特許第6880502号(P6880502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880502潜在水硬性材料分散液の作製方法、可塑性充填材の作製方法、潜在水硬性材料分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880502
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】潜在水硬性材料分散液の作製方法、可塑性充填材の作製方法、潜在水硬性材料分散液
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20210524BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20210524BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20210524BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20210524BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20210524BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20210524BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B28C7/04
   C04B14/10 B
   C04B14/10 Z
   C04B28/08
   C09K17/08 P
   C09K17/10 P
   C09K17/02 P
   E02D3/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-107897(P2017-107897)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202658(P2018-202658A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】川上 明大
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃
(72)【発明者】
【氏名】寒川 達也
(72)【発明者】
【氏名】沖原 直生
【審査官】 松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−208005(JP,A)
【文献】 特開2005−281586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0075852(US,A1)
【文献】 特開2015−229726(JP,A)
【文献】 特開2007−045657(JP,A)
【文献】 国際公開第99/067183(WO,A1)
【文献】 特開2010−235721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/04
C04B 28/08
C09K 17/00−17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在水硬性材料と可塑化材と水とが混合されて作製される潜在水硬性材料分散液の作製方法であって、
前記潜在水硬性材料と、前記可塑化材の一部と、水とを混合して第一分散液を作製する第一工程と、該第一分散液に可塑化材の残部を添加する第二工程とを備えており、
前記可塑化材は、ベントナイト、及び、アタパルジャイトからなる群から選択される少なくとも一つである潜在水硬性材料分散液の作製方法。
【請求項2】
前記第一工程で可塑化材の一部と水とが接触した直後から第二工程で可塑化材の残部を第一分散液に添加するまでの経過時間は、30秒以上180秒以下である請求項1に記載の潜在水硬性材料分散液の作製方法。
【請求項3】
前記潜在水硬性材料は、高炉スラグ、及び、フライアッシュからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1又は2に記載の潜在水硬性材料分散液の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項に記載の潜在水硬性材料分散液の作製方法で作製された潜在水硬性材料分散液と、硬化助材と水とが混合されて作製される硬化助材分散液とを混合して可塑性充填材を作製する可塑性充填材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在水硬性材料と水とが混合されて作製される潜在水硬性材料分散液の作製方法に関する。また、斯かる作製方法で作製された潜在水硬性材料分散液を用いて作製される可塑性充填材の作製方法に関する。また、潜在水硬性材料と水とが混合されて作製される潜在水硬性材料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地盤とコンクリート構造物との間に形成される空隙に充填される充填材としては、セメントと水とが混合されて作製される充填材が知られている。斯かる充填材は、空隙への充填を良好に行うために、適度な流動性を有することが要求される。また、斯かる充填材は、空隙内に充填された後には、周囲に漏れないように、適度な可塑性を有する(換言すれば、ゲル状に凝集した状態となる)ことが要求される。
【0003】
このような可塑性を有する充填材としては、セメントと可塑化材と水とが混合されて作製されるものが知られている(特許文献1参照)。可塑化材としては、例えば、ベントナイトを用いることができ、該ベントナイトが水によって膨潤することで、充填材に可塑性が付与される。
【0004】
上記のような充填材は、空隙の位置まで搬送された後、該空隙に注入されるものである。しかしながら、上記の充填材は、セメントを硬化材として使用するものであるため、空隙に到達する前に硬化してしまう虞がある。そこで、セメントに代えて潜在水硬性材料を硬化材として用いることが提案されている(特許文献2〜5参照)。潜在水硬性材料は、単に水と混合するだけでは硬化しないが、硬化助材の存在下で水と混合することで硬化し、難溶性の水和物を生成するものである。このような潜在水硬性材料としては、高炉スラグや、ポゾラン粉末等が挙げられる。
【0005】
上記のような潜在水硬性材料を硬化材として用いた充填材を空隙に充填する方法としては、潜在水硬性材料と可塑化材と水とが混合されて作製された潜在水硬性材料分散液と、硬化助材と水とが混合されて作製された硬化助材分散液とを別々に空隙へ向かって搬送し、空隙の直前で潜在水硬性材料分散液と硬化助材分散液とを混合して充填材を作製しつつ空隙に注入する方法が採用されている。このように、潜在水硬性材料分散液と硬化助材分散液とを別々に搬送することで、潜在水硬性材料分散液の搬送途中に潜在水硬性材料が水和して硬化することがないため、充填材が搬送途中で硬化してしまうのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−310779号公報
【特許文献2】特開2005−281586号公報
【特許文献3】特開2001−302324号公報
【特許文献4】特開2007−45657号公報
【特許文献5】特許第3366617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような潜在水硬性材料分散液は、比較的長時間、静止した状態が継続されると、潜在水硬性材料分散液を構成する水と他の材料とが分離してしまう虞がある。このように潜在水硬性材料分散液の分離が生じると、空隙等の施工位置への搬送を再開した際に、搬送を効率的に行うことができなくなったり、硬化助材分散液との混合を良好に行うことができなくなったりする虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、静止した状態が比較的長時間継続しても潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制することができる潜在水硬性材料分散液の作製方法、及び、潜在水硬性材料分散液を提供することを課題とする。また、斯かる作製方法で作製された潜在水硬性材料分散液を用いた可塑性充填材の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る潜在水硬性材料分散液の作製方法は、潜在水硬性材料と可塑化材と水とが混合されて作製される潜在水硬性材料分散液の作製方法であって、前記潜在水硬性材料と、前記可塑化材の一部と、水とを混合して第一分散液を作製する第一工程と、第一分散液に可塑化材の残部を添加する第二工程とを備える。
【0010】
斯かる構成によれば、潜在水硬性材料と、前記可塑化材の一部と、水とを混合して第一分散液を作製する第一工程と、第一分散液に可塑化材の残部を添加する第二工程とを備えることで、潜在水硬性材料分散液が比較的長時間静止した状態となっても、潜在水硬性材料分散液を構成する水と他の材料とが分離してしまうのを抑制することができる。なお、潜在水硬性材料とは、単に水と混合するだけでは硬化しないが、硬化助材が存在するときは硬化し、難溶性の水和物を生成するものをいう。また、硬化助材とは、潜在水硬性材料の水和反応を開始させるものをいう。
【0011】
前記第一工程で可塑化材の一部と水とが接触した直後から第二工程で可塑化材の残部を第一分散液に添加するまでの経過時間は、30秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、前記第一工程で可塑化材の一部と水とが接触した直後から第二工程で可塑化材の残部を第一分散液に添加するまでの経過時間は、30秒以上180秒以下であることで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0013】
前記潜在水硬性材料は、高炉スラグ、及び、フライアッシュからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0014】
前記可塑化材は、ベントナイト、及び、アタパルジャイトからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0015】
本発明に係る可塑性充填材の作製方法は、上記何れかの潜在水硬性材料分散液の作製方法で作製された潜在水硬性材料分散液と、硬化助材と水とが混合されて作製される硬化助材分散液とを混合して可塑性充填材を作製する。
【0016】
本発明に係る潜在水硬性材料分散液は、潜在水硬性材料と可塑化材と水とが混合されて作製される潜在水硬性材料分散液と、硬化助材と水とが混合されて作製される硬化助材分散液と、が混合されて作製される可塑性充填材を作製するための潜在水硬性材料分散液であって、潜在水硬性材料と可塑化材と水とを混合して潜在水硬性材料分散液を作製した後1日静置した際の単位体積質量の変化率が0%以上4.5%以下である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、静止した状態が比較的長時間継続しても潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る潜在水硬性材料分散液の作製方法は、潜在水硬性材料と可塑化材と水とを混合して潜在水硬性材料分散液を作製するものである。なお、斯かる潜在水硬性材料分散液の用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、可塑性充填材を作製する際の材料として用いることができる。
【0020】
前記潜在水硬性材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、高炉スラグ、ポゾラン粉末、フライアッシュ等が挙げられる。特に、高炉スラグ、及び、フライアッシュからなる群から選択される少なくとも一つを潜在水硬性材料として用いることが好ましい。特に、良好な流動性を有する潜在水硬性材料分散液を得る点では、高炉スラグを用いることが好ましい。なお、潜在水硬性材料とは、単に水と混合するだけでは硬化しないが、硬化助材が存在するときは硬化し、難溶性の水和物を生成するものをいう。
【0021】
また、潜在水硬性材料分散液の単位体積に対する潜在水硬性材料の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、150kg/m以上500kg/m以下であってもよく、好ましくは、200kg/m以上350kg/m以下であってもよい。また、潜在水硬性材料が高炉スラグである場合には、潜在水硬性材料分散液の単位体積に対する高炉スラグの使用量としては、例えば、150kg/m以上400kg/m以下であってもよく、好ましくは、200kg/m以上350kg/m以下であってもよい。
【0022】
前記可塑化材は、例えば、潜在水硬性材料分散液を可塑性充填材の材料として用いた場合、可塑性充填材が作製された直後の状態において、可塑性充填材に可塑性を付与するものである。換言すれば、可塑化材は、可塑性充填材が作製された直後の状態において、可塑性充填材をゲル状に凝集させて定型性を付与するものである。また、可塑化材としては、潜在水硬性材料分散液を可塑化する作用が低く、且つ、後述する硬化助材と混合されることで可塑化作用が高くなるものを用いることが好ましい。具体的には、可塑化材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベントナイト、アタパルジャイト、メタカオリン等の粘土鉱物等を用いることができる。特に、ベントナイト、及び、アタパルジャイトからなる群から選択される少なくとも一つを可塑化材として用いることが好ましい。特に、適度な流動性を有する潜在水硬性材料分散液を得ると共に、適度な可塑性を有する可塑性充填材を得る点ではベントナイトを用いることが好ましい。
【0023】
前記ベントナイトとしては、膨潤度が16ml/2g以上50ml/2g以下であってもよく、好ましくは、16ml/2g以上40ml/2g以下であってもよい。なお、ベントナイトの膨潤度は、日本ベントナイト工業会試験法(JBAS−104)によって求められるものである。具体的には、蒸留水もしくは純水の中にベントナイトを徐々に落としたときの水中で示す見掛け容積で表示されるものである。より詳しくは、純水又は蒸留水100ml(ミリリットル)中にベントナイト試料2gを落とし、落下後24時間放置して容器内の推積した試料の見掛け容積を読取るものである。
【0024】
潜在水硬性材料分散液の単位体積に対する可塑化材の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、50kg/m以上300kg/m以下であってもよく、好ましくは、75kg/m以上150kg/m以下であってもよい。また、前記可塑化材がベントナイトである場合には、潜在水硬性材料分散液の単位体積に対するベントナイトの使用量としては、例えば、50kg/m以上120kg/m以下であってもよく、好ましくは、60kg/m以上110kg/m以下であってもよい。
【0025】
潜在水硬性材料分散液の単位体積に対する水の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、700kg/m以上950kg/m以下であってもよく、好ましくは、800kg/m以上900kg/m以下であってもよい。
【0026】
本発明に係る潜在水硬性材料分散液の作製方法では、前記潜在水硬性材料と、前記可塑化材の一部と、水とを混合(具体的には、混練)して第一分散液を作製する第一工程と、第一分散液に可塑化材の残部を添加して混合する第二工程とを備える。該第二工程は、第一工程において可塑化材の一部と水とが接触した直後から所定時間経過した後に行われる。具体的には、第一工程で可塑化材の一部と水とが接触した直後から第二工程で第一分散液に可塑化材の残部を添加するまでの経過時間は、30秒以上180秒以下であることが好ましく、60秒以上180秒以下であることがより好ましい。
【0027】
第二工程における可塑化材の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、第一工程で使用する可塑化材100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。また、第一工程で使用される可塑化材と、第二工程で使用される可塑化材とは、同種であってもよく、異種であってもよい。第一工程と第二工程とで使用する可塑化材が異種である場合としては、例えば、ベントナイト又はアタパルジャイトの何れか一方を第一工程で使用し、ベントナイト又はアタパルジャイトの何れか他方を第二工程で使用する場合、又は、第一工程と第二工程とで使用するベントナイトの膨潤度が異なる場合が挙げられる。例えば、第一工程で使用するベントナイトよりも膨潤度が高いベントナイトを第二工程で使用することが好ましい。
【0028】
上記のように構成される潜在水硬性材料分散液の作製方法で作製された潜在水硬性材料分散液は、潜在水硬性材料と可塑化材と水とを混合して潜在水硬性材料分散液を作製した後1日静置した際の単位体積質量の変化率が0%以上4.5%以下となることが好ましく、0%以上3%以下となることがより好ましい。また、潜在水硬性材料分散液は、粘度が1.5dPa・s以上6dPa・s未満となることが好ましく、1.5dPa・s以上4dPa・s以下となることがより好ましい。なお、単位体積質量、変化率、及び、粘度については、下記の実施例に記載された方法で測定されるものである。
【0029】
上記のように構成される潜在水硬性材料分散液は、硬化助材分散液と混合されることで可塑性充填材を作製することができる。硬化助材分散液は、硬化助材と水とが混合されて作製される。硬化助材とは、潜在水硬性材料の水和反応を開始させるものをいう。
【0030】
硬化助材としては、特に限定されるものではなく、例えば、生石灰(酸化カルシウムCaO)、消石灰(水酸化カルシウムCa(OH))、苦土石灰(CaCO・MgCO)等の石灰、半水石膏、二水石膏、無水石膏等の石膏、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルカリ性塩、リン酸、リン酸塩、セメント水和物等が挙げられる。潜在水硬性材料が高炉スラグの場合には、硬化助材として、生石灰(酸化カルシウム、CaO)、消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH))、苦土石灰(CaCO・MgCO)等の石灰を用いることが好ましい。また、潜在水硬性材料がポゾラン粉末の場合には、硬化助材として、生石灰(酸化カルシウム、CaO)、消石灰(水酸化カルシウム、Ca(OH))、苦土石灰(CaCO・MgCO)等の石灰、リン酸、リン酸塩等が、硬化反応を生じやすいため好ましい。
【0031】
硬化助材の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、潜在水硬性材料分散液中の潜在水硬性材料の質量に対して、2質量%以上40質量%以下であってもよく、5質量%以上25質量%以下であってもよい。
【0032】
硬化助材分散液の単位体積に対する水の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、500kg/m以上970kg/m以下であってもよく、好ましくは、750kg/m以上950kg/m以下であってもよい。
【0033】
上記のように構成される潜在水硬性材料分散液及び硬化助材分散液の少なくとも一方には、必要に応じて他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、遅延剤、粘性調整剤、化学混和剤等が挙げられる。潜在水硬性材料分散液に他の成分を配合する際には、他の成分は、第一工程及び第二工程の少なくとも一方で使用される。
【0034】
上記のように構成される潜在水硬性材料分散液と硬化助材分散液とを混合して可塑性充填材を作製する際には、潜在水硬性材料分散液と硬化助材分散液とが所定の混合比で混合される。具体的には、潜在水硬性材料分散液と硬化助材分散液との混合比としては、特に限定されるものではなく、例えば、体積比で70:30〜98:2であってもよく、好ましくは、80:20〜90:10であってもよい。
【0035】
以上のように、本発明によれば、静止した状態が比較的長時間継続しても潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制することができる。
【0036】
即ち、潜在水硬性材料と、前記可塑化材の一部と、水とを混合して第一分散液を作製する第一工程と、第一分散液に可塑化材の残部を添加する第二工程とを備えることで、潜在水硬性材料分散液が比較的長時間静止した状態となっても、潜在水硬性材料分散液を構成する水と他の材料とが分離してしまうのを抑制することができる。
【0037】
また、前記第一工程で可塑化材の一部と水とが接触した直後から第二工程で可塑化材の残部を第一分散液に添加するまでの経過時間は、30秒以上180秒以下であることで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、本発明に係る潜在水硬性材料分散液の作製方法、可塑性充填材の作製方法、及び、潜在水硬性材料分散液は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、更に、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例、及び、比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
<使用材料>
・可塑化材:ベントナイト1(略称:BN1、膨潤度:16ml/2g以上)
・可塑化材:ベントナイト2(略称:BN2、膨潤度:20ml/2g以上)
・可塑化材:ベントナイト3(略称:BN3、膨潤度:36ml/2g以上)
・可塑化材:アタパルジャイト(略称:AJ)
・潜在水硬性材料:高炉スラグ(略称:BS、日鉄住金鹿島鉱化社製)
・潜在水硬性材料:フライアッシュ(略称:FA、四電ビジネス社製)
・化学混和剤(略称:CA、フローリック社製)
・水(略称:W):
【0041】
<潜在水硬性材料分散液の作製>
上記の各材料を用いて、下記表1,2に記載の配合で、回転数550rpmのミキサを使用して潜在水硬性材料分散液を作製した。
なお、実施例1〜13では、水に潜在水硬性材料を添加して30秒混練し、その後、可塑化材の一部を添加して180秒混練することで第一分散液を得た(第一工程)。その後、第一分散液に可塑化材の残部及び化学混和剤を添加して180秒混練することで、潜在水硬性材料分散液を得た(第二工程)。
また、実施例14では、水に潜在水硬性材料を添加して30秒混練し、その後、可塑化材の一部を添加して30秒混練することで第一分散液を得た(第一工程)。その後、第一分散液に可塑化材の残部及び化学混和剤を添加して180秒混練することで、潜在水硬性材料分散液を得た(第二工程)。
各比較例では、水に潜在水硬性材料を添加して30秒混練し、その後、可塑化材の全部を添加して180秒混練した後、化学混和剤を添加して180秒混練することで、潜在水硬性材料分散液を得た。
なお、各実施例において、第一工程において可塑化材の一部と水とが接触した直後(具体的には、可塑化材を添加した直後)から第二工程で可塑化材の残部を添加するまでの時間(以下、「第二工程を行うまでの経過時間」とも記す)については、下記表3に示す。
【0042】
<粘度の測定と評価>
上記で得られた各潜在水硬性材料分散液の粘度を測定した。具体的には、各潜在水硬性材料分散液を作製した直後の粘度と、作製後1日静置した後の粘度を「装置名:ビスコメーター VT−04(リオン社製)」を用いて、測定条件20℃で測定した。そして、作製後1日静置した後の粘度が6.0dPa・s未満を「○」、6.0dPa・s以上を「×」として評価した。測定結果及び評価結果については、下記表1,2に示す。
【0043】
<単位体積質量の評価>
各潜在水硬性材料分散液を定量容器に充填し質量を測定した。そして、測定した質量から定量容器の質量を差し引いた質量を定量容器の体積で除した値を単位体積質量(単位:g/cm)とした。
単位体積質量の測定は、各潜在水硬性材料分散液を作製した直後(混練直後)に採取したサンプルと、作製後1日静置した後(静置1日後)に採取したサンプルとのそれぞれに対して行った。
なお、静置1日後のサンプルの採取方法としては、混練直後の各潜在水硬性材料分散液を500mlの容器に入れ、封緘状態で1日静置した後、500mlの容器を反転させ、500mlの容器から自重で流出した各潜在水硬性材料分散液をサンプルとした。
また、下記の(1)式を用いて変化率を算出した。そして、変化率が−3.0%以上を「○」、−3.0%未満−4.5%を超えるものを「△」、−4.5%以下を「×」として評価した。単位体積質量、変化率、及び、評価結果については、下記表1,2に示す。

変化率={(静置1日後の単位体積質量−混練直後の単位体積質量)/混練直後の単位体積質量}×100・・・(1)
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
<まとめ>
潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのは、潜在水硬性材料分散液中で水以外の材料が沈降するためである。このため、潜在水硬性材料分散液に分離が生じる前の状態に比べて、分離が生じた後の状態の方が潜在水硬性材料分散液の表面の領域(サンプルを採取する領域)に水が多く存在することになる。これにより、潜在水硬性材料分散液に分離が生じた状態の単位体積質量は、分離が生じる前の単位体積質量に対して低い値となる。つまり、単位体積質量の変化率が低い方が潜在水硬性材料分散液に分離が生じ難いことを意味する。
【0048】
ここで、表1,2を見ると、各実施例の方が各比較例よりも単位体積質量の変化率が低いことが認められる。つまり、本願発明のように、第一工程で可塑化材の一部を使用し、第二工程で可塑化材の残部を使用して潜在水硬性材料分散液を作製することで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制することが可能となる。
【0049】
また、各実施例では、粘度が比較的低い値となることが認められる。つまり、本願発明のように、第一工程で可塑化材の一部を使用し、第二工程で可塑化材の残部を使用して潜在水硬性材料分散液を作製することで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制しつつ、良好な流動性を有する潜在水硬性材料分散液を作製することが可能となる。
【0050】
また、実施例1と実施例14とを比較すると、実施例1の方が単位体積質量の変化率が低いことが認められる。つまり、第二工程を行うまでの経過時間が30秒以上180秒以下であることで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのを抑制しつつ、良好な流動性を有する潜在水硬性材料分散液を作製することが可能となる。
【0051】
また、実施例1,3,5を比較すると、実施例1よりも実施例3の方が単位体積質量の変化率が低く、実施例3よりも実施例5の方が単位体積質量の変化率が低くなることが認められる。また、実施例2,4を比較すると、実施例2よりも実施例4の方が単位体積質量の変化率が低くなることが認められる。また、実施例10〜12を比較すると、実施例10よりも実施例11の方が単位体積質量の変化率が低く、実施例11よりも実施例12の方が単位体積質量の変化率が低くなることが認められる。つまり、第一工程で使用する可塑化材の膨潤度よりも高い膨潤度を有する可塑化材を第二工程で使用することで、潜在水硬性材料分散液に分離が生じるのをより効果的に抑制することが可能となる。