(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「波長380nmにおける光の透過率」等はその波長における透過率であり、「光透過率T
315nm超400nm以下」、「光透過率T
400−760nm」等は、ISO−9050:2003で規定される波長ごとの重みづけ係数を加味した透過率をいうものとする。
【0023】
また、「特定波長光吸収成分」とは、波長360nm以下の光を吸収する成分をいい、「特定波長光反射成分」とは、波長360nm以下の光を反射する成分をいう。
【0024】
以下図面を用いて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0025】
[ガラス物品の透過スペクトル]
図1は本発明に係る波長選択透過性ガラス物品(以下では「本ガラス物品」ともいう)の透過スペクトルの一例である。
図2、
図3中のa、
図4中のaおよび
図5中のaは、それぞれ本ガラス物品の透過スペクトルの別の例である。
【0026】
本ガラス物品は、下記式で表される波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上である。
【0028】
前記式中、A
kは、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数であり、T
kは、波長k(nm)における透過率である。
【0029】
したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、315nm超400nm以下の波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0030】
尚、ISO−9050:2003におけるA
kは波長kが5nm毎に規定されるため、前記式のシグマにおけるk=315nm超の際のA
kは、本発明においてはk=320nmの際のA
kとして扱うこととする。
【0031】
本ガラス物品は、光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上であることにより、近視を予防する効果が期待される。本ガラス物品は、光透過率T
315nm超400nm以下が3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがよりさらに好ましく、30%以上であることが特に好ましく、40%以上であることが一層好ましく、60%以上がより一層好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0032】
本ガラス物品は、下記式で表される波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下である。
【0034】
前記式中、A
kおよびT
kは、上記と同様である。したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、300〜315nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0035】
なお、300〜315nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用するのは、ISO−9050:2003で規定される重み付け係数(A
k)の値が波長300nm未満については0で設定されているからである。
【0036】
本ガラス物品は、光透過率T
315nm以下が60%以下であることにより、当該波長域の光による眼の様々な損傷を抑制することができる。本ガラス物品は、光透過率T
315nm以下が45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが一層好ましく、0.8%以下であることが最も好ましい。
【0037】
本ガラス物品は、下記式で表される波長360〜400nmの光透過率T
360−400nmが1%以上であることが好ましい。
【0039】
前記式中、A
kおよびT
kは、上記と同様である。したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定されるT(光透過率)を算出するための重み付け係数のうち、360〜400nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0040】
本ガラス物品は、光透過率T
360−400nmが好ましくは1%以上であることにより、近視を予防する効果がさらに期待される。315nm超400nm以下の波長域の中でも、360〜400nmの波長域の光は、近視を予防する効果を特に期待される。
【0041】
本ガラス物品は、光透過率T
360−400nmが5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましく、60%以上であることが一層好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
【0042】
本ガラス物品は、400nm以下の光以外の光の透過率は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。光透過率T
400−760nmに着目すると、本発明のガラス物品は、下記式で表される波長400〜760nmの光透過率T
400−760nmが1%以上であることが好ましい。
【0044】
前記式中、T
kは、上記と同様である。A’
kは、ISO−9050:2003で規定される光透過率T
400−760nm(D65光源)Tv_D65を算出するための、波長k(nm)における重み付け係数である。
【0045】
したがって、前記式は、ISO−9050:2003で規定される光透過率T
400−760nm(D65光源)Tv_D65を算出するための重み付け係数のうち、400〜760nmの波長範囲の重み付け係数のみを使用し、該波長範囲における、重み付け係数(A
k)と透過率(T
k)と、の積の和を、該波長範囲における重み付け係数の和で割った値であり、重み付け後の透過率の平均値である。
【0046】
本ガラス物品は、光透過率T
400−760nmが1%以上であることにより、ガラス背面の視認性を得やすくなり、意匠性を高められる。光透過率T
400−760nmのより好ましい範囲は、本ガラス物品の用途により異なるが、400〜760nmの光を透過することが求められる用途の場合、光透過率T
400−760nmが、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがよりさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましく、80%以上であることが一層好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0047】
本ガラス物品は、波長380nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。そのようなガラス物品は、近視予防効果の高い光を十分に透過する。波長380nmの光の透過率は、より好ましくは85%以上である。
【0048】
本ガラス物品は、波長350nmの光の透過率が、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、特に好ましくは10%以下である。本ガラス物品は波長350nm以下の光の強度を低減できるので、本ガラス物品を建築物や自動車の窓ガラスに使用すると、当該波長域の光による日焼け等が抑制できる。
【0049】
本ガラス物品は、波長315nmの光の透過率が好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、特に好ましくは1%以下である。本ガラス物品は315nm以下の光をほとんど透過しないので、本ガラス物品を建築物や自動車の窓ガラスに使用すると、当該波長域の光による激しい日焼け等が防止できる。
【0050】
[ガラス物品の構成例]
本ガラス物品の形状は、特に限定されない。本ガラス物品は、たとえばガラス板やガラス容器である。
【0051】
本ガラス物品は、ガラス板の主面に膜が形成された膜付きガラス物品でもよく、複数のガラス板が膜を介して積層された積層ガラス物品でもよい。
【0052】
本ガラス物品がガラスのみからなる場合には、本ガラス物品は前述の波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が板厚6mm換算で1%以上であることが好ましく、波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が板厚6mm換算で60%以下であることが好ましい。また、波長360〜400nmの光透過率T
360−400nmは、板厚6mm換算で1%以上が好ましく、波長400〜760nmの光透過率T
400−760nmは、板厚6mm換算で1%以上が好ましい。
【0053】
本ガラス物品がガラス板と該ガラス板の主面に設けられた膜とを含む場合には、波長380nmの光の透過率が80%以上であり、波長350nmの光の透過率が30%以下であり、波長315nmの光の透過率が10%以下であることが好ましい。
【0054】
本ガラス物品がガラス板と膜を含む場合には、ガラス板および膜の少なくとも一方に波長380nmの光を発光する成分を含有することが、近視予防効果が高くなるので好ましい。発光する成分は、波長360nm以下の光を吸収して発光することが好ましい。その場合、発光が最大となる波長は、360nm以上が好ましく、360〜400nmの範囲にあることがより好ましい。
【0055】
<膜付きガラス物品>
図6は、本ガラス物品の構成例である。
図6は平板状の膜付きガラス物品10を示すが、本ガラス物品は曲面状でもよい。
図6に示す膜付きガラス物品10は、ガラス板11と膜12とから構成される。以下はこの膜付きガラス物品10を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0056】
例えば
図6に示す膜12は単一の膜であるが、本ガラス物品における膜は積層膜でもよい。また、
図6に示す膜付きガラス物品10は、ガラス板11の一方の表面に膜12を有しているが、本ガラス物品は、両面に膜を有してもよい。本ガラス物品がガラス板の両面に膜を有する場合、一方の面に設けられた膜と他方の面に設けられた膜は、同じ膜でもよく、異なる膜でもよい。
【0057】
(ガラス板)
膜付きガラス物品10において、ガラス板11の厚さは、所定の透過率が得られる限り、特に限定されない。本膜付きガラス物品10が建築物や自動車の窓ガラスである場合には、たとえば2〜10mmである。本膜付きガラス物品10がディスプレイや照明器具のカバーガラスである場合には、たとえば0.1〜2mmである。
【0058】
ガラス板11は、波長360nmの光を50%以上透過することが好ましい。そのようなガラス板は、近視予防効果の高い光をよく透過し、かつ扱いやすいからである。この点について以下に説明する。
【0059】
通常、ガラス組成中に特定波長光吸収成分を含まないガラスは、400nm以下の光をある程度透過する。例えば
図3中のbは少量のFe
2O
3を含む一般的な窓用ガラス板の透過スペクトル例を示している。また、
図4中のbは特定波長光吸収成分をほとんど含まないディスプレイ用ガラス板の透過スペクトルの例を示している。これらの一般的なガラス板は、波長360nmの光を50%以上透過し、波長380nmの光を80%以上透過するので、本発明におけるガラス板11として好ましい。
【0060】
なお、通常の窓ガラスに含まれるFe
2O
3は、色調調整剤や原料中の不純物として含まれる成分であるが、特定波長光吸収成分としても機能することが知られている。一方、従来から紫外線吸収ガラスとして、種々の特定波長光吸収成分を含むガラスが開発されている。例えば特定波長光吸収成分としてCeO
2またはFe
2O
3等を含むものがある。
【0061】
これらの紫外線吸収ガラスは、特定波長光吸収成分として金属イオンを含有するものが多い。金属イオンは通常、比較的ブロードな光吸収特性を示すので、紫外線吸収ガラスの多くは、幅広い波長域の光を吸収する。その場合、波長360nmの光の透過率が低いガラスは、波長380nmの光の透過率も低くなる。
【0062】
紫外線吸収ガラスとしては、ガラス中に微粒子が析出する等によって特定の波長だけを吸収するガラスも知られている。しかし、そのようなガラスは熱的または化学的に不安定なので、扱いにくい。
【0063】
ガラス板11の光透過率T
400−760nmは特に限定されず、本ガラス物品の用途に応じて適宜設定できる。本ガラス物品がディスプレイのカバーガラス等の場合には、光透過率T
400−760nmは100%に近く、着色がないことが好ましい。波長315nm以下の光を透過しないガラス板であれば、より好ましい。
【0064】
ガラス板11のガラス組成は、所望の透過率が得られるものであれば、特に限定されない。ガラス板11のガラス組成としては、たとえば、一般的な窓ガラスに用いられるソーダライムガラスや、ディスプレイ基板に用いられる(無アルカリ)アルミノボロシリケートガラス、化学強化用として用いられるアルカリアルミノシリケートガラスが、強度や耐久性に優れているので好ましい。
【0065】
光透過率をより低くしたい場合には、ガラス板は、前述の特定波長光吸収成分を含有するガラスがより好ましい。
【0066】
(膜)
膜12は、波長360nm以下の光を吸収する成分または波長360nm以下の光を反射または散乱する成分を含むことが好ましい。その場合、本ガラス物品の光透過率は、ガラス板の光透過率より低くなる。
【0067】
膜12の厚さは、所望の透過率が得られる限り、特に限定されないが、より好ましい光透過特性を得るためには、たとえば1μm以上であり、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、膜の厚さは、通常は100μm以下である。
【0068】
膜12の材質は特に限定されず、樹脂等の有機物でもよく、無機物でもよい。
【0069】
膜12は、波長360nm以下の光を吸収する特定波長光吸収成分または波長360nm以下の光を反射する特定波長光反射成分を含有することが好ましい。その場合、膜12は、その全体が特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分で構成されてもよく、マトリクス中に特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分が分散または溶解しているものでもよい。なお、特定波長光反射成分は波長360nm以下の光を散乱する成分(以下、特定波長光反射成分ともいう)として作用することがある。
【0070】
膜12が特定波長光反射成分を含有する場合は、光学特性の安定性の点から、膜の表面が特定波長光反射成分で構成されていることが好ましい。また特定波長光反射成分は、波長360nm以下の光が適度に散乱されるように配置されることが好ましい。
【0071】
膜12が特定波長光反射成分で構成される場合、膜12は誘電体積層膜で構成されることが好ましい。その場合、積層膜を構成する層の数、各層の材質および配置順等を適正に設計することにより、積層膜に波長360nm以下の光(特定波長光)の反射特性を発現させることができる。
【0072】
たとえば、積層膜は、透明な基板の第1の表面に近い側から、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層を順次積層することにより構成され、屈折率の高い「高屈折率層」と屈折率が低い「低屈折率層」が交互に積層された構成が好ましい。
【0073】
すなわち、第1の層および第3の層は、第2の層および第4の層よりも大きな屈折率を有することが好ましい。その場合、第1の層および第3の層の屈折率は、2.0以上が好ましく、2.1以上がより好ましい。このような「高屈折率層」を構成する材料としては、例えば、チタニア、酸化ニオブ、ジルコニア、セリア、および酸化タンタル等が挙げられる。
【0074】
第1の層の厚さは、5nm〜20nmが好ましい。第3の層の厚さは、45nm〜125nmが好ましい。第3の層は、第1の層と同じ材質で構成されてもよい。
【0075】
第2の層および第4の層の屈折率は、1.4〜1.8が好ましい。このような「低屈折率層」を構成する材料としては、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。シリカには、アルミニウムなどの他の元素がドープしてもよい。第2の層の厚さは、15nm〜45nmが好ましい。第4の層の厚さは、0nm〜110nmが好ましい。
【0076】
また第5の層、第6の層、…第nの層(nは、5以上の整数)が存在してもよい。
【0077】
また、最外層直下は、必ずしも低屈折率層である必要はなく、最外層の直下は、高屈折率層でもよい。
【0078】
積層膜を構成する各層は、いかなる方法で設置されてもよい。各層は、例えば、蒸着法、スパッタ法、およびCVD(化学気相成長)法等により成膜できる。
【0079】
膜12がマトリクス中に特定波長光吸収成分を含有する構成の場合には、特定波長光吸収成分は均一に溶解しているか光を散乱しない程度の小粒子で分散していることが好ましい。そのような場合にはヘイズ値が小さくなる。膜のヘイズ値は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0080】
膜12のマトリクス成分は、波長315nm超400nm以下の光を透過するものが好ましく、例えば、二酸化ケイ素のような無機マトリクス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメラミン樹脂のような有機マトリクス並びに有機化合物と無機化合物が複合した有機無機マトリクスなどが挙げられる。
【0081】
有機マトリクスは、波長315nm超400nm以下の光を透過するために、フッ素樹脂が好ましい。マトリクス成分は可視光域(400〜760nm。以下同じ。)の波長に吸収を有していない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有してもよい。
【0082】
膜12が特定波長光吸収成分を含有する場合、該特定波長光吸収成分は、波長315nm以下の光を吸収する成分が好ましい。特定波長光吸収成分は粉末でもよく、液状でもよい。膜12がそのような成分を含有することで、ガラス板11として一般的な窓ガラスやディスプレイ基板用ガラスを用いても、有害な波長域の光を遮断するガラス物品が得られる。
【0083】
特定波長光吸収成分としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、マロン酸エステル系化合物およびシュウ酸アニリド系化合物から選択される1種以上を含む、いわゆる紫外線吸収剤と呼ばれるものが挙げられる。
【0084】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−4−ヒドロキシ−5−[5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(2H−ベンゾチリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールおよび2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0085】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2
‘−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0086】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−2’,4’−ジメトキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0087】
マロン酸エステル系化合物としては、例えば、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル等が挙げられる。
【0088】
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)−エタンジアミン、N−(4−ドデシルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)−エタンジアミン等が挙げられる。
【0089】
本発明において、これら特定波長光吸収成分は1種を単独で用いることも、2種以上を併用することも可能である。
【0090】
膜12は、発光を生じる成分を含有することがより好ましい。特定波長光吸収成分が波長360nm以下の光を吸収して波長380nm前後の発光を生じる成分であることがより好ましい。そのような成分を含むことで近視予防効果の高い光を効果的に透過し、有害な波長域の光を遮断する近視予防物品が得られる。
【0091】
発光を生じる成分としては、例えば、蛍光ガラス、Eu(II)ドープBaFX(X=Cl,I)、Eu(II)ドープCaWO
3、トリアゾール誘導体の蛍光色素、並びにビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体およびビススチリルビフェニル誘導体といった蛍光増白剤などが挙げられる。
【0092】
特定波長光吸収成分および発光を生じる成分は、可視光域の波長に吸収を有していない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有していてもよい。
【0093】
<積層ガラス物品>
図7は、本ガラス物品が積層ガラスである場合の構成例である。
図7は平板状の積層ガラス物品20を示すが、本ガラス物品は曲面状であってもよい。
図7に示す積層ガラス物品20は、ガラス板21、23と、その間に設けられた膜22とから構成される。以下はこの積層ガラス物品20を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0094】
例えば
図7に示す積層ガラス物品20はガラス−膜−ガラスの3層からなるが、本ガラス物品は4層以上の積層体でもよい。
【0095】
積層ガラス物品における膜は、その全体が特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分で構成されてもよく、マトリクス中に特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分が分散または溶解しているものでもよい。後者の場合、マトリクスは波長315nm超400nm以下の光を透過するものが好ましい。マトリクスは可視光域の波長に吸収を有していない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有していてもよい。
【0096】
マトリクスとしては、例えば、二酸化ケイ素等の無機マトリクス、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびメラミン樹脂等の有機マトリクス並びに有機化合物と無機化合物が複合した有機無機マトリクスなどが挙げられる。
【0097】
有機マトリクスとしては波長315nm超400nm以下の光を透過するために、フッ素樹脂が好ましい。
【0098】
本ガラス物品が積層ガラス物品である場合、本ガラス物品は合わせガラスでもよい。合わせガラスは、2枚以上のガラス板を中間膜(樹脂膜)で接着して一体化したものである。合わせガラスは、自動車の窓ガラスに用いられるほか、学校用の安全ガラスや防犯ガラスとしても用いられる。合わせガラスの中間膜としては、ポリビニルブチラールが広く用いられている。
【0099】
本ガラス物品が合わせガラスである場合には、中間膜に特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分を分散させてもよく、中間膜のほかに特定波長光吸収成分または特定波長光反射成分を含有する薄膜を設けてもよい。
【0100】
膜は波長315nm超400nm以下の光を透過することが好ましく、二酸化ケイ素のような無機マトリクス、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂のような有機マトリクスや有機化合物と無機化合物が複合した有機無機マトリクスなどを使用することができる。
【0101】
有機マトリクスは波長315nm超400nm以下光を透過するために、フッ素樹脂が好ましい。マトリクスは可視光域の波長に吸収を有しない化合物が好ましいが、着色が許容される場合は可視光域の波長に吸収を有してもよい。
【0102】
[ガラス物品の製造方法]
本ガラス物品は、一般的な膜付きガラスや積層ガラスの製造方法を準用して製造できる。
【0103】
本ガラス物品が、膜付きガラス物品である場合は、たとえば、ガラス板上に膜をコーティングして形成する方法で製造できる。
【0104】
ここでコーティング方法としては、例えば、真空装置を用い、コーティングする物質を物理的に気化させて基材上に堆積させるスパッタ法および蒸着法、コーティングする物質を化学的に気化させて基材上に堆積させる化学蒸着法(CVD法)、並びにコーティングする物質を溶媒に溶解または分散させて溶液とし、基材上に塗布するウェットコーティング法等が挙げられる。
【0105】
本ガラス物品が積層ガラス物品である場合、ガラス板と膜を別々に準備してから積層してもよく、ガラス板上に膜を形成してから他のガラス板を積層してもよい。複数のガラス板と膜とを積層してから、再上層のガラス板上に別の膜を形成してもよい。
【0106】
[ガラス物品の使用例]
図8および
図9は本ガラス物品の使用例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0107】
本ガラス物品は、たとえば住宅やビル等の建築物の窓ガラスや自動車等の乗り物の窓ガラスとして使用できる。例えば
図8に示す自動車30において、本ガラス物品は運転席側の窓ガラス31に用いてもよく、側面の窓ガラス32に用いてもよく、後部の窓ガラス(図示しない)に用いてもよい。
【0108】
本ガラス物品を窓ガラスとして用いる場合には、通常のガラス板と同様の方法で窓枠等に取り付けて用いることができる。
【0109】
本ガラス物品は、ディスプレイ装置や照明器具に用いることができる。例えば
図9に示す液晶ディスプレイ装置40において、本ガラス物品は、前面板41として用いてもよく、カバーガラス42として用いてもよい。
【0110】
本ガラス物品をディスプレイ装置や照明器具のカバーガラス等に用いる場合には、当該装置に内蔵される光源が波長380nm前後の光を発することが好ましい。そのような光源が発する光が、本ガラス物品を通して人の目に達することで、近視予防効果が高くなる。
【0111】
本ガラス物品は、壁や鏡等の内装に用いてもよい。本ガラス物品を窓や内装に用いることで室内における近視予防効果を有する光の量を増大することができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0113】
[例1]
厚さ2mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)上に、スパッタ法により、第1の層〜第4の層からなる、合計4層からなる積層膜を形成した。この積層膜は、特定波長光反射成分からなる。
【0114】
積層膜は、ガラス板に近い側から、以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ29.0nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ22.3nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ102.1nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ96.1nm。
【0115】
第1および第3の層は、ターゲットとしてNbO
Xターゲット(x<2)を使用し、Ar+O
2雰囲気(酸素8vol%)下でのスパッタ法により成膜した。スパッタ圧力は、0.37Paとした。
【0116】
第2および第4の層は、ターゲットとしてSiターゲットを使用し、Ar+O
2雰囲気(酸素60vol%)下でのスパッタ法により成膜した。スパッタ圧力は、0.17Paとした。
【0117】
次いで裏面にも同様のNb
2O
5、SiO
2膜を形成して膜付きガラス物品を得る。得られたガラス物品についてJIS R3106−1998を準用して分光透過率を測定した。波長300〜400nmにおける透過スペクトルを
図1に示す。
【0118】
また、波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下、波長315nm以下の光透過率T
315nm以下、波長360〜400nmの光透過率T
360−400nm、波長400〜760nmの光透過率T
400−760nm、波長380nmの光の透過率T
380nm、波長350nmの光の透過率T
350nm、波長315nmの光の透過率T
315nmをまとめて表1に示す。またガラス板の波長360nmの光の透過率を表1に示す。
【0119】
[例2]
例1と同様にして、厚さ2mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)上に、スパッタリング法により、第1の層〜第8の層からなる、合計8層からなる積層膜を形成した。この積層膜は特定波長光反射成分からなる。
【0120】
積層膜は、ガラス板に近い側から、以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ0.6nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ87.2nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ13.8nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ45.6nm、
第5の層:Nb
2O
5層、厚さ34.1nm、
第6の層:SiO
2層、厚さ23.4nm、
第7の層:Nb
2O
5層、厚さ31.0nm、
第8の層:SiO
2層、厚さ98.1nm。
【0121】
次いで裏面にもNb
2O
5、SiO
2膜を形成して膜付きガラス物品を得た。裏面の積層膜は、ガラス板に近い側から以下の層構成とした:
第1の層:Nb
2O
5層、厚さ6.6nm、
第2の層:SiO
2層、厚さ79.0nm、
第3の層:Nb
2O
5層、厚さ20.0nm、
第4の層:SiO
2層、厚さ38.6nm、
第5の層:Nb
2O
5層、厚さ39.1nm、
第6の層:SiO
2層、厚さ20.4nm、
第7の層:Nb
2O
5層、厚さ35.0nm、
第8の層:SiO
2層、厚さ101.0nm。
【0122】
両面に積層膜を形成したガラス物品の波長300nm〜400nmにおける透過スペクトルを
図2に示す。また、例1と同様にして透過率を表1に示す。
【0123】
[例3]
アルコール溶剤(日本アルコール販売株式会社製、商品名:ソルミックスAP−1)の50g、テトラメトキシシランの12g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの3.8g、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの10g、酢酸の11g、イオン交換水の11gを混合してコート液を得た。
【0124】
このコート液は特定波長光吸収成分として2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンを含み、マトリクス成分としてテトラメトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む。
【0125】
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)上に前記のコート液をアプリケータで塗布し、150℃で30分乾燥して膜付きガラス物品を得た。その透過スペクトルを
図3中のaに示す。また、例1と同様にして透過率を表1に示す。なお、
図3中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ2mmソーダライムガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0126】
[例4]
厚さ0.5mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:Dragontrail)を用いた他は例3と同様にして膜付きガラス物品を得た。その透過スペクトルを
図4中のaに示す。また、例1と同様にして透過率を表1に示す。なお、
図4中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ0.5mmのアルカリアルミノシリケートガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0127】
[例5]
酢酸ブチル(純正化学株式会社製)54.6g、マトリクス成分としてシリコン・アクリル樹脂溶液45.4g、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル0.02gを混合してコート液を得た。
【0128】
このコート液は特定波長光吸収成分として[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッドジメチルエステル(クラリアントジャパン製、商品名:PR25)を含み、マトリクス成分としてシリコン・アクリル系樹脂(DIC株式会社製:BZ−1160)を含む。
【0129】
厚さ2mmのソーダライムガラス板(旭硝子株式会社製、商品名:透明フロート板ガラス)上に前記のコート液をアプリケータで塗布し、100℃で30分乾燥して6μmの膜付きガラス物品を得た。
【0130】
その透過スペクトルを
図5中のaに示す。また、例1と同様にして透過率を表1に示す。なお、
図5中の破線bは、前述の膜を形成していない厚さ2mmソーダライムガラス板(参考例)の透過スペクトルである。
【0131】
【表1】
【0132】
表1および
図3〜5に示すように、実施例である例
3のガラス物品は、波長315nm超400nm以下の光透過率T
315nm超400nm以下が1%以上、且つ波長315nm以下の光透過率T
315nm以下が60%以下であり、波長選択透過性を示した。なお、例1
、例2
、例4および例5は参考例である。
【0133】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2015年12月2日付けで出願された日本特許出願(特願2015−235807)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。