(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、液吸収性の吸収性コアを備えた吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側に重ねて接合され、前記左右方向に伸縮する胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品であって、 前記胴回り部材は、厚さ方向に積層された複数のシートを備え、前記複数のシートは、最も肌側に配置された第1シートと、最も非肌側に配置された第2シートとを有し、前記胴回り部材において、前記第1シートよりも非肌側且つ前記第2シートよりも肌側に、揮発性物質が設けられている、ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【0012】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、効果が長続きし、着用者の肌に過度な刺激を与え難い揮発性物質を備えたパンツ型吸収性物品を提供することが可能となる。
【0013】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記揮発性物質が、温度感受性TRPチャネルを刺激する温感剤又は冷感剤であることが望ましい。
【0014】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、温感剤又は冷感剤が不織布を介して着用者の皮膚と接触するので、着用者は徐々に温感剤又は冷感剤の効果を肌で感じることができる。
【0015】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第1シート及び前記第2シートは共に不織布であって、前記第1シートの繊維密度は前記第2シートの繊維密度よりも小さい、ことが望ましい。
【0016】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質が第1シート側(肌側)に抜け易くすることが可能となる。
【0017】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材は、着用者の腹側に当てられる腹側胴回り部材を有し、前記揮発性物質は、前記腹側胴回り部材に設けられている、ことが望ましい。
【0018】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、下腹部において揮発性物質の効果を高めることが可能となる。
【0019】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材は、着用者の背側に当てられる背側胴回り部材を有し、前記揮発性物質は、前記背側胴回り部材に設けられている、ことが望ましい。
【0020】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、仙骨部において揮発性物質の効果を高めることが可能となる。
【0021】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記腹側胴回り部材に設けられている前記揮発性物質の総量は、前記背側胴回り部材に設けられている前記揮発性物質の総量よりも多い、ことが望ましい。
【0022】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、仙骨部よりも下腹部において大きな揮発性物質の効果を与えることが可能となる。
かかるパンツ型吸収性物品であって、
【0023】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第1シートと前記第2シートの間に配置された第3シートを有し、前記第1シートよりも非肌側且つ前記第3シートよりも肌側に、前記揮発性物質が設けられている、ことが望ましい。
【0024】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、肌側又は非肌側への揮発性物質の移動、及びその移動量を制御し易くなる。
【0025】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第1シートの非肌面に、前記揮発性物質が設けられている、ことが望ましい。
【0026】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質が着用者の肌に直接触れることを抑制しつつ、揮発性物質の効果を最も着用者に与えることが可能となる。
【0027】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記第1シートの少なくとも一部は、前記吸収性本体の肌側に重ねて配置されており、前記第1シートと前記吸収性本体とが重ねられた領域において、前記第1シートの非肌側面及び前記吸収性本体の肌側面との間に、前記揮発性物質が設けられている、ことが望ましい。
【0028】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、着用者の肌の近い位置に揮発性物質を設けることができつつ、揮発性物質が非肌側へ抜け難くすることが可能となる。
【0029】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前後方向に見たときに、前記第1シートの少なくとも一部が、前記吸収性コアと重複しており、前記第1シートと前記吸収性コアとが重複する領域において、前記第1シートの前記非肌側面及び前記吸収性本体の前記肌側面との間に、前記揮発性物質が設けられている、ことが望ましい。
【0030】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、着用者の肌の近い位置に揮発性物質を設けることができつつ、より一層揮発性物質が非肌側へ抜け難くすることが可能となる。
【0031】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体に前記揮発性物質が設けられており、前後方向に見たときに、前記吸収性本体に設けられた前記揮発性物質と、前記胴回り部材に設けられた前記揮発性物質とが重複する部分を有する、ことが望ましい。
【0032】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、胴回り部材と吸収性本体の揮発性物質が重複して着用者に効果を与えることができるので、着用者により大きな揮発性物質の効果を与えることが可能となる。
【0033】
かかるパンツ型吸収性物品であって、自然状態において、前記第1シート及び前記第2シートの表面には、前記上下方向に沿った皺が形成されており、前記第1シートに形成される各々の皺の前記左右方向における幅の平均は、前記第2シートに形成される各々の皺の前記左右方向における幅の平均よりも小さい、ことが望ましい。
【0034】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質が肌側へ移動し易くなるので、着用者に揮発性物質の効果を速やかに与えることが可能となる。
【0035】
かかるパンツ型吸収性物品であって、自然状態において、前記第1シート及び前記第2シートの表面には、前記上下方向に沿った皺が形成されており、前記第1シートに形成される各々の皺の前記左右方向における幅の平均は、前記第2シートに形成される各々の皺の前記左右方向における幅の平均以上である、ことが望ましい。
【0036】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質が肌側へ移動し難くなるので、着用者に揮発性物質の効果を長期間与えることが可能となる。
【0037】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材は、前記左右方向に伸縮する伸縮フィルムを有し、前後方向に見たときに、前記伸縮フィルムと、前記揮発性物質とが重複する部分を有しており、厚さ方向において、前記伸縮フィルムは、前記揮発性物質よりも非肌側に配置されている、ことが望ましい。
【0038】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質を非肌側へ抜け難くすることが可能となる。
【0039】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記胴回り部材は、使用後の前記パンツ型吸収性物品を廃棄する際に前記パンツ型吸収性物品を丸めた状態に保持するための後処理テープを有し、前後方向に見たときに、前記後処理テープと、前記揮発性物質とが重複する部分を有しており、厚さ方向において、前記後処理テープは、前記揮発性物質よりも非肌側に配置されている、ことが望ましい。
【0040】
このようなパンツ型吸収性物品によれば、揮発性物質を非肌側へ抜け難くすることが可能となる。
【0041】
吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌側に重ねて接合された胴回り部材と、を有するパンツ型吸収性物品を製造するパンツ型吸収性物品製造方法であって、前記胴回り部材の最も肌側に配置される第1シートと、前記胴回り部材の最も非肌側に配置される第2シートとを所定の搬送方向に搬送する搬送工程と、前記第1シートの非肌側面、及び、前記第2シートの肌側面の少なくとも何れかに揮発性物質を塗布する揮発性物質塗布工程と、前記第1シートの非肌側面、及び、前記第2シートの肌側面の少なくとも何れかに接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記第1シートの非肌側面と前記第2シートとを積層して接合するシート接合工程と、を有することを特徴とするパンツ型吸収性物品製造方法。
【0042】
このようなパンツ型吸収性物品製造方法によれば、効果が長続きし、着用者の肌に過度な刺激を与え難い揮発性物質を備えたパンツ型吸収性物品を提供することが可能となる。
【0043】
かかるパンツ型吸収性物品製造方法であって、前記揮発性物質塗布工程が行われた後に、前記接着剤塗布工程が行われる、ことが望ましい。
【0044】
このようなパンツ型吸収性物品製造方法によれば、搬送途中で接着剤が乾燥して接着不良が生じること等を抑制しやすい。
【0045】
かかるパンツ型吸収性物品製造方法であって、前記パンツ型吸収性物品を厚さ方向にみたときに、前記揮発性物質と、前記接着剤と、が互いに重複しないように塗布されることが望ましい。
【0046】
このようなパンツ型吸収性物品製造方法によれば、温感剤26や接着剤の変質を抑制することができる。
===第1実施形態===
【0047】
第1実施形態に係る揮発性物質を備えた吸収性物品の一例として、後述する温感剤26(揮発性物質)を備えたパンツ型吸収性物品1について説明する。なお、以下の説明では生理用の吸収性物品1について説明するが、本実施形態の吸収性物品1には、例えば、大人用、乳児用のおむつ等も含まれており、生理用に用途が限定されるものではない。
<吸収性物品1の基本構成>
【0048】
図1は、パンツ型吸収性物品1の概略斜視図であり、
図2は、展開状態におけるパンツ型吸収性物品1の平面図及び断面模式図である。
【0049】
図1に示すパンツ型状態において、吸収性物品1は、互いに交差する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」を有している。そして、
図1における紙面の縦方向を上下方向として紙面の上側(下側)を上下方向の「上」(「下」)とし、左右方向においては、紙面の左側(右側)を左右方向の左(右)とする。また、前後方向においては、着用する際に着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。
【0050】
図2に示す吸収性物品1の展開状態(パンツ型吸収性物品1がパンツ型に成形される前の平面上に広がった状態)において、吸収性物品1は、互いに交差する「長手方向」と「幅方向」と「厚さ方向」とを有している。そして、
図2における紙面の縦方向を長手方向として、紙面の上側(下側)を長手方向の「前(腹側)」(「後(背側)」)とし、長手方向と紙面上で直交する方向を幅方向として紙面の左側(右側)を幅方向の左(右)とする。また、長手方向及び幅方向と直交する方向(紙面を貫通する方向)を厚さ方向とし、厚さ方向においては、着用者の肌と当接する側を「肌側」、その逆側を「非肌側」とする。
【0051】
なお、本実施の形態に係る平面図(例えば、
図2)は、対象物の伸長状態を示している。ここで「伸長状態」とは、吸収性物品1が備える各弾性体(例えば、後述する股下糸ゴム30、伸縮性シート12(伸縮フィルムに相当)等)を伸長させることにより、平面図に示す部材を皺なく伸長させた状態である。例えば、
図2においては、吸収性物品1を構成する後述する胴回り部材10と吸収性本体20の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことをいう。そして、非伸長状態であって、各弾性体が自然に収縮して平面図に示す部材等に皺等が生じている状態のことを「自然状態」という。
【0052】
本実施の形態に係る吸収性物品1は、胴回り部材10と、吸収性本体20とを備えており、以下では、先ず、胴回り部材10と吸収性物品1をパンツ型に生成する過程について説明する。そして、吸収性本体20については、後に項を設けて説明する。
【0053】
胴回り部材10は、
図2に示すように、展開状態において、平面視で略砂時計形状をしている。つまり、長手方向の中央部が幅方向の内側へ窪んでおり、この窪んだ部分は、パンツ型に成形されると、
図1に示す一対の脚回り開口部1bを形成する。
【0054】
また、胴回り部材10は、長手方向において吸収性物品1の中心に位置する中心線CLより前側にあって着用者の腹側に当てられる前側胴回り部材10f(腹側胴回り部材に相当)と後側にあって着用者の背側に当てられる後側胴回り部材10b(背側胴回り部材に相当)を有している。そして、前側胴回り部材10f(後側胴回り部材10b)は、前側(後側)の端部において幅方向に沿った胴回り前端部10ff(胴回り後端部10bf)と、左右の両端部に設けられた長手方向に沿った前側接合部10fe(後側接合部10be)(共に
図2の右下がり斜線図)を有している。
【0055】
また、本実施の形態に係る胴回り部材10は、胴回り部材10の形状をした左右方向にほぼ伸縮性の無い非伸縮性シート14(第2シートに相当)と、非伸縮性シート14の肌側面の一部に積層され、左右方向に伸縮性を有する伸縮性シート12(前側伸縮性シート12f及び後側伸縮性シート12b)(第3シートに相当)と、を備えている。また、非伸縮性シート14の一部は、長手方向(上下方向)において吸収性本体20の外側端20etよりも外側に延出され、長手方向の所定位置10etにおいて長手方向の内側かつ厚さ方向の肌側に折り返され、非伸縮性シート14及び吸収性本体20の肌側に積層された状態で接合されている。以下、非伸縮性シート14が折り返されている部分を第1シート15とも呼び、非伸縮性シート14が折り返された所定位置10etを胴回り部材10の上端10etとも呼ぶ。
【0056】
なお、第1シート15が、非伸縮性シート14とは異なるシート部材でも良い。すなわち、第1シート15は、非伸縮性シート14を上端10etにて折り返すことによって形成されるのではなく、非伸縮性シート14とは別体の不織布等のシート部材によって形成されていても良い。
【0057】
本実施形態において、非伸縮性シート14及び第1シート15は、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。そして、非伸縮性シート14及び第1シート15の不織布の繊維密度は、それぞれ相違していることが望ましい。具体的には、第1シート15の繊維密度が非伸縮性シート14の繊維密度よりも小さいことが望ましい。このような構成であれば、後述する胴回り部材10の温感剤26が、非伸縮性シート14(非肌側)から抜けて大気中に排出されるのを抑制しつつ、第1シート15(肌側)から抜けて吸収性物品1の内部(吸収性物品1と着用者の間)へ移動しやすくなる。
【0058】
また、吸収性物品1は、伸縮性シート12によって左右方向に伸縮性を有しているので、自然状態において、第1シート15及び非伸縮性シート14の表面には、上下方向に沿った皺が形成される(
図11参照)。そして、第1シート15に形成される各々の皺の左右方向における幅の平均(
図11の15L1〜15L5の平均)は、非伸縮性シート14に形成される各々の皺の左右方向における幅の平均(
図11の14L1〜14L5の平均)よりも小さい。
【0059】
胴回り部材10には、揮発性物質である温感剤26が設けられている。
図3は、胴回り部材10に設けられた温感剤26の胴回り塗布領域26Dを示した平面図及び断面模式図である。
図3に示すように、温感剤26は、胴回り部材10の腹側(前側)の前側胴回り部材10fと背側(後側)の後側胴回り部材10bの両方に左右方向に沿って設けられている(
図3の斜線部)。
【0060】
具体的に、腹側(背側)の温感剤26は、上下方向において、少なくとも吸収性本体20の一部を跨ぐように、上下に所定の幅を有しつつ、前側胴回り部材10f(後側胴回り部材10b)の左右方向の左端から右端まで連続した前側胴回り塗布領域26Df(後側胴回り塗布領域26Db)として設けられている。
【0061】
また、温感剤26は、厚さ方向において、最も肌側に配置されている第1シート15よりも非肌側、且つ、最も非肌側に配置されている非伸縮性シート14よりも肌側のいずれかの領域に設けられる。本実施形態では、
図3の断面図に示されるように、胴回り部材10f,10bにおいて、第1シート15の非肌側と、伸縮性シート12f,12bの肌側に胴回り塗布領域26Df,26Dbがそれぞれ設けられている。
【0062】
また、前側胴回り塗布領域26Df及び後側胴回り塗布領域26Dbは、厚さ方向に見たときに、それぞれが後述する吸収性本体20の吸収性コア22及び温感剤塗布領域26pと重複している(
図7及び
図8参照)。
【0063】
温感剤26は、着用者の生理痛や冷え症状を緩和するために設けられており、着用者の温度感覚に刺激を与えることにより、刺激を受けた着用者が温かく感じる温感刺激剤を含み、揮発性の物質である溶媒と混合された状態で備えられている。
【0064】
温感刺激剤は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましい。温感刺激剤としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン(LD50:47mg/kg,分子量:305)、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル(LD50:2,188mg/kg,分子量:213)、ニコチン酸β−ブトキシエチル、N−アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル(LD50:4,900mg/kg,分子量:210)、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール(LD50:250mg/kg,分子量:294)、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0065】
溶媒は、温感刺激剤を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。溶媒は、温感刺激剤を、例えば、溶解、分散等することができる。
【0066】
親油性溶媒としては、油脂、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル等)、炭化水素(例えば、パラフィン、例えば、流動パラフィン)等が挙げられる。
【0067】
親水性溶媒は、水及びアルコールが挙げられる。上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0068】
なお、温感剤26は、温度感受性TRPチャネルを刺激するものが好ましい。例えば、温度感受性TRPチャネルの1つであるTRPV1は、カプサイシン、酸等の刺激により活性化される。そして、着用者のTRPV1が活性化されると、交換神経系を介して産熱が引き起こされる(着用者が体内で熱を作り出す)。
【0069】
つまり、携帯用使い捨てカイロのようにそれ自身が高温になって着用者を温めるのではなく、カプサイシン等のようにそれ自身が高温になることなく着用者を温めるのがよい。そうすると、着用者は、低温火傷や火傷することなく、冷たさや温かさを感じることができる。
【0070】
また、温感剤26は、着用者の肌と直接触れなければ、効果が発生しにくい。つまり、例えば、香料のような揮発性物質は、気体になれば周辺の臭気を抑制する効果を発揮することができるが、温感剤26は気化した後に着用者の肌と直接触れて、その主たる効果を発揮する。そのため、温感剤26が不織布等を介して着用者の皮膚と接触することにより、着用者は、徐々に温感剤26の効果を肌で感じることができる。
【0071】
吸収性物品1をパンツ型に生成する過程においては、先ず、展開状態の胴回り部材10の所定の位置に吸収性本体20を配置して、展開状態の吸収性物品1を生成する。つまり、吸収性本体20の非肌側の面を接合面とし、当該接合面を展開状態の胴回り部材10の所定の位置に載置して接合する。すなわち、胴回り部材10は、厚さ方向において吸収性本体20の非肌側に重ねて配置される。
【0072】
そして、展開状態の吸収性本体20と胴回り部材10が、長手方向に折り曲げられる。すなわち、
図2に示す長手方向の中心線CLを折り目として、前側胴回り部材10fの肌側と、後側胴回り部材10bの肌側と、が向かい合わせになるように、吸収性本体20と胴回り部材10が、長手方向に折り曲げられる。
【0073】
そうしたら、胴回り部材10の前側接合部10feと後側接合部10beが近づくので、左右の前側接合部10feと後側接合部10beをそれぞれ接合する。
【0074】
つまり、胴回り部材10の左右両端部が長手方向に沿って接合されるので、胴回り部材10の胴回り前端部10ffと胴回り後端部10bfが胴回り部材10の上側に胴回り開口部1aを形成する。
【0075】
パンツ型吸収性物品1は、胴回り部材10が着用者の身体の前側(腹部)と後側(背中部)に当接して(着用者の胴回りに当接して)、主に胴回り部材10の左右方向への伸縮(身体への締め付け)により、着用時に落下しないような構成である。したがって、胴回り部材10に接合された吸収性本体20は、着用者の股下部(吸収性本体20が着用時に着用者の肌に当接する部分であり、下腹部から股間部を介して臀部(おしり)の仙骨部に至る部分)に当接した状態で胴回り部材10により上下方向に支持される。
【0076】
すなわち、吸収性物品1は、腹部、背中部、及び股下部を備え、胴回り開口部1a、及び一対の脚回り開口部1bが形成されたパンツ型であり、胴回り部材10の有する伸縮性シート12等により、着用時に落下しないように支持されている。
【0077】
なお、「当接」とは、当たり接していることを意味し、部材の少なくとも一部が着用者に当接していれば、当該部材は着用者に当接している状態となる。例えば、胴回り部材10のうちの伸縮する部分が着用者と接して、伸縮しない部分が着用者と接していない状態は、胴回り部材10が着用者に当接している状態である。
【0078】
また、前述した吸収性本体20と胴回り部材10等を接合する接合方法としては、例えば、接着剤、ヒートシール、超音波シール、これらの組み合わせ等、公知の接合方法を例示できる。
【0079】
また、
図2の断面図に示されるように、胴回り部材10の非肌側面には、後処理テープ60が設けられている。後処理テープ60は、上下方向に長い略矩形状のテープ状の部材(テープ部材)であり、上下方向(長手方向)の一方側が胴回り部材10に固定されており、上下方向(長手方向)の他方側に粘着部を有している。粘着部には粘着剤が塗布されており、吸収性物品1の使用前には、後処理テープ60の一部が、粘着部を内側にして折り畳まれており、粘着部が外部に露出しないようにして粘着面を保護している。
【0080】
使用後の吸収性物品1を廃棄する際には、吸収性本体20が内側になるように上下方向に丸めた吸収性物品1に対して、折り畳まれている後処理テープ60を伸ばしながら引っ張って粘着部を露出させ、該粘着部側を吸収性物品1に巻き回す。これにより、吸収性物品1を丸めた状態に保持することが可能となり、吸収性物品1の内部(吸収性本体20)に付着した排泄物等を外部に漏出させることなく吸収性物品1を廃棄することができる。
<吸収性本体20について>
【0081】
次に、吸収性本体20について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、吸収性本体20の平面図であり、
図5は、
図4の矢視A−Aであって、吸収性本体20の断面模式図である。
【0082】
吸収性本体20は、生理用の吸収性物品であり、例えば生理用ナプキンである。本実施の形態に係る吸収性本体20は、
図4に示すように、展開かつ伸長状態における長手方向(すなわち吸収性本体20の長辺方向)が吸収性物品1の上下方向に沿った平面視略長方形状である。そして、
図5に示すように、吸収性本体20は、長手方向(上下方向)に沿った吸収性コア22と、吸収性コア22よりも肌側に配置された肌側シート24と、吸収性コア22よりも非肌側に配置された非肌側シート25と、を有している。また、吸収性本体20の所定の領域には、後述する温感剤26が設けられている。
【0083】
吸収性コア22は、液体吸収性素材が所定の形状に成形されたものであり、本実施の形態においては、平面視で略矩形状(
図4の右上がり斜線部)、断面視で凸部形状(
図5の斜線部)に成形されている。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が含有されたものを例示できる。なお、吸収性コア22は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のシート部材(コアラップシート22a)によって、外周面が覆われていても良い。
【0084】
肌側シート24は、着用時において着用者の肌に接触し得る液透過性のシート部材であり、例えば親水性のエアスルー不織布やスパンボンド不織布等により形成される。また、肌側シート24は2層以上の構成であっても良い。例えば、肌側シート24の非肌側に肌側シートとほぼ同等の機能及び構成を有するシート部材であるセカンドシート(
図5では不図示)を有していても良い。
【0085】
非肌側シート25は、吸収性コア22に吸収された経血等の排泄液が外部に漏れ出すことを抑制するための液不透過性シート25aと、液不透過性シート25aの非肌側に配置された液透過性シート25bと、を備えた二層構造で形成されている。液不透過性シート25aとしては、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の樹脂フィルム等が用いられ、液透過性シート25bとしては、例えば柔軟性を有する不織布等が用いられる。なお、肌側シート24及び非肌側シート25の大きさは、いずれも吸収性コア22の全体を覆う大きさである。
【0086】
また、非肌側シート25のうち液透過性シート25bは、幅方向において吸収性本体20の両端20esよりも外側まで延出した延出部25cを有している。延出部25cは、吸収性本体20の幅方向における両端20esにおいて、支点50Bを折れ曲がり起点として厚さ方向の肌側に折り曲げられ、肌側シート24よりも肌側に位置する頂点50Sにて非肌側に折り返されることにより、立体ギャザー50を形成している(
図5参照)。立体ギャザー50の頂点50Sには吸収性本体20の長手方向に沿った糸ゴム等の立体ギャザー弾性部材51が長手方向に伸長した状態で配置されており、吸収性物品1の着用時には、該立体ギャザー弾性部材51が発現する伸縮性によって頂点50Sが着用者の肌側に起立する。これにより、立体ギャザー50は排泄液等の横漏れを抑制するための防漏壁として機能する。
【0087】
なお、立体ギャザー50は、温感剤26が外に漏れてしまうことを防ぐため、支点50Bから頂点50Sまで不織布が同数枚で構成されていることが好ましく、具体的には、2枚以上であることが好ましい。また、温感剤が外に漏れないようにするため、立体ギャザー50の不織布の密度は、肌側シート24の不織布の密度よりも密であることが好ましい。
【0088】
また、厚さ方向において液不透過性シート25aと液透過性シート25bとの間には、長手方向に伸縮可能な股下糸ゴム30が設けられている。股下糸ゴム30は、
図4及び
図5に示すように、吸収性本体20の左右方向(幅方向)の中央部において、下腹部が当接する前側から股間部を介して臀部が当接する後側に至るまで設けられている。
【0089】
また、吸収性本体20(吸収性コア22)の肌側には、複数のヒンジ40が形成されている。ヒンジ40は、着用者が吸収性物品1を着用した際に、吸収性本体20が着用者の身体に沿って変形するように(変形の折り目となるように)設けられており、
図5に示すように、吸収性本体20(吸収性コア22)の肌側において、肌側から非肌側へ窪んだ凹部形状をしている。ヒンジ40の凹部形状は、例えば、吸収性本体20(吸収性コア22)を肌側から圧搾することにより形成されており、吸収性コア22の密度がその周囲の密度よりも高い高密度部であって圧搾溝となっている。
【0090】
吸収性本体20のうち、厚さ方向における肌側シート24と吸収性コア22との間には、揮発性物質である温感剤26が設けられており、本実施形態においては、肌側シート24の非肌側面に塗布されている。(
図5の黒塗り部)したがって、温感剤26は、着用者の肌と当接する場所には塗布されていない。
【0091】
また、温感剤26は、吸収性コア22の肌側面に備えられていてもよい。すなわち、吸収性コア22の肌側面及び肌側シート24の非肌側面の少なくとも一方に、温感剤26が備えられていればよい。
【0092】
また、
図4に示すように、温感剤26は、吸収性本体20の幅方向(短手方向)に所定の寸法を有し、吸収性本体20の長手方向の前端から後端まで連続した長手方向に沿った一対の温感剤塗布領域26p(
図4の右下がり斜線部)に塗布される。したがって、吸収性本体20の幅方向における中央部には、長手方向に沿った温感剤26が塗布されていない非塗布領域26nが設けられる。
【0093】
なお、温感剤26は、各種部材を接着する接着剤と混ざらないようにして設けられていることが好ましい。例えば、股下糸ゴム30を接着する接着剤と温感剤26が混合してしまうと、股下糸ゴム30の接着強度が低下してしまい、本来の弾性効果が発揮できなくなる恐れがある。そのため、温感剤塗布領域26pと接着剤が混ざる恐れがある場所においては、接着剤による接合ではなく、前述した超音波接合等の別の接合手段を用いるのが良い。
<温感剤26が塗布されている部材の特定方法について>
【0094】
次に、温感剤26が塗布されているシート部材(厚さ方向における位置)の特定方法について
図6を用いて説明する。本実施の形態においては、官能検査によりかかる特定を行う。
図6は、温感剤26が塗布された場所の特定方法を示したフロー図である。
【0095】
本実施の形態に係る胴回り部材10は、複数のシート部材(伸縮性シート12、非伸縮性シート14、及び第1シート15)を有していることは既に述べたが、このように複数のシート部材が積層されている場合、どのシート部材に温感剤26が塗布されているかについては、以下のようにして特定することができる。
【0096】
先ず、温感剤26が塗布された胴回り部材10を所定サイズで複数枚切り出し、積層されたシート部材を1枚ずつ剥がして各サンプルシート(分解された伸縮性シート12、非伸縮性シート14、及び第1シート15)を製作する(S1)。本実施形態においては、各サンプルシートを60枚ずつ製作した。
【0097】
次に、サンプルシート(例えば第1シート15)を2枚用意し、かかるサンプルシートと同じサイズのPEシートを2枚用意する(S2)。
【0098】
続けて、1枚目のサンプルシートの非肌側の面に1枚目のPEシートを重ね(S3)、1枚目のサンプルシートの肌側の面を、官能検査における検査者の二の腕の内側にあてる(S4)。
【0099】
そうしたら、当該検査者は、1枚目のサンプルシートの温感剤26の温感効果を感じるまでの時間T1を計測して記録する(S5)。
【0100】
続けて、2枚目のサンプルシートの肌側の面に2枚目のPEシートを重ね(S6)、2枚目のサンプルシートの非肌側の面を、官能検査における検査者の二の腕の内側にあてる(S7)。
【0101】
そうしたら、当該検査者は、2枚目のサンプルシートの温感剤26の温感効果を感じるまでの時間T2を計測して記録する(S8)。
【0102】
時間T1と時間T2の計測により、検査者の二の腕の内側にサンプルシートをあててから、検査者が温感剤26の温感効果を感じるまでの時間を、サンプルシートの非肌側の面と肌側の面とで確認することができる。そして、かかる確認(S2〜S8のステップ)を30回繰り返して、T1とT2の平均時間を算出して比較する(S9)。
【0103】
すなわち、サンプルシートの肌側の面において検査者が温感効果を感じるまでの平均時間T1aと、サンプルシート非肌側の面において検査者が温感効果を感じるまでの平均時間T2aと、を比較して、かかる時間が短いほうがより温感剤26の塗布部(塗布面)に近いこととする。具体的には、T2aよりもT1aのほうが短ければ、サンプルシートの肌側の面が温感剤26の塗布面に近いと特定し、T1aよりもT2aのほうが短ければ、サンプルシートの非肌側の面が温感剤26の塗布面に近いと特定することができる。
【0104】
そして、かかるサンプルシートの特定を、各サンプルシート(分解された伸縮性シート12、非伸縮性シート14、及び第1シート15)の全てについて行う。つまり、分解された伸縮性シート12、非伸縮性シート14、及び第1シート15のそれぞれの肌側の面と非肌側の面において、上記した検査者が温感剤26の温感効果を感じるまでの平均時間を算出する。そうしたら、かかる算出結果を比較することにより、温感剤26が塗布された場所を特定することができる。すなわち、検査者が温感剤26の温感効果を感じるまでの平均時間が最も短い場所(例えば第1シート15の非肌側の面)を温感剤26が塗布された場所であると特定することができる。
【0105】
また、本実施の形態においては、各サンプルシート(分解された伸縮性シート12、非伸縮性シート14、及び第1シート15)のT1aの合計と、T2aの合計とを比べると、T1aの合計の方が短い。換言すれば、同じ期間においては、各サンプルシートの肌側の面から検査者の肌に接触する(移行する)温感剤26の総量(移行量)ほうが、非肌側の面から検査者の肌に接触する(移行する)温感剤26の総量(移行量)よりも多いと言える(温感効果を感じるのが早いので長い期間において温感効果を感じる)。
【0106】
なお、気化した温感剤26は、吸収性物品1の内部(シート部材で囲まれた空間)において、上下方向及び左右方向へも移動する。そのため、温感剤26を塗布していない領域においても、官能検査により温感剤26が検出される場合がある。かかる場合には、前述した検査者が温感剤26の温感効果を感じるまでの平均時間を比較することによって、温感剤26が塗布された領域か否かを特定することが可能である。
【0107】
また、かかる官能検査による塗布位置の特定方法は、吸収性本体20の温感剤塗布領域26pと重複しない部分(後述する温感剤重複領域26W以外の部分。
図7、
図8参照)で行うことが好ましい。
<胴回り部材10の温感剤26の具体的な配置について>
【0108】
次に、温感剤26が胴回り部材10のどの位置に配置され、他の部材とどのような関係にあるかを
図7、
図8を用いて説明する。
図7は、吸収性物品1に設けられている温感剤26の配置について説明する平面図であり、
図8は、
図7の矢視B−Bであって、吸収性物品1の断面模式図である。なお、この項において、単に温感剤26という場合は、胴回り部材10の温感剤26であって、胴回り塗布領域26Dに塗布された温感剤26のことをいう。
【0109】
胴回り部材10の内表面(肌側面)に温感剤26が設けられている場合、揮発した温感剤26の成分が着用者の肌と直接接触するため、着用者の肌に過度な刺激を与えたり、かぶれ等の肌トラブルを生じさせたりするおそれがある。一方、胴回り部材10の外表面(非肌側面)に温感剤26が設けられている場合、温感剤26の揮発量が大きくなり、当該温感剤26の効果が長続きし難くなるおそれがある。
【0110】
これに対し、本実施の形態に係る温感剤26は、
図8に示すように、胴回り部材の10の内表面や外表面ではなく、胴回り部材10の最も肌側に配置された第1シート15よりも非肌側且つ最も非肌側に配置された非伸縮性シート14よりも肌側に設けられている。
【0111】
そして、かかる位置に温感剤26が配置されることにより、胴回り部材10(伸縮性シート12)が伸縮して、着用者の肌に押し付けられた際に、温感剤26が着用者の肌と直接接触することを抑制するので、着用者の肌に赤み、かゆみ、又はかぶれ等を発生させる肌トラブルの発生を抑制することができる。また、温感剤26は、第1シート15及び非伸縮性シート14によって厚さ方向の両側から挟まれるように配置され、大気に露出していないため、過度な揮発が抑制される。したがって、温感剤26の効果を長続きさせることができる。すなわち、効果が長続きし、着用者の肌に過度な刺激を与え難い温感剤26を備えたパンツ型吸収性物品1を提供することが可能となる。
【0112】
また、第1シート15及び非伸縮性シート14は共に不織布であって、第1シート15の繊維密度は、非伸縮性シート14の繊維密度よりも小さい。
【0113】
胴回り部材10の第1シート15と非伸縮性シート14によって厚さ方向の両側から挟まれた温感剤26は、この挟まれた内部空間で気化すると、第1シート15又は非伸縮性シート14を通過して外部へ通り抜けようとする。すなわち、胴回り部材10の気化した温感剤26は、第1シート15を通過して着用者の肌側、又は非伸縮性シート14を通過して大気中へ移動しようとする。
【0114】
このとき、不織布の繊維密度が小さいほど、不織布を構成する繊維による空隙が大きく形成されやすくなるため、気化した温感剤26を通過させやすくなる。すなわち、温感剤26は、不織布の繊維密度が小さいほど不織布を通過しやすいので、第1シート15の繊維密度を非伸縮性シート14の繊維密度よりも小さくすることにより、第1シート15を通過する温感剤26を、非伸縮性シート14を通過する温感剤26よりも多くすることができる。これにより、温感剤26の着用者の肌側への移動が促進され、着用者の温感効果が高まり、且つ、温感剤26の大気への排出が抑制され、温感剤26の効果を長期間持続させることが可能となる。
【0115】
また、温感剤26は、
図7に示すように、前側胴回り部材10fに設けられている。吸収性物品1の着用時において、前側胴回り部材10fは、着用者の下腹部に当接するので、かかる場所に温感剤26を設けることにより、着用者の下腹部において温感効果が発揮されやすくなる。そして、着用者の下腹部を温めることにより、例えば、着用者の生理痛や冷え症状を低減させる効果が期待できる。
【0116】
また、温感剤26は、
図7に示すように、後側胴回り部材10bに設けられている。吸収性物品1の着用時において、後側胴回り部材10bは、着用者の仙骨部に当接するので、かかる場所に温感剤26を設けることにより、着用者の仙骨部において温感効果が発揮されやすくなる。そして、着用者の仙骨部を温めることにより、例えば、着用者の生理痛や冷え症状を低減させる効果が期待できる。
【0117】
また、前側胴回り部材10fに設けられている温感剤26の総量は、後側胴回り部材10bに設けられている温感剤26の総量よりも多い。したがって、着用者の仙骨部よりも下腹部において大きな温感効果を着用者に与えることができる。
【0118】
前述したように、着用者の下腹部、仙骨部を温めることにより、着用者の生理痛や冷え症状の緩和を期待できるが、下腹部は、皮下脂肪が厚く、着用者が温感効果を感じにくい。また、着用者が眠っているときの寝姿は、うつ伏せよりもあお向けのほうが一般的である。そして、あお向け状態においては、着用者の仙骨部付近は、体圧がかかるので温感剤26の効果が発揮され易いが、着用者の下腹部付近は、体圧がかかり難く仙骨部付近と比較して温感剤26の効果が発揮され難い。したがって、着用者の仙骨部よりも下腹部において温感剤26の総量(塗布量)を多くすることによって、睡眠時の着用者の下腹部に仙骨部と同様の温感効果を与えることができ、より一層着用者の生理痛を低減させる効果が期待できる。なお、温感剤26の総量は、前述した、ガスクロマトグラフィーを用いることで、計測することが可能である。
【0119】
また、
図8に示すように、第1シート15よりも非肌側且つ伸縮性シート12よりも肌側に、温感剤26が設けられている。
【0120】
かかる状態において、気化した温感剤26が非肌側に移動し、大気中に排出されるためには、伸縮性シート12及び非伸縮性シート14を通過しなければならない。そして、一般的には、伸縮性シート12はフィルムであって、第1シート15及び非伸縮性シート14は共に不織布である。つまり、伸縮性シート12は、第1シート15及び非伸縮性シート14に比べて通気性が悪い。また、伸縮性シート12は、ウレタン繊維を含む伸縮不織布であってもよい。但し、かかる伸縮性シート12は、ウレタン繊維が含まれていることから、非伸縮性シート14に比べて通気性が悪い。
【0121】
したがって、温感剤26の非肌側に伸縮性シート12を設けることにより、気化した温感剤26の大気への排出を抑制することが可能となり、温感剤26の効果を長期間持続させることが可能となる。
【0122】
また、伸縮性シート12には、伸縮により破断しない程度に、気化した温感剤26の通気口として穴加工等ができる。つまり、伸縮性シート12に温感剤26の通気口等を設けることにより、温感剤26を肌側又は非肌側のどちらにどの程度の量を移動させるのか制御(調整)がしやすくなる。
【0123】
また、
図8に示すように、第1シート15の非肌面に、温感剤26が設けられている。この温感剤26が設けられた厚さ方向における位置は、着用者の肌に当接しない位置であり、且つ、着用者の肌に最も近い位置である。つまり、第1シート15の非肌面に温感剤26を設けることにより、着用者の肌に温感剤26が直接触れることを抑制しつつ、温感効果を最も着用者に与えることができる。
【0124】
また、
図8に示すように、第1シート15の少なくとも一部は、吸収性本体20の肌側に重ねて配置されており、第1シート15と吸収性本体20とが重ねられた領域において、第1シート15の非肌側面及び吸収性本体20の肌側面との間に、温感剤26が設けられている
【0125】
したがって、当該温感剤26(吸収性本体20の上端20etより下側の温感剤26)が、非肌側に移動して大気中まで移動するためには、少なくとも吸収性本体20の肌側シート24、非肌側シート25(液不透過性シート25a及び液透過性シート25b)、及び非伸縮性シート14を通過しなければならない。
【0126】
つまり、厚さ方向に見たときに、吸収性本体20と重ならない領域に設けられた温感剤26(吸収性本体20の上端20etより上側の温感剤26)に比べると、当該温感剤26は、少なくとも吸収性本体20の肌側シート24及び非肌側シート25(液不透過性シート25a及び液透過性シート25b)を余分に通過しなければ大気中に排出されない。したがって、第1シート15と吸収性本体20とが重ねられた領域において、第1シート15の非肌側面及び吸収性本体20の肌側面との間に、温感剤26が設けられることにより、気化した温感剤26の大気への排出を抑制することが可能となり、温感剤26の効果を長期間持続させることが可能となる。
【0127】
また、前後方向に見たときに、第1シート15の少なくとも一部が、吸収性コア22と重複しており、第1シート15と吸収性コア22とが重複する領域において、第1シート15の非肌側面及び吸収性本体20の肌側面との間に、温感剤26が設けられている。
【0128】
したがって、当該温感剤26(吸収性コア22の上端22etより下側の温感剤26)が、非肌側に移動して大気中まで移動するためには、少なくとも吸収性本体20の肌側シート24、吸収性コア22、非肌側シート25(液不透過性シート25a及び液透過性シート25b)、伸縮性シート12、及び非伸縮性シート14を通過しなければならない。
【0129】
つまり、厚さ方向に見たときに、吸収性コア22と重ならない領域に設けられた温感剤26(吸収性コア22の上端22etより上側の温感剤26)に比べると、当該温感剤26は、少なくとも吸収性コア22を余分に通過しなければ大気中に排出されない。したがって、第1シート15と吸収性コア22とが重複する領域において、第1シート15の非肌側面及び吸収性本体20の肌側面との間に、温感剤26が設けられることにより、気化した温感剤26の大気への排出をより一層抑制することが可能となり、温感剤26の効果をより一層長期間持続させることが可能となる。
【0130】
また、吸収性本体20に温感剤26(温感剤塗布領域26p)が設けられており、前後方向に見たときに、吸収性本体20に設けられた温感剤26(温感剤塗布領域26p)と、胴回り部材10に設けられた温感剤26(胴回り塗布領域26D)とが重複する部分(
図7に示す斜線部。以下、温感剤重複領域26Wともいう)を有する。
【0131】
温感剤重複領域26Wにおいては、厚さ方向に見たときに、胴回り塗布領域26Dの温感剤26と温感剤塗布領域26pの温感剤26が設けられており、2層の温感剤26が設けられていることとなる。つまり、それぞれが1層設けられた領域に比べて、温感効果が重複して着用者に作用する。すなわち、着用者は、吸収性物品1の着用時において、温感剤重複領域26Wが当接する部分に、より大きな温感効果を感じることとなる。
【0132】
そして、温感剤重複領域26Wは、下腹部及び仙骨部に当接する場所にそれぞれ設けられている。つまり、温感剤重複領域26Wのより大きな温感効果が、下腹部及び仙骨部において発揮され易くなり、着用者の生理痛等の緩和がより一層期待できる。
【0133】
また、
図8に示されるように、伸縮性シート12は、第1シート15と非伸縮性シート14との間であって、かつ、温感剤26よりも非肌側に設けられており、厚さ方向(前後方向)に見たときに、温感剤26と伸縮性シート12とが重複する部分を有している。
【0134】
伸縮性シート12は、温感剤26を通過させ難い素材で形成されているため、該伸縮性シート12と重複する部分において、温感剤26が胴回り部材10の非肌側に通過することが抑制される。したがって、温感剤26が厚さ方向の非肌側へ抜けて大気中に排出されにくくなり、温感剤26の効果を長時間持続させやすくすることができる。
【0135】
具体的には、伸縮性シート12は、フィルムであることが好ましい。本実施の形態としては、PP(ポリプロピレン)又はPE(ポリエチレン)からなる非伸縮性不織布とポリウレタンが含まれる伸縮不織布からなっている。かかる伸縮性シート12は、ウレタン成分が含まれることにより、温感剤26が大気中に排出され難く、肌側に抜け易くなっている。
【0136】
また、
図8に示されるように、胴回り部材10の後処理テープ60の一部は、厚さ方向に見たときに、温感剤26と重複しており、かかる重複部分は、温感剤26よりも厚さ方向の非肌側に備えられている。
【0137】
後処理テープ60は、伸縮性シート12と同様に温感剤26を通過させ難いため、該後処理テープ60と重複する部分において、温感剤26が胴回り部材10の非肌側に通過することが抑制される。したがって、温感剤26が厚さ方向の非肌側へ抜けて大気中に排出されにくくなり、温感剤26の効果を長時間持続させやすくすることができる。また、後処理テープ60は、Z形状のものが好ましく、かかる形状によると、後処理として作用させる面の粘着力が温感剤26によって低下するのを抑制することができる。
<吸収性物品1の製造方法について>
【0138】
続いて、吸収性物品1の製造方法について簡単に説明する。
図9は、吸収性物品1の製造における各工程のフロー図である。
図10は吸収性物品1を製造する製造装置100について説明する概略図である。なお、
図9及び
図10については、本発明を解り易くする説明するために、吸収性本体20が完成された形で供給されており、吸収性本体20の製造装置については省略した図としている(以降では、吸収性本体20の製造方法の説明についても省略している)。
【0139】
図10に示す製造装置100は、
図9に示される各工程(S101〜S110)を順次実施することによって、吸収性物品1を連続的に製造する。製造装置100は、搬送機構110と、超音波接合機構120と、吸収性本体接合機構130と、温感剤塗布機構140と、接着剤塗布機構150と、折り返し機構160と、第1シート接合機構170と、脚回り部形成機構180と、パンツ型成形機構190と、切断機構200と、を備える。
【0140】
まず、吸収性物品1を構成する非伸縮性シート14等の各種基材を所定の搬送方向へ搬送する搬送工程が行われる(S101)。なお、製造装置100において搬送方向は、吸収性物品1の左右方向に沿った方向である。搬送工程では、非伸縮性シート14が搬送方向(左右方向)に連なった状態の非伸縮性シート連続体14Lと、伸縮性シート12が搬送方向(左右方向)に連なった状態の伸縮性シート連続体12L(前側伸縮性シート12fと後側伸縮性シート12bの2つの連続体)とが、搬送機構110によって、それぞれ所定の搬送速度で搬送方向の上流側から下流側へ搬送される(伸縮性シート連続体12Lは伸長された状態で搬送される)。これらの各基材が搬送される間に、S102〜S110の各工程が実施されることで、吸収性物品1が製造される。
【0141】
まず、搬送方向に搬送される非伸縮性シート連続体14Lの肌側面に、同じく搬送方向に搬送される伸縮性シート連続体12Lの非肌側面を重ねて、互いを接合する超音波接合工程が行われる(S102)。超音波接合工程においては、搬送方向の所定位置に設けられた超音波接合機構120が、非伸縮性シート連続体14L及び伸縮性シート連続体12Lの所定位置に超音波振動及び圧力を加え、かかる部分を超音波接合することにより、非伸縮性シート連続体14Lと伸縮性シート連続体12Lを接合する。
【0142】
なお、超音波接合工程における非伸縮性シート連続体14Lは、第1シート15が折り返される前の非伸縮性シート連続体14Lであり、
図2に示す胴回り部材10の上端10etよりも第1シート15の部分が上側に延出した状態である。つまり、非伸縮性シート連続体14Lは、第1シート15が折り返されていない状態で搬送方向に搬送されており、かかる状態は、後述する折り返し工程(S106)において第1シート15が折り返されるまで継続する。
【0143】
次に、超音波接合された伸縮性シート連続体12L及び非伸縮性シート連続体14L(以下、シート部材連続体ともいう)の肌面側の所定位置に、吸収性本体20を接合する吸収性本体接合工程が行われる(S103)。吸収体接合工程では、吸収性本体20を保持した接合ドラム131によって、シート部材連続体に吸収性本体20が接合される。
【0144】
接合ドラム131の外周面には、吸収性本体20が、吸収性本体20の幅方向が搬送方向に沿うようにして(吸収性本体20の長手方向が
図10の紙面を貫く方向に沿うようにして)、所定の間隔を置いて複数保持されている。そして、吸収性本体20は、肌側面が接合ドラム131の外周面と接するように保持されており、吸収性本体20の非肌側面には接着剤が塗布されている。
【0145】
そして、かかる状態の接合ドラム131を所定の速度(シート部材連続体に吸収性本体20を製品ピッチで載置する速度)で回転させ、シート部材連続体の肌側面と吸収性本体20の非肌側面とが接触するタイミングで、接合ドラム131の吸収性本体20の保持を解除する。つまり、吸収性本体20は、シート部材連続体に製品ピッチで載置される。そして、この載置と同時のタイミングで、肌側と非肌側に設けられた接合ドラム131が、挟み込むようにして吸収性本体20をシート部材連続体に押し付けることにより、吸収性本体20がシート部材連続体に接合される。
【0146】
続いて、搬送方向に搬送される非伸縮性シート連続体14Lの第1シート15部分の肌側面(第1シート15が折り返された後は第1シート15の非肌側面)に、温感剤26(揮発性物質)を塗布する温感剤塗布工程(揮発性物質塗布工程)が行われる(S104)。温感剤塗布工程では、搬送方向の所定位置に設けられた温感剤塗布機構140から、非伸縮性シート連続体14Lの第1シート15部分の肌側面(第1シート15が折り返された後は第1シート15の非肌側面)に対して液状の温感剤26を噴射もしくは直接塗布することにより、胴回り塗布領域26D(前側胴回り塗布領域26Df及び後側胴回り塗布領域26Db)が形成される。
【0147】
続いて、搬送方向に搬送される非伸縮性シート連続体14Lの第1シート15部分の肌側面(第1シート15が折り返された後は第1シート15の非肌側面)に、接着剤を塗布する接着剤塗布工程が行われる(S105)。接着剤塗布工程では、搬送方向において、温感剤塗布機構140よりも下流側に設けられた接着剤塗布機構150から、非伸縮性シート連続体14Lの第1シート15部分の肌側面(第1シート15が折り返された後は第1シート15の非肌側面)に対してホットメルト接着剤(HMA)等の接着剤を噴射もしくは直接塗布することにより、接着領域(不図示)を形成する。
【0148】
本実施形態の製造装置100では、温感剤塗布工程(S104)が実施された後で、接着剤塗布工程(S105)が行われる。すなわち、次に説明する第1シート15を折り返す折り返し工程(S106)及び第1シート接合工程(S107)が実施される直前に接着剤が塗布されるため、搬送中に接着剤が乾燥して接着不良が生じること等を抑制しやすい。また、温感剤26が塗布された胴回り塗布領域26D(前側胴回り塗布領域26Df及び後側胴回り塗布領域26Db)が形成された後で、該胴回り塗布領域26D(前側胴回り塗布領域26Df及び後側胴回り塗布領域26Db)と重複しないように接着領域を形成することができる。これにより、温感剤26や接着剤に含まれる油分が混じってしまうことが抑制され、温感剤26や接着剤が変質して、各々の機能を発揮しにくくなることを効果的に抑制できる。
【0149】
また、温感剤26や接着剤の変質を抑制するため、製造ラインにおいて、吸収性物品1の厚み方向にみたときに、温感剤26が塗布された領域と、接着剤が塗布された領域とが、重複しない。つまり、パンツ型吸収性物品1の製造工程において、パンツ型吸収性物品1を厚さ方向にみたときに、温感剤26と、接着剤と、が互いに重複しないように塗布されている。
【0150】
続いて、胴回り部材10の上端10etより上側に延出した第1シート15を折り返す折り返し工程が行われる(S106)。折り返し機構160は、非伸縮性シート連続体14Lの腹側及び背側に延出したそれぞれの第1シート15の部分を、腹側及び背側のそれぞれの上端10etを折り目として、上下方向の下側に連続的に折り返す。その際に、前工程で設けた温感剤26(胴回り塗布領域26D)と接着剤が、伸縮性シート連続体12Lの肌側面、及び接合されている吸収性本体20の肌側面と対向するように折り返す。
【0151】
続いて、第1シート15を伸縮性シート連続体12L及び吸収性本体20と接合する第1シート接合工程が行われる(S107)。第1シート接合工程では、第1シート接合機構170のプレスローラ171によって、第1シート15と伸縮性シート連続体12L、及び第1シート15と吸収性本体20が厚さ方向に圧縮されて接合される。
【0152】
続いて、搬送される各種基材に展開状態における脚回り開口部1bを形成する脚回り部形成工程が行われる(S108)。脚回り形成工程においては、脚回り部形成機構180が、製品ピッチで接合された搬送方向に隣り合う吸収性本体20の間に、脚回り開口部1bを形成するための所定の穴形状を形成する。
【0153】
続いて、搬送される各種基材をパンツ型に成形するパンツ型成形工程が行われる(S109)。パンツ型成形工程においては、パンツ型成形機構190が、胴回り部材10を長手方向の中心線CL(
図2参照)を折り目として二つ折りにし、接合部10fe,10beを形成して、搬送方向に連続したパンツ型吸収性物品1を形成する。
【0154】
そして、搬送される連続したパンツ型吸収性物品1を個々のパンツ型吸収性物品1に切断する切断工程が行われる(S110)。切断機構200に設けられたカッターロール201は、搬送方向に連続したパンツ型吸収性物品1の搬送方向における所定の位置を、所定の長さごとに切断する。これにより、個々のパンツ型吸収性物品1が製造される。
【0155】
なお、第1シート15が、非伸縮性シートとは別体のシート部材である場合には、上記の折り返し工程(S106)は行われない。この場合、第1シート15が搬送方向に連続した第1シート連続体15Lが、搬送機構110によって搬送方向に搬送される間に、第1シート連続体15Lの非肌側面に温感剤26が塗布され(S104)、続いて、同非肌側面に接着剤が塗布される(S105)。その後、吸収性本体20が取り付けられた非伸縮性シート連続体14Lの肌側面と、第1シート連続体15Lの非肌側面とが対向するように、非伸縮性シート連続体14L(及び吸収性本体20)に第1シート連続体15Lが積層され、第1シート接合工程が行われる(S107)。その他の工程は、
図9で説明したものと同様である。
===その他の実施形態===
【0156】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0157】
また、上記の実施形態においては、自然状態において、第1シート15及び非伸縮性シート14の表面には、上下方向に沿った皺が形成されており、第1シート15に形成される各々の皺の左右方向における幅の平均は、非伸縮性シート14に形成される各々の皺の左右方向における幅の平均よりも小さい、こととしたが、これに限るものではなく、第1シート15に形成される各々の皺の左右方向における幅の平均は、非伸縮性シート14に形成される各々の皺の前記左右方向における幅の平均以上であっても良い。
【0158】
図11は、
図8の矢視C−Cであって、非伸縮性シート14及び第1シート15に形成された皺の左右方向における幅寸法を表した模式図であり、それぞれの皺の一部を示している。
【0159】
前者の吸収性物品1によれば、
図11に示す第1シート15の皺の左右方向における幅寸法15L1、15L2、15L3、15L4、及び15L5の寸法の平均値が、非伸縮性シート14の皺の左右方向における幅寸法14L1、14L2、14L3、14L4、及び14L5の寸法の平均値よりも小さくなる。そして、温感剤26は、シート部材に形成される皺の左右方向における幅寸法が小さいと通過しやすい。
【0160】
そのため、第1シート15を通過する温感剤26が、非伸縮性シート14を通過する温感剤26よりも多くなる。したがって、前者の吸収性物品1の場合は、温感剤26が即効性を有することとなり、着用者の肌に刺激を与えやすくすることができる。
【0161】
一方、後者の吸収性物品によれば、
図11に示す第1シート15の皺の左右方向における幅寸法15L1、15L2、15L3、15L4、及び15L5の寸法の平均値が、非伸縮性シート14の皺の左右方向における幅寸法14L1、14L2、14L3、14L4、及び14L5の寸法の平均値以上になる。
【0162】
かかる吸収性物品によると、前者の吸収性物品1に比べて、第1シート15は、気化した温感剤26の通過を抑制するので、温感剤26の着用者の肌への到達を遅らせることとなる。したがって、後者の吸収性物品の場合は、温感剤26の効果を長期間持続させることが可能となる。
【0163】
また、上記実施の形態においては、揮発性物質の一例として、温感剤26を用いていたが、温感剤26に限るものではなく、例えば、冷感剤を用いてもよい。冷感剤を用いた場合には、着用者の蒸れやべたつきによる不快感を低減することが可能となる。
【0164】
つまり、冷感剤(温感剤26)を備えた吸収性物品1によると、揮発性物質が、冷感剤(温感剤26)以外の場合に比べて、着用者の冷感効果(温感効果)を高めることが可能となる。
【0165】
なお、上記で説明した温感剤26が気化して効果を発揮する仕組み(メカニズム)については、冷感剤や後述する香料においても同様であるので、これらの説明については省略する。
【0166】
かかる冷感剤の例としては、メントール(例えば、l−メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル)、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例えば、ミント、ユーカリ)由来の精油等が挙げられる。なお、冷感剤は、温感剤26と同様に、温度感受性TRPチャネルを刺激するものが好ましい。
【0167】
また、上記実施の形態においては、揮発性物質の一例として、温感剤26を用いていたが、温感剤26に限るものではなく、例えば、香料を用いても良い。香料は、温感剤26の代わりに用いても良いし、温感剤26と一緒に用いても良い。香料としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを用いることができる。
【0168】
なお、香料として、特にグリーンハーバル調の香料(グリーンハーバル様香気)を用いた場合には、特に精神的な不快症状を身体に物理的刺激を与えることなく、また、経口投与にもよらず、安全かつ簡便に緩和させることが可能になる。これに加え、快適感も得られる。
【0169】
グリーンハーバル様香気は、グリーン様香気(グリーンノート)又はハーバル様香気(ハーバルノート)を含む香調である。グリーン様香気とは、草や若葉のすがすがしい香調をいう。ハーバル様香気(ハーバルノート)とは、ハーブを用いた自然で、薬草的な香り立ちが特徴の香調をいう。
【0170】
グリーンハーバル様香気を有する香料を含有する香料組成物は、シス-3-ヘキセノール、ギ酸シス-3-ヘキセニル、酢酸シス-3-ヘキセニル、プロピオン酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、トランス-2-ヘキセナール、酢酸トランス-2-ヘキセニル、酢酸ヘキシル、酢酸スチラリル、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-プロパナール(IFF社名、ヘリオナール)、3(4)-(5-エチルビシクロ[2,2,1]ヘプチル-2)-シクロヘキサノール、2-ペンチロキシグリコール酸アリル(IFF社名、アリルアミルグリコレート)、4-メチル-3-デセン-5-オール(Givaudan社名、ウンデカベルトール)、ヘキシルアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(IFF社名、トリプラール)及びフェニルアセトアルデヒドより選択される1種又は2種以上の香料を含有することが好ましい。これらの香料として市販品を用いることもできる。これらが含まれる香料は主にグリーン様香気を生ずるものである。
【0171】
グリーンハーバル様香気を有する香料を含有する香料組成物は、更に、l-メントール、1,8-シネオール、サリチル酸メチル、シトロネラール、カンファー、ボルネオール、酢酸イソボルニル、酢酸ターピニル、オイゲノール、アネトール、4-メトキシベンジルアルコール及びエストラゴールより選択される1種又は2種以上の香料を含有することが好ましい。これらが含まれる香料は、主として、ハーバル様香気を生ずるものである。
【0172】
なお、香料を用いた場合も、気化して効果を発揮する仕組み(メカニズム)は温感剤26と同様であるので、香料の説明については省略する。
液吸収性の吸収性コア(22)を備えた吸収性本体(20)と、吸収性本体(20)の非肌側に重ねて接合され、左右方向に伸縮する胴回り部材(10)と、を有するパンツ型吸収性物品(1)であって、胴回り部材(10)は、厚さ方向に積層された複数のシートを備え、複数のシートは、最も肌側に配置された第1シート(15)と、最も非肌側に配置された第2シート(14)とを有し、胴回り部材(10)において、第1シート(15)よりも非肌側且つ第2シート(14)よりも肌側に、揮発性物質(26)が設けられていることを特徴とする。