(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、比較的に大きな外径を持つ縮径対象物を、縮径対象物の一部が噛み込まれることなく、しかもコマ体相互で干渉することなく、良好に縮径させることができる縮径装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、比較的に大径の縮径対象物を縮径することに関して鋭意検討した結果、支点支持ピンの中心から支点支持ピンに保持してあるコマ体の先端部までの仮想直線と、第1先端面との第1交差角度(θ1)を、所定角度以上とすることで、コマ体相互を干渉させることなく、しかもコマ体間の隙間を小さくし、比較的に大径の縮径対象物を良好に縮径することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る縮径装置は、
複数のコマ体と、
複数の前記コマ体の基端部をそれぞれ回動可能に保持する複数の支点支持部が円周方向に沿って装着されるリングと、を有する縮径装置であって、
複数の前記コマ体の先端部が組み合わされて開口部が構成され、
前記リングを回転させることで、複数の前記コマ体がそれぞれの前記支点支持部を中心として回動し、複数の前記コマ体の先端部が連携して半径方向に移動して前記開口部の内径を変化させるように構成してあり、
それぞれの前記コマ体は、前記開口部の開口縁面の一部を構成する第1先端面と、前記第1先端面に鋭角で交差して前記先端部を構成し、隣接する前記コマ体の第1先端面に摺動する第2先端面とを有し、
前記支点支持部の中心から当該支点支持部に保持してあるコマ体の先端部までの仮想直線と、前記第1先端面との第1交差角度(θ1)が、9度以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の縮径装置では、第1交差角度(θ1)を、9度以上に設定することで、たとえば拡張時で13mm以上、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上に比較的に大きな外径を持つ縮径対象物を、コマ体の先端部の間に大きな隙間を形成させることなく、しかもコマ体相互で干渉することなく、良好に縮径させることができる。その結果、本発明の縮径装置を用いて、たとえばステントなどの縮径対象物の外径を、縮径対象物の一部が縮径装置のコマ体間の隙間に噛み込まれることなく、良好に縮径させることができる。したがって、縮径されたステントなどの製品は、ダメージを受けること無く、ステントデリバリーカテーテルなどにセットすることができる。
【0010】
好ましくは、前記支点支持部の中心から当該支点支持部に保持してあるコマ体の先端部までの距離が50mm以上である。このように設定することで、たとえば拡張時で13mm以上、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上に比較的に大きな外径を持つ縮径対象物を、縮径対象物の一部が噛み込まれることなく、しかもコマ体相互で干渉することなく、良好に縮径させることができる。
【0011】
それぞれの前記コマ体は、前記第1先端面に平行に延びる先端側部材と、前記支点支持部に取り付けられる基端側部材とを有し、前記先端側部材の延びる方向と、前記基端側部材の延びる方向とが交差する角度を示す第2交差角度(θ2)が0度を超えていてもよい。このように設定することで、コマ体の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1Aおよび
図1Bに示すように、本発明の一実施形態に係る縮径装置2は、たとえばセルフエキスパンダブル型のステント(図示省略)の外径を縮径させるために用いられる器具であり、複数のコマ体4と、駆動リング6aと補助リング6b,6cとを有する。これらの複数のコマ体4と駆動リング6aと補助リング6b,6cとは、円筒状のケース10の内部に装着され、ケース10のZ軸方向の両端には、蓋12a,12bが装着してある。
【0014】
ケース10の胴体外周には、固定レバー20の先端部が固定してある。固定レバー20には、リンクレバー24を介して回動レバー22が装着してある。なお、
図1Aでは、ケース10および蓋12a,12bは、2点鎖線で示してあり、内部が見えるように図示してある。また、固定レバー20、回動レバー22およびリンクレバー24も同様に、2点鎖線で示してある。
【0015】
なお、図面において、ケース10の中心軸がZ軸と平行であり、固定レバー20の長手方向がX軸と平行であり、Y軸は、X軸およびZ軸に相互に垂直な軸である。また、
図1Bでは、固定レバー20および回動レバー22の図示を省略してある。
【0016】
蓋12a,12bの図示が省略してある
図2に示すように、ケース10の胴体外周部に固定してある固定レバー20の先端部の内部には、空洞部21が形成してある。空洞部21の内部に、リンク片28が回動軸30を回動支点として矢印A2方向(またはその逆)に回動自在に装着してある。回動軸30は、固定レバー20の空洞部21の内部で固定レバー20に取り付けられる。
【0017】
リンク片28の回動先端部には、回動軸31を介して操作レバー22の先端部が取り付けてあり、操作レバー22は、回動軸31を回動支点として固定レバー20に対して矢印A1方向(またはその逆)に回動可能になっている。リンク片28の回動先端部には、回動軸31とは別の位置で、駆動ピン32が固定してある。駆動ピン32は、
図1Aおよび
図1Bに示す駆動リング6aの外周部に一体的に形成してある駆動凸部34の駆動用長孔36に係合する。なお、回動軸30,31および駆動ピンの軸芯は、Z軸に平行である。
【0018】
図2に示すように、回動レバー22を固定レバー20に対して矢印A1方向に回動させると、リンクレバー24の作用により、回動軸30を支点としてリンク片28を矢印A2方向に回動させることになる。その結果、リンク片28の駆動ピン32は、駆動用長孔36の中を長手方向に移動し、しかも、駆動凸部34に矢印A3方向の回動駆動力を付与する。
【0019】
駆動凸部34は、
図1Aおよび
図1Bに示す駆動リング6aと一体になっていることから、駆動凸部34に矢印A3方向の回動駆動力が付与されると、駆動リング6aは、矢印A3方向に回動駆動される。次に、駆動リング6aおよび補助リング6b,6cとコマ体4との関係について説明する。
【0020】
図3(A)および
図3(B)に示すように、駆動リング6aは、内周部37aが円形の開口になっている円板状のリング本体33aを有する。リング本体33aには、表裏面を貫通する貫通孔38aが円周方向に沿って略等間隔で複数形成してある。各貫通孔38aには、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す支点支持ピン8が通される。
【0021】
このリング本体33aの外周部の一部に、駆動凸部34が半径方向に突出するように一体化して形成してある。駆動凸部34には、駆動用長孔36が形成してある。駆動用長孔36は、リング本体33aの半径方向に細長く形成してあり、駆動用長孔36の幅(周方向長さ)は、
図2に示す駆動ピン32が入り込む程度の幅である。
【0022】
図3(B)に示すように、駆動凸部34は、切欠き35を介して駆動リング6aの軸方向に1対で形成してある。切欠き35には、
図2に示すリンク片28が挟み込まれ、リンク片28の表裏面にそれぞれ突出してある駆動ピン32が、各駆動凸部34の駆動用長孔36の内部に入り込んで係合する。
【0023】
図4(A)および
図4(B)に示すように、補助リング6b,6cは、内周部37b,37cが円形の開口になっている円板状のリング本体33b,33cを有する。リング本体33b,33cには、表裏面を貫通する貫通孔38b,38cが円周方向に沿って略等間隔で複数形成してある。各貫通孔38b,38cには、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す支点支持ピン8が通される。支点支持ピン8の長手方向がZ軸に平行である。
【0024】
図5(A),
図5(B)および
図5(C)に示すように、各コマ体4は、全体としては、支点支持ピン8の長手方向に沿って細長い板本板4dを有し、板本体4dの短手方向の一端にある先端部4aが、鋭角状の刃先形状を有している。各コマ体4の先端部4aの集合が、
図2に示すように、Z軸方向に延びる開口部4bとなる。開口部4bは、後述するように、先端部4aの動きに応じて、その内径が変化する。
【0025】
板本体4dの短手方向の他端である基端部4cの長手方向の中央部には、駆動リング装着溝42が形成してあると共に、基端部4cの長手方向の両端部には、補助リング装着溝44が形成してある。また、基端部4cには、長手方向に貫通する貫通孔4eが形成してあり、貫通孔4eには、支点支持ピン8が挿通してある。
【0026】
図5(A)に示す駆動リング装着溝42には、
図1Aおよび
図1Bに示すように、駆動リング6aが挿入され、
図3に示す駆動リング6aの円周方向に形成してある貫通孔38aに支点支持ピン8が通されるようになっている。また、
図5(A)に示す補助リング装着溝44には、
図1Aおよび
図1Bに示すように、補助リング6b,6cが挿入され、
図4に示す補助リング6b,6cの円周方向に形成してある貫通孔38b,38cに支点支持ピン8が通されるようになっている。支点支持ピン8の両端は、
図9Aに示すように、補助リング6b,6cから突出するように構成されていても良い。なお、
図9Bは、
図9Aに示す駆動リング6aおよび補助リング6cを取り除いた状態を示す。
【0027】
図5(A)に示す板本体4dの先端部4aから短手方向に所定距離引き込んだ位置で、板本体4dの長手方向の両端には、ピン穴4fが形成してある。ピン穴4fには、案内ピン40が嵌合してあり、案内ピン40が、板本体4dの長手方向の両端から突出するようになっている。
【0028】
本実施形態では、板本体4dは、先端部4aが形成してある先端側部材4iと、基端部4cが形成してある基端側部材4jとから成り、先端部4aと基端部4c以外は、略同一な厚みを有する。先端側部材4iでは、第1先端面4gと第2先端面4hとが先端交差角度θ0で交差することにより、鋭角な先端部4aが形成される。
【0029】
第1先端面4gは、
図8に示すように、コマ体4が組合わされることにより、開口部4bの開口縁面の一部を構成する部分である。第2先端面4hは、第1先端面4gに鋭角な角度θ0で交差して先端部4aを構成し、隣接するコマ体4の第1先端面4gに摺動(滑って移動)する平面である。第1先端面4gは、先端側部材4iに沿って基端側部材4jとの境界まで直線状に延びている。第2先端面4hは、先端側部材4iの途中で部材側面4kと鈍角で交差するようになっている。部材側面4kと第1先端面4gとは略平行になる。先端側部材4iには、ピン穴4fが形成してあり、案内ピン40が取り付けられる。
【0030】
図8に示すように、支点支持ピン8の中心から当該支点支持ピン8に保持してあるコマ体4の先端部4aまでの仮想直線L1と第1先端面4gとの第1交差角度θ1が、9度以上、好ましくは10度以上に設定してあり、また、好ましくは30度以下に設定してある。
【0031】
また本実施形態では、第1先端面4gに平行に延びる先端側部材4iと、支点支持ピン8に取り付けられる基端側部材4jとは、0度を超える第2交差角度θ2で交差していることが好ましい。第2交差角度θ2は、第1交差角度θ1よりも大きいことが好ましい。さらに、先端交差角度θ0は、第2交差角度θ2よりも大きいことが好ましい。
【0032】
先端交差角度θ0は、
図8に示すように配置されるコマ体4の配置数n(図示する例ではn=12)に応じて決定され、たとえばθ0は、360度をnで割り算した値に近い値である。第2交差角度θ2は、好ましくは5〜25度、より好ましくは10〜21度である。なお、コマ体4の配置数nは、適宜変更可能であるが、コマ体4の先端部4aの間に生じる隙間を特に小さくする観点からは、図示する例のようにn=12であることが最適である。
【0033】
本実施形態では、支点支持ピン8の中心から当該支点支持ピン8に保持してあるコマ体4の先端部までの距離をL0とした場合に、L0は、好ましくは45mm以上、より好ましくは60mm以上、さらに好ましくは72mm以上である。
【0034】
また、本実施形態では、複数の支点支持ピン8の中心を結ぶ円の直径をPCDとした場合に、L0/PCD=0.5となるように設定されている。但し、L0/PCDの値は、適宜変更することができる。
【0035】
図6および
図7(A)および
図7(B)に示すように、蓋12a,12bは、円板形状の蓋本体13を有し、蓋本体13の中央部に、円形の出入口14が形成してある。出入口14の内径は、
図2に示す開口部4bの最大内径よりも大きく設定してあり、たとえばステントなどの縮径対象物が出入りする部分となる。
【0036】
蓋本体13の内面(
図1Aおよび
図1Bに示すコマ体4のZ軸方向端面と向き合う面)には、出入口14の外周に沿って円周方向に略等間隔で半径方向に細長い長穴状の案内溝18が複数形成してある。案内溝18の数は、
図1Aおよび
図1Bに示すように配置されるコマ体4の数に等しく、
図2に示す案内ピン40の数とも一致する。各案内溝18には、
図1Aに示すように、案内ピン40が半径方向に移動自在に係合する。
【0037】
図6および
図7(A)および
図7(B)に示すように、蓋本体13の内面には、その外周部に、円周方向に沿って延びる案内凸部16が形成してあっても良い。案内凸部16は、たとえば
図1Aおよび
図1Bに示すケース10の内部に入り込み、案内凸部16の内側で、支点支持ピン8の両端の円周方向の回転移動を案内可能になっている。
【0038】
次に、本実施形態に係る縮径装置2の動きについて説明する。
図1A、
図1Bおよび
図2に示す開口部4bの内部に、たとえばセルフエキスパンダブル型のステントなどの縮径対象物を入れた後に、
図2に示す状態から、回動レバー22を固定レバー20に対して矢印A1方向に回動させると、リンクレバー24の作用により、回動軸30を支点としてリンク片28を矢印A2方向に回動させることになる。その結果、リンク片28の駆動ピン32は、駆動用長孔36の中を長手方向に移動し、しかも、駆動凸部34に矢印A3方向の回動駆動力を付与する。
【0039】
図10Aに示すように、駆動凸部34に矢印A3方向の回動駆動力が付与されると、駆動リング6aも矢印A3方向に回転(回動)する。駆動リング6aと補助リング6b,6cとは、
図9Aにも示すように、支点支持ピン8を介して連結してあることから、駆動リング6aが回転すると補助リング6b,6cも同様に移動する。
【0040】
各支点支持ピン8は、
図5Aに示すように、コマ体4の貫通孔4eに対して回転自在に挿入してあることから、駆動リング6aが回転すると、コマ体4の貫通孔4eに対して回転自在に挿入してある各支点支持ピン8も、
図10Aから
図10Bに示すように矢印A3方向に移動する。なお、各支点支持ピン8は、コマ体4の貫通孔4eに対して固定しても良く、その場合には、各支点支持ピン8は、リング6a〜6cの貫通孔38a〜38cに対して回転自在に保持される。
【0041】
図1Aおよび
図1Bに示すケース10と蓋12a,12bは固定してあるため、蓋12a,12bの内面に形成してある案内溝18(
図6参照)に沿って、
図11Bに示す案内ピン40が半径方向の内側に案内される。そのため、駆動リング6aが矢印A3方向に回動すると、
図10Aから
図10Bに示すように、複数のコマ体4がそれぞれの支点支持ピン8を中心として矢印A4方向に回動し、各コマ体4の先端部4aは、連携して半径方向に移動して開口部4bの内径を縮径させる方向に変化させる。
【0042】
開口部4bには、たとえばセルフエキスパンダブル型のステントなどの縮径対象物が挿入してあることから、開口部4bの縮径と共に、縮径対象物も、その外径が縮径される。たとえばセルフエキスパンダブル型のステントをステントデリバリーカテーテルにセットする場合には、そのステントが縮径された状態(回動レバー22を固定レバー20に対して矢印A1方向に回動させた状態)を維持したまま、ステントデリバリーカテーテルのステントをセットすべきシースの開口に開口部4bを突き合わせ、縮径された開口部4bの内径より僅かに小さな外径を有する円棒を開口部4bに挿し込んで縮径されたステントを押し出すことによって、ステントをステントデリバリーカテーテルのシースにセットすることができる。その後、固定レバー20に対して、回動レバー22を矢印A1と反対方向に回動させることで、上述した動作と逆の動作が行われ、開口部4bを開くことができるので、開かれた開口部4bに、新たな縮径対象物を入れることができる。
【0043】
本実施形態の縮径装置2では、
図8に示すように、第1交差角度θ1を、9度以上に設定することで、たとえば拡張時で13mm以上、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上に比較的に大きな外径を持つステントなどの縮径対象物を、その一部が噛み込まれることなく、しかもコマ体4相互で動きが干渉することなく、良好に縮径させることができる。したがって、縮径されたステントなどの縮径対象物は、ダメージを受けること無く、ステントデリバリーカテーテルなどにセットすることができる。
【0044】
さらに本実施形態では
図8に示す距離L0を50mm以上に設定してある。このように設定することで、たとえば拡張時で13mm以上、好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上に比較的に大きな外径を持つステントなどの縮径対象物を、その一部が噛み込まれることなく、しかもコマ体相互で干渉することなく、良好に縮径させることができる。
【0045】
さらにまた本実施形態では、それぞれのコマ体4は、第1先端面4gに平行に延びる先端側部材4iと、支点支持ピン8に取り付けられる基端側部材4jとで構成してあり、これらが0度を超える第2交差角度θ2で交差している。このように設定することで、コマ体4の軽量化を図ることができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0047】
たとえば、コマ体4の具体的な形状や配置個数などに関しては、図示する実施形態に限定されず、種々に改変することができる。また、固定レバー20および回動レバー22の形状、あるいはこれらのレバー20,22を連結するリンクの構造なども種々に改変することができる。