様において、照明波長で蛍光を発する液体充填物質の選択は、画像ベースの測定分析において低減されたパラメータ相関の有利な条件を提供する。いくつかの実施形態において、充填物質の蛍光は、画像コントラストを強化し、画像ベースのオーバーレイ、画像ベースの検査(例えば、暗視野および明視野検査)などの画像ベースの測定技術の測定性能を改善する。
【0062】
さらなる態様において、毛管凝縮が用いられて、計測ターゲットの測定中に計測ターゲット自体(例えば、限界寸法(CD)構造体、グレーティング構造体、オーバーレイ構造体など)の幾何学的な構造的特徴部間の空間を充填する。一般には、気体流126内の蒸発物質の所望の飽和度は、ガス吸着によって充填されるべき最大特徴部サイズに基づいて決定される。毛管凝縮は、小さい特徴部(例えば、細孔、切欠き、溝、スリット、コンタクトホールなどの小容積)に充填物質を充填するために用いられる。ケルビンの式は、特定の充填材料、充填物質の分圧、および周囲温度(例えばウェハ温度)について、充填され得る最大特徴部サイズの近似値を提供する。式(6)は、2つの異なる半径r
1およびr
2を有する凝縮メニスカスについてのケルビンの式を例証し、式中、Rは理想のガス定数であり、T
aは周囲温度であり、Vは充填物質のモル体積であり、γは充填物質と関連付けられた表面張力定数であり、p/p
0は、充填物質の分圧である。
【数4】
【0063】
図6は、水、トルエン、およびエタノールと関連付けられたモル体積および表面張力を例証する表129を描写する。
【0064】
円筒孔または細孔特徴部の場合、r
1はr
2と等しい。
図7は、式(6)に従って吸着/凝縮により充填され得る円筒孔または細孔の最大径を例証するプロット172を描写する。プロット172は、水(プロット線175)、エタノール(プロット線174)、およびトルエン(プロット線173)によって充填され得る円筒孔の最大径を、摂氏25度の周囲温度での各充填物質の様々な分圧に対して描写する。
図7に描写されるように、最大40ナノメートルの直径を有する円筒孔は、気体流126が95%以上の水またはエタノールの分圧で計測ターゲットに提供されるときに充填され得る。さらに
図7に描写されるように、最大90ナノメートルの直径を有する円筒孔は、気体流126が95%以上のトルエンの分圧で計測ターゲットに提供されるときに充填され得る。
【0065】
線および空間の場合、r
2は無限大である。
図8は、式(6)に従って吸着により充填され得る長い溝様特徴部の最大径を例証するプロット160を描写する。プロット160は、水(プロット線164)、エタノール(プロット線163)、およびトルエン(プロット線162)によって充填され得る溝の最大径を、摂氏25度の周囲温度での各充填物質の様々な分圧に対して描写する。例証されるように、長い溝様特徴部を横切る最大径は、円筒孔特徴部の最大径の半分である。
図7および
図8に描写されるように、充填物質としてのエタノールの性能が水に非常に類似していることが理由で、水およびエタノールのプロット線は重複すると思われる。
【0066】
1つの態様において、周囲温度T
aでの蒸発充填物質の飽和度は、所望の最大特徴部サイズ未満のすべての特徴部が充填されるように調整される。いくつかの実施形態において、これは、本明細書内で先に説明されるように蒸発の対象となるパージガスの流れと蒸発の対象とならないパージガスの流れとの比を制御することによって達成される。いくつかの実施形態において、これは、ウェハと充填物質の液槽との間の温度差を制御することによって達成される。いくつかの他の実施形態において、これは、充填物質の液槽に溶解される不揮発性溶質の濃度を制御することによって達成される。
【0067】
薄膜の屈折率の分光測定は、測定下にある構造体を取り巻く環境の相対湿度に応じて変わる。屈折率の推定値の変化は、膜構造体の細孔における凝縮度の変動に起因する。1つの例において、細孔内に凝縮される水の表面が、細孔半径におよそ等しい半径rを有する負曲率(すなわちメニスカス)を有するように、水が二酸化ケイ素の膜を湿潤する。およそ50%の相対湿度での室温T=298Kにおいて、およそ2ナノメートル以下の半径を有する細孔を水で充填する。
【0068】
図9は、
図1を参照して説明されるような分光エリプソメータを用いたテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)膜構造体の屈折率の測定を描写する。プロット線176は、膜が乾燥環境において充填されるときの測定結果を描写する。プロット線177は、膜測定がおよそ50%の相対湿度で実施されるときの測定結果を描写する。プロット線178は、水自体の屈折率の測定結果を描写する。
【0069】
充填された細孔および空の細孔の屈折率と充填物質の屈折率との関係は、式(7)に例証されるローレンツ−ローレンツ式によって得られ、式中、V
openは未充填の細孔の容積であり、η
fは、細孔が充填されるときの屈折率であり、η
eは、細孔が未充填のときの屈折率であり、η
adsは、凝縮物質自体の屈折率である。
【数5】
【0070】
2ナノメートル未満の半径を有するすべての細孔と関連付けられた気孔率(すなわち、50%の相対湿度において水で充填された細孔)は、ローレンツ−ローレンツ式を測定したデータに適用することによって決定される。
図10は、
図9に例証される測定に基づいて決定された波長の関数としての推定される容積気孔率パーセンテージのプロット線179を描写する図である。
図10に描写されるように、TEOS膜は、2ナノメートル未満の半径を有する細孔ではおよそ3パーセントの容積気孔率パーセンテージを呈する。
【0071】
いくつかの例において、細孔サイズ分布は、いくつかの異なる相対湿度(すなわち、分圧p/p0条件)における屈折率の測定に基づいて同様の様式で決定される。
【0072】
さらなる態様において、最大特徴部サイズの範囲未満のすべての特徴部が充填されるように、気孔率および限界寸法測定は、周囲温度において蒸発充填物質の異なる飽和度で実施される。測定は、マルチターゲットモデルベース測定において、低減されたパラメータ相関および改善された測定性能を伴って気孔率および1つ以上の限界寸法の値を推定するために組み合わされる。
【0073】
図11は、およそ60ナノメートルの限界寸法CDを有する測定下にある構造体180を描写する。構造体180は、いくつかの層181〜188を含む。層185は、多孔性層であり、およそ150ナノメートルの高さHおよび側壁角度SWAを有する。層185は多孔性であるため、その屈折率は、本明細書内で先に説明されるような測定の間に構造体を取り囲む充填物質の分圧に応じて変化する。
【0074】
図13は、
図1を参照して説明されるSEシステムなどの分光エリプソメータを用いた構造体180の側壁角度の測定の時系列を描写する。第1の時間期間Aにおいて、乾燥パージガスが、測定下にある構造体180の周りに供給される。次の時間期間Bにおいて、乾燥パージガスが取り除かれ、湿り空気が測定下にある構造体180を取り囲む。次の時間期間Cにおいて、再び乾燥パージガスが、測定下にある構造体180の周りに供給される。
図13に例証されるモデルベース測定結果は、固定値の屈折率で実施される。しかしながら、層185の屈折率は、測定の間、構造体180を取り囲む充填物質(すなわち水)の分圧に応じて変化する。モデルベース測定において屈折率の値が固定されると、側壁角度の測定が影響を受ける。
図13に例証されるように、側壁角度の測定された値は、実際には側壁角度が固定されるとしても、多孔性層185を取り囲む湿度条件に応じて変化する。推定値のこのような変化は、CD/形状計算がマルチパラメータ回帰であり、任意の特定の層の屈折率における変化がすべての層について値の変化をもたらすことが理由で発生する。
【0075】
いくつかの実施形態において、多孔性層185の屈折率は、浮動され(すなわち、解明されるべき未知の値として処理され)、測定は、充填物質のいくつかの異なる分圧で実施される。マルチパラメータ回帰は、多孔性層185の側壁角度および屈折率の両方を解明するために実施される。屈折率は、ローレンツ−ローレンツ式によって気孔率に関係している。この関係が測定モデルに組み込まれるとき、測定モデルのマルチパラメータ回帰が、層185の側壁角度および気孔率を解明する。
【0076】
図12は、50%相対湿度(すなわち、0.5の水の分圧)を有する環境における異なる気孔率レベルについて波長の関数としての層185の屈折率と関連付けられたプロット線189〜193を描写する。プロット線189は、気孔率なしの層についての屈折率を描写し、プロット線190は、1%容積気孔率での層についての屈折率を描写し、プロット線191は、3%容積気孔率での層についての屈折率を描写し、プロット線192は、5%容積気孔率での層についての屈折率を描写し、プロット線193は、10%容積気孔率での層についての屈折率を描写する。
【0077】
例証目的のため、側壁角度の推定は、層185の屈折率について3つの異なる固定値を使用して時間期間Bの間に収集されたデータを使用して再計算された。推定値196は、プロット線189に一致した仮定の屈折率に基づいて決定された。推定値195は、プロット線190(すなわち1%気孔率)に一致した仮定の屈折率に基づいて決定された。推定値194は、プロット線191(すなわち3%気孔率)に一致した仮定の屈折率に基づいて決定された。
図13に描写されるように、およそ2%の気孔率の推定は、乾燥パージガスと50%相対湿度を有する空気との間の測定変化を説明する。この様式では、CD/形状パラメータおよび気孔率は、同じ測定データに基づいて推定される。
【0078】
一般に、測定箇所は、測定システム(例えば、
図1に描写される計測システム100)によって測定される1つ以上の計測ターゲットを含む。一般に、測定データ収集は、ウェハ全体またはウェハ面積の部分集合にわたって実施され得る。加えて、いくつかの実施形態において、計測ターゲットは、印刷適性、およびプロセスパラメータ、目的とする構造パラメータ、または両方における変化への感受性について設計される。いくつかの例において、計測ターゲットは、特殊用途ターゲットである。いくつかの実施形態において、計測ターゲットは、従来型の線/空間ターゲットに基づく。非限定的な例として、KLA−Tencor Corporation、Milpitas、California(USA)より入手可能なCDターゲット、SCOLターゲット、またはAiM(商標)ターゲットが用いられ得る。いくつかの他の実施形態において、計測ターゲットは、デバイス様の構造体である。いくつかの他の例において、計測ターゲットは、デバイス構造体、またはデバイス構造体の部分である。用いられる計測ターゲットの種類にかかわらず、調査されているプロセス変動、構造的変動、または両方に対する感受性を呈する計測ターゲットのセットは、本明細書に説明されるように毛管凝縮による形状充填を使用して測定される。
【0079】
別の態様において、測定データは、CD構造体が充填される(すなわち、本明細書に説明されるようなガス吸着の対象となる)とき、およびCD構造体が充填されていない(すなわちガス吸着の対象とならない)ときにCD構造体から収集される。収集されたデータは、マルチターゲットモデルベース測定において、測定性能を改善するために組み合わされる。
【0080】
収集されたデータは、計算システム130によって受信される。計算システム130は、目的とするパラメータの値を推定するためにマルチターゲットモデルを用いて両方の測定データセットを利用してモデルベース測定分析を実施する。いくつかの例において、本明細書に説明されるマルチターゲットモデルは、例えば、KLA−Tencor Corporation、Milpitas、California、USAから入手可能なAcuShape(登録商標)ソフトウェアを実装する計算システムによってオフラインで実施される。結果として生じるマルチターゲットモデルは、マルチターゲットモデルを使用した測定を実施する計測システムによってアクセス可能であるAcuShape(登録商標)ライブラリの要素として組み込まれる。
【0081】
別の態様において、一連の測定は、計測ターゲット構造体が異なる充填物質または異なる充填物質の組み合わせで充填されるときに測定データの各セットが計測ターゲット構造体から収集されるように実施される。収集されたデータは、マルチターゲットモデルベース測定において、パラメータ相関を低減し測定性能を改善するために組み合わされる。
【0082】
別の態様において、測定データは、吸着プロセスが安定状態に達したときに吸着の対象となる計測ターゲットから収集される。言い換えると、吸着プロセスにより提供される充填物の量は安定状態に達している。
【0083】
さらに別の態様において、測定データは、吸着プロセスが安定状態に達する前に吸着の対象となる計測ターゲットから収集される。言い換えると、吸着プロセスにより提供される充填物の量は、測定の期間にわたって変化している。
【0084】
図14は、ガス吸着の対象となる構造体の気孔率測定を実施するための方法200を例証する。方法200は、本発明の
図1に例証される計測システム100などの計測ステムによる実施に好適である。1つの態様において、方法200のデータ処理ブロックは、計算システム130または任意の他の汎用計算システムの1つ以上のプロセッサによって実行される事前プログラムされたアルゴリズムを介して行われ得ることが理解される。計測システム100の特定の構造的態様は、制限を意味するものではなく、例証としてのみ解釈されるべきであることが本明細書において理解される。
【0085】
ブロック201では、第1の量の照明光が、照明システムによって試料上に設置された1つ以上の構造要素に提供される。
【0086】
ブロック202では、気相の第1の充填物質を含む第1の気体流が、1つ以上の構造要素の照明の間、1つ以上の構造要素に提供される。充填物質の一部分は、液相の1つ以上の構造要素上に凝縮され、この第1の充填物質の一部分は、1つ以上の構造要素の1つ以上の幾何、構造的特徴部間の空間の少なくともの一部分を充填する。
【0087】
ブロック203では、第1の量の集光された光が、第1の量の照明光に応答して1つ以上の構造要素から検出される。
【0088】
ブロック204では、第1の量の集光された光を示す測定信号の第1のセットが、例えば検出器によって生成される。
【0089】
ブロック205では、1つ以上の構造要素の気孔率を示す値が、測定信号の第1のセットおよび測定モデルに少なくとも部分的に基づいて推定される。
【0090】
図1に描写される実施形態において、様々な量の液体充填物質を有する気体流の対象となる計測ターゲットの分光エリプソメータ測定が実施される。しかしながら、一般には、任意の好適なモデルベース計測技術が、本明細書に記載される方法およびシステムに従って、様々な量の液体充填物質を有する気体流の対象となる計測ターゲットの測定を実施するために用いられ得る。
【0091】
好適なモデルベース計測技術としては、限定されるものではないが、単一波長、多波長、および角度分解実装形態を含む分光エリプソメトリおよび分光リフレクトメトリ、分光スキャテロメトリ、スキャテロメトリオーバーレイ、角度分解および偏光分解実装形態を含むビームプロファイルリフレクトメトリおよびビームプロファイルエリプソメトリが挙げられ、個々に、または任意の組み合わせで企図され得る。
【0092】
一般に、前述の測定技術は、プロセスパラメータ、構造パラメータ、レイアウトパラメータ、分散パラメータ、またはそれらの任意の組み合わせの測定に適用され得る。非限定的な例として、オーバーレイ、プロファイル幾何形状パラメータ(例えば、限界寸法、高さ、側壁角度)、プロセスパラメータ(例えば、リソグラフィ焦点、およびリソグラフィ照射量)、分散パラメータ、レイアウトパラメータ(例えば、ピッチウォーク、載置縁誤差)、膜厚、組成パラメータ、またはパラメータの任意の組み合わせが、前述の技術を使用して測定され得る。
【0093】
非限定的な例として、形状充填により測定される構造体は、線空間グレーティング構造体、FinFet構造体、SRAMデバイス構造体、フラッシュメモリ構造体、およびDRAMメモリ構造体を含む。
【0094】
別のさらなる態様において、ウェハ上に位置する計測ターゲットは、設計基準寸法ターゲットである。言い換えると、計測ターゲットは、根本となる半導体製造プロセスに適用可能な設計基準寸法を忠実に守る。いくつかの例において、計測ターゲットは、好ましくは、アクティブダイ領域内に位置する。いくつかの例において、計測ターゲットは、15マイクロメートル×15マイクロメートル以下の寸法を有する。いくつかの他の例において、計測ターゲットは、スクライブ線内に位置するか、または別の方式でアクティブダイ領域の外側に位置する。
【0095】
いくつかの例において、モデルベース測定は、1つの目的とするパラメータを推定するために形状充填を用いて実施される。したがって、目的とするパラメータと関連付けられた測定モデルは、個別に最適化される。各々の目的とするパラメータを個別に測定することによって、計算負荷が低減され、根本となる測定の性能は、異なる波長、測定サブシステム、および各々の個別のパラメータに対して最適化される測定方法を選択することによって最大限にされ得る。加えて、各々の目的とするパラメータに対して、異なるモデルベース測定ソルバが、選択され得るか、または異なって構成され得る。
【0096】
しかしながら、いくつかの他の例において、モデルベース測定は、複数の目的とするパラメータを並行して推定するために形状充填を用いて実施される。したがって、測定モデルは、複数の目的のパラメータを解明するように開発される。
【0097】
いくつかの例において、特定の測定箇所で実施される目的とするパラメータの測定は、データがウェハ上の複数箇所から収集され得るとしても、その特定の測定箇所のみから収集されるデータに依存する。いくつかの他の例において、ウェハまたはウェハのサブセットにわたって複数箇所から収集される測定データが測定分析のために使用される。これは、ウェハにわたるパラメータ変動を捕捉するのに望ましい場合がある。
【0098】
いくつかの例において、目的とするパラメータの測定は、シングルターゲット技術、マルチターゲット技術、およびスペクトル前方フィード技術を含む複数の異なる測定技術を用いて、充填された計測ターゲットに基づいて実施される。測定されるパラメータの精度は、側方フィード分析、前方フィード分析、および並行分析の任意の組み合わせによって改善され得る。側方フィード分析は、同じ試料の異なる領域において複数のデータセットを取り、第1のデータセットから決定された共通パラメータを分析のために第2のデータセットに渡すことを指す。前方フィード分析は、異なる試料においてデータセットを取り、段階的な複製精密パラメータ前方フィード手法を使用して共通パラメータを次の分析へと前へ渡すことを指す。並行分析は、少なくとも1つの共通パラメータがフィッティング中に結合される複数のデータセットに対する非線形フィッティング方法論の並行または同時応用を指す。
【0099】
複数のツールおよび構造体分析は、回帰、ルックアップテーブル(すなわち「ライブラリ」一致)、または複数データベースの別のフィッティング手順に基づいた、前方フィード、側方フィード、平行分析を指す。複数のツールおよび構造体分析のための例示的な方法およびシステムは、2009年1月13日発行のKLA−Tencor Corp.に対する米国特許第7,478,019号に記載されており、その全体は本願に引用して援用する。
【0100】
さらに別の態様において、本明細書に説明されるように得られた測定結果は、プロセスツール(例えば、リソグラフィツール、エッチングツール、堆積ツールなど)にアクティブフィードバックを提供するために使用され得る。例えば、本明細書に説明される方法およびシステムを使用して決定される限界寸法の値は、リソグラフィシステムを調整して所望の出力を達成するためにリソグラフィツールへ通信され得る。同様のやり方で、エッチングパラメータ(例えば、エッチング時間、拡散率など)または堆積パラメータ(例えば、時間、濃度など)が、それぞれエッチングツールまたは堆積ツールにアクティブフィードバックを提供するために測定モデルに含まれ得る。いくつかの例において、測定されたデバイスパラメータ値に基づいて決定されるプロセスパラメータに対する修正が、リソグラフィツール、エッチングツール、または堆積ツールに通信され得る。
【0101】
本開示全体にわたって説明される様々なステップは、単一のコンピュータシステム130、複数のコンピュータシステム130、または複数の異なるコンピュータシステム130によって実行され得ることが理解されるべきである。さらには、分光エリプソメータ101など、システム100の異なるサブシステムが、本明細書に説明されるステップの少なくとも一部分を実行するのに好適なコンピュータシステムを含み得る。したがって、前述の説明は、本発明に対する制限として解釈されるべきではなく、単なる例証として解釈されるべきである。さらに、計算システム130は、本明細書に説明される方法実施形態のいずれかの任意の他のステップを実施するように構成され得る。
【0102】
計算システム130は、限定されるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、パラレルプロセッサ、または当該技術において知られている任意の他のデバイスを含み得る。一般に、「計算システム」という用語は、メモリ媒体からの命令を実行する1つ以上のプロセッサを有する任意のデバイスまたはデバイスの組み合わせを包含するように広く定義され得る。一般に、計算システム130は、測定システム100などの測定システムと統合され得るか、または代替的に、任意の測定システムとは完全にもしくは部分的に別個であり得る。この意味では、計算システム130は、遠隔に位置し、任意の測定源から測定データを受信し、計測システム100の任意の要素に命令信号を伝送し得る。
【0103】
本明細書に説明されるものなどの方法を実施するプログラム命令134は、ワイヤ、ケーブル、ワイヤレス伝送リンクなどの伝送媒体を介して伝送され得る。プログラム命令134を格納するメモリ132は、リードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気もしくは光学ディスク、または磁気テープなどのコンピュータ可読媒体を含み得る。
【0104】
加えて、計算システム130は、当該技術において知られている任意の様式で、分光計104、またはエリプソメータ101の発光体サブシステム102に通信可能に接続され得る。
【0105】
計算システム130は、ワイヤ線および/またはワイヤレス部分を含み得る伝送媒体によって、システムのサブシステム(例えば、分光計104、発光体102、蒸気注入システム120、および同様のもの)からデータまたは情報を受信および/または獲得するように構成され得る。この様式では、伝送媒体は、コンピュータシステム130とシステム100の他のサブシステムとの間のデータリンクとしての役割を果たし得る。さらに、計算システム130は、記憶媒体(すなわちメモリ)を介して測定データを受信するように構成され得る。例えば、エリプソメータ101の分光計を使用して得られたスペクトル結果は、永久または半永久メモリデバイス(図示せず)に格納され得る。これに関して、スペクトル結果は、外部システムからインポートされ得る。さらには、コンピュータシステム130は、伝送媒体を介して外部システムからデータを受信し得る。
【0106】
計算システム130は、ワイヤ線および/またはワイヤレス部分を含み得る伝送媒体によって、システムのサブシステム(例えば、分光計104、発光体102、蒸気注入システム120、および同様のもの)にデータまたは情報を伝送するように構成され得る。この様式では、伝送媒体は、コンピュータシステム130とシステム100の他のサブシステムとの間のデータリンクとしての役割を果たし得る。さらに、計算システム130は、記憶媒体(すなわちメモリ)を介して命令信号および測定結果を伝送するように構成され得る。例えば、スペクトルデータの分析により得られた測定結果115は、永久または半永久メモリデバイス(図示せず)に格納され得る。これに関して、スペクトル結果は、外部システムへエクスポートされ得る。さらには、コンピュータシステム130は、伝送媒体を介して外部システムにデータを送信し得る。加えて、目的とするパラメータの決定された値は、メモリに格納される。例えば、この値は、オンボード測定システム100、例えば、メモリ132に格納され得るか、または(例えば出力信号115により)外部メモリデバイスに通信され得る。
【0107】
本明細書に説明されるように、「毛管凝縮」という用語は、ガス吸着または細孔凝縮など、蒸発充填物質の凝縮による多孔性構造体の充填の任意の物理的プロセスを含む。この意味では、「毛管凝縮」、「細孔凝縮」、および「吸着」という用語は、同じ意味で使用され、本特許文書の目的のために同じ物理的プロセスを説明する。
【0108】
本明細書に説明されるように、「限界寸法」という用語は、構造体の任意の限界寸法(例えば、下部限界寸法、中部限界寸法、上部限界寸法、側壁角度、グレーティング高さなど)、任意の2つ以上の構造体間の限界寸法(例えば、2つの構造体間の距離)、および2つ以上の構造体間の変位(例えば、オーバーレイしているグレーティング構造体間のオーバーレイ変位)を含む。構造体は、3次元構造体、パターン化構造体、オーバーレイ構造体等を含み得る。
【0109】
本明細書に説明されるように、「限界寸法応用」または「限界寸法測定応用」という用語は、任意の限界寸法測定を含む。
【0110】
本明細書に説明されるように、「計測システム」という用語は、限界寸法計測、オーバーレイ計測、焦点/照射量計測、および組成計測などの測定用途を含む、試料を任意の見方で特徴付けるために少なくとも部分的に用いられる任意のシステムを含む。しかしながら、そのような技術用語は、本明細書に記載されるような「計測システム」という用語の範囲を制限しない。加えて、計測システム100は、パターン化されたウェハおよび/またはパターン化されていないウェハの測定のために構成され得る。計測システムは、LED検査ツール、端部検査ツール、裏面検査ツール、マクロ検査ツール、または多モード検査ツール(同時に1つ以上のプラットフォームからのデータを伴う)などの検査ツール、および限界寸法データに基づいたシステムパラメータの較正から恩恵を得る任意の他の計測または検査ツールとして構成され得る。この特許文書の目的においては、「計測」システムおよび「検査」システムは同義語である。
【0111】
試料を処理するために使用され得る半導体処理システム(例えば、検査システムまたはリソグラフィシステム)について、様々な実施形態が本明細書において説明される。「試料」という用語は、本明細書においては、当該技術において知られている手段で処理され得る(例えば、印刷される、または欠陥を検査される)ウェハ、レチクル、または任意の他のサンプルを指すために使用される。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ウェハ」という用語は、概して、半導体または非半導体材料で形成された基板を指す。例としては、限定するものではないが、単結晶シリコン、ガリウムひ素、およびリン化インジウムが挙げられる。そのような基板は、半導体製作設備において一般的に見られるおよび/または処理され得る。いくつかの場合において、ウェハは、基板のみを含み得る(すなわちベアウェハ)。代替的に、ウェハは、基板上に形成された異なる材料の1つ以上の層を含み得る。ウェハ上に形成された1つ以上の層は、「パターン化されている」場合と、「パターン化されていない」場合がある。例えば、ウェハは、繰り返し可能なパターン特徴を有する複数のダイを含み得る。
【0113】
「レチクル」は、レチクル製作プロセスの任意の段階にあるレチクルまたは完成したレチクルであり得、完成したレチクルは、半導体製作設備における使用のために解放される場合とそうでない場合がある。レチクル、または「マスク」は、概して、実質的に透明の基板であって、その上に実質的に不透明の領域が形成され、かつパターンで構成される基板として定義される。基板は、例えば、アモルファスSiO2などのガラス材料を含み得る。レチクルは、レチクル上のパターンがレジストに転写され得るように、リソグラフィプロセスの曝露ステップの間にレジスト被覆されたウェハの上に設置され得る。
【0114】
ウェハ上に形成された1つ以上の層は、パターン化されている場合とパターン化されていない場合がある。例えば、ウェハは、各々が繰り返し可能なパターン特徴を有する複数のダイを含み得る。そのような材料層の形成および処理は、最終的に完成したデバイスをもたらし得る。多くの異なる種類のデバイスがウェハ上に形成され得、ウェハという用語は、本明細書で使用される場合、当該技術において知られている任意の種類のデバイスが上に製作されるウェハを包含することが意図される。
【0115】
1つ以上の例示的な実施形態において、説明される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせにおいて実装され得る。ソフトウェアに実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令またはコードとして格納され得るか、伝送され得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体、および1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの移送を促進する任意の媒体を含む通信媒体の両方を含む。記憶媒体は、汎用または特殊目的コンピュータによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり得る。限定するものでなく、例として、そのようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROM、もしくは他の光学ディスクストレージ、磁気ディスクストレージもしくは他の磁気ストレージデバイス、あるいは、命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコード手段を携帯または格納するために使用され得、かつ汎用もしくは特殊目的コンピュータまたは汎用もしくは特殊目的プロセッサによってアクセスされ得る任意の他の媒体を含み得る。また、任意の接続が、コンピュータ可読媒体と適切に呼ばれる。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、または赤外、無線、およびマイクロ波などのワイヤレス技法を使用してウェブサイト、サーバ、または他のリモートソースから伝送される場合、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、DSL、または赤外、無線、およびマイクロ波などのワイヤレス技法は、媒体の定義に含まれる。ディスクは、本明細書で使用される場合、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光学ディスク、デジタル多目的ディスク(DVD)、フロッピディスク、およびブルーレイディスクを含み、ディスク(disk)は通常データを磁気的に再生し、ディスク(disc)はレーザを用いてデータを光学的に再生する。上の組み合わせもまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0116】
ある特定の実施形態が教示的目的のために上に説明されるが、本特許文書の教示は、汎用性を有し、上に説明される特定の実施形態に制限されない。したがって、説明された実施形態の様々な特徴の様々な変形、適合、および組み合わせが、特許請求の範囲に記されるように本発明の範囲から逸脱することなく実践され得る。