(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記B層が、多官能エポキシ樹脂とフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂とを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波帯域の信号を使用する電子機器用複合フィルム。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用複合フィルムを用いて、表面に回路又は部品による段差を有する基板に前記電子機器用複合フィルムのA層側を貼付し、前記段差を充填する工程、
前記電子機器用複合フィルムのA層及びB層を硬化する工程、
前記電子機器用複合フィルムのB層側の面上にセミアディティブ法で回路を形成する工程、
を有する、プリント配線板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書においてはX以上でありY以下である数値範囲(X、Yは実数)を「X〜Y」と表すことがある。例えば、「0.1〜2」という記載は0.1以上であり2以下である数値範囲を示し、当該数値範囲には0.1、0.34、1.03、2等が含まれる。
【0012】
本明細書において「複合フィルム」は、含有する樹脂組成物が未硬化である複合フィルム、及び含有する樹脂組成物を半硬化させた(いわゆるBステージ状とした)複合フィルムの両方を含む。
また、本明細書において、複合フィルムの「複合」とは、フィルムが複数の樹脂層から形成されていることを意味し、その態様が含まれていれば、さらに支持体及び保護フィルム等からなる他の層を有していてもよい。
【0013】
また、本明細書において「層間絶縁層」とは、2層の導体層の間に位置し、当該導体層を絶縁するための層である。本明細書の「層間絶縁層」は、例えば、複合フィルムの硬化物が挙げられる。なお、本明細書において「層」とは、一部が欠けているもの、ビア又はパターンが形成されているものも含む。
【0014】
[高周波帯域の信号を使用する電子機器用複合フィルム]
本発明は、
80〜150℃における最低溶融粘度が100〜4,000Pa・sであるA層、及び
80〜150℃における最低溶融粘度が50,000Pa・s以上であるB層
を有する、高周波帯域の信号を使用する電子機器用複合フィルム(以下、単に「複合フィルム」と称することがある。)である。
【0015】
本発明の複合フィルムは、前記A層と前記B層を有し、B層においてA層と反対側の面に支持体が設けられていてもよい。この場合、A層/B層/支持体という構成になる。支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の各種プラスチックフィルムなどが挙げられる。また、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔、離型紙などを使用してもよい。支持体及び後述する保護フィルムには、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、支持体には、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理が施してあってもよい。
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0016】
本発明の複合フィルムは、保護フィルムが設けられていてもよい。例えば、A層においてB層とは反対側の面に保護フィルムを設ける態様が挙げられる。この場合、例えば、保護フィルム/A層/B層、保護フィルム/A層/B層/支持体、等の構成になる。
保護フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、保護フィルムには、必要に応じて、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理が施されていてもよい。
なお、前記支持体を保護フィルムとして使用してもよい。
【0017】
本発明の複合フィルムは、例えば、前記支持体の上にB層を形成し、該B層の上にA層を形成し、必要に応じてA層の上に保護層を形成する方法により製造することができる。B層の形成には、後述するB層用ワニスを支持体に塗工した後、加熱乾燥させ、さらにその上に後述するA層用ワニスを塗工した後、加熱乾燥させることにより形成することができる。ワニスを塗工する方法としては、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いることができる。これらの塗工装置は、膜厚によって、適宜選択することが好ましい。
塗工後の乾燥条件は、特に限定されず、溶剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、乾燥温度は、A層を形成する場合には、50〜130℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。乾燥時間は、A層を形成する場合には、例えば、1〜10分間とすることができる。例えば、乾燥温度は、B層を形成する場合には、50〜150℃が好ましく、100〜145℃がより好ましい。乾燥時間は、B層を形成する場合には、例えば、1〜10分間とすることができる。
上記乾燥においては、乾燥後のA層又はB層中の揮発成分(主に有機溶媒)の含有量が、10質量%以下となるように乾燥させることが好ましく、6質量%以下となるように乾燥させることがより好ましい。
【0018】
また、本発明の複合フィルムは、A層のフィルム及びB層のフィルムをそれぞれ作製し、軟化温度以上で熱圧着及びラミネーター等により貼り合わせることによっても製造できる。
【0019】
本発明の複合フィルムにおいて、回路の凹凸高さaを埋め込むために、A層の厚みは、a〜2aであることが好ましく、1.1a〜1.5aであることがより好ましい。A層の厚みが、a以上であれば、回路の凹凸を埋め込んだ際に、十分な埋め込み性を確保でき、埋め込み後の複合フィルムの表層をフラットに保ち易い傾向にある。一方、2a以下であれば、基板の薄型化が容易となり、且つ低反り化する傾向にあり、好ましい。
【0020】
一方、B層は、セミアディティブ法に適応できる層である。表面平坦性を確保し、めっき銅との高接着性を確保するため、B層の厚みは1〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましく、1.5〜3μmであることがさらに好ましい。B層の厚みが1μm以上であれば、回路の凹凸への埋め込みの際にB層が破断してA層が表面に露出するのを避け易く、且つ、デスミアプロセスでB層が溶出して消失してしまうおそれが少ない。一方、5μm以下であれば、表面平坦性の低下を抑制し易いとともに、基板を薄型化できるために好ましい。
【0021】
A層は、80〜150℃における最低溶融粘度が100〜4,000Pa・sである。この範囲であれば、A層を80〜150℃で流動させることができ、埋め込み性の観点から好ましい。A層の80〜150℃における最低溶融粘度は、500〜2,000Pa・sであることがより好ましく、700〜2,000Pa・sであることがさらに好ましい。ここで、最低溶融粘度とは、硬化開始前に樹脂組成物が溶融したときの粘度である。
80〜150℃における最低溶融粘度が100Pa・s以上であることにより、フィルムの流動性が大きくなり過ぎず、埋め込み後の複合フィルムの表面平坦性を保ち易くなり、基板の厚みにバラツキが発生するのを抑制できる。また、4,000Pa・s以下であることにより、流動性が良好となり、配線の凹凸を埋め込み易くなる。
【0022】
一方、B層は、80〜150℃における最低溶融粘度が50,000Pa・s以上である。B層は、複合フィルムを回路へ埋め込む時にB層が一定の厚みを保つとともに、埋め込み後の複合フィルムの表面平坦性を保ち易い。同様の観点から、B層の80〜150℃における最低溶融粘度は、50,000〜100,000Pa・sであることが好ましく、50,000〜75,000Pa・sであることがより好ましく、60,000〜75,000Pa・sであることがさらに好ましく、63,000〜70,000Pa・sであることが特に好ましい。
【0023】
本発明の複合フィルムは、熱又は活性エネルギー線によって硬化させることができる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、赤外線、X線等の電磁波;α線、γ線、電子線等の粒子線が挙げられる。これらの中でも、紫外線が好ましい。
【0024】
本発明の複合フィルムの一例を、模式断面図として
図1に示す。本発明に係る複合フィルムは、A層1及びB層2、並びに必要に応じて支持体3及び/又は保護フィルム4を備えている。
なお、A層1とB層2との間には、明確な界面が存在せず、例えば、A層1の構成成分の一部と、B層2の構成成分の一部とが、相溶及び/又は混合した状態であってもよい。
【0025】
本発明の複合フィルムは、上記条件を満たしている限り、各層の成分は特に制限されないが、実施態様の一例として、以下にA層及びB層の成分について説明する。
【0026】
[A層の成分]
A層の成分としては、樹脂組成物が挙げられる。樹脂組成物としては、例えば、マレイミド化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを有するポリイミド化合物(a1)と無機充填材(a2)とを含有する樹脂組成物が好ましく、特に、該無機充填材(a2)の含有量が樹脂組成物の固形分に対して55体積%以上であるとより好ましい。以下、各成分について詳述する。
【0027】
<ポリイミド化合物(a1)>
ポリイミド化合物(a1)は、マレイミド化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを有するものである。マレイミド化合物としては、脂肪族マレイミド化合物を含むことが好ましい。
脂肪族マレイミド化合物は、イミド基間の炭素数が6〜40個であることが好ましく、また、N−置換マレイミド基の数が少なくとも2個であることが好ましい。脂肪族マレイミド化合物由来の構造単位を有するポリイミド化合物(a1)を用いることで、誘電正接が低く、フィルムにした際の取り扱い性に優れる傾向にある。
脂肪族マレイミド化合物としては、例えば、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、ピロリロン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。脂肪族マレイミドは、熱膨張率が低く、高ガラス転移温度を有するという観点から、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンがより好ましい。
【0028】
また、マレイミド化合物は脂肪族マレイミド化合物以外のマレイミド化合物を含んでもよく、そのマレイミド化合物はN−置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物であれば、特に限定されない。例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導体との接着性及び機械特性の観点から、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。
【0029】
ポリイミド化合物(a1)中における、脂肪族マレイミド化合物由来の構造単位の含有量は、仕込み量換算で、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100質量%であってもよいが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。脂肪族マレイミド化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物において、より良好な高周波特性、フィルム取り扱い性が得られる傾向にある。
また、マレイミド化合物由来の構造単位の合計含有量に対する脂肪族マレイミド化合物由来の構造単位の含有量は、仕込み量換算で、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0030】
マレイミド化合物由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(1−1)で表される基、下記一般式(1−2)で表される基等が挙げられる。
【0032】
一般式(1−1)及び(1−2)中、A
1はマレイミド化合物の残基を示し、*は結合部を示す。
なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基(マレイミド化合物においてはマレイミド基)を除いた部分の構造をいう。
【0033】
A
1が示す残基としては、下記一般式(2)、(3)、(4)又は(5)で表される2価の基であることが好ましい。
【0034】
【化2】
(式中、R
1は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、又はハロゲン原子を示す。)
【0035】
【化3】
(式中、R
2及びR
3は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
2は炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基、単結合又は下記一般式(3−1)で表される基である。)
【0036】
【化4】
(式中、R
4及びR
5は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
3は炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)
【0037】
【化5】
(式中、iは1〜10の整数である。)
【0038】
【化6】
(式中、R
6及びR
7は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を示し、jは1〜8の整数である。)
【0039】
一般式(2)中のR
1、一般式(3)中のR
2及びR
3、一般式(3−1)中のR
4及びR
5、一般式(5)中のR
6及びR
7が示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基であってもよく、メチル基であってもよい。
一般式(3)中のA
2及び一般式(3−1)中のA
3が示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
一般式(3)中のA
2が示す炭素数1〜5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基等が挙げられる。
【0040】
また、前記ジアミン化合物は、アミノ基を2個有する化合物であれば、特に制限されるものではない。
ジアミン化合物としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス{1−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−メチルエチル}ベンゼン、1,4−ビス{1−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1−メチルエチル}ベンゼン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、有機溶媒への溶解性、合成時の反応性及び耐熱性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。また、ジアミン化合物は、誘電特性及び低吸水性という観点からは、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。また、導体との高接着性及び機械特性の観点からは、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。さらに、有機溶媒への溶解性、合成時の反応性、耐熱性、導体との高接着性の観点、並びに優れた高周波特性と低吸湿性を発現できるという観点から、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましく、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリンがより好ましい。
【0041】
ポリイミド化合物(a1)中における、ジアミン化合物由来の構造単位の含有量は、仕込み量換算で、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。ジアミン化合物は由来の構造単位の含有量を上記範囲内とすることにより、より良好な高周波特性、耐熱性、難燃性、及びガラス転移温度が得られる傾向にある。
【0042】
ジアミン化合物由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(6−1)で表される基、下記一般式(6−2)で表される基等が挙げられる。
【0044】
一般式(6−1)及び(6−2)中、A
4はジアミン化合物の残基を示し、*は結合部を示す。
【0045】
A
4が示す残基としては、下記一般式(7)で表される2価の基であることが好ましい。
【0046】
【化8】
(式中、R
8及びR
9は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示し、A
5は炭素数1〜5のアルキレン基若しくはアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基、フルオレニレン基、単結合、下記一般式(7−1)又は下記一般式(7−2)で表される基である。)
【0047】
【化9】
(式中、R
10及びR
11は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
6は炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m−又はp−フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)
【0048】
【化10】
(式中、R
12は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、A
7及びA
8は炭素数1〜5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルフォニル基、カルボオキシ基、ケトン基又は単結合である。)
【0049】
一般式(7)中のR
8及びR
9、一般式(7−1)中のR
10及びR
11、一般式(7−2)中のR
12が示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基は、前記一般式(2)中のR
1が示す炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基と同様に説明される。
一般式(7)中のA
5、一般式(7−1)中のA
6、一般式(7−2)中のA
7及びA
8が示す炭素数1〜5のアルキレン基としては、前記一般式(3)中のA
2が示す炭素数1〜5のアルキレン基と同様に説明される。
一般式(7)中のA
5が示す炭素数1〜5のアルキリデン基としては、前記一般式(3)中のA
2が示す炭素数1〜5のアルキリデン基と同様に説明される。
【0050】
ポリイミド化合物(a1)は、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との高接着性及びフィルムの成形性等の点から、下記一般式(8)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物を含有することが好ましい。
【0051】
【化11】
(式中、A
9は前記一般式(1−1)のA
1と同様に説明され、A
10は前記一般式(6−1)のA
4と同様に説明される。)
【0052】
(ポリイミド化合物(a1)の製造方法)
ポリイミド化合物(a1)は、例えば、マレイミド化合物とジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させることで製造することができる。
ポリイミド化合物(a1)を製造する際に使用される有機溶媒は特に制限はなく、公知の溶媒を使用できる。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが溶解性の観点から好ましい。
【0053】
ポリイミド化合物(a1)を製造する際のマレイミド化合物とジアミン化合物の使用量は、ジアミン化合物の−NH
2基当量(Ta2)と、マレイミド化合物のマレイミド基当量(Ta1)との当量比(Ta2/Ta1)が0.05〜10.0が好ましく、0.05〜1.0がより好ましく、0.1〜0.8がさらに好ましい。上記範囲内でマレイミド化合物とジアミン化合物を反応させることにより、より良好な高周波特性、耐熱性、難燃性、及びガラス転移温度が得られる傾向にある。
【0054】
マレイミド化合物とジアミン化合物とを反応させてポリイミド化合物(a1)を製造する際には、反応触媒を必要に応じて使用することもできる。反応触媒としては、制限されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、反応触媒の配合量は特に限定されないが、例えば、マレイミド化合物及びジアミン化合物の合計量100質量部に対して、0.01〜5.0質量部の範囲で使用することができる。
【0055】
マレイミド化合物、ジアミン化合物、有機溶媒及び必要により反応触媒等を合成釜に所定量仕込み、マイケル付加反応させることによりポリイミド化合物(a1)が得られる。この工程での反応条件は、特に限定されないが、反応速度等の作業性及びゲル化抑制等の観点から、例えば、反応温度は50〜160℃、反応時間は1〜10時間とすることが好ましい。
また、この工程では前述の有機溶媒を追加又は濃縮して、反応原料の固形分濃度、溶液粘度を調整してもよい。反応原料の固形分濃度としては、特に制限されないが、例えば、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。反応原料の固形分濃度が10質量%以上であると、反応速度が遅くなりすぎず、製造コストの面で有利である。また、反応原料の固形分濃度が90質量%以下であると、良好な溶解性が得られ、攪拌効率が良く、ゲル化することも少ない。
なお、ポリイミド化合物(a1)の製造後に、目的に合わせて有機溶媒の一部又は全部を除去して濃縮してもよく、有機溶媒を追加して希釈してもよい。追加で使用される有機溶媒としては、ポリイミド化合物(a1)の製造方法の説明にて例示した有機溶媒が適用できる。
【0056】
ポリイミド化合物(a1)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、800〜10,000が好ましく、800〜8,000がより好ましく、800〜5,000がさらに好ましく、1,000〜5,000が特に好ましく、1,500〜4,000が最も好ましい。ポリイミド化合物(a1)の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0057】
(ポリイミド化合物(a1)の含有量)
樹脂組成物中におけるポリイミド化合物(a1)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中に含まれる全樹脂成分に対して40〜95質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜85質量%がさらに好ましい。ポリイミド化合物(a1)の含有量を前記範囲内とすることにより、絶縁信頼性に優れ、低熱膨張率、高ガラス転移温度、良好な誘電正接が得られる傾向にある。
【0058】
<無機充填材(a2)>
無機充填材(a2)としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より低熱膨張化させる観点から、シリカが好ましい。
【0059】
無機充填材(a2)の形状に特に制限はなく、例えば、球状、破砕状、針状又は板状のいずれであってもよいが、樹脂組成物中における分散性向上、有機溶媒に樹脂組成物を溶解又は分散させた樹脂ワニス中における分散性向上、樹脂ワニスの粘度低減による流動性向上、樹脂組成物から形成される絶縁層の表面粗度の増大抑制等の観点から、球状であることが好ましい。
【0060】
無機充填材(a2)の体積平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましく、0.2〜1μmがさらに好ましい。成分(a2)の体積平均粒径が5μm以下であれば、層間絶縁層上に回路パターンを形成する際にファインパターンの形成をより安定的に行える傾向にある。また、無機充填材(a2)の体積平均粒径が0.1μm以上であれば、耐熱性がより良好となる傾向にある。
なお、体積平均粒径とは、粒子の全体積を100%として、粒子径による累積度数分布曲線を求めたときの体積50%に相当する点の粒径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0061】
また、無機充填材(a2)の分散性及び無機充填材(a2)と樹脂組成物中の有機成分との接着性を向上させる目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用してもよい。カップリング剤としては特に限定されず、例えば、各種のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材(a2)の分散性向上の観点、及び無機充填材(a2)と有機成分との接着性向上の観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
また、カップリング剤を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、無機充填材(a2)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。この範囲であれば、無機充填材(a2)の使用による特長をより効果的に発揮できる。
カップリング剤を用いる場合、その添加方式は、樹脂組成物中に無機充填材(a2)を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいし、より効果的に無機充填材(a2)の特長を発現させる観点から、配合前の無機充填材に対して予めカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理する方式でもよい。
【0062】
無機充填材(a2)は、樹脂組成物への分散性を高める観点から、予め有機溶媒中に分散させたスラリーの状態で用いることが好ましい。無機充填材(a2)のスラリーに使用される有機溶媒に特に制限はないが、例えば、上述したポリイミド化合物(a1)の製造工程で例示した有機溶媒が適用できる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの有機溶媒の中でも、分散性をより一層高める観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
無機充填材(a2)のスラリーの固形分濃度に特に制限はないが、例えば、無機充填材(a2)の沈降性及び分散性の観点から、50〜80質量%が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
無機充填材(a2)の含有量は、求める特性及び機能によって適宜選択できるが、樹脂組成物の固形分に対して、55体積%以上が好ましく、55〜85体積%がより好ましく、55〜80体積%がさらに好ましく、55〜75体積%が特に好ましい。無機充填材の含有量をこのような範囲にすることで、低い熱膨張率を有することができる。
なお、本明細書において、樹脂組成物に含まれる固形分とは、樹脂組成物を構成する成分から揮発性の成分を除外した残分を意味する。
【0063】
<エラストマ(a3)>
A層用の樹脂組成物は、エラストマ(a3)を含有していてもよい。エラストマ(a3)としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン系エラストマ、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ、これらのエラストマの誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
エラストマ(a3)としては、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものを用いることができる。反応性官能基としては、例えば、無水マレイン酸基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、アクリル基、メタクリル基及びビニル基からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、金属箔との密着性の点から、無水マレイン酸基、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、誘電特性の点から、無水マレイン酸基がさらに好ましい。これらの反応性官能基を有することにより、樹脂への相溶性が向上し、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(a2)と樹脂成分との分離が抑制される傾向にある。同様の観点から、エラストマ(a3)は無水マレイン酸によって変性されたエラストマであることが好ましい。
【0065】
ポリブタジエン系エラストマは、1,2−ビニル基を含む、1,4−トランス体と1,4−シス体との構造体からなるものが好適に挙げられる。
ポリブタジエン系エラストマとしては、樹脂への相溶性が向上し、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(a2)と樹脂成分との分離が抑制される観点から、反応性官能基を有するものが好ましく、特に酸無水物で変性されているポリブタジエン系エラストマが好ましい。酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
エラストマ(a3)が酸無水物で変性されている場合、エラストマ(a3)1分子中に含まれる酸無水物由来の基(以下、「酸無水物基」ともいう)の数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。酸無水物基の数が1分子中に1以上であると、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(a2)と樹脂成分との分離がより抑制される傾向にある。また、酸無水物基の数が1分子中に10以下であると、樹脂組成物の誘電正接がより低くなる傾向にある。エラストマ(a3)が無水マレイン酸で変性されている場合、上記と同様の観点から、エラストマ(a3)1分子中に含まれる無水マレイン酸由来の基(以下、「無水マレイン酸基」ともいう)の数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。
ポリブタジエン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、例えば、「POLYVEST(登録商標)MA75」、「POLYVEST(登録商標)EP MA120」(以上、エボニック社製、商品名)、「Ricon(登録商標)130MA8」、「Ricon(登録商標)131MA5」、「Ricon(登録商標)184MA6」(以上、クレイバレー社製、商品名)等が挙げられる。
【0066】
スチレン系エラストマとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー等が好適に挙げられる。スチレン系エラストマを構成する成分としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。スチレン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「タフプレン(登録商標)」、「アサプレン(登録商標)T」、「タフテック(登録商標)H」、「タフテック(登録商標)MP10」、「タフテック(登録商標)M1911」、「タフテック(登録商標)M1913」(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、「エポフレンド(登録商標)AT501」、「エポフレンド(登録商標)CT310」(以上、株式会社ダイセル製)等が挙げられる。
【0067】
オレフィン系エラストマとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンの共重合体が挙げられ、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が好適に挙げられる。また、前記α−オレフィンと、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜20の非共役ジエンとの共重合体が挙げられる。さらには、ブタジエン−アクニロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBR等が挙げられる。オレフィン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「PB3600」、「PB4700」(以上、株式会社ダイセル製)、「G−1000」、「G−2000」、「G−3000」、「JP−100」、「JP−200」、「BN−1015」、「TP−1001」、「TEA−1000」、「EA−3000」、「TE−2000」、「EMA−3000」(以上、日本曹達株式会社製)、「デナレックス(登録商標)R45」(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
ウレタン系エラストマは、例えば、短鎖ジオールとジイソシアネートとからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートとからなるソフトセグメントとを含有するものが好適に挙げられる。
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン−1,4−ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6−ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6−へキシレン・ネオペンチレンアジペート)等が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500〜10,000が好ましい。
短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48〜500が好ましい。
ウレタン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「PANDEX(登録商標)T−2185」、「PANDEX(登録商標)T−2983N」(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
ポリエステル系エラストマとしては、例えば、ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、レゾルシン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、ポリエステル系エラストマとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体が好適に挙げられる。マルチブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いにより様々なグレードのものがある。その具体例としては、「ハイトレル(登録商標)」(デュポン・東レ株式会社製)、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡績株式会社製)、「エスペル(登録商標)」(日立化成株式会社製)等が挙げられる。
【0071】
ポリアミド系エラストマとしては、例えば、ポリアミドをハードセグメント成分、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、シリコーンゴム等をソフトセグメント成分としたブロック共重合体が挙げられる。
ポリアミド系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「UBEポリアミドエラストマ」(宇部興産株式会社製)、「ダイアミド(登録商標)」(ダイセル・エボニック株式会社製)、「PEBAX(登録商標)」(東レ株式会社製)、「グリロン(登録商標)ELY」(エムスケミー・ジャパン株式会社製)、「ノバミッド(登録商標)」(三菱化学株式会社製)、「グリラックス(登録商標)」(DIC株式会社製)、「BPAM−01」、「BPAM−155」(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
アクリル系エラストマとしては、例えば、アクリル酸エステルを主成分とする原料モノマーの重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等が好適に挙げられる。また、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等を共重合させたものであってもよく、さらに、アクリロニトリル、エチレン等を共重合させたものであってもよい。具体的には、アクリロニトリル−ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0073】
シリコーン系エラストマは、オルガノポリシロキサンを主成分とするエラストマであり、例えば、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系等に分類される。シリコーン系エラストマは、市販品として入手可能であり、その具体例としては、「X−22−163B」、「X−22−163C」、「X−22−1821」、「X−22−162C」(以上、信越化学工業株式会社製)、コアシェル型シリコーンゴム「SYシリーズ」(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)、「SEシリーズ」、「CYシリーズ」、「SHシリーズ」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
これらのエラストマの中でも、耐熱性、絶縁信頼性の点から、スチレン系エラストマ、ポリブタジエン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、シリコーン系エラストマが好ましく、誘電特性の点から、ポリブタジエン系エラストマ、スチレン系エラストマがより好ましく、ポリブタジエン系エラストマがさらに好ましい。
【0075】
エラストマ(a3)の重量平均分子量は、500〜50,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましい。エラストマ(a3)の重量平均分子量が500以上であると、樹脂組成物の硬化性及び硬化物の誘電特性がより良好となる傾向にある。また、エラストマ(a3)の重量平均分子量が50,000以下であると、層間絶縁層を形成した際の無機充填材(a2)と樹脂成分との分離が抑制される傾向にある。なお、エラストマ(a3)の重量平均分子量は、実施例に記載のポリイミド化合物(a1)の重量平均分子量の測定方法を適用できる。
【0076】
樹脂組成物がエラストマ(a3)を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。エラストマ(a3)の含有量を前記範囲内とすることにより、誘電正接が低く、フィルムにした際の取り扱い性に優れ、且つ層間絶縁層を形成した際の無機充填材(a2)と樹脂成分との分離が抑制される傾向にある。
【0077】
<その他の成分>
A層用の樹脂組成物には、必要に応じて、難燃剤、硬化促進剤等を含有してもよい。
樹脂組成物に難燃剤を含有させることで、より良好な難燃性を付与することができる。難燃剤としては特に限定されないが、例えば、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、金属水和物系難燃剤等が挙げられる。環境への適合性からは、リン系難燃剤、金属水和物系難燃剤が好ましい。
また、樹脂組成物に適切な硬化促進剤を含有させることで、樹脂組成物の硬化性を向上させ、誘電特性、耐熱性、高弾性率性、ガラス転移温度等をより向上させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、各種イミダゾール化合物及びその誘導体;各種第3級アミン化合物;各種第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等の各種リン系化合物などが挙げられる。
樹脂組成物には、その他にも酸化防止剤、流動調整剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0078】
(樹脂ワニス)
A層の製造に際し、A層用の前記樹脂組成物にさらに有機溶媒を含有させて樹脂ワニス(以下、A層用ワニスとも称する。)の状態にしておくことが好ましい。
A層用ワニスを製造するのに用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル;セロソルブ、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の(ジ)エチレングリコールモノアルキルエーテル又はプロピレングリコールモノアルキルエーテル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒の含有量は、A層用ワニスの全体100質量部に対して、10〜60質量部が好ましく、10〜35質量部がより好ましい。
このようにして製造したA層用ワニスを用いることによって、前述のとおり、本発明の複合フィルムを製造することができる。
【0079】
[B層の成分]
B層の成分としては、樹脂組成物が挙げられる。樹脂組成物としては、導体層との接着性を向上させるものであれば、特に限定されないが、例えば、表面粗さが小さくてもめっき銅との接着性に優れるという観点から、多官能エポキシ樹脂(b1)とフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(b2)を含有する樹脂組成物が好ましく、さらに活性エステル硬化剤(b3)を含有する樹脂組成物がより好ましい。以下、各成分について詳述する。
【0080】
<多官能エポキシ樹脂(b1)>
多官能エポキシ樹脂(b1)は、エポキシ基を2個以上有する樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂等が挙げられる。めっき銅との接着性の観点から、ビフェニル構造を有することが好ましく、ビフェニル構造を有する多官能エポキシ樹脂又はビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
多官能エポキシ樹脂(b1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
多官能エポキシ樹脂(b1)としては、市販品を用いてもよい。市販されている多官能エポキシ樹脂(b1)としては、ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂である、日本化薬株式会社製「NC−3000−H」、「NC−3000−L」、「NC−3100」、「NC−3000」等が挙げられる。
【0082】
多官能エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量としては、特に限定されないが、接着性の観点から、150〜450g/molが好ましく、200〜400g/molがより好ましく、250〜350g/molがさらに好ましい。
【0083】
B層用の樹脂組成物中の多官能エポキシ樹脂(b1)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。多官能エポキシ樹脂(b1)の含有量が、10質量%以上であれば、めっき銅とのより良好な接着強度が得られる傾向にあり、90質量%以下であれば、より低い誘電正接が得られる傾向にある。
【0084】
<フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(b2)>
成分(b2)は、フェノール性水酸基を有するポリブタジエン変性されたポリアミド樹脂であれば、特に制限はないが、ジアミン由来の構造単位と、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸由来の構造単位と、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸由来の構造単位と、両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエン由来の構造単位とを有するものが好ましい。具体的には、下記一般式(i)で表される構造単位、下記一般式(ii)で表される構造単位及び下記一般式(iii)で表される構造単位を有するものが好ましく挙げられる。
【0086】
一般式(i)〜(iii)中、a、b、c、x、y及びzは、それぞれ平均重合度を示す整数であって、a=2〜10、b=0〜3、c=3〜30、x=1に対しy+z=2〜300((y+z)/x)を示し、さらにy=1に対しz≧20(z/y)である。
一般式(i)〜(iii)中、R’はそれぞれ独立に、芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンに由来する2価の基を示し、一般式(iii)中、R’’は芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は両末端にカルボキシ基を有するオリゴマーに由来する2価の基を示す。
一般式(i)〜(iii)中に含まれる複数のR’同士は同一であっても異なっていてもよい。また、zが2以上の整数のとき、複数のR’’同士は同一であっても異なっていてもよい。
なお、一般式(i)〜(iii)中、R’は、具体的には、後述する芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンに由来する2価の基であり、R’’は、後述する芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は両末端にカルボキシ基を有するオリゴマーに由来する2価の基であることが好ましい。
【0087】
成分(b2)にジアミン由来の構造単位を形成するために使用するジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノジメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノジアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアミン、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレン等が挙げられる。
【0088】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヒドロキシプロパンジアミン、ブタンジアミン、へプタンジアミン、ヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、アザペンタンジアミン、トリアザウンデカジアミン等が挙げられる。
【0089】
成分(b2)が有する「フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸由来の構造単位」を形成するために使用するフェノール性水酸基を含有するジカルボン酸としては、例えば、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。
成分(b2)が有する「フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸由来の構造単位」を形成するために使用するフェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、両末端にカルボキシ基を有するオリゴマー等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、メチレン二安息香酸、チオ二安息香酸、カルボニル二安息香酸、スルホニル安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、ジ(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシりんご酸、(メタ)アクリルアミドコハク酸、(メタ)アクリルアミドりんご酸等が挙げられる。
【0090】
成分(b2)の重量平均分子量は、特に制限はないが、例えば、60,000〜250,000であることが好ましく、80,000〜200,000であることがより好ましい。成分(b2)の重量平均分子量は、前記ポリイミド化合物(a1)の重量平均分子量と同様の方法により求めることができる。
【0091】
成分(b2)の活性水酸基当量は、特に制限はないが、1,500〜7,000g/molが好ましく、2,000〜6,000g/molがより好ましく、3,000〜5,000g/molがさらに好ましい。
【0092】
成分(b2)は、例えば、ジアミンと、フェノール性水酸基を含有するジカルボン酸と、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸と、両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエンとを、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中で、触媒として亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で反応性させて、カルボキシ基とアミノ基とを重縮合させることにより合成される。製造に使用できる各化合物は、上記したものを例示できる。
【0093】
成分(b2)の製造に使用する両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエンとしては、例えば、数平均分子量が200〜10,000であることが好ましく、数平均分子量が500〜5,000のオリゴマーであることがより好ましい。
【0094】
成分(b2)としては、市販品を使用することができ、市販品の成分(b2)としては、例えば、日本化薬株式会社製の「BPAM−155」等が挙げられる。
【0095】
B層用の樹脂組成物中の成分(b2)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。成分(b2)の含有量が、1質量%以上であると、樹脂組成物の強靭性を高くすることができ、緻密な粗化形状が得られ、めっき銅との接着性を高めることができる。また、20質量%以下であれば、耐熱性の低下がなく、粗化工程時の薬液に対する耐性の低下も防ぐことができる。また、めっき銅との十分な接着性を確保できる。
【0096】
<活性エステル硬化剤(b3)>
活性エステル硬化剤(b3)は、エステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。
活性エステル硬化剤(b3)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族又は芳香族カルボン酸と脂肪族又は芳香族ヒドロキシ化合物とから得られるエステル化合物等が挙げられる。
これらの中でも、脂肪族カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ化合物等から得られるエステル化合物は、脂肪族鎖を含むことにより有機溶媒への可溶性及びエポキシ樹脂との相溶性を高くできる傾向にある。
また、芳香族カルボン酸、芳香族ヒドロキシ化合物等から得られるエステル化合物は、芳香族環を有することで耐熱性を高められる傾向にある。
【0097】
活性エステル硬化剤(b3)としては、例えば、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N−ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等が挙げられる。
より具体的には、例えば、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられ、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2〜4個をカルボキシ基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと芳香環の水素原子の2〜4個を水酸基で置換した多価フェノールとの混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステル等が好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
【0098】
活性エステル硬化剤(b3)としては、市販品を用いてもよい。活性エステル硬化剤(b3)の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC株式会社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC株式会社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学株式会社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
活性エステル硬化剤(b3)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
活性エステル硬化剤(b3)のエステル当量は、特に限定されないが、150〜400g/molが好ましく、170〜300g/molがより好ましく、200〜250g/molがさらに好ましい。
【0100】
樹脂組成物中の多官能エポキシ樹脂(b1)のエポキシ基に対する、活性エステル硬化剤(b3)のエステル基の当量比(エステル基/エポキシ基)は、0.05〜1.5が好ましく、0.1〜1.3がより好ましく、0.2〜1.0がさらに好ましい。当量比(エステル基/エポキシ基)が前記範囲内であると、めっき銅との接着強度をより高め、且つより低い誘電正接と平滑な表面を得られるため、微細配線を形成する観点から好適である。
【0101】
<リン系硬化促進剤(b4)>
B層用の樹脂組成物は、さらにリン系硬化促進剤(b4)を含有することが好ましい。
リン系硬化促進剤(b4)としては、リン原子を含有し、多官能エポキシ樹脂(b1)と活性エステル硬化剤(b3)との反応を促進させる硬化促進剤であれば特に制限なく使用することができる。
樹脂組成物は、リン系硬化促進剤(b4)を含有することによって、硬化反応をより一層十分に進めることができる。この理由は、リン系硬化促進剤(b4)を用いることによって、活性エステル硬化剤(b3)中のカルボニル基の電子求引性を高めることができ、これにより活性エステル硬化剤(b3)と多官能エポキシ樹脂(b1)との反応が促進されるためと推察される。
このように樹脂組成物は、リン系硬化促進剤(b4)を含有することにより、他の硬化促進剤を用いた場合より、多官能エポキシ樹脂(b1)と活性エステル硬化剤(b3)との硬化反応がより一層十分に進行するため、第一の樹脂層と組み合わせた際に、低い誘電正接が得られると考えられる。
【0102】
リン系硬化促進剤(b4)としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;第三級ホスフィンとキノン類との付加物などが挙げられる。硬化反応がより十分に進み、高いめっき銅との接着性を発揮できる観点から、第三級ホスフィンとキノン類との付加物が好ましい。
第三級ホスフィンとしては、特に限定されないが、例えば、トリ−n−ブチルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。また、キノン類としては、例えば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられる。めっき銅との接着性、耐熱性及び平滑な表面が得られる点から、トリ−n−ブチルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物がより好ましい。
【0103】
第三級ホスフィンとキノン類との付加物の製造方法としては、例えば、原料となる第三級ホスフィンとキノン類が共に溶解する溶媒中で両者を撹拌混合し、付加反応させた後、単離する方法等が挙げられる。この場合の製造条件としては、例えば、第三級ホスフィンとキノン類とを、20〜80℃の範囲で、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類などの溶媒中で、1〜12時間撹拌し、付加反応させることが好ましい。
【0104】
リン系硬化促進剤(b4)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、リン系硬化促進剤(b4)以外の硬化促進剤を1種以上併用してもよい。
【0105】
B層用の樹脂組成物中のリン系硬化促進剤(b4)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.4〜10質量%がさらに好ましい。リン系硬化促進剤(b4)の含有量が、0.1質量%以上であれば、硬化反応を十分進めることができ、20質量%以下であれば、硬化物の均質性を保つことができる。
【0106】
<充填材(b5)>
B層用の樹脂組成物は、充填材(b5)を含有していてもよい。充填材(H)としては、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。これらの中でも無機充填材が好ましい。
充填材(b5)を含有することで、B層をレーザー加工する際に樹脂の飛散をより低減できる。
【0107】
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、無機充填材(A)として例示したものと同様のものを使用できる。
無機充填材の粒子径は、B層上に微細配線を形成する観点から、小さいことが好ましい。同様の観点から、無機充填材の比表面積は、20m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましい。比表面積の上限に特に制限はないが、入手容易性の観点からは、500m
2/g以下が好ましく、200m
2/g以下がより好ましい。
比表面積は、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法で求めることができる。具体的には、粉体粒子表面に、窒素等の吸着占有面積が既知の分子を液体窒素温度で吸着させ、その吸着量から粉体粒子の比表面積を求めることができる。
比表面積が20m
2/g以上の無機充填材としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ヒュームドシリカである「AEROSIL(登録商標)R972」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積110±20m
2/g)、「AEROSIL(登録商標)R202」(日本アエロジル株式会社製、商品名、比表面積100±20m
2/g)、コロイダルシリカである「PL−1」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積181m
2/g)、「PL−7」(扶桑化学工業株式会社製、商品名、比表面積36m
2/g)等が挙げられる。また、耐湿性を向上させる観点からは、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理された無機充填材であることが好ましい。
【0108】
B層用の樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。無機充填材の含有量が、1質量%以上であると、より良好なレーザー加工性が得られる傾向にあり、30質量%以下であると、B層と導体層との接着性がより向上する傾向にある。
【0109】
有機充填材としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸との共重合体等のアクリロニトリルブタジエンの共重合物;ポリブタジエン、NBR、シリコーンゴム等をコアとし、アクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア−シェルゴム粒子などが挙げられる。有機充填材を含有することで、樹脂層の伸び性がより向上する傾向にある。
【0110】
<その他の成分>
B層用の樹脂組成物は、上記各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、並びに難燃剤、酸化防止剤、流動調整剤、硬化促進剤等の添加剤などを含有することができる。
【0111】
本発明の複合フィルムは、硬化物の5GHzの誘電正接が0.005以下であることが好ましく、0.0040以下であることがより好ましい。下限値に特に制限はないが、0.002以上であってもよく、0.0030以上であってもよい。なお、該誘電正接は、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0112】
[プリント配線板及びその製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の複合フィルムの硬化物を含有する。換言すると、本発明のプリント配線板は、層間絶縁層を有し、当該層間絶縁層のうち少なくとも一層が前記樹脂組成物を含む。
以下では、本発明の複合フィルムを回路基板にラミネートし、多層プリント配線板を製造する方法について説明する。
【0113】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、次の工程(1)を有する。より詳細には、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、次の工程(1)〜(5)の工程を含み、工程(1)、工程(2)又は工程(3)の後で、支持体を剥離又は除去してもよい。
工程(1):本発明の複合フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートする工程
工程(2):複合フィルムを硬化し、層間絶縁層を形成する工程
工程(3):層間絶縁層を形成した回路基板に穴あけする工程
工程(4):層間絶縁層の表面を粗化処理する工程
工程(5):粗化された層間絶縁層の表面にめっきする工程
【0114】
<工程(1)>
工程(1)は、本発明の複合フィルムを、回路基板の片面又は両面にラミネートする工程である。複合フィルムをラミネートする装置としては、例えば、真空ラミネーターが挙げられる。真空ラミネーターとしては市販品を用いることができ、市販品の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン株式会社製のバキュームアップリケーター、株式会社名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、日立インダストリーズ株式会社製のロール式ドライコーター、日立エーアイシー株式会社製の真空ラミネーター等が挙げられる。
【0115】
ラミネートにおいて、複合フィルムが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、複合フィルムを加圧及び/又は加熱しながら回路基板に圧着する。
複合フィルムを用いる場合、A層が、回路基板の回路が形成されている面に対向するように配置する。
ラミネートの条件は、複合フィルム、及び回路基板を必要に応じてプレヒートし、圧着温度(ラミネート温度)を60〜140℃、圧着圧力を0.1〜1.1MPa(9.8×
104〜107.9×
104N/m
2)、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートしてもよい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であっても、ロールでの連続式であってもよい。
基板は通常、回路又は部品による段差を有するが、本発明の複合フィルムを基板にラミネートした後、該段差を複合フィルムのA層によって十分に充填できる。充填の程度が十分となるようにする観点から、ラミネート温度は、特に70〜130℃が好ましい。
【0116】
<工程(2)>
工程(2)は、複合フィルムを硬化し、層間絶縁層を形成する工程である。硬化は、熱硬化であってもよいし、活性エネルギー線による硬化であってもよい。熱硬化の条件は特に限定されないが、例えば、170〜220℃で20〜80分の範囲で選択することができる。活性エネルギー線としては、前述の通りである。
なお、硬化させた後に、支持体を剥離してもよい。
【0117】
<工程(3)>
工程(3)は、層間絶縁層を形成した回路基板に穴あけする工程である。本工程では、層間絶縁層及び回路基板にドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により、穴あけを行い、ビアホール、スルーホール等を形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等が一般的に用いられる。
【0118】
<工程(4)>
工程(4)は、層間絶縁層の表面を粗化処理する工程である。本工程では、工程(2)で形成した層間絶縁層の表面を酸化剤により粗化処理を行うと同時に、ビアホール、スルーホール等が形成されている場合には、これらを形成する際に発生する「スミア」の除去を行うこともできる。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらの中でも、ビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における層間絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤であるアルカリ性過マンガン酸溶液(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム溶液)を用いて粗化、及びスミアの除去を行ってもよい。
【0119】
<工程(5)>
工程(5)は、粗化された層間絶縁層の表面にめっきする工程である。複合フィルムのB層は、セミアディティブ法に適応できる層である。そのため、本工程では、層間絶縁層の表面に無電解めっきにて給電層を形成し、次いで導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、電解めっきにより導体層(回路)を形成する、セミアディティブ法を用いることができる。
なお、導体層形成後、例えば、150〜200℃で20〜120分間アニール処理を施すことにより、層間絶縁層と導体層との接着強度を向上及び安定化させることができる。
【0120】
更に、このようにして作製された導体層の表面を粗化する工程を有していてもよい。導体層の表面の粗化は、導体層に接する樹脂との接着性を高める効果を有する。導体層を粗化する処理剤としては、特に限定されないが、例えば、有機酸系マイクロエッチング剤である、メックエッチボンドCZ−8100、メックエッチボンドCZ−8101、メックエッチボンドCZ−5480(以上、メック株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0121】
以上の製造方法の中でも、本発明の特徴より、以下のプリント配線板の製造方法が好ましい態様の一例として挙げられる。
前記複合フィルムを用いて、表面に回路又は部品による段差を有する基板に前記複合フィルムのA層側を貼付し、前記段差を充填する工程、
前記複合フィルムのA層及びB層を硬化する工程、
前記複合フィルムのB層側の面上にセミアディティブ法で回路を形成する工程、
を有する、プリント配線板の製造方法。
【0122】
本発明の複合フィルム及びプリント配線板は、1GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に特に好適に用いることができ、特に5GHz以上の高周波信号、10GHz以上の高周波信号又は30GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。つまり、本発明の複合フィルムは、高周波帯域の信号を使用する電子機器用複合フィルムとして有用である。
【0123】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本発明の請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0125】
製造例1(ポリイミド化合物(a1)の製造)
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積1Lのガラス製フラスコ容器に、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI−TMH)100質量部、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業株式会社製、商品名:BMI−4000)418質量部、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン(三井化学ファイン株式会社製、商品名:ビスアニリンM)72質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル909質量部を投入し、還流させながら、液温120℃で、撹拌しながら3時間反応させた。
その後、後述する測定方法により、反応物の重量平均分子量が3,000であることを確認し、冷却及び200メッシュ濾過してポリイミド化合物(a1)(固形分濃度:65質量%)を製造した。
【0126】
<重量平均分子量の測定方法>
得られたポリイミド化合物(a1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40)[東ソー株式会社製、商品名])を用いて3次式で近似した。GPCの条件を以下に示す。
装置:ポンプ:L−6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L−3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L−655A−52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR−L + カラム;TSK gel−G4000HHR+TSK gel−G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0127】
<A層用ワニスの製造方法>
製造例2(ワニスA1の製造)
無機充填材(a2)として、アミノシランカップリング剤処理を施したシリカ(株式会社アドマテックス製、商品名:SC−2050−KNK、固形分濃度70質量%のメチルイソブチルケトン分散液)65体積%(有機溶剤を含まない全体積に対して。)と、エラストマ(a3)として、ポリブタジエン系エラストマ(エボニック社製、商品名:POLYVEST 75MA)20質量%(全樹脂成分、つまり無機充填材及び有機溶剤を含まない全成分に対して。)となる配合比率で混合した。
そこに製造例1で得たポリイミド化合物(a1)を、ポリイミド化合物(a1)の含有量が、樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対して80質量%となる比率で混合し、高速回転ミキサーにより室温で溶解させた。
ポリイミド化合物(a1)が溶解したことを目視で確認した後、難燃剤として1,3−フェニレンビス(ジ2,6−キシレニルホスフェート)(大八化学工業株式会社製、商品名:PX−200)を1.0質量%、酸化防止剤として4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(三菱化学株式会社製、商品名:ヨシノックス(登録商標)BB)(以下、「ヨシノックスBB」ともいう)を0.1質量%、流動調整剤として「BYK310」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名、固形分濃度25質量%のキシレン溶液)0.1質量%(固形分)を混合した(但し、いずれの含有量も、樹脂組成物に含まれる固形分に対する値である。)。その後、硬化促進剤として、有機過酸化物(日油株式会社製、商品名:パーブチルP)を、ポリイミド化合物(a1)の仕込み量から換算される原料(マレイミド化合物)とポリブタジエン系エラストマ(a3)に対して1.0phr、イソシアネートマスクイミダゾール(第一工業製薬株式会社製、商品名:G8009L)を、ポリイミド化合物(a1)の仕込み量から換算される原料のマレイミド化合物に対して0.5phr混合した。次いで、ナノマイザー処理によって分散し、ワニスA1を得た。
【0128】
製造例3(ワニスA2の製造)
製造例2において、無機充填材(a2)の使用量を60体積%に変更した以外は同様に操作を行い、ワニスA2を得た。
【0129】
製造例4(ワニスA3の製造)
製造例2において、無機充填材(a2)の使用量を57体積%に変更した以外は同様に操作を行い、ワニスA3を得た。
【0130】
製造例5(ワニスA4の製造:比較用)
製造例2において、無機充填材(a2)の使用量を70体積%に変更した以外は同様に操作を行い、ワニスA4を得た。
【0131】
<B層用ワニスの製造方法>
製造例6(ワニスB1の製造)
樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して6.4質量%のフェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:BPAM−155)を、その固形分濃度が1.6質量%となるように、ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノンの混合溶媒[ジメチルアセトアミド/シクロヘキサノン(質量比)=7/3]に溶解させた。溶解後、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H、エポキシ当量289g/mol)を樹脂組成物に含まれる固形分100質量%に対して57.2質量%、無機充填材(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル(登録商標)R972、比表面積110±20m
2/g)を樹脂組成物に含まれる固形分に対して8.8質量%、酸化防止剤(株式会社エーピーアイコーポレーション製、商品名:ヨシノックス(登録商標)BB)を樹脂組成物に含まれる固形分に対して0.4質量%、フェノキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:YX7200、メチルエチルケトン希釈品(35質量%))を樹脂組成物に含まれる固形分に対して、固形分換算で9.1質量%、活性エステル硬化剤(DIC株式会社製、商品名:HPC−8000−65T(トルエン希釈品(65質量%))を樹脂組成物に含まれる固形分に対して、固形分換算で14.6質量%、流動調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、商品名:BYK−310(ワニスA1の製造時に用いたものと同じ))を樹脂組成物に含まれる固形分に対して、固形分換算で0.1質量%、リン系硬化促進剤(トリ−n−ブチルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物)を樹脂組成物に含まれる固形分に対して3.4質量%配合して溶解させ、固形分濃度が18質量%になるようにメチルエチルケトンでワニスを希釈した。その後、ナノマイザー処理によって分散し、ワニスB1を得た。
【0132】
製造例7(ワニスB2の製造)
製造例6において、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂の代わりに、フェノキシ樹脂[三菱化学株式会社製、商品名:YX7200、メチルエチルケトン希釈品(固形分濃度:35質量%)]を、樹脂組成物に含まれる固形分に対して、固形分換算で15質量%にした以外は同様に操作を行い、ワニスB2を得た。
【0133】
(1.溶融粘度の測定方法)
前記製造例で得たA層用のワニスA1〜A4を用いて、離型処理された支持体(PETフィルム、東レフィルム加工株式会社製、商品名:セラピールSY(RX)、厚さ38μm)に、乾燥後の厚さが25μmとなるようにコンマコーターを用いて塗工し、90℃で2分間乾燥することにより、支持体上にフィルムA1〜A4を形成した。
また、同様に、前記製造例で得たB層用のワニスB1〜B2を用いて、離型処理された支持体(PETフィルム、東レフィルム加工株式会社製、商品名:セラピールSY(RX)、厚さ38μm)に、乾燥後の厚さが2.5μmとなるようにコンマコーターを用いて塗工し、140℃で3分間乾燥して、支持体上にフィルムB1〜B2を形成した。
これらのフィルムA1〜A4及びB1〜B2について、下記方法に従って溶融粘度を測定した。80〜150℃における最低溶融粘度を表1に示す。
【0134】
上記各フィルムA1について、硬化が進まない温度で任意の枚数を貼り合わせることにより、厚み100μmの1つのシートとし、該シートを10mm×10mmに切断したものを試験片A1とした。フィルムA2〜A4及びフィルムB1〜B2についても同様にして試験片A2〜A4及びB1〜B2を作製した。なお、前記試験片の作製において、下記のずり粘度測定中に貼り合わせ面において剥離が生じない程度に各フィルムを貼り合わせた。
溶融粘度は、回転型レオメーター(TAインスツルメント社製、ARES)を用い、平行円板(直径8mm)に前記フィルムをフィルム厚より2〜5μm小さなギャップ幅で挟み、周波数1Hz、歪み1%で、昇温速度5℃/分で30℃から300℃まで測定した際の複素粘度の値とし、80〜150℃における最低溶融粘度に着目した。
【0135】
【表1】
【0136】
<複合フィルムの製造>
実施例1
B層用の前記ワニスB1を、離型処理された支持体(PETフィルム、東レフィルム加工株式会社製、商品名:セラピールSY(RX)、厚さ38μm)に、乾燥後のB層の厚さが2.5μmとなるようにコンマコーターを用いて塗工し、140℃で3分間乾燥して、支持体上にB層を形成した。
次いで、該B層の樹脂層の上に、A層用の前記ワニスA1を、乾燥後のA層の厚さが27.5μmとなるようにコンマコーターを用いて塗工し、90℃で2分間乾燥して複合フィルムを得た。
さらに、該A層の表面に、保護フィルムとして厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取り、支持体及び保護フィルムを有する複合フィルム1を得た。
【0137】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1において、表2に記載のワニスを用い、表2に記載の厚みのフィルムとしたこと以外は同様に操作を行い、複合フィルム2〜8を得た。該複合フィルムを用いて、誘電正接、表面平坦性、表面粗さ、めっき銅との接着性、及び埋め込み性について、以下の方法に従って評価した。結果を表2に示す。
【0138】
<樹脂板の作製>
誘電正接の測定に用いた樹脂板は、以下の手順により作製した。
(I)各例で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムから保護フィルムを剥離した後、120℃で3分間乾燥した。
次に、乾燥後の支持体を有する複合フィルムを、真空加圧式ラミネーター(株式会社名機製作所製、商品名:MVLP−500/600−II)を用いて、銅箔(電界銅箔、厚さ35μm)の光沢面上に、複合フィルムの樹脂層と銅箔とが当接するようにラミネートして、銅箔、複合フィルム、支持体がこの順に積層された積層体(P)を得た。前記ラミネートは、30秒間減圧して圧力を0.5MPaとした後、120℃、30秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。その後、積層体(P)から支持体を剥離した。
(II)次に、支持体としてのPETフィルム及び保護フィルムとしてのポリプロピレンフィルムを有する別の複合フィルムを準備し、保護フィルムを剥離した後、110℃で3分間の乾燥を行った。
(III)次に、上記(I)で得られた支持体を剥離した積層体(P)と、上記(II)で得られた乾燥後の支持体を有する複合フィルムとを、樹脂層同士が当接するように、前記(I)と同様の条件でラミネートして、銅箔、複合フィルム2層からなる層、支持体がこの順に積層された積層体(Q)を得た。その後、積層体(Q)から支持体を剥離した。
(IV)次に、上記(III)で得られた支持体を剥離した積層体(Q)と、上記(II)と同様の方法により得られた乾燥後の支持体を有する複合フィルムとを、樹脂層同士が当接するように、前記(I)と同様の条件でラミネートして、銅箔、複合フィルム3層からなる層、支持体がこの順に積層された積層体(R)を得た。
(V)前記(I)〜(III)と同様の方法により、積層体(Q)を作製した。
(VI)上記(V)で得られた積層体(Q)と、上記(I)〜(IV)で得られた積層体(R)の支持体をそれぞれ剥離し、積層体(Q)と積層体(R)の樹脂層同士を貼り合わせ、圧着圧力3.0MPaで190℃、60分間、真空プレスを用いてプレス成型を行った。得られた両面銅箔付き樹脂板を、190℃で2時間硬化させた後、過硫酸アンモニウムで銅箔をエッチングすることで、樹脂板を得、誘電正接の測定に利用した。
【0139】
[2.誘電正接の測定方法]
上記で作製された樹脂板を幅2mm、長さ70mmの試験片に切り出し、ネットワークアナライザー(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:E8364B)と5GHz対応空洞共振器(株式会社関東電子応用開発製)を用いて、誘電正接を測定した。測定温度は25℃とした。誘電正接が低いほど、誘電特性に優れることを示す。
【0140】
<表面粗さ測定用基板の作製方法>
表面粗さ測定用基板を以下の手順により作製した。
各例で得られた支持体及び保護フィルムを有する複合フィルムを、240mm×240mmのサイズに切断した後、保護フィルムを剥離した。
得られた支持体を有する複合フィルムを、CZ処理が施されたプリント配線板(日立化成株式会社製、商品名:E−700GR)上に、A層とプリント配線板とが当接するようにラミネートした。ラミネートは、120℃、30秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。
その後、室温に冷却し、複合フィルムを配したプリント配線板を得た。次に、複合フィルムを配したプリント配線板を、支持体を付けたまま、第一段階目の硬化として130℃で20分間防爆乾燥機中で硬化を行い、その後、第二段階目の硬化として190℃で40分間防爆乾燥機中で硬化を行った。その後、支持体を剥離して、層間絶縁層が形成されたプリント配線板を得た。
【0141】
(粗化処理方法)
上記表面粗さ測定用基板の製造方法により得られたプリント配線板を、60℃に加温した膨潤液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:スウェリングデップセキュリガント(登録商標)P)に10分間浸漬処理した。次に、80℃に加温した粗化液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:コンセートレートコンパクトCP)に15分間浸漬処理した。引き続き、40℃に加温した中和液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:リダクションソリューションセキュリガント(登録商標)P500)に5分間浸漬処理して中和した。このようにして、層間絶縁層の表面を粗化処理したものを、表面粗さ測定用基板として用いた。
【0142】
[3.表面粗さの測定方法:表面平坦性]
上記で得られた表面粗さ測定用基板の表面粗さを、比接触式表面粗さ計(ブルカーエイエックスエス株式会社製、商品名:wykoNT9100)を用い、内部レンズ1倍、外部レンズ50倍を用いて測定し、算術平均粗さ(Ra)を得、表面平坦性の指標とした。
表面平坦性の観点から、算術平均粗さ(Ra)は小さい方が好ましく、特に200nm未満であると微細配線形成に好適である。また、95nm以上であると、充分なピール強度を発揮できる。この観点から、表面平坦性について、表面粗さが95nm未満の場合にはb、95nm以上200nm未満の場合にはa、200nm以上の場合にはcと評価した。
【0143】
[4.めっき銅との接着性の評価方法]
(1)めっき銅との接着強度(めっきピール強度)測定用基板の作製方法
まず、表面粗さ測定用基板と同様の方法で作製した複合フィルム付きプリント配線板を、40mm×60mmに切り出し、試験片とした。
該試験片を、表面粗さ測定用基板と同様の条件で粗化処理した後、60℃のアルカリクリーナー(アトテックジャパン株式会社製、商品名:クリーナーセキュリガント(登録商標)902)で5分間処理し、脱脂洗浄した。洗浄後、23℃のプリディップ液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:プリディップネオガント(登録商標)B)で2分間処理した。その後、40℃のアクチベーター液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:アクチベーターネオガント(登録商標)834)で5分間処理を施し、パラジウム触媒を付着させた。次に、30℃の還元液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:リデューサーネオガント(登録商標)WA)で5分間処理した。
上記の処理を行った試験片を、化学銅液(アトテックジャパン株式会社製、商品名:ベーシックプリントガント(登録商標)MSK−DK)に入れ、層間絶縁層上のめっき厚さが1μmになるまで、無電解めっきを行った。無電解めっき後に、めっき皮膜中に残存している応力を緩和し、残留している水素ガスを除去するために、120℃で15分間ベーク処理を施した。
次に、無電解めっき処理された試験片に対して、さらに層間絶縁層上のめっき厚さが35μmになるまで電解めっきを行い、導体層として銅層を形成した。電解めっき後、190℃で120分間アニール処理をして、接着強度測定部作製前の測定基板を得た。
得られた測定基板の銅層に10mm幅のレジストを形成し、過硫酸アンモニウムで銅層をエッチングすることにより、接着強度測定部として10mm幅の銅層を有する、めっき銅との接着強度測定用基板を得た。
【0144】
(2)めっき銅との接着強度の測定条件
接着強度測定用基板に形成した接着強度測定部の銅層の一端を、銅層と層間絶縁層との界面で剥がしてつかみ具でつかみ、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZT Test)を用いて、垂直方向に引っ張り速度50mm/分、室温中で引き剥がしたときの荷重を測定し、得られた接着強度(kN/m)を、めっき銅との接着性の指標とした。値が大きいほど、めっき銅との高接着性を有することを示す。
【0145】
[埋め込み性の評価方法]
各例で得られた複合フィルムを、240mm×240mmのサイズに切断した後、保護フィルムを剥離した。
得られた複合フィルム(支持体付き)を、厚み18μmで、5mm幅の銅配線と100μm幅の銅配線が両方形成されているプリント配線板(日立化成株式会社製、商品名:E−700GR)上に、第一の樹脂層とプリント配線板とが当接するようにラミネートした。ラミネートは、第一ステージとして100℃、15秒間真空し、その後0.5MPaで45秒間加圧し、さらに、第二ステージとして120℃、60秒間、圧着圧力0.5MPaでプレスする方法により行った。その後、室温に冷却し、複合フィルムを配したプリント配線板を得た。
次に、複合フィルムを配したプリント配線板を、支持体を付けたまま第一段階目の硬化として130℃で20分間、防爆乾燥機中で硬化を行い、その後、第二段階目の硬化として190℃で40分間、防爆乾燥機中で硬化を行い、層間絶縁層が形成されたプリント配線板を得た。その後、支持体を剥離してプリント配線板を得た。
このプリント配線板の銅配線の部分を目視により観察し、5mm幅の銅配線と100μm幅の銅配線の埋め込み性及び平坦性が共に良好なものを「A」、埋め込み性及び平坦性が共に悪いものを「C」と評価した。
【0146】
【表2】
【0147】
表2より、実施例2及び3のプリント配線板は、誘電正接が小さく、回路等の凹凸に対する埋め込み性に優れ、さらに表面粗さが小さい(つまり表面平坦性に優れる)ながらも、めっき銅との接着性に優れる層間絶縁層を有しており、微細配線の形成に好適であることが分かる。