【実施例1】
【0019】
図1に、実施例1のシリコンゲルマニウム(SiGe)チャネルを有する半導体素子のチャネル形成方法を示す。
図1(a)にチャネル形成工程前のシリコン(Si)基板を示す。Si基板(単結晶Si層)1の一部に溝が形成され、溝内には単結晶SiGe層2が埋め込まれている。SiGe層2の膜厚は30nm〜100nmが望ましく、SiGe層2内のゲルマニウム(Ge)の組成は20%〜25%であると良い。高い移動度を実現するため、SiGe層2はSi基板1に格子整合するように成膜されており、SiGe内部にはSiGeとSiとの格子定数の違いに起因する歪エネルギーが含有されている。これにより、緩和したSiGe層に比べて高い移動度が実現される。SiGe層2は、例えばパターニングにより溝が形成されたSi基板1上に化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)等を用いてSiGe膜を成長させた後、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)で表面を平坦化して形成しても良いし、溝形成のエッチング時に用いる絶縁膜マスクに対してCVD等を用いて選択エピタキシャル成長を行うことで、溝内にのみSiGe膜を形成しても良い。
【0020】
Si基板1及びSiGe層2の上部にはパターニングされたハードマスク3が形成されている。ハードマスク3は周期的なパターンを有しており、パターン周期は20nm〜50nmピッチであることが望ましい。ハードマスク3の形成には、例えばフッ化アルゴンガス(ArF)を光源とするレーザを用いる場合、パターン周期が40nm以上80nm以下であれば自己整合ダブルパターニング(SADP:Self-Aligned Double Patterning)を、パターン周期が20nm以上40nm以下であれば自己整合4倍パターニング(SAQP:Self-Aligned Quadruple Patterning)を用いることができる。また、波長13.5nmの極端紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)露光を行う場合には、パターン周期が40nmまでは単一露光(Single Patterning)を、パターン周期が20nm以上40nm以下であればSADPを用いることができる。ハードマスク3はシリコン酸化膜(SiO
2)やシリコン窒化膜(Si
3N
4)、またはそれに準じるシリコン酸窒化膜(SiON)やシリコンカーボン酸化膜(SiCO)等の絶縁膜である。若しくは、非晶質のシリコンカーボン(SiC)等のワイドバンドギャップ材料やその他複数の絶縁膜からなる積層膜であっても良い。
【0021】
図1(a)の構造が形成された基板をプラズマ処理装置に導入し、ハードマスク3をマスクとしてSiGe層2とSi基板1の一部をエッチングする。エッチングは基板表面に対して垂直性を保った異方性エッチングの条件にて行われる。これにより、
図1(b)のfin構造が形成される。
【0022】
続いて、基板を同一装置の同一処理室(チャンバ)内に保ったまま、水素(H
2)ガスを用いて水素プラズマ処理を施し、
図1(c)に示すようにSiGeチャネル表面に極薄膜Si偏析層4を形成する。後述するように、エッチングにより除去された材料がSiGeチャネル表面に再付着した状態においても極薄膜Si偏析層4を形成することができるため、
図1(b)のエッチング工程と
図1(c)のSi偏析層形成工程との間に洗浄工程が不要であり、洗浄工程によるSiGe層へのダメージを回避できる。また、
図1(b)〜(c)の連続工程の処理温度はほぼ室温であるため、Ge拡散によるSiGeチャネルの組成変化や歪緩和による移動度低下を抑制可能である。
【0023】
この連続工程におけるプラズマ処理装置の処理条件を
図2に示す。ハードマスク3をマスクとするSiGe層2及びSi基板1のエッチングは、塩素(Cl
2)や臭化水素(HBr)等のハロゲンガスを含むガスを原料とすると良い。このようなエッチングガスを用いると、SiO
2やSi
3N
4等のマスク材料に対して良好な選択性を保った状態で、SiGe層2及びSi基板1のエッチングが可能になる。また、基板表面に対して垂直性を保ってエッチングするため、基板には高周波バイアスを印加する。プラズマ内のイオンが基板に引き寄せられることで、垂直性を保ってエッチングされる。一方、Si偏析層4を形成するためのプラズマ処理には、主に水素ガスを用いる。このとき、fin側壁の上部から下部まで均一にプラズマを照射するため、基板に印加する高周波バイアスはエッチングを行う場合に比べて低下させる、あるいは高周波バイアスを印加しない条件とする。これはイオンエネルギーが小さい程、試料表面近傍のSi/Ge比を高くできるという知見に合致する。しかしながら、イオンエネルギーが小さくすることは、同時にSi層やSiGe層のエッチングレートが高める作用も伴う。このため、水素プラズマ処理は、SiGe層2及びSi基板1に形成されているfinを極力エッチングしない条件とする。例えば、水素プラズマ処理時間を短くする。このように、エッチング工程及び偏析工程のそれぞれの条件に適合するように、エッチングチャンバ内の圧力、基板に印加する高周波バイアス、ガス流量、処理時間といった処理条件を制御する。
【0024】
図3に、SiGe finに極薄膜Si偏析層4が形成される過程を示す概念図を示す。SiGe finの側壁への水素プラズマ処理効果を示すため、SiGe finの側壁に相当する(110)面をSiGe層2の表面として表現している。また、SiGe finの側壁にはfin形状にエッチングしたときに生じる再付着物90が堆積している。
図3に示すように、SiGe層表面に水素プラズマが照射されると、水素プラズマは再付着物層90を透過してSiGe層2に作用し、SiGe層表面のSi原子及びGe原子それぞれが持つダングリングボンドが水素原子によって終端される。これにより、SiGe層表面はシリコン−水素(Si−H)結合とゲルマニウム−水素(Ge−H)結合とが混在する状態となる。Si−H結合の持つエネルギーは、Ge−H結合に比べてエネルギー的に安定であるため、SiGe結晶内部にてSi原子とGe原子とが置換し、SiGe層表面にSi原子が偏析する。非特許文献3ではSi原子とGe原子の置換に必要なエネルギーを与えるためにある程度の熱処理が必要となっているのに対し、本実施例では水素プラズマ処理による反応であるため、ダングリングボンドを終端する水素は高いエネルギーを有する分子種(ラジカル)の状態でSiGe層表面と反応する。ラジカルの有するエネルギーがSiGe層表面に伝播することにより、SiGe表面近傍にてSi原子とGe原子との置換が生じていると考えられる。特に、この水素プラズマ処理によるSi偏析層4の形成が、表面がクリーンなSiGeブランケット試料に限られず、再付着物層が存在しているような加工途中の試料に対しても可能であることにより、本実施例の連続工程が可能となっている。また、プラズマ処理装置のチャンバ内温度を室温(27℃近傍、最高でも100℃以下)としておくことで、水素原子の脱離現象は発生しない。
【0025】
水素プラズマ反応はSiGe層表面で生じる反応であるため、Si偏析反応は1秒未満の極短時間で完了し、その後は水素照射を行ってもSiGe層の深さ方向に反応が継続していくことはない。水素ラジカルのSiGe層への侵入長に依存して、形成される極薄膜Si偏析層の厚さが変動することもない。むしろ、水素プラズマ処理の過剰な処理時間や、SiGe結晶内への水素ラジカルの過剰な侵入長は、水素ラジカルによりSiGeチャネルにダメージを与えるおそれがあるため、SiGeチャネルに過度のダメージを与えないように処理時間や基板バイアス等のプラズマ処理条件の調整を行う必要がある。水素プラズマ処理時間の例としては、数秒〜20秒以下の範囲に調整すると良い。これまでの検討結果では、Si偏析現象によって形成されるSi偏析層の厚さは1nm未満であり、Si偏析現象を引き起こすために必要な水素の侵入長は数nmであることが分かっている。
【0026】
以上説明したSi偏析効果は、ある程度幅の広い水素プラズマ条件にて発現する現象であり、プラズマ処理装置としては、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いたエッチング装置、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を用いたエッチング装置、マイクロ波電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)プラズマを用いたエッチング装置のいずれでも使用できる。ここでは、マイクロ波ECRプラズマを用いたプラズマ処理装置の例を説明する。以下の実施例においてもこれらのプラズマ処理装置を用いて半導体装置を製造できる。
【0027】
図4に、マイクロ波ECRプラズマを用いたプラズマ処理装置の構成を示す。プラズマ処理装置は、処理室(チャンバ)401を有し、処理室401は真空排気口402を介して真空排気装置(図示せず)に接続されており、プラズマ処理中には処理室401内は0.1Pa〜10Pa程度の真空に保たれる。また、処理室401の上部には、シャワープレート403及び窓部404が配置されている。シャワープレート403は、複数の孔を有し、材質は例えば石英である。ガス供給機構はガス源405、ガス供給装置406、ガス導入口407を有し、プラズマ処理用の原料ガスを供給する。ガス源405は少なくともfin構造のエッチングに必要なガス種(例えば、ハロゲンガスを主とする単一あるいは複数のガス種)とSi偏析を引き起こすために必要な水素ガスとを有する。ガス供給装置406はガスの供給/遮断を制御する制御バルブとガス流量を制御するマスフローコントローラとを有する。また、ガス導入口407は、シャワープレート403と窓部404との間に設けられており、プラズマエッチングまたは水素プラズマ処理用のガスをシャワープレート403の孔を通じて処理室401内に導入する。窓部404は、処理室上方からの電磁波を透過させるとともに、処理室上方を気密に封止する役割を持つ。窓部404の材質には誘電体、例えば石英を用いる。
【0028】
処理室401の上部には電磁波を伝播する導波管409が接続されており、導波管409の端部には高周波電源であるプラズマ生成用高周波電源408が接続されている。プラズマ生成用高周波電源408はプラズマ生成用の電磁波を発生するための電源であり、例えば電磁波としては周波数2.45GHzのマイクロ波を用いる。プラズマ生成用高周波電源408から発生されたマイクロ波は導波管409を伝播し、処理室401内に入射する。導波管409が垂直方向に延在する垂直導波管とマイクロ波の方向を90度曲げるコーナーを兼ねた導波管変換器とを有することにより、マイクロ波は処理室401に垂直に入射される。マイクロ波は窓部404、シャワープレート403を経由して処理室401内を垂直に伝播する。処理室401の外周に配置された磁場発生コイル410は、処理室401に磁場を形成する。プラズマ生成用高周波電源408から発振されたマイクロ波は、磁場発生コイル410により形成された磁場との相互作用により、処理室401内に高密度プラズマを生成する。
【0029】
処理室401の下方には、窓部404に対向して試料台412が配置されている。試料台412の材質には、アルミニウムやチタンを用いる。試料台412は、試料である半導体基板411を上面に載置して保持する。ここで、導波管409、処理室401、試料台412及び半導体基板411の中心軸は一致している。また、試料台412内部には半導体基板411を静電吸着するための電極が設けられており、直流電圧を印加することにより半導体基板411が試料台412に静電吸着される。さらに試料台412には、高周波バイアス電源413から高周波電圧が印加される。印加する高周波バイアスの周波数は例えば、400kHzとすると良い。
【0030】
プラズマ処理装置の各機構は制御部420により制御される(
図4では各機構との接続は省略している)。制御部420は、プラズマ処理装置が実行する処理条件に応じて、各機構に所定の動作の実行を指示することにより、各機構が制御される。例えば、プラズマ生成用高周波電源408を制御し、プラズマ発生のための電磁波のON−OFFを制御する。また、ガス供給機構を制御し、処理室401に導入するガスの種類、流量等を調整する。また、高周波バイアス電源413を制御し、試料台412上の半導体基板411に印加される高周波電圧の強度を制御する。
【0031】
マイクロ波ECRプラズマ処理装置は、ICPプラズマ処理装置やCCPプラズマ処理装置と比べてプラズマ処理時の圧力が低いという特徴を有する。圧力の低い領域でのプラズマ処理を行うことにより、一連のプラズマ処理工程においてSiGe層表面への不純物の堆積やプラズマ処理によるSiGe層表面へのダメージを抑制する効果も得ることが可能となる。
【0032】
以下、
図1(c)のfin構造を有するMOSFET(フィン型FET)を製造する工程について説明する。
図5Aは、
図1(c)のfin構造がSi基板1上に形成された状態を示す鳥瞰図である。ここでは、p型MOSFETとn型MOSFETを有する相補型MOSFET(CMOS:Complementary MOSFET)の例を示している。p型MOSFETはSiGeのfin構造をチャネルとし、n型MOSFETはSiのfin構造をチャネルとする。また、この例ではp型MOSFET及びn型MOSFETはいずれもトランジスタ1つあたり2本のfinを有する例を示しているが、finの数には限定されない。また、fin構造の最小間隔は、前述の通り20nm〜50nmの範囲とし、finの幅は5nm〜20nmの範囲内で調整する。チャネルとして働くfin領域の高さ(SiGe層2の膜厚に相当する)は前述したように30nm〜100nmの範囲内で規定される一方、
図5Aに示されるように、finの高さは約100nm〜200nmであり、チャネルとして働くfin領域の下部にはトランジスタのリーク電流を抑制するためのウェル(WELL)領域が形成される。n型MOSFETではp型にドープされたウェル領域が、p型MOSFETではn型にドープされたウェル領域が形成される。これらのウェル領域は、例えばイオン注入によって形成することができる。
【0033】
例えば、
図1(a)の構造を形成するよりも前に、まずSi基板1に対して、n型のドーピングには燐(P)または砒素(As)のイオン注入、p型のドーピングにはボロン(B)またはフッ化ボロン(BF
2)のイオン注入を行う。イオン注入後に不純物の活性化のための熱処理を行い、ドーピングを行わないチャネル部分をエピタキシャル成長により30nm〜100nmの厚みで形成する。この後、
図1において説明したように埋め込みSiGe層2を形成し、fin構造を形成する。なお、ウェルドーピングは、固相成長やプラズマドーピングを用いて行うこともでき、固相成長を行う場合は、fin構造形成後にウェル領域の形成が可能である。
【0034】
次に、素子分離領域を形成するためSTI(Shallow Trench Isolation)絶縁膜を堆積し、STI絶縁膜のエッチバックを行うことで
図5Bの構造を得る。STI絶縁膜5はCVD等を用いて成膜する。STI絶縁膜5の材料はSiO
2またはそれに準じるSiONやSiCO等でも良い。最初に堆積するSTI絶縁膜5の厚さはfin全体の高さとfin上部のハードマスク3の合計高さ以上とする。その後、ハードマスク3の上部をストッパとするCMPを施し、平坦化した後にドライエッチングにてエッチバックを行ってチャネルとして働くfin領域を露出させることにより、
図5Bの構造を得る。エッチバックの深さは、MOSFETのチャネルしたfin領域に応じた30nm〜100nmとなるように調整されるが、エッチバック後のSTI絶縁膜5の上面がSiGeチャネル2の底面と同一か、やや低い位置となるように調整すると良い。STI絶縁膜5の上面よりも低い位置に電流の流れやすいSiGe層が残存すると、MOSFETのリーク電流を増大させる原因となるためである。
【0035】
STI絶縁膜5の材料にSiO
2を用いた場合、エッチバックには四フッ化メタン(CF
4)やトリフルオロメタン(CHF
3)をエッチングガスに用いると良い。また、STI絶縁膜5の材料をSiO
2とする場合、STI絶縁膜5のエッチバックをfin上部のハードマスク3に対して選択的に行う必要があるため、ハードマスク3の材料をSiO
2以外の材料、例えばSi
3N
4等とすることが望ましい。また、前述のようにfin構造形成後にウェル領域を形成する場合には、STI絶縁膜5を最初に堆積させる際、ウェル領域を形成する範囲にそれぞれの不純物がドーピングされた絶縁膜を堆積し、エッチバック後に熱処理を施すことによりチャネルとして働くfin領域の下部に不純物を拡散させて(固相成長)、ウェルドーピングを行うことができる。
【0036】
なお、STI絶縁膜5のエッチバック後に再度水素プラズマ処理を行い、SiGe層表面にSi偏析層を形成してもよい。これはSTI絶縁膜5のエッチバックの工程において極薄膜Si偏析層4がダメージを受けるおそれがあり、ダメージを受けた極薄膜Si偏析層4を回復させるためである。Si偏析反応はSiGe層表面での反応であるため、繰り返し行っても均一な厚みの極薄膜Si偏析層4を形成できる。
【0037】
次に、ダミーゲート絶縁膜6とダミーゲート7、及びハードマスク8をCVD等により堆積し、ハードマスク8にパターニングを行ってエッチング加工した後に、パターンニングしたハードマスク8をマスクとしてダミーゲート7のエッチングを行うことにより、
図5Cの構造を得る。ダミーゲート絶縁膜6はSiO
2またはそれに準じる絶縁膜とすると良く、膜厚は1nm〜3nmの範囲とすることが望ましい。なお、ダミーゲート絶縁膜6を熱酸化法やプラズマ酸化法を用いてSi fin及びSiGe finを酸化して形成しても良い。ダミーゲート7は非晶質(アモルファス)Siまたは多結晶(poly)Siで形成すると良い。ハードマスク8はSi
3N
4またはSiO
2またはそれに準じるSiON等の絶縁膜とする。ハードマスク8のパターニングは、ゲートのピッチに応じてSADPや単一露光等の手法を使い分けることにより行う。例えば、ゲートピッチを40nm〜70nm、ダミーゲート7の幅を15nm〜30nmの範囲に設定し、ハードマスク8をパターニングする。ハードマスク8のエッチングは、例えばハードマスク8の材料にSi
3N
4を用いた場合にはCF
4と酸素の混合ガスにCl
2等を添加することで下地のダミーゲート7との選択比を高く保つことができる。続くダミーゲート7のエッチングには、Cl
2またはHBr等のハロゲン系のガスを用いることで下地のダミーゲート絶縁膜6をストッパとする選択エッチングが可能となる。なお、実施例1では、fin上部のハードマスク3を残したままダミーゲート7の堆積及び加工を行っている。この構造には、ダミーゲート7のエッチング時にハードマスク3がfinチャネルの保護膜となり、チャネルへのエッチングダメージが軽減されるという利点がある。
【0038】
ダミーゲート7の加工後、ゲート側壁絶縁膜9をCVD等にて堆積し、ゲート側壁絶縁膜9に対して異方性エッチングを施すことで
図5Dに示す構造を得る。ゲート側壁絶縁膜9は、低比誘電率膜であるSiON膜やSiONに炭素が含まれたSiOCN膜、またはカーボン含有シリコン酸化膜(SiCO)を用いると良い。ゲート側壁絶縁膜9にSiCO膜を用いた場合、ゲート側壁絶縁膜9の異方性エッチングは、例えばCF
4と八フッ化シクロブタン(C
4F
8)に窒素(N
2)ガスを添加した混合ガスをエッチングガスとすると良い。ゲート側壁絶縁膜9の水平方向の膜厚は5nm〜15nmの範囲で調整する。
【0039】
次いで、n型MOSFET領域を覆うようにハードマスク10の堆積とパターニングを行い、ハードマスク10をマスクとするエッチングにて、p型MOSFETのソース/ドレイン領域におけるダミーゲート絶縁膜6、fin上ハードマスク3及びSiGe層2をエッチング除去し、
図5Eの構造を得る。ここで、ダミーゲート絶縁膜6、fin上ハードマスク3及びSiGe層2のエッチングは基板表面に対して垂直性を保った異方性エッチングとし、エッチング対象である材料のみをエッチングする選択エッチングの条件で行うこととする。ハードマスク10の材料にはSiO
2またはそれに準じる絶縁膜を用いる。
【0040】
p型MOSFETのソース/ドレイン領域におけるこれらの膜が除去されることにより、ゲート側壁絶縁膜9の側壁にはSiGe層(チャネル)2の側壁が露出し、STI絶縁膜5表面上にはfin構造を形成しているSi層またはSiGe層がストライプ状に露出する。STI絶縁膜5表面上に露出されるfin表面がSi層であるか、SiGe層であるかはエッチング深さに依存し、このエッチング深さはトランジスタ性能に応じて調整できる。例えば、STI絶縁膜5表面を基準として露出されるfin表面の高さを±20nm程度まで調整してもよい。finに対するエッチング深さが深い場合はトランジスタのオン電流が増大する一方、短チャネル効果が増大する。これに対するfinに対するエッチング深さが浅い場合は短チャネル効果が抑制される一方、オン電流が低下する。
【0041】
次いで、finごとに、STI絶縁膜5表面上に露出したfin表面とゲート側壁絶縁膜9の側壁に露出したSiGe層2とを覆うように、p型SiGeソース/ドレイン11を周囲の絶縁膜に対して選択的にエピタキシャル成長させて
図5Fに示す構造を得る。エピタキシャル成長はCVD装置にて行うと良く、例えば原料ガスには水素希釈したモノシラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、ゲルマン(GeH
4)、ドーピングガスには水素希釈したジボラン(B
2H
6)を用いる。また、成長は水素ガス雰囲気下で行い、選択性を向上させるため、必要に応じて塩化水素ガス(HCl)を添加する。
【0042】
次いで
図5E〜Fで説明した、p型MOSFET領域でのソース/ドレイン領域における積層体のエッチング及びエピタキシャル成長によるソース/ドレイン形成を、n型MOSFET領域に対しても行う。この場合も、同様にp型MOSFET領域をハードマスクで覆い、n型MOSFETのソース/ドレイン領域におけるハードマスク3及びSi finをエッチング除去し、n型Siソース/ドレインを周囲の絶縁膜に対して選択的にエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長はCVD装置にて行うと良く、例えば原料ガスには水素希釈したSiH
4かSi
2H
6を用い、ドーピングガスには水素希釈したホスフィン(PH
3)またはアルシン(AsH
3)を用いる。また、成長は水素ガス雰囲気下で行い、選択性を向上させるため、必要に応じてHClを添加する。
【0043】
次いで、ソース/ドレイン領域を埋めるように層間絶縁膜12を堆積し、CMPにて表面を平坦化した後にダミーゲート7上のハードマスク8、ダミーゲート7及びダミーゲート絶縁膜6を順にエッチング除去して
図5Gの構造を得る。ここで、ダミーゲート7上のハードマスク8、ダミーゲート7、ダミーゲート絶縁膜6それぞれのエッチング条件は、これまでに述べてきたそれぞれの材料に応じた選択エッチング条件にて行う。ダミーゲート7及びダミーゲート絶縁膜6のエッチング時にはfin上のハードマスク3がfinチャネルの保護膜として働く。
【0044】
次いで、
図5Gの構造上にゲート絶縁膜13、n型仕事関数調整用金属(WFM:Work function metal)14またはp型WFM15を堆積し、更にゲート金属16を堆積した後、CMPにより表面を平坦化して
図5Hに示す構造を得る。n型WFM14及びp型WFM15はそれぞれ、n型MOSFET領域及びp型MOSFET領域に別々に形成される。このWFMの分離は例えば、以下のように行うことができる。まずn型WFM14を成膜した後にマスクパターニングを施してp型MOSFET領域のn型WFM14を除去する。この後、p型WFM15を全面に成膜した後にマスクパターンを施し、n型MOSFET領域のp型WFM15を除去する。WFMのエッチング時にも、fin上に形成されたハードマスク3がfinチャネルの保護膜として働く。
【0045】
ゲート絶縁膜13は、ゲートによるトランジスタ動作制御性を高める目的で、酸化ハフニウム(HfO
2)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の高誘電体材料やこれら高誘電体材料の積層膜であると良い。また、高誘電体材料にジルコニウム(Zr)やランタン(La)、またはイットリウム(Y)等の金属材料を添加してもゲート絶縁膜の特性改善に有効である。さらに、ゲート絶縁膜13の形成前に熱酸化またはプラズマ酸化によってfinチャネルのSi表面に薄い酸化膜(SiO
2)を形成しても良い。高誘電体材料とSiチャネルまたはSi偏析層付きSiGeチャネルとの界面に極薄(約1nm以下)のSiO
2膜を介在させることによって界面特性の一層の向上が可能となる。
【0046】
図5Hの構造上に金属配線を形成し、ゲート及びソース/ドレインと接続することにより、CMOSトランジスタを有するロジック集積回路が形成できる。
【0047】
図5Hの構造におけるfinに垂直な断面を
図6に示す。ここでは、単純化してn型MOSFETとp型MOSFETのそれぞれにつき、fin1本のみを図示している。SiGeチャネル2とゲート絶縁膜13とはSi偏析層4により隔てられており、リーク電流の発生及びキャリアトラップを誘発するSiGe/ゲート絶縁膜界面の形成を抑制している。
【0048】
Si偏析層4がトランジスタ特性に与える効果を
図7に示す。
図7は、SiGeチャネルを有するfinFETにおけるチャネルとゲートとの界面近傍の積層膜と、それに対応するバンド構造及びチャネル中のSi,Ge組成を示したものである。
図7におけるバンド構造図は、p型MOSFETがオンの状態、すなわちp型WFM15にマイナスの電圧が印加された状態を示しており、これに伴ってゲート絶縁膜13近傍のSiGeチャネル2及びSi偏析層4にはバンドの曲がりが生じている。図に示されるように、このバンドの曲がりにより、キャリアである正孔70がSiGeチャネル2とSi偏析層4との界面近傍に蓄積する。ここで、Si偏析層4は、SiGeチャネル2よりもバンドギャップが広く、価電子帯においてSiGeチャネル2との間に20meV程度のバンド不連続(オフセット)を有する。このバンドオフセットがSiGeチャネル2とゲート絶縁膜13との界面から正孔70を離す役割を果たしている。これにより、チャネル/ゲート絶縁膜界面のトランジスタ特性への影響を一層抑制することができる。また、本実施例ではSi偏析層4の厚さを約1nm未満に制御することができるため、Si偏析層4はその薄さからバリア膜としての役割のみを有し、Si偏析層4中に正孔が進入してSi偏析層4そのものがチャネルとして作用することは避けられる。加えて、Si偏析現象はSiGe層におけるSi原子とGe原子との置換により形成されるため、SiGeチャネル2とSi偏析層4との界面近傍では、置換現象の影響でGe組成が局所的に増大することが予想される。SiGeチャネル2の正孔70が蓄積された領域において、チャネル内部のGe組成よりも高いGe組成となっていることにより、移動度の一層の向上が期待できる。
【0049】
このように、fin構造を有するチャネルの加工とSiGeチャネル表面への極薄膜Si偏析層の形成を同一装置における連続プロセスにて行うことにより、SiGeチャネルにダメージを与えることなく、良好なチャネル/ゲート絶縁膜界面を形成することができる。これにより、チャネル/ゲート絶縁膜界面状態に起因するオフ電流の増大やオン電流の劣化をともに抑制し、高いオン電流と低いオフ電流をともに実現可能な半導体素子を作製することが可能となる。
【実施例2】
【0050】
以下、実施例2のシリコンゲルマニウム(SiGe)チャネルを有する半導体素子、その製造方法について説明するが、実施例1との相違点を中心に説明し、重複する説明については省略する。
図8に、実施例2の半導体素子のチャネル形成方法を示す。実施例1の工程とはSi偏析層の形成タイミングが異なる。
図8(a)は、
図1(b)のfin構造を形成した後に、SiGeチャネルに対してSi偏析層を形成させることなく、STI絶縁膜を堆積し、その後CMPにて平坦化して得られる構造の断面図である。Si基板501のn型MOSFET領域にはSi finが形成され、p型MOSFET領域にはSi finの上部領域がSi層からSiGe層502に置き換わったfin(SiGe fin)が形成されている。このfin構造とfin構造をエッチング加工するときのマスクとなるハードマスク503とがSTI絶縁膜504により覆われている。
図8(a)の構造を起点としてハードマスク503をエッチングし、連続してSTI絶縁膜504を異方性エッチングによりエッチバックして素子分離領域を形成し、
図8(b)の構造を得る。ここでは、エッチング後のSTI絶縁膜504の表面がSiGeチャネル502の底面よりも数nm程度低くした例を示しているが、同じ高さであってもよい。このエッチング工程に連続して、エッチングを行ったプラズマ装置の同一チャンバ内にて水素プラズマ処理を行い、Si偏析現象を誘発させて、SiGeチャネル502の表面に極薄膜Si偏析層505を形成して
図8(c)の構造を得る。
【0051】
実施例2では、fin上部のハードマスク503が除去されることにより、トランジスタ完成時にはfin型チャネルの側壁から上部までがゲートにより覆われる。これにより、実施例1の構造よりも強いゲートの制御性を可能とする。
【0052】
この連続工程におけるプラズマ処理装置の処理条件を
図9に示す。ハードマスク503のエッチングは、その材料に応じて、STI絶縁膜504、Si fin表面及びSiGe fin表面に対して高い選択性を保ってエッチングすることが可能なガスを選択する。例えば、ハードマスク503の材料にSi
3N
4を用いた場合にはCF
4等のフロロカーボンガス系と酸素の混合ガスにCl
2等を添加することで他の材料に対するエッチング選択比を高く保つことができる。続くSTI絶縁膜504のエッチングにおいては、例えばSTI絶縁膜504の材料にSiO
2を用いた場合はCF
4またはCHF
3等のフロロカーボン系ガスを用いると、Si fin及びSiGe finに対して高い選択比を保ったエッチングが可能となる。ハードマスク503及びSTI絶縁膜504のエッチングは異方性エッチングをベースとするエッチングであり、ある程度の高周波バイアスを基板に印加する条件とする。一方、STI絶縁膜504のエッチバック後のH
2プラズマ処理は、実施例1と同様、基板に印加する高周波バイアスはエッチングを行う場合に比べて低下させる、あるいは高周波バイアスを印加しない条件とする。
【0053】
なお、
図8においてはSiGeチャネル502に対して極薄膜Si偏析層505を形成させることなくSTI絶縁膜504を堆積した例を示したが、実施例1と同様にSiGeチャネル502に対して極薄膜Si偏析層505を形成させて
図1(c)の構造を形成した後に、
図8(a)に示したようなSTI絶縁膜504を堆積させてもよい。この場合は、STI絶縁膜504を異方性エッチングによりエッチバックした後に、再度SiGeチャネルに極薄膜Si偏析層505を形成する。実施例2ではハードマスク503を除去するため、SiGe finの上部においてSiGe層502が露出するためである。このため、少なくとも2回の極薄膜Si偏析層形成工程が必要になる。
【0054】
実施例2の半導体素子におけるfinに垂直な断面を
図10に示す。fin構造の上に、ゲート絶縁膜506、n型WFM507またはp型WFM508、ゲート金属509が堆積されている。n型WFM507はn型MOSFET領域に、p型WFM508はp型MOSFET領域にそれぞれ形成されている。
図10に示すMOSFETは、
図8(c)に示した構造に対して、実施例1として説明した
図5C〜Hに示したプロセスを実施することにより得ることができる。
【0055】
実施例2においては、SiGe fin 502が露出した後に水素プラズマ処理を施すことで、SiGe fin 502の側壁及び上部ともに均一な厚さの極薄膜Si偏析層505で覆われている。本実施例におけるSi偏析効果は表面近傍のみで生じる現象であるため、Si偏析層505の厚さはプラズマ処理時間に依らず、ほぼ一定となる。同じ理由で、fin構造に対するSTI絶縁膜504の堆積の前後2回、Si偏析層を形成させた場合も同様に、SiGe fin 502の側壁及び上部ともに均一な厚さの極薄膜Si偏析層505を形成できる。
【0056】
上述のように、
図10に示すMOSFETはfin型チャネルの側壁及び上部ともにゲートで覆われているため、実施例1のMOSFETに比べてゲート制御性に優れたMOSFET特性を得ることができる。
【実施例4】
【0061】
実施例4のシリコンゲルマニウム(SiGe)チャネルを有する半導体素子は、チャネルの周囲が全てゲートで覆われたゲートオールアラウンド構造を有する(GAA型FET)。以下の説明においても、実施例1〜3との相違点を中心に説明し、重複する説明については省略する。
図13Aには、Si基板701、Si基板701上に形成された単結晶Siまたは歪が緩和された単結晶SiGeであるエピタキシャル成長層702及び交互に積層された複数の単結晶Si層703と複数の単結晶SiGe層704からなる積層膜をfin状に加工し、STI絶縁膜705を形成した構造を示す。
【0062】
図13Aの構造において、Si層または歪緩和SiGe層702、Si層703とSiGe層704を交互に積層した積層膜は、Si基板701上に連続してCVD等によるエピタキシャル成長により形成する。fin構造の加工工程及びSTI絶縁膜705の形成工程は、他の実施例と同等である。エピタキシャル成長層702をSi層とする場合は、Si層703は歪を含有しておらず、SiGe層704のみ圧縮性の歪を含有する。この場合、SiGe層704のGe組成は20%〜25%の範囲で調整することが望ましい。一方、エピタキシャル成長層702に歪緩和SiGe層とする場合は、Si層703には引っ張り歪が加わる。SiGe層704には圧縮性の歪が掛かっていることが望ましいため、SiGe層704は歪緩和SiGe層702に比べて高いGe組成を有することが望ましい。例えば、歪緩和SiGe層702のGe組成を20%〜25%の範囲で調整し、歪を含有するSiGe層704のGe組成を約30%〜60%の範囲で調整すると良い。引っ張り歪が加わると、n型MOSFETにおける電子の移動度が向上し、圧縮歪が加わるとp型MOSFETにおける正孔の移動度が向上する。従って、エピタキシャル成長層702を歪緩和SiGe層とした場合には、Si層とした場合に比べてn型MOSFETの特性向上が期待できる。
【0063】
なお、エピタキシャル成長層702を歪緩和SiGe層とする場合には、エピタキシャル成長の際のSiGe層の膜厚を歪が緩和する臨界膜厚以上にする必要があるため、歪緩和により発生する欠陥の影響を抑制する必要がある。例えばエピタキシャル成長中にGe組成を徐々に増加させたり、バッファ層を低温にて成膜したりすると良い。一方、歪SiGe層704の膜厚及びエピタキシャル成長層702に歪緩和SiGe層を用いた場合の歪Si層703の膜厚は歪が緩和する臨界膜厚以下とする。また、Si層703とSiGe層704の膜厚はトランジスタ特性を鑑みた設計も重要となり、例えば、ゲート長が15nm〜30nmの場合は、Si層703とSiGe層704の膜厚を5nm〜20nm程度に設計すると良い。
【0064】
図13Aに示す構造に、実施例1の
図5B〜Fに相当するプロセスを施し、
図13Bの構造を得る。
図14に、
図13Bの構造を上方から見た平面図を示す。Si層703とSiGe層704の積層膜に形成されたfin構造上にダミーゲート絶縁膜706、ダミーゲート707、ハードマスク708が形成され、ダミーゲート707側壁にはダミーゲート側壁絶縁膜709が形成されている。また、n型MOSFETのソース/ドレイン領域にはエピタキシャル成長したn型Siのソース/ドレイン713が形成され、p型MOSFETのソース/ドレイン領域にはエピタキシャル成長したp型SiGeのソース/ドレイン710が形成されている。
【0065】
この後、全面に層間絶縁膜711を堆積した後CMPによる平坦化を行い、パターニングしたレジスト712によりp型MOSFET領域を覆うことで
図13Cに示す構造を得る。
図13Cの構造につき、
図14のa−a’を結ぶ線におけるn型MOSFETのゲートに垂直な断面を
図15Aに示す。
図15Aにおいて、ゲートに垂直な断面におけるSi層703とSiGe層704との積層膜の側壁は、n型Siソース/ドレイン713によって覆われている。
【0066】
次に、レジスト712をマスクとするエッチングを施し、ダミーゲート上ハードマスク708、ダミーゲート707、及びダミーゲート絶縁膜706を順次エッチング除去し、
図13Dの構造を得る。このエッチングにより、n型MOSFETのゲート形成領域においてSi層703とSiGe層704との積層膜のfin構造が露出する。
図13Dの構造につき、
図14のa−a’を結ぶ線におけるn型MOSFETのゲートに垂直な断面を
図15Bに示す。
【0067】
図13D及び
図15Bに示すn型MOSFET領域におけるfin構造から、SiGe層704をSi層703及びその他の層に対して選択的にエッチング除去して、
図13E及び
図15Cの構造を得る。SiGe層704の選択エッチングは、例えば酢酸(CH
3COOH)と過酸化水素水(H
2O
2)及びフッ化水素酸(HF)等酸性の混合液を用いたウェットエッチングによって行っても良いし、一フッ化塩素(ClF)、一臭化ヨウ素(IBr)、三フッ化塩素(ClF
3)、三フッ化臭素(BrF
3)等のハロゲン化物を用いたドライエッチングによって行っても良い。このエッチングにより、Si層703が細線(nanowire)状またはシート(nanosheet)状のチャネルに加工される。
【0068】
次いで、レジスト712を除去後、レジスト714にてn型MOSFET領域を覆い、
図13Fの構造を得る。ここで、レジスト714は、スピン・オン・カーボン膜/スピン・オン・グラス膜/有機レジストからなる三層レジストであっても良い。ここで、スピン・オン・カーボン膜は主に炭素からなる有機膜で、スピン・オン・グラス膜はSi、酸素を含む有機膜である。通常、三層レジストを用いた加工では、レジストを用いてスピン・オン・グラス膜をエッチングし、スピン・オン・グラス膜をマスクとしてスピン・オン・カーボン膜をエッチングした後、レジスト及びスピン・オン・グラス膜を除去してスピン・オン・カーボン膜をマスクとして用いる場合が多く、この場合、レジスト714はスピン・オン・カーボン膜から主に構成されることになる。
図13Fの構造につき、
図14のb−b’を結ぶ線におけるp型MOSFETのゲートに垂直な断面を
図16Aに示す。
図16Aにおいて、ゲートに垂直な断面におけるSi層703とSiGe層704との積層膜の側壁は、p型SiGeソース/ドレイン710によって覆われている。
【0069】
次に、レジスト714をマスクとするエッチングを施し、ダミーゲート上ハードマスク708、ダミーゲート707、及びダミーゲート絶縁膜706を順次エッチング除去し、
図13Gの構造を得る。このエッチングにより、p型MOSFETのゲート形成領域においてSi層703とSiGe層704との積層膜のfin構造が露出する。
図13Gの構造につき、
図14のb−b’を結ぶ線におけるp型MOSFETのゲートに垂直な断面を
図16Bに示す。
【0070】
図13G及び
図16Bに示すp型MOSFET領域におけるfin構造から、Si層703をSiGe層704及びその他の層に対して選択的にエッチング除去して、
図13H及び
図16Cの構造を得る。このエッチングはダミーゲート707等のエッチング除去に連続して、同一のチャンバ内において行われる。このエッチングにより、SiGe層704は細線(nanowire)状またはシート(nanosheet)状のチャネルに加工される。この状態において、SiGe層704の表面及びゲート側壁絶縁膜709内のp型SiGeソース/ドレイン710が露出している。
【0071】
Si層703の選択エッチング後、同一チャンバ内にて連続してH
2プラズマ処理を行ってSi偏析現象を誘発し、露出したSiGe層704及びp型SiGeソース/ドレイン710の表面に極薄膜Si偏析層715を形成して、
図13I及び
図16Dの構造を得る。
【0072】
図13Gに示すダミーゲート除去工程から
図13Iに示す水素プラズマ処理によるSi偏析工程までを同一チャンバ内にて一貫処理で行うことにより、工程数の削減とチャネル−ゲート間の界面特性の向上を同時に実現可能なプロセスとなる。この一貫プロセスにおけるプラズマ処理装置の処理条件を
図18に示す。
【0073】
ダミーゲート上ハードマスク708のエッチングは、ハードマスク材料及び周辺材料に応じて、エッチングガスを選択する。即ち、ハードマスク708の材料にSi
3N
4を用いた場合はCF
4等のフロロカーボン系ガスと酸素の混合ガスにCl
2等を添加することで他の材料に対するエッチング選択比を高く保ったエッチングが可能となる。ダミーゲート707のエッチング時にはCl
2またはHBr等のハロゲン系のガスを用いることで、下地のダミーゲート絶縁膜706をストッパとする非晶質Siまたは多結晶Siの選択エッチングが可能となる。続いて行うダミーゲート絶縁膜706エッチング時には、CF
4またはCHF
3等のフロロカーボン系ガスを用いる。ハードマスク708、ダミーゲート707及びダミーゲート絶縁膜706の連続エッチングは、一定程度の垂直性が求められるため、必要な高周波バイアスを基板に印加する。続いて、Si層703の選択エッチングを行う際には、等方性のエッチングが求められるため、基板に印加する高周波バイアスはダミーゲート707等のエッチングを行う場合に比べて低下させる、あるいは高周波バイアスを印加しない条件とする。選択エッチングに用いるプラズマの原料ガスは、H
2に加え、例えば六フッ化硫黄(SF
6)またはフロロカーボン系ガスを用いると良い。続くSi偏析を誘発するH
2プラズマ処理は、主にH
2ガスを用い、Si層703選択エッチング時と同様、基板に印加する高周波バイアスはダミーゲート707等のエッチングを行う場合に比べて低下させる、あるいは高周波バイアスを印加しない条件とする。
【0074】
図13I及び
図16Dの構造にゲート絶縁膜716、n型WFM717またはp型WFM718を堆積し、更にゲート金属719を堆積した後、CMPにより表面を平坦化して
図13J及び
図16Eの構造を得る。n型WFM717及びp型WFM718はそれぞれ、n型MOSFET領域及びp型MOSFET領域に別々に形成される。ゲート積層膜の形成方法は実施例1で示した方法と同等とする。
【0075】
実施例4のMOSFET構造につき、
図14のc−c’を結ぶ線における断面を
図17に示す。Siナノワイヤ(またはナノシート)チャネル703及びSiGeナノワイヤ(またはナノシート)チャネル704の周囲がゲートで覆われたゲートオールアラウンド構造を有しており、finFET構造を有するMOSFETに比べて、よりゲート制御性に優れたトランジスタの作製が可能となる。また、ゲートオールアラウンド型MOSFETにおいて、SiGeチャネル704の表面は極薄膜Si偏析層715で保護されており、チャネル/ゲート絶縁膜界面状態に起因するトランジスタオフ電流の増大やオン電流の劣化をともに抑制し、高いオン電流と低いオフ電流を共に実現可能な半導体素子を作製することが可能となる。