特許第6878941号(P6878941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6878941
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20210524BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20210524BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20210524BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20210524BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08F299/06
   C08G18/44
   C08G18/38 042
   C08G18/65 011
   C08G18/67 055
   C09D175/14
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-25957(P2017-25957)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-131531(P2018-131531A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】田中 高廣
(72)【発明者】
【氏名】重安 真治
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−314768(JP,A)
【文献】 特開2004−035738(JP,A)
【文献】 特開平06−145276(JP,A)
【文献】 特開昭63−165418(JP,A)
【文献】 特開平02−045522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F299
C08F290
C08G18
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物である不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
ポリオール(A)が、ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)とを含み、平均水酸基官能基数が2.3〜2.9であり、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=95/5〜75/25であること、及び(メタ)アクリレート化合物(C)が、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートジオール(a1)の数平均分子量が、400〜5,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリレート化合物(C)の分子量が、100〜3,000の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリレート化合物(C)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
不飽和基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が500〜200,000であり、且つ不飽和度が0.1〜5mmol/gであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
不飽和基含有ポリウレタン樹脂100質量部に対し、光重合開始剤を0.01〜15質量部含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる塗料。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、柔軟性に富み、強靭な硬化膜を形成し得ることから、活性エネルギー線硬化型の樹脂として、例えば、インキ、塗料、接着剤、コーティング剤、表面処理剤等に広く使用されている。
【0003】
本出願人は、十分なハンドリング性能と低温液性を備えるとともに、形成される硬化膜の低温屈曲性やグリップ性、耐水性や耐熱性にも優れる不飽和基含有ウレタン樹脂を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について既に特許出願している(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近年、不飽和基含有ポリウレタン樹脂に求められている密着性の向上や、その硬化膜の耐薬品性の向上について、さらなる検討が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−145275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、形成される硬化膜の基材への密着性や耐薬品性にも優れる不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の範囲の水酸基官能基数を有するポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物である不飽和基含有ポリウレタン樹脂、及びこれを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の実施形態を含むものである。
【0009】
(1)ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物である不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
ポリオール(A)が、ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)とを含み、平均水酸基官能基数が2.3〜2.9であり、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=95/5〜75/25であること、及び(メタ)アクリレート化合物(C)が、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0010】
(2)ポリカーボネートジオール(a1)の数平均分子量が、400〜5,000の範囲であることを特徴とする上記(1)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0011】
(3)(メタ)アクリレート化合物(C)の分子量が、100〜3,000の範囲であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0012】
(4)(メタ)アクリレート化合物(C)が、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0013】
(5)ポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0014】
(6)不飽和基含有ポリウレタン樹脂の数平均分子量が500〜200,000であり、且つ不飽和度が0.1〜5mmol/gであることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0015】
(7)不飽和基含有ポリウレタン樹脂100質量部に対し、光重合開始剤を0.01〜15質量部含有することを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0016】
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる塗料。
【0017】
(9)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分な硬化性能を備えるとともに、形成される硬化膜も基材への密着性や耐薬品性に優れる、不飽和基含有ポリウレタン樹脂を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及び(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物である不飽和基含有ポリウレタン樹脂(以下単に「不飽和基含有ポリウレタン樹脂」ともいう)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
ポリオール(A)が、ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)とを含み、水酸基価が50〜150mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=95/5〜75/25であること、及び(メタ)アクリレート化合物(C)が、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基とを含むことをその特徴とする。
【0021】
本発明におけるポリオール(A)とは、ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)とを含むものである。
【0022】
ポリカーボネートジオール(a1)としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類等のカーボネート類と、グリコールとの反応によって得ることができる。
【0023】
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の低分子ジオール群の中から選ばれる。これらは単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0024】
本発明におけるポリカーボネートジオール(a1)としては、カーボネート類としてアルキレンカーボネートを用い、グリコール類としては入手しやすさや耐薬品性の観点から1,6−ヘキサンジオールを用いたものが好ましい。
【0025】
ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)の質量比は(a1)/(a2)=95/5〜75/25の範囲であり、(a1)/(a2)=90/10〜80/20の範囲が好ましい。
【0026】
質量比をこれらの範囲とすることでポリカーボネートジオールの凝集力とウレタン基濃度、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート含有量のバランスにより基材への密着性と耐薬品性をともに向上させることができる。
【0027】
ポリオール(A)は、ポリカーボネートジオール(a1)とトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)を単純に混合して用いても良いが、相溶しにくいため、エステル交換反応することによって得られるコポリマーポリオールを用いることにより、基材への密着性と耐薬品性を両立させる他、溶剤への溶解性も向上する。
【0028】
ポリオール(A)の平均水酸基官能基数は2.3〜2.9であり、2.6〜2.8の範囲が好ましい。平均水酸基官能基数が下限未満の場合架橋密度低下により耐薬品性が低下し、平均水酸基官能基数が上限を超えると架橋密度増加により基材への密着性が低下する。
【0029】
ポリオール(A)の平均水酸基価は50〜150mgKOH/gであり、80〜130mgKOH/gがより好ましい。平均水酸基価が下限未満の場合ウレタン基濃度が低くなることで基材への密着性が向上するが耐薬品性が低下し、平均水酸基価が上限を超えるとウレタン基濃度が高くなることで耐薬品性は向上するが基材への密着性が低下する。
【0030】
なお、本発明における平均官能基数は、公称の官能基数を基に下記式により算出した。
平均官能基数=((ポリカーボネートジオール(a1)の官能基数×ポリカーボネートジオール(a1)のmol数)+(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)の官能基数×トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)のmol数))/((ポリカーボネートジオール(a1)のmol数)+(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(a2)のmol数))。
【0031】
また、本発明において、ポリカーボネートジオール(a1)の数平均分子量は、合成の容易さ、取り扱いやすさを考慮すると、400〜5,000が好ましく、800〜3,500がより好ましい。
【0032】
本発明において、ポリイソシアネート(B)としては、特に限定されず、例えば脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等、従来公知の各種ポリイソシアネートから適宜選択して用いることができる。
【0033】
<脂肪族ジイソシアネート>
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
<脂環族ジイソシアネート>
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添化トリレンジイソシアネート、水素添化キシレンジイソシアネート、水素添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
<芳香族ジイソシアネート>
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
<芳香脂肪族ジイソシアネート>
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
これらの中でも、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0038】
これらのジイソシアネートは、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
次に、本発明における、(メタ)アクリレート化合物(C)は、1個以上の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を含むものである。このようなアクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、グリセロールモノアクリレート、グリセロールジアクリレート等のアクリレート類、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等のメタクリレート類、アリルアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールジアリルエーテル等のアリル化合物類等を挙げることができる。
【0040】
これらの中で好ましいものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン付加物、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのβ−メチル−バレロラクトン付加物が好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0041】
なお、これらの(メタ)アクリレート化合物(C)は、単独で使用、又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
また、(メタ)アクリレート化合物(C)の分子量は100〜3,000が好ましく、100〜2,000がより好ましく、100〜1,000が最も好ましい。
【0043】
本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が500〜200,000であることが好ましく、800〜5,000であることがさらに好ましい。数平均分子量が下限未満では、当該樹脂から形成される硬化膜の基材への密着性と耐薬品性が不十分となる場合があり、上限を超えると結晶性が強くなり、粘度が高くなるため製造安定性の確保が難しくなる場合がある。
【0044】
また、本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、不飽和度が0.1〜5mmol/gであることが好ましく、0.3〜2mmol/gであることがさらに好ましい。ここで、不飽和度とは、樹脂1gを製造するにあたって必要な(C)成分のモル数をαmolとし、(C)成分1分子中に含まれるラジカル重合性不飽和結合の数をβ個とした場合、α×βで計算されるmmol数である。不飽和度が下限未満では、硬化膜の架橋密度が小さくなることから、十分な表面硬化性が得られなくなる場合があり、上限を超えると十分な表面硬化性は得られるものの、硬化膜が硬くなり、柔軟性、伸びが乏しくなる場合がある。
【0045】
本発明において、不飽和基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、上記した(A)〜(C)成分を反応させることにより製造できる。また有機溶媒を投入しても良い。
【0046】
有機溶媒としては、例えば、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−tert−ブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ここで、反応温度は、通常20〜200℃であり、30〜150℃の範囲が好ましい。
【0048】
また、反応はイソシアネート残基が無くなくなるまで適宜行えばよく、反応時間は通常5分間〜72時間である。
【0049】
この反応時には、必要に応じて水酸基とイソシアネート基の反応触媒を添加することができる。このような反応触媒としては、例えばオレイン酸鉛、テトラブチルスズ、三塩化アンチモン、トリフェニルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0050】
また、反応触媒を使用する場合には、通常、(A)〜(C)成分の総合計量(固形分)100質量部に対して0.005〜1.0質量部の範囲で使用する。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記した不飽和基含有ポリウレタン樹脂100質量部に対して、光重合開始剤を0.01〜15質量部含有することが好ましく、活性エネルギー線を照射することにより硬化物が得られる。
【0052】
光重合開始剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、カンファン−2,3−ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、特に限定するものではないが、例えば、電子線、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線、可視光レーザー、紫外線レーザー等)が挙げられる。その照射量は必要に応じて調整してよい。
【0054】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記した(A)〜(C)成分の他に、必要に応じて、有機溶媒、着色顔料、体質顔料、塗料用添加剤等を配合してもよい。
【0055】
有機溶媒としては、上記(A)〜(C)成分の反応に用いることができる有機溶媒が挙げられる。
【0056】
着色顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が挙げられる。
【0057】
体質顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。
【0058】
塗料用添加剤としては、特に限定するものではないが、例えば、可塑剤、触媒、防かび剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、増粘剤、艶消し剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、インキ、塗料、接着剤、コーティング剤、表面処理剤等、様々なコーティング用途に好適に用いることができる。当該樹脂組成物の塗布法は特に限定されるものではなく公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み、活性エネルギー線照射量等は、被塗装面の材質等に応じて適宜なものとすればよい。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、形成された硬化膜について基材への密着性及び耐薬品性が要求される各種用途に好適に使用される。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0062】
〔ポリオールの製造1〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、1,6−ヘキサンジオール(以下1,6−HGと略す。)のジエチルカーボネート(以下DECと略す。)に対する配合割合がモル比で1.05になるように、1,6−HGを826g、DECを787g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、TBTと略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が35〜40(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た(Polyol−A)。得られたポリオールの水酸基価は37.4(mg−KOH/g)であった。
【0063】
〔ポリオールの製造2〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、1,6−HGのDECに対する配合割合がモル比で1.03になるように、1,6−HGを824g、DECを800g仕込むとともに、さらに反応触媒としてTBTを0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行い、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が20〜25(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た(Polyol−B)。得られたポリオールの水酸基価は22.4(mg−KOH/g)であった。
【0064】
〔ポリオールの製造3〕
ポリオールの製造1で得られたPolyol−Aを850g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを150g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを15質量%含むポリオールを得た(Polyol−1)。得られたポリオールの水酸基価は128.5(mg−KOH/g)であった。
【0065】
〔ポリオールの製造4〕
ポリオールの製造2で得られたPolyol−Bを850g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを150g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを15質量%含むポリオールを得た(Polyol−2)。得られたポリオールの水酸基価は115.8(mg−KOH/g)であった。
【0066】
〔ポリオールの製造5〕
ポリオールの製造1で得られたPolyol−Aを900g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを100g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを10質量%含むポリオールを得た(Polyol−3)。得られたポリオールの水酸基価は98.2(mg−KOH/g)であった。
【0067】
〔ポリオールの製造6〕
ポリオールの製造2で得られたPolyol−Bを900g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを100g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを10質量%含むポリオールを得た(Polyol−4)。得られたポリオールの水酸基価は84.7(mg−KOH/g)であった。
【0068】
〔ポリオールの製造7〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、1,6−HGのDECに対する配合割合がモル比で1.16になるように、1,6−HGを841g、DECを723g仕込むとともに、さらに反応触媒としてTBTを0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が110〜114(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た(Polyol−5)。得られたポリオールの水酸基価は112.2(mg−KOH/g)であった。
【0069】
〔ポリオールの製造8〕
ポリオールの製造1で得られたPolyol−Aを700g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを300g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30質量%含むポリオールを得た(Polyol−6)。得られたポリオールの水酸基価は193.5(mg−KOH/g)であった。
【0070】
〔ポリオールの製造9〕
ポリオールの製造1で得られたPolyol−Aを970g、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを3質量%含むポリオールを得た(Polyol−7)。得られたポリオールの水酸基価は55.6(mg−KOH/g)であった。
【0071】
その他、本発明で使用した原料を下記に示す。
PCL−210 ポリカプロラクトンジオール(分子量=1000、水酸基価=112、官能基数=2) ダイセル社製
PCL−308 ポリカプロラクトントリオール(分子量=870、水酸基価=193.5、官能基数=3) ダイセル社製。
【0072】
実施例1.
〔不飽和基含有ポリウレタン樹脂の製造〕
攪拌機、温度計、加熱装置を組んだ1Lの4口フラスコに、Polyol−1を429gと、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)230gと、ジオクチルスズジラウレート(以下DOTDLと略す)0.08g、メチルエチルケトン(以下MEKと略す)200gを投入し、70℃において約5時間攪拌し反応させた。その後、4−メトキシフェノール(以下MEHQと略す)0.16g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと略す)141gを投入し、70℃において約5時間攪拌し反応させた。赤外線吸収スペクトルによりイソシアネート残基が観測されなくなったことで反応終了とした。このようにして、数平均分子量1,930、不飽和度1.35mmol/gの不飽和基含有ポリウレタン樹脂を固形分として80質量%含有する樹脂溶液を得た。
【0073】
実施例1と同様の製造方法で実施例2〜4及び比較例1〜5の不飽和基含有ポリウレタン樹脂を得た。得られた樹脂溶液について、基材への密着性と耐薬品性を評価した。結果を表に示す。
【0074】
〔活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた硬化膜作製〕
得られた樹脂溶液中の不飽和基含有ポリウレタン樹脂固形分100質量部に対して、5質量部の光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン;チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア184)を加えて樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を基材上に約80μmの膜厚でコーティングした(基材:ABS,PET,PC)。その後、50℃において1時間放置して、有機溶媒を完全に揮発させてから、紫外線を1,200mJ/cm照射してフィルム(硬化膜)を形成した。この硬化膜について、下記の評価方法により基材への密着性と耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
〔評価方法〕
1.基材密着性
得られた塗膜をJIS K5600−5−6に準じて、クロスカット法による付着性試験を実施した。
分類0〜1:○
分類2〜5:×。
【0076】
2.耐薬品性
2−1.耐紫外線吸収剤性
下記化合物のグリセリン3%溶液をそれぞれ調製し、塗膜に各調製液を1滴垂らし、55℃で4時間放置後、拭き取り外観を目視で評価した。
【0077】
<化合物>
(1)2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
(2)サリチル酸2−エチルヘキシル
(3)サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル
(4)4−tert−ブチルベンゾイル(4−メトキシベンゾイル)メタン
(5)3,3−ジフェニル−2−シアノアクリル酸2−エチルヘキシル。
【0078】
<評価基準>
・塗膜に変化の無いもの、滴下痕が残る程度に僅かにふくれを生じたもの(評価:○)
・塗膜の大部分に皺を生じたもの(評価:△)
・塗膜の大部分に膨潤、皺、溶解を生じたもの(評価:×)。
【0079】
2−2.耐虫除け剤性
DEET(N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド)のエタノール10%溶液を調製し、塗膜に調製液を1滴垂らし、55℃で4時間放置後、拭き取り外観を目視で評価した。
【0080】
<評価基準>
・塗膜に変化の無いもの、滴下痕が残る程度に僅かにふくれを生じたもの(評価:○)
・塗膜の大部分に皺を生じたもの(評価:△)
・塗膜の大部分に膨潤、皺、溶解を生じたもの(評価:×)
【0081】
【表1】