特許第6879212号(P6879212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879212
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】架橋性ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20210524BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20210524BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08J3/22CEQ
   C08L15/00
   C08L33/08
   C08K5/18
   C08K3/36
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-545457(P2017-545457)
(86)(22)【出願日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】JP2016080384
(87)【国際公開番号】WO2017065218
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-203945(P2015-203945)
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福峯 義雄
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/072900(WO,A1)
【文献】 特開2001−055471(JP,A)
【文献】 特開2011−074139(JP,A)
【文献】 特開2003−221467(JP,A)
【文献】 特開2007−262136(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/050853(WO,A1)
【文献】 特開平08−100084(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0214945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28;99/00
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ゴム組成物を製造する方法であって、
ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を準備する第1工程と、
アクリルゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を、前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも10℃以上高い温度にて混合してマスターバッチ(B)を得る第2工程と、
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、前記マスターバッチ(B)を混合する第3工程と、を備える架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記マスターバッチ(B)の配合量が、前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜40重量部である請求項1記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アクリルゴム(b1)と前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)との混合比率が、重量比で、アクリルゴム(b1):芳香族多価アミン架橋剤(b2)=20:80〜90:10である請求項1または2に記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程が、前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、前記マスターバッチ(B)およびシリカを混合する工程である請求項1〜のいずれかに記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記アクリルゴム(b1)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50〜100重量%、および架橋性単量体単位0〜10重量%を含有する請求項1〜のいずれかに記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記アクリルゴム(b1)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50〜99.9重量%、架橋性単量体単位0〜10重量%、およびエチレン単量体単位0.1〜50重量%を含有する請求項1〜のいずれかに記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)がフェノキシ基を有する請求項1〜のいずれかに記載の架橋性ゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により架橋性ゴム組成物を得て、得られた架橋性ゴム組成物を架橋する工程を備えるゴム架橋物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性ゴム組成物の製造方法に係り、機械的強度および耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができる架橋性ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニトリルゴムは、耐油性、機械的特性、耐薬品性等を活かして、ホースやチューブなどの自動車用ゴム部品の材料として使用されており、また、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化したニトリルゴムはさらに耐熱性に優れるため、ホース、シール等のゴム部品に使用されている。
【0003】
このようなニトリルゴムにおいて、たとえば特許文献1には、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を準備する工程と、ヨウ素価が120以下であるニトリル共重合ゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点以上の温度にて、混合してマスターバッチ(B)を得る工程と、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、マスターバッチ(B)を配合する工程と、を備える架橋性ニトリルゴム組成物の製造方法が開示されている。
【0004】
上記特許文献1の技術によれば、スチーム架橋を行った際においても、引張強さ、破断伸び、および硬さに優れたゴム架橋物を得ることができるものの、耐熱老化性が十分でなく、そのため、耐熱老化性の改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5742719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、機械的強度および耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができる架橋性ゴム組成物の製造方法、および該製造方法により得られた架橋性ゴム組成物を用いたゴム架橋物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴムに、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを含有するマスターバッチ(B)を混合する工程を採用することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、架橋性ゴム組成物を製造する方法であって、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を準備する第1工程と、アクリルゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を混合してマスターバッチ(B)を得る第2工程と、前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、前記マスターバッチ(B)を混合する第3工程と、を備える架橋性ゴム組成物の製造方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記第2工程が、前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも10℃以上高い温度にて、前記アクリルゴム(b1)と前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを混合する工程である。
好ましくは、前記マスターバッチ(B)の配合量が、前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜40重量部である。
好ましくは、前記アクリルゴム(b1)と前記芳香族多価アミン架橋剤(b2)との混合比率が、重量比で、アクリルゴム(b1):芳香族多価アミン架橋剤(b2)=20:80〜90:10である。
好ましくは、前記第3工程が、前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、前記マスターバッチ(B)およびシリカを混合する工程である。
【0010】
また、本発明によれば、上記いずれかの製造方法により得られた架橋性ゴム組成物を架橋する工程を備えるゴム架橋物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械的強度および耐熱老化性に優れたゴム架橋物を与えることができる架橋性ゴム組成物、および該架橋性ゴム組成物を架橋することにより得られるゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<架橋性ゴム組成物の製造方法>
本発明の架橋性ゴム組成物の製造方法は、
ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を準備する工程と、
アクリルゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を混合してマスターバッチ(B)を得る工程と、
前記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、前記マスターバッチ(B)を混合する工程と、を備える。
【0013】
本発明の製造方法によれば、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを含有するマスターバッチ(B)を配合してなる架橋性ゴム組成物を得ることができる。
【0014】
<第1工程>
本発明の製造方法の第1工程は、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)を準備する工程である。
【0015】
本発明で用いるヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)(以下、「カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)」と略記する。)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体および必要に応じて加えられる、上記各単量体と共重合可能な単量体を共重合する工程を経て得られる、ヨウ素価が120以下のゴムである。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリルなどが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0018】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。このようなカルボキシ基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0020】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。また、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0021】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn-ブチルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0023】
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる架橋物の機械的強度および耐圧縮永久歪み性が悪化するおそれがあり、逆に、多すぎると、架橋性ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性が悪化したり、得られる架橋物の耐疲労性が低下するおそれがある。
【0024】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびカルボキシル基含有単量体とともに、得られる架橋物がゴム弾性を発現するという点より、共役ジエン単量体を共重合したものであることが好ましい。
共重合する場合の各単量体の割合は、共重合に供する全単量体量を100重量部とした場合に、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体が好ましくは10〜60重量部、より好ましくは15〜55重量部、特に好ましくは20〜50重量部であり、カルボキシル基含有単量体が好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部であり、共役ジエン単量体が好ましくは20〜89.9重量部、より好ましくは30〜84.8重量部、特に好ましくは40〜79.5重量部である。
【0025】
なお、共役ジエン単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびカルボキシル基含有単量体と共重合可能なものであれば特に限定されず、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0026】
共役ジエン単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20〜89.9重量%、より好ましくは30〜84.8重量%、さらに好ましくは40〜79.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られる架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。なお、上記共役ジエン単量体単位の含有量は、後述の共重合体の水素化を行った場合には、水素化された部分も含めた含有量である。
【0027】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、および共役ジエン単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体(I)を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体(I)としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体(上述の「カルボキシル基含有単量体」に該当するものを除く)、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0028】
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0029】
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0030】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのジアルキルアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
【0031】
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0032】
共重合性老化防止剤としては、たとえば、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0033】
これらの共重合可能なその他の単量体(I)は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0034】
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のヨウ素価は、120以下であり、好ましくは80以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは15以下である。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のヨウ素価が高すぎると、得られる架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0035】
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜150、特に好ましくは30〜120である。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られる架橋物の機械的強度が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、架橋性ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0036】
また、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、さらに好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)のカルボキシル基含有量が少なすぎると得られる架橋物の機械的強度が低下するおそれがあり、多すぎると架橋物の耐寒性が低下する可能性がある。
【0037】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)の製造方法は、特に限定されず、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体(I)を共重合する方法が好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。なお、共重合して得られた共重合体のヨウ素価が120より高い場合には、共重合体の水素化(水素添加反応)を行うとよい。この場合における、水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0038】
<第2工程>
本発明の製造方法の第2工程は、アクリルゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を混合してマスターバッチ(B)を得る工程である。
【0039】
アクリルゴム(b1)は、マスターバッチ(B)のバインダとして作用し、アクリルゴム(b1)によって芳香族多価アミン架橋剤(b2)をマスターバッチ(B)中で分散させておくことにより、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に対する芳香族多価アミン架橋剤(b2)の分散性を向上させることができる。
【0040】
アクリルゴム(b1)は、分子中に、主成分(好ましくは、全単量体単位中50重量%以上有するもの。)として、(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を含有するものであればよく、特に限定されない。たとえば、本発明で用いるアクリルゴム(b1)としては、分子中に、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50〜100重量%、および架橋性単量体単位0〜10重量%を含有する重合体などが挙げられる。
【0041】
本発明で用いるアクリルゴム(b1)の主成分として好適である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1〜8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、およびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0043】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2〜8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2−エトキシエチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0044】
本発明で用いるアクリルゴム(b1)中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99.9重量%、さらに好ましくは60〜99.5重量%、特に好ましくは70〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐熱老化性が低下するおそれがある。
【0045】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70〜0重量%からなるものとすることが好ましい。
【0046】
架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体;エポキシ基を有する単量体;ハロゲン原子を有する単量体;ジエン単量体;などが挙げられる。
【0047】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。
【0048】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、フマル酸モノn−ブチルがさらに好ましい。これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0049】
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有エーテルなどが挙げられる。
【0050】
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
エポキシ基含有エーテルの具体例としては、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジルおよびアリルグリシジルエーテルが好ましい。これらエポキシ基を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0051】
ハロゲン原子を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0052】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2−クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2−ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、2−クロロエチルアリルエーテル、および3−クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2−クロロエチルビニルケトン、3−クロロプロピルビニルケトン、および2−クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、およびp−クロロメチル−α−メチルスチレンなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N−クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p−ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
【0053】
これらの中でも、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、およびハロゲン含有不飽和エーテルが好ましく、クロロ酢酸ビニル、および2−クロロエチルビニルエーテルがより好ましく、クロロ酢酸ビニルがさらに好ましい。これらハロゲン原子を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0054】
ジエン単量体としては、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体が挙げられる。
【0055】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどを挙げることができる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、および(メタ)アクリル酸2−ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
【0056】
架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜7重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0057】
また、本発明で用いるアクリルゴム(b1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および架橋性単量体単位に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル単量体や、架橋性単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
【0058】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(以下、「多官能アクリル単量体」と言うことがある。)、オレフィン系単量体、およびビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0059】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
多官能アクリル単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、および1−オクテンなどが挙げられる。
ビニルエーテル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、およびn−ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0060】
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルがより好ましい。
【0061】
共重合可能なその他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明で用いるアクリルゴム(b1)中における、その他の単量体の単位の含有量は、0〜50重量%、好ましくは0〜49.9重量%、より好ましくは0〜39.5重量%、さらに好ましくは0〜29.5重量%、特に好ましくは0〜29重量%である。
【0062】
また、本発明で用いるアクリルゴム(b1)としては、分子中に、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50〜99.9重量%、および架橋性単量体単位0〜10重量%に加えて、エチレン単量体単位0.1〜50重量%を含有するエチレン−アクリレートゴムを用いてもよい。
【0063】
エチレン−アクリレートゴム中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは59.9〜99.4重量%、さらに好ましくは67〜98.5重量%、特に好ましくは69〜98重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐熱老化性が低下するおそれがある。
【0064】
また、エチレン−アクリレートゴム中における、エチレン単位の含有量は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%である。エチレン単位の含有量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の強度などの機械的特性をより良好なものとすることができる。
【0065】
また、エチレン−アクリレートゴム中における、架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜7重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0066】
本発明で用いるアクリルゴム(b1)は、上記単量体を重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、高圧ラジカル重合および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0067】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行われる。
【0068】
本発明で用いる芳香族多価アミン架橋剤(b2)は、分子内に1個以上の芳香環を有する多価アミン架橋剤である。このような芳香族多価アミン架橋剤(b2)としては、(1)分子内に1個以上の芳香環を有し、かつ、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または(2)分子内に1個以上の芳香環を有し、かつ、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になる化合物、であれば特に限定されないが、芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。
【0069】
芳香族多価アミン架橋剤(b2)としては、4,4’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン(融点:114〜116℃)、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン(融点:164〜166℃)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(融点:126℃)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3,5−ベンゼントリアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(融点:107〜110℃)、3,3’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、ジアミノジヒドロキシジフェニルスルホンなどの芳香族多価アミン類が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、1分子内のアミノ基の数が2〜5個であるものが好ましく、2〜3個であるものがより好ましく、2個であるものが特に好ましい。また、1分子内の芳香環の数が1〜8個であるものが好ましく、2〜7個であるものがより好ましく、3〜6個であるものが特に好ましい。そして、1分子内にフェノキシ基を有するものが好ましく、分子内にフェノキシ基を1〜4個有するものがより好ましく、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが特に好ましい。なお、芳香族多価アミン架橋剤(b2)は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0070】
本発明においては、第2工程において、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を、アクリルゴム(b1)に混合し、マスターバッチ(B)を得て、後述する第3工程において、得られたマスターバッチ(B)をカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に混合することにより、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)中における、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の分散性を向上させることができ、これにより得られるゴム架橋物を機械的強度および耐熱老化性に優れたものとすることができる。
【0071】
本発明で用いるマスターバッチ(B)中における、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)との比率は、「アクリルゴム(b1):芳香族多価アミン架橋剤(b2)」の重量比で、好ましくは20:80〜90:10であり、より好ましくは30:70〜80:20、さらに好ましくは30:70〜70:30である。アクリルゴム(b1)の含有量が多すぎると、架橋性ゴム組成物の架橋反応性が低下するおそれがある。一方、アクリルゴム(b1)の含有量が少なすぎると、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)中へのマスターバッチ(B)の分散性、すなわち芳香族多価アミン架橋剤(b2)の分散性が低下してしまい、得られるゴム架橋物の機械的強度が低下してしまうおそれがある。
【0072】
本発明の製造方法の第2工程においては、上述したアクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを混合する際には、混合系の温度を、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも10℃以上高い温度にて、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを混合することが好ましく、より好ましくは、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも15℃以上の温度、さらに好ましくは、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも20℃以上の温度にて混合することが好ましい。なお、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを混合する際における、混合系の温度の上限は、特に限定されないが、通常、200℃以下である。
【0073】
アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを混合する際に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも10℃以上高い温度にて混合を行うことにより、芳香族多価アミン架橋剤(b2)が適切に溶融した状態にて混合を行うことができるため、アクリルゴム(b1)中に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)をより均一に混合することができる。そして、これにより、アクリルゴム(b1)に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を混合することにより得られるマスターバッチ(B)を、後述する第3工程において、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に混合した際に、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)中における、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の分散性を適切に高めることができ、これにより、得られるゴム架橋物を機械的強度および耐熱老化性に特に優れたものとすることができる。
【0074】
特に、本発明においては、マスターバッチ(B)を形成するためのポリマー成分として、アクリルゴム(b1)を用いるものであるが、アクリルゴム(b1)は耐熱温度が高く、そのため、マスターバッチ(B)を得る際に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の融点よりも10℃以上高い温度にて混合を行った場合でも、このような高温混合による劣化が有効に防止できるものである。そのため、本発明によれば、アクリルゴム(b1)を用いることで、アクリルゴム(b1)を劣化させることなく、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を、アクリルゴム(b1)中に均一に分散させることができ、このようにして得られるマスターバッチ(B)を用いることで、後述する第3工程において、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)中に、芳香族多価アミン架橋剤(b2)を良好に分散させることができ、結果として、得られるゴム架橋物を機械的強度および耐熱老化性に特に優れたものとすることができる。なお、このような観点より、芳香族多価アミン架橋剤(b2)としては、融点が100〜200℃の範囲にあるものが好ましく、融点が100〜180℃の範囲にあるものがより好ましい。
【0075】
<第3工程>
本発明の製造方法の第3工程は、第1工程にて準備したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、第2工程にて調製したマスターバッチ(B)を混合することで、架橋性ゴム組成物を得る工程である。
【0076】
マスターバッチ(B)の配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.2〜30重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。マスターバッチ(B)の配合量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られる架橋物の機械的特性および耐熱老化性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、ゴム架橋物の耐疲労性が低下する可能性がある。
【0077】
さらに、本発明の製造方法においては、芳香族多価アミン架橋剤(b2)の配合量を、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部とする。芳香族多価アミン架橋剤(b2)の配合量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性および耐圧縮永久歪み性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、ゴム架橋物の耐疲労性が低下する可能性がある。
【0078】
また、本発明の製造方法の第3工程においては、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)、およびマスターバッチ(B)に加えて、ゴム加工分野において通常使用されるその他の配合剤を混合してもよい。このような配合剤としては、たとえば、カーボンブラックやシリカなどの補強剤、充填材、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、シランカップリング剤、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、発泡剤などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、配合目的に応じた量を適宜採用することができる。
【0079】
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、オースチンブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0080】
シリカとしては、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジル等)、含水珪酸等の合成シリカ;等が挙げられ、これらの中でも、合成シリカが好ましい。また、シリカはシランカップリング剤等で表面処理されたものであってもよい。
【0081】
シランカップリング剤としては特に限定されないが、その具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピルジスルファンなどの硫黄を含有するシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプリピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基含有シランカプリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカプリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;ジアリルジメチルシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン等のアルコキシ基含有シランカップリング剤;ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフロロ基含有シランカップリング剤;イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキル基含有シランカップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソポロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデジル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートなどのチタネート系カップリング剤;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0082】
共架橋剤としては、特に限定されないが、ラジカル反応性の不飽和基を分子中に複数個有する低分子または高分子の化合物が好ましく、たとえば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテルなどのアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0083】
また、本発明の製造方法の第3工程においては、本発明の効果を阻害しない範囲で上記カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)およびアクリルゴム(b1)以外のゴムを配合してもよい。
このようなゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなどが挙げられる。
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)およびアクリルゴム(b1)以外のゴムを配合する場合における配合量は、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)およびアクリルゴム(b1)の合計100重量部に対して、好ましくは60重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0084】
本発明の製造方法の第3工程においては、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、マスターバッチ(B)を混合する際には、好ましくは、これらを非水系にて混合する。たとえば、第3工程において、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)およびマスターバッチ(B)以外の配合剤を配合する際には、マスターバッチ(B)および熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、オープンロールなどに移してマスターバッチ(B)、熱に不安定な架橋助剤などを加えて二次混練する方法を採用することが好ましい。なお、一次混練は、通常、10〜200℃、好ましくは30〜180℃の温度で、1分間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間行い、二次混練は、通常、10〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度で、1分間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間行う。
【0085】
<ゴム架橋物の製造方法>
本発明のゴム架橋物の製造方法は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物の製造方法により得られた架橋性ゴム組成物を架橋することで、ゴム架橋物を得るものである。
本発明のゴム架橋物の製造方法においては、上述した本発明の架橋性ゴム組成物の製造方法により得られた架橋性ゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより、ゴム架橋物を得る方法などが挙げられる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0086】
架橋方法としては、プレス架橋、スチーム架橋、オーブン架橋などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択することができる。
【0087】
このような本発明の製造方法により得られるゴム架橋物は、機械的強度および耐熱老化性に優れたものであり、このような特性を活かし、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0089】
<ヨウ素価>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴムのヨウ素価は、JIS K6235に準じて、測定した。
【0090】
<カルボキシル基含有量>
2mm角のカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム0.2gに、エタノール20mlおよび水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム100gに対するカルボキシル基のモル数として求めた(単位はephr)。
【0091】
<アクリロニトリル単位含有量>
JIS K6384に従い、ケルダール法によって測定したカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム中の窒素含有量から計算により求めた(単位は重量%)。
【0092】
<ムーニー粘度>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した(単位は(ML1+4、100℃))。
【0093】
<架橋剤の分散性>
二次混練後の架橋性ゴム組成物を用いて、表面および内部にある架橋剤の塊(分散不良)を目視で観察することにより、評価した。なお、架橋剤の分散性は、以下の基準で評価した。
○:架橋剤の塊が目視では確認できない(分散良)
×:架橋剤の塊が目視で確認できる(分散不良)
【0094】
<常態物性(引張強さ、破断伸び)>
架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。次にこの試験片を用いて、JIS K6251に従い引張強さおよび破断伸びを測定した。
【0095】
<耐熱老化性>
上記常態物性の評価と同様にして作製したシート状のゴム架橋物を用いて、JIS K6257(ノーマルオーブン法)に従い、170℃における168時間後の破断伸びを測定し、上記常態物性の評価により測定された破断伸びと、熱老化後の伸びとから、下記式に従って、熱老化による伸びの変化率(%)を求めた。
熱老化による伸びの変化率(%)=100×(熱老化後の破断伸び−常態での破断伸び)/常態での破断伸び
【0096】
<圧縮永久歪み>
架橋性ゴム組成物を、金型を用いて、温度170℃で25分間プレスすることにより一次架橋し、直径29mm、高さ12.7mmの円柱型の一次架橋物を得て、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、プレス架橋物を得た。そして、得られたプレス架橋物を用いて、JIS K6262に従い、プレス架橋物を25%圧縮させた状態で、150℃の環境下に168時間置いた後、圧縮永久歪みを測定した。
この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0097】
<製造例1:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)の製造>
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.75部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン57部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応した。その後、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止し、引き続いて、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル−ブタジエン−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0098】
次に、該ラテックスに含有されるゴム重量に対してパラジウム含有量が1000ppmになるようにオートクレーブにパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)のラテックスを得た。
そして、得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)のラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)は、ヨウ素価が10、カルボキシル基含有量は3.2×10−2ephr、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は45であった。
なお、ケルダール法でアクリロニトリル単位含有量を求め、カルボキシル基含有量からマレイン酸モノn−ブチル単位含有量を求め、残部を1,3−ブタジエン単位として計算により求めたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)の組成は、アクリロニトリル単位35.6重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)58.8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.6重量%であった。
【0099】
<製造例2:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−2)の製造>
アクリロニトリルの配合量を45部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6部、1,3−ブタジエンの配合量を49部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−2)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−2)の組成は、アクリロニトリル単位45.4重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)50.6重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位4.9重量%であった。
【0100】
<製造例3:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−3)の製造>
アクリロニトリルの配合量を23部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6.5部、1,3−ブタジエンの配合量を40部に、それぞれ変更し、かつ、アクリル酸メトキシエチル30.5部をさらに配合した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−3)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−3)の組成は、アクリロニトリル単位24重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)46.6重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位6.5重量%、アクリル酸メトキシエチル単位22.9重量%であった。
【0101】
<製造例4:カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−4)の製造>
アクリロニトリルの配合量を21部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を5部、1,3−ブタジエンの配合量を44部に、それぞれ変更し、かつ、アクリル酸ブチル30部をさらに配合した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−4)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−4)の組成は、アクリロニトリル単位20.8重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)44.2重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位4.9重量%、アクリル酸ブチル単位30.1重量%であった。
【0102】
<製造例5:アクリルゴム(b1−1)の製造>
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル60部、アクリル酸ブチル40部を仕込んだ。その後、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固し、水洗、乾燥してアクリルゴム(b1−1)を得た。得られたアクリルゴム(b1−1)の組成は、アクリル酸エチル単位60重量%、アクリル酸ブチル単位40重量%であった。
【0103】
<製造例6:アクリルゴム(b1−2)の製造>
アクリル酸エチルの配合量を40部、アクリル酸ブチルの配合量を30部に、それぞれ変更し、かつ、アクリル酸メトキシエチル30部をさらに配合した以外は、製造例5と同様にして、アクリルゴム(b1−2)を得た。得られたアクリルゴム(b1−2)の組成は、アクリル酸エチル単位40重量%、アクリル酸ブチル単位30重量%、およびアクリル酸メトキシエチル単位30重量%であった。
【0104】
<製造例7:マスターバッチ(B−1)の製造>
容量55mlのブラベンダータイプミキサー中で、製造例5で得られたアクリルゴム(b1−1)50部を1分間素練りし、次いで、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP、芳香族多価アミン架橋剤(b2)、融点126℃)50部を添加して、温度を150℃とし、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを溶融させた状態で、5分間混練することで、アクリルゴム(b1−1):2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=50:50(重量比)であるマスターバッチ(B−1)を製造した。
【0105】
<製造例8:マスターバッチ(B−2)の製造>
アクリルゴム(b1−1)の配合量を70部とし、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンの配合量を30部とした以外は、製造例7と同様にして、アクリルゴム(b1−1):2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=70:30(重量比)であるマスターバッチ(B−2)を製造した。
【0106】
<製造例9:マスターバッチ(B−3)の製造>
アクリルゴム(b1−1)50部に代えて、製造例2で得られたアクリルゴム(b1−2)50部を使用した以外は、製造例7と同様にして、アクリルゴム(b1−2):2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=50:50(重量比)であるマスターバッチ(B−3)を製造した。
【0107】
<製造例10:マスターバッチ(B−4)の製造>
アクリルゴム(b1−1)50部に代えて、エチレンアクリレートゴム(b1−3)(商品名「Vamac(R) ULTRA IP」、DuPont社製)50部を使用した以外は、製造例7と同様にして、エチレンアクリレートゴム(b1−3):2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=50:50(重量比)であるマスターバッチ(B−4)を製造した。
【0108】
<製造例11:マスターバッチ(B’−5)の製造>
アクリルゴム(b1−1)50部に代えて、水素化ニトリルゴム(商品名:Zetpol 2000L、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位含有量36重量%、ブタジエン単位(水素化されたものも含む)64重量%、ヨウ素価4、ムーニー粘度65)50部を使用した以外は、製造例7と同様にして、水素化ニトリルゴム:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=50:50(重量比)であるマスターバッチ(B’−5)を製造した。
【0109】
<製造例12:マスターバッチ(B’−6)の製造>
混練時の温度を120℃に変更した以外は、製造例11と同様にして、水素化ニトリルゴム:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)=50:50(重量比)であるマスターバッチ(B’−6)を製造した。
【0110】
<実施例1>
バンバリーミキサを用いて、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)100部に、FEFカーボンブラック(商品名:シーストSO、東海カーボン社製)40部、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(商品名:アデカサイザーC−8、ADEKA社製、可塑剤)5部、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:ナウガード445、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(商品名:フォスファノールRL210、東邦化学工業社製、加工助剤)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、製造例7で製造したマスターバッチ(B−1)12.6部、および1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)(商品名「RHENOGRAN XLA−60(GE2014)」、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分も含む)4部を配合して、混練することにより、架橋性ゴム組成物を得た。
【0111】
そして、上述した方法により、架橋剤の分散性、常態物性(引張強さ、破断伸び)、耐熱老化性、および圧縮永久歪みの各評価・試験を行った。結果を表1に示す。
【0112】
<実施例2〜4>
マスターバッチ(B−1)に代えて、製造例8〜10にて得られたマスターバッチ(B−2)〜(B−4)を、それぞれ表1に示す配合量にて使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
<実施例5〜7>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)に代えて、製造例2〜4にて得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)〜(A−3)を、それぞれ表1に示す配合量にて使用するとともに、マスターバッチ(B−1)およびカーボンブラックの配合量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
<実施例8>
FEFカーボンブラック40部に代えて、シリカ(商品名「Nipsil ER」、東ソー・シリカ社製)50部を、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル5部に代えて、ポリエーテルエステル(商品名「アデカサイザーRS700」、ADEKA社製、可塑剤)5部を、それぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
<実施例9〜11>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)に代えて、製造例2〜4にて得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)〜(A−3)を、それぞれ表1に示す配合量にて使用するとともに、マスターバッチ(B−1)およびシリカの配合量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例8と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
<実施例12>
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名「Dynasylan(R)AMEO」、エボニック インダストリーズ社製、シランカップリング剤)0.5部をさらに配合した以外は、実施例8と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
<実施例13〜15>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)に代えて、製造例2〜4にて得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)〜(A−3)を、それぞれ表1に示す配合量にて使用するとともに、マスターバッチ(B−1)およびシリカの配合量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例12と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
<実施例16>
γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「Dynasylan(R)GLYMO」、エボニック インダストリーズ社製、シランカップリング剤)0.5部をさらに配合した以外は、実施例8と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
<実施例17〜19>
カルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)に代えて、製造例2〜4にて得られたカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A−1)〜(A−3)を、それぞれ表2に示す配合量にて使用するとともに、マスターバッチ(B−1)およびシリカの配合量を表2に示す配合量に変更した以外は、実施例16と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
<比較例1>
マスターバッチ(B−1)12.6部に代えて、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン6.3部を、マスターバッチ化せずに、そのまま配合した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
<比較例2>
マスターバッチ(B−1)12.6部に代えて、製造例11で得られたマスターバッチ(B’−5)12.6部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
<比較例3>
マスターバッチ(B−1)12.6部に代えて、製造例12で得られたマスターバッチ(B’−6)12.6部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
<比較例4>
マスターバッチ(B−1)12.6部に代えて、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名:Diak#1、デュポンダウエラストマー社製、脂肪族多価アミン架橋剤)2.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
<比較例5>
マスターバッチ(B−1)12.6部に代えて、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(商品名「Diak#3」、デュポンダウエラストマー社製)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
表1、表2中、「ACM(b1−1)」はアクリルゴム(b1−1)を、「ACM(b1−2)」はアクリルゴム(b1−2)を、「AEM(b1−3)」はエチレンアクリレートゴム(b1−3)を、「HNBR」は水素化ニトリルゴムを、「BAPP」は2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを、それぞれ示す。
【0128】
表1、表2に示すように、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを含むマスターバッチ(B)を配合することにより、得られる架橋性ゴム組成物は、架橋剤の分散性が良好であり、かつ、常態物性(引張強さ、破断伸び)、耐熱老化性(熱老化後の伸び変化率)および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることが確認できる(実施例1〜19)。
【0129】
これに対して、芳香族多価アミン架橋剤(b2)をマスターバッチ化せずに、直接、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリル共重合ゴム(A)に配合した場合には、架橋剤の分散性が悪く、得られるゴム架橋物は、耐熱老化性(熱老化後の伸び変化率)に劣るものであった(比較例1)。
また、芳香族多価アミン架橋剤(b2)のマスターバッチを得る際に、アクリルゴム(b1)の代わりに、水素化ニトリルゴムを使用した場合には、150℃で混合したものを用いた場合には、架橋剤の分散性は良好となったものの、得られるゴム架橋物の耐熱老化性(熱老化後の伸び変化率)が悪化する結果となり、また、120℃で混合したものを用いた場合には、架橋剤の分散性が悪く、得られるゴム架橋物の耐熱老化性(熱老化後の伸び変化率)も悪化する結果となった(比較例2,3)。
さらに、アクリルゴム(b1)と芳香族多価アミン架橋剤(b2)とを含むマスターバッチ(B)の代わりに、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、またはN,N‘−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンを使用した場合には、得られるゴム架橋物は、耐熱老化性(熱老化後の伸び変化率)に劣るものであった(比較例4,5)。