(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体を処理する方法であって、該被処理体は、配線を有する配線層、該配線層上に設けられた拡散防止膜、該拡散防止膜上に設けられた絶縁膜、該絶縁膜上に設けられ開口を提供する金属マスクを備え、該絶縁膜は、該開口から露出される箇所の一部に設けられたトレンチ、および該トレンチの一部に設けられた第1のビア孔を備え、該方法は、
前記被処理体の前記トレンチと前記第1のビア孔の側面とに犠牲膜を形成する第1の工程と、
前記犠牲膜および前記絶縁膜に対しエッチングを行って、前記第1のビア孔の底面の更に深い位置に第2のビア孔を形成し、該トレンチおよび該第1のビア孔から該犠牲膜を除去する第2の工程と、
を備える方法。
前記絶縁膜の材料が細孔を有する多孔質材である場合に、前記第1の工程は、前記犠牲膜を形成する前に、前記トレンチの表面に露出される該多孔質材の表層に位置する該細孔を封孔する処理を行う、
請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
前記第2の工程において行われる前記犠牲膜および前記絶縁膜に対するエッチングの実行時間は前記トレンチの深さを該犠牲膜のエッチングレートで割って得られる商の値以上であり、該犠牲膜のエッチングレートと該絶縁膜のエッチングレートとは同程度である、
請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一実施形態に係る、被処理体を処理する方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MTは、特に、多層配線構造の作製において大気環境に被処理体が搬送される前に行われる被処理体の処理を含む方法である。
【0021】
図2は、
図1に示す方法の適用対象である被処理体の一例を示す断面図である。
図2に示す被処理体(以下、「ウエハW」という)は、デュアルダマシン法を用いて多層配線構造を作製する途中に得られるものである。ウエハWは、配線層WLを有している基板である。配線層WLは、第1の絶縁膜IS1、バリアメタル膜BL、および配線CWを含んでいる。ウエハWは、拡散防止膜DL、第2の絶縁膜IS2、酸化膜OX、金属マスクMK、有機層OL、反射防止膜AL、およびレジストマスクRMを更に有している。
【0022】
第1の絶縁膜IS1は、絶縁材料および/または低誘電率材料から構成されている。第1の絶縁膜IS1は、例えば、絶縁材料の一例であるSiO
2または低誘電率材料の一例であるSiOCHから形成された単層膜、絶縁材料膜と低誘電率膜とを含む多層膜、または、複数の低誘電率膜を含む多層膜であってもよい。第1の絶縁膜IS1にはトレンチが形成されている。配線CWは、第1の絶縁膜IS1のトレンチに埋め込まれている。配線CWの材料は、例えば、銅等の金属である。バリアメタル膜BLは、第1の絶縁膜IS1においてトレンチを画成する面と配線CWとの間に設けられている。バリアメタル膜BLの材料は、例えば、Ta、TaN等の金属である。また、配線CWの材料は、銅等に限定されず、TiやTiN等が用いられる。その場合、バリアメタル膜BLの材料は、例えば、タングステンやコバルト等の金属が用いられる。
【0023】
拡散防止膜DLは、配線層WL上に設けられている。拡散防止膜DLは、例えば、SiC、SiCN、またはSiN等から構成され得る。また、拡散防止膜DLは、各々がSiC、SiCN、またはSiNから形成された複数の膜を含む多層膜であってもよい。
【0024】
第2の絶縁膜IS2は、拡散防止膜DL上に設けられている。第2の絶縁膜IS2は、一実施形態において、低誘電率の特性を有する。第2の絶縁膜IS2は、シリコン酸化膜、低誘電率の特性を有するシリコン含有膜、または、シリコン酸化膜と低誘電率の特性を有するシリコン含有膜とが積層される膜、等であり得る。例えば、第2の絶縁膜IS2は、SiOCHの単層膜、シリコン酸化膜(SiO
2)と低誘電率膜とを含む多層膜、または、複数の低誘電率膜を含む多層膜であってもよい。また、第2の絶縁膜IS2は、低誘電率の特性を有することに限定されるものではなく、シリコン酸化膜(SiO
2)の単層膜であってもよい。
【0025】
酸化膜OXは、第2の絶縁膜IS2上に設けられている。酸化膜OXも絶縁膜の一種である。酸化膜OXは、例えば、TEOSガスを用いたCVD法によって形成されたシリコン酸化膜(SiO
2)であり得る。金属マスクMKは、酸化膜OX上(第2の絶縁膜IS2上)に設けられている。金属マスクMKは、開口OPを提供し、開口OPによって提供されるパターン、すなわち、第2の絶縁膜IS2に転写されるパターンを有している。このように、金属マスクMKには、第2の絶縁膜IS2に形成されるトレンチ(
図15および
図16に示すトレンチTR)に対応した開口OPが形成されている。金属マスクMKは、例えば、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)から構成され得る。
【0026】
有機層OLは、金属マスクMKを覆い、且つ、金属マスクMKの開口を埋めるように設けられている。反射防止膜ALは有機層OL上に設けられている。レジストマスクRMは、反射防止膜AL上に設けられている。レジストマスクRMは、開口MOによって提供されるパターン、すなわち、第2の絶縁膜IS2に転写されるパターンを有している。このように、レジストマスクRMには、第2の絶縁膜IS2に形成されるビア孔(
図15および
図16に示すビア孔VH)に対応した開口MOが形成されている。
【0027】
図3は、
図1に示す方法の実施に用いることが可能な基板処理システムの一例を概略的に示す図である。
図3に示す基板処理システム110は、ローダモジュール112、ロードロックモジュール141、ロードロックモジュール142、トランスファモジュール116、および、複数のプロセスモジュール(プロセスモジュール181、プロセスモジュール182、プロセスモジュール183、および、プロセスモジュール184等)を備えている。
【0028】
ローダモジュール112は、大気圧環境下においてウエハWを搬送する装置である。ローダモジュール112には、複数の台120が取り付けられている。複数の台120の各々の上には、複数のウエハを収容することが可能なフープ122が搭載されている。これらフープ122内では、ウエハは大気環境下で保管される。
【0029】
ローダモジュール112は、搬送ロボット112rを有している。搬送ロボット112rは、ローダモジュール112の搬送チャンバ112cに設けられている。搬送チャンバ112cは、ローダモジュール112の内部に設けられている。ローダモジュール112には、ロードロックモジュール141およびロードロックモジュール142が接続されている。搬送ロボット112rは、フープ122とロードロックモジュール141の間、または、フープ122とロードロックモジュール142の間においてウエハWを搬送することが可能である。
【0030】
ロードロックモジュール141およびロードロックモジュール142はそれぞれ、予備減圧のためのチャンバ141cおよびチャンバ142cを有する。ロードロックモジュール141およびロードロックモジュール142には、トランスファモジュール116が接続されている。トランスファモジュール116は、減圧可能な搬送チャンバ116cを提供し、搬送チャンバ116c内に搬送ロボット116rを有している。トランスファモジュール116には、複数のプロセスモジュール181〜184が接続されている。トランスファモジュールの搬送ロボット116rは、ロードロックモジュール141およびロードロックモジュール142の何れかと複数のプロセスモジュール181〜184の何れかとの間、および、複数のプロセスモジュール181〜184のうち任意の二つのプロセスモジュールの間においてウエハWを搬送することが可能である。
【0031】
複数のプロセスモジュール181〜184の各々は、ウエハWに対する専用処理を行うための基板処理装置である。プロセスモジュール181〜184のうち一つには、
図4に示すプラズマ処理装置10が用いられている。
【0032】
一実施形態においては、基板処理システム110は、制御部Cntを更に備える。制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、搬送ロボット112rおよび搬送ロボット116rの動作、各プロセスモジュール(プロセスモジュール181〜184)の各部の動作等、基板処理システム110の各部の動作を、統括的に制御する。制御部Cntは、特に、方法MTの実行に係る基板処理システム110の各部の動作を制御する。制御部Cntでは、入力装置を用いてオペレータが基板処理システム110を管理するためのコマンドの入力操作などを行うことができ、表示装置により、基板処理システム110の稼働状況を可視化して表示することができる。制御部Cntの記憶部には、基板処理システム110で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラム、および、処理条件に応じて基板処理システム110の各部に処理を実行させるためのプログラム、すなわち、処理レシピが格納される。制御部Cntの記憶部には、方法MTの実行に係る制御プログラムおよび処理レシピが格納される。
【0033】
図4は、
図1に示す方法の実施に用いることが可能なプラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。
図4に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマ処理装置であり、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12の材料は、例えばアルミニウムである。処理容器12の内壁面の材料は、陽極酸化処理が施されたアルミニウムである。処理容器12は、保安接地されている。
【0034】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14は、処理容器12の底部が水平面に沿って延びるようにプラズマ処理装置10が設置されている場合に、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0035】
載置台PDは、載置台PDの上面においてウエハWを保持するよう構成されている。載置台PDは、下部電極LEおよび静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18aおよび第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、例えばアルミニウム等の金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0036】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層または絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0037】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジおよび静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、ウエハに対するプラズマ処理の均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、プラズマ処理に応じて適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコン(S)、SiC、石英から構成され得る。
【0038】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24とチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0039】
ヒータHTは、加熱素子であり、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれる。ヒータ電源HPは、ヒータHTに接続される。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることによって、載置台PDの温度が調整され、そして、載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整される。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵され得る。
【0040】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0041】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台PDの上方に設けられている。上部電極30と載置台PDとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0042】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、天板34および支持体36を含み得る。天板34は処理空間Sに面しており、天板34には複数のガス噴出孔34aが設けられている。天板34は、一実施形態ではシリコンから構成されている。
【0043】
支持体36は、天板34を脱着自在に支持するものであり、例えばアルミニウム等の導電性材料から構成され得る。支持体36は、水冷構造を有し得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、ガス噴出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0044】
ガス供給管38には、バルブ群42および流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。一例では、ガスソース群40は、一以上のフルオロカーボンガスのソース、一以上のハイドロフルオロカーボンガスのソース、炭化水素ガスのソース、希ガスのソース、窒素ガス(N
2ガス)のソース、水素ガス(H
2ガス)のソース、一以上の酸素含有ガスのソース、およびシリコン含有ガスのソースを含んでいる。一以上のフルオロカーボンガスのソースは、一例では、C
4F
8ガスのソース、CF
4ガスのソース、C
4F
6ガス、およびC
5F
8ガスのソースを含み得る。一以上のハイドロフルオロカーボンガスのソースは、一例では、CHF
3ガスのソース、CH
2F
2ガスのソース、およびCH
3Fガスのソースを含み得る。炭化水素ガスのソースは、一例では、CH
4ガス、C
2H
2ガス、C
2H
4ガス、C
2H
6ガス、C
3H
4ガス、C
3H
6ガス、C
3H
8ガス、C
4H
4ガス、C
4H
6ガス、C
4H
8ガス、またはC
4H
10ガスのソースを含み得る。希ガスのソースは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス等の任意の希ガスのソースであることができ、一例では、Arガスのソースである。一以上の酸素含有ガスのソースは、一例では、酸素ガス(O
2ガス)のソースを含む。一以上の酸素含有ガスのソースは、COガスのソースおよび/またはCO
2ガスのソースを更に含んでいてもよい。シリコン含有ガスのソースは、一例では、アミノシランガス、シリコンアルコキシド系ガス、ハロゲン化シリコンを含み得る。
【0045】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラ等の複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブおよび流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0046】
プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12の内壁面等の壁面にエッチング副生物が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0047】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には、複数の貫通孔を有する排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0048】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62および第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成のための第1の高周波を発生する電源であり、例えば、27〜100[MHz]の周波数の高周波を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側のインピーダンスとを整合させるための回路を有している。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されてもよい。
【0049】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための、すなわちバイアス用の第2の高周波を発生する電源であり、例えば、400[kHz]〜13.56[MHz]の範囲内の周波数の第2の高周波を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側のインピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0050】
プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、処理空間S内に存在する正イオンを天板34に引き込むための電圧を上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。別の一例においては、電源70は、比較的低周波の交流電圧を発生する交流電源であってもよい。
【0051】
以下、再び
図1を参照して、方法MTについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、
図4に示すプラズマ処理装置10を一つのプロセスモジュールとして備える基板処理システム110を用いて、
図2に示すウエハWを処理する例について説明する。以下の説明では、
図8〜
図16を参照する。
図8〜
図16は、
図1に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を示す拡大断面図である。
【0052】
まず、方法MTでは、
図2に示すウエハWが、フープ122から、ローダモジュール112、ロードロックモジュール141またはロードロックモジュール142の何れか、およびトランスファモジュール116を介して、プロセスモジュール、すなわち、プラズマ処理装置10の処理容器12内に搬入される。処理容器12内に搬入されたウエハWは、載置台PD上に載置され、載置台PDによって保持される。方法MT(特に、後述する工程ST1cから工程ST1eまで)は、真空一貫の環境において実行される。方法MTは、単一の処理容器12内(同一のプロセスモジュール)において実行される。一実施形態では、方法MTはエッチングに係る処理を行う処理容器(プロセスモジュール)と成膜に係る処理を行う処理容器(プロセスモジュール)とを別々に用いることもできるが、この場合も、方法MT(特に、後述する工程ST1cから工程ST1eまで)は真空一貫の環境において実行される。
【0053】
次いで、方法MTでは、工程ST1が実行される。工程ST1では、後述の工程ST2の処理が適用される状態までウエハWが処理される。工程ST1では、反射防止膜AL、有機層OL、酸化膜OX、および第2の絶縁膜IS2がエッチングされる。以下、工程ST1について詳細に説明する。
図5は、工程ST1の詳細の一例を示す流れ図である。
【0054】
図5に示すように、工程ST1は、工程ST1a、工程ST1b、工程ST1c、工程ST1d、工程ST1eを含んでいる。工程ST1では、まず、工程ST1aが実行される。工程ST1aでは、レジストマスクRMの開口MOから露出した箇所において反射防止膜ALがエッチングされる。このために、工程ST1aでは、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、例えば、フルオロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、および酸素ガスを含み得る。フルオロカーボンガスとしては、例えば、CF
4ガスが用いられ得る。ハイドロフルオロカーボンガスとしては、例えば、CHF
3ガスが用いられ得る。工程ST1aでは、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST1aでは、第1の高周波電源62からの第1の高周波、および、第2の高周波電源64からの第2の高周波が、下部電極LEに供給される。
【0055】
工程ST1aでは、処理ガスのプラズマが生成され、レジストマスクRMの開口MOから露出されている箇所において、反射防止膜ALがエッチングされる。この結果、
図8に示すように、反射防止膜ALの全領域のうち、レジストマスクRMの開口MOから露出している部分が除去されて、反射防止膜ALに開口MO1が形成される。
【0056】
工程ST1aに引き続き、工程ST1bが実行される。工程ST1bでは、有機層OLがエッチングされる。このために、工程ST1bでは、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。一例の工程ST1bでは、酸素ガスおよび一酸化炭素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給され、次いで、水素ガスおよび窒素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。工程ST1bでは、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST1bでは、第1の高周波が、第1の高周波電源62から下部電極LEに供給される。
【0057】
工程ST1bでは、処理ガスのプラズマが生成され、開口MO1から露出している箇所において有機層OLがエッチングされ、レジストマスクRMもエッチングされる。この結果、
図9に示すように、有機層OLの全領域のうち、開口MO1から露出した部分が除去されて、有機層OLに開口MO2が形成される。
【0058】
なお、本実施形態において、開口MOによって提供されるパターンを有するレジストマスクRMを用いているが、有機層OLに開口MO2が形成されるならば、これに限定されない。例えば、有機層OL上に設けられたパターンを有するタングステン等の金属マスクによって、有機層OLがエッチングされ、その後、タングステン等の当該金属マスクが除去される態様でもよい。
【0059】
工程ST1bに引き続き、工程ST1cが実行される。工程ST1cでは、酸化膜OXおよび第2の絶縁膜IS2がエッチングされる。このために、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。一例の工程ST1cでは、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給され、次いで、ハイドロフルオロカーボンガス、窒素ガス、および酸素ガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。フルオロカーボンガスとしては、例えば、CF
4ガスおよびC
4F
8ガスが用いられ得る。ハイドロフルオロカーボンガスとしては、例えば、CH
2F
2ガスが用いられ得る。工程ST1cでは、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST1cでは、第1の高周波電源62からの第1の高周波および第2の高周波電源64からの第2の高周波が、下部電極LEに供給される。
【0060】
工程ST1cでは、処理ガスのプラズマが生成され、酸化膜OXおよび第2の絶縁膜IS2がエッチングされる。第2の絶縁膜IS2は、第2の絶縁膜IS2の膜厚方向の途中までエッチングされる。工程ST1cでは、反射防止膜ALもエッチングされる。この結果、
図10に示すように、酸化膜OXの全領域および第2の絶縁膜IS2の全領域のうち、開口MO2から露出した部分が除去されて、酸化膜OXに開口が形成され、第2の絶縁膜IS2にビア孔VH1(第1のビア孔)が形成される。ビア孔VH1は、第2の絶縁膜IS2のうち、金属マスクMKの開口OPから露出される箇所の一部(開口OPから露出された箇所のうち当該箇所の中央を含む部分)に設けられている。工程ST1cにおいては、反射防止膜ALは除去され、有機層OLの膜厚が若干減少する。
【0061】
工程ST1cに引き続き、工程ST1dが実行される。工程ST1dでは、有機層OLが除去される。このために、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、二酸化炭素ガスを含み得る。工程ST1dでは、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST1dでは、第1の高周波が、第1の高周波電源62から下部電極LEに供給される。
【0062】
工程ST1dでは、処理ガスのプラズマが生成され、有機層OLのアッシングが行われる。この結果、
図11に示すように、有機層OLが除去され、金属マスクMKが露出する。工程ST1dの結果、露出されたウエハWの表面FCは、露出された金属マスクMKの表面、酸化膜OXの表面、ビア孔VH1の側面SF、底面BFを含む。開口OPを有する金属マスクMKは、酸化膜OXの表面に開口TOを提供する。これにより、金属マスクMKの開口OPと酸化膜OXの表面の開口TOからなるトレンチTR1が形成され、さらにトレンチTR1の一部にビア孔VH1が設けられた形状となる。なお、
図11に示す構成では、金属マスクMKの開口OPはビア孔VH1の幅より広い幅を有しているが、このような場合に限らない。開口OPの幅はビア孔VH1の幅と同等の場合も可能であり、ビア孔VH1の幅より小さい場合も可能である。ビア孔VH1がビア孔VH1の幅より小さい場合、工程ST1cが実行される際、酸化膜OXおよび第2の絶縁膜IS2がエッチングされると同時に金属マスクMKの一部がエッチングされ、金属マスクMKのうちエッチングされた部分の幅がビア孔VH1の幅と同等となる。
【0063】
工程ST1dに引き続き、工程ST1eが実行される。工程ST1eでは、第2の絶縁膜IS2がエッチングされる。以下、工程ST1eについて詳細に説明する。
図6は、
図5に示す工程ST1eの詳細の一例を示す流れ図である。
図6に示すように、工程ST1eは、シーケンスSQ1、工程ST1ecを含む。シーケンスSQ1は、工程ST1ea(第1の工程)、工程ST1eb(第2の工程)を含む。
【0064】
工程ST1eでは、まず、工程ST1eaが実行される。工程ST1eaでは、
図12に示すように、プラズマ処理装置10の処理容器12内に配置されたウエハWのトレンチTR1とビア孔VH1の側面SFとに犠牲膜EXを形成する。一実施形態において、犠牲膜EXは、シリコン酸化膜である。また、例えば低誘電率の特性を有し得る。後述するST1eb工程において、犠牲膜EXと、酸化膜OXおよび第2の絶縁膜IS2を同時にエッチングされるが、それぞれ、同程度のエッチングレートを有することが望ましいため、犠牲膜EXは、酸化膜OXまたは第2の絶縁膜IS2に含まれる材質が望ましい。また、犠牲膜EXはST1ebにおいて、エッチング除去されるが、場合によっては残渣として残留する可能性があり、その場合、後工程において第2の絶縁膜IS2の一部となり、絶縁膜の誘電率増加の原因となることが考えられる。その側面から考察しても、犠牲膜EXは、酸化膜OXまたは第2の絶縁膜IS2に含まれる材質が望ましい。なお、工程ST1eaにおいて、犠牲膜EXは、コンフォーマルに形成される。
【0065】
工程ST1eaの詳細について説明する。
図7は、
図6に示す工程ST1eaの詳細の一例を示す流れ図である。
図7に示す工程ST1eaは、主要な工程として、ALD(Atomic Layer Deposition)方式を用いてビア孔VH1の側面SFを含むウエハWの表面FCに犠牲膜EXを形成する工程(シーケンスSQ2)と、ウエハWの表面FCに形成された犠牲膜EXに対しエッチング(エッチバック)を行って、ビア孔VH1の底面BFを露出させる工程(工程ST1ea6)と、を備える。
【0066】
より詳細には、工程ST1eaは、
図7に示すように、シーケンスSQ2(第3の工程)、工程ST1ea5、工程ST1ea6(第4の工程)を備える。シーケンスSQ2は、工程ST1ea1、工程ST1ea2、工程ST1ea3、工程ST1ea4を備える。工程ST1eaでは、シーケンスSQ2を一回以上実行する。工程ST1ea1では、処理容器12内に、前駆体ガスとしてシリコンを含有する第1の処理ガスG1を導入する。工程ST1ea1では、第1の処理ガスG1のプラズマを生成しない。第1の処理ガスG1は、アミノシラン系ガスである。工程ST1ea1では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち前駆体ガスとして選択したガスソースから、アミノシラン系ガスの第1の処理ガスG1を処理容器12内に供給する。一実施形態において、第1の処理ガスG1は、アミノシラン系ガスとして、モノアミノシラン(H
3−Si−R(Rはアミノ基))が用いられ得る。
【0067】
また、アミノシラン系ガスは、1〜3個のケイ素原子を有し得るアミノシランを含むことができ、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを含むことができる。1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランは、1〜3個のアミノ基を有するモノシラン、1〜3個のアミノ基を有するジシラン、または、1〜3個のアミノ基を有するトリシランであり得る。さらに、上記のアミノシランは、置換されていてもよいアミノ基を有し得る。アミノシラン系ガスは、BTBAS(Bistertiarybutylaminosilane)、BDMAS(Bisdimethylaminosilane)、BDEAS(Bisdiethylaminosilane)、DMAS(dimethylaminosilane)、DEAS(diethylaminosilane)、DPAS(Dipropylaminosilane)、BAS(Butylaminosilane)、BEMAS(Bisethylmethylaminosilane)、または、TDMAS(Tridimethylaminosilane)であり得る。また、アミノシラン系ガスは、アルキルシラン基を有するアミノシラン系ガスである、HDMS(hexamethyldisilazane)、DMSDMA(Dimethylsilyldimethylamine)、TMSDMA(Dimethilaminotrimethylsilane)、TMMAS(Trimethylmethylaminosilane)、TMICS(Trimethyl(isocyanato)silane)、TMSA(Trimethylsilylacetylene)、または、TMSC(Trimethylsilylcyanide)であり得る。前駆体ガスとしては、アミノシラン系ガスに限定されるものではなく、TEOS(Tetraethoxysilan)に代表されるシリコンアルコキシド系ガスであってもよい。また、SiCl
4、SiF
4などのハロゲン化シリコンを含み得る。工程ST1ea1では、第1の処理ガスG1のプラズマを生成しないが、これに限定されるものではない。
【0068】
図17の(a)部に示すように、第1の処理ガスG1の分子が、反応前駆体としてウエハWの表面FCに付着する。第1の処理ガスG1の分子は、化学結合に基づく化学吸着によってウエハWの表面FCに付着するのであり、プラズマは用いられない。第1の処理ガスG1の分子がウエハWの表面FCに付着することによって、
図17の(b)部に示すように、反応前駆体の層Ly1が表面FCに形成される。層Ly1の材料は、第1の処理ガスG1の分子を含む。
【0069】
工程ST1ea1に引き続き、工程ST1ea2が実行される。工程ST1ea2では、処理容器12内の空間をパージする。具体的には、工程ST1ea1において供給された第1の処理ガスG1が排気される。工程ST1ea2では、パージガスとして窒素ガス等の不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST1ea2のパージは、不活性ガスを処理容器12内に流すガスパージ、または真空引きによるパージの何れであってもよい。工程ST1ea2では、ウエハW上に過剰に付着した分子も除去され得る。以上によって、反応前駆体の層Ly1は極めて薄い単分子層となる。
【0070】
工程ST1ea2に引き続き、工程ST1ea3が実行される。工程ST1ea3では、処理容器12内において酸素ガスを含む第2の処理ガスのプラズマP1を生成する。工程ST1ea3では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから、酸素ガスを含む第2の処理ガスを処理容器12内に供給する。第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。この場合、第2の高周波電源64のバイアス電力を印加することもできる。第1の高周波電源62を用いずに第2の高周波電源64のみを用いてプラズマを生成することもできる。排気装置50を動作させることによって、処理容器12内の空間の圧力を所定の圧力に設定する。
【0071】
上述した工程ST1ea1の実行によってウエハWの表面に付着した分子(層Ly1の単分子層を構成する分子)は、シリコンと水素との結合を含む。シリコンと水素との結合エネルギーは、シリコンと酸素との結合エネルギーよりも低い。従って、工程ST1ea3において、
図17の(b)部に示すように、酸素ガスを含む第2の処理ガスのプラズマP1が生成されると、酸素の活性種、例えば、酸素ラジカルが生成され、層Ly1の単分子層を構成する分子の水素が酸素に置換され、
図17の(c)部に示すように、シリコン酸化膜である層Ly2が単分子層として形成される。
【0072】
工程ST1ea3に引き続き、工程ST1ea4が実行される。工程ST1ea4では、処理容器12内の空間をパージする。具体的には、工程ST1ea3において供給された第2の処理ガスが排気される。工程ST1ea4では、パージガスとして窒素ガス等の不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST1ea4のパージは、不活性ガスを処理容器12内に流すガスパージ、または真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0073】
以上説明したシーケンスSQ2においては、工程ST1ea2においてパージが行われ、工程ST1ea2に引き続く工程ST1ea3において層Ly1を構成する分子の水素が酸素に置換される。したがって、ALD法と同様に、1回のシーケンスSQ2の実行によって、シリコン酸化膜の層Ly2を、ウエハWの表面FCに均一な膜厚でコンフォーマルに形成することができる。
【0074】
シーケンスSQ2に引き続き、工程ST1ea5が実行される。工程ST1ea5では、シーケンスSQ2の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST1ea5では、シーケンスSQ2の実行回数が所定回数に達したか否かを判定する。シーケンスSQ2の実行回数の決定は、ウエハWの表面FCに形成される犠牲膜EXの膜の厚みを決定することである。すなわち、1回のシーケンスSQ2の実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQ2の実行回数との積によって、最終的にウエハWの表面FCに形成される犠牲膜EXの膜の厚みが実質的に決定される。したがって、ウエハWの表面FCに形成される犠牲膜EXの所望の厚みに応じて、シーケンスSQ2の実行回数が設定される。
【0075】
工程ST1ea5においてシーケンスSQ2の実行回数が所定回数に達していないと判定される場合には(工程ST1ea5:NO)、シーケンスSQ2の実行が再び繰り返される。一方、工程ST1ea5においてシーケンスSQ2の実行回数が所定回数に達していると判定される場合には(工程ST1ea5:YES)、シーケンスSQ2の実行が終了され、工程ST1ea6が実行される。これによって、
図12に示すように、ウエハWの表面FCにシリコン酸化膜である犠牲膜EXが形成される。すなわち、シーケンスSQ2が所定回数だけ繰り返されることによって、所定の膜厚を有する犠牲膜EXが均一の膜みでコンフォーマルにウエハWの表面FCに形成される。
【0076】
工程ST1ea5:YESに引き続き、工程ST1ea6が実行される。工程ST1ea6では、犠牲膜EXがエッチングされる。工程ST1ea6によって、犠牲膜EXは、犠牲膜EXのうちビア孔VH1の側面SFを覆っている部分を除き、除去される。犠牲膜EXのうちビア孔VH1の側面SFを覆っている部分を除き、犠牲膜EXを選択的に除去するためには、異方性のエッチング条件が必要である。このため、工程ST1ea6では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから、フルオロカーボンガスを含む処理ガスを処理容器12内に供給する。第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給する。排気装置50を動作させることによって、処理容器12内の空間の圧力を所定の圧力に設定する。これによって、フルオロカーボンガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、ウエハWに交差する方向(より具体的にはビア孔VH1の底面BFに対し略垂直な方向であって、ビア孔VH1の側面SFに対し略平行な方向)への高周波バイアス電力による引き込みによって、犠牲膜EXのうちトレンチTRの側面SFを覆っている部分を除き、犠牲膜EXを選択的にエッチングする。この結果、
図13に示すように、犠牲膜EXのうちビア孔VH1の側面SFを覆っている部分を除き、犠牲膜EXが選択的に除去され、犠牲膜EXのうちビア孔VH1の側面SFを覆っている部分が残留する。
【0077】
図6に戻って説明する。工程ST1eaに引き続き、工程ST1ebが実行される。工程ST1ebでは、
図14に示すように、犠牲膜EX、酸化膜OX、および第2の絶縁膜IS2に対しエッチングを行って、ビア孔VH1の底面BFから更に深い位置にビア孔VH2(第2のビア孔)を形成し、トレンチTR1およびビア孔VH1から犠牲膜EXを除去する。このために、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。一例の工程ST1ebでは、フルオロカーボンガスを含む処理ガスが処理容器12内に供給される。フルオロカーボンガスとしては、例えば、CF
4ガスおよびC
4F
8ガスが用いられ得る。工程ST1ebでは、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST1ebでは、第1の高周波電源62からの第1の高周波および第2の高周波電源64からの第2の高周波が、下部電極LEに供給される。
【0078】
工程ST1ebでは、処理ガスのプラズマが生成され、犠牲膜EX、酸化膜OX、および第2の絶縁膜IS2がエッチングされる。工程ST1ebでは、金属マスクMKの開口OPと酸化膜OXの表面の開口TOとからなるトレンチTR1は更に深いトレンチ形状となるようにエッチングされ、また犠牲膜EXは全て除去され、第2の絶縁膜IS2は第2の絶縁膜IS2の膜厚方向の途中でビア孔VH1の深さより深い位置までエッチングされる。工程ST1ebが完了したとき、トレンチTR1の深さは更に深くなり、且つ、ビア孔VH1はエッチングによって消滅している。この結果、
図14に示すように、開口OPの幅を有するトレンチTR2がトレンチTR1から形成され、また、犠牲膜EXは全て除去され(少なくともビア孔VH1から犠牲膜EXが除去され)、また、ビア孔VH1は消滅し、新たにビア孔VH2が形成され、トレンチTR2の一部にビア孔VH2が設けられた構成となる。
【0079】
工程ST1ebにおいてビア孔VH1から犠牲膜EXを除去するための条件についてより具体的に説明する。工程ST1ebの実行開始時の犠牲膜EXは、少なくともビア孔VH1内では、
図13に示すように、ビア孔VH1の側面SFのみに付着している。当該条件は、下記の(i)且つ(ii)である。
条件(i):工程ST1ebにおける犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間は、ビア孔VH1の深さ(ビア孔VH1の底面BFからビア孔VH1の開口までのビア孔VH1の側面SFの長さ)を犠牲膜EXのエッチングレートで割って得られる商の値以上である。
条件(ii):犠牲膜EXのエッチングレートと第2の絶縁膜IS2のエッチングレートとは同程度である。
【0080】
上記の条件(i)および条件(ii)をより具体的に説明する。工程ST1ebにおける犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間をET[s]と表し、ビア孔VH1の深さ(ビア孔VH1の底面BFからビア孔VH1の開口までのビア孔VH1の側面SFの長さ)の値をD[nm]と表し、犠牲膜EXのエッチングレートの値をER1[nm/s]と表し、第2の絶縁膜IS2のエッチングレートの値をER2[nm/s]と表すと、条件(i)は、ET≧(D/ER1)[s]と等価であり、条件(ii)は、ER1/ER2=1±Δ(Δは微小値)と等価である。
【0081】
工程ST1ebにおける犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間がビア孔VH1の深さ(ビア孔VH1の底面BFからビア孔VH1の開口までのビア孔VH1の側面SFの長さ)を犠牲膜EXのエッチングレートで割って得られる商の値未満となっている場合(ET<(D/ER1)[s]の場合)には、工程ST1ebにおけるエッチングによってビア孔VH1内の犠牲膜EX(ビア孔VH1の側面SFに付着している犠牲膜EX)は完全に除去されず、ビア孔VH1の側面SFに犠牲膜EXが残留する。この場合、ビア孔VH1の側面SFに残留する犠牲膜EXによって第2の絶縁膜IS2の誘電率が上昇し、よって、配線間の寄生容量も上昇し得る。
【0082】
工程ST1ebにおける犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間がビア孔VH1の深さ(ビア孔VH1の底面BFからビア孔VH1の開口までのトレンチTRの側面SFの長さ)を犠牲膜EXのエッチングレートで割って得られる商の値以上となっている場合(ET≧(D/ER1)[s]の場合)であっても、犠牲膜EXのエッチングレートが第2の絶縁膜IS2のエッチングレートよりも比較的に大きい場合(ER1/ER2>>1の場合)には、ビア孔VH1の側面SFにある犠牲膜EXが工程ST1ebの比較的に早い時点で除去されるので、ビア孔VHの断面形状は、所望とする形状ではなく、例えば階段状等の複雑な(歪な)形状となり得る。
【0083】
工程ST1ebにおける犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間がビア孔VH1の深さ(ビア孔VH1の底面BFからトレンチTRの開口までのビア孔VH1の側面SFの長さ)を犠牲膜EXのエッチングレートで割って得られる商の値以上となっている場合(ET≧(D/ER1)[s]の場合)であっても、第2の絶縁膜IS2のエッチングレートが犠牲膜EXのエッチングレートよりも比較的に大きい場合(ER1/ER2<<1の場合)には、工程ST1ebのエッチングの実行によってビア孔VH1の側面SFにある犠牲膜EXを除去することが困難となり、工程ST1ebの終了時においても、ビア孔VH1の側面SFに犠牲膜EXが残留するので、ビア孔VH1の断面形状は、所望とする形状ではなく、例えば突起部が形成される等の複雑な(歪な)形状となり得る。
【0084】
工程ST1ebに引き続き、工程ST1ecが実行される。工程ST1ecでは、工程ST1eaおよび工程ST1ebを含むシーケンスSQ1を終了するか否かを判定し、シーケンスSQ1を再度行う場合(工程ST1ec;NO)、工程ST1eaおよび工程ST1ebを再度実行し、シーケンスSQ1を終了する場合(工程ST1ec;YES)、工程ST1eを終了する。すなわち、工程ST1eにおいて、
図15に示すように、ビア孔VHが拡散防止膜DLに至るまで、シーケンスSQ1を繰り返し実行する。
【0085】
工程ST1eにおいてシーケンスSQ1を一回のみ実行する場合には、工程ST1ebを一回だけ実行することによってビア孔VHを形成するので、工程ST1eaの一回の実行において形成する犠牲膜EXはビア孔VHの最終的な幅(拡散防止膜DLに至った状態のビア孔VHの幅)を画定し得る厚みを有する必要がある。レジストマスクRMの開口MOの幅およびビア孔VHの最終的な幅等の各種寸法によっては、工程ST1eaにおいて形成する犠牲膜EXの厚みが比較的に厚くなり第2の絶縁膜IS2のエッチングに用いるラジカルの供給がビア孔VHの底面にまで届かずにエッチングが停止する場合が生じ得る。これに対し、シーケンスSQ1を繰り返し実行し得る方法MTでは、比較的に幅の広い開口MOの場合でも、工程ST1eaの一回の実行において形成する犠牲膜EXの厚みをエッチングが停止しないように抑制しつつ、シーケンスSQ1を複数回実行することによってビア孔VHを拡散防止膜DLに向けて伸ばしつつビア孔VHの幅を段階的に縮小することができるので、エッチングが停止することなく確実に、最終的な幅(拡散防止膜DLに至った状態のビア孔VHの幅)のビア孔VHの形成を進めることができる。
【0086】
なお、第2の絶縁膜IS2の材料が細孔を有する多孔質材である場合に、工程ST1eaは、犠牲膜EXを形成する前に、ビア孔VH1の表面(側面SFおよび底面BF)に露出される当該多孔質材の表層に位置する当該細孔を封孔する処理を行うことができる。特に
図7に示すように工程ST1eaの実行にALD法が用いられる場合、ビア孔VH1の表面に反応前駆体の層Ly1が形成される時、第2の絶縁膜IS2の細孔の内部まで反応前駆体が吸収され、第2の絶縁膜IS2の誘電率が上昇し得る。このため、反応前駆体の層Ly1の形成前に、第2の絶縁膜IS2の表面(ビア孔VH1の表面)に対し、反応前駆体の吸収を抑制し得るように、第2の絶縁膜IS2の細孔を塞ぐ等の表面処理を行うことが好適となる。また、シーケンスSQ1を複数回繰り返す場合、
図14に示すようにトレンチTR2の側壁部において第2の絶縁膜IS2の表面が露出することになり、この場合も、反応前駆体の層Ly1の形成前に、第2の絶縁膜IS2の表面(ビア孔VH2およびトレンチTR2の表面)に対し、反応前駆体の吸収を抑制し得るように、第2の絶縁膜IS2の細孔を塞ぐ等の表面処理を行うことが好適となる。従って、
図7に示すように、シーケンスSQ2の前に、第2の絶縁膜IS2の表面処理(封孔処理)を行う工程ST1ea7を備えることができる。封孔処理の一例は、有機シリコン化合物や有機溶剤をプロセスガスとして用いるCVD法またはALD法が用いられる。この場合、細孔にシリコンや有機物が含まれる材質が埋められので細孔を塞ぐごとができる。なお、封孔処理が施された第2の絶縁膜IS2の表層部分は誘電率が若干上昇するので、工程ST1eにおける絶縁膜に対するエッチング、具体的に、工程ST1ebにおける第2の絶縁膜IS2および犠牲膜EXに対するエッチングによって、犠牲膜EXが除去されて、封孔処理された第2の絶縁膜IS2の表層部分が再び露出された後、細孔を塞いでいる材料を、熱処理やウェット洗浄などによって除去し、再び細孔を形成することが望ましい。
【0087】
工程ST1ea7では、例えば、緻密な誘電体膜を第2の絶縁膜IS2の表面(トレンチTRの表面)を覆うことができる。当該誘電体膜によって、反応前駆体の吸収が抑制され得る。また、工程ST1ea7では、例えば、第2の絶縁膜IS2の表面(トレンチTRの表面)をHeで処理した後に、NH
3とArとを含む混合ガスを用いてトリートメントすることができる。当該トリートメントによって、第2の絶縁膜IS2の表面にSi−N結合、C−N結合が生成されるので、第2の絶縁膜IS2の表面の細孔が封止され得る。
【0088】
工程ST1eが終了すると工程ST1も終了するので、工程ST1に引き続き、
図1に示す工程ST2が実行される。
図1に戻って、説明する。工程ST2では、工程ST1によって形成されたビア孔VHを介して、拡散防止膜DLが配線層WL(特に配線CW)に至るまで、エッチングされる。
【0089】
工程ST2では、配線CWが露出するまで拡散防止膜DLをエッチングするので、フルオロカーボンガスおよび/またはハイドロフルオロカーボンガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。このために、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、CF
4ガス、CHF
3ガス、C
4F
8ガス、C
4F
6ガス、CH
2F
2ガス、およびCH
3Fガスのうち一以上のガスを含み得る。この処理ガスは、希ガス、窒素ガス、および酸素ガスを含み得る。例えば、この処理ガスは、CF
4ガスおよびC
4F
8ガス、Arガス、窒素ガス、および酸素ガスを含む。工程ST2では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。工程ST2では、第1の高周波電源62からの第1の高周波、および、第2の高周波電源64からの第2の高周波が、下部電極LEに供給される。
【0090】
工程ST2では、処理ガスのプラズマが生成され、拡散防止膜DLがエッチングされる。この結果、
図16に示すように、ビア孔VHが配線CWの表面まで延長される。工程ST2の実行後には、配線CWの表面に存在する銅はフッ化銅に変質する。その変質した銅表面を銅金属に再度改質するために、工程ST2の実行後に、水素ガスなどのプラズマ処理に晒してもよい。また、ウェット洗浄によって、フッ化銅に変質した銅表面を除去してもよい。工程ST2に引き続き、工程ST3が実行される。工程ST3では、金属マスクMKが除去され、トレンチTRおよびビア孔VHにCu等の金属が充填される。
【0091】
上記した方法MTによれば、第2の絶縁膜IS2に設けられたトレンチおよびビア孔VH1の側面SFに犠牲膜EXを設けた後に(工程ST1eaの後に)、工程ST1ebにおいて第2の絶縁膜IS2をエッチングし、ビア孔VH1の底面BFの更に深い位置にビア孔VH2を形成する。従って、犠牲膜EXによってビア孔VH1の孔径が縮小された状態でビア孔VH2が形成されるので、微細なビア孔VHの形成が可能となる。更に、第2の絶縁膜IS2のエッチング時にトレンチおよびビア孔VH1の側面SFの犠牲膜EX(より詳細にはトレンチに設けられた犠牲膜EX)も除去されるので、犠牲膜EXに起因する第2の絶縁膜IS2の誘電率の増加を抑制できる。更に、工程ST1eaにおいて犠牲膜EXはコンフォーマルに形成される。犠牲膜EXがコンフォーマルでない場合、トレンチTR1の上部およびビア孔VH1の上部の膜厚が、トレンチTR1の側部、底部、および、ビア孔VH1の側部、底部に比べて厚くなってしまう、いわゆるオーバーハング形状が形成される場合があり、この場合には、トレンチTR1およびビア孔VH1の間口の寸法が極端に小さくなり、エッチングが阻害されてしまうことが予想されるが、工程ST1ebでは、工程ST1eaにおいてコンフォーマルに形成された犠牲膜EXが用いられるので、微細でありつつも精密なエッチング加工が犠牲膜EXを用いて可能となる。更に、犠牲膜EXを形成する工程ST1eaでは、ALD方式を用いて犠牲膜EXがコンフォーマルに形成されるので、より精密なエッチング加工が犠牲膜EXを用いて可能となる。更に、犠牲膜EXが低誘電率の特性を有する場合も考えられるが、このような低誘電率の犠牲膜を用いても、工程ST1ebにおいて、第2の絶縁膜IS2のエッチングが可能である。更に、工程ST1eaから工程ST1ebまで、低誘電率の第2の絶縁膜IS2が露出された状態で大気中に曝露される事態を回避し得る。更に、工程ST1eaから工程ST1ebまでは、単一の処理容器12内で実行されるので、低誘電率の第2の絶縁膜IS2が露出された状態で大気中に曝露される事態を確実に回避し得る。
【0092】
更に、第2の絶縁膜IS2の材料が細孔を有する多孔質材である場合には、
図7に示す工程ST1ea7を実行することによって犠牲膜EXの形成前に当該細孔が封孔されるので、犠牲膜EXの形成に用いられる材料(反応前駆体)が犠牲膜EXの形成時に細孔の内部まで吸収されることによって第2の絶縁膜IS2の特性(特に誘電率)が変化する事態を最小限に回避し得る。更に、工程ST1eaの一回の実行において形成する犠牲膜EXの厚みをエッチングが停止しないように抑制しつつ、シーケンスSQ2を複数回実行することによってビア孔VHを拡散防止膜DLに向けて伸ばしつつビア孔VHの幅を段階的に縮小することができるので、エッチングが停止することなく確実に、最終的な幅(拡散防止膜DLに至った状態のビア孔VHの幅)のビア孔VHの形成を進めることができる。
【0093】
工程ST1ebにおいて行われる犠牲膜EXおよび第2の絶縁膜IS2に対するエッチングの実行時間(ET[s])はトレンチTRの深さ(D[nm])を犠牲膜EXのエッチングレート(ER1[nm/s])で割って得られる商の値以上(ET≧(D/ER1)[s])であり、犠牲膜EXのエッチングレート(ER1[nm/s])と絶縁膜のエッチングレート(ER2[nm/s])とは同程度(ER1/ER2=1±Δ(Δは微小値))である。このように工程ST1ebにおいて行われるエッチングの実行時間(ET[s])を調整すれば、工程ST1ebにおけるエッチングにおいて、トレンチTRの側面SFにあってトレンチTRの深さ(D[nm])に対応する長さを有する犠牲膜EXが好適に除去され得る。
【0094】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。