【実施例】
【0033】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例においては、数値流体力学(CFD)のソフトを用いて圧力変動値を計算した。
【0034】
<式(1)を用いて、圧力変動値を算出する方法>
[数値流体力学(CFD)ソフト]
数値流体力学(CFD)は、対象事例が関わる流体及びその他の物理現象を詳細に計算するエンジニアリング手法である。そして、CFDソフトでは、エチレン分解炉出口から二酸化炭素製造設備入口までのダクトおよび煙突の形状、内部構造物を3次元で実物どおりにモデル化する事ができ、内部のガスの流れや圧力分布などを詳細に求めることが出来る。また計算は定常計算および非定常計算のいずれにも適用可能であり、エチレン分解炉から二酸化炭素製造設備まで通常運転されている場合には定常計算を行い、二酸化炭素製造設備に不調が生じた後の設備内の圧力変動を求める際には非定常計算を行うことにより、エチレン分解炉に伝播する圧力波の大きさを求めることができ、圧力変動幅を求めることができる。
・使用ソフト…ANSYS CFX(ANSYS社製、ver16.2)
この流体解析ソフトを用いた計算手順は、以下のとおりである。
1)分解炉ダクト12の入口条件として分解炉発生ガス量を設定。
2)排ガス取出し配管22の出口における流量を設定。
3)排ガス取出し配管22の出口において、所定時間経過後に、流量が所定量まで低下するように変更。
4)分解炉ダクト12の入口における圧力変動値を計算。
【0035】
(実施例1)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が3秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口(排ガス取出し配管の開口部。以下同様)をエチレン分解炉からの距離が333m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.96sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と0°(=3.14radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は10Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、3秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は10Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0036】
(実施例2)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が3秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が321m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.93sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と90°(=1.57radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は9Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、3秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は10Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0037】
(実施例3)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が1秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が333m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.96sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と0°(=0radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は13Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、1秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は12Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0038】
(実施例4)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が3秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が333m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.96sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と0°(=0radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は2Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、3秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は2Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0039】
(実施例5)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(8万Nm
3/hr、18%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が2秒間で8万Nm
3/hr(ガス線速12.6m/sec)から4万Nm
3/hr(ガス線速6.3m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が333m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.92sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と90°(=1.57radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は2Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(8万Nm
3/hr,ガス線速12.6m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、2秒後に4万Nm
3/hr(ガス線速6.3m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は3Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0040】
(実施例6)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が3秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合におけるエチレン分解炉への圧力影響を15Pa以内に抑えるため、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が333m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.89sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と90°(=1.57radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は14Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、3秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は13Paとなり、15Pa以内であることから、エチレンプラントへの影響が無い事が分かった。
【0041】
(比較例1)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(14万Nm
3/hr、32%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が1秒間で14万Nm
3/hr(ガス線速22.0m/sec)から7万Nm
3/hr(ガス線速11.0m/sec)に変化した場合において、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が115m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.33 sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と90°(=1.57radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は132Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(14万Nm
3/hr,ガス線速22.0m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、1秒後に7万Nm
3/hr(ガス線速11.0m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は141Paとなり、エチレンプラントへの影響がある事が分かった。
【0042】
(比較例2)
エチレン分解炉(総排ガス量44万Nm
3/hr)の一部排ガス(10万Nm
3/hr、23%相当)を排ガス取出し配管から抜出す設備(取出し配管は直径1.5mの円形配管)において、排ガス送り出し設備(例えばブロワー)の送り出し量が3秒間で10万Nm
3/hr(ガス線速15.7m/sec)から5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)に変化した場合において、排ガス取出し口をエチレン分解炉からの距離が285m(音速347m/secと仮定すると伝播時間=0.82sec)、排ガス取出し配管の向きはガスの流れ方向と90°(=1.57radian)の角度をなすように設置した。この場合における式(1)の計算値は22Paとなった。本条件において、流体解析ソフト(CFX ver16.2)を用いてエチレン分解炉における圧力変動値を計算した。流体解析ソフトを用いた計算は以下手順で行った。
1)分解炉入口条件として分解炉発生ガス量を設定(44万Nm
3/hr)
2)排ガス取出し配管出口における流量を設定(10万Nm
3/hr,ガス線速15.7m/sec)
3)排ガス取出し配管出口において、3秒後に5万Nm
3/hr(ガス線速7.9m/sec)まで低下するように変更
4)分解炉入口における圧力変動値を計算
その結果、エチレン分解炉における圧力変動は23Paとなり、エチレンプラントへの影響がある事が分かった。
【0043】
なお、下記表1に、実施例及び比較例の結果をまとめて示す。
【表1】