(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペーストは、脂肪族炭化水素系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる1種以上の有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の電極形成方法。
前記板状部材の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリエチレンテレフタラート、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、環状オレフィンコポリマー、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、SBC(スチレン・ブタジエン共重合)樹脂、ポリメタクリルスチレン、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリアリルサルホン及びガラスのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の電極形成用スクリーン印刷機。
【背景技術】
【0002】
一般に、太陽電池は、
図7に示す構造を有する。
図7に示すように、太陽電池50では、例えば、大きさが100〜156mm角、厚みが0.1〜0.3mmの板状で、かつ、多結晶や単結晶シリコン等からなり、リン等のn型不純物がドープされたn型の半導体基板51に対し、受光面側にはp型拡散層52が設けられ、裏面側にはn型拡散層53が設けられている。p型拡散層52の上には受光面電極55が設けられ、n型拡散層53の上には裏面電極56が設けられている。また、受光面側にSiN(窒化シリコン)等の反射防止膜兼パッシベーション膜57が設けられている。また、裏面側にもSiN等のパッシベーション膜58を設けることができる。ここで、p型拡散層52は、ボロン等のp型不純物をドープして受光面側に形成され、n型拡散層53は、リン等のn型不純物をドープして裏面側に形成される。受光面電極55及び裏面電極56は、スクリーン印刷法を用いて、裏面側及び受光面側に導電性銀ペーストを印刷した後、乾燥・焼成することで形成される。これらの電極は、太陽電池で生じた光生成電流を外部へ取出すためのバスバー電極と、これらのバスバー電極に接続される集電用のフィンガー電極とからなる。
【0003】
このような構造の太陽電池にあっては、上記のように、電極形成にスクリーン印刷法を用いることが一般的である(例えば特許文献1、2参照)。スクリーン印刷法は、感光性材料を扱うフォトリソグラフィ法等に比べて、厚膜の電極を歩留まりよく大量生産することに向いており、比較的設備費が少なくてすむという利点がある。そのため、スクリーン印刷法は太陽電池の電極形成の他、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネル等の大面積ディスプレイの電極層、抵抗層、誘電体層、あるいは蛍光体層等のパターン形成を含め、電子工業界で広範囲に使用されている。
【0004】
従来のスクリーン印刷法について、図面を用いて説明する。
図8は、一般的なスクリーン印刷機の主要部の側面模式図である。
図9は、一般的なスクリーン印刷法によるペーストの広がりをスクリーン製版の上から見た平面模式図と、横から見た側面模式図である。一連の印刷動作を、
図8を参照して説明する。まず、スクリーン印刷機110のうち、形成したいパターンが開口されたスクリーン製版111の上に、ペースト116が載せられる。このペースト116の上を、スクレッパ112が上部から圧力をかけられながら一定方向に動くことで、スクリーン製版111の開口部のパターンにペースト116を充填する。次に、スキージ113が上部から圧力をかけられながら、スクレッパ112とは反対方向に動くことで、スクリーン製版111の開口部のパターンに充填されたペースト116を、印刷ステージ114上に設置された被印刷物115に転写する。続いて、スクレッパ112がスキージ113とは反対方向に動きながら、残ったペースト116を再度スクリーン製版111の開口部のパターンに充填する。これらの一連の動作が繰り返し行われる。
【0005】
図9を参照して、従来のスクリーン印刷法におけるペーストの広がりについて説明する。従来のスクリーン印刷方法で、連続的に印刷を繰り返すと、スクリーン製版111の上のペースト116の一部がスキージ113及びスクレッパ112に押されて、ペースト堆積領域の範囲が印刷パターン領域119の範囲を超えて拡大する。これにより、スキージ走査領域及びスクレッパ走査領域からはみ出したペーストは、スキージ113やスクレッパ112の動作範囲の外にあるため、以後の印刷に使用されなくなってしまう。なお、
図9中には、連続印刷中の印刷パターン領域外のペースト堆積領域120を模式的に示している。
【0006】
上記のように、従来のスクリーン印刷法では、供給されたペーストの一部がスキージ動作の後、スキージ動作領域の両端にはみ出して残留してしまい、印刷回数を重ねるにつれて、はみ出したペースト表面から溶剤成分が揮発し、ペースト表面が部分的に凝固してしまう。この凝固したペーストを作業者が中央部に掻き寄せて集めて再度印刷を行うと、版上のペーストの粘度が局所的に高くなってしまう。従って、特に太陽電池におけるフィンガー電極を形成するためにフィンガー電極パターン状に半導体基板にペーストを印刷すると、印刷したペーストの太りあるいは擦れが生じてしまう。この場合、得られる太陽電池において、フィンガー電極の太りが発生したり、外観検査での歩留りが悪化したりする恐れがある。これらの印刷不良は、フィンガー電極幅が60μm以下において特に影響が大きくなり、太陽電池特性を低下させる大きな要因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、スクリーン製版上のペーストからの溶剤揮発を抑制することによって、ペーストの印刷性を向上させることが可能なスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。本発明はまた、そのようなスクリーン印刷方法を用いて、高い電気特性を有する太陽電池を作製することが可能な太陽電池の電極形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、印刷パターンに対応する開口部が設けられたスクリーン製版と、スクレッパと、スキージとを備えたスクリーン印刷機を用い、前記スクリーン製版の上面に供給されたペーストを、前記スクレッパにより前記スクリーン製版の開口部に充填した後に、前記スキージにより前記スクリーン製版の開口部から被印刷物の所定位置に前記ペーストを押し出すことにより、前記被印刷物に前記印刷パターンに対応して前記ペーストをスクリーン印刷する方法であって、
前記スクリーン印刷する際に、前記スクリーン印刷機内の湿度を調整することを特徴とするスクリーン印刷方法を提供する。
【0010】
このようなスクリーン印刷方法であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を向上させることができる。
【0011】
また、前記スクリーン印刷する際に、前記スクリーン印刷機内の湿度を調整することにより、前記スクリーン印刷機内の露点温度を8.2〜18.0℃とすることが好ましい。
【0012】
このようなスクリーン印刷方法であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を更に向上させることができる。
【0013】
前記スクリーン印刷機の印刷機内温度をT(℃)、印刷機内相対湿度をH(%)としたとき、次式で定義されるkが、8.2<k<18.0となるようにすることが好ましい。
【数1】
【0014】
この条件下であれば、高い変換効率のセルを歩留りよく製造することできる。
【0015】
また、前記スクリーン印刷機内の湿度を相対湿度で30〜65%の間で調整することが好ましく、さらには50±5%以内に調整することがより好ましい。
【0016】
このようなスクリーン印刷方法であれば、印刷したペーストのアスペクト比を高くできる。
【0017】
前記ペーストは、脂肪族炭化水素系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤及び芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる1種以上の有機溶剤を含むことが好ましい。
【0018】
これらにより、本発明の効果を特に有効に発現させることができる。
【0019】
前記スクリーン製版の開口部の形状を細線状とし、長手方向の長さを156〜8mmとすることができる。
【0020】
本発明の方法は、開口部の長手方向の長さが156〜8mmのような細線に対し特に有効である。
【0021】
また、前記スクリーン製版の開口部の幅を60μm以下とすることができる。
【0022】
本発明のスクリーン印刷方法であれば、このようなスクリーン製版の開口部の幅が小さいものを用いたとしても、印刷不良が発生しにくくなる。
【0023】
前記スクリーン印刷機の印刷機内温度をT(℃)、印刷機内相対湿度をH(%)、印刷物の幅をw(μm)としたとき、次式で定義されるk’が、8.2<k’<18.0となるようにすることが好ましい。
【数2】
【0024】
この条件下であれば、いかなる線幅に対しても、高い変換効率のセルを歩留りよく製造することできる。
【0025】
更に本発明では、上記本発明のスクリーン印刷方法を用いて、半導体基板の少なくとも一方の主表面に、前記ペーストをスクリーン印刷し、該スクリーン印刷されたペーストを乾燥及び焼成することにより、電極を形成することを特徴とする太陽電池の電極形成方法を提供する。
【0026】
このような太陽電池の電極形成方法であれば、アスペクト比の高い電極を容易に形成することができる。従って、このような太陽電池の電極形成方法を用いれば、高い電気特性を有する太陽電池を作製することができる。
【0027】
また、前記形成する電極をフィンガー電極とし、該フィンガー電極のアスペクト比を0.5以上1.0以下とすることができる。
【0028】
本発明の太陽電池の電極形成方法であれば、このようなアスペクト比の高いフィンガー電極を容易に形成することができる。
【0029】
更に本発明では、印刷パターンに対応する開口部が設けられたスクリーン製版と、前記スクリーン製版の上面に供給されたペーストを前記スクリーン製版の開口部に充填するスクレッパと、前記スクリーン製版の開口部から被印刷物の所定位置に前記ペーストを押し出すスキージと、スクリーン印刷機内の湿度を調整する湿度調整器とを備えたものであることを特徴とするスクリーン印刷機を提供する。
【0030】
このようなスクリーン印刷機であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を向上させることができる。
【0031】
少なくとも、前記スクリーン製版と、前記スクレッパと、前記スキージとを含む空間は板状部材で囲われていることが好ましい。
【0032】
また、前記板状部材の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリエチレンテレフタラート、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、環状オレフィンコポリマー、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、SBC(スチレン・ブタジエン共重合)樹脂、ポリメタクリルスチレン、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリアリルサルホン及びガラスのいずれかであることが好ましい。
【0033】
このようなスクリーン印刷機であれば、作業性を損なうことなく、湿度を安定化できるため、より安定した印刷が可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を向上させることができる。本発明の太陽電池の電極形成方法であれば、アスペクト比の高い電極を容易に形成することができる。従って、このような太陽電池の電極形成方法を用いれば、高い電気特性を有する太陽電池を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
従来のスクリーン印刷法では、供給されたペーストの一部がスキージ動作の後、スキージの両端にはみ出して残留してしまうために、印刷回数を重ねるにつれて、使用されなくなるペーストが増加する一方で、はみ出したペーストの表面から溶剤成分が揮発し、高粘度化したペーストを中央に寄せて再度印刷を行うと、スクリーン製版の開口部から吐出されるペースト量が安定せず、被印刷物上にパターン状に印刷されたペーストがかすれて印刷不良になり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0038】
このような問題は、典型的な結晶シリコン太陽電池の製造方法において、電極形成をスクリーン印刷法にて行う場合にも生じる。すなわち、この場合も、上記と同様に、シリコン基板上の電極パターン状に印刷されたペーストがかすれて印刷不良になり、歩留まりが低下するという問題があった。
【0039】
これらの印刷不良を防止するために、従来、作業者がはみ出したペーストを中央部に掻き寄せて集める頻度を高めるか、はみ出したペーストを回収して固形化したペースト成分を濾過して粘度を再調整する必要があり、工程の煩雑さや製造コストの点で問題となっていた。
【0040】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を行った。その結果、スクリーン印刷機内の湿度を調整する湿度調整器を備えたスクリーン印刷機及びスクリーン印刷する際に、スクリーン印刷機内の湿度を調整するスクリーン印刷方法並びに該スクリーン印刷方法を用いた太陽電池の電極形成方法が、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0041】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は下記説明に加えて広範な他の実施形態で実施することが可能であり、本発明の範囲は、下記に制限されるものではなく、特許請求の範囲に記載されるものである。更に、図面は原寸に比例して示されていない。本発明の説明や理解をより明瞭にするために、関連部材によっては寸法が拡大されており、また、重要でない部分については図示されていない。
【0042】
[スクリーン印刷機]
図1は、本発明のスクリーン印刷機の主要部の側面模式図である。
図2は、本発明のスクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷におけるはみ出したペーストに加湿を行う様子を示す図((a)は上面図、(b)は側面図)である。
図1及び
図2に示すように、本発明のスクリーン印刷機10は、印刷パターンに対応する開口部が設けられたスクリーン製版11と、スクリーン製版11の上面に供給されたペースト16をスクリーン製版11の開口部に充填するスクレッパ12と、スクリーン製版11の開口部から被印刷物15の所定位置にペースト16を押し出すスキージ13と、スクリーン印刷機10内の湿度を調整する湿度調整器25とを備える。また、被印刷物15を設置するための印刷ステージ14を備える。このようなスクリーン印刷機であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を向上させることができる。
【0043】
さらに、少なくとも、スクリーン製版11と、ペースト16と、スクレッパ12と、被印刷物15と、スキージ13と、ステージ14とを含む空間は板状部材で囲われていることが望ましい。こうすることで、印刷時の湿度を一定に保つことができる。
【0044】
また、この板状部材は、光透過性があることが好ましい。印刷ステップが外部から目視確認できるため、装置トラブルや不良発生が早期に発見できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、ポリエチレンテレフタラート、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルペンテン、環状オレフィンコポリマー、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、SBC(スチレン・ブタジエン共重合)樹脂、ポリメタクリルスチレン、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリアリルサルホン及びガラスのいずれかであることが好ましい。
【0045】
スクリーン製版11、スクレッパ12、スキージ13、印刷ステージ14及び被印刷物15の形状等は特に限定されないが、公知のスクリーン印刷機に用いられるものと同様のものとすることができる。
【0046】
湿度調整器25は特に限定されないが、例えば、加湿器、除湿機、精密空調機(温度及び湿度を調整できる空調機)等を挙げることができる。湿度調整器25はスクリーン印刷機内に設けることができる。
【0047】
ペースト16の種類は特に限定されないが、例えば、溶剤、導電性粒子等の粒子及びその他の添加物を含有するものとすることができる。この場合、溶剤の種類は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。
【0048】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、出光興産製「IPソルベント」、シェル化学社製「Shellsol D40」(Shellsolは登録商標)、「Shellsol D70」、「Shellsol 70」、「Shellsol 71」、Exxon社製「Isopar G」、「Isopar H」、「Isopar L」、「Isopar M」、「Exxol D40」、「Exxol D80」、「Exxol D100」、「Exxol D130」(沸点:279〜316℃)、「Exxol D140」(沸点:280〜320℃)、「Exxol DCS100/140」等が挙げられる。
【0049】
また、カルビトール系溶剤としてはメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
【0050】
セロソルブ系溶剤としては、エチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等が挙げられる。
【0051】
また、高級脂肪酸エステル系溶剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルコハク酸イソブチルエステル、アジピン酸イソブチルエステル、セパシン酸ジブチル、セパシン酸ジ,2エチルヘキシル等が挙げられる。
【0052】
高級アルコール系溶剤としては、メチルヘキサノール、オレイルアルコール、トリメチルヘキサノール、トリメチルブタノール、テトラメチルノナノール、2−ペンチルノナノール、2−ノニールノナノール、2−ヘキシルデカノール等が挙げられる。
【0053】
また、高級脂肪酸系溶剤としては、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0054】
芳香族炭化水素系溶剤としては、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等が挙げられる。
【0055】
溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
本発明のスクリーン印刷機は、機内の湿度を調整する湿度調整器を備えるものであるため、溶剤が揮発し、版上の印刷パターン領域19、特にスキージ走査領域及びスクレッパ走査領域からはみ出したペーストが乾燥することを抑制し、ペースト表面が部分的に凝固するのを防ぐことができる。従って、このはみ出したペーストを作業者が中央部に掻き寄せて集めて再度印刷を行っても、版上のペーストの粘度が局所的に高くなってしまうことがなく、印刷したペーストの太りあるいは擦れが生じにくくなる。なお、
図2中には、連続印刷中の印刷パターン領域外のペースト堆積領域20を模式的に示している。
【0057】
ここで、湿度と溶剤の揮発との間の関係について説明する。機内の湿度を調整することにより、溶剤の揮発が抑制される理由は完全に解明はされていないが、恐らく、以下に示すメカニズムによるものであると考えられる。ペースト中の、水より高沸点の溶媒に対しヘンリーの法則を適用すれば、周囲の水の分圧に比例した量の水が溶媒(ペースト)中に溶け込むと考えられる。溶け込んだ水の量に応じてペースト粘度が変化する、すなわち、高湿度下ではペーストは緩くなり、この結果、かすれ、断線や粘度低下によるダレの頻度が低下し、一定幅の線を印刷可能となる。従って、本発明により太陽電池の電極を形成する場合は、低特性の太陽電池の発生を抑制でき、変換効率の平均値が向上する。なお、上記のように溶剤の揮発が抑制される理由は完全に解明はされていないが、いずれにしても湿度と溶剤の揮発との間に相関があることは明らかであり、本発明は溶剤の種類によらずに実施可能である。以上のように、相対湿度よりも、絶対湿度ないし露点温度を制御することが重要と考えられる。
【0058】
ペースト16は、特に太陽電池の電極を形成する場合は、銀粒子とガラスフリットとワニス等を含む導電性銀ペーストとすることができる。この場合、被印刷物15を半導体基板とすることができる。
【0059】
[スクリーン印刷方法]
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明のスクリーン印刷方法について説明する。
【0060】
本発明のスクリーン印刷方法は、印刷パターンに対応する開口部が設けられたスクリーン製版11と、スクレッパ12と、スキージ13とを備えたスクリーン印刷機10を用い、スクリーン製版11の上面に供給されたペースト16を、スクレッパ12によりスクリーン製版11の開口部に充填した後に、スキージ13によりスクリーン製版11の開口部から被印刷物15の所定位置にペースト16を押し出すことにより、被印刷物15に印刷パターンに対応してペースト16をスクリーン印刷する方法であって、スクリーン印刷する際に、スクリーン印刷機10内の湿度を調整するスクリーン印刷方法である。このようなスクリーン印刷方法であれば、スクリーン製版上のペースト中の水分量を制御することによって、ペーストの印刷性を向上させることができる。特に、スクリーン印刷する際に、スクリーン印刷機10内の湿度を調整することにより、スクリーン印刷機10内の露点温度を8.2〜18.0℃とすることが好ましい。これにより、ペーストの印刷性を更に向上させることができる。
【0061】
スクリーン印刷機10内の湿度は特に限定されないが、好ましくは相対湿度で30%以上65%以下、より好ましくは相対湿度で45%以上55%以下である。このようなスクリーン印刷方法であれば、印刷したペーストのアスペクト比を高くできる。また、ペーストに使用する溶剤の種類等によっても好ましい湿度の範囲を適宜設定できる。
【0062】
スクリーン印刷機10内の湿度を調整する方法は、上記のように、スクリーン印刷機に湿度調整器を設けて湿度を調整する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、板状部材で囲う等の方法により、スクリーン製版11、スクレッパ12、スキージ13等を収納する印刷室を設け、この印刷室内が陽圧になるように、温度及び湿度を調整した空気を印刷室内に送風することができる精密空調機を印刷室外に設置する方法が挙げられる。この場合、印刷室は完全密閉でなくてもよい。
【0063】
スクリーン印刷機10内の温度は特に限定されないが、例えば、20℃以上30℃以下とすることができる。本発明者らの鋭意研究の結果、スクリーン印刷機の印刷機内温度をT(℃)、印刷機内相対湿度をH(%)としたとき、次式で定義されるkは露点温度(℃)に等しく、
【数3】
8.2<k<18.0となるようにすると、印刷が安定することが判明した。
【0064】
k(=露点温度)の導出
下記式(1)
【数4】
で示されるkは以下のようにして導出されたものである。
【0065】
まず、温度Tr(℃)に対する水の飽和蒸気圧Pr(hPa)を双曲線関数で近似すると、15<Tr<40℃において、
【数5】
とできる。この式(2)を変形すると、下記式(3)
【数6】
となる。すなわち、これが、水の分圧がPrのときの露点温度である。温度Tのときの相対湿度H(%)は、分圧Pを用いて、下記式(4)で示される。また、下記式(4)を変形すると、下記式(5)になる。
【数7】
【数8】
このときの露点温度は、上記式(3)のPrに上記式(5)を代入して、
【数9】
となる。従って、温度T、相対湿度Hのときの露点温度は、上記式(1)の右辺で与えられる。
【0066】
スクリーン製版11の開口部の形状は特に限定されないが、長さが156〜8mmの細線状の印刷に対して、本発明の効果は特に有効に発揮される。さらに、スクリーン製版11の開口部の幅は特に限定されないが、例えば、60μm以下とすることができる。スクリーン製版11の開口部の幅の下限は特に限定されないが、例えば、20μmとすることができる。本発明のスクリーン印刷方法であれば、このようなスクリーン製版の開口部の幅が小さいものを用いたとしても、印刷不良が発生しにくくなる。本発明者らの鋭意研究の結果、スクリーン印刷機の印刷機内温度をT(℃)、印刷機内相対湿度をH(%)、印刷物の幅をw(μm)としたとき、次式で定義されるk’は露点温度(℃)に等しく、
【数10】
8.2<k’<18.0となるようにすると、印刷が安定することが判明した。
【0067】
k’の線幅依存項の意味
下記式(7)
【数11】
で示されるk’は、もともとは下記式(8)
【数12】
で示されるものであり、上記式(8)に下記式(9)及び(10)
【数13】
【数14】
で示される近似値を代入したものである。
【0068】
[太陽電池]
次に、上記スクリーン印刷方法を用いた本発明の太陽電池の電極形成方法により電極を形成することができる太陽電池の一例を説明する。
【0069】
前述したように、
図7は、基板としてn型シリコン基板を用いた場合の一般的な太陽電池の断面模式図である。
図7に示すように、太陽電池50は、半導体基板(n型シリコン基板)51に対し、受光面側には受光面拡散層(p型拡散層)52が設けられ、裏面側には裏面拡散層(n型拡散層)53が設けられている。n型拡散層53はBSF(back surface field)層ともいう。p型拡散層52の上には受光面電極55が設けられ、n型拡散層53の上には裏面電極56が設けられている。また、受光面側にSiN(窒化シリコン)等の反射防止膜57が設けられている。この反射防止膜57は、パッシベーション膜として作用することもできる。また、裏面側にもSiN等のパッシベーション膜58を設けることができる。
【0070】
[太陽電池の製造方法]
次に、太陽電池の製造方法を説明し、本発明の太陽電池の電極形成方法を説明する。本発明の電極形成方法は種々の太陽電池に適用することができる。本発明の電極形成方法を適用できる太陽電池は
図7に図示したものに限られず、以下に説明する太陽電池の製造プロセス以外にも適用できる。
【0071】
ここで、
図7に示す太陽電池の製造工程を説明する。まず、半導体基板51を用意する。この半導体基板51は、単結晶又は多結晶シリコン等からなり、p型、n型いずれでもよいが、ボロン等のp型の半導体不純物を含み、比抵抗は0.1〜4.0Ω・cmのp型シリコン基板が用いられることが多い。大きさは100〜156mm角、厚みは0.05〜0.30mmの板状のものが好適に用いられる。以下、n型シリコン基板を用いた太陽電池の製造方法を例にとって説明する。
【0072】
n型シリコン基板51を用意した後、太陽電池の受光面となるn型シリコン基板51の表面に、例えば酸性溶液中に浸漬してスライス等による表面のダメージを除去してから、更にアルカリ溶液で化学エッチングして洗浄、乾燥することで、テクスチャとよばれる凹凸構造を形成する。凹凸構造は、太陽電池受光面において光の多重反射を生じさせる。そのため、凹凸構造を形成することにより、実効的に反射率が低減し、変換効率が向上する。
【0073】
その後、例えばBBr
3等を含む、850〜1000℃の高温ガス中にn型シリコン基板51を設置し、n型シリコン基板51の全面にボロン等のp型不純物元素を拡散させる気相拡散法により、シート抵抗が30〜300Ω/□程度のp型拡散層52を受光面に形成する。なお、p型拡散層を気相拡散法により形成する場合には、n型シリコン基板の受光面だけでなく、裏面及び端面にもp型拡散層が形成されることがある。この場合には、このp型拡散層を残す必要がある受光面を耐酸性樹脂で被覆したp型シリコン基板をフッ硝酸溶液中に浸漬することによって、裏面及び端面に形成された不要なp型拡散層を除去することができる。その後、例えば希釈したフッ酸溶液等の薬品に浸漬させることにより、拡散時にn型シリコン基板の表面に形成されたガラス層を除去し、純水で洗浄する。
【0074】
その後、850〜1000℃の酸素ガス中にn型シリコン基板51を設置し、n型シリコン基板51の全面を熱酸化し、1000Å程度の熱酸化膜を形成する。次に、p型拡散層を残す必要がある受光面を耐酸性樹脂で被覆し、n型シリコン基板51をフッ酸溶液中に浸漬することによって、裏面に形成された熱酸化膜を除去することができる。ここで、形成された受光面側の熱酸化膜は、n型不純物拡散におけるバリア膜として機能する。
【0075】
その後、例えばPOCl
3等を含む、850〜1000℃の高温ガス中にn型シリコン基板51を設置し、n型シリコン基板51の裏面にリン等のn型不純物元素を拡散させる気相拡散法により、シート抵抗が30〜300Ω/□程度のn型拡散層53を裏面に形成する。その後、例えば希釈したフッ酸溶液等の薬品に浸漬させることにより、拡散時にn型シリコン基板の表面に形成されたガラス層を除去し、純水で洗浄する。
【0076】
なお、n型拡散層53及びp型拡散層52を形成する方法は、上記気相拡散法に限定されず、n型又はp型の不純物を含む塗布剤を基板に塗布して熱処理する方法(塗布拡散法)を用いることもできる。
【0077】
次に、プラズマエッチングによって基板側面を接合分離する。このプラズマエッチングによる接合分離は、n型不純物元素の拡散時にn型シリコン基板の表面に形成されたガラス層の除去前に行ってもよいし、除去後に行ってもよい。
【0078】
更に、上記n型シリコン基板51の受光面側に反射防止膜兼パッシベーション膜57を、及び裏面側にパッシベーション膜58を形成する。これらの膜は、例えばSiN等からなり、例えばSiH
4とNH
3との混合ガスをN
2で希釈し、グロー放電分解でプラズマ化させて堆積させるプラズマCVD法等で形成される。この反射防止膜兼パッシベーション膜57は、n型シリコン基板との屈折率差等を考慮して、屈折率が1.8〜2.3程度になるように形成され、厚み500〜1000Å程度の厚みに形成され、n型シリコン基板の表面で光が反射するのを防止して、n型シリコン基板内に光を有効に取り込むために設けられる。また、このSiNは、p型拡散層に対してパッシベーション効果があるパッシベーション膜としても機能し、反射防止の機能と併せて太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
【0079】
次に、本発明の太陽電池の電極形成方法を用いて電極を形成する。本発明の太陽電池の電極形成方法は、上記本発明のスクリーン印刷方法を用いて、半導体基板51の少なくとも一方の主表面に、上述のペースト16をスクリーン印刷し、該スクリーン印刷されたペースト16を乾燥及び焼成することにより、電極を形成する方法である。このような太陽電池の電極形成方法であれば、スクリーン印刷機内の湿度を調整することでスクリーン製版上のペーストの乾燥を防止し、ペースト吐出を安定させることによって、アスペクト比の高い電極を容易に形成することができる。従って、このような太陽電池の電極形成方法を用いれば、高い電気特性及び高い変換効率を有する太陽電池を歩留りよく作製することができる。
【0080】
ペースト16は、例えば、受光面及び裏面にスクリーン印刷することができる。この場合、スクリーン印刷する順番は特に限定されない。この場合、裏面のペースト及び受光面のペーストの焼成は、同時に行うこともできるし、別々に行うこともできる。
【0081】
具体的には、まず、裏面に、例えば銀粒子とガラスフリットとワニス等を含む導電性銀ペーストを本発明のスクリーン印刷方法を用いてスクリーン印刷し、乾燥させる。この際の印刷パターンは特に限定されないが、略平行で基板の両端を結ぶ細線状とすることができる。すなわち、基板サイズによるが、長さ156〜100mmの平行線状パターンとできる。印刷パターンの幅も特に限定されないが、60μm以下とすると本発明の効果が特に発揮され好ましい。しかる後、受光面に、導電性銀ペーストを本発明のスクリーン印刷方法を用いてスクリーン印刷し、乾燥させる。受光面の印刷パターンも裏面同様に適宜設定することができる。この後、各電極用ペーストを500℃〜950℃程度の温度で焼成することで、受光面電極55と裏面電極56とを形成する。このときシリコン基板表面に上記のようにSiN等の膜を形成していても、焼成の際に膜を貫通させて電極形成できる(ファイアースルー)。
【0082】
形成する電極の種類は特に限定されないが、形成する電極をフィンガー電極とし、該フィンガー電極のアスペクト比を0.5以上1.0以下とすることができる。本発明の太陽電池の電極形成方法であれば、印刷したペーストの太りあるいは擦れが生じにくいので、このようなアスペクト比の高いフィンガー電極を容易に形成することができる。なお、本発明により、半導体基板の少なくとも一方の主表面にフィンガー電極を形成するためのペースト及びバスバー電極を形成するためのペーストを同時に印刷し、フィンガー電極及びバスバー電極を形成することもできる。バスバー同時形成の場合は、バスバー本数に応じてフィンガー長さが変化する。バスバー本数は2本から12本程度が好適であり、フィンガー長さは76mm〜8mmとなるが、この長さでも本発明の効果は発揮される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
結晶面方位(100)、15.6cm角200μm厚、アズスライス比抵抗2Ω・cm(ドーパント濃度7.2×10
15cm
−3)リンドープn型単結晶シリコン基板を、水酸化ナトリウム水溶液に浸してダメージ層をエッチングで取り除き、水酸化カリウム水溶液にイソプロピルアルコールを加えた水溶液に浸してアルカリエッチングすることでテクスチャ形成を行った。得られたシリコン基板全体を1000℃・1時間熱処理して酸化膜を形成した。次に、受光面の酸化膜をフッ酸等の薬液を用いて除去し、受光面にボロンドーパントを含む塗布剤を塗布した後に、950℃・1時間熱処理を行い、p型拡散層を受光面に形成した。熱処理後、基板に付いたガラス成分はフッ酸溶液等により除去後、洗浄した。
【0085】
再度、シリコン基板全体にシリコン酸化膜を形成し、裏面のシリコン酸化膜をフッ酸等の薬液を用いて除去し、裏面にリンドーパントを含む塗布剤を塗布した後に、900℃・30分熱処理を行い、n型拡散層を裏面全体に形成した。
【0086】
次に、プラズマエッチングによって基板側面を接合分離した。具体的には、拡散熱処理後の両面に拡散層を形成した基板をプラズマやラジカルが受光面や裏面に侵入しないようにスタックし、CF
4ガスを用いたプラズマエッチング処理を行って基板の端面を数マイクロメートル削った。
【0087】
次に、基板に付いたガラス成分を高濃度フッ酸溶液等により除去後、洗浄した。
【0088】
引き続き、ダイレクトプラズマCVD装置を用い、受光面及び裏面に表面保護膜であるシリコン窒化膜を積層した。この膜厚は100nmであった。
【0089】
最後に、温度25℃一定の下、印刷機内の湿度を加湿器によって45%RHに調整し、受光面側及び裏面側にそれぞれ、銀ペースト(ヘレウス株式会社製、SOL 9350A SOLAR CELL PASTE(これは、銀粒子、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール及びその他の添加物を含む))を電極パターン状に印刷し、フィンガー電極パターン状及びバスバー電極パターン状の銀ペーストを形成した。フィンガー開口幅は60μmとした。この銀ペーストの乾燥後、800℃で20分焼成を行い、受光面電極及び裏面電極を形成した。印刷途中でフィンガー電極パターン領域外にはみ出した版乳剤上のペーストを中央に寄せる作業の頻度は印刷500枚毎に行った。
【0090】
(実施例2)
印刷機内の湿度を50%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0091】
(実施例3)
印刷機内の湿度を54%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0092】
(実施例4)
印刷機内の湿度を14%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0093】
(実施例5)
印刷機内の湿度を21%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0094】
(実施例6)
印刷機内の湿度を33%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0095】
(実施例7)
印刷機内の湿度を63%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0096】
(実施例8)
印刷機内の湿度を65%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0097】
(実施例9)
印刷機内の湿度を70%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0098】
表1及び
図3〜
図6に、上記実施例1〜9の方法で、導電性ペーストを印刷して作製した太陽電池それぞれ5000枚ずつの変換効率及び各特性因子の平均値を示す。
図3は、実施例1〜9における印刷機内の相対湿度(%RH)と変換効率Eff(%)の関係を示す図である。
図4は、実施例1〜9における印刷機内の相対湿度(%RH)と開放電圧Voc(mV)の関係を示す図である。
図5は、実施例1〜9における印刷機内の相対湿度(%RH)と短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)の関係を示す図である。
図6は、実施例1〜9における印刷機内の相対湿度(%RH)とフィルファクタ(Fill Factor)(%)の関係を示す図である。また、対応する外観検査での歩留りの調査結果を
図10に示す。断線や電極太りが発生したものを不良とした。
【0099】
【表1】
【0100】
表1及び
図3〜
図6に示すように、本発明のスクリーン印刷方法(実施例1〜9)を用いることで、高い変換効率を有する太陽電池を作製することができる。特に実施例1〜3で良好な結果が得られた。これは、印刷領域からはみ出したペースト表面の水分量の変化による局所的なペースト粘度の増大が抑制されることで、ペーストの安定した吐出量が得られることによるものである。このようなスクリーン印刷方法であれば、上記のように太陽電池の電気特性が向上すると共に、外観検査での歩留りも向上する。一方で、湿度が高くなるにつれ、Jscが低下する傾向があることから、ペースト粘度の低減によるフィンガー幅の太り、すなわちアスペクト比の低下を引き起こさないようにするためには、適度な加湿(実施例1〜3)がより好ましいということがわかる。湿度30%以上65%以下で外観歩留りは高くなった。湿度30%以上では主に断線が発生しにくくなり、湿度65%以下では主に線太りが発生しにくくなったためである。外観の観点からは湿度は30%〜65%が好適である。
【0101】
(比較例)
印刷機内の湿度を調整しない以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。比較例では、湿度のバラツキがあってペーストの吐出量を制御できず、ペーストの印刷性が悪化した。そのため、実施例1と同様の条件(湿度の条件を除く)では、太陽電池を5000枚作製することができなかった。
【0102】
(実施例10)
印刷機内の温度を15℃、湿度を14〜90%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0103】
(実施例11)
印刷機内の温度を35℃、湿度を14〜54%RHに調整したこと以外は実施例1と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0104】
(実施例12)
フィンガー開口幅を40μmとした以外は実施例1〜9と同様の工程を行って太陽電池を作製した。
【0105】
実施例1〜12の結果をあわせて
図11に示す。低温では高湿で、高温では低湿で変換効率が高くなっている。また、線幅が小さいと湿度の最適範囲が狭い。
印刷機内温度をT(℃)、印刷機内相対湿度をH(%)、印刷物の幅をw(μm)としたとき、次式で定義されるk’に対し、
【数15】
得られたデータを代入してプロットしなおしたものが
図12である。
図11では、温度が変化すると最適湿度が変化していたが、本発明における露点温度に相当するパラメータk’を導入することで温度、湿度、線幅を一元的に規格化することができた。
図12より、k’の最適値は8.2<k’<18.0とできる。
【0106】
本発明により、スクリーン印刷装置内での湿度を調整することにより、太陽電池の導電性ペースト印刷時のペーストの吐出量が安定し、高い変換効率を有する太陽電池が作製可能であることが示された。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。