特許第6878081号(P6878081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6878081水素精製デバイス及び水素精製デバイスを使用した水素精製システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878081
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】水素精製デバイス及び水素精製デバイスを使用した水素精製システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20210517BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20210517BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20210517BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20210517BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B01D53/22
   B01D63/00 500
   B01D63/00 510
   B01D63/08
   B01D71/02 500
   C01B3/56 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-62589(P2017-62589)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-189765(P2017-189765A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-76812(P2016-76812)
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】芳村 智孝
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−173534(JP,A)
【文献】 特開2007−245123(JP,A)
【文献】 特開2009−106794(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/019906(WO,A1)
【文献】 特表2008−513334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0277322(US,A1)
【文献】 特表2011−526237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C01B 3/00− 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を選択的に透過する水素透過膜を具備し、原料ガスを供給されて、前記水素透過膜を透過した精製ガスが外部に流出する水素精製デバイスであって、
前記水素透過膜を両面から挟んで支持する2つの多孔質支持体と、
内部に形成された空間において前記原料ガスと前記水素透過膜とを反応させるケーシングとを具備し、
前記多孔質支持体が前記ケーシング内部に収容されており、前記多孔質支持体の外縁よりも前記水素透過膜の外縁が外側にあり、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と前記ケーシングとが気密に接合されており、
前記2つの多孔質支持体が、前記精製ガスが流出する側から前記水素透過膜を支持する第1多孔質支持体と前記原料ガスが流入する側から前記水素透過膜を支持する第2多孔質支持体とであって、
前記第2多孔質支持体と前記ケーシングとの間に前記原料ガスが流入する原料ガス流入空間が形成されており、
前記ケーシングには、前記原料ガスを前記水素透過膜に対して供給する原料ガス供給口と、前記水素透過膜を透過しなかった原料ガスを外部へ排出する原料ガス排出口とが形成されており、
前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口のうち一方が前記第2多孔質支持体を収容する第2収容空間に対して開口し、他方が前記原料ガス流入空間に対して開口し、
前記第2収容空間に面して形成された前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口の周囲には、前記第2多孔質支持体と接するように前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口と前記原料ガス流入空間とを仕切る障壁が形成されていることを特徴とする水素精製デバイス。
【請求項2】
前記水素透過膜の両面が前記ケーシングに溶接接合されていることを特徴とする請求項1記載の水素精製デバイス。
【請求項3】
前記ケーシングが前記水素透過膜との溶接部分又はその近傍に熱集中構造を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の水素精製デバイス。
【請求項4】
水素を選択的に透過する水素透過膜を具備し、原料ガスを供給されて、前記水素透過膜を透過した精製ガスが外部に流出する水素精製デバイスであって、
前記水素透過膜を両面から挟んで支持する2つの多孔質支持体と、
内部に形成された空間において前記原料ガスと前記水素透過膜とを反応させるケーシングとを具備し、
前記多孔質支持体が前記ケーシング内部に収容されており、前記多孔質支持体の外縁よりも前記水素透過膜の外縁が外側にあり、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と前記ケーシングとが、少なくとも前記水素透過膜の外縁の近傍に形成された溶接部分において気密に接合されており、
前記ケーシングが、前記溶接部分又は前記溶接部分の近傍に熱集中構造を備えるものであり、
前記熱集中構造が前記ケーシングの側周面を周回するように形成されていることを特徴とする水素精製デバイス。
【請求項5】
前記2つの多孔質支持体が、前記精製ガスが流出する側から前記水素透過膜を支持する第1多孔質支持体と前記原料ガスが流入する側から前記水素透過膜を支持する第2多孔質支持体であって、
前記第2多孔質支持体と前記ケーシングとの間に前記原料ガスが流入する原料ガス流入空間が形成されたことを特徴とする請求項記載の水素精製デバイス。
【請求項6】
前記ケーシングには、前記原料ガスを前記水素透過膜に対して供給する原料ガス供給口と、前記水素透過膜を透過しなかった原料ガスを外部へ排出する原料ガス排出口とが形成されており、
前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口のうち一方が前記第2多孔質支持体を収容する第2収容空間に対して開口し、他方が前記原料ガス流入空間に対して開口し、
前記第2収容空間に面して形成された前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口の周囲には、前記第2多孔質支持体と接するように前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口と前記原料ガス流入空間とを仕切る障壁が形成されていることを特徴とする請求項記載の水素精製デバイス。
【請求項7】
前記水素透過膜がパラジウム合金であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の水素精製デバイス。
【請求項8】
前記多孔質支持体が金属焼結体であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の水素精製デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の水素精製デバイスと、
前記水素精製デバイスに前記原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記水素精製デバイスの温度を制御する温度制御機構とを備えたことを特徴とする水素精製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高純度の水素精製に用いる水素精製デバイス及び水素精製デバイスを使用した水素精製システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高純度の水素ガスを精製する水素精製システムに使用される水素精製デバイスでは、水素を選択的に透過する水素透過膜に対して供給される原料ガスの圧力が高い方が、水素透過膜を透過して精製される水素ガスの流量も多くなるので、水素透過膜には耐圧性が要求される。
従来は、原料ガス側からの圧力に対する水素透過膜の耐圧性を向上するために、水素透過膜の精製ガス側から水素透過膜を支持する多孔質支持体が設けられている。
【0003】
このような従来の水素精製デバイスは、例えば特許文献1及び2に記載されているように、めっき法や蒸着法で表面に水素透過膜を形成した多孔質支持体や、圧延した水素透過膜を固定部材によって表面に固定した多孔質支持体を、内部をガスが流れるケーシングに固定することによって製造されている。
【0004】
しかしながら、従来の水素精製デバイスでは、多孔質支持体が精製ガス側から水素透過膜を支持しているので、原料ガス側からの圧力に対しては、耐圧性を向上することができるが、精製ガス側からの圧力に対しては水素透過膜の耐圧性が低いという問題がある。
【0005】
また、従来の水素精製デバイスでは、高純度の水素ガスを得るために、水素透過膜を多孔質支持体上に固定し、さらにこの多孔質支持体をケーシングに固定するという複雑な構造を、原料ガスが水素透過膜を迂回して精製ガス側に漏れないように全て気密に接合して組み立てる必要があるので製造が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−201304号公報
【特許文献2】特開2008−155118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、製造が簡単で水素透過膜の耐圧性が高い水素精製デバイスを提供することを主な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水素精製デバイスは、水素を選択的に透過する水素透過膜を具備し、原料ガスを供給されて、前記水素透過膜を透過した精製ガスが外部に流出する水素精製デバイスであって、前記水素透過膜を両面から挟んで支持する2つの多孔質支持体と、内部に形成された空間において原料ガスと前記水素透過膜とを反応させるケーシングとを具備し、前記多孔質支持体が前記ケーシング内部に収容されており、前記多孔質支持体の外縁よりも前記水素透過膜の外縁が外側にあり、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と前記ケーシングとが気密に接合されていることを特徴とする。
【0009】
このような水素精製デバイスによれば、前記水素透過膜を前記多孔質支持体によって両面から挟んで支持しているので、不測の事態によって、精製ガス側から圧力がかかった場合でも、前記水素透過膜の破損を防ぐことができる。
また、前記水素透過膜が原料ガス側及び精製ガス側のどちら側からの圧力にも耐圧性を持つので、前記水素透過膜のどちらの面を原料ガス側に向けて水素精製システムに取り付けても問題なく使用することができる。
【0010】
また、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と、前記ケーシングとが気密に接合されており、原料ガスが前記水素透過膜を迂回して精製ガス側へ漏れることを防ぐことができるので、前記水素透過膜と前記多孔質支持体の間、及び前記多孔質支持体と前記ケーシングとの間については気密に接合する必要がなく、水素精製デバイスの製造を簡単にすることができる。
【0011】
前記水素透過膜の両面が前記ケーシングに溶接接合されている水素精製デバイスであれば、特別な部品等を必要とせず、前記水素透過膜と前記ケーシングとを気密に接合することができるので、より製造を簡単にすることができる。
【0012】
前記ケーシングが前記水素透過膜との溶接部分、又は該溶接部分の近傍に熱集中構造を持つものであれば、前記水素透過膜を前記ケーシングと溶接するときに該熱集中構造の部分だけを効率よく加熱することができるので、該熱集中構造が無い場合と比べて短時間で溶接できる。
さらに、溶接のための加熱時間が比較的短くて済むので、熱の影響による前記水素透過膜の水素透過能の低下を低減することができる。
【0013】
前記2つの多孔質支持体のうちの1つであり、前記原料ガスが流入する側から前記水素透過膜を支持する第2多孔質支持体と前記ケーシングとの間に前記原料ガスが流入する原料ガス流入空間が形成されたものであれば、該ガス流入空間が無い場合と比べて、供給された原料ガスが前記ケーシング内に広がりやすく、より前記水素透過膜と接触しやすくなるので、前記水素透過膜と接触せずに排出される原料ガスを減らすことができる。
【0014】
前記ケーシングには、前記原料ガスを前記水素透過膜に対して供給する原料ガス供給口と、前記水素透過膜を透過しなかった原料ガスを外部へ排出する原料ガス排出口とが形成されており、前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口のうち一方が前記第2多孔質支持体を収容する第2収容空間に対して開口し、他方が前記原料ガス流入空間に対して開口し、前記第2収容空間に面して形成された前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口の周囲には、前記第2多孔質支持体と接するように前記原料ガス供給口又は原料ガス排出口と前記原料ガス流入空間とを仕切る障壁が形成されていることを特徴とする水素精製デバイスであれば、供給された原料ガスが前記原料ガス流入空間だけを流れて前記原料ガス排出口から排出されることを抑えて、前記水素透過膜に接することなく外部へ排出される原料ガスをより減らすことができる。
【0015】
本発明の具体的な実施態様としては、前記水素透過膜がパラジウム合金であるものが挙げられる。
【0016】
本発明の具体的な実施態様としては、前記多孔質支持体が金属焼結体であるものが挙げられる。
【0017】
本発明の具体的な実施態様としては、水素を選択的に透過する水素透過膜を具備し、原料ガスを供給されて、前記水素透過膜を透過した精製ガスが外部に流出する水素精製デバイスであって、前記水素透過膜を両面から挟んで支持する2つの多孔質支持体と、内部に形成された空間において原料ガスと前記水素透過膜とを反応させるケーシングとを具備し、前記多孔質支持体が前記ケーシング内部に収容されており、前記多孔質支持体の外縁よりも前記水素透過膜の外縁が外側にあり、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と前記ケーシングとが気密に接合されていることを特徴とする水素精製デバイスと、前記水素精製デバイスに前記原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、前記水素精製デバイスの温度を制御する温度制御機構とを備えた水素精製システムが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
このような水素精製デバイスによれば、前記水素透過膜を前記多孔質支持体によって両面から挟んで支持しているので、不測の事態によって、精製ガス側から圧力がかかった場合でも、前記水素透過膜の破損を防ぐことができる。
また、前記水素透過膜が原料ガス側及び精製ガス側のどちら側からの圧力にも耐圧性を持つので、前記水素透過膜のどちらの面を原料ガス側に向けて水素精製システムに取り付けても問題なく使用することができる。
【0019】
また、前記多孔質支持体の外縁よりも外側にある前記水素透過膜の周辺部と、前記ケーシングとが気密に接合されており、前記原料ガスが前記水素透過膜を迂回して精製ガス側へ漏れることを防ぐことができるので、前記水素透過膜と前記多孔質支持体の間、及び前記多孔質支持体と前記ケーシングとの間については気密に接合する必要がなく、水素精製デバイスの製造を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る水素精製デバイスの構造模式図。
図2】本実施形態に係る水素精製デバイスの断面図。
図3】本実施形態に係る水素精製デバイスの熱集中構造の模式図。
図4】本発明の他の実施形態に係る水素精製デバイスの構造模式図。
図5】本発明の他の実施形態に係る水素精製デバイスの構造模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
本発明に係る水素精製デバイス1は、例えば、ガスクロマトグラフィーに使用されるキャリアガス、メイクアップガス又は水素炎イオン化検出器の燃料等としても使用可能な純度7N以上の高純度水素を精製する水素精製システム100に使用されるものである。
【0022】
前記水素精製システム100は、図1に示すように、水素精製デバイス1と、該水素精製デバイス1に前記原料ガスを供給する原料ガス供給機構2と、該水素精製デバイス1から前記精製ガスを外部へ導出する精製ガス流出管3と、熱電対41とヒーター42とを備え、前記水素精製デバイス1の温度を制御する温度制御機構4とを具備するものである。
【0023】
前記水素精製システム100は、例えば、原料ガスを保存する高圧ガス容器や、水素発生器などと接続され、高圧ガス容器や水素発生器から供給される水素を含む原料ガスを前記原料ガス供給機構2によって前記水素精製デバイス1に送り込み、前記水素精製デバイス1によって原料ガスから水素ガスだけを分離することで、高純度の水素ガスを精製するものである。
【0024】
原料ガスから水素ガスを分離する前記水素精製デバイス1は、図2に示すように、水素を選択的に透過する水素透過膜11と、水素透過膜11の両面を挟んで支持する2つの多孔質支持体12と、内部に形成された空間において前記水素透過膜11と原料ガスとを反応させるケーシング13とを具備するものである。
【0025】
前記水素透過膜11は、例えば、400℃程度の高温条件において、原料ガスに含まれる水素分子及び水素原子と反応し、水素分子を水素原子に、また水素原子を水素分子に変化させる性質を持つ。水素原子は他のガス分子に比べて粒径が小さく、拡散によって前記水素透過膜11を通過することができるので、水素分子だけが原料ガスから分離されるというものである。
【0026】
前記水素透過膜11は、例えば、40重量%の銅を含むパラジウム合金を圧延して形成した、例えば、膜厚が10μmの円形状の薄膜である。
【0027】
前記多孔質支持体12は、原料ガスが透過できるサイズの孔を持つ多孔質体であり、例えば、前記水素透過膜11の直径よりも小さい直径を持つ円盤状のものである。
前記多孔質支持体12は、前記水素透過膜11を両面から挟んで支持するために、例えば、同じ形状のものが2つ用意されている。
前記多孔質支持体12は、例えば、粉状の金属粒を融点以下で加熱して結合させ、多孔質体とした金属焼結体からなるものである。
【0028】
前記ケーシング13は、例えば、円筒状のものであり、内部に形成された空間に前記多孔質支持体12を収容するものである。
前記ケーシング13は、例えば、ステンレスからなる円筒状の第1ケーシング部材131と、前記第1ケーシング部材131と前記水素透過膜11を挟んで同軸上に配置される、例えば、ステンレスからなる円筒状の第2ケーシング部材132とを具備するものである。
【0029】
前記第1ケーシング部材131には、前記水素透過膜11と接する面からその内部に向かって、前記2つの多孔質支持体12のうちの1つであり、前記水素透過膜11を精製ガスが流出する側から支持する第1多孔質支持体121の外径と同じ内径で、前記第1多孔質支持体121の厚みと軸方向の長さが同じである円柱状の第1収容空間S1が形成されている。
【0030】
前記第1ケーシング部材131には、前記第1収容空間S1に続けて、前記多孔質支持体12の外径よりも小さい内径を持つ円柱状の精製ガス流出空間S2が形成されている。
【0031】
前記精製ガス流出空間S2の容積は、前記第1収容空間S1の容積よりも小さいものであり、前記第1収容空間S1と前記精製ガス流出空間S2とを合わせた体積、すなわち前記ケーシング13内部の水素透過膜11に対して精製ガスが流出する側の体積は、例えば、1ccである。
【0032】
前記第2ケーシング部材132には、前記水素透過膜11と接する面からその内部に向かって、前記2つの多孔質支持体12のうちの1つであり、前記水素透過膜11を原料ガスが流入する側から支持する第2多孔質支持体122の外径と同じ内径で、前記第2多孔質支持体122の厚みと軸方向の長さが同じ円柱状の第2収容空間S3が形成されている。
【0033】
前記第2ケーシング部材132には、前記第2収容空間S3に続けて、さらに、外円の内径が前記第2多孔質支持体122の外径よりも小さいドーナツ状の原料ガス流入空間S4が形成されている。
【0034】
前記第1ケーシング部材131には、前記精製ガス流出空間S2から精製ガスがケーシング13外部に流出するための精製ガス流出口P1が形成されている。
前記第2ケーシング部材132には、水素精製デバイス1の外側から原料ガスを前記第2収容空間S3に供給するための原料ガス供給口P2が形成されている。
また、前記第2ケーシング部材132には、前記原料ガスを滞留させる原料ガス流入空間S4と、この原料ガス流入空間から前記水素透過膜11と反応した後の原料ガスを排出するための原料ガス排出口P3が形成されている。
【0035】
前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132にはそれぞれ、図3に示すように、前記水素透過膜11に接する面から、例えば、170μm程度離れた位置の側周面を周回するように形成された、断面がV字型の切込み部Cを有する。
第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132に形成された2つの切込み部Cは、第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132のうち前記水素透過膜11の周辺部111に溶接される部分とともに熱集中構造Hを形成するものである。
【0036】
前記水素精製デバイス1を製造する方法は以下のようなものである。
まず、前記第1収容空間S1及び第2収容空間S3にそれぞれ1つずつ前記多孔質支持体12を収容し、前記多孔質支持体12を収容した前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132で前記水素透過膜11を両面から挟む。
このとき、前記水素透過膜11を両面から挟むように固定された前記2つの多孔質支持体12の前記水素透過膜11と触れている面の外縁E1である前記多孔質支持体12の側周面よりも前記水素透過膜11の周辺部111が外側に位置し、さらに前記2つの多孔質支持体12の前記外縁E1から外側に向けて、例えば、前記2つの多孔質支持体12の前記水素透過膜11と触れている面と平行に突出した前記水素透過膜11の周辺部111の外縁E2がその全周にわたって前記ケーシング13の側周面よりも外側に出るように配置する。
なお、前記周辺部111とは、該水素透過膜11の前記2つの多孔質支持体12によって挟持されている部分から外側にはみ出た部分のことである。また、該周辺部は後述の溶接部分を少なくとも含む領域である。
【0037】
次に、前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132の側面に周回して形成された熱集中構造Hの部分を前記水素透過膜11の端面から、例えば、レーザー溶接などにより周回溶接して、前記水素透過膜11と前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132とを気密に溶接接合する。
このとき溶接される溶接部分とは、前記レーザー溶接時にレーザー光が照射される範囲、及び前記水素透過膜11の周辺部111と前記ケーシング13とが該レーザー溶接によって溶接接合される範囲を指す。
【0038】
このように製造された前記水素精製デバイス1により、原料ガスから水素ガスを精製するときには、高圧ガス容器又は水素発生器等から供給される水素を含む原料ガスが前記原料ガス供給機構2によって、前記原料ガス供給口P2に接続された原料ガス供給管21を通して、前記ケーシング13内に供給される。
【0039】
前記ケーシング13内に供給された前記原料ガスは、前記第2収容空間S3内の多孔質支持体12を透過して前記水素透過膜11に接しながら移動し、前記水素透過膜11を透過しなかった原料ガスは、前記原料ガス流入空間S4に設けられた原料ガス排出口P3に接続された原料ガス排出管22を通って前記水素精製デバイス1外に排出される。
【0040】
一方、前記水素透過膜11を透過した精製ガスである水素ガスは、前記第1収容空間S1内の前記第1多孔質支持体121を透過して、前記第1ケーシング部材131に形成された前記精製ガス流出空間S2に押し出され、前記精製ガス流出空間S2に形成された精製ガス流出口P1から精製ガス流出管3を通って、前記水素精製デバイス1外に流出する。
【0041】
このように構成された水素精製デバイス1を使用して、水素ガスを精製したところ、精製された水素の純度は99.999996%であり、本実施形態に係る水素精製デバイス1を用いれば、7N以上の高純度水素ガスを精製できることが確認されている。
【0042】
また、このように構成された水素精製デバイス1によれば、前記水素透過膜11が前記2つの多孔質支持体12によって両面から支持されているので、原料ガス側からの圧力に対してだけでなく、不測の事態により、一時的に原料ガス側よりも精製ガス側から圧力がかかるような場合であっても、前記水素透過膜11が破損するリスクを低減することができる。
【0043】
また、前記水素透過膜11が該水素透過膜11の両面どちら側からの圧力に対しても耐圧性を持つので、水素精製システム100に前記水素精製デバイス1を取り付けるときに、前記水素透過膜11のどちら側の面を原料ガス側に向けて取り付けても、問題なく使用することが出来る。
【0044】
前記水素透過膜11が前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132と気密に接合されており、前記多孔質支持体12が前記水素透過膜11や前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132と気密に接合される必要がないので、前記水素精製デバイス1の製造が簡単である。
【0045】
前記水素透過膜11の周辺部111と前記ケーシング13とを、前記水素透過膜11の端面から溶接によって接合しているので、従来水素透過膜11を多孔質支持体12やケーシング13に固定するために必要であった、例えば、気密性を保つためのOリング等といった特別な固定部材等を使用せずに気密に接合することが可能である。
【0046】
また前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132の側面に前記切込み部Cを設けて、前記熱集中構造Hの部分を溶接すれば、前記切込み部Cが周囲への熱の広がりをさえぎるので、溶接の熱が前記熱集中構造Hに集中して、溶接時間が短くて済む。その結果、熱の影響による前記水素透過膜11の水素透過能の低下を抑えることができる。
【0047】
また、前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132にそれぞれ1つずつ前記多孔質支持体12を収容したもので、前記水素透過膜11を挟んでから、最後に前記熱集中構造Hの部分を周回溶接しており、第1ケーシング部材131と第2ケーシング部材132に挟まれている水素透過膜11の両面が第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132と一度に気密に接合されるので、前記水素精製デバイス1の製造が簡単である。
【0048】
前記第1収容空間S1及び第2収容空間S3が、前記第1多孔質支持体121及び前記第2多孔質支持体122がそれぞれちょうど収容されるように構成されているので、前記第1収容空間S1及び第2収容空間S3にそれぞれ1つずつ前記多孔質支持体12を収容した前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132によって、前記水素透過膜11を挟んで溶接したときに、前記多孔質支持体12を前記水素透過膜11の両面を挟んだ状態で略ガタなく固定することができる。
【0049】
前記第1ケーシング部材131の内部に形成された前記第1収容空間S1と前記精製ガス流出空間S2とを合わせた体積が1ccと小さく、原料ガスを流し始める前に前記ケーシング13内部の水素透過膜11に対して精製ガスが流出する側の空間に存在する大気の量が少ないので、原料ガスを供給し始めてから目標の純度に達した精製ガスが得られるまでの時間を比較的短く抑えることができる。
さらに、前記第1収容空間S2が前記第1多孔質支持体121の体積とほぼ同じ容積のものであり、該精製ガス流出空間S1の容積が前記第1収容空間S2よりも小さいものであれば、前記第1多孔質支持体121の面板部と接する空間面積を大きくして前記第1多孔質支持体121からの単位時間あたりの精製ガスの流出量を大きくし、かつ原料ガスを供給し始めてから目標の純度に達した精製ガスが得られるまでの時間を比較的短く抑えるという効果を両立することができる。
【0050】
第2ケーシング部材132内にドーナツ状の前記原料ガス流入空間S4が設けられており、前記第2収容空間S3に供給された原料ガスが、原料ガス流入空間S4内で滞留してから前記原料ガス排出口P3に向かうので、前記水素透過膜11と原料ガスとの接触面積を増やすことができ、前記水素透過膜11に触れずに該原料ガス排出口P3から排出されてしまう原料ガスを減らすことができる。
また、前記原料ガス流入空間S4がドーナツ状であり、前記第2収容空間S3に開口した前記原料ガス供給口P2の周囲には、前記第2多孔質支持体122と接する位置に、前記原料ガス供給口P2と前記原料ガス流入空間S4とを仕切る障壁Wが形成されているので、前記第2収容空間S3に供給された原料ガスが直接前記原料ガス流入空間S4に流れ込むことを抑えて、前記水素透過膜11に接することなく外部へ排出される原料ガスをより減らすことができる。
【0051】
前記多孔質支持体12として金属焼結体を使用しているので、原料ガスと前記水素透過膜11との反応を邪魔することなく、前記水素透過膜11に十分な耐圧性を与えることができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記水素精製デバイス1は、図4に示すように、前記水素透過膜11と前記多孔質支持体12の間に、ガラス又は石英などの酸化ケイ素又はケイ酸化合物などを含む物質からなるろ紙14を備えたものとしても良い。
【0053】
前記多孔質支持体12が金属からなるものである場合には、前記多孔質支持体12に含まれる金属成分によっては、前記水素透過膜11が前記多孔質支持体12に触れて劣化するような場合も考えられる。
このような場合に、前記水素透過膜11と前記多孔質支持体12の間にガラス又は石英などからなる前記ろ紙が挟まれていれば、前記水素透過膜11と前記多孔質支持体12が直接触れないので、前記水素透過膜11の劣化のリスクをより低減することができる。
【0054】
本実施形態に係る水素精製デバイス1では、前記水素透過膜11を両面から挟んで保持する前記2つの多孔質支持体12を具備し、前記水素透過膜11が原料ガス側及び精製ガス側からのどちら側からの圧力にも耐圧性を持つように構成しているが、例えば、図5に示すように、前記水素透過膜11を片側からのみ前記多孔質支持体12によって支持するような構成としても良い。
【0055】
前記原料ガス供給口P2が、前記第2ケーシング部材に形成された前記原料ガス流入空間S4に形成され、前記原料ガス排出口P3が、前記第2ケーシング部材に形成された前記第2収容空間S3に形成されているものであっても良い。
この場合には、前記水素精製デバイス1によって水素ガスを精製するときには、原料ガスが前記原料ガス供給口P2から前記原料ガス流入空間に送り込まれ、前記多孔質支持体12を透過して前記水素透過膜11と反応した後、前記第2収容空間S3から前記原料ガス排出口P3を経由して、前記水素精製デバイス1外に排出される。
【0056】
例えば、前記水素透過膜11は、パラジウム合金全体に対して10重量%以上50重量%以下の銅を含むものでも良いし、銅、銀、金、白金、イットリウム、ガドリニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含むパラジウム合金であっても良い。
また、前記水素透過膜11は、円形状のものに限らず、矩形状のものや、その他の多角形状や異形状のものであっても良い。
前記水素透過膜11の厚みは、10μmのものに限らず、1μm以上100μm以下のものであれば良く、5μm以上15μm以下のものであればより好ましい。
【0057】
前記多孔質支持体12は、金属焼結体に限らず、原料ガスと前記水素透過膜11との反応を阻害せず、400℃程度の高温条件下で前記水素透過膜11に耐圧性を与えることができるものからなっていれば良く、例えば、金属、非金属を問わず無機質の焼結体であるセラミック、金属を含むメッシュ、金属を含む板に多数の孔があけられたパンチングプレート等からなるものでも良い。
前記多孔質支持体12は、円盤状のものに限らず、矩形状の板やその他の多角形状や異形状の板であっても良い。
前記多孔質支持体12は同じ形状のもの2つでなく、異なった形状のもの2つを組合わせても良い。
【0058】
前記ケーシング13は、SUSと呼ばれるステンレスに限らず、水素ガスを吸着しない性質のものであればよい。
また、前記ケーシング13を形成しているSUS等の使用量を減らし、ヒーター42などによる温度制御を簡単にするためには、前記ケーシング13の壁面の厚みをできるだけ薄いものとしても良い。
前記ケーシング13は、円筒状のものに限らず、直方体状のものやその他の多角柱状のものでも、異形柱状のものなどでも良い。
【0059】
前記水素透過膜11は、前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132によって挟んだときに、前記水素透過膜11の外縁E2が前記ケーシング13の外側に出るものに限らず、前記水素透過膜11の外縁E2がちょうど前記ケーシング13の側面の位置にそろうものや、前記水素透過膜11の外縁E2が前記多孔質支持体12の外縁E1より外側で前記ケーシング13の側面よりも内側に位置するようなものであっても良い。
【0060】
前記熱集中構造Hを形成する、前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132の側周面に形成された前記切込み部Cは、溶接時に熱が集中する前記熱集中構造Hを形成できるものであれば良く、その断面がV字型のものに限らず、断面が半円状のものや、四角形状、その他の多角形状、異形状等のものなどでも良い。
また前記切込み部Cが形成される位置は、前記ケーシング13が前記水素透過膜11に接する面から170μmに限らず、170μm以内の位置であっても170μm以上離れた位置であっても良い。
前記第1ケーシング部材131及び第2ケーシング部材132の側周面に周回して形成されている前記切込み部Cは部分的に途切れているものであっても良い。
【0061】
また前記熱集中構造Hは、前記水素透過膜11の面に対して垂直方向に所定距離離間して大気等と触れる空間が形成されたものであればよく、前記切込み部Cによって形成されるものに限らず、例えば、前記ケーシング13の前記溶接部分近傍において側周面から半径方向外側に突き出した突出部によって構成されるようなものであっても良い。
前記水素透過膜11は、前記ケーシング13と気密に接合されていればよく、その接合方法は前述した溶接接合に限らず、例えば、接着接合等、その他の接合方法であっても良い。
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形や、実施形態の組合せが可能である。
【符号の説明】
【0062】
水素精製システム・・・100
水素精製デバイス・・・1
水素透過膜・・・11
多孔質支持体・・・12
第1多孔質支持体・・・121
第2多孔質支持体・・・122
ケーシング・・・13
第1ケーシング部材・・・131
第2ケーシング部材・・・132
第1収容空間・・・S1
原料ガス流出空間・・・S2
第2収容空間・・・S3
精製ガス流入空間・・・S4
多孔質支持体の外縁・・・E1
水素透過膜の外縁・・・E2
水素透過膜の周辺部・・・111
熱集中構造・・・H
障壁・・・W

図1
図2
図3
図4
図5