(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第2ローラーの表面の速度は、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの搬送速度と異なる請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法。
上記第2ローラーの上記溝は、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの幅方向において、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの端部を越えて延びている請求項5に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法。
上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムに対して摺動する上記第2ローラーの上記表面は、樹脂によって形成されている請求項2に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法。
上記第2ローラーによって上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムから除去された上記洗浄液を上記第1洗浄槽に戻す請求項1から8のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム製造方法。
上記第2ローラーの表面の速度は、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの搬送速度と異なる請求項11に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。
上記第2ローラーの上記溝は、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの幅方向において、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの端部を越えて延びている請求項15に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。
上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムに対して摺動する上記第2ローラーの上記表面は、樹脂によって形成されている請求項12に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。
上記第1ローラーおよび上記第3ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの一方の面に接触し、かつ、上記第1ローラーと上記第3ローラーとの間において上記第2ローラーが上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムの他方の面に接触することにより、上記第2ローラーは上記第1洗浄槽内で上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムに付着した洗浄液を上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムから除去する請求項11から17のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。
上記第2ローラーは、上記非水電解液二次電池用セパレータフィルムから除去した上記洗浄液を上記第1洗浄槽に戻す請求項11から18のいずれか一項に記載の非水電解液二次電池用セパレータフィルム洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
【0022】
(リチウムイオン二次電池)
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、それゆえ、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器、自動車、航空機等の移動体に用いる電池として、また、電力の安定供給に資する定置用電池として広く使用されている。
【0023】
図1は、リチウムイオン二次電池1の断面構成を示す模式図である。
図1に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、カソード11と、セパレータ(フィルム)12と、アノード13とを備える。リチウムイオン二次電池1の外部において、カソード11とアノード13との間に、外部機器2が接続される。そして、リチウムイオン二次電池1の充電時には方向Aへ、放電時には方向Bへ、電子が移動する。
【0024】
(セパレータ)
セパレータ12は、リチウムイオン二次電池1の正極であるカソード11と、その負極であるアノード13との間に、これらに挟持されるように配置される。セパレータ12は、カソード11とアノード13との間を分離しつつ、これらの間におけるリチウムイオンの移動を可能にする多孔質フィルムである。セパレータ12は、その材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含む。
【0025】
図2は、
図1に示されるリチウムイオン二次電池1の詳細構成を示す模式図であって、(a)は通常の構成を示し、(b)はリチウムイオン二次電池1が昇温したときの様子を示し、(c)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0026】
図2の(a)に示されるように、セパレータ12には、多数の孔Pが設けられている。通常、リチウムイオン二次電池1のリチウムイオン3は、孔Pを介し往来できる。
【0027】
ここで、例えば、リチウムイオン二次電池1の過充電、又は、外部機器の短絡に起因する大電流等により、リチウムイオン二次電池1は、昇温することがある。この場合、
図2の(b)に示されるように、セパレータ12が融解又は柔軟化し、孔Pが閉塞する。そして、セパレータ12は収縮する。これにより、リチウムイオン3の移動が停止するため、上述の昇温も停止する。
【0028】
しかし、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温する場合、セパレータ12は、急激に収縮する。この場合、
図2の(c)に示されるように、セパレータ12は、破壊されることがある。そして、リチウムイオン3が、破壊されたセパレータ12から漏れ出すため、リチウムイオン3の移動は停止しない。ゆえに、昇温は継続する。
【0029】
図3は、
図1に示されるリチウムイオン二次電池1の他の構成を示す模式図であって、(a)は通常の構成を示し、(b)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0030】
図3の(a)に示されるように、セパレータ12は、多孔質フィルム5と、耐熱層4とを備える耐熱セパレータ(フィルム)であってもよい。耐熱層4は、多孔質フィルム5のカソード11側の片面に積層されている。なお、耐熱層4は、多孔質フィルム5のアノード13側の片面に積層されてもよいし、多孔質フィルム5の両面に積層されてもよい。そして、耐熱層4にも、孔Pと同様の孔が設けられている。通常、リチウムイオン3は、孔Pと耐熱層4の孔とを介し往来する。耐熱層4は、その材料として、例えば全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を含む。
【0031】
図3の(b)に示されるように、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温し、多孔質フィルム5が融解又は柔軟化しても、耐熱層4が多孔質フィルム5を補助しているため、多孔質フィルム5の形状は維持される。ゆえに、多孔質フィルム5が融解又は柔軟化し、孔Pが閉塞するにとどまる。これにより、リチウムイオン3の移動が停止するため、上述の過放電又は過充電も停止する。このように、セパレータ12の破壊が抑制される。
【0032】
リチウムイオン二次電池1のセパレータ及び耐熱セパレータの製造は、以下の方法を利用して行うことができる。以下では、多孔質フィルム5がその材料として主にポリエチレンを含む場合を仮定して説明する。しかし、多孔質フィルム5が他の材料を含む場合でも、同様の製造工程により、セパレータ12(耐熱セパレータ)を製造できる。
【0033】
熱可塑性樹脂に無機充填剤又は可塑剤を加えてフィルム成形した後、該無機充填剤及び該可塑剤を適当な溶媒で洗浄除去する方法が挙げられる。多孔質フィルム5が、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂から形成されてなるポリオレフィンセパレータである場合には、以下に示すような方法により製造することができる。
【0034】
この方法は、(1)超高分子量ポリエチレンと、無機充填剤(例えば、炭酸カルシウム、シリカ)、又は可塑剤(例えば、低分子量ポリオレフィン、流動パラフィン)とを混練してポリエチレン樹脂組成物を得る混練工程、(2)ポリエチレン樹脂組成物を用いてフィルムを成形する圧延工程、(3)工程(2)で得られたフィルム中から無機充填剤又は可塑剤を除去する除去工程、及び、(4)工程(3)で得られたフィルムを延伸して多孔質フィルム5を得る延伸工程を含む。なお、前記工程(4)を、前記工程(2)と(3)との間で行なうこともできる。
【0035】
除去工程によって、フィルム中に多数の微細孔が設けられる。延伸工程によって延伸されたフィルムの微細孔は、上述の孔Pとなる。これにより、所定の厚さと透気度とを有するポリエチレン微多孔膜である多孔質フィルム5(耐熱層を有しないセパレータ12)が得られる。
【0036】
なお、混練工程において、超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、無機充填剤100〜400重量部とを混練してもよい。
【0037】
その後、塗工工程において、多孔質フィルム5の表面に耐熱層4を形成する。例えば、多孔質フィルム5に、アラミド/NMP(N−メチル−ピロリドン)溶液(塗工液)を塗布(塗布工程)し、それを凝固(凝固工程)させることによりアラミド耐熱層である耐熱層4を形成する。耐熱層4は、多孔質フィルム5の片面だけに設けられても、両面に設けられてもよい。
【0038】
また、塗工工程において、多孔質フィルム5の表面に、ポリフッ化ビニリデン/ジメチルアセトアミド溶液(塗工液)を塗布(塗布工程)し、それを凝固(凝固工程)させることにより多孔質フィルム5の表面に接着層を形成することもできる。接着層は、多孔質フィルム5の片面だけに設けられても、両面に設けられてもよい。
【0039】
本明細書では、電極との接着性又はポリオレフィンの融点以上の耐熱性などの機能を有する層を機能層という。
【0040】
塗工液を多孔質フィルム5に塗工する方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、キャピラリーコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などを採用することができる。耐熱層4の厚さは塗工ウェット膜の厚み、塗工液中の固形分濃度によって制御することができる。
【0041】
なお、塗工する際に多孔質フィルム5を固定あるいは搬送する支持体としては、樹脂製のフィルム、金属製のベルト、ドラム等を用いることができる。
【0042】
以上のように、多孔質フィルム5に耐熱層4が積層されたセパレータ12(耐熱セパレータ)を製造できる。製造されたセパレータは、円筒形状のコアに巻き取られる。なお、以上の製造方法で製造される対象は、耐熱セパレータに限定されない。この製造方法は、塗工工程を含まなくてもよい。この場合、製造される対象は、耐熱層を有しないセパレータである。
【0043】
(洗浄工程)
以下、本実施形態に係るフィルム製造方法および洗浄装置6について、
図4および
図5を参照して説明する。
【0044】
以下の実施形態では、長尺かつ多孔質の電池用セパレータである耐熱セパレータの洗浄方法(フィルム製造方法)を説明している。耐熱セパレータの耐熱層は、多孔質フィルムにアラミド/NMP(N−メチル−ピロリドン)溶液(塗工液)を塗布して形成される。このとき、溶媒であるNMP(除去対象物質)は、多孔質フィルムの孔にも含浸する。
【0045】
孔にNMPが残留した耐熱セパレータの透気度は、孔にNMPが残留していない耐熱セパレータの透気度よりも低くなる。透気度が低いほど、耐熱セパレータを利用するリチウムイオン二次電池のリチウムイオンの移動が阻害されるため、リチウムイオン二次電池の出力は低下する。このため、耐熱セパレータの孔にNMPが残留しないように洗浄できることが好ましい。
【0046】
図4は、本実施形態に係る洗浄装置6の構成を示す断面図である。
図4に示されるように、洗浄装置6(フィルム洗浄装置)は、洗浄槽15〜19を備える。洗浄槽15〜19は、それぞれ、洗浄水W(洗浄液)で満たされている。また、洗浄装置6は、耐熱セパレータSを搬送する回転可能な複数のローラーをさらに備える。これらのローラーのうち、ローラーa〜nは、洗浄槽15で洗浄される耐熱セパレータSを搬送するローラーである。
【0047】
洗浄工程の上流工程(例えば、塗工工程)から搬送されてきた耐熱セパレータSは、ローラーa〜nを経て洗浄槽15に満たされた洗浄水Wの中(以下「水中」)を通過する。ローラーa〜n(搬送ローラー)は、洗浄槽15での耐熱セパレータSの搬送経路を規定している。洗浄槽17および18でも、洗浄槽15と同様のローラーa〜nによって耐熱セパレータSが搬送される。洗浄槽16および19では、ローラーnが省略されている点を除けば、洗浄槽15と同様のローラーa〜mによって耐熱セパレータSが搬送される。
【0048】
洗浄装置6は、駆動ローラーRと、補助ローラーp、qとをさらに備える。駆動ローラーRは、モーター等の動力により回転駆動されるローラーである。駆動ローラーRの表面の速度は耐熱セパレータSの搬送速度と同じになるように、駆動ローラーRは駆動される。駆動ローラーRは、洗浄槽間において耐熱セパレータSに搬送方向(MD:Machine direction)の力を加える。補助ローラーp、qは、駆動ローラーRにおける耐熱セパレータSに接触する表面の範囲(いわゆる「抱き角」)を規定している。抱き角は、ローラーの外周においてフィルムが接している円弧の、ローラーの軸に対する角度を意味する。この駆動ローラーRと、補助ローラーp、qとを洗浄水W中に配してもよいが、防水処置を施す必要がなくなるため、
図4に示されるように洗浄槽間に配することが好ましい。
【0049】
以上のように、駆動ローラーRは、洗浄槽15のローラーaの位置と、洗浄槽19のローラーmの位置との間で、耐熱セパレータSに搬送のための力を加えている。ここで、洗浄槽15のローラーaは、耐熱セパレータSを洗浄槽15へ搬入する直前のローラーである。洗浄槽19のローラーmは、耐熱セパレータSを洗浄槽19から搬出した直後のローラーである。
【0050】
そして、上述の駆動ローラーRによる力は、洗浄槽16のローラーlと、洗浄槽17のローラーbとの間で、耐熱セパレータSに加えられることが好ましい。例えば、搬送経路において、上流側の洗浄槽16から(水中から)耐熱セパレータSが搬出された後、かつ、下流側の洗浄槽17へ(水中へ)耐熱セパレータSが搬入される前に、駆動ローラーRおよび補助ローラーp、qを配置することが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る洗浄方法は、耐熱セパレータSをその長手方向に搬送する工程と、搬送中の耐熱セパレータSを、洗浄槽15〜19内に満たされた洗浄水Wの中を順次通過させることにより洗浄を行う工程とを含む。このように、耐熱セパレータSは、上流の洗浄槽から下流の洗浄槽へと順次搬送される。ここでは、特に説明のない限り、「上流」及び「下流」は、セパレータの搬送方向における上流及び下流を意味する。
【0052】
洗浄槽15〜19での洗浄が完了した後には、耐熱セパレータSは、洗浄工程の下流工程(例えば乾燥工程)へ搬送される。
【0053】
耐熱セパレータSを、洗浄水Wの中を通過させることにより、耐熱セパレータSの孔から水中へNMPが拡散する。ここで、NMPの拡散量は、洗浄水WのNMP濃度が低いほど大きくなる。
【0054】
耐熱セパレータSは、洗浄槽15〜19において順に洗浄されるため、下流の洗浄槽では、上流の洗浄槽よりも洗浄水WのNMP濃度が低い。つまり、段階的にNMPの拡散が進むため、孔につまったNMPを確実に除去できる。
【0055】
図4に示されるように、セパレータ搬送方向における下流の洗浄槽19から上流の洗浄槽15にかけて、洗浄水Wを方向Dへ流してもよい。このために、例えば、洗浄槽15〜19の間の障壁をセパレータ搬送方向における下流から上流へ向かうほど低くしてもよい。このとき、本実施形態に係る洗浄方法は、下流の洗浄槽へ洗浄水Wを供給するとともに、上流の洗浄槽へは下流の洗浄槽内の洗浄水Wを供給することにより、各洗浄槽内の洗浄液を更新する工程をさらに含むことになる。上流の洗浄槽15からは一部の洗浄水Wが排出される。これによれば、洗浄水Wを有効利用しつつ、セパレータ搬送方向における下流の洗浄槽の洗浄水WのNMP濃度を、上流の洗浄槽の洗浄水WのNMP濃度よりも、より低くすることができる。
【0056】
段階的にNMPの拡散を進めることにより、1槽の洗浄槽のみによる洗浄に比べて効率よくNMPを除去できる。このため、洗浄中の耐熱セパレータSの搬送距離を短くできる。ゆえに、無孔フィルムに比べて機械的強度が低い耐熱セパレータSを、折れや破れを抑制しつつ洗浄できる。
【0057】
耐熱セパレータSは、幅広であるほど生産性が高くなる。ゆえに、耐熱セパレータSの幅(MDに垂直な方向の長さ)は、洗浄槽15〜19の幅近くまで大きくすることが多い。また、洗浄槽15〜19の幅は、耐熱セパレータSの幅に合わせて設計される。
【0058】
耐熱セパレータSの幅が広がり、耐熱セパレータSの端部と洗浄槽15〜19との間隙が狭くなると、洗浄槽15〜19に満たされた洗浄水Wは、耐熱セパレータSの一面側(洗浄槽の中心側)と他面側(洗浄槽の両端(
図4中左右端)側)とに分割された状態になる。
【0059】
洗浄槽15〜19による洗浄では、洗浄槽間でのオーバーフローにより、洗浄水Wが供給・排出されることが多い。このとき、耐熱セパレータSの一面側に分割された洗浄水Wは供給・排出されるものの、耐熱セパレータSの他面側に分割された洗浄水Wは滞留することがある。
【0060】
そこで、本実施形態に係る洗浄方法は、洗浄槽15〜19のうちの少なくとも一つにおいて、耐熱セパレータSの一面側と他面側との間での洗浄水Wの入れ替わりを促進すべく洗浄水Wを循環させる工程を含んでいてもよい。このとき、洗浄装置6は、洗浄槽15〜19のうちの少なくとも一つにおいて、洗浄水Wの供給・排出口を有する循環装置をさらに備えていてもよい。これにより、1つの洗浄槽内の洗浄水WのNMP濃度をより均一化することができ、NMPの効率的除去を促進することができる。
【0061】
洗浄水Wは、水に限定されず、耐熱セパレータSからNMPを除去できる洗浄液であればよい。また、洗浄水Wは、界面活性剤などの洗浄剤、酸(例えは、塩酸)又は塩基を含んでいてもよい。そして、洗浄水Wの温度は、120℃以下であることが好ましい。この温度では、耐熱セパレータSが熱収縮する虞が少なくなる。また、洗浄水Wの温度は、20℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0062】
以上の耐熱セパレータSの洗浄方法は、耐熱層を有しないセパレータ(例えばポリオレフィンセパレータ)の洗浄方法にも適用することができる。
【0063】
上記セパレータは、例えば、超高分子量ポリエチレンなどの高分子量ポリオレフィンと、無機充填剤又は可塑剤とを混練することで得られるポリオレフィン樹脂組成物をフィルム状に成形し、延伸することで形成される。そして、無機充填剤又は可塑剤(除去対象物質)が洗い流されることで、セパレータの孔が形成される。
【0064】
洗い流されずに、孔に上記除去対象物質が残留したセパレータの透気度は、孔に上記除去対象物質が残留していないセパレータの透気度よりも低くなる。透気度が低いほど、セパレータを利用するリチウムイオン二次電池のリチウムイオンの移動が阻害されるため、リチウムイオン二次電池の出力は低下する。このため、セパレータの孔に上記除去対象物質が残留しないように洗浄できることが好ましい。
【0065】
無機充填剤を含むセパレータを洗浄するための洗浄液は、セパレータから無機充填剤を除去できる洗浄液であればよい。好ましくは酸又は塩基を含む水溶液である。
【0066】
可塑剤を含むセパレータを洗浄するための洗浄液は、セパレータから可塑剤を除去できる洗浄液であればよい。好ましくはジクロロメタンなどの有機溶剤である。
【0067】
以上をまとめると、フィルム状に成形されたポリオレフィン樹脂組成物(フィルム)の洗浄方法は、セパレータの中間製品である長尺のフィルムをその長手方向に搬送する工程と、搬送中のこのフィルムを、上述の洗浄槽15〜19内に満たされた洗浄液中を順次通過させることにより洗浄を行う工程とを含む。
【0068】
このように、
図4において、耐熱セパレータSを、セパレータの中間製品であるフィルムとしてもよい。また、洗浄水Wを、酸又は塩基を含む水溶液としてもよい。
【0069】
そして、ポリオレフィンセパレータの製造方法は、長尺かつ多孔質のセパレータの中間製品である、ポリオレフィンを主成分とする長尺のフィルムを成形する成形工程と、この成形工程の後に実行される、上述のフィルム洗浄方法が含む各工程とを含むと解釈することができる。
【0070】
積層セパレータである耐熱セパレータSの洗浄方法を利用した耐熱セパレータSの製造方法も本発明に含まれる。ここで、耐熱セパレータSは、
図3に示される多孔質フィルム5(基材)と、多孔質フィルム5に積層された耐熱層4(機能層)とを含む積層セパレータである。そして、この製造方法は、長尺かつ多孔質の耐熱セパレータSを成形する成形工程と、前記成形工程の後に実行される、上述のセパレータ洗浄方法の各工程とを含むと解釈することができる。
【0071】
「成形工程」は、耐熱層4を積層するために、耐熱層4を構成するアラミド樹脂(物質)を含むNMP(液状物質)を多孔質フィルム5に塗布する塗布工程と、この塗布工程の後にアラミド樹脂を凝固させる凝固工程とを含む。
【0072】
「各工程」とは、耐熱セパレータSをその長手方向に搬送する工程と、搬送中の耐熱セパレータSを、洗浄槽15〜19内に満たされた洗浄水W中を順次通過させることにより洗浄を行う工程を意味する。
【0073】
以上により、NMPが少なく、かつ、折れや破れが抑制された、積層セパレータを製造できる。なお、耐熱層は、上述の接着層であってもよい。
【0074】
(M字状経路)
ここからは、洗浄装置6が備えているローラーm、ローラーn、およびローラーaについて、より詳細に説明する。ここでは、洗浄槽15と洗浄槽16との間に配置されたローラーm、ローラーn、およびローラーaについて説明を行う。ただし、洗浄槽17から洗浄槽19の間に配置されたローラーm、ローラーn、およびローラーaについても同様のことが言える。
【0075】
図5は、
図4に示す洗浄装置6における、1組のローラーm、ローラーn、およびローラーaの断面図である。ローラーm(第1ローラー)、ローラーn(第2ローラー)およびローラーa(第3ローラー)の組が、搬送経路における、上流側の洗浄槽15(第1洗浄槽)と下流側の洗浄槽16(第2洗浄槽)との間に設けられている。ローラーnは、ローラーmとローラーaとの間に配置される。上面視において、ローラーmおよびローラーnは、洗浄槽15の範囲内に位置し、ローラーaは、洗浄槽16の範囲内に位置する。ローラーm、n、aは、動力によって回転駆動される駆動ローラーであってもよいし、耐熱セパレータSとの摩擦力によって回転する従動ローラーであってもよい。ここでは、各ローラーm、n、aの表面の速度と、耐熱セパレータSの搬送速度とは同じである。
【0076】
洗浄槽15から(水中から)搬出された耐熱セパレータSは、ローラーm、ローラーn、およびローラーaの順に接触し、洗浄槽16へ(水中へ)搬入される。ローラーm、ローラーn、およびローラーaは、洗浄槽間において耐熱セパレータSを搬送する(搬送工程)。
【0077】
ローラーm、aは、耐熱セパレータSにおける一方の面Smに接触する。ローラーmおよびローラーaの間において、ローラーnは耐熱セパレータSにおける他方の面Snに接触する。ローラーm、aが耐熱セパレータSの一方側(下側)を支持し、ローラーnが耐熱セパレータSの他方側(上側)から耐熱セパレータSを押さえ付ける。ローラーnを境に、耐熱セパレータSの搬送方向は下降から上昇に変わる。耐熱セパレータSは、ローラーmの軸方向から見て、M字状の搬送経路を通る。ローラーmが接触することにより、耐熱セパレータSの面Sm側に付着した洗浄水Wが耐熱セパレータSから除去される。また、ローラーnが接触することにより、耐熱セパレータSの面Sn側に付着した洗浄水Wが耐熱セパレータSから除去される。洗浄槽15から搬出された耐熱セパレータSに付着していた洗浄水Wは、洗浄槽15に満たされた洗浄水Wと同等の汚染度合(同等の除去対象物の濃度)である。
【0078】
ローラーmによって面Smから除去された洗浄水Wは、上流の洗浄槽15に戻る。同様に、ローラーnによって面Snから除去された洗浄水Wは、上流の洗浄槽15に戻る。例えば、洗浄水Wは、耐熱セパレータSの上側の面Sn上をローラーnに沿って耐熱セパレータSの幅方向に移動し、耐熱セパレータSの端部からこぼれ落ちる。
【0079】
上面視において、ローラーm、nが洗浄槽15の範囲内にあれば、ローラーm、nから落ちた洗浄水Wは洗浄槽15に戻る。または、少なくともローラーm、nの下端が洗浄槽15の範囲内にあれば、ローラーm、nから落ちた洗浄水Wは洗浄槽15に戻る。または、ローラーm、nの下側に樋を設け、除去された洗浄水Wを樋を通して洗浄槽15に戻してもよい。
【0080】
これにより、洗浄槽15から搬出された耐熱セパレータSの両面に付着した水分は、耐熱セパレータSから除去され、洗浄槽15に落とされる。これにより、洗浄槽15より下流側の洗浄槽16〜19に、この洗浄槽15に満たされた洗浄水W(洗浄槽16〜19に満たされた洗浄水Wより汚れている)が持ち込まれる量を低減することができる。従って、洗浄槽16〜19に満たされた洗浄水Wの汚染(除去対象物濃度の上昇)を防ぐことが可能となる。また、耐熱セパレータSの表面に付着した除去対象物濃度の高い液体を、洗浄槽間において耐熱セパレータSの表面から除去することにより、下流の洗浄槽において、より効率的に耐熱セパレータSから除去対象物を拡散させることができる。
【0081】
図6は、洗浄装置に樋を設ける場合における、樋の配置例を示す断面図である。
図6に示すように、洗浄槽15と洗浄槽16との間に樋20を設けてもよい。ここでは、上面視において、ローラーn、aの最下点は、樋20の範囲に含まれる。ローラーm、ローラーn、またはローラーaの下側に樋を設ける場合、そのローラーは洗浄槽15の範囲内に位置する必要はない。ここでは、ローラーnは、洗浄槽15と洗浄槽16との中間に位置する。ローラーmから落ちた洗浄水Wは、そのまま洗浄槽15に戻る。ローラーn、aから落ちた洗浄水は、樋20に受けられて、樋20を通って洗浄槽15に戻る。
【0082】
なお、横断方向(TD:transverse direction)から見たとき、3つのローラーm、n、aの回転軸の位置は、直線状に並ぶのが好ましい。言い換えれば、3つのローラーm、n、aの回転軸が、1つの平面上に位置するのが好ましい。また、ローラーnの抱き角は、180度未満であることが好ましい。抱き角は、ローラーにおいて耐熱セパレータSが接している円弧の、ローラーの軸に対する角度を意味する。すなわち、ローラーの前後における耐熱セパレータSの搬送方向は、そのローラーの抱き角の分だけ変わる。
【0083】
(ローラーの回転)
ローラーnの表面npの速度は、耐熱セパレータSの搬送速度と異なっていてもよい。すなわち、ローラーnの表面np(曲面)と耐熱セパレータSとが摺動する。この場合、ローラーnは所定の速度で回転駆動される駆動ローラーであってもよいし、従動ローラーであってもよい。ローラーnの表面npと耐熱セパレータSとが摺動する場合、ローラーnの表面np(耐熱セパレータSと接触する部分)は樹脂によって形成されていることが好ましい。ローラーnの表面npが樹脂であれば、耐熱セパレータSとの摩擦力を小さくし、耐熱セパレータSの摩耗および破断を抑制することができる。
【0084】
ローラーnが従動ローラーである場合、ローラーnとその軸との摩擦力をある程度大きくすることで、ローラーnの表面npが耐熱セパレータSに引きずられるように構成することができる。
【0085】
ローラーnが駆動ローラーである場合、ローラーnの表面npが回転移動する方向は、耐熱セパレータSの搬送方向と同じでもよいし、異なっていてもよい。ローラーnの表面npが回転移動する方向が耐熱セパレータSの搬送方向と異なる場合、ローラーnと耐熱セパレータSとの摺動によって、より効率的に耐熱セパレータSの表面Snから洗浄水Wを除去することができる。
【0086】
また、ローラーnは回転しないよう固定されていてもよい。また、ローラーnの表面は金属で形成されていてもよい。
【0087】
ローラーm、aについても、ローラーnと同様の構成としてもよい。
【0088】
(ローラーの表面形状)
また、ローラーnの表面npに凹凸形状が設けられていてもよい。例えば、凹凸形状として、ローラーnの表面npに、螺旋状の溝、曲線状の溝、または直線状の溝が形成されていてもよい。ローラーnの表面npの溝は、耐熱セパレータSの幅方向において、耐熱セパレータSの端部を越えて延びていることが好ましい。これにより、ローラーnと耐熱セパレータSとの間において除去された洗浄水が、溝の中を通って耐熱セパレータSより幅方向における外側に排出される。螺旋状の溝は、耐熱セパレータSに対向する箇所が時間と共に耐熱セパレータSの幅方向における外側にずれる向きに、形成されていることが好ましい。また、直線状の溝は、ローラーnの軸に平行になるように形成されていてもよい。
【0089】
同様に、ローラーm、aの表面に凹凸形状(溝)を形成してもよい。ローラーaが除去した洗浄水Wが洗浄槽15に戻るよう、ローラーaの下側に樋を設けてもよい。
【0090】
なお、洗浄装置6において、耐熱セパレータSの代わりに、機能層を有しないセパレータ、または、孔を有しないプラスティックフィルム等の各種フィルムの洗浄を行ってもよい。
【0091】
〔本実施形態の別の解釈〕
本実施形態は、下記のように解釈することもできる。
【0092】
本実施形態に係るフィルム製造方法は、第1洗浄槽においてフィルムを洗浄する洗浄工程と、上記第1洗浄槽から搬出された上記フィルムに第1ローラー、第2ローラー、および第3ローラーを接触させて、上記フィルムを第2洗浄槽に搬送する搬送工程とを含み、上記搬送工程では、上記第1ローラーおよび上記第3ローラーが上記フィルムの一方の面に接触し、かつ、上記第1ローラーと上記第3ローラーとの間において上記第2ローラーが上記フィルムの他方の面に接触することにより、上記フィルムから洗浄液を除去し、上記第2ローラーによって上記フィルムから除去された上記洗浄液を上記第1洗浄槽に戻す。
【0093】
上記の構成によれば、洗浄槽間において、第1ローラーおよび第2ローラーによって、フィルムの両面に付着した洗浄液が除去される。第2ローラーによって除去された洗浄液は、上流の第1洗浄槽に戻される。そのため、下流の第2洗浄槽に持ち込まれる第1洗浄槽の洗浄液の量を低減することができる。それゆえ、第2洗浄槽の洗浄液の汚染を抑制することができる。
【0094】
また、上記第2ローラーの表面の速度は、上記フィルムの搬送速度と異なってもよい。
【0095】
上記の構成によれば、第2ローラーとフィルムとは摺動する。それゆえ、フィルムに付着した洗浄液をより効率的に除去することができる。
【0096】
また、上記第2ローラーを回転駆動させてもよい。
【0097】
上記の構成によれば、第2ローラーの表面の速度をフィルムの搬送速度以上にすることで、フィルムを搬送方向に引っ張ることができる。液体中を通過するフィルムは液体の粘性により抵抗力を受ける。洗浄槽間において第2ローラーを駆動することで、第2ローラーの上流側におけるフィルムの張力を減少させ、フィルムの破断を防止することができる。また、第2ローラーの表面の速度をフィルムの搬送速度未満にすることで、フィルムに付着した洗浄液をより効率的に除去することができる。
【0098】
また、上記第2ローラーの表面に凹凸形状が設けられていてもよい。
【0099】
上記の構成によれば、凹凸形状によってフィルムから除去した洗浄液を効率よくフィルムの外側へ排出することができる。
【0100】
また、上記第2ローラーの上記表面に螺旋状、曲線状、または直線状の溝が設けられていてもよい。
【0101】
上記の構成によれば、フィルムから除去された洗浄液を、溝を通して排出することができる。
【0102】
また、上記第2ローラーの上記溝は、上記フィルムの幅方向において、上記フィルムの端部を越えて延びていてもよい。
【0103】
上記の構成によれば、フィルムから除去された洗浄液を、溝を通してフィルムの幅方向における外側に排出することができる。
【0104】
また、上記フィルムに対して摺動する上記第2ローラーの上記表面は、樹脂によって形成されていてもよい。
【0105】
上記の構成によれば、フィルムの摩耗または破断を防止することができる。
【0106】
本実施形態に係るフィルム洗浄装置は、フィルムを洗浄する、第1洗浄槽および第2洗浄槽と、上記第1洗浄槽から搬出された上記フィルムに接触し、かつ、上記フィルムを第2洗浄槽に搬送する、第1ローラー、第2ローラー、および第3ローラーとを備え、上記第1ローラーおよび上記第3ローラーが上記フィルムの一方の面に接触し、かつ、上記第1ローラーと上記第3ローラーとの間において上記第2ローラーが上記フィルムの他方の面に接触することにより、上記第2ローラーは上記フィルムから洗浄液を除去し、上記第2ローラーによって上記フィルムから除去された洗浄液が上記第1洗浄槽に戻る構成である。
【0107】
また、上記第2ローラーの表面の速度は、上記フィルムの搬送速度と異なる構成としてもよい。
【0108】
また、上記第2ローラーは回転駆動させられる構成としてもよい。
【0109】
また、上記第2ローラーの表面に凹凸形状が設けられている構成としてもよい。
【0110】
また、上記第2ローラーの上記表面に螺旋状または直線状の溝が設けられている構成としてもよい。
【0111】
また、上記第2ローラーの上記溝は、上記フィルムの幅方向において、上記フィルムの端部を越えて延びている構成としてもよい。
【0112】
また、上記フィルムに対して摺動する上記第2ローラーの上記表面は、樹脂によって形成されている構成としてもよい。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。