(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記はんだ粉末が、Sn−Bi系はんだ、Sn−Zn−Bi系はんだ、及びSn−Zn系はんだからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外光源封止用の封止用組成物。
前記溶媒が、脂肪族アミン系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族アミノアルコール系溶媒、テルピンアセテート系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、及びカルビトール系溶媒からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外光源封止用の封止用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[封止用組成物]
本実施形態の封止用組成物は、はんだ粉末と、銀核粒子と前記銀核粒子の表面に配置された被覆剤とを含む被覆銀粒子と、溶媒と、を含有し、前記被覆銀粒子の焼結温度(T2)と前記溶媒の沸点(T3)が、下記式(1)を満たす。
T2≦T3 ・・・式(1)
【0016】
上記実施形態の封止用組成物は、半硬化状態で取り扱うことができ、接合強度及び封止性に優れた焼結体を得ることができる。
本実施形態の封止用組成物は、少なくとも、はんだ粉末と、被覆銀粒子と、被覆銀粒子の焼結温度以上の沸点を有する溶媒と、を含有し、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。まずこのような本実施形態の封止用組成物に含まれる各成分について説明し、次いで、当該封止用組成物の使用方法と共に、上記効果を奏する理由について説明する。
【0017】
<はんだ粉末>
本実施形態で用いられるはんだ粉末は、比較的低い温度で溶融可能な合金の粉末である。本実施形態の封止用組成物は、比較的低融点のはんだ粉末を含むため、低温での封止接合性に優れている。
当該はんだ粉末として用いられるはんだとしては、例えば、スズ(Sn)を含み、更に、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、インジウム(In)、銀(Ag)等の元素を含む合金が挙げられ、不可避的に混入する他の元素を含有してもよい。はんだの具体例としては、Sn−Pb系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Sn−Bi系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系、Sn−Pb−Ag系、Pb−Ag系はんだ等が挙げられる。本実施形態においてはんだ粉末は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
はんだ粉末は所望の金属を公知の方法により混合して製造してもよく、また、はんだ粉末の市販品を用いてもよい。
【0018】
本実施形態においては、環境に対する負荷軽減の観点から鉛フリーはんだ(Sn−Sb系、Sn−Bi系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Cu系、Sn−In系、Sn−Ag系はんだ等)を用いることが好ましく、中でも、Sn−Bi系はんだ、Sn−Zn−Bi系はんだ、又はSn−Zn系はんだを用いることがより好ましい。Znを含むはんだを用いることにより、高強度で封止性に優れた焼結体が得られる。また、ガラス等への濡れ性に優れたBiを含むはんだを用いることにより、密着性に優れ、接合強度の高い焼結体を得ることができる。さらに、後述する焼結銀との濡れ性に優れるSnを含むはんだを用いることにより、焼結銀の孔を埋め、より強固な焼結体を形成することができる。
【0019】
はんだ粉末の平均一次粒径は、特に限定されず、例えば、0.5〜500μmのものの中から適宜選択して用いることができる。なお、本発明においてはんだ粉末の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された任意の20個のはんだ粉末の一次粒子径の算術平均値である。粒子形状は、球形、略球形のほか、板状や棒状の物等であってもよい。
【0020】
はんだ粉末の融点(T1)は、金属の含有比率等によって変動があるが、概ね135〜250℃の範囲内であり、135〜200℃が好ましく、135〜155℃がより好ましい。また、はんだ粉末の融点(T1)は、後述する被覆銀粒子の焼結温度(T2)以下であることが好ましい。
前記はんだ粉末としてSn−Bi系はんだ、Sn−Zn−Bi系はんだ、又はSn−Zn系はんだを用いた場合は、はんだ粉末の融点(T1)は、例えば135〜200℃の範囲内である。この中でも、にSn−Bi系はんだの融点は、SnとBiの含有比率等を調整することにより、135〜155℃とすることができる。Sn−Bi系はんだを用いる場合、SnとBiの比率は特に限定されないが、接合強度及び封止性の点から、質量比で3:7〜8:2であることが好ましい。
なお、はんだ粉末が溶融する際、相変化に伴い吸熱が生じる。したがって、はんだ粉末の融点(T1)は、例えばTG−DTA測定(熱重量測定・示差熱分析)における吸熱ピークの位置(
図3の例では143℃)で求めることができる。
【0021】
<被覆銀粒子>
本実施形態で用いられる被覆銀粒子は、銀核粒子と、前記銀核粒子の表面に配置された被覆剤と、を含む。このため、銀核粒子の表面は、被覆剤によって保護されて酸化が抑制される。
本実施形態において被覆銀粒子は、当該被覆銀粒子の焼結温度(T2)と後述する溶媒の沸点(T3)が、下記式(1)を満たすものの中から選択して用いることができる。
T2≦T3 ・・・式(1)
このような被覆銀粒子を選択することにより、封止用組成物は、溶媒が残留した状態で被覆銀粒子の焼結が進行する。そのため、被覆銀粒子は焼結時に流動性を有し、焼結体は孔が生じにくくなる。その結果、密着性や接合強度に優れた焼結体を得ることができる。前記被覆銀粒子の焼結温度(T2)は、例えば、100〜300℃の範囲で調整することができ、100〜200℃が好ましく、100〜135℃とすることもできる。
なお、被覆銀粒子が焼結する際、表面エネルギーの合計が低下することに伴い発熱が生じる。したがって、被覆銀粒子の焼結温度(T2)は、例えばTG−DTA測定における発熱ピークの位置(
図3の例では160〜185℃)で求めることができる。
【0022】
また、当該被覆銀粒子の焼結温度(T2)は、前記はんだ粉末の融点(T1)以上であることが好ましい。T1≦T2であることによって、はんだ粉末が溶融した後で被覆銀粒子を焼結させるような温度制御が可能になる。この場合、前記被覆銀粒子の焼結温度(T2)は、例えば、155〜300℃の範囲で調整することができ、155〜200℃が好ましい。
【0023】
(銀核粒子)
銀核粒子の平均一次粒径は、特に限定されず、焼結温度等の観点から適宜選択することができる。具体的には、銀核粒子の平均一次粒径を500nm以下の範囲で適宜選択することができ、低温焼結性の点から、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更により好ましい。また、銀核粒子の平均一次粒径は、通常、1nm以上であり、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。当該銀核粒子の平均一次粒径は、SEMにより観察された任意の20個の銀核粒子の一次粒子径の算術平均値である。
銀核粒子の形状は、特に限定されず、真球状を含む略球状、板状、棒状等が挙げられ、なお、後述する被覆銀粒子の製造方法によれば、おおよそ球状に近似可能な略球状の銀核粒子が得られる。なお、被覆銀粒子の粒径は、SEM観察により決定できる。
銀核粒子は、実質的に銀からなる粒子であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化銀、水酸化銀、及びその他の不純物を含んでいてもよい。酸化銀及び水酸化銀の含有割合は、接合強度の点から、銀核粒子に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0024】
(被覆剤)
銀核粒子表面に配置される被覆剤には、一般的な金属ナノ粒子に付着可能な公知の有機または無機材料が用いられる。当該有機材料としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール、脂肪族アミン等の有機分子や、有機高分子等が用いられ、当該無機材料としては、シリカやグラファイト等が用いられる。銀核粒子表面に被覆剤が配置されることによって、銀核粒子の酸化や銀核粒子同士の結合が抑制され、銀核粒子を安定な状態で取り扱うことができる。
【0025】
被覆剤は、温度応答性をもって銀核粒子表面から分離するものが好ましい。被覆剤が昇温によって銀核粒子から脱離することにより、接合強度の高い焼結体を得ることができる。被覆剤が銀核粒子から分離する温度(分離温度)は、好ましくは被覆銀粒子の焼結温度以上の温度、より好ましくは被覆銀粒子の焼結温度より10℃以上高い温度、更に好ましくは被覆銀粒子の焼結温度より25℃以上高い温度である。一方、被覆剤の分離温度は、被覆銀粒子の焼結温度より50℃高い温度以下((被覆銀粒子の焼結温度+50℃)以下)であることが好ましい。ここで、被覆剤が被覆銀粒子から分離する温度(分離温度)とは、被覆銀粒子同士がネッキングし始める温度とすることができる。ここで、被覆銀粒子のネッキングとは、被覆剤が銀核粒子表面から分離することにより、銀核粒子同士が結合することをいう。ネッキングが起こると、銀核粒子表面からの被覆剤の消失に伴う重量変化が起こることから、この重量変化をTG−DTA測定により求め、TG−DTA測定により得られたTG曲線において重量変化する温度(
図3の例では175℃付近)を、分離温度とすることができる。なお、TG−DTA測定の測定条件としては、例えば、試料10mgを50℃から毎分5℃の昇温速度にて加熱して測定する条件が好適である。
【0026】
昇温によって銀核粒子表面から比較的容易に分離する被覆剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族アルデヒド、脂肪族アルコール、脂肪族アミン等の有機分子が挙げられる。中でも、被覆剤として脂肪族カルボン酸を用いることが好ましい。脂肪族カルボン酸は、カルボキシ基側が銀に吸着することによって銀核粒子表面を被覆するため、銀核粒子表面に単分子膜を形成しやすい。したがって、銀核粒子の外側に何層もの分子膜を形成しづらく、昇温による脱離が比較的容易である。また、脂肪族カルボン酸は銀核粒子と物理吸着等で弱く結合するため、比較的低温で拡散・脱離すると考えられる。したがって、各銀核粒子の表面は加熱によって容易に露出され、銀核粒子の表面同士の接触が可能になり、被覆銀粒子は低温で焼結することができる。
【0027】
被覆剤として好適に用いられる脂肪族カルボン酸は、脂肪族化合物に1個又は2個以上のカルボキシ基が置換された構造を有する化合物であり、本実施形態においては、通常、銀核粒子表面に、脂肪族カルボン酸のカルボキシ基が配置される。更に、脂肪族化合物に1個のカルボキシ基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と、1個のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
脂肪族カルボン酸を構成する脂肪族炭化水素基は、銀核粒子表面に所定の密度で単分子膜を形成しやすい点から、直鎖脂肪族炭化水素基であることが好ましい。不飽和結合は、二重結合であってもよく三重結合であってもよいが、二重結合であることが好ましい。また本実施においては、脂肪族炭化水素基が、不飽和結合を有しない飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0028】
当該脂肪族カルボン酸において、脂肪族基の炭素原子数は、被覆銀粒子の分散性や、耐酸化性の点から、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが更により好ましい。一方、脂肪族基の炭素原子数が17以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、11以下であることが更により好ましい。炭素原子数が上記上限値以下であることにより、被覆銀粒子の焼結時に除去されやすく、接合強度に優れた焼結体を得ることができる。なお、本発明において、脂肪族基の炭素原子数は、カルボキシ基を構成する炭素原子は含まないものとする。
【0029】
好ましい脂肪族カルボン酸の具体例としては、オクタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
銀核粒子の表面には、脂肪族カルボン酸が、前記銀核粒子の表面に1nm
2当り2.5〜5.2分子の密度で配置されていることが好ましい。すなわち、銀核粒子の表面は、脂肪族カルボン酸を含む被覆層で被覆され、その被覆密度が2.5〜5.2分子/nm
2である。分散性及び耐酸化性の点から、当該被覆密度が3.0〜5.2分子/nm
2であることが好ましく、3.5〜5.2分子/nm
2であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態において、被覆銀粒子は、中でも、銀核粒子と、前記銀核粒子の表面に1nm
2当り2.5〜5.2分子の密度で配置された複数の脂肪族カルボン酸分子と、を含む被覆銀粒子が好ましい。当該被覆銀粒子において脂肪族カルボン酸分子は、カルボキシ基側が銀核粒子表面に吸着して単分子膜を形成している。このため、銀核粒子の表面は、脂肪族カルボン酸被覆剤によって保護されて酸化が抑制され、高い耐酸化性を有するものと推定される。例えば、前記被覆銀粒子は、製造後2ヶ月経過後における酸化銀及び水酸化銀の含有割合を、被覆銀粒子中の銀核粒子100質量%に対して5質量%以下に抑制することも可能である。また、脂肪族カルボン酸は銀核粒子と物理吸着等で弱く結合しているため、比較的低温で拡散・脱離すると考えられる。したがって、各銀核粒子の表面は加熱によって容易に露出され、銀核粒子の表面同士の接触が可能になるため、当該被覆銀粒子は低温での焼結性に優れている。
【0032】
銀核粒子表面における脂肪族カルボン等の被覆密度は、上記特許文献3(特開2017−179403号公報)の段落0014〜段落0025の記載に基づいて算出することができる。
具体的には、被覆銀粒子について、特開2012−88242号公報に記載される方法に従って、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて表面に付着している有機成分を抽出し、成分分析を行う。また、TG−DTA測定を行い、被覆銀粒子に含まれる有機成分量を測定する。次いでLCの分析結果と合わせて被覆銀粒子に含まれる脂肪族カルボン酸の量(質量)を求め、脂肪族カルボン酸等の分子数を算出する。
また、SEM画像観察により銀核粒子の平均一次粒子径を測定し、銀核粒子の表面積を算出する。これらの結果から下記の式により被覆密度が求められる。
[被覆密度]=[脂肪族カルボン酸等の分子数]/[銀核粒子の表面積]
【0033】
被覆銀粒子の粒子径は、用途等に応じて適宜選択することができる。被覆銀粒子の平均一次粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、5〜400nmであることがより好ましく、20〜300nmであることが更により好ましい。
被覆銀粒子の平均一次粒子径は、SEM観察による任意の20個の被覆銀粒子の一次粒子径の算術平均値D
SEMとして算出される。
また、被覆銀粒子の粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径D
SEM)の値は例えば、0.01〜0.5であり、0.05〜0.3が好ましい。特に、後述する被覆銀粒子の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態とすることができる。被覆銀粒子の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れた分散体を得ることが可能となる。
【0034】
本実施形態において、前記はんだ粉末と、前記被覆銀粒子との含有比率は、質量比で6:4〜8:2である。このような比率とすることにより、接合強度及び封止性に優れた硬化物を得ることができる。
【0035】
本実施形態において、被覆銀粒子は、市販品を用いてもよく、また製造してもよい。被覆銀粒子の製造方法の一例について説明する。
上記被覆銀粒子は、例えば、前記特許文献3の段落0052から段落0101、及び、段落0110から段落0114等を参考にして製造することができる。当該製造方法によれば、銀核粒子と、前記銀核粒子の表面に1nm
2当り2.5〜5.2分子の密度で配置された脂肪族カルボン酸分子と、を含む略球状の被覆銀粒子が得られる。
具体的には、まず、銀核粒子となる銀を含む銀カルボン酸塩と、当該銀核粒子の表面に被覆する脂肪族カルボン酸と、溶媒とを含有する混合液を準備する。当該混合液に錯化剤を添加して加熱することにより、被覆銀粒子を得ることができる。
前記銀カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸銀、シュウ酸銀、炭酸銀等が挙げられる。
前記錯化剤としては、例えば、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、DL−1−アミノ−2−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
また上記溶媒としては、エチルシクロへキサン、C9系シクロへキサン[丸善石油製、商品名:スワクリーン#150]、n−オクタン(沸点:125℃、SP値:7.54)等が挙げられる。また、これらの溶媒と、メチルプロピレンジグリコール等のグリコールエーテル系溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<溶媒>
本実施形態の封止用組成物において溶媒は、前記はんだ粉末及び前記被覆銀粒子を分散可能な溶媒の中から適宜選択して用いることができる。溶媒としては、前記はんだ粉末及び前記被覆銀粒子の化学的安定性及び分散性の観点から、中でも、脂肪族アミン系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族アミノアルコール系溶媒、テルピンアセテート系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、及びカルビトール系溶媒からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。本実施形態において溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
脂肪族アミン系溶媒としては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
脂肪族アミノアルコール系溶媒としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、オクタノールアミン、デカノールアミン、ドデカノールアミン、オレイルアルコールアミン等が挙げられる。
脂肪族アルコール系溶媒としては、例えば、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
テルピンアセテート系溶媒としては、例えば、1,8−テルピン−1−アセテート、1,8−テルピン−8−アセテート、1,8−テルピン−1,8−ジアセテート等が挙げられる。
脂肪族アルカン系溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、ドデカン、流動パラフィン等が挙げられる。
また、カルビトール系溶媒としては、例えば、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、デシルカルビトール等が挙げられる。
【0038】
また、中でも溶媒としてテルピンアセテート系溶媒を含むことが好ましい。テルピンアセテート系溶媒を用いることにより、封止用組成物をスクリーン印刷に好適な組成物とすることができる。テルピンアセテート系溶媒は、例えば、日本テルペン化学(株)のテルソルブTHA−90、テルソルブTHA−70等を用いることができる。
【0039】
本実施形態においては、溶媒の沸点(T3)が、前記被覆銀粒子の焼結温度(T2)以上であることを特徴とする。このような溶媒を用いることにより、封止用組成物は、溶媒が残留した状態で被覆銀粒子の焼結が進行する。そのため、被覆銀粒子は焼結時に流動性を有し、焼結体は孔が生じにくくなる。その結果、密着性や接合強度に優れた焼結体を得ることができる。更に、溶媒の沸点(T3)が、前記はんだ粉末の融点(T1)よりも高いことが好ましい。被覆銀粒子の焼結温度(T2)及びはんだ粉末の融点(T1)よりも高い沸点(T3)の溶媒を選択して用いることにより、被覆銀粒子とはんだ粉末の反応を液相で完結させることができるため、優れた密着性及び封止性を有する焼結体を得ることができる。また、高沸点の溶媒を用いることにより、印刷時や印刷後の乾燥が抑制されるため、可使時間が長くなる等のメリットもある。溶媒の沸点(T3)は、はんだ粉末の融点より高いことが好ましく、はんだ粉末の融点より10℃以上高いことがより好ましく、また、はんだ粉末の融点より100℃高い温度以下((はんだ粉末の融点+100℃)以下)であることが好ましく、はんだ粉末の融点より90℃高い温度以下((はんだ粉末の融点+90℃)以下)であることがより好ましく、はんだ粉末の融点より85℃高い温度以下((はんだ粉末の融点+85℃)以下)であることが更により好ましい。なお、溶媒が混合溶媒の場合、溶媒の沸点(T3)は、最も沸点の高い溶媒の沸点を(T3)とする。少なくとも一部の溶媒が残存すれば、上記密着性や封止性に寄与するからである。
【0040】
本実施形態において、溶媒がテルピンアセテート系溶媒を含む場合、テルピンアセテート系溶媒の含有比率は特に限定されないが、溶媒全量中、テルピンアセテート系溶媒が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、封止用組成物全量に対し、溶媒の含有割合は、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0041】
[封止用組成物の使用方法]
本実施形態の封止用組成物の使用方法の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の封止用組成物の使用方法の一例を示す模式的な工程図である。また
図2は、封止用組成物の半硬化物に光源基板を接着させる工程の一例を示す模式図である。なお、説明のため、図面におけるはんだ粉末及び被覆銀粒子の形状、粒子径、及び分布等は、模式的なものであり、縮尺等は実際のものと一致していないことがある。
図1中の(A)は、ガラス基板200上に塗布された封止用組成物100aの一例を示す模式図である。
図1中の(B)は、前記(A)を(T1)温度以上(T2)温度未満で加熱した後の、半硬化状態(Bステージ化後)の封止用組成物100bの一例を示す模式図である。また、
図1中の(C)は、Bステージ化後の封止用組成物上に、光学素子を備えた基板(以下、光源基板300ともいう)の接合部を配置し、(T3)温度以上で加熱した後の、接合部分の一例を示す模式図である。
【0042】
図1(A)の例で、封止用組成物100aは、ガラス基板200上に塗布されて、はんだ粉末1aと、被覆銀粒子2aと、溶媒(不図示)とを含む塗膜となっている。被覆銀粒子2aは、
図1(A)の例に示されているようにはんだ粉末1aの表面に担持されていてもよく、また、溶媒中に分散されていてもよい。封止用組成物の塗布方法は、公知の塗布方法の中から適宜選択すればよい。例えば、スクリーン印刷、ディスペンス印刷、スタンピング印刷等の方法によって塗布することができる。ガラス基板が板状の場合は、精度よく大量生産することができる点からスクリーン印刷が好ましい。
封止用組成物の塗膜の厚みは特に限定されないが、例えば30〜100μmとすることができる。また塗膜の線幅は、例えば100〜500μmとすることができる。塗膜の厚み及び線幅を上記の範囲とすることにより、封止性及び接合強度に優れた焼結体を得ることができる。なお、塗膜は、光学素子を封止することから、
図2に示されるように、所定の枠形状に形成される。
【0043】
本実施においてガラス基板200は、光学素子から発光する光を透過する窓材として機能する部材であり、本実施においては、波長350nm以下の光、特に波長300nm以下の光を安定的に透過できる点から、合成石英ガラスであることが好ましい。当該石英ガラスの形状は、特に限定されず、板状であってもよく、公知のレンズ形状を有していてもよい。また、石英ガラスの厚みは特に限定されないが、例えば0.1〜5mmとすることができる。
【0044】
次いで、
図1(A)の塗膜を、前記はんだ粉末の融点(T1)以上、前記被覆銀粒子の焼結温度(T2)未満で加熱する。このとき、
図1(B)の例に示される通り、はんだ粉末1aが溶融し、溶融体1bが形成される。このとき、はんだの濡れ性によりガラス基板200との気密性を向上させることができる。特に、はんだ粉末がBiを含んでいる場合、Biがガラスに対して優れた濡れ性を有するため、封止用組成物とガラス基板200との密着性が向上する。したがって、厚膜で密着性に優れたBステージの封止剤が形成される。Bステージ化のための加熱時間は特に限定されないが、例えば、10分以上、好ましくは30分以上である。この温度域では被覆銀粒子は焼結せず、溶融体1bの内部に分散される。
【0045】
Bステージの封止剤が形成されたガラス基材は、引き続き光学素子を有する基板との貼り合わせを行ってもよく、一旦冷却して保存することもできる。
【0046】
次に、
図2の例に示されるように、Bステージ化後の封止用組成物100b上に、封止する光学素子を備えた光源基板300を配置する。当該光源基板300の接合面には、金メッキ等の金属メッキ301が施されていることが好ましい。封止用組成物がメッキ部分と接合することにより、密着性に優れ、接合強度と封止性に優れた硬化物を得ることができる。次いで押圧しながら加熱することにより、はんだ粉末が融解し光源基板の表面に濡れ広がることにより、光源基板と密着する。また、被覆銀粒子の焼結温度(T2)で加熱することにより、封止用組成物100bに含まれる被覆銀粒子が焼結し、焼結銀を形成する。このとき、被覆銀粒子は、溶融するはんだの内部で焼結するため、溶融したはんだが焼結銀と結合し、硬化物100cが形成される。硬化物100cは、焼結銀の孔101cをはんだが埋めるような構造をしており、接合強度に優れる。このようにして、ガラス基板200と光源基板300とを、十分な接合強度及び封止性で接合することができる。なお、光源基板接合時における加熱温度は、例えば、170〜350℃とすることができ、250〜350℃とすることが好ましい。250℃以上で加熱することにより、溶融したスズと銀の焼結体の表面との間でSnAg合金が形成され、接合強度がより高まると推定される。また、当該温度で加熱することによって、例えば、10〜60秒という短時間の加熱でも十分な接合強度及び封止性が得られる。ただし、加熱時間は特に限定されるものではない。また、押圧条件は特に限定されないが、例えば、0.01〜1kgf/mm
2、好ましくは0.05〜1kgf/mm
2とすることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(製造例1:被覆銀粒子Ag1の製造)
特許文献3を参考に、銀核粒子の表面に2.5〜5.2nm
2の被覆密度でウンデカン酸が配置された被覆銀粒子Ag1を製造した。
【0049】
(実施例1:封止用組成物の調製)
前記被覆銀粒子Ag1を24質量部、SnBi合金粒子(三井金属鉱業製、ST−3;粒子径約3μm)64質量部、溶媒としてテルソルブTHA−70(日本テルペン化学株式会社製;沸点(T3)は223℃)8質量部、及び、酪酸3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチル(東京化成工業株式会社製)4質量部を混合して、実施例1の封止用組成物を得た。
【0050】
(比較例1:比較封止用組成物の調製)
実施例1において、被覆銀粒子Ag1の代わりに、平均一次粒径が1μmの銀粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の比較封止用組成物を得た。なお、当該銀粒子の焼結温度は約240〜280℃であった。
【0051】
<TG−DTA測定>
実施例1の封止用組成物について、TG8120(リガク社製)を用いて、窒素雰囲気下(窒素流速:250ml/min)において、10℃/minの昇温速度で、TG−DTA測定を行った。当該TG−DTA測定の結果を
図3に示す。
図3の結果から、SnBi合金粒子の融点(T1)は143℃であることが分かった。また、被覆銀粒子Ag1の焼結温度(T2)は160〜185℃であることが分かった。
【0052】
<接合強度評価>
実施例1の封止用組成物を、開口部が4mm四方×厚み0.05mmのメタルマスクを用いて5mm四方×厚み0.5mmの合成石英ガラス基板上に塗工し、次いで、大気条件下、150℃で60分間加熱して、半硬化物を得た。得られた半硬化物の上に、接合面に金メッキを備えたセラミックス基板を配置した。半硬化物を合成石英ガラス基板とセラミックス基板とで挟んだ状態で、大気雰囲気下、半硬化物の厚み方向に0.09kgf/mm
2の圧力をかけながら300℃で10秒間加熱焼結し、実施例1の接合体を得た。
【0053】
また、比較例1の比較封止用組成物を、開口部が4mm四方×厚み0.05mmのメタルマスクを用いて5mm四方×厚み0.5mmの合成石英ガラス基板上に塗工し、次いで、大気条件下、150℃で60分間加熱して、半硬化物を得た。得られた半硬化物の上に、接合面に金メッキを備えたセラミックス基板を配置した。半硬化物を合成石英ガラス基板とセラミックス基板とで挟んだ状態で、大気雰囲気下、半硬化物の厚み方向に0.09kgf/mm
2の圧力をかけながら320℃で60秒間加熱焼結し、比較例1の接合体を得た。
【0054】
実施例1及び比較例1の接合体について、それぞれ大場計器製作所社製の丸型バネ式テンションゲージを用いてダイシェアテストを行い、接合強度を測定した。
【0055】
その結果、実施例1の接合体の接合強度は8.0MPa、比較例1の接合体の接合強度は1.5MPaであった。
【0056】
<封止性評価>
スライス、面取り、ラッピング、粗研磨加工された合成石英ガラスウェーハ基板(4インチφ、厚さ0.5mm)を、3.5mm角にダイシングカットした。実施例1で得られた封止用組成物をスクリーン印刷にて合成石英ガラスウェーハ基板の一方の面上に塗布した。塗布は窓枠上に線幅250μm、膜厚35μmになるように行い、実施例1で得られた封止用組成物を半硬化の状態にして合成石英ガラスリッドを作製した。波長285nmの光を出すことのできるLED発光素子が設置され、接合部が金メッキされた窒化アルミナ系セラミックスの収容体に対し、上記の合成石英ガラスリッドを300℃で0.03kgf/mm
2の荷重をかけながら30秒間押し付けることにより、収容体と合成石英ガラスリッドの接合を行い、光学用パッケージを作製した。
次に、作製した光学素子用パッケージをミクロチェック浸透液JIP143(イチネンケミカルズ社製)内で一晩放置した。その後、当該光学素子用パッケージをアセトンで洗浄し、顕微鏡で観測したところ、パッケージ内にミクロチェック浸透液の染込みは確認できず、十分な封止性を発現できていることが分かった。
【0057】
以上の結果から、はんだ粉末と、被覆銀粒子と、被覆銀粒子の焼結温度以上の沸点を有する溶媒と、を含有する本実施の封止用組成物によれば、接合強度と封止性に優れた焼結体が得られることが示された。