特許第6879914号(P6879914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879914
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】天然炭水化物からの微多孔質炭素吸着剤
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20210524BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20210524BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210524BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210524BHJP
   F17C 11/00 20060101ALN20210524BHJP
   C01B 32/336 20170101ALN20210524BHJP
   C01B 32/342 20170101ALN20210524BHJP
【FI】
   C01B32/05
   B01J20/20 A
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   !F17C11/00 C
   !C01B32/336
   !C01B32/342
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-529980(P2017-529980)
(86)(22)【出願日】2015年8月22日
(65)【公表番号】特表2017-532283(P2017-532283A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015046435
(87)【国際公開番号】WO2016032915
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月15日
(31)【優先権主張番号】62/041,057
(32)【優先日】2014年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペトリューシカ, メリッサ エー.
(72)【発明者】
【氏名】スターム, エドワード エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン, ショーン エム.
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3592636(JP,B2)
【文献】 国際公開第03/068386(WO,A1)
【文献】 特開2005−047724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
B01J 20/00−20/34
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解炭素吸着剤であって、
天然に存在する炭水化物源物質に由来すること;
0.50g/cc〜1.40g/ccの範囲内の片密度;
750m/gmより大きいN BET表面積;および
21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量
により特徴付けられ、
天然に存在する炭水化物源物質が、デンプン又はマルトデキストリンであり、
熱分解炭素吸着剤が活性化型であり、かつバインダーレスである、
熱分解炭素吸着剤。
【請求項2】
粒状形態の、請求項1に記載の熱分解炭素吸着剤。
【請求項3】
モノリス形態の、請求項1に記載の熱分解炭素吸着剤。
【請求項4】
ガス供給パッケージ中のガス貯蔵媒体としての、請求項1に記載の熱分解炭素吸着剤。
【請求項5】
請求項1に記載の熱分解炭素吸着剤を保持するガス供給容器を含むガス供給パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年8月23日に出願された、「天然炭水化物からの高容積ガス貯蔵容量微多孔質モノリス」についての米国仮特許出願第62/041057号の優先権の利益を米国特許法第119条の下で主張するものである。米国仮特許出願第62/041057号の開示は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
開示の分野
本発明は、概して熱分解炭素材(carbon pyrolyzate material)に関し、より詳細には炭素吸着剤、例えば再生可能な天然源から調製される高純度微多孔質の炭素吸着剤、そのような炭素吸着剤を製造する方法、並びにそのような熱分解炭素材を利用するシステム及びプロセスに関する。そのようなシステム及びプロセスは、例えば天然ガス車両用の天然ガスのための、又は半導体製品、フラットパネルディスプレイ、ソーラーパネル等の製造用のプロセスガスを供給するための、又は吸着剤ベースの加熱冷却システム及びプロセスのための、又は電気化学電池、ガス捕捉、ガス隔離、ガス分離等を伴うシステム及びプロセスにおける使用のための流体貯蔵分配システム及びプロセスを含み得る。
【背景技術】
【0003】
多くの高圧ガスのパッケージング、貯蔵、輸送、及び使用は、固有の物理的危険又は窒息の危険に加えて、引火性、毒性、自然発火性、及び爆発性の潜在的なリスクによって複雑である。
【0004】
これらのリスク及び関連する危険に対処するために、中に有害ガスを貯蔵し、そこから使用のためにそのガスを分配条件下で供給する特殊ガスパッケージの安全性を高めるために様々なアプローチが採られてきた。
【0005】
そのようなアプローチの一つは、ガスが可逆的に吸着される物理吸着剤を保持するガス貯蔵分配容器の提供を伴い、ガスは低い圧力、例えば大気圧より低い圧力で前記吸着剤に貯蔵される。そのようなガスの低圧貯蔵は、容器の輸送及び運搬中の放出又は露出の可能性を最小限に抑え、業界にとって非常に安全で信頼性の高い技術であることが証明されている。そのようなタイプの容器は、SDS(登録商標)(米国マサチューセッツ州ビルリカのATMI/Entegris、Inc.)の商標名で、例えば水素化物、ハロゲン化物、及び有機金属ガスのイオン注入のための格納用に半導体製造業界で広く製品化されている。そのような製品のSDS3(登録商標)ラインは、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PMA(ポリアクリル酸メチル)等の高純度合成ポリマーの制御された熱分解及び活性化に由来する、高密度で高容量のモノリス微多孔質炭素吸着剤を物理吸着剤として使用する。BrightBlack(登録商標)(米国マサチューセッツ州ビルリカのATMI/Entegris、Inc.)の商標名で商業的に入手可能なこのような特殊な炭素吸着材は、低エネルギーコストで目的のガスの可逆的物理吸着に対応する多孔性を特徴とする。
【0006】
米国及びその他の国々は、水圧破砕法(フラッキング)などの新しい掘削技術やその他の抽出技術が開発され、商業的に展開されるにつれて、国内の燃料需要に対して天然ガス(天然源からのメタン)をますます利用している。安価な天然ガスの出現の結果、軽負荷エンジン、小型車両、芝刈り機、フォークリフト、及び重負荷トラックの輸送燃料として天然ガスを利用するための取り組みが増えている。実際、クラス8の車(Volvo、Mack、Freightliner等)のメーカーの大部分は、すでに圧縮天然ガス(CNG)燃料システムを搭載したトラックを商品化している。今後10年間で、天然ガスの輸送利用は20%以上増加すると予想されている。
【0007】
一般に、圧縮天然ガスシステムは、搭載される車両に大きなコスト追加となる傾向がある。これは、タンク及び関連する圧縮装置が組み立てるのに本質的に費用がかかり、また、25mPa(3600psi以上)程度の圧力を伴う高圧条件下で作動するのにも費用がかかるためである。そのような高圧天然ガスは、道路や高速道路だけでなく、給油所でも大きな潜在的なリスクをもたらす。
【0008】
したがって、経済的に製造され、かつ天然ガスが収着的に在庫に保持され、また天然ガスが分配条件下で安全かつ効率的な方法で容易に脱着される高容量で高効率の天然ガス貯蔵媒体を提供することができる吸着剤を提供することは、当該技術分野において大きな進歩となるであろう。そのような吸着剤の提供は、天然ガスを車両用及び他の用途のための商品燃料として利用するための現在の取り組みを大きく前進させるであろう。
【0009】
類似の考察は、半導体製品、フラットパネルディスプレイ、ソーラーパネル等の製造用のプロセスガスを供給するガス供給パッケージといった用途のための吸着剤、吸着剤ベースの加熱冷却システム及びプロセスのための吸着剤、並びに電気化学電池、ガス捕捉、ガス隔離、ガス分離等を伴うシステム及びプロセスにおける使用のための吸着剤にも関係する。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、一般に、例えば車両燃料利用などの用途及び天然ガスの可逆的吸着貯蔵が有利であるその他の実施における天然ガスの貯蔵分配のための有用性を有する炭素吸着剤、半導体製品、フラットパネルディスプレイ、ソーラーパネル等の製造用のプロセスガスを供給するための有用性を有する炭素吸着剤、並びに炭素吸着剤ベースの加熱冷却システム及びプロセスにおける使用と、電気化学電池、ガス捕獲、ガス隔離、ガス分離等を伴うシステム及びプロセスにおける使用のための炭素吸着剤を含む、熱分解炭素材に関する。
【0011】
一態様において、本開示は、再生可能な天然源から調製された高純度微多孔質炭素吸着剤、そのような炭素吸着剤を製造する方法、及びそのような炭素吸着剤を利用する吸着剤ベースのガス貯蔵分配システム並びにプロセスに関する。
【0012】
別の態様において、本開示は、炭素吸着材、そのような炭素吸着材を組み込んだガス貯蔵容器及びシステム、並びにそのような材料、容器、及びガス貯蔵供給システムを製造及び使用する方法に関する。
【0013】
さらに別の態様において、本開示は、天然に存在する炭水化物源物質(carbohydrate source material)の熱分解に由来する微多孔質吸着性炭素に関する。
【0014】
更なる態様において、本開示は、本開示の高密度モノリス又は粒状熱分解炭素を含むガス貯蔵供給容器に関する。
【0015】
一つの特定の態様において、本開示は、
天然に存在する炭水化物源物質に由来;
ASTM D2866−11の手順で決定して、1%未満の総灰分量;
0.50g/ccから1.40g/ccの範囲内の片密度;
750m2/gmより大きいN BET表面積;及び
21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量
を特徴とする熱分解炭素に関する。
【0016】
別の特定の態様において、本開示は、
天然に存在する炭水化物源物質に由来;
モノリス又は粒状形態;
ASTM D2866−11の手順で決定して、1% 未満の総灰分量;
0.50g/ccから1.40g/ccの範囲内の片密度;
750m2/gmより大きいN BET表面積;及び
21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量
を特徴とする熱分解炭素に関する。
【0017】
本開示のさらなる態様は、本開示の吸着剤を保持するガス供給容器を含むガス供給パッケージに関する。
【0018】
本開示のなおさらなる態様は、前駆体炭水化物物質をニアネットシェイプのプリフォームに圧縮することと、前記炭水化物を不活性ガス環境下で制御された方法で加熱し、炭素に熱分解することと、任意選択的にその炭素を(i)化学的活性化及び(ii)物理的活性化のうちの一又は複数により活性化して表面積を増加させることとを含む、モノリス又は粒状炭素吸着剤の製造方法に関する。
【0019】
本開示の他の態様、特徴、及び実施態様は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】プロセスラインに配置された、本開示の一実施態様による熱分解炭素材を利用して該ラインを流れるガスの浄化のためのインラインガス浄化器の略図である。
図2】本開示の別の実施態様による、モノリス炭素吸着剤を利用する貯蔵供給システムの略図である。
図3】ガス貯蔵分配容器を含むガス供給パッケージの斜視横断面図であり、本開示のさらなる実施態様による粒状炭素吸着剤が入った、前記容器の内部構造を示す。
図4】本開示の一実施態様による、熱分解炭素電極と電解質との間にEDLC構造を形成する、熱分解炭素電極の配置を含む電気化学エネルギーデバイスの略図である。
図5】直接圧縮により形成され、粒子の良好な粘着を示し、1.1g/ccを超える原材料密度を有する天然炭水化物のタブレットの写真である。
図6】1.25g/ccを超える片密度を有する、熱分解のために炉に充填される際にブレンドされ固められた糖タブレットの写真である。
図7】1.32g/ccを超える測定密度を有する強い自己粘着性の多糖類の円筒型ブロックの写真である。
図8】種々の天然デンプン源から圧縮された様々なサイズのディスクを示す写真である。
図9】1.25g/ccを超える密度を有する熱分解炭素に熱変換された、いくつかのデンプンディスクの写真である。
図10】0.95g/ccの平均片密度を有する熱分解された糖タブレットの写真である。
図11】プリフォーム及び制御された熱分解を経て調製された、様々な形状及びサイズの成形後の熱分解炭素吸着剤断片を示す写真である。
図12】隣接する熱分解炭素吸着物品が互いに接触するように配置することができる空間充填形状を有し、そのため、熱分解炭素吸着剤が吸着親和性を有するガスを保持するのに適した吸着剤容器の密閉容積内の吸着剤密度を最大にするために熱分解炭素吸着物品の対応するアレイが用いられ得る、熱分解炭素吸着物品の一実施態様の写真である。
図13】1.29g/ccの密度、1300sq.m/gの表面積、及び116V/Vのメタン容量を有する、圧縮ジャガイモデンプン由来の固められた炭素吸着モノリスの切断片のSEM顕微鏡写真である。
図14図13と同じ、1.29g/ccの密度、1300sq.m/gの表面積、及び116V/Vのメタン容量を有する、圧縮ジャガイモデンプン由来の固められた炭素吸着モノリスの表面のSEM顕微鏡写真である。
図15図13及び図14の活性炭素吸着剤モノリスにおける微細気孔の高倍率SEM画像である。
図16】一実施態様による、ブレンドされたデンプンとマルトデキストリンの直接圧縮から調製された熱分解炭素吸着ディスクの写真である。
【0021】
本開示は概して、熱分解炭素材に関する。特定の態様において、本開示はより具体的には、天然ガスの可逆的吸着に有効に用いられる炭素吸着剤などの炭素吸着剤に関し、また、ガス貯蔵条件下で天然ガスを収着可能で、かつそこから天然ガスを分配及びその後の使用のために容易に脱着することができる天然ガス貯蔵媒体を提供する。それゆえ、そのような炭素吸着剤は、天然ガスを天然ガスの使用に適合するエンジン内での燃焼に利用する車両用燃料供給用途に有用性を有する。他の態様において、本開示は、半導体製品、フラットパネルディスプレイ、ソーラーパネル等の製造用のプロセスガスを供給するための有用性を有する炭素吸着剤、吸着剤ベースの加熱冷却システム及びプロセスにおける使用のための炭素吸着剤、並びに電気化学電池、ガス捕捉、ガス隔離、ガス分離等を伴うシステム及びプロセスにおいて有用性を有する熱分解炭素材に関する。
【0022】
上記の車両用途において、本開示の炭素吸着剤は、前述の25mPa(3600psi以上)程度の圧力で作動するシステムである圧縮天然ガス(CNG)システムと比較して、例えば3.5mPa(約500psi)程度の圧力のようなかなり低い圧力で相当な量の天然ガスを保持することを可能にする。そのような大規模な圧力削減の結果として、本開示の炭素吸着貯蔵分配システムは、貯蔵タンク及び関連する圧縮部品のコストを大幅に削減させ、CNGシステムと比較して、天然ガス供給システム作動の安全性の相応の向上を可能にする。
【0023】
本開示は、その特徴、態様、および実施態様に関して本明細書で様々に述べられているように、特定の実施において、そのような特徴、態様、及び実施態様の一部又はすべてを含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になるものとして構成できるのみならず、その要素及び構成要素は本開示の様々なさらなる実行形態を構成するように集約される。したがって、本開示では、様々な並べ替えおよび組み合わせでの本開示のそのような特徴、態様、および実施態様又はそれらから選択されるもの(一又は複数)も本開示の範囲内として企図される。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
【0025】
単数形(「a」及び「the」)は、文脈が明らかに他を指さない限り複数形を含む。
【0026】
本開示の熱分解炭素に関する用語「高純度」は、熱分解炭素がASTM D2866−11の手順で決定される1%未満の総灰分量により特徴つけられることを意味する。
【0027】
用語「炭水化物」は、炭素(C)、水素(H)、及び酸素(O)原子から構成される大きな生体分子又は高分子を指す。そのような分子は、2:1の水素:酸素原子比、及びXがYとは異なるC(HO)の実験式を有する。技術的には、このような分子は炭素の水和物である。一般に、用語「炭水化物」は、「糖類」と同義語とみなされる。炭水化物には、四つの化学的分類、すなわち単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖がある。
【0028】
用語「糖」は、炭素、水素、及び酸素原子で構成された甘くて短鎖の可溶性炭水化物の一般名である。例としては、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース(デキストロース)、ラクトース、マルトース、マンノース、スクロース、キシロース、及びそれらの誘導体を含む。
【0029】
用語「単糖」は、単糖、すなわち炭水化物の最も基本的な単位又はビルディングブロックを指す。例としては、アラビノース、デオキシリボース、フルクトース(又はレブロース)、ガラクトース、グルコース(又はデキストロース)、グリセルアルデヒド(又はグリセロール(glyceral))、マンノース、リボース、及びキシロースを含む。
【0030】
用語「二糖類」は、二つの単糖が水分子を脱離して縮合反応を起こすときに形成される炭水化物を指す。例としては、ラクトース、マルトース、スクロース、セロビオース、及びメリビオースを含む。
【0031】
用語「オリゴ糖」は、少数(典型的には3から9)の単糖(単糖類)を含有するサッカリドポリマーを指す。例としては、セロデキストリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトデキストリン、マンナンオリゴ糖、及びラフィノース等を含む。
【0032】
用語「多糖」は、グリコシド結合によって一緒に結合された単糖単位の長鎖によって構成される高分子炭水化物分子を指す。例としては、寒天、アミロペクチン、アミロース、アラビノキシラン、セルロース、キチン質、キトサン、デキストラン、デキストリン、フルクタン、ガラクトマンナン、グルカン、グリコーゲン、グアーガム、ヘミセルロース、レンチナン、リケニン、マンナン、天然ガム、ペクチン、多糖類ペプチド、セファロース、(例えばアマランサス、アロールート、バナナ、キャッサバ、ヤシ、トウモロコシ、エンドウマメ、プランテン、ジャガイモ、キノア、米、モロコシ、タピオカ、小麦等の)デンプン、ウェランガム、キサンタンガム、キシラン等を含む。
【0033】
用語「セルロース系」は、高分子量の直鎖状高分子炭水化物である緑色植物、木材、木の実の殻、果実の種、藻類等の組織の繊維質細胞壁を含む、(C10式の天然に存在する有機ポリマーを指す。セルロース系物質は、木材パルプ、おがくず、新聞用紙、ヤシ殻、オリーブの種、モモの種、アンズの種、ビスコース、ビスコースレーヨン、コットン、コットンリンター、アルガンの木の実の殻、マカダミアナッツの殻、アセチルセルロース、バクテリアセルロース、リグニン、サンザシの種、クルミの殻、ナツメヤシの種、籾殻、コーヒーの種子の内果皮、コーヒー滓、バガス、モロコシの殻粒、竹の木、マンゴーの種、アーモンドの殻、藁、トウモロコシの穂軸、サクランボの種、及びブドウの種を含む。
【0034】
用語「マクロ細孔」は、50nm超のサイズの細孔を指す。
【0035】
用語「メソ細孔」は、2nmから50nmのサイズの細孔を指す。
【0036】
用語「マイクロ細孔」は、2nm未満のサイズの細孔を指す。
【0037】
用語「ウルトラマイクロ細孔」は、0.7nm未満のサイズの細孔を指す。
【0038】
用語「モノリス」は、バルク形態の熱分解炭素材を指し、ビーズ、ペレット、押出成形物、粉末、細粒若しくは子等の非モノリス熱分解炭素の形態とは区別され、ブロック、煉瓦、円筒、パック、ロッド又はその他の幾何学的に規則正しいか若しくは不規則なバルク形態を有する。本開示のモノリス熱分解炭素は、モノリス熱分解炭素製品に実質的に相当するサイズ及び形状を有する「ニアネットシェイプ」の熱分解可能な前駆体プリフォームの熱分解によって緻密な固体物品として有利に形成される。得られるバルク形態の微多孔質炭素物品は、1片の吸着剤として、又は多数片のスタックとして(例えばモノリス熱分解炭素が円盤状である場合、多数のそのような円盤状本体がスタック内で連続して面接触で当接するように垂直に積層される)、又はバルク形態の熱分解炭素物品がそれらのそれぞれの表面の相当な部分にわたって互いに接触し、それによりビーズ、ペレット、押出成形物、粉末、細粒又は子の吸着剤で充填されている吸着剤容器中で観察される高い空隙容量を排除するような他の配置として使用することができ、その容器中にはそのようなビーズ、ペレット、押出成形物、粉末、細粒又は子が入った空間容積の収着能力低下を招いた相当の間隙容積及び総空隙が存在する。種々の特定の実施態様において、モノリス熱分解炭素は、その(x、y、z)寸法の各々が少なくとも1cmである寸法特性を有することができ、例えば各(x、y、z)寸法が1cmから25cm又はそれ以上の範囲である。
【0039】
「片密度(piece density)」という用語は、グラム/立方センチメートルの単位で表される、1片の固体吸着剤の単位体積当たりの質量を指す。
【0040】
熱分解可能な前駆体物質(precursor material)から形成される熱分解炭素に関して使用される用語「バインダーレス」は、熱分解性前駆体組成物がその総重量に対して5重量%未満、好ましくは2重量%のバインダー剤を含有し、最も好ましくはいかなるバインダー剤も欠いていることを意味する。したがって、バインダーレス熱分解炭素は、プレス成形又は他の成形作業によってニアネットシェイプの形態で形成され、かつ前駆体物質の熱分解中及びその後でそのニアネットシェイプの形状を保持することができるほど十分に粘着性である前駆体物質から形成され得る。この点に関して、粉砕及びパッケージングなどの標準的な加工作業から生じる残留吸着種、例えば水又は水分は、原料(raw source material)の一部であって、原料の添加剤又はバインダー剤成分ではないと考えられる。
【0041】
用語「熱分解」は、前駆体物質がほぼ炭素に変換される条件下での前駆体物質の熱分解を指す。
【0042】
「天然に存在する炭水化物源物質」という用語は、炭水化物、サッカリド、糖、デンプン等を指すが、セルロース系物質及び石油ベース又は石油由来の物質は除外する。
【0043】
熱分解して熱分解炭素を形成する熱分解可能な前駆体物品に関する用語「ニアネットシェイプ」は、前駆体物品が熱分解から得る熱分解炭素製品(product carbon pyrolyzate)と変わらない形状を有することを意味する。熱分解製品物品(pyrolyzed product article)に関連する熱分解可能な前駆体物品のそのような性質は、合理的に一貫した形状因子が前駆体物品から熱分解炭素吸着剤製品への加工中に維持される限りは、熱分解炭素の加工における物質の除去に効果的な広範な切断、研削などの必要性を排除するため、非常に有利である。
【0044】
一態様において、本開示は、
天然に存在する炭水化物源物質に由来;
ASTM D2866−11の手順で決定して、1%未満の総灰分量;
0.50g/ccから1.40g/ccの範囲内の片密度;
750m2/gmより大きいN BET表面積;及び
21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量
を特徴とする熱分解炭素に関する。
【0045】
様々な態様において、本開示は、対応する前駆体物質の熱分解物として形成される高純度炭素吸着剤を意図する。
【0046】
一態様において、本開示は、
天然に存在する炭水化物源物質に由来;
モノリス形態;
ASTM D2866−11の手順で決定して、1%未満の総灰分量;
0.50g/ccから1.40g/ccの範囲内の片密度;
750m2/gmより大きいN2 BET表面積;及び
21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量
を特徴とする熱分解炭素に関する。
【0047】
そのような吸着剤は、二糖、多糖又は他の炭水化物物質を含む天然に存在する炭水化物源物質によって特徴付けることができる。他の実施態様において、天然に存在する炭水化物源物質は、ラクトース、デンプン、天然ガム、キチン、キトサン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、マルトデキストリン、及びこれらの混合物からなる群より選択される物質を含む。
【0048】
熱分解炭素吸着剤は、活性化型であってもよく、例えばこの場合、活性化型,が化学的及び/又は物理的活性化により活性化されている。一つの特定の実施態様において、活性化型は、酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、及び炭酸からなる群より選択される酸との反応により化学的に活性化されている。他の実施態様において、活性化型は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム又はアンモニウムの水酸化物との反応により化学的に活性化されている。さらに他の実施態様において、活性化型は、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンと混合しているか又は純粋なガス流であるCO、空気又は水蒸気への曝露でのバーンオフにより、600℃から1200℃までの範囲の温度で物理的に活性化されている。特定の実施態様において、活性化型は、不活性ガスと混合しているか又は純粋なガス流であるCO、空気又は水蒸気への曝露でのバーンオフにより、600℃から1200℃までの範囲の温度で物理的に活性化されている。
【0049】
特定の実施態様における本開示の熱分解炭素吸着剤は、次の特性の任意の一又は複数によって特徴付けられる:ASTM D2866−11の手順によって決定される、0.5%未満の総灰分量を有する;0.55g/ccから1.35g/ccの片密度を有する;0.60g/ccから1.30g/ccの片密度を有する;前記吸着剤がバインダーレスである;750から3000m2/グラムの範囲のN BET表面積を有する;0.3nmから2.0nmの範囲のサイズを有するマイクロ細孔が細孔容積の少なくとも40%を占める;0.3nmから2.0nmの範囲のサイズを有するマイクロ細孔が細孔容積の少なくとも70%を占める;0.3nmから2.0nmの範囲のサイズを有するマイクロ細孔が細孔容積の40%から90%又はそれ以上を占める;21℃、35barの圧力で100V/Vを超えるメタン吸着容量を有する;21℃、35barの圧力で125V/Vを超えるメタン吸着容量を有する;21℃、35barの圧力で140V/Vから220V/Vの範囲のメタン吸着容量を有する;35barから1barの間で少なくとも75V/V、例えば75から125V/Vの範囲のメタン吸着作業/デルタ容量(working/delta capacity)を有する。
【0050】
他の実施態様において、本開示の熱分解炭素吸着剤は、水素化物、ハロゲン化物、有機金属、水素、CO、CO、メタン、C−C炭化水素(例えばエタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン)、天然ガス、及びこれらの二つ以上の混合物からなる群より選択されるガスを吸着していてもよい。
【0051】
特定の実施態様において、吸着されるガスは、アルシン、ホスフィン、ゲルマン、ジボラン、シラン、ジシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、メタン、C−C炭化水素(例えばエタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン)、アセチレン、水素、スチビン、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、四フッ化二ホウ素、三フッ化窒素、四フッ化ゲルマニウム、四フッ化ケイ素、三フッ化ヒ素、五フッ化ヒ素、ホスフィントリフルオリド(phosphine trifluoride)、五フッ化リン、フッ素、塩素、フッ化水素、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、アレン、スタンナン、トリシラン、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、フッ化カルボニル、一酸化二窒素、天然ガス、前述のものの同位体濃縮型、及び前述のものの二以上の組み合わせからなる群より選択されるガスを含む。
【0052】
さらなる態様における開示は、本明細書に様々に記載された本開示の吸着剤を保持するガス供給容器を含むガス供給パッケージに関する。特定の実施態様における容器は、容器の内部容積1cc当たり少なくとも0.1gの吸着剤である吸着剤充填物、好ましくは容器の内部容積1cc当たり少なくとも0.6gの吸着剤である吸着剤充填物、より好ましくは容器の内部容積1cc当たり少なくとも0.65gの吸着剤である吸着剤充填物、最も好ましくは容器の内部容積1cc当たり少なくとも0.75gの吸着剤である吸着剤充填物、例えば容器の内部容積1cc当たり0.5から0.95グラム又はそれ以上の吸着剤である吸着剤充填物により特徴付けられる。
【0053】
別の特定の実施態様では、本開示は、吸着剤上に吸着された天然ガスを有する、本明細書で様々に記載されるガス供給パッケージに関する。
【0054】
別の態様において、本開示は、前駆体炭水化物物質をニアネットシェイプのプリフォームに圧縮することと、前記炭水化物を不活性ガス環境下で制御された方法で加熱し、炭素に熱分解することと、任意選択的にその炭素を(i)化学的活性化及び(ii)物理的活性化のうちの一又は複数により活性化して表面積を増加させることとを含む、モノリス炭素吸着剤の製造方法に関する。
【0055】
吸着された天然ガス(ANG)の貯蔵供給の高レベルの実用性を得るために、本開示の熱分解炭素吸着剤は、高密度のモノリス形状の空間充填型材として有利に製造され、ガスの高い重量貯蔵密度(貯蔵量/グラム)および体積貯蔵密度(貯蔵量/リットル)の両方を提供する。熱分解炭素吸着剤は、微多孔質であり、有利には、適用のための標的吸着ガスに適合した実効細孔直径を有する気孔を含む。その多孔度は、好ましくは、メソ細孔(2nmより大きいが50nm未満の直径を有する細孔)及び/又はマクロ細孔(50nmより大きい細孔)が細孔容積の60%未満であることを含む。より好ましくは、そのような細孔(メソ細孔+マクロ細孔)の割合が45%未満であり、最も好ましくは、そのような細孔(メソ細孔+マクロ細孔)の割合が30%未満である。
【0056】
本開示の熱分解炭素吸着剤は、35bar(508psig)及び21℃で少なくとも100V/V、好ましくは35bar(508psig)及び21℃で110V/V超、さらに好ましくは35bar(508psig)及び21℃で125V/V超、最も好ましくは35bar(508psig)及び21℃で175V/V超、例えば35bar(508psig)及び21℃で100から250V/Vの範囲、さらに好ましくは35bar(508psig)及び21℃で140から220V/Vの範囲の高いメタン吸着容量を有する。熱分解炭素吸着剤はまた、吸着剤が吸着及び脱着中の熱効果を制御し、かつ温度変化を最小化することを可能にする高い熱容量及び低いメタン吸着熱により、速い吸着/脱着速度を示す。吸着剤は、有利には疎水性を有する。様々な実施態様における吸着剤は、モノリス形態で調製され、本明細書に記載の前駆体物質から様々な形状に成形することができる。種々の実施態様において、熱分解炭素吸着剤は、1.1g/cc以上の密度を示し、疎水性であり、35barの圧力及び21℃の温度で少なくとも170V/Vのメタン容量を有する。そのような種類の熱分解炭素吸着剤は、放熱するために適度な熱容量(例えば1J/g−K程度)及び高い熱伝導率(例えば約0.8W/m−K)を有利に有する。
【0057】
したがって、本開示の熱分解炭素吸着剤は、高密度モノリス形態の高表面積微多孔質炭素吸着剤として提供され得、熱分解炭素吸着剤製品の最終用途に所望される通りに成形され得る。熱分解炭素吸着剤は、天然に存在する豊富な炭素原料から有利に形成される。加工コストを低く維持し、最終製品の純度を保つために、炭素含有量が高く、好ましくは遷移金属、アルカリ又はアルカリ土類金属、ハロゲン化物、塩等の無機汚染物質がないか又は実質的にない天然源が利用される。熱分解炭素は、特定の実施態様において750m/gより大きい表面積、0.8g/ccより高い片密度、及び0.5g/ccより高いかさ密度を含む特性を有する、天然ガスの貯蔵のための低コスト高効率の吸着剤を提供する。
【0058】
本開示の熱分解炭素材は、限定されないが、スクロース及び他の関連する糖(例えばアラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース(デキストロース)、ラクトース、マルトース、マンノース、キシロース、及びそれらの誘導体)並びにデンプン及び多糖を含む種々の前駆体原料から形成され得る。これらの原料は、後続の炭化及び活性化を受ける前に、容易に形成され、又はモノリス形状にプレスされ得る。大半の単糖は、40〜42%の炭素で構成されており、大量かつ高純度、低コストで市販されている。単糖は、自然の力で再生可能である。天然糖の熱分解は、炭化PVDCの構造と類似の構造を有する非グラファイト化硬質炭素を生じる。糖の非酸化的熱分解の副産物は、主に低レベルの二酸化炭素及び/又は一酸化炭素を有する水蒸気である。これらは容易に管理される工程廃液である。
【0059】
糖は、熱分解炭素原料として使用される場合、不活性雰囲気中、任意の適切な温度、例えば少なくとも400℃から1200℃までの温度で熱分解され得る。活性化は、任意の適切な方法で行うことができ、化学的及び/又は物理的活性化技術、例えば(1)室温で熱分解炭素をKOH、LiOH、NaOH、NHOH、NaHCO、(NHSO、HSO、HCl又はHPOと反応させ、続いて加熱し、次いで適切な酸又は塩基中和洗浄/水洗浄濾過及び乾燥による任意の残留活性化化学物質(residual activation chemistry)の除去による化学的活性化、あるいは(2)水蒸気、CO、空気又は他の酸化性ガスへの炭素の高温曝露による物理的活性化、あるいはこれらの様々な技術の任意の組み合わせによって実施することができる。
【0060】
様々な実施態様において、熱分解炭素吸着剤は、内部に該吸着剤がガス貯蔵分配媒体として配置されている容器又は他の格納構造物に対して形状を充填する形態(shape-filling form)である、バインダーレスの高密度炭素モノリスを含む。そのような文脈で使用される場合、用語「高密度」は、熱分解炭素が少なくとも0.50g/cc、好ましくは少なくとも0.70g/cc、最も好ましくは0.75g/cc超、例えば0.50g/ccから1.70g/ccの範囲の片密度を有することを意味する。
【0061】
特定の実施態様では、本開示の熱分解炭素及び炭素吸着剤は、(i)単糖(ii)二糖(iii)オリゴ糖、及び/又は(iv)多糖のうちの一又は複数を含む、天然に存在する炭水化物源物質に由来し得る。
【0062】
例えば、炭素吸着剤は、天然原料に由来し得、少なくとも750m/gm、好ましくは少なくとも900m/g、最も好ましくは1000m/gm超、例えば750m/gから3000m/gの範囲のN BET表面積を有する。
【0063】
様々な実施態様において、本開示の微多孔質炭素吸着材は、細孔容積の少なくとも50%が0.3nmから2.0nmの間のサイズの細孔で構成され、細孔容積の好ましくは少なくとも70%、より好ましくは75%超、例えば95%以上が0.3nmから2.0nmの間のサイズの細孔で構成されてもよい。
【0064】
本開示の他の実施態様は、天然に存在する炭水化物源物質(単数又は複数)に由来するモノリス形態の炭素吸着剤に関し、該炭素吸着剤は21℃及び35barで少なくとも100V/V、好ましくは少なくとも110V/V、さらに好ましくは少なくとも125V/V、例えば140から220V/Vの範囲のメタン吸着容量を有する。
【0065】
他の態様において、本開示は、熱分解炭素吸着剤が入ったガス供給容器に関し、容器内の炭素吸着剤充填密度は、吸着剤の占める容器容積1cc当たり炭素吸着剤が少なくとも0.1g、好ましくは少なくとも0.6g、より好ましくは0.65g、最も好ましくは少なくとも0.75g、例えば0.5gから1.0g又はそれ以上の範囲である。
【0066】
本開示のさらなる態様は、(i)水素化物、(ii)ハロゲン化物、(iii)有機金属、(iv)水素、(v)二酸化炭素、(vi)一酸化炭素、(vii)メタン、(viii)天然ガス、(ix)エタン、(x)エチレン、(xi)プロパン、(xii)プロピレン、(xiii)ブタン、(xiv)ブチレン、及びこれらのガスの二つ以上の組み合わせからなる群より選択されるガスを吸着した天然炭水化物由来炭素吸着剤が入ったガス供給容器に関する。
【0067】
本開示のなおさらなる態様は、アルシン、ホスフィン、ゲルマン、ジボラン、シラン、ジシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、メタン、C−C炭化水素(例えばエタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン)、アセチレン、水素、スチビン、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、四フッ化二ホウ素、三フッ化窒素、四フッ化ゲルマニウム、四フッ化ケイ素、三フッ化ヒ素、五フッ化ヒ素、ホスフィントリフルオリド、五フッ化リン、フッ素、塩素、フッ化水素、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、アレン、スタンナン、トリシラン、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、フッ化カルボニル、一酸化二窒素、天然ガス、前述のものの同位体濃縮型、及び前述のものの二以上の組み合わせからなる群より選択されるガスを吸着した天然炭水化物由来炭素吸着剤が入ったガス供給容器に関する。
【0068】
他の態様において、本開示は、本開示の炭素吸着剤が入った上記の種類の容器(単数又は複数)を組み込んだガス吸着、貯蔵、輸送、及び/又は供給システムに関する。
【0069】
様々な特定の実施態様において、本開示の熱分解炭素は、次のうちの少なくとも一つにより特徴付けられる:天然に存在する炭水化物源物質(単数又は複数)から形成されたこと;モノリス形態を有すること;ASTM D2866−11の手順で決定して、1%未満の総灰分量;0.50g/ccから1.70g/ccのモノリス片の密度;750m/gより大きいN BET表面積;21℃及び35barの圧力で100V/V超、例えば110V/V超、125V/V超又は100から220V/Vの範囲のメタン吸着容量;細孔容積の少なくとも40%、例えば細孔容積の50%超、60%超、70%超又は80%超、90%以上が0.3nmから2.0nmの間の細孔サイズを有するマイクロ細孔で構成される;0.6W/mKを超える熱伝導率;及び35bar21oCから1bar21oCの間で75V/V以上のメタン吸着作業/デルタ容量(メタン吸着作業/デルタ容量は、比較的高圧(35bar)で炭素吸着剤に吸着され得、次に比較的低圧(1bar)で脱着により炭素吸着剤から放出される(いずれも21oCの温度で測定した場合)収着質ガスの体積である)。
【0070】
別の態様における開示は、熱分解の前に4000psi以上、好ましくは5000psiから50000psiの間の圧縮力でニアネットシェイプのプリフォームに圧縮された、天然に存在する炭水化物源物質に関する。
【0071】
さらに別の態様における開示は、600℃から1200℃の範囲の温度に処理して熱分解炭素を得ることによって、固められたニアネットシェイプの炭水化物プリフォームを炭素に熱変換することに関する。
【0072】
さらなる態様における開示は、形成された炭水化物由来熱分解炭素の化学的又は物理的手段による活性化により、その表面積及びマイクロ細孔容積を増大させることに関する。
【0073】
本開示による天然源の炭水化物物質を使用すると、熱分解炭素吸着剤は、比較的高収率、低コスト、高純度、及び最小限の環境破壊で製造することができる。天然ポリマー原料(単数又は複数)の圧縮されたプリフォームを調製することにより、高密度モノリス形態の熱分解炭素吸着剤の製造が可能になる。天然原料、例えば多糖の熱分解は、容易に制御される副生成物をもたらす。窒素又はアルゴンなどの不活性パージガスと組み合わせた蒸気、CO又は空気による高温での物理的活性化を利用して、表面積、かさ密度、及び細孔径分布等の吸着特性を、新たな不純物又は汚染物質を導入することなく、非常に正確に制御することができる。自己接着性(凝集性)前駆体は、高密度、優れた強度及び耐久性、高い熱容量、並びに良好な熱伝導率の吸着物品を達成しながらも、炭素吸着剤の所望の特性を変更する可能性のあるバインダーの使用なしで加工することを可能にする。その結果、高いガス吸着容量と、迅速なガス充填、貯蔵用吸着ガスとの非常に低い化学反応性、並びに輸送安定性及び最大限のガス供給を可能にする吸着中の低発熱と、持続可能な高い使用率及び持続可能なサプライチェーンを可能にするガス供給時の低放熱とを有する固体吸着性炭素を製造することができる。
【0074】
本開示の熱分解炭素吸着剤には上記の様々な特性及び特徴のすべて、並びにそのような特性及び特徴の二つ以上の任意の組み合わせを組み込み得ることが、認識されるであろう。
【0075】
本開示による熱分解炭素は、任意の適切なサイズ、形状、及び形態で提供され得る。例えば、様々な実施態様における熱分解炭素は、粒状の特性であってもよく、特定の実施態様では、粒子が0.8g/cc超の片密度で0.3から4mm範囲のサイズ(直径又は主寸法)か、又はその他の任意の適切な値のサイズ及び密度であってもよい。他の実施態様において、熱分解炭素は、モノリス形態であってもよい。本開示の幅広い実施において有用な炭素熱分解モノリスは、特定の実施態様では、バルク形態として、総レンガ、ブロック、タブレット、及びインゴットの形態を含み得る。種々の実施態様において、熱分解炭素モノリスは、上記寸法のそれぞれが1.5より大きく、好ましくは2センチメートルより大きい3次元(x、y、z)特性を有していてもよい。
【0076】
熱分解炭素の様々な実施態様において、熱分解炭素は、同じ直径の円盤状物品の形態の熱分解炭素吸着モノリスとして提供され、そのような物品をガス貯蔵分配容器内でその上への可逆貯蔵のために垂直スタックに積層することが可能になる。
【0077】
ここで図面を参照すると、図1は、本開示の一実施態様による熱分解炭素材を利用する、プロセスラインを流れるガスの浄化のために前記ラインに配置されたインラインガス浄化器10の略図である。
【0078】
図示されているように、浄化器10は、円筒形の細長い形状の浄化容器12を含み、前記容器は、その第1の端部でガス入口ライン18とガスフロー関係で結合され、その第1の端部とは反対側の第2の端部でガス出口ライン20とガスフロー関係で結合されている。浄化容器12は、その第1及び第2の端部の端壁によって境界を定められた、内部の密閉された内部容積を画定する外接円筒壁14を含む。内部容積には、本開示による粒状熱分解炭素吸着剤が配置される。前記吸着剤はガス入口ライン18から容器12の内部容積を通ってガス出口ライン20に流れるガス混合物の一又は複数の成分に対して選択的吸着親和性を有することから、前記成分は前記浄化器を通って流れるガス混合物から選択的に除去され、前記成分がない浄化ガスが製造される。
【0079】
ガス入口ライン18及びガス出口ライン20は、半導体製造設備内のフロー回路の一部であってもよく、その設備内でガス入口ライン18から前記浄化装置へ流れる前記ガス混合物から選択的に除去可能な成分が浄化されることが望ましい。したがって、該浄化器は、半導体製造設備における特定のガス使用操作において利用されるガスを浄化してもよく、又は該浄化器は、残留有害成分を除去するために使用することができ、そうでなければガスからの危険成分がガスの放出前に設備から流出される。該浄化器は、クリーンルーム及びリソグラフィトラック用途に配置されてもよい。したがって、熱分解炭素吸着材は、粉末、ビーズ、ペレット等の粒状の形態で該浄化器に利用することができる。あるいは、該浄化器の圧力降下が十分に低い場合には、熱分解炭素吸着材をモノリス形態で提供することができる。様々な実施態様でのなおさらなる構成として、熱分解炭素吸着材を担体物質又はバッティング上に設けてガスを吸着材と接触させることができ、そのような接触によって望ましくない成分がそこから吸着除去される。
【0080】
図2は、本開示の別の実施態様による、モノリス炭素吸着剤を利用するガス供給パッケージを含む、貯蔵供給システム200の略図である。
【0081】
図示されているように、貯蔵供給システム200は、貯蔵分配容器204を含み、貯蔵分配容器204は、円筒上のバルブヘッド用の手動アクチュエータ208を含む供給アセンブリの一部を含むバルブヘッド206にその上部で連結されている。そのような手動アクチュエータの代わりに自動バルブアクチュエータ、例えば空気圧バルブアクチュエータ又は他の適切なタイプのアクチュエータを使用することができる。
【0082】
前記バルブヘッドは、全開位置と全閉位置との間を移動可能なバルブ(図示せず)を含み、そのバルブが開いているときに容器204からガスを分配し、又はそのバルブが全閉位置にあるときに容器204に貯蔵されたガスを保持する。前記バルブが分配のために開かれているときに前記容器内の圧力よりも低い圧力が維持されるフロー回路に前記容器を接続することを含む、任意の適切な様式で前記容器からガスを排出することができるため、ガスはそのような分配操作によって脱着され、前記容器から分配される。追加的に又は代替的に、バルブをそのような分配用に開放した状態での前記容器からのガス分配のために、前記容器を加熱してガスの脱着を行うことができる。別の追加的又は代替的な操作モードとして、キャリアガスを前記容器の内部容積を通して流し、前記容器中の熱分解炭素吸着材上で前記キャリアガスと吸着ガスとの間の得られた物質移動濃度勾配による脱着を行うことができる。
【0083】
容器204は、例えば金属、ガラス、セラミック、ガラス質材料、ポリマー、及び複合材料等の材料を含む任意の適切な構造材料で形成することができる。そのような目的のための例示的な金属は、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、黄銅、青銅、及びそれらの合金を含む。バルブヘッドは、継手210によって分配導管212に結合されており、そこには圧力トランスデューサ214と、不活性ガスで前記分配アセンブリをパージするための不活性パージユニット216と、分配操作の際に分配導管212を流れる一定の流量を維持するためのマスフローコントローラ220と、前記分配アセンブリから分配されたガスの排出前にその分配されたガスから微粒子を除去するためのフィルタ222とが配置されている。
【0084】
分配アセンブリは、下流の配管、バルブ又は脱着ガスの使用部位に関連する他の構造物、例えば化学合成反応器又はマイクロエレクトロニクス製品製造ツールと前記分配アセンブリを互いに係合させるための継手224をさらに含む。ガス貯蔵分配容器204は、適切な多孔度及び物理的特性を有し、本開示の熱分解物炭素材を構成し得る、垂直に延びるディスクのスタック205を含む内部モノリス熱分解炭素吸着剤を示すために部分的に割れた状態で示される。ディスク205は、同じか又は類似の直径(容器204の長手方向軸に垂直な横方向寸法)であってもよく、前記スタック内の連続して隣接する積層ディスクは、互いに面接触で当接する。
【0085】
容器内部容積内のディスクの積層アレイ内の連続するディスクは、それぞれが前記スタック内の隣接するディスクの円形の端面に完全に当接する円形の端面を有して円筒形状であってもよく、又は前記ディスクは吸着剤物品の前記スタック全体にわたるガスの出入を容易にするために先端が斜めに切られているか若しくはその周囲に溝を有してもよい。
【0086】
図3は、ガス貯蔵分配容器302を含むガス供給パッケージの斜視横断面図であり、本開示のさらなる実施態様による、粒状炭素吸着剤が入っている前記容器の内部構造を示す。
【0087】
図示されているように、容器302は、前記容器の内部容積352を囲む壁346を含み、かつ本開示による粒状熱分解炭素吸着剤350が、例えば吸着剤の球形ビーズの形態で入っている。前記容器の上端、すなわちバルブヘッド304が結合されているポートには、多孔質焼結管360又は他のガス透過性構造物が設けられ、分配ガス中での熱分解炭素吸着材のベッドからの微粒子状固体の同伴を防止する役割を果たしている。バルブヘッド304は、手動バルブアクチュエータホイール306に連結されており、これにより、バルブヘッド304における前記バルブ(図示せず)は、開位置で分配するために、また全閉位置で容器中にガスを貯蔵するために、全開位置と全閉位置との間を手動で移動され得る。
【0088】
吸着剤の有用性に加えて、本開示の熱分解炭素材は、例えばウルトラキャパシタのようなエネルギー貯蔵用途における電気化学エネルギーデバイスの電極に、又は他のエネルギー貯蔵若しくはエネルギー移送部品に様々に使用され得る。
【0089】
図4は、本開示の一実施態様による、電解質との間に電気二重層コンデンサ(EDLC)構造を形成する本開示の熱分解炭素電極の配置を含む例示的な電気化学エネルギーデバイスの略図である。
【0090】
図4の電気化学エネルギーデバイス430は、本開示の別の実施態様による、電解質436との間にEDLC構造を形成する炭素電極432及び434の配置を含む。電極432は、その外面がメタライズされてその上の集電体438の構成要素となり、それに応じて電極434も、その外面がメタライズされてその上の集電体440の構成要素となる。
【0091】
あるいは、本発明の熱分解炭素材は、他の構造の電気化学エネルギーデバイスの構築に使用することができる。
【0092】
電気化学エネルギーデバイスに使用される特定の構造にかかわらず、付着した金属成分を伴う熱分解炭素は、それぞれの端子に電気的に接続された電極を形成し、適切な電解質を加えるとEDLCセルを形成する。前記電解質は、有機若しくは水性の液相電解質を含むことができ、又は固体電解質材料を含むことができる。
【0093】
したがって、本開示の熱分解炭素材を使用して、高い電流密度を扱う容量を有し、高い電流効率を示し、繰り返しサイクル中に低容量フェードを有し、そうでなければ電気化学二重層コンデンサデバイスにおいて高容量、高出力、及び高エネルギー密度を示し、かつ高圧に対応する電極を製造することができる。
【0094】
ゆえに、天然に存在する炭水化物源物質を利用し、本開示に従って多種多様な熱分解炭素材が形成され得ること、また、糖、デンプン、多糖、マルトデキストリン等を含む多種多様な天然に存在する炭水化物源物質が前記熱分解炭素材を製造するのに使用され得ることが理解されるであろう。
【0095】
図5は、粒子の良好な粘着を示し、1.1g/ccを超える原材料密度を有する天然炭水化物の圧縮タブレットの写真である。
【0096】
図6は、1.25g/ccを超える片密度を有する、熱分解のために炉に充填される際にブレンドされ固められた糖タブレットの写真である。
【0097】
図7は、1.32g/ccを超える測定密度を有する、強い自己粘着性の多糖類円筒型ブロックの写真である。
【0098】
図8は、種々の天然デンプン源から圧縮された様々なサイズのディスクを示す写真である。
【0099】
図9は、1.25g/ccを超える密度を有する熱分解炭素に熱変換された複数のデンプンディスクの写真である。
【0100】
図10は、0.95g/ccの平均片密度を有する、熱分解された糖タブレットの写真である。
【0101】
図11は、プリフォーム及び制御された熱分解を経て調製された、様々な形状及びサイズの成形後の熱分解炭素吸着剤断片を示す写真である。
【0102】
図12は、隣接する熱分解炭素吸着物品が互いに接触するように配置することができる空間充填形状を有し、そのため、熱分解炭素吸着剤が吸着親和性を有するガスを保持するのに適した吸着剤容器の密閉容積内の吸着剤密度を最大にするために熱分解炭素吸着物品の対応するアレイが用いられ得る、熱分解炭素吸着物品の一実施態様の写真である。
【0103】
図13は、1.29g/ccの密度、1300sq.m/gの表面積、及び116V/Vのメタン容量を有する、圧縮ジャガイモデンプン由来の固められた炭素吸着モノリスの切断片のSEM顕微鏡写真である。
【0104】
図14は、図13と同じ、1.29g/ccの密度、1300sq.m/gの表面積、及び116V/Vのメタン容量を有する、圧縮ジャガイモデンプン由来の固められた炭素吸着モノリスの表面のSEM顕微鏡写真である。
【0105】
図15は、図13及び図14の活性炭素吸着剤モノリスにおける微細気孔の高倍率SEM画像である。
【0106】
図16は、一実施態様による、ブレンドされたデンプンとマルトデキストリンの直接圧縮から調製された熱分解炭素吸着ディスクの写真である。
【0107】
本開示の熱分解炭素材の特徴及び利点は、以下の非限定的な実施例によってより詳細に説明される。
【実施例】
【0108】
実施例1
天然のトウモロコシデンプンの供給を得、この供給物から採取したデンプン試料を秤量し、実験用エアーオーブン中195℃に加熱して、そのような前駆体物質を乾燥及び固定させた。次いで、乾燥したデンプンを、600℃の管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、デンプン由来の熱分解炭素のN BET表面積は、Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用いて1グラム当たり578m2と測定された。
【0109】
同じ供給物からのトウモロコシデンプンの別の試料を秤量し、約0.17mPa(25000psi)の圧力下でタブレット形態に圧縮し、プリフォームタブレットを得た。前記タブレットを秤量し、測定し、それぞれについての片密度を決定した。圧縮したトウモロコシデンプンタブレットは、1.20グラム/ccの平均片密度を有した。
【0110】
次いで、これらのトウモロコシデンプンのタブレットを、600℃の温度の管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、それらの片密度を計算した。トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、0.90グラム/ccであった。トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり431m2の表面積を有することが見出された。次いで、トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱した。次に、炭素タブレットを735℃までさらに加熱し、この温度で、20〜25%のバーンオフ(酸化減量)に適切であると決定された時間流動COに曝露し、次いで炭素タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.78グラム/ccと測定された。次いで、活性炭タブレットのN BET表面積について測定したところ、1グラム当たり890m2の表面積を有することが見出された。
【0111】
実施例2
天然スクロース、フルクトース、デキストロース、及びラクトースの供給が得られた。これらの物質を実験用エアーオーブン中90℃で乾燥させ、次いで管状炉に充填し、そこで600℃の温度で流動窒素パージで熱分解させた。室温に冷却後、試料を取り出し、乳鉢と乳棒で粉砕して微細粉末を得た。Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用い、糖由来の炭素粉末のN BET表面積を分析した。前記表面積測定の結果を表1に示す。
表1.糖由来炭素の表面積
【0112】
ラクトースの新しい試料を秤量し、〜138MPa(約20000psi)の成形圧力下で各物質をタブレットに圧縮した。前記試料は、制御された条件及び窒素パージ下、ゆっくりとした熱分解のために管状炉内に充填された。ラクトースは、0.88グラム/ccの密度を有するタブレットをもたらした。熱分解された糖由来の炭素試料について得られたデータを表2に示す。
表2.糖由来炭素タブレットデータ−タブレット密度及び表面積(SA)
【0113】
次いで、ラクトース由来の炭素タブレットを、約25から30%の重量減少(すなわちバーンオフ)を達成するように選択された時間、900℃で流動CO中、酸化的に活性化した。その結果、0.39グラム/ccの片密度及び1グラム当たり865m2の表面積を有する炭素材が得られた。
【0114】
実施例3
天然ジャガイモデンプンの供給が得られた。デンプンの試料を秤量し、実験用エアーオーブン中で加熱乾燥させ、195℃の温度で前記試料を固定させた。次いで、乾燥したデンプンを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用い、ジャガイモデンプン由来炭素のN BET表面積を分析した。1グラム当たり498m2の表面積が決定された。
【0115】
次に、同じジャガイモデンプンの別の試料を秤量し、約103.4MPa(〜15,000psi)の下でタブレット形態に圧縮してプリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮ジャガイモデンプンタブレットは、1.33グラム/ccの平均片密度を有した。複数のジャガイモデンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、1.29グラム/ccであった。ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり459m2の表面積を有することが見出された。
【0116】
ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで流動COに45分間曝露しながら900℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.96グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり910m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で、104V/Vに換算される108cc CH/gの容量を示した。
【0117】
実施例4
実施例3で論じた同じジャガイモデンプンの別の試料を秤量し、約223MPa(〜32,346psi)下で円筒形のタブレット形態に圧縮し、プリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮ジャガイモデンプンタブレットは、1.33グラム/ccの平均片密度を有した。複数のジャガイモデンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、1.14グラム/ccであった。ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり475m2の表面積を有することが見出された。
【0118】
ジャガイモデンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで39.9重量%バーンオフのレベルまで流動COに数時間曝露しながら775℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.86グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり1210m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で137.2cc CH/gの容量を示し、これは35barから1barまでの間の圧力で106V/Vの絶対CH作業容量をもたらした。
【0119】
実施例5
天然の小麦デンプンの供給が得られた。デンプンの試料を秤量し、実験用エアーオーブン中で加熱乾燥させ、235℃の温度で前記試料を固定させた。次いで、乾燥したデンプンを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用い、小麦デンプン由来炭素のN BET表面積を分析した。1グラム当たり543m2の表面積が決定された。
【0120】
同じ小麦デンプンの別の試料を秤量し、約239.4MPa(〜34,724psi)下で円筒形のタブレット形態に圧縮してプリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮小麦デンプンタブレットは、1.32グラム/ccの平均片密度を有した。複数の小麦デンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。小麦デンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、0.94グラム/ccであった。小麦デンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり513m2の表面積を有することが見出された。
【0121】
小麦デンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで29.4重量%バーンオフのレベルまで流動COに数時間曝露しながら800℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.82グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり1321m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で136.5cc CH/gの容量を示し、これは35barから1barまでの間の圧力で107V/Vの絶対CH作業容量をもたらした。
【0122】
実施例6
実施例1で論じた同じ天然トウモロコシデンプンの別の試料を秤量し、約185MPa(〜26,841psi)下で円筒形のタブレット形態に圧縮し、プリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮したトウモロコシデンプンタブレットは、1.32グラム/ccの平均片密度を有した。複数のトウモロコシデンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、0.99グラム/ccであった。トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり537m2の表面積を有することが見出された。
【0123】
トウモロコシデンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで30.5重量%バーンオフのレベルまで流動COに数時間曝露しながら800℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.86グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり1251m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で134.4cc CH/gの容量を示し、これは35barから1barまでの間の圧力で103V/Vの絶対CH作業容量をもたらした。
【0124】
実施例7
天然のキャッサバデンプンの供給が得られた。前記デンプンの試料を秤量し、実験用エアーオーブン中で加熱乾燥させ、215℃の温度で前記試料を固定させた。次いで、乾燥したデンプンを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用い、キャッサバデンプン由来炭素のN BET表面積を分析した。1グラム当たり572m2の表面積が決定された。
【0125】
同じキャッサバデンプンの別の試料を秤量し、約185MPa(〜26,831psi)下で円筒形のタブレット形態に圧縮してプリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮キャッサバデンプンタブレットは、1.33グラム/ccの平均片密度を有した。複数のキャッサバデンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。キャッサバデンプン由来の炭素タブレットの平均片密度は、0.95グラム/ccであった。キャッサバデンプン由来の炭素タブレットのN BET表面積を分析し、1グラム当たり545m2の表面積を有することが見出された。
【0126】
キャッサバデンプン由来の炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで47.4重量%バーンオフのレベルまで流動COに数時間曝露しながら775℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.64グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり1323m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で122.7cc CH/gの容量を示し、これは35barから1barまでの間の圧力で97V/Vの絶対CH作業容量をもたらした。
【0127】
実施例8
工業用トウモロコシデンプン由来のマルトデキストリンの供給が得られた。前記マルトデキストリンの試料を秤量し、実験用エアーオーブン中で加熱乾燥させ、235℃の温度で前記試料を固定させた。次いで、乾燥したマルトデキストリンを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、Micromeritics ASAP 2420 Porosimeterを用い、トウモロコシデンプン由来のマルトデキストリン炭素の、N BET表面積を分析した。1グラム当たり465m2の表面積が決定された。
【0128】
同じトウモロコシデンプン由来のマルトデキストリンの別の試料を秤量し、約185.2MPa(〜26,857psi)下で円筒形のタブレット形態に圧縮してプリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、測定し、片密度が計算可能となった。圧縮マルトデキストリンデンプンタブレットは、1.36グラム/ccの平均片密度を有した。複数のキャッサバデンプンタブレットを、600℃の温度で管状炉中、流動窒素下で熱分解させた。冷却後、得られた炭素タブレットを秤量し、測定し、片密度を計算した。トウモロコシデンプン由来のマルトデキストリン炭素タブレットの平均片密度は、1.06グラム/ccであった。トウモロコシデンプン由来のマルトデキストリン炭素タブレットを、N BET表面積について分析し、1グラム当たり588m2の表面積を有することが見出された。
【0129】
トウモロコシデンプン由来のマルトデキストリン炭素タブレットを管状炉に再充填し、流動窒素中で600℃に加熱し、次いで49.9重量%バーンオフのレベルまで流動COにちょうど3時間曝露しながら950℃までさらに加熱し、その後前記タブレットを窒素中で室温まで冷却した。この物理的な酸化活性化の後、炭素タブレットの密度は、0.76グラム/ccに減少した。活性炭タブレットのN BET表面積について再測定したところ、表面積は1グラム当たり1581m2に増加したことが決定された。この吸着剤上のメタン吸着のその後の測定は、21℃及び35barの圧力で152.5cc CH/gの容量を示し、これは35barから1barまでの間の圧力で121V/Vの絶対CH作業容量をもたらした。
【0130】
実施例9
実施例8で論じたトウモロコシデンプン由来のマルトデキストリンと混合した実施例1及び6で論じた天然トウモロコシデンプンを様々な比率で組み合わせた円筒形のタブレットを、28から338MPa(〜4050psiから49,000psi)の間の圧縮条件の範囲で成形し、プリフォームタブレットを得た。タブレットを秤量し、強度及び他の重要な物理的特性についていくつかの方法で測定及び評価した。ブレンドされた物質は、純粋なトウモロコシデンプン又は純粋なマルトデキストリンのいずれかを用いて得られた特性と非常に強い混合物の線形規則の関係に則った。
【0131】
600℃まで熱分解すると、混合物のこの規則への一致が維持された。したがって、マルトデキストリンとトウモロコシデンプン、又は適切な任意の天然デンプンとの最適比でのブレンドにより、これらの物質のそれぞれの有益な特性を生かすことができると判定された。
【0132】
以下の表3は、本明細書に記載のいくつかの実施態様の特性をまとめたものである。
表3.炭水化物から調製された活性炭素モノリスタブレットの測定された特性
【0133】
実施例10
三フッ化ホウ素の吸着容量の試験のためにいくつかのデンプン由来炭素の試料が選択された。なぜなら、この大きな平らな分子は、微多孔質炭素中のスリット状気孔の良好な評価を提供するためである。すべてのデンプン由来の炭素試料は、600℃の温度の管状炉内で流動窒素下で熱分解されていた。次いで、それぞれを600℃から1000℃の間の温度でCO中で酸化的に活性化し、表面積を1グラム当たり1000平方メートル超に増加させた。
【0134】
デンプン由来の各炭素タブレットのバーンオフ、タブレット密度、及びN BET表面積のレベルを分析した。次いで、注入ドーパントガスの適用に用いられるであろう条件をシミュレートした減圧揺動操作(vacuum swing operation)で、21℃で、三フッ化ホウ素の吸着容量及び成果について前記タブレットを試験した。結果を、PVDC由来炭素吸着材の代表的な試料と比較した。
【0135】
この試験の結果を表4に示す。種々のデンプン及びマルトデキストリンに由来する高表面積炭素吸着剤は、BFに関してPVDC炭素によって示されたのと同様の重量吸着容量を達成し得ることが分かる。イオン注入装置などの減圧プロセスにその吸着されたBFの多くを供給する能力は、21℃の等温条件で約725Torrでガスを平衡まで吸着し、20Torrまで脱着して作業容量を決定することによっても実証された。
表4.選択された炭水化物由来炭素吸着剤の三フッ化ホウ素容量データ
【0136】
本開示の特徴、態様、および実施態様に関して本明細書で様々に述べられているように、本開示、特に実施は、そのような特徴、態様、および実施形態様のいくつか又はすべてを含むか、それらから成るか、又はそれらから本質的に成るように構成されてもよく、さらに、その構成要素は、本開示の様々なさらなる実施を構成するために集約される。したがって、本開示では、様々な並べ替えおよび組み合わせでの本開示のそのような特徴、態様、および実施態様又はそれらから選択されるもの(一又は複数)も本開示の範囲内として企図される。
【0137】
したがって、本開示は、特定の態様、特徴、及び例示的な実施態様を参照して本明細書に記載されているが、本開示の有用性はこのように限定されるものではなくむしろ、本開示の分野の当業者には自明であるような、本明細書の記載に基づいた多くの他の変形、改変、代替実施態様にまで及び、かつそれらを包含する。同様に、以下に請求される本開示は、その精神及び範囲の内にあるそのような変形、改変、及び代替実施態様のすべてを含むものとして広く解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
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図16