特許第6879218号(P6879218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879218
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/07 20060101AFI20210524BHJP
   C08J 5/02 20060101ALI20210524BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20210524BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210524BHJP
   C08F 36/08 20060101ALI20210524BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20210524BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08J3/07CEQ
   C08J5/02CEQ
   C08L53/02
   C08L9/00
   C08F36/08
   C08F297/04
   C08K5/13
   C08L93/04
   C08K3/011
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-565513(P2017-565513)
(86)(22)【出願日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2017002704
(87)【国際公開番号】WO2017135146
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18716(P2016-18716)
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】小出村 順司
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/117620(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099501(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/157034(WO,A1)
【文献】 特開2015−193685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28;99/00
C08J 5/00− 5/24
C08F 36/08
C08F 297/04
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る重合工程と、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液について、凝固させることなく、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部に対して、老化防止剤を0.01〜1.00重量部の割合で添加する老化防止剤添加工程と、
前記老化防止剤を添加した重合体溶液を、凝固させることなく、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得る乳化工程と、を備え、
前記乳化工程において、前記重合体ラテックス中に含まれる、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粒子の25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が、1.90以上、2.30以下となるように、前記乳化を行うことを特徴とする重合体ラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記単量体の重合を、アルキルリチウム重合触媒を用いて行う請求項1に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記老化防止剤として、フェノール系老化防止剤とチオビスフェノール系老化防止剤とを組み合わせて用いる請求項2に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記フェノール系老化防止剤およびチオビスフェノール系老化防止剤の使用量を、「フェノール系老化防止剤:チオビスフェノール系老化防止剤」の重量割合で60:40〜95:5とする請求項3に記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ロジン酸ナトリウムおよび/またはロジン酸カリウムである請求項1〜4のいずれかに記載の重合体ラテックスの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が得られることが知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギーの症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜または臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ポリイソプレンやスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスを用いる検討がされてきている(特許文献1)。
【0003】
たとえば、特許文献1には、重量平均分子量が10,000〜5,000,000である、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックスと、硫黄系加硫剤および加硫促進剤を含有してなるディップ成形用組成物が開示されている。特許文献1に記載のディップ成形用組成物によれば、引張強度がそれなりに改善されたディップ成形体が得られている。しかしながら、使用用途によっては、引張強度が十分でない場合があり、そのため、引張強度のさらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−62487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、乳化安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、溶液重合により得られた、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、所定量の老化防止剤を添加した後、凝固させることなく、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得ること、および、重合体ラテックスを得る際に、重合体ラテックス中に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粒子の25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25を所定の範囲に制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る重合工程と、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部に対して、老化防止剤を0.01〜1.00重量部の割合で添加する老化防止剤添加工程と、
前記老化防止剤を添加した重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得る乳化工程と、を備え、
前記乳化工程において、前記重合体ラテックス中に含まれる、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粒子の25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が、1.90以上、2.30以下となるように、前記乳化を行うことを特徴とする重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【0008】
前記単量体の重合を、アルキルリチウム重合触媒を用いて行うことが好ましい。
前記老化防止剤として、フェノール系老化防止剤とチオビスフェノール系老化防止剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
前記フェノール系老化防止剤およびチオビスフェノール系老化防止剤の使用量を、「フェノール系老化防止剤:チオビスフェノール系老化防止剤」の重量割合で60:40〜95:5とすることが好ましい。
前記界面活性剤が、ロジン酸ナトリウムおよび/またはロジン酸カリウムであることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた重合体ラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乳化安定性に優れ、かつ、引張強度の高いディップ成形体を与えることのできる重合体ラテックス、およびこのような重合体ラテックスを用いて得られ、高い引張強度を備えるディップ成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法は、
有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る重合工程と、
前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部に対して、老化防止剤を0.01〜1.000重量部の割合で添加する老化防止剤添加工程と、
前記老化防止剤を添加した重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得る乳化工程と、を備える。
そして、本発明の製造方法においては、前記乳化工程において、前記重合体ラテックス中に含まれる、前記合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粒子の25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が、1.90以上、2.30以下となるように、前記乳化を行うものである。
【0012】
重合工程
本発明の製造方法における重合工程は、有機溶媒中において、単量体を重合することで、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る工程である。
まず、本発明の重合工程において、合成ポリイソプレンの重合体溶液を得る場合について説明する。
【0013】
本発明の製造方法の重合工程で製造する合成ポリイソプレンの重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
【0014】
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0015】
本発明の製造方法の重合工程において、合成ポリイソプレンの重合体溶液は、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合して得ることができる。特に、本発明によれば、アルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、直接、乳化した場合でも、得られる乳化物中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0016】
有機溶媒としては、重合反応に対して不活性なものであればよいが、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンが特に好ましい。有機溶媒の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは250〜2000重量部、より好ましくは400〜1250重量部である。
【0017】
また、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを含む単量体を溶液重合する際の重合温度は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜75℃である。
【0018】
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2−ビニル結合単位、3,4−ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは72重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。
【0019】
合成ポリイソプレンの重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは100,000〜1,200,000、より好ましくは150,000〜1,100,000、さらに好ましくは200,000〜1,000,000である。合成ポリイソプレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度が向上するとともに、合成ポリイソプレンの重合体溶液を、該溶液中に含まれる合成ポリイソプレンの含有割合を比較的高いものとしながら、後述する乳化工程における乳化を行う際に適切な粘度とすることができ、これにより、後述する乳化工程を高い生産性にて、適切に行うことができる。
【0020】
また、合成ポリイソプレンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜2.6、より好ましくは1.0〜2.4、さらに好ましくは1.0〜2.2である。合成ポリイソプレンの分子量分布を上記範囲とすることにより、重量平均分子量を比較的高いものとした場合でも、合成ポリイソプレンの重合体溶液の粘度の上昇を抑制することができるため、結果として、合成ポリイソプレンの重合体溶液を、該溶液中に含まれる合成ポリイソプレンの含有割合を比較的高いものとしながら、後述する乳化工程における乳化を行う際に適切な粘度とすることができ、これにより、後述する乳化工程を高い生産性にて、適切に行うことができる。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、上述した重量平均分子量(Mw)と、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)とから求めることができる。
【0021】
また、本発明の重合工程において、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を得る場合における、重合方法としては、特に限定されないが、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、有機溶媒中で、イソプレンとスチレンとをブロック共重合して得ることができる。この際において、重合に使用する有機溶媒および重合温度は、上述した合成ポリイソプレンの重合体溶液を得る場合と同様とすればよい。この場合においても、アルキルリチウム重合触媒を用いて重合を行うことにより、重合転化率を、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上とすることができ、これにより残留モノマー量を低減できるものであり、これにより、残留モノマーを除去するために、凝固および再溶解などの工程を経ることなく、直接、乳化した場合でも、得られる乳化物中の残留モノマー量を抑えることができるため、望ましい。
【0022】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のスチレンブロックにおけるスチレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、さらに好ましくは100重量%である。
【0023】
なお、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99〜90:10、好ましくは3:97〜70:30、より好ましくは5:95〜50:50、さらに好ましくは10:90〜30:70の範囲である。
【0024】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは70,000〜400,000、さらに好ましくは100,000〜350,000である。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度が向上するとともに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、該溶液中に含まれるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有割合を比較的高いものとしながら、後述する乳化工程における乳化を行う際に適切な粘度とすることができ、これにより、後述する乳化工程を高い生産性にて、適切に行うことができる。
【0025】
また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜2.6、より好ましくは1.0〜2.4、さらに好ましくは1.0〜2.2である。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の分子量分布を上記範囲とすることにより、重量平均分子量を比較的高いものとした場合でも、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液の粘度の上昇を抑制することができるため、結果として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液を、該溶液中に含まれるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の含有割合を比較的高いものとしながら、後述する乳化工程における乳化を行う際に適切な粘度とすることができ、これにより、後述する乳化工程を高い生産性にて、適切に行うことができる。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、上述した重量平均分子量(Mw)と、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)とから求めることができる。
【0026】
老化防止剤添加工程
本発明の製造方法における老化防止剤添加工程は、上述した重合工程により得られた合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に、老化防止剤を添加する工程である。
【0027】
本発明の製造方法にける老化防止剤添加工程における、老化防止剤の添加量は、重合体溶液中に含まれる、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100重量部に対して、0.01〜1.00重量部であり、好ましくは0.03〜0.80重量部、より好ましくは0.05〜0.60重量部である。老化防止剤添加工程における、老化防止剤の添加量が少なすぎると、得られるディップ成形体の引張強度が低下してしまい、一方、多すぎると、乳化安定性に劣るものとなってしまう。
【0028】
本発明においては、上述した重合工程により得られた合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液に対して、上記所定量の老化防止剤を添加し、重合体溶液について、老化防止剤が添加された状態にて、後述する乳化工程において乳化を行うことで、乳化やディップ成形による熱履歴に起因する劣化を有効に防止することができ、これにより、得られるディップ成形体の引張強度を適切に高めることができる。
【0029】
老化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系老化防止剤、チオビスフェノール系老化防止剤、亜リン酸エステル系老化防止剤、硫黄エステル系老化防止剤、アミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、ハイドロキノン系老化防止剤などを用いることができる。
【0030】
フェノール系老化防止剤としては、たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス−(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等が挙げられる。
【0031】
チオビスフェノール系老化防止剤としては、たとえば、2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0032】
亜リン酸エステル系老化防止剤としては、たとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイト等が挙げられる。
【0033】
硫黄エステル系老化防止剤としては、たとえば、チオジプロピオン酸ジラウリル等が挙げられる。
【0034】
アミン系老化防止剤としては、たとえば、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合品等が挙げられる。
【0035】
キノリン系老化防止剤としては、たとえば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等が挙げられる。
【0036】
ハイドロキノン系老化防止剤としては、たとえば、2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノン等が挙げられる。
【0037】
これらの老化防止剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、2種以上の老化防止剤を組み合わせて用いる場合には、2種以上の老化防止剤の合計量を上記範囲とすればよい。これらのなかでも、フェノール系老化防止剤およびチオビスフェノール系老化防止剤が好ましく、その添加効果をより高めることができるという点より、フェノール系老化防止剤とチオビスフェノール系老化防止剤とを組み合わせて用いることが好ましい。なお、フェノール系老化防止剤とチオビスフェノール系老化防止剤とを組み合わせて用いる場合における、これらの使用割合は、「フェノール系老化防止剤:チオビスフェノール系老化防止剤」の重量割合で、好ましくは60:40〜95:5、より好ましくは80:20〜93:7である。
【0038】
乳化工程
本発明の製造方法における乳化工程は、上記老化防止剤添加工程において老化防止剤を添加した重合体溶液を、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得る工程である。
【0039】
本発明の製造方法においては、上述した重合工程において得られた重合体溶液に対し、上記所定量の老化防止剤を添加した後に、凝固させることなく、界面活性剤の存在下に、水中で乳化させることで、重合体ラテックスを得るものである。すなわち、本発明によれば、凝固させることなく、得られた重合体溶液を用いて、直接、乳化を行うものであり、そのため、本発明の製造方法によれば、一度、凝固を行う場合と比較して、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の受ける熱履歴を低減することができ、これにより、得られるディップ成形体を引張強度に優れたものとすることが可能となる。
【0040】
本発明の製造方法における乳化工程において用いる界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸塩;等が挙げられる。
【0041】
これらアニオン性界面活性剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0042】
また、重合体ラテックスを製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることが好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩と、脂肪酸塩とを併用して用いることが特に好ましい。ここで、脂肪酸塩としては、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムが好ましく、また、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。また、これらの界面活性剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0043】
さらに、本発明の製造方法においては、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を併用してもよく、このようなアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の界面活性剤が挙げられる。
【0044】
また、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性界面活性剤も併用してもよい。
【0045】
界面活性剤の使用量は、重合体溶液中に含まれる合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。なお、2種類以上の界面活性剤を用いる場合においては、これらの合計の使用量を上記範囲とすることが好ましい。界面活性剤の使用量が少なすぎると、乳化時に凝集物が多量に発生するおそれがあり、逆に多すぎると、発泡しやすくなり、得られるディップ成形体にピンホールが発生する可能性がある。
【0046】
本発明の製造方法における乳化工程において、使用する水の量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(有機溶媒溶液)100重量部に対して、好ましくは10〜1,000重量部、より好ましくは30〜500重量部、最も好ましくは50〜100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
【0047】
また、本発明の製造方法における乳化工程においては、乳化により得られる重合体ラテックス中に含有される、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の粒子の25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25(μm/μm)が、1.90以上、2.30以下、好ましくは1.92以上、2.28以下、さらに好ましくは1.94以上、2.26以下となるように乳化を行う。D75/D25が、1.90未満であると、ディップ成形時の成膜性が悪化するとともに、1.90未満としようとすると、乳化工程にかける時間が極めて長くなってしまい、生産性に極めて劣るものとなってしまう。一方、2.30超であると、重合体ラテックスは乳化安定性に劣るものとなり、さらには、得られるディップ成形体の引張強度が低下してしまう。なお、25%頻度体積粒子径D25および75%頻度体積粒子径D75は、それぞれ、体積基準の25%頻度粒子径および体積基準の75%頻度粒子径であり、たとえば、光散乱回折法によって粒子径分布を測定し、測定された粒子径分布において小径側から計算した累積体積が25%となる粒子径および75%となる粒子径とすることができる。
【0048】
なお、本発明の製造方法において、D75/D25を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、乳化工程において用いる乳化装置の構成や、後述する乳化PASS数、乳化温度、乳化時の圧力などを、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)に応じて制御する方法などが挙げられる。
【0049】
たとえば、乳化装置としては、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等を用いることができる。
【0050】
乳化PASS数(乳化時における、乳化装置を通過させる回数)は、好ましくは1〜20PASS、より好ましくは5〜15PASSであり、乳化温度は、好ましくは10〜70℃、より好ましくは30〜65℃である。また、乳化時の圧力(ゲージ圧)は、好ましくは0.01〜0.50MPa、より好ましくは0.05〜0.30MPaである。
【0051】
なお、乳化により得られる重合体ラテックス中に含有される、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の25%頻度体積粒子径D25、および75%頻度体積粒子径D75は、これらの比D75/D25が上記範囲となるようなものであればよいが、25%頻度体積粒子径D25は、好ましくは0.50〜1.50μm、より好ましくは0.70〜1.45μm、さらに好ましくは0.80〜1.40μmであり、また、75%頻度体積粒子径D75は、好ましくは2.00〜3.00μm、より好ましくは2.10〜2.90μm、さらに好ましくは2.20〜2.80μmである。さらに、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の平均粒子径(50%頻度体積粒子径D50)は、好ましくは1.40〜2.20μm、より好ましくは1.45〜2.10μmである。
【0052】
また、本発明の製造方法においては、乳化工程において得られた乳化物から、有機溶媒を除去することが望ましい。乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる重合体ラテックス中における、有機溶媒(好ましくは脂肪族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
【0053】
このようにして得られる、重合体ラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
【0054】
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0055】
また、必要に応じ、重合体ラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよいが、重合体ラテックス中の界面活性剤の残留量を調整することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
【0056】
重合体ラテックスを遠心分離機にかける場合、重合体ラテックスの機械的安定性の向上のため、予めpH調整剤を添加して重合体ラテックスのpHを7以上としておくことが好ましく、pHを9以上としておくことがより好ましい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0057】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは4,000〜5,000G、遠心分離前の重合体ラテックスの固形分濃度を、好ましくは2〜15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500〜2000Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03〜1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。
【0058】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの固形分濃度は、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスを貯蔵した際における重合体粒子の分離を抑制することができるとともに、重合体粒子同士が凝集して粗大凝集物が発生することを抑制できる。
【0059】
また、本発明の製造方法により製造される重合体ラテックス中における界面活性剤の合計含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。界面活性剤の合計含有量が上記範囲にある場合に、泡立ちの発生が抑制され、引張強度に優れ、ピンホールの発生が無いディップ成形体が得られやすい。
【0060】
本発明の製造方法により製造される重合体ラテックスの粘度は、通常1〜1000mPa・s、好ましくは30〜500mPa・s、より好ましくは50〜400mPa・s、さらに好ましくは100〜300mPa・sである。重合体ラテックスの粘度は、たとえば、B形粘度計を用い、常温(25℃)にて測定することができる。重合体ラテックスの粘度が上記範囲にあることで、ディップ成形をより適切に行うことができる。
【0061】
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
【0062】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、カプロラクタム・ジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0064】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有することが好ましい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
架橋促進剤の含有量は、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0066】
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有することが好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、合成ポリイソプレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、乳化安定性を良好なものとしながら、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
【0067】
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
【0068】
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する重合体ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0069】
本発明のラテックス組成物は、pHが7以上であることが好ましく、pHが7〜13の範囲であることがより好ましく、pHが8〜12の範囲であることがさらに好ましい。また、ラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
【0070】
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
【0071】
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0072】
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0073】
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0074】
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0075】
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
【0076】
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
【0077】
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
【0078】
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
【0079】
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られる合成ポリイソプレンおよび/またはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体ラテックスを用いて得られるものであるため、引張強度に優れるものであり、手袋として特に好適に用いることができる。ディップ成形体が手袋である場合、ディップ成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
【0080】
また、本発明のディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0082】
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
重合体溶液に含まれる、合成ポリイソプレンまたはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の固形分濃度が0.1重量%となるように、テトラヒドロフランで希釈し、この溶液について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析を行い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0083】
重合体ラテックスの25%頻度体積粒子径D25、75%頻度体積粒子径D75
重合体ラテックスについて、光散乱回折粒子測定装置(コールター社製:LS−230)を用いて粒子径分布の測定を行い、測定結果から、25%頻度体積粒子径D25、および75%頻度体積粒子径D75を求め、求めたD25,D75を使用し、これらの比D75/D25を算出した。
【0084】
重合体ラテックスの乳化安定性
重合体ラテックスを、100mlのサイズのガラス容器に入れ、23℃の条件下、24時間整置し、整置後の重合体ラテックスの状態を目視で観察することにより、乳化安定性を評価した。なお、乳化安定性は、以下の基準で評価した。
○:24時間整置した後において、凝集物や分離が確認できなかった。
△:24時間整置した後において、わずかであるが凝集物が確認された。
×:24時間整置した後において、凝集物が多量に確認された。あるいは、分離してしまい、被膜が形成されていた。
【0085】
ディップ成形体の引張強度
ディップ成形体の引張強度は、ASTM D412に基づいて測定した。具体的には、ディップ成形体をダンベル(Die−C)で打ち抜き、測定用試験片を作製し、得られた試験片をテンシロン万能試験機(オリエンテック社製「RTC−1225A」)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)を測定した。
【0086】
実施例1
(重合工程、老化防止剤添加工程)
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレープに、n−ヘキサン1150部とイソプレン100部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液0.1105部を加えて1時間反応させた。重合反応率は99%であった。得られた反応液に、重合停止剤としてメタノール0.0831部を添加し、反応を停止させることで、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)を得た。さらに、得られた重合体溶液(A−1)に、重合体溶液中に含まれる合成ポリイソプレン100部に対し、老化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(中央化成品社製)0.36部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」)0.05部を加え、撹拌下、室温で溶解することで、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)を得た。
得られた重合体溶液(A−1)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が510,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.0であった。
【0087】
(乳化工程)
ロジン酸ナトリウム10部と水を混合し、温度60℃のロジン酸ナトリウム濃度0.5重量%のアニオン性界面活性剤水溶液を調製した。そして、上記にて得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)と、アニオン性界面活性剤水溶液とを、重量比で1:1.5となるように、商品名「マルチラインミキサーMS26−MMR−5.5L」(佐竹化学機械工業株式会社製)を用いて混合し、続いて、商品名「マイルダーMDN310」(太平洋機工株式会社製)を用い4100rpmで混合および乳化を行うことで、乳化液を得た。なお、この際における、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)と、アニオン性界面活性剤水溶液との合計のフィード流速は2,000kg/hr、温度は60℃、背圧(ゲージ圧)は0.05MPaとした。
【0088】
次いで、上記にて得られた乳化液を、−0.01〜−0.09MPa(ゲージ圧)の減圧下で80℃に加温し、n−ヘキサンを留去した。また、この際に、消泡剤として、商品名「SM5515」(東レ・ダウコーニング社製)を用い、乳化液中の合成ポリイソプレンに対して300重量ppmの量になるよう、噴霧しながら連続添加を行った。なお、n−ヘキサンを留去する際には、乳化液がタンクの容積の70体積%以下になるように調整し、かつ、攪拌翼として3段の傾斜パドル翼を用い、60rpmでゆっくり攪拌を実施した。
【0089】
そして、n−ヘキサンの留去が完了した後、n−ヘキサン留去後の乳化液を、連続遠心分離機(商品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、4,000〜5,000Gで遠心分離を行い、軽液としての固形分濃度56重量%の合成ポリイソプレンのラテックス(B−1)を得た。なお、遠心分離の際の条件は、遠心分離前の乳化液の固形分濃度10重量%、連続遠心分離時の流速は1300kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は1.5MPaとした。
【0090】
得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−1)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.12、pH=10、B形粘度計で測定した粘度が210mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.0部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(B−1)中に、凝集物は観察されなかった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−1)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(ラテックス組成物の調製)
上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−1)を攪拌しながら、ラテックス中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で1部になるように濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダを添加した。そして、得られた混合物を攪拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名:Wingstay L、グッドイヤー社製)3部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、およびメルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩0.7部を、水分散液の状態で添加した後、水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10.5に調整することで、ラテックス組成物を得た。
次いで、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
【0092】
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)からなる凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。次いで、凝固剤で被覆された手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥した。
次いで、凝固剤で被覆された手型をオーブンから取り出し、上記にて得られた熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。その後、室温で10分間風乾してから、この手型を60℃の温水中に5分間浸漬し、次いで、フィルム状の合成ポリイソプレンで被覆された手型を130℃のオーブン内に置いて、30分間加熱することで、架橋を行った。次いで、架橋されたフィルムで被覆された手型を室温まで冷却した後、タルクを散布してから手型から剥離することで、ディップ成形体(手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(手袋)について、上記方法に従って、引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
実施例2
重合工程における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0955部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0716部に、それぞれ変更するとともに、老化防止剤添加工程における、老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加量を0.28部に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの添加量を0.04部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−2)を得た。
得られた重合体溶液(A−2)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が590,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であった。
【0094】
次いで、得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−2)を使用するとともに、乳化工程における、乳化温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンのラテックス(B−2)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−2)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が1.96、pH=10.2、B形粘度計で測定した粘度が220mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり1.9部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(B−2)中に、凝集物は観察されなかった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−2)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
実施例3
重合工程における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0687部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0515部に、それぞれ変更するとともに、老化防止剤添加工程における、老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加量を0.17部に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの添加量を0.02部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−3)を得た。
得られた重合体溶液(A−3)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が820,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.8であった。
【0097】
次いで、得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−3)を使用するとともに、乳化工程における、乳化時の圧力(ゲージ圧)を0.15MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして、合成ポリイソプレンのラテックス(B−3)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−3)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.03、pH=9.9、B形粘度計で測定した粘度が260mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.1部であった。また、合成ポリイソプレンのラテックス(B−3)中に、凝集物は観察されなかった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−3)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
実施例4
乾燥され、窒素置換された撹拌付きオートクレープに、n−ヘキサン1150部とスチレン15部およびN、N、N’、N’−テトラメチルエタン−1、2−ジアミン0.0017部を仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液0.2036部を加えて20分間反応させた。つぎに、イソプレン85部をオートクレーブ内に1時間連続添加した。連続添加後、15分間反応させた。つぎに、ジメチルジクロロシラン0.0308部を加えて30分間反応させた。重合反応率は99%であった。得られた反応液に、重合停止剤としてメタノール0.0153部を添加し、反応を停止させることで、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(A−4)を得た。さらに、得られた重合体溶液(A−1)に、重合体溶液中に含まれるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100部に対し、老化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(中央化成品社製)0.07部および2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX565」)0.01部を加え、撹拌下、室温で溶解することで、老化防止剤を添加してなる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(A−4)を得た。
得られた重合体溶液(A−4)中に含まれる、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が250,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.1であった。
【0100】
次いで、得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の重合体溶液(A−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(B−4)を得た。得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(B−4)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.21、pH=9.9、B形粘度計で測定した粘度が140mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体100部あたり1.9部であった。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(B−4)中に、凝集物は観察されなかった。そして、得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(B−4)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
また、上記にて得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体のラテックス(B−4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
比較例1
実施例3で得られた、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−3)について、スチームにより、凝固を行い、得られた凝固物について、150〜200℃の条件で乾燥を行うことにより、固形状の合成ポリイソプレン(C−5)を得た。
そして、得られた合成ポリイソプレン(C−5)をn−ヘキサンと混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解させることで、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−5)を調製した。なお、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−5)中における老化防止剤の含有量(すなわち、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの合計の含有量)を、高速液体クロマトグラフ(アジレントテクノロジー社製:HP1100)を用いて測定したところ、合成ポリイソプレン100部に対して、0.02部であった。また、n−ヘキサン溶液(D−5)に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が700,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.2であった。
【0103】
次いで、得られた合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化操作を行うことにより、合成ポリイソプレンのラテックス(B−5)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−5)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.35、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が280mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.2部であった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−5)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
比較例2
実施例1で得られた、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−1)について、スチームにより、凝固を行い、得られた凝固物について、150〜200℃の条件で乾燥を行うことにより、固形状の合成ポリイソプレン(C−6)を得た。
そして、得られた合成ポリイソプレン(C−6)をn−ヘキサンと混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解させることで、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−6)を調製した。なお、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−6)中における老化防止剤の含有量(すなわち、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの合計の含有量)を、高速液体クロマトフラフ(アジレントテクノロジー社製:HP1100)を用いて測定したところ、合成ポリイソプレン100部に対して、0.02部であった。また、n−ヘキサン溶液(D−6)に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が430,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.5であった。
【0106】
次いで、得られた合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−6)を使用するとともに、得られた乳化物に対して、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.32部、および、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール0.04部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして、乳化操作を行うことにより、合成ポリイソプレンのラテックス(B−6)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−6)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.40、pH=10.2、B形粘度計で測定した粘度が200mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.0部であった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−6)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
比較例3
老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加量を5.10部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの添加量を0.70部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−7)を得て、得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−7)について、スチームにより、凝固を行い、得られた凝固物について、150〜200℃の条件で乾燥を行うことにより、固形状の合成ポリイソプレン(C−7)を得た。
そして、得られた合成ポリイソプレン(C−7)をn−ヘキサンと混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解させることで、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−7)を調製した。なお、合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−7)中における老化防止剤の含有量(すなわち、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの合計の含有量)を、高速液体クロマトフラフ(アジレントテクノロジー社製:HP1100)を用いて測定したところ、合成ポリイソプレン100部に対して、0.29部であった。また、n−ヘキサン溶液(D−7)に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が450,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3.6であった。
【0109】
次いで、得られた合成ポリイソプレンのn−ヘキサン溶液(D−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化操作を行うことにより、合成ポリイソプレンのラテックス(B−7)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−7)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.43、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が210mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.0部であった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−7)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
比較例4
重合工程における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0705部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0528部に、それぞれ変更するとともに、老化防止剤添加工程における、老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加量を0.004部に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの添加量を0.001部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−8)を得た。
得られた重合体溶液(A−8)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が800,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0112】
次いで、得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化操作を行うことにより、合成ポリイソプレンのラテックス(B−8)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−8)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.01、pH=10.1、B形粘度計で測定した粘度が310mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり1.9部であった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−8)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−8)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
比較例5
重合工程における、触媒溶液としての、15重量%のn−ブチルリチウムを含有するヘキサン溶液の量を0.0895部に、重合停止剤としてのメタノールの量を0.0671部に、それぞれ変更するとともに、老化防止剤添加工程における、老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの添加量を0.35部に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールの添加量を0.05部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、老化防止剤を添加してなる、合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−9)を得た。
得られた重合体溶液(A−9)中に含まれる、合成ポリイソプレンは、重量平均分子量(Mw)が630,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が2.9であった。
【0115】
次いで、得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液(A−9)を使用した以外は、実施例1と同様にして、乳化操作を行うことにより、合成ポリイソプレンのラテックス(B−9)を得た。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−9)は、固形分濃度が56重量%、25%頻度体積粒子径D25と、75%頻度体積粒子径D75との比D75/D25が2.38、pH=10、B形粘度計で測定した粘度が280mPa・s、アニオン性界面活性剤の合計含有量が合成ポリイソプレン100部あたり2.1部であった。そして、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−9)のうち一部を用いて、上記方法にしたがって、乳化安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
また、上記にて得られた合成ポリイソプレンのラテックス(B−9)を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
*1)表1中、「直接乳化」は、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、凝固させることなく、直接、乳化を行うことにより、製造を行ったことを示している。また、「溶解後乳化」は、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、一度、凝固を行い、得られた凝固物を再度、有機溶媒に溶解させた後に、乳化を行うことにより、製造を行ったことを示している。
そのため、「溶解後乳化」により製造を行った比較例1〜3においては、「凝固および再溶解後の重合体溶液」の測定結果を示しているが、「直接乳化」により製造を行った実施例1〜4、比較例4,5においては、「凝固および再溶解後の重合体溶液」は存在しないため、測定結果を示していない。
*2)比較例2については、重合体ラテックスを得る際に、得られた乳化物に対して、老化防止剤としての、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.32部、および、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール0.04部(合計0.36部)をさらに追加添加している。
【0118】
表1より、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、凝固させることなく、直接、乳化を行うことにより、製造を行うとともに、老化防止剤添加工程における老化防止剤の添加量を本発明所定の範囲とし、かつ、乳化により得られる重合体ラテックスのD75/D25を1.90以上、2.30以下とした実施例1〜4においては、得られる重合体ラテックスは乳化安定性に優れ、しかも、引張強度の高いディップ成形体を与えるものであった(実施例1〜4)。
なお、実施例1〜4においては、重合体溶液に添加した老化防止剤の量と、重合体溶液の一部を用いて、高速液体クロマトフラフ(アジレントテクノロジー社製:HP1100)にて、測定した重合体溶液中の老化防止剤の量とは、ほぼ同一であった(比較例1〜5においても同様。)。
【0119】
一方、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、一度、凝固を行い、得られた凝固物を再度、有機溶媒に溶解させた後に、乳化を行った場合には、得られる重合体ラテックスは乳化安定性が十分でなく、また、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものであった(比較例1〜3)。
なお、比較例1〜3においては、一度、凝固を行っているため、これら比較例1〜3においては、「凝固および再溶解後の重合体溶液」中における、老化防止剤量は、「重合後の重合体溶液」中に比べて減少している。これに対し、比較例2では、重合体ラテックスを得る際に、老化防止剤を追加添加し、また、比較例3では、「凝固および再溶解後の重合体溶液」に添加する老化防止剤の量を増加させたが、いずれも良好な結果を得ることができなかった。
【0120】
また、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、凝固させることなく、直接、乳化を行った場合でも、老化防止剤の含有量が少なすぎると、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものとなった(比較例4)。
さらに、重合工程および老化防止剤添加工程を経て得られた重合体溶液について、凝固させることなく、直接、乳化を行った場合でも、乳化により得られる重合体ラテックスのD75/D25が本発明所定の範囲から外れると、得られる重合体ラテックスは乳化安定性が十分でなく、また、得られるディップ成形体は引張強度に劣るものとなった(比較例5)。