【実施例】
【0033】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0034】
以下に示す通り、試験例A1〜A11及び試験例B1〜B6にてそれぞれ酸化物系正極活物質前駆体及び酸化物系正極活物質を作製し、その平均粒径D50、残留アルカリ量、硫酸根の含有量を測定し、さらに当該正極活物質を用いた全固体リチウムイオン電池の電池特性を測定した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)及びイオンクロマトグラフ法により、正極活物質のLi、Ni、Mn、Coの含有量を測定した。その分析結果から、当該正極活物質をLi
aNi
xCo
yMn
1-x-yの金属組成で表した場合のa、x、yを求めた。その結果、後述の表1の正極活物質作製条件で示す組成と同様であることを確認した。なお、表1のLi/Me比は上記式中のaに対応する。
【0035】
−平均粒径D50−
酸化物系正極活物質の平均粒径D50は、Microtrac製MT3300EXIIにより測定した。
【0036】
−残留アルカリ量−
残留アルカリ量は、それぞれ生成した正極活物質の粉末1gを純水50mL中に分散し、10分間撹拌してろ過した後、ろ液10mLと純水15mLとの混合液を0.1NのHClで電位差測定して求めた。
【0037】
−硫酸根の含有量−
正極活物質の硫酸根の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)により測定した。
【0038】
−電池特性−
以下、全固体電池セルの作製はアルゴン雰囲気下のグローブボックス内にて行った。試験例A1〜A11、試験例B1〜B6で得られた酸化物系正極活物質をそれぞれLiOC
2H
5とNb(OC
2H
5)
5にて被覆した後に、酸素雰囲気にて400℃で1時間焼成し、ニオブ酸リチウムのアモルファス層にて表面を被覆した正極材活物質を作製した。
次に、当該表面を被覆した正極材活物質75mgと硫化物固体電解質材料Li
3PS
425mgとを混合し、正極合材を得た。
また、硫化物固体電解質材料Li
3PS
480mgを、ペレット成形機を用いて5MPaの圧力でプレスし、固体電解質層を形成した。当該固体電解質層の上に正極合材10mgを投入し、30MPaの圧力でプレスして合材層を作製した。
次に、得られた固体電解質層と正極活物質層との合材層の上下を裏返し、固体電解質層側に、SUS板にLi箔(5mm径×厚み0.1mm)を貼り合わせたものを設け、20MPaの圧力でプレスしてLi負極層とした。これによって、正極活物質層、固体電解質層及びLi負極層がこの順で積層された積層体を作製した。
次に、当該積層体をSUS304製の電池試験セルに入れて拘束圧をかけて全固体二次電池とし、25℃電池初期特性(充電容量、放電容量、充放電特性)を測定した。なお、充放電条件は、充電条件:CC/CV 4.2V,0.1C、放電条件:CC 0.05C,3.0Vまでである。
【0039】
(試験例A1)
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンの1.5moL/L水溶液をそれぞれ作製し、各水溶液を所定量秤量して、Ni:Co:Mn=80:10:10となるように混合溶液を調整して、撹拌翼を容器内部に設置した反応槽へ送液した。
次に、撹拌翼を稼働させながら、反応槽内の混合液のpHを11.3、アンモニウムイオン濃度15g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は60℃となるようにウォータージャケットで保温した。
また、反応で生成する共沈物の酸化を防止するために反応槽へ窒素ガスを導入した。反応槽へ導入するガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガスなどの酸化を促進しないガスであれば、上記の窒素ガスに限らず使用することができる。
共沈した沈殿物を吸引・濾過した後、純水で水洗して、120℃、12時間の乾燥をした。このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子の組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2、平均粒径D50、硫酸根の量を測定した。
次に、複合水酸化物粒子のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム(Li)原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに800℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0040】
(試験例A2)
試験例A2は、試験例A1におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が0.98とした以外、試験例A1と同様の条件でリチウムイオン電池用酸化物系正極活物質を作製した。
【0041】
(試験例A3)
試験例A3は、試験例A1における反応槽内の混合液のpHを11.5、アンモニウムイオン濃度22g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は50℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに800℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0042】
(試験例A4)
試験例A4は、試験例A1における反応槽内の混合液のpHを10.8、アンモニウムイオン濃度9g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は50℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.03となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに760℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0043】
(試験例A5)
試験例A5は、試験例A1における共沈反応の各水溶液の混合割合を、Ni:Co:Mn=0.80:0:0.20となるように調整し、反応槽内の混合液のpHを11.5、アンモニウムイオン濃度25g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は60℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.0Mn
0.20(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.02となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で520℃で4時間焼成した後、さらに850℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0044】
(試験例A6)
試験例A6は、試験例A5におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.0Mn
0.20(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.05となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で450℃で4時間焼成した後、さらに850℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0045】
(試験例A7)
試験例A7は、試験例A5における反応槽内の混合液の温度は65℃となるようにウォータージャケットで保温した以外、試験例A5と同様の条件でNi−Co−Mn複合水酸化物粒子を作製した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.0Mn
0.20(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で450℃で4時間焼成した後、さらに820℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0046】
(試験例A8)
試験例A8は、試験例A1における共沈反応の各水溶液の混合割合を、Ni:Co:Mn=0.90:0.07:0.03となるように調整し、反応槽内の混合液のpHを10.5、アンモニウムイオン濃度14g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は65℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.90Co
0.07Mn
0.03(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が0.98となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに740℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0047】
(試験例A9)
試験例A9は、試験例A8におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.90Co
0.07Mn
0.03(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.00とした以外、試験例A8と同様の条件でリチウムイオン電池用酸化物系正極活物質を作製した。
【0048】
(試験例A10)
試験例A10は、試験例A8における反応槽内の混合液のpHを11.0、アンモニウムイオン濃度5g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は65℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.90Co
0.07Mn
0.03(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.00となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに740℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0049】
(試験例A11)
試験例A11は、試験例A1における共沈反応の各水溶液の混合割合を、Ni:Co:Mn=1.00:0:0となるように調整し、反応槽内の混合液のpHを11.3、アンモニウムイオン濃度5g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は40℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
1.0Co
0.0Mn
0.0(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.00となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で520℃で4時間焼成した後、さらに680℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0050】
(試験例B1)
試験例B1は、試験例A1におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.00となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で520℃で4時間焼成した後、さらに650℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0051】
(試験例B2)
試験例B2は、試験例A1におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.10Mn
0.10(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が0.96とした以外、試験例A1と同様の条件でリチウムイオン電池用酸化物系正極活物質を作製した。
【0052】
(試験例B3)
試験例B3は、試験例A5における反応槽内の混合液のpHを11.7、アンモニウムイオン濃度27g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は60℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.0Mn
0.20(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で520℃で4時間焼成した後、さらに850℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0053】
(試験例B4)
試験例B4は、試験例A6におけるNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.80Co
0.0Mn
0.20(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.07とした以外、試験例A6と同様の条件でリチウムイオン電池用酸化物系正極活物質を作製した。
【0054】
(試験例B5)
試験例B5は、試験例A8における反応槽内の混合液のpHを10.3、アンモニウムイオン濃度20g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は65℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
0.90Co
0.07Mn
0.03(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.01となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で500℃で4時間焼成した後、さらに740℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0055】
(試験例B6)
試験例B6は、試験例A11における反応槽内の混合液のpHを11.3、アンモニウムイオン濃度3g/Lとなるように、アンモニア水と20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を前記反応槽内の混合液中に添加し、晶析法によってNi−Co−Mnの複合水酸化物を共沈させた。このときの反応槽内の混合液の温度は35℃となるようにウォータージャケットで保温した。
このようにして作製されたNi−Co−Mn複合水酸化物粒子(組成:Ni
1.0Co
0.0Mn
0.0(OH)
2)のNi、Co、Mnからなる金属の原子数の和をMeとした場合、リチウム原子数との比(Li/Me)が1.00となるように水酸化リチウムと混合して、自動乳鉢で30分間、混合し、混合された粉体をアルミナこう鉢に充填し、マッフル炉で520℃で4時間焼成した後、さらに680℃で8時間、酸素雰囲気中で焼成し、酸化物系正極活物質を作製した。
【0056】
上記試験例A1〜A11及び試験例B1〜B6に係る試験条件及び評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】