特許第6880839号(P6880839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880839
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】塗布フィルムおよび粘着シート積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20210524BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210524BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20210524BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20210524BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 M
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
   C08J7/04 BCFD
   C08J7/04CFH
   C09J7/00
   C09D5/00 Z
   C09D183/00
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-42839(P2017-42839)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-144381(P2018-144381A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加苗
(72)【発明者】
【氏名】村中 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 記央
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208302(JP,A)
【文献】 特開2012−192614(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/174392(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/088697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C09J1/00−201/10
C08J7/04−7/06
C09D1/00−10/00
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を設けた塗布フィルムが、粘着シートの両面にそれぞれ前記塗布層を介して積層してなる構成を備えた粘着シート積層体であり、
前記塗布フィルムは、100℃での貯蔵弾性率E’が1.5×10Pa以下であり、かつ、120℃で5分間加熱後の収縮率が3.0%以下であることを特徴とする粘着シート積層体
【請求項2】
前記塗布フィルムは、100℃の貯蔵弾性率E’が、1.0×10Pa以上である請求項1に記載の粘着シート積層体
【請求項3】
前記塗布フィルムは、180℃で10分間加熱後の表面オリゴマー量が1.0×10−3mg/cm以下である請求項1または2に記載の粘着シート積層体
【請求項4】
前記塗布層が硬化型シリコーン樹脂を含有する離型層である、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着シート積層体
【請求項5】
前記粘着シートの少なくとも一方の表面に凹形状、凸形状、または凹凸形状を備えた請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パーソナルコンピュータ、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどのような画像表示装置を形成する際に好適に用いることができる粘着シート積層体用塗布フィルム、並びに粘着シート積層体を形成するのに好適な塗布フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル方式の画像表示装置は、通常、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネル(総称して、「画像表示装置用構成部材」ともいう)が組み合わされた構成である。
近年、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネル方式の画像表示装置の表面保護パネルは、強化ガラスと共にアクリル樹脂板やポリカーボネート板などのプラスチック材が用いられており、該表面保護パネルの視認開口面部以外の周縁部は、黒色印刷されている。また、タッチパネルでは、ガラスセンサーと共にプラスチックフィルムセンサーを用いたり、タッチパネル機能が表面保護パネルと一体化されたタッチオンレンズ(TOL)なる部材が用いられたり、タッチパネル機能が画像表示パネルに一体化されたオンセルやインセルなる部材が用いられている。
【0003】
この種の画像表示装置においては、画像視認性をより向上させるために、各画像表示装置用構成部材間の空隙を、液状接着剤、熱可塑性接着シート材、粘着シート材などの透明樹脂で埋める構造が一般的である。
ところで、携帯電話やモバイル端末を中心とする画像表示装置の分野では、薄肉化、高精密化に加えて、デザインの多様化が進んでおり、表面保護パネルの周縁部には、枠状に黒色の隠蔽部を印刷するのが従来は一般的であったが、デザインの多様化に伴い、この枠状の隠蔽部を、黒色以外の色で形成することが行われ始めている。黒色以外の色で隠蔽部を形成する場合、隠蔽性が低いため、黒色に比べて隠蔽部、すなわち印刷部の高さが高くなる傾向にある。そのため、このような印刷部を備えた構成部材を貼り合わせるための粘着シートには、大きな印刷段差に追従して隅々まで充填することが求められている。
そこで従来から、印刷段差を埋めるための方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、粘着シートを貼合する被着面に印刷などによる段差を有していても、被着面に隙間なく密着状に貼合することができる、新たな画像表示装置用両面粘着シートとして、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルの画像表示装置用構成部材から選択されるいずれか2つの被着体を貼合するための両面粘着シートであって、少なくとも一方の被着体は、両面粘着シートを被着する被着面に段差部を有し、両面粘着シートは、前記被着面に貼合する貼合面の形状を前記被着面の面形状に沿わせて賦形してなる、画像表示装置用両面粘着シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルから選択されるいずれか2つの被着体を貼合するための両面粘着シートの製造方法について、貼合前の両面粘着シートは、ゲル分率が40%未満である粘着剤組成物を用い、前記被着体の貼合面の凹凸形状と同一の面形状に賦形することを特徴とする画像表示装置用両面粘着シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/073316号
【特許文献2】国際公開第2015/174392号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、携帯電話やモバイル端末を中心とする画像表示装置の分野では、薄肉化、高精密化がさらに要求されており、画像表示装置構成部材を貼り合わせるための粘着シートにも、印刷段差などの被着体表面の凹凸部を精度高く充填することができ、且つ、粘着シートが外側にはみ出ることがないことが求められている。そのための対策として、上述の先行特許文献に開示されているように、粘着シートの表面形状を、予め被着体の表面形状に沿わせて形成しておくことが検討されている。
【0008】
そして、そのように粘着シートの表面形状を、予め被着体の表面形状に沿わせて形成するためには、粘着シートの両側に離形シートが積層してなる粘着シート積層体をプレス成型して、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を形成する方法が想定される。
しかし、通常の離型フィルムが粘着シートの両側に積層してなる粘着シート積層体を使用して、前記方法を実際に実施してみた結果、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着シート表面に形成することが難しいという課題が明らかになってきた。
【0009】
そこで本発明は、粘着シートと、当該粘着シートの片面に剥離可能に積層してなる塗布フィルムとを備えた粘着シート積層体に関し、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着シート表面に形成することが可能な塗布フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の解決課題について鋭意検討した結果、特定の構成を有する塗布フィルムを用いれば、前記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、共重合ポリエステルフィルムの片面に塗布層が設けられた塗布フィルムであり、100℃での貯蔵弾性率E’が1.5×10Pa以下であることを特徴とする塗布フィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による塗布フィルムを用いれば、例えば、前記粘着シート積層体を加熱した後、離型性を有する塗布層を設けた塗布フィルムに型を押し付けて成型することにより、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を粘着シート表面に精度高く形成することができる。また、塗布フィルムは、常態において形状保持性を維持することができるから、取り扱いが容易であるばかりでなく、硬過ぎないから、粘着シートに不要な意図しない凹凸をつけることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例である粘着シート積層体の一例を模式的に示した断面図である。
図2】実施例・比較例で使用した金型の一方を示した斜視図である。
図3】本発明の実施例である粘着シート積層体の一例を用いて、賦形粘着シート積層体を製造する際のプレス工程の一例を説明するための断面図である。
図4】本発明の実施例である賦形粘着シート積層体の一例を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
<共重合ポリエステルフィルム>
本発明の塗布フィルムを構成する共重合ポリエステルフィルムは単層構成であっても積層構成であってもよく、例えば、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。また、例えば3層構成(表層/中間層/表層)とした場合に、その表層もしくは中間層のいずれか1つ、または2つ以上の層を共重合ポリエステル成分とし、それ以外の層は共重合成分を含まないポリエステル成分で構成することも可能である。
【0016】
また、共重合ポリエステルフィルムは、押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸したフィルムのことを指す。
【0017】
共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸が好ましく、ほかには、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの公知のジカルボン酸の一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコールが好ましく、ほかには、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの公知のジオールの一種以上を、共重合成分として含んでいてもよい。
中でも、ジカルボン酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等を任意に共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0018】
共重合成分の含有量は、1mol%以上50mol%以下が好ましく、3mol%以上或いは40mol%以下がより好ましく、4mol%以上或いは30mol%以下がさらに好ましい。共重合成分の含有量は、1mol%以上であることによって、粘着シートと積層させた時に、凹形状、凸形状、または凹凸形状を粘着シート表面に形成することができる。一方、50mol%以下であることによって、十分な寸法安定性を有するだけでなく、加工時におけるシワの発生を十分抑制することができる。
【0019】
共重合ポリエステルフィルムの融点は、好ましくは260℃以下、より好ましくは200〜255℃の範囲となるように設計するのが好ましい。前記融点が260℃以下であることによって、延伸後の熱処理工程において、共重合ポリエステルフィルムの融点より低い温度の熱処理でも十分な強度を得ることが可能となる。
【0020】
共重合ポリエステルフィルム中には粒子を含有させることが、フィルム作業性向上の点で望ましい。粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン等の無機粒子;アクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子;触媒残差を粒子化させた析出粒子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら粒子の粒径や共重合ポリエステルフィルム中の含有量は目的に応じ適宜決めることができる。含有させる粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。また、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を適宜加えることもできる。
【0021】
共重合ポリエステルフィルム中に含有する粒子の平均粒径は、0.1〜5.0μmが好ましい。前記粒子の平均粒径が0.1μm未満である場合、フィルムの滑り性が不十分となり、作業性が低下する場合がある。一方、前記粒子の平均粒径が5.0μmを超える場合、フィルム表面の平滑性が損なわれる場合がある。
【0022】
共重合ポリエステルフィルム中に含有する粒子の含有量は0.01〜0.3重量%が好ましい。前記粒子の含有量が0.01重量%未満である場合、フィルムの滑り性が不十分となり、作業性が低下する場合がある。一方、前記粒子の含有量が0.3重量%を超える場合、フィルム表面の平滑性が損なわれる場合がある。
【0023】
共重合ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法、ポリエステル製造工程系で粒子を析出させる方法になどによって行われる。
【0024】
共重合ポリエステルの極限粘度は、通常0.40〜1.10dl/g、好ましくは0.45〜0.90dl/g、さらに好ましくは0.50〜0.80dl/gである。極限粘度が0.40dl/g未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が1.10dl/gを超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷が過剰にかかる場合がある。
【0025】
次に共重合ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0026】
まず、先に述べた共重合ポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
次に得られた未延伸シートは少なくとも一軸方向に延伸されるのが好ましく、二軸方向に延伸される二軸延伸がより好ましい。例えば二軸延伸として、逐次二軸延伸の場合、前記未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により機械方向に延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは75〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7.0倍、好ましくは3.0〜6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向(機械方向)と垂直方向に延伸する。延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7.0倍、好ましくは3.5〜6.0倍である。そして、引き続き150〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上述の二軸延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0027】
また、共重合ポリエステルフィルムの製造に関しては、同時二軸延伸を採用することもできる。同時二軸延伸は、前記未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは75〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法である。延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4〜50倍、より好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き150〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。
【0028】
<塗布層>
本発明では、共重合ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を設けることが重要である。塗布層としては、特に限定はされないが、離型層、帯電防止層、オリゴマー封止層、易接着層、プライマー層などが具体的に挙げられる。中でも、粘着シートと積層させた粘着シート積層体を製造する上では、離型層がより好ましい。また、上記のような機能層を2種類以上組み合わせることも可能である。
【0029】
塗布フィルムを構成する塗布層の具体例として、離型層について以下に説明する。
【0030】
離型層に用いる樹脂の種類は、具体的には硬化型シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、中でも硬化型シリコーン樹脂が好ましい。硬化型シリコーン樹脂でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、本発明の主旨を損なわない範囲において、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0031】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、X−62−5039、X−62−5040、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605;東レ・ダウコ−ニング(株)製SRX357、SRX211、SD7220、SD7292、LTC750A、LTC760A、LTC303E、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210等が例示される。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0032】
共重合ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件は、特に限定されない。オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、120〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。尚、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/m範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0033】
共重合ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」(槇書店 原崎勇次著、1979年発行)に記載例がある。
【0034】
また、共重合ポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理など、塗布層を設けるために表面処理を施してもよい。
【0035】
<塗布フィルム>
本発明の塗布フィルムの厚みは、通常、9μm〜250μmであり、好ましくは12μm〜125μm、さらに好ましくは25μm〜75μmである。
前記厚みが9μm未満の場合、フィルム張力が不十分となり、スリット時にしわが入り易い等の不具合を生じる場合がある。一方、250μmを超えると、例えば、曲面形状を有する成形品への追従性が不十分となる場合がある。
【0036】
本発明の塗布フィルムの100℃での貯蔵弾性率E’は1.5×10Pa以下であり、好ましくは1.0×10Pa以下である。前記貯蔵弾性率E’が1.5×10Pa以下であることによって、粘着シートと積層させた時に、凹形状、凸形状、もしくは凹凸形状を粘着シート表面に形成することができる。100℃での貯蔵弾性率E’が前記範囲を満たすためには、共重合ポリエステルフィルムに含まれる共重合成分の種類および含有量を調整することによって満たすことができる。
一方、下限としては特に限定はされないが、1.0×10Pa以上が好ましく、1.0×10Pa以上がより好ましい。
【0037】
本発明の塗布フィルムの120℃で5分間加熱後の収縮率は3.0%以下であり、2.5%以下が好ましい。前記収縮率が3.0%以下であることによって、十分な寸法安定性を有するため、粘着シートと積層させた時に、凹形状、凸形状、もしくは凹凸形状を粘着シート表面に形成することができる。さらに、加工時にシワの発生が抑えられるため、粘着シートにシワが転写されず、十分な外観を有する粘着シートを製造することができる。100℃での貯蔵弾性率E’が前記範囲を満たすためには、共重合ポリエステルフィルムに含まれる共重合成分の種類および含有量を調整することによって満たすことができる。
【0038】
中でも、120℃で5分間加熱後の機械方向(MD)の収縮率は3.0%以下が好ましく、2.5%以下が好ましい。一方、下限としては特に限定はされないが、0.1%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましい。
【0039】
また、120℃で5分間加熱後の機械方向と垂直方向(TD)の収縮率は1.0%以下が好ましく、0.8%以下が好ましい。一方、下限としては、−1.0%以上が好ましく、−0.5%以上がより好ましい。
【0040】
本発明の塗布フィルムは、成形加工時、金型へのオリゴマー(環状三量体)付着による汚染防止の観点から、熱処理(180℃、10分間)後、塗布層表面からのオリゴマー抽出量が1.0×10−3mg/cm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10−4mg/cm以下である。
前記オリゴマー抽出量が当該範囲を超える場合、成形加工時、金型へのオリゴマー付着による汚染がひどくなる場合がある。一例として、何度も連続で加熱成形させる加工においては、析出オリゴマーの堆積により金型汚染が促進されるため、加熱時のオリゴマー析出量の制御が重要となる。前記理由により、前記オリゴマー抽出量は少なければ少ないほどより好ましい。
【0041】
<粘着シート>
本発明の塗布フィルムは、粘着シートと積層させることによって、少なくとも一方の表面に凹形状、凸形状、または凹凸形状を形成することができる。
【0042】
粘着シートの材料としては、特に限定されないが、具体的なベース樹脂としては(メタ)アクリル系共重合体、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム等が挙げられる。
【0043】
本発明における前記粘着シートの一例として、ベース樹脂として(メタ)アクリル系共重合体を用いた粘着シートを例示する。
この場合、未架橋状態すなわち光重合される前の状態で、前記の粘弾性特性を満足することが必要である。かかる観点から、粘着シートのゲル分率は40%以下であるのが好ましい。
【0044】
粘着シートのゲル分率が40%以下であれば、粘着シートを構成する分子鎖同士の結合が適切な範囲に抑えられるため、賦形粘着シート積層体に成形する際に適度な流動性を備えることができるようになる。
かかる観点から、粘着シートのゲル分率は40%以下であるのが好ましく、中でも20%以下、その中でも10%以下であるのが特に好ましい。なお、粘着シートのゲル分率の下限は限定されず、0%でもよい。
なお、上記の粘着シートのゲル分率は、ベース樹脂として(メタ)アクリル系共重合体と、架橋剤と、光重合開始剤とを含有する樹脂組成物を用いる場合に限らず、粘着シートとして他の樹脂組成物を用いる場合についても同様である。
【0045】
((メタ)アクリル系共重合体)
(メタ)アクリル系共重合体は、これを重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等によって、ガラス転移温度(Tg)等の特性を適宜調整することが可能である。
【0046】
アクリル酸エステル重合体を重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等を挙げることができる。これらに親水基や有機官能基などを共重合させた酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、フッ素アクリレート、シリコーンアクリレートなども用いることができる。
【0047】
アクリル酸エステル重合体の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体が特に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体を形成するために用いる(メタ)アクリレート、即ち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート成分としては、アルキル基がn−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−ブチル、イソブチル、メチル、エチル、イソプロピルのうちのいずれか1つであるアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物であるのが好ましい。
【0048】
その他の成分として、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基等の有機官能基を有するアクリレート又はメタクリレートを共重合させてもよい。具体的には、前記アルキル(メタ)アクリレート成分と有機官能基を有する(メタ)アクリレート成分とを適宜に選択的に組み合わせたモノマー成分を出発原料として加熱重合して(メタ)アクリル酸エステル系共重合体ポリマーを得ることができる。
中でも好ましくは、イソ−オクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物か、或いは、イソ−オクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等から少なくとも1種類以上と、アクリル酸とを共重合させたものを挙げることができる。
【0049】
これらのモノマーを用いた重合処理としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合方法が採用可能であり、その際に重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いることによりアクリル酸エステル共重合体を得ることができる。
【0050】
(アクリル系共重合体)
粘着シートの好ましいベースポリマーの一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体を挙げることができる。
【0051】
前記アクリル系共重合体をベース樹脂として粘着シートを構成すれば、粘着シートは、室温状態でシート状を保持しつつ自着性を示すことができ、未架橋状態において加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
よって、粘着シートのベースポリマーとしてアクリル系共重合体を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50〜100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
【0052】
前記アクリル系共重合体の幹成分を構成する共重合体のガラス転移温度は−70〜0℃であるのが好ましい。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度を指す。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0053】
前記アクリル系共重合体の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着シートの柔軟性や、被着体への粘着シートの濡れ性、すなわち接着性に影響するため、粘着シートが室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、−70℃〜0℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上或いは−5℃以下、その中でも−60℃以上或いは−10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0054】
前記アクリル系共重合体の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらに、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等を用いることもできる。
また、前記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0055】
また、アクリル系共重合体の幹成分は、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
アクリル系共重合体の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
【0056】
具体的には、前記アクリル系共重合体の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0057】
ここで、前記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、メチルメタクリレートを挙げることができる。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0058】
前記の親水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等などを挙げることができる。
【0059】
アクリル系共重合体は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0060】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、前記アクリル系共重合体を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着シートの加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0061】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着剤組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましいことである。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体中に5質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0062】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
また前記マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0063】
(架橋剤)
架橋剤は、アクリル酸エステル重合体を架橋する際に用いる架橋モノマーを使用することができる。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0064】
中でも、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート、イソシアネート基、エポキシ基、メラミン基、グリコール基、シロキサン基、アミノ基などの有機官能基を2個以上有する多官能有機官能基樹脂、亜鉛、アルミ、ナトリウム、ジルコニウム、カルシウムなどの金属錯体を有する有機金属化合物を好ましく用いることができる。
【0065】
前記の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類を挙げることができる。
【0066】
前記に挙げた中でも、被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、前記多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中でも、水酸基やカルボキシル基、アミド基等の極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが好ましい。その中でも、水酸基又はアミド基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
湿熱白化を防止する観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体、例えばグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
また、密着性や耐湿熱性、耐熱性等の効果を調整するために、架橋剤と反応する、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルを、更に加えてもよい。
【0067】
架橋剤の含有量は、粘着剤組成物たる柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも0.5質量部以上或いは15質量部以下、その中でも1質量部以上或いは13質量部以下の割合であるのが特に好ましい。
【0068】
(光重合開始剤)
アクリル酸エステル重合体を架橋する際には、架橋開始剤(過酸化開始剤、光重合開始剤)や反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜添加すると効果的である。
【0069】
紫外線照射架橋の場合には、光重合開始剤を配合するのが好ましい。
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、可視光線域に吸収波長をもつ光重合開始剤として該分子内開裂型を用いると、水素引抜型を用いる場合に比べて、光線照射によって粘着シートを架橋した後、光線反応性の光重合性開始剤が本粘着剤組成物中に未反応残渣として残り、粘着シートの予期せぬ経時変化や架橋の促進を招く可能性が低いため好ましい。また、光重合性開始剤特有の着色についても、反応分解物となることで、可視光線域の吸収がなくなり、消色するものを適宜選択することができるため好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる。
【0070】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0071】
この中でも、開裂型光重合性開始剤で、反応後に分解物となり消色する点で、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
さらに、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性からは、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどを用いるのが好ましい。
【0072】
光重合開始剤の含有量は、特に制限されるものではない。例えば(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で含入するのが特に好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
前記成分のほか、必要に応じて、近赤外線吸収特性を有する顔料や染料などの色素、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズなどの各種の添加剤を適宜配合することもできる。
【0074】
粘着シートの厚みは特に限定されないが、中でも20μm〜500μmが好ましく、30μm以上或いは300μm以下がより好ましく、50μm以上或いは250μm以下がさらに好ましい。
前記範囲であれば、例えば厚み20μmのような薄い粘着シートであれば、印刷段差追従性に優れた粘着シートが提供できる。また、厚み500μmのような厚い粘着シートでは印刷段差相当分が予め賦形されていることにより、貼合時の粘着剤組成物のオーバーフローを抑制することも可能になる。
【0075】
(粘着シート積層体の製造方法)
粘着シート積層体の製造方法の一例としては、例えば、粘着シートを2枚の塗布フィルムで挟み、ラミネータを用いて粘着シートを形成する方法を挙げることができる。また、その他の方法として、塗布フィルムに粘着剤組成物を塗布して粘着シートを形成する方法を挙げることができる。但し、かかる製造方法に限定するものではない。
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えばリバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0076】
[賦形粘着シート積層体]
粘着シート積層体を用いて、次のように、粘着シート表面に凹凸形状が形成された賦形粘着シート積層体を作製することができる。
【0077】
賦形粘着シート積層体は、図4に示すように、粘着シートと、当該粘着シートの表裏一側に剥離可能に積層してなる塗布フィルムと、当該粘着シートの表裏他側に剥離可能に積層してなる塗布フィルムとを備え、
粘着シートは、一方の表面に凹形状、凸形状、または凹凸形状を備え、かつ、他方の表面は平坦面であり、
塗布フィルムは、前記粘着シートと密着しており、凹部、凸部、または凹凸部を備え、かつ、塗布フィルム裏面に前記粘着シート表面と符合する、言い換えれば嵌合する凹凸をなす凸部又は凹部又は凸凹部を備え、
もう一方の塗布フィルムは、前記粘着シートの表面に沿って平坦面からなる構成を備えたものとすることができる。
【0078】
このような構成を備えた賦形粘着シート積層体は、図3に示すように、前記粘着シート積層体をプレス成形、真空成形、圧空成形又はロール成形することによって、粘着シート積層体に対して一体的に凹凸形状を賦形することにより製造することができる。
このように製造することにより、粘着シートの表面凹凸部、塗布フィルムの表面凹凸部は、同一箇所にそれぞれ対応して凹凸をなすものとすることができる。
【0079】
粘着シートは、例えば画像表示装置を構成する2つの画像表示装置構成部材(それぞれ「被着体」とも称する)を貼り合わせるための両面粘着シートとして用いることができる。
すなわち、前記粘着シートの表面凹凸部は、前記被着体の貼り合わせ面(「貼合面」とも称する)における凹部又は凸部又は凹凸部(「被着体表面凹凸部」と称する)と符合するように、好ましくは同一輪郭形状に形成することができる。よって、被着体としての画像表示装置構成部材における被着体表面凹凸部に対して、賦形粘着シート積層体における粘着シートの表面凹凸部を嵌め合わせることができる。
【0080】
ここで、前記画像表示装置としては、例えば液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置(OLED)、電子ペーパー、微小電気機械システム(MEMS)ディスプレイ及びプラズマディスプレイ(PDP)などを備えたスマートフォン、タブレット端末、携帯電話、テレビ、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションシステム、ATM、魚群探知機などを挙げることができる。ただし、これらに限定するものではない。
そして、被着体としての画像表示装置構成部材とは、これら画像表示装置を構成する部材であり、例えば表面保護パネル、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができ、本賦形粘着シート積層体1は、例えば、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルから選択されるいずれか2つの被着体を貼合するために用いることができる。例えば、表面保護パネルとタッチパネルとを、或いは、タッチパネルと画像表示パネルとを貼合するために用いることができる。ただし、被着体をこれらに限定するものではない。
【0081】
<製造方法>
ここで、本発明の粘着シート積層体の製造方法の詳細について説明する。
【0082】
上述したように、図3に示すように、前記粘着シート積層体を加熱して成形することによって、粘着シート積層体に対して一体的に凹凸形状を賦形することにより製造することができる。
この際、成形加工方法としては、例えばプレス成形、真空成形、圧空成形、ロールによる賦形、積層による賦形などを挙げることができる。中でも成形性及び加工性の観点からプレス成形が特に好ましい。
【0083】
より詳細な具体例について説明する。
粘着シート積層体をヒーターで予熱し、所定の温度に温まった段階で粘着シート積層体をプレス成形機に搬送し、予め被着体の印刷段差形状に相当する分の凹凸形状をかたどった金型でプレス加工を行うと共に冷却することで、粘着シート積層体の片面に金型形状を転写させて、片面に凹凸賦形された賦形粘着シート積層体を製造することができる。
【0084】
この際、粘着シート積層体の予熱は、粘着シートが柔軟化する温度、具体的には70〜120℃に加熱するのが好ましい。
【0085】
凹凸賦形に使用する型の材質は特に限定されない。例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の樹脂系材料、ステンレスやアルミなどの金属系材料等を挙げることができる。中でも被着体の凹凸賦形には高精度の成形性が求められることから成形時の温度コントロールが可能な金属系の金型が特に好ましい。
また、プレス加工後の冷却は、型開き後に冷却してもよいし、金型を冷却しておき、プレスと同時に冷却するようにしてもよい。
【0086】
なお、本発明においてプレス圧、プレス時間等の成形にかかる条件は特に指定はなく、成形される寸法や形状、使用する材料等によって適宜調整すればよい。
また、成形加工後にトムソン刃やロータリー刃等を用いてカットしてもよい。
【0087】
<用途>
ここで、粘着シート積層体の利用用途の一例について説明する。
近年、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などが汎用化されるに従い、使用者が誤って落下させる等によって画像表示部を破損する事例は多い。特に画像表示装置がタッチパネル方式である場合は、破損によって表示が見づらくなるばかりでなく、物理的障害や水の浸入等によってタッチパネル操作自体が不能となったり、故障の原因となったりする。そこで、画像表示部のみを交換するリペアすなわち修理が行われる場合がある。
画像表示装置のリペアにおいて、新たな画像表示部を装填する際にも粘着シートは使用される。通常、リペアは修理作業者による手作業として行われる場合が多く、修理作業者の熟練が必要である。すなわち、熟練者でないと、粘着シートを介して画像表示部を装填する際に、内部に空気が入ってしまったり、粘着材が食み出したりしてしまう。
これに対し、本発明の粘着シート積層体を用いれば、予め精度の高い段差形状等を付与することができるため、例えば画像表示装置の機種に応じた段差形状を予め粘着シートに付与しておくことにより、リペア作業が大幅に簡便化され、修理作業者の熟練を要しなくても実施することが可能となる。このように、本発明の粘着シート積層体は、画像表示装置のリペア用として有用に用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。
【0089】
(1)貯蔵弾性率(E’)
得られたフィルムについて、長手方向が機械方向となるように、長手方向30mm×幅方向5mmのサンプルを採取した。次いで動的粘弾性装置(アイティー計測制御社製「DVA−220」)を用い、間隔を20mmにセットしたチャックにサンプルを挟んで固定した後、昇温速度が10℃/minにて常温〜200℃まで、周波数が10Hzにて貯蔵弾性率を測定した。得られたデータより、100℃での貯蔵弾性率を読み取った。
【0090】
(2)加熱収縮率
得られたフィルムの幅方向中央位置から、サンプル長手方向が測定方向となるように短冊状(15mm幅×150mm長)にサンプルを切り出し、無張力状態、120℃雰囲気下で5分間熱処理し、熱処理前後のサンプルの長さを測定して、下記式にてフィルムの熱収縮率(%)を計算した。なお、下記式におけるaは熱処理前のサンプル長、bは熱処理後のサンプル長である。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100
【0091】
(3)加熱処理後のフィルム表面オリゴマー量
得られたフィルムを、窒素雰囲気下、180℃の熱風循環オーブンにてポリエステルフィルムを10分間処理した。熱処理後のポリエステルフィルムの表面をDMF(ジメチルホルムアミド)と3分間接触させ、表面に析出したオリゴマーを溶解させた。かかる操作は、例えばポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準において、溶出試験の中の片面溶出法に用いる溶出用器具に記載されている方法が採用できる。
次いで得られたDMFを必要に応じて希釈等の方法で濃度を調整し、液体クロマトグラフィー(島津LC−2010)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/cm)とした。
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解して作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0092】
(4)成型加工適性
(メタ)アクリル系共重合体として、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)15質量部(18mol%)とブチルアクリレート(Tg:−55℃)81質量部(75mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)4質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系共重合体(重量平均分子量23万)1kgと、架橋剤として、グリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(b−1)90gと、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)15gを均一混合し、粘着シートに用いる樹脂組成物を作製した。
得られた樹脂組成物を実施例、比較例に示すポリエステルフィルから得られる離型フィルムを2枚で上下から挟み(上下の組み合わせは同じ離型フィルム同士で挟むものとする。)、ラミネータを用いて樹脂組成物の厚みが100μmとなるようにシート状に賦形し、粘着シート積層体を作製した。なお、ポリエステルフィルムの離型層側を樹脂組成物に接するように配置した。
得られた粘着シート積層体は、真空圧空成形機(第一実業社製、FKS−0632−20形)を用いて以下のプロセスで熱成形を行い、賦形粘着シート積層体を作製した。すなわち、400℃に予熱したIRヒーターで、粘着シート積層体の表面が100℃になるまで加熱し、続いて25℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行い、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体を作製した。
凹凸を賦形した賦形粘着シート積層体のポリエステルフィルムを剥離し、賦形粘着シートの凹部と凸部との高さを、それぞれ走査型白色干渉顕微鏡を用いて非接触方式で計測し、成形体の高さをhとした。
金型の深さ100μmに対する成形体の凸部の高さhを計測し、下記計算式より導かれる転写率が70%以上のものを○、50%以上70%未満のものを△、50%未満のものを×としてそれぞれ評価した。
転写率(%)=h(成形体高さ)/100(金型深さ)×100
【0093】
(5)粘着層外観(シワ)
(4)に記載する方法で得られた、プレス成型前の粘着層積層体の外観を以下に示す評価方法でそれぞれ評価した。
<評価方法>
○:シワ無くラミネートされていて、良好な外観を保てている。
×:フィルムにシワが発生し粘着層にシワが転写して、製品として使えない状態である。
【0094】
以下の実施例・比較例で使用したポリエステル原料の製造方法は次のとおりである。
【0095】
(ポリエステルAの製造方法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。
次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステルAを得た。得られたポリエステルチップの極限粘度IVは、0.70dl/gであった。
【0096】
(ポリエステルBの製造方法)
上記ポリエステルAの製造方法において、ジカルボン酸単位として、テレフタル酸を78mol%、イソフタル酸を22mol%とした以外は、ポリエステルAと同様な方法で製造しポリエステルBを得た。得られたポリエステルチップの極限粘度IVは、0.70dl/gであった。
【0097】
(ポリエステルCの製造方法)
上記ポリエステルAを製造する際、平均粒径3μmの非晶質シリカを6000ppm添加し、ポリエステルCを作成した。
【0098】
(ポリエステルDの製造方法)
上記ポリエステルAを製造する際、平均粒径4μmの非晶質シリカを6000ppm添加し、ポリエステルDを作成した。
【0099】
[実施例1]
上記ポリエステルB、A、およびDをそれぞれ65重量%、30重量%、5重量%の割合で混合した原料を、溶融押出機により溶融押出して単層の無定形シートを得た。
次いで、冷却したキャスティングドラム上に、シートを共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、機械方向(縦方向)に80℃で3.4倍延伸した後、さらにテンター内で予熱工程を経て機械方向と垂直方向(横方向)に80℃で3.9倍延伸した。二軸延伸をした後は、185℃で3秒間の熱処理を行い、その後に幅方向に6.4%の弛緩処理を行い、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。評価結果を下記表1に示す。
【0100】
[実施例2]、[実施例3]
下記表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。評価結果は下記表1に示す。
【0101】
[実施例4]
上記ポリエステルAおよびCを、86重量%、14重量%の割合でそれぞれ混合した原料を表層用の原料とし、ポリエステルBおよびAを、45重量%、55重量%の割合でそれぞれ混合した原料を中間層用の原料とした。それぞれ異なる溶融押出機により溶融押出して、2種3層積層(表層/中間層/表層)の無定形シートを得た。
次いで、冷却したキャスティングドラム上にシートを共押出して、冷却固化させることで無配向シートを得た。次いで、機械方向(MD)に82℃で3.4倍延伸した後、さらにテンター内で予熱工程を経て機械方向と垂直方向(幅方向、TD)に110℃で3.9倍延伸した。二軸延伸をした後は、210℃で3秒間の熱処理を行い、その後に幅方向に2.4%の弛緩処理を行い、厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。評価結果は下記表1に示す。
【0102】
[実施例5]
下記表1に示す条件に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。評価結果は下記表1に示す。
【0103】
[比較例1]
下記表2に示す条件に変更した以外は、実施例4と同様にしてポリエステルフィルムを得た。評価結果は下記表2に示す。
【0104】
[比較例2]
下記表2に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。評価結果は下記表2に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明における塗布フィルムは、例えば、パーソナルコンピュータ、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどのような画像表示装置を形成する際に好適に用いることができる賦形粘着シート積層体用、並びに賦形粘着シート積層体を形成するのに好適な粘着シート積層体用に好適である。
図1
図2
図3
図4