(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878238
(24)【登録日】2021年5月6日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】低重合度セルロースエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 11/00 20060101AFI20210517BHJP
C08B 11/02 20060101ALI20210517BHJP
C08B 11/08 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
C08B11/00
C08B11/02
C08B11/08
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-194291(P2017-194291)
(22)【出願日】2017年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-59099(P2018-59099A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-198180(P2016-198180)
(32)【優先日】2016年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】北口 太志
(72)【発明者】
【氏名】北村 彰
(72)【発明者】
【氏名】松末 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光弘
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−503557(JP,A)
【文献】
特開昭63−185932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 11/00
C08B 11/02
C08B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高重合度セルロースエーテルを酸により解重合し、前記解重合の間又は前記解重合の終了後に紫外線を照射して低重合度セルロースエーテル混合物を得る工程と、
前記低重合度セルロースエーテル混合物中の酸を中和する工程と
を少なくとも含む低重合度セルロースエーテルの製造方法。
【請求項2】
上記紫外線の積算照射量が、前記高重合度セルロースエーテル1gあたり50J以上である請求項1に記載の低重合度セルロースエーテルの製造方法。
【請求項3】
前記高重合度セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液の粘度に対する前記高重合度セルロースエーテルと前記低重合度セルロースエーテルとの20℃における2質量%水溶液の粘度の差の割合である、前記解重合による粘度低下率が、60〜99.9%である請求項1又は請求項2に記載の低重合度セルロースエーテルの製造方法。
【請求項4】
前記高重合度セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである請求項1〜3のいずれか1項に記載の低重合度セルロースエーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低重合度セルロースエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低重合度セルロースエーテルは、錠剤等の固形製剤においてフィルムコーティング等に用いられている。このようなフィルムコーティングは、薬剤の不快な味をマスキングするとともに、含有される薬剤を変性させないようにしたり、服用後の消化器官中での溶出挙動を制御するためのものである。
そして、フィルムコーティングは錠剤の最外面に施されるものであるから、製剤時の着色のし易さ及び服用時の視覚的感覚を考慮すると、フィルムコーティングに使用される
低重合度セルロースエーテルは純白に仕上がっていることが望ましい。
【0003】
低重合度セルロースエーテルは、常法により製造された高重合度セルロースエーテルを、コーティングしやすいように解重合することにより得られる。
広く用いられている方法では、高重合度セルロースエーテルを低重合度セルロースエーテルに解重合するために酸を用いる。しかし、このような方法では解重合後の低重合度セルロースエーテルが解重合前の高重合度セルロースエーテルに比べ黄色みを帯びてしまう(黄変)ことが知られている(特許文献1)。
【0004】
低重合度セルロースエーテルの黄変を抑える方法としては、高重合度セルロースエーテルを塩化水素ガス又は他のハロゲン化水素ガス等の酸と接触させ解重合し、解重合生成物の黄変を二酸化硫黄ガスで抑制する方法(特許文献2)、解重合をアルコール類等の希釈剤中で行う方法(特許文献3)、コーティング層を有するフィルムコーティング製剤に、紫外線を含む光を照射し、該製剤の黄変を抑制する方法(特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−503557号公報
【特許文献2】特開昭52−152985号公報
【特許文献3】特表2009−540098号公報
【特許文献4】特開昭63−185932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の方法では、解重合生成物に二酸化硫黄を接触させることにより、硫黄含有化合物由来の新たな副生成物が生成してしまうため、特に医薬用途に不適である。
また、特許文献3の方法では、解重合をイソプロピルアルコール等の希釈剤中で行うため、解重合後の低重合度セルロースエーテルから希釈剤を分離する工程が必要となり、生産効率上好ましくないばかりでなく、希釈剤が残存する可能性がある。
更に、特許文献4の方法では、紫外線の照射によりセルロースエーテルを含む製剤の白度は改良されるが、長期間の保存中にセルロースエーテルが再度黄変してしまい、保存安定性が悪いという課題があった。
これらのことから、酸による高重合度セルロースエーテルの解重合において、酸以外の添加物を必要とせず、外観の黄色みが改善され、かつ長期の保存安定性に優れる低重合度セルロースエーテルの製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、黄変が少なく、かつ長期間の保存による外観の変化が少ない低重合度セルロースエーテルが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明によれば、高重合度セルロースエーテルを酸により解重合し
、前記解重合の間又は前記解重合の終了後に紫外線を照射
して低重合度セルロースエーテル混合物を得る工程と、前記低重合度セルロースエーテル混合物中の酸を中和する工程とを少なくとも含む低重合度セルロースエーテルの製造方法が提供される。なお、高重合度セルロースエーテルは解重合前のセルロースエーテルを意味し、低重合度セルロースエーテルは解重合後のセルロースエーテルを意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高重合度セルロースエーテルについて酸による解重合を行った後も、黄変が少なく、かつ長期保存による外観の変化が少ない、低重合度セルロースエーテルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
高重合度セルロースエーテルは、置換基の導入により水への溶解性が改善された水溶性セルロースエーテルであり、非イオン性セルロースエーテルであるアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、イオン性セルロースエーテルであるカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。
【0010】
アルキルセルロースとしては、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2のメチルセルロース、エトキシ基(DS)が2.0〜2.6のエチルセルロースが挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.05〜3.0のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.05〜3.3のヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルエチルセルロース等が挙げられる。
また、カルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシメトキシ基(DS)が0.2〜2.2のカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
なお、DSは置換度(Degreeof Substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たり、アルコキシ基で置換された水酸基の平均個数をいう。MSは、置換モル数(Molar Substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数をいう。
これらアルコキシ基及びヒドロキシアルコキシ基の平均置換度の測定方法としては、第17改正日本薬局方のメチルセルロースに関する分析方法が挙げられる。
【0011】
高重合度セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液の粘度は、好ましくは20mPa・sを超え、より好ましくは50〜3000mPa・s、更に好ましくは100〜2000mPa・s、特に好ましくは500〜1800mPa・sである。
高重合度(解重合前)及び低重合度(解重合後)セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液の粘度の測定は、粘度が600mPa・s以上の場合はJIS Z8803に従いB型粘度計を用いて測定することができ、粘度が600mPa・s未満の場合はJIS K2283−1993に従い、ウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
【0012】
高重合度セルロースエーテルの一般的な製造方法として、まず、パルプにアルカリ金属水酸化物水溶液を接触させて得られるアルカリセルロースと、エーテル化剤を反応させる。アルカリ金属水酸化物とエーテル化剤を併存させてアルカリセルロースの生成と同時にエーテル化剤と反応させても良いし、アルカリセルロースの生成後にエーテル化剤を加えて反応させても良い。アルカリ金属水酸化物に特に制限はないが、経済的な観点から水酸化ナトリウムが好ましい。また、高重合度セルロースエーテルを製造するのに有用なエーテル化剤は特に制限されないが、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキル、酸化エチレン、酸化プロピレン等が挙げられる。その後、必要に応じて精製、必要に応じて乾燥、必要に応じて粉砕し、高重合度セルロースエーテルを得ることができる。
【0013】
精製方法及び精製に用いる装置は、特に制限されることはないが、コスト面を考慮した場合、好ましくは水、より好ましくは熱水(好ましくは85℃〜100℃)を用いて洗浄する。なお、洗浄に供されるセルロースエーテルは熱水中ではゲル化するため、熱水に不溶である。
乾燥方法及び乾燥に用いる装置は、特に制限されることはないが、乾燥時の高重合度セルロースエーテル温度は、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、40〜80℃であることが好ましい。
【0014】
粉砕方法や粉砕に用いられる装置は、特に制限されることはないが、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、短時間で粉砕できる粉砕方式が好ましい。短時間で粉砕できる粉砕機は、例えば、ターボミル(ターボ工業社製)、ビクトリーミル(ホソカワミクロン社製)といった衝撃粉砕機が挙げられる。
【0015】
必要に応じて行う粉砕後の高重合度セルロースエーテルを酸により解重合して低重合度セルロースエーテル混合物を得る。解重合に用いる酸としては、水溶液とした場合にプロトンを供与するものであれば、気体、液体の別、溶液の状態及び種類を問わないが、一般には塩化水素ガス、その水溶液又はそのアルコール溶液を用いるのが好ましい。塩化水素水溶液を用いる場合の水溶液の濃度は、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%のものを用いることができる。
添加する酸の質量は、低重合度セルロースエーテルの粘度を制御する観点から、高重合度セルロースエーテルに対して、好ましくは、酸として0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.15〜1.5質量%である。
【0016】
解重合時の反応器の内温は、低重合度セルロースエーテルの粘度を制御する観点から、好ましくは40〜130℃、より好ましくは50〜110℃、更に好ましくは60〜90℃である。
解重合処理時間は、解重合後の低重合度セルロースエーテルが所望の水溶液粘度になれば特に限定されないが、0.1〜4時間の範囲で行われることが好ましい。
【0017】
本発明では、酸による解重合の間又は解重合終了後に紫外線を照射することにより、黄変の少ない低重合度セルロースエーテルを得ることができる。ここで、酸による解重合の間とは、酸による解重合が進行している間の意味であり、好ましくは酸を加えた後に系内を加熱している間を言う。また、酸による解重合終了後とは、酸により所望の解重合を得た後の意味であり、好ましくは系内の加熱を終了した後を言う。
【0018】
セルロースエーテルに照射する紫外線の波長としては、黄変の少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは100〜400nm、より好ましくは100〜380nmの波長を用いることができる。光源としては、紫外域の分光強度が大きいものが好ましいが、特に限定されることはない。具体的な光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
【0019】
酸による解重合の間にセルロースエーテルに紫外線を照射する場合は、解重合の間に、反応器内部もしくは外部に設置した光源より紫外線を照射する方法が挙げられる。外部に設置した光源から紫外線を照射する場合、用いる反応器の材質としては、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、石英ガラス等、紫外線透過率の高いものを用いることが好ましい。また、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、解重合の間は紫外線の照射を継続することが好ましく、セルロースエーテルに均一に紫外線が照射されることが好ましい。
【0020】
酸による解重合終了後に低重合度セルロースエーテルに紫外線を照射する場合は、解重合終了後の反応物を反応器から取り出し、これに紫外線を照射する。紫外線の照射方法は、例えば、ベルトコンベア上に解重合終了後の反応物を置いて光の下を通過させる方法、コーティングパン等の容器中に入れた解重合終了後の反応物に紫外線を照射しながら回転させる方法等が挙げられるが、解重合終了後の反応物に均一に紫外線が照射されるようにすれば、特に限定されることはない。
【0021】
紫外線の積算照射量は、好ましくは解重合の対象となる出発高重合セルロースエーテル1gあたり50J以上である。50J未満である場合、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルが得られない可能性がある。積算照射量の上限は、紫外線照射後の低重合度セルロースエーテルが所望の白色度になれば特に制限されないが、前記セルロースエーテル1gあたり300J以下であることが好ましい。ここで、積算照射量とは、紫外線強度(mW/cm
2)に照射時間(秒)を乗ずることで求められる。
【0022】
酸による解重合及び紫外線の照射により得られた低重合度セルロースエーテル水溶液は、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ等のアルカリにより中和される。中和後の低重合度セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液のpHは、好ましくは6.0〜8.0、より好ましくは6.5〜7.5である。紫外線照射後に中和することにより、黄変が少なく、かつ長期保存による外観の変化が少ない、低重合度セルロースエーテルが得られる。
【0023】
解重合後の粘度低下率は、特に限定されないが、黄変が少ない低重合度セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは60〜99.9%、より好ましくは80〜99.9%、更に好ましくは95〜99.9%である。ここで、解重合後の粘度低下率とは、高重合度(解重合前)セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液の粘度に対する高重合度(解重合前)セルロースエーテルと低重合度(解重合後)セルロースエーテルとの20℃における2質量%水溶液の粘度の差の比、すなわち、20℃における2質量%水溶液の粘度に関して(解重合前の粘度−解重合後の粘度)/解重合前の粘度で定義される。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例、参考例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
常法により製造された、20℃における2質量%水溶液の粘度が1,240mPa・sである高重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシ基(DS)1.89、ヒドロキシプロピル基(MS)0.24)に、14質量%の塩酸を塩化水素換算でヒドロキシプロピルメチルセルロースに対し0.4質量%となるように添加した。これを石英ガラス製反応器に仕込み、内温80℃となるように温調して解重合反応を開始した。反応開始と同時に、反応器上部20cmの距離に設置した高圧水銀ランプ(セン特殊光源社製HL100G型)(ランプ先端からの距離20cmにおける紫外線強度150mW/cm
2、照射面積28cm
2)を用いて紫外線を照射した。解重合反応は90分間行い、この間紫外線の照射を継続した。このとき、紫外線の積算照射量は22,680Jであり、セルロースエーテル1gあたりの紫外線照射量は94.5Jであった。解重合反応終了後、重炭酸ソーダを加えて中和し、低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを第17改正日本薬局方の測定方法に基づき測定すると、20℃、2質量%水溶液の粘度は3.0mPa・s、pHは6.7であった。酸による解重合による粘度低下率は{1−(3.0/1240)}×100=99.8%だった。
解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉末黄色度をSMカラーコンピュータSM−4(スガ試験機社製)により測定したところ、7.4であった。
解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、低温恒温恒湿機(いすゞ製作所製TPAV120-20型)を用いて、40℃、75%RH条件下で1ヶ月間静置し、1週間ごとに粉末黄色度を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
実施例1で用いたと同じ高重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースに、14質量%の塩酸を塩化水素換算でヒドロキシプロピルメチルセルロースに対し0.4質量%となるように添加した。これを石英ガラス製反応器に仕込み、内温80℃となるように温調して解重合反応を90分間行った。解重合反応終了後、反応物をシャーレに展開し、シャーレ上部20cmの距離に設置した実施例1に記載の装置により紫外線を90分間照射した。この間反応物は30分おきに撹拌し、反応物の上下を入れ替えた。このとき、紫外線の積算照射量は22,680Jであり、セルロースエーテル1gあたりの紫外線照射量は94.5Jであった。紫外線を90分間照射した後、重炭酸ソーダを加えて中和し、低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを第17改正日本薬局方の測定方法に基づき測定すると、20℃、2質量%水溶液の粘度は3.0mPa・s、pHは6.6であった。酸による解重合による粘度低下率は{1−(3.0/1240)}×100=99.8%だった。
また粉末黄色度を実施例1に記載の方法により測定したところ7.0だった。
解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、実施例1に記載の装置を用い、40℃、75%RH条件下で1ヶ月間静置し、1週間ごとに粉末黄色度を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
原料として実施例1で用いたと同じ高重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用い、高圧水銀ランプによる紫外線の照射を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により解重合反応を行った。得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを第17改正日本薬局方の測定方法に基づき測定すると、20℃、2質量%水溶液の粘度は3.1mPa・s、pHは6.8であった。酸による解重合による粘度低下率は{1−(3.1/1240)}×100=99.8%だった。得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉末黄色度を実施例1に記載の方法により測定したところ、9.6であった。
解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、実施例1に記載の装置を用い、40℃、75%RH条件下で約1ヶ月間静置し、1週間ごとに粉末黄色度を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
参考例1
実施例1で用いたと同じ高重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースに、14質量%の塩酸を塩化水素換算でヒドロキシプロピルメチルセルロースに対し0.4質量%となるように添加した。これを石英ガラス製反応器に仕込み、内温80℃となるように温調して解重合反応を90分間行った。解重合反応終了後、重炭酸ソーダを加えて中和した。解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの20℃における2質量%水溶液のpHは7.0であった。中和後、反応物をシャーレに展開し、シャーレ上部20cmに設置した実施例1に記載の装置により紫外線を90分間照射した。このとき、紫外線の積算照射量は22,680Jであり、セルロースエーテル1gあたりの紫外線照射量は94.5Jであった。反応物は30分ごとに撹拌し、上下を入れ替えた。
得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを第17改正日本薬局方の測定方法に基づき測定すると、20℃、2質量%水溶液の粘度は3.0mPa・sだった。酸による解重合による粘度低下率は{1−(3.0/1240)}×100=99.8%だった。得られた低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粉末黄色度を実施例1に記載の方法により測定したところ、6.8であった。
解重合後の低重合度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、実施例1に記載の装置を用い、40℃、75%RH条件下で1ヶ月間静置し、1週間ごとに粉末黄色度を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】