(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板が収納されたキャリアが載置されるステージと、前記基板を処理する基板処理部との間で基板が搬送されて処理が行われる基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項8または9記載の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基板処理装置の一実施形態である成膜装置1について説明する。成膜装置1は、工場内における例えば25℃に温度制御されたクリーンルーム内に設置されている。この成膜装置1には、キャリアCに収納された状態でウエハWが搬送される。このキャリアCはFOUPであり、概ね角型で前方側が開口した容器本体C1と、容器本体C1に対して着脱自在で当該容器本体C1の前方側を塞ぐ蓋C2とにより構成されており、蓋C2が閉じられた状態で内部が密閉され、ウエハWをその内部に多数枚収納することができる。
【0013】
成膜装置1は、キャリアCから取り出したウエハWを基板処理部である反応容器5内に収納して、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜処理する。その成膜処理を行う一方で、反応容器5が設けられ、CVDを行うことによって加熱される室内のガスを、ウエハWを搬出済みのキャリアCに供給して当該キャリアCを加熱すると共にキャリアCの蓋C2を開放する。それによって、キャリアC内の各部に吸着されている水分及び汚染物質などの異物を気化させると共にキャリアC内から除去する清浄化処理を行うことができるように構成されている。
【0014】
以下、
図1の縦断側面図を参照しながら、成膜装置1の構成を説明する。図中11は角型の筐体である。筐体11内には、当該筐体11内を前後方向に区画する垂直区画壁と、筐体11内を上下方向に区画する水平区画壁とが設けられている。区画部材である筐体11、垂直区画壁及び水平区画壁により、互いに区画されたキャリア搬入出領域12、キャリア待機領域13、ウエハ搬送領域14及び上記の反応容器5が設置される反応容器設置領域15が形成されている。キャリア搬入出領域12、ウエハ搬送領域14が夫々前方、後方に位置しており、キャリア搬入出領域12、ウエハ搬送領域14の上方に、キャリア待機領域13、反応容器設置領域15が夫々位置している。これらの各領域12〜15は筐体11内に形成されることにより、筐体11の外側領域から区画されている。
【0015】
上記の垂直区画壁について、キャリア搬入出領域12とウエハ搬送領域14とを区画する下方側の部位を下方区画壁16、キャリア待機領域13と反応容器設置領域15とを区画する上方側の部位を上方区画壁17とする。上記の水平区画壁について、キャリア搬入出領域12とキャリア待機領域13とを区画する前方側の部位を前方区画壁18、ウエハ搬送領域14と反応容器設置領域15とを区画する後方側の部位を後方区画壁19とする。キャリア搬入出領域12、キャリア待機領域13、及び反応容器設置領域15の反応容器5の外側はエア雰囲気であり、ウエハ搬送領域14はこの例では窒素(N
2)ガス雰囲気である。ただし、ウエハ搬送領域14についてもエア雰囲気としてもよい。
【0016】
先ず、キャリア搬入出領域12について説明する。図中21はキャリア搬送口であり、筐体11の前方側の側壁においてキャリア搬入出領域12に開口するように形成されている。キャリア搬入出領域12においては前方側、後方側に夫々キャリアCが載置される前方側キャリアステージ22、後方側キャリアステージ23が設けられている。筐体11の外部に設けられる図示しないキャリア搬送機構が、キャリア搬送口21を介して前方側キャリアステージ22に対してキャリアCを受け渡すことで、キャリアCがキャリア搬入出領域12に対して搬入出される。後方側キャリアステージ23は、ウエハWを搬送するために下方区画壁16に開口したウエハ搬送口24の縁部にキャリアCの前面の縁部が押し付けられるように、当該キャリアCを載置できるように構成されている。
【0017】
図中25は前方区画壁18に開口したキャリア搬送口であり、キャリア搬入出領域12には、当該キャリア搬送口25を開閉するシャッタ26が設けられている。後述のようにキャリア搬送口25を介してキャリア搬入出領域12にエアが供給され、キャリア搬入出領域12にはこのエアを排気する排気口が設けられるが、図示は省略している。
【0018】
続いて、キャリア待機領域13について説明する。このキャリア待機領域13の前方側、後方側にはキャリアCを待機させるために載置する待機用キャリアステージ31が各々、上下に3段に設けられている。図中32はキャリア搬送機構であり、昇降してキャリア搬送口25を介してキャリア搬入出領域12とキャリア待機領域13との間を移動することができる。
図2の側面図も参照しながら説明すると、キャリア搬送機構32は本体部33と、基端部が本体部33に接続された多関節アーム34と、を備えており、多関節アーム34の先端部にはキャリア保持部35が設けられている。キャリアCはこのキャリア保持部35によって保持されて、前方側キャリアステージ22と後方側キャリアステージ23と待機用キャリアステージ31との間で受け渡される。
【0019】
またキャリア搬送機構32はガス流出機構をなし、上記の本体部33には多関節アーム36の基端部が接続され、多関節アーム36の先端部には蓋保持部37が設けられる。蓋保持部37は、待機用キャリアステージ31に載置されたキャリアCの蓋C2を着脱するために当該蓋C2の前面の鍵穴に差し込まれる図示しない鍵を備えており、鍵穴に差し込まれた状態で当該鍵を回転させ、蓋C2とキャリアCを構成する容器本体C1との間において係合が形成された状態と、係合が解除された状態とを切り替えることができる。この係合が解除された状態では蓋C2は蓋保持部37に保持され、
図2に示すように容器本体C1から取り外すことができる。つまり、蓋保持部37はキャリアCの蓋開閉機構として構成されている。
【0020】
図1に戻ってキャリア待機領域13の説明を続けると、キャリア待機領域13の天井部には配管41Aの一端が開口しており、配管41Aの他端は筐体11の外部で上記のクリーンルーム内に開口している。配管41Aには、当該配管41A内の流路を開閉するダンパー42Aとファン43Aとフィルタ44とが一端側(キャリア待機領域13側)に向かってこの順に介設されており、ダンパー42Aにより当該配管41A内の流路(第2の接続路)が開かれた状態でファン43Aが動作することにより、筐体11の外部におけるクリーンルーム内のエアがフィルタ44により清浄化されてキャリア待機領域13に供給される。ダンパー42Aとファン43Aは、後述のようにキャリアCを冷却するための冷却ガス供給機構をなす。フィルタ44については、例えばケミカルフィルタ45、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)46が、上記の配管41A内のガス流の下流側に向かってこの順に配置されることで構成されている。つまりフィルタ44は、二種類のフィルタにより構成されている。ケミカルフィルタ45は有機ガスやイオン状ガスを除去するためのフィルタであり、ULPAフィルタ46はパーティクルを除去するためのフィルタである。
【0021】
続いて、反応容器設置領域15について説明する。上記の反応容器5は後方区画壁19から上方に伸びるように縦型の円形に構成されており、反応容器5の内部には縦長の処理空間が形成されている。反応容器5の下端部には上記の処理空間に連通する開口部51が、ウエハ搬送領域14に開口するように形成されている。反応容器5の外側には当該反応容器5の側方を囲むように、上記の処理空間を加熱する発熱体であるヒーター52が設けられている。図中53は断熱材であり、ヒーター52及び反応容器5を囲むように起立した筒状に形成され、当該断熱材53の外側領域における温度が高くなりすぎることを防いでいる。
【0022】
反応容器5について説明すると、当該反応容器5内には図示しない排気口が開口しており、後述のように開口部51が閉鎖された状態で排気が行われることで、反応容器5内の処理空間を所定の圧力の真空雰囲気とすることができる。また、反応容器5内には、成膜用の処理ガスを処理空間に供給する図示しないガスインジェクタが設けられている。処理空間が真空雰囲気とされた状態で、ヒーター52によって当該処理空間に収納されたウエハWが加熱されると共に当該ガスインジェクタから成膜ガスが供給されることでCVDが行われて、例えばシリコンなどの成膜ガスの種類に応じた膜がウエハWに形成される。
【0023】
また、筐体11の後方側の側壁には配管41Bが設けられ、配管41Bの一端は反応容器設置領域15において断熱材53に囲まれる領域の外側に開口している。そして、配管41Bの他端は筐体11の外部に開口し、工場の排気設備をなす排気路に接続されている。配管41Bには、ファン43B、当該配管41B内の流路を開閉するダンパー42Bが一端側(反応容器設置領域15側)に向かってこの順に介設されている。ダンパー42Bにより当該配管41B内の流路が開かれた状態でファン43Bが動作して、ヒーター52により加熱される反応容器設置領域15の雰囲気を形成するエアが筐体11の外部に排出されることで、当該反応容器設置領域15の過剰な温度上昇が抑制される。
【0024】
また、上方区画壁17において配管41C、41Dが設けられており、これらの配管41C、41Dの各一端が、反応容器設置領域15の断熱材53によって囲まれる領域の外側に開口している。配管41Cの他端は、キャリア待機領域13の天井部付近で各キャリアCが載置される領域よりも上方の位置に開口しており、当該配管41Cには、当該配管41C内の流路(第1の接続路)を開閉するダンパー42Cとファン43Cとフィルタ44とが他端側(キャリア待機領域13側)に向かってこの順に介設されている。ダンパー42Cにより当該配管41C内の流路が開かれた状態でファン43Cが動作して、反応容器設置領域15のエアが配管41Cの他端へ向けて供給され、フィルタ44によって清浄化されて、キャリア待機領域13に供給される。フィルタ44は、上記のようにケミカルフィルタ45と、ULPAフィルタ46とにより構成されており、配管41C内におけるガス流の上流側、下流側にケミカルフィルタ45、ULPAフィルタ46が夫々設けられている。ダンパー42C、ファン43Cは、加熱されたガスをキャリアCに供給する加熱流体供給機構をなし、上記のヒーター52と共にキャリア加熱機構を構成する。
【0025】
配管41Dの他端は、キャリア待機領域13の底部付近で各キャリアCが載置される領域よりも下方の位置に開口しており、当該配管41Dにはファン43Dと当該配管41D内の流路を開閉するダンパー42Dとが他端側(キャリア待機領域13側)に向かってこの順に介設されており、ダンパー42Dにより当該配管41D内の流路が開かれた状態でファン43Cが動作して、キャリア待機領域13のエアを反応容器設置領域15へ供給する。なお、以上の配管41A〜41Dの各ファン43A〜43Dは、例えば成膜装置1における処理中は常時動作しており、ダンパー42A〜42Dの開閉により、これらの配管41A〜41Dにおけるガスの流通と流通の停止とが切り替えられる。
【0026】
続いて、ウエハ搬送領域14について説明する。図中61はドアであり、キャリア搬送機構32の蓋保持部37と同様に鍵(図示は省略している)を備えている。そしてドア61は、既述のように下方区画壁16に押し付けられた状態で後方側キャリアステージ23に載置されるキャリアCに対してウエハ搬送口24を介して上記の鍵により蓋C2を着脱し、蓋C2を保持した状態で上下方向に移動することで当該ウエハ搬送口24の開閉を行うことができるように構成されている。このようにドア61もキャリアCの蓋開閉機構をなす。
【0027】
図中6はウエハボートであり、多数枚のウエハWを上下方向に多数設けられた支持部上に載置して棚状に保持する基板保持具をなす。図中Dはダミーウエハであり、ウエハWと同様の形状を有している。ダミーウエハDは、例えばウエハボート6の上部側及び下部側において数枚ずつ、ウエハWと同様に当該ウエハボート6に着脱自在に保持され、ウエハWと共に反応容器5内に搬入されて処理される。このダミーウエハDは、ウエハボート6に搭載されるウエハW間で処理ガスの流れを均一化する役割を有しており、半導体デバイスの製造を目的としないダミー基板である。
【0028】
図中62は移載用ボートステージであり、上記の後方側キャリアステージ23に載置されるキャリアCとの間でウエハWの移載を行うために、既述のウエハボート6が載置される。図中63は、このウエハWの受け渡しを行うウエハ搬送機構(基板搬送機構)であり、昇降自在且つ鉛直軸周りに回転自在な基台と、基台上を進退自在なウエハWの裏面保持部とを備える。図中64は昇降することで上記の反応容器5の開口部51を下方から開閉する蓋である。図中65は、ウエハボート6を反応容器5に対して搬入するために載置する搬入用ボートステージであり、蓋64上に設けられる。つまり蓋64の昇降によって、ウエハボート6の反応容器5に対する搬入出と反応容器5の開口部52の開閉とが共に行われる。
【0029】
図中66は、移載用ボートステージ62と搬入用ボートステージ65との間でウエハボート6を搬送することができるように関節アームを備えたボート搬送機構である。これらの他にウエハ搬送領域14には、ボート搬送機構66によりウエハボート6が搬送されるウエハボート6の待機用のステージや、ウエハ搬送領域14にN2ガスを供給してN2ガス雰囲気を形成するためのN
2ガス供給部、ウエハ搬送領域14を排気する排気口などが設けられるが、図示は省略する。
【0030】
上記の成膜装置1にはコンピュータである制御部10が設けられており、当該制御部10にはプログラムが含まれる。このプログラムには、成膜装置1の各部に制御信号を送り、後述のキャリアCの搬送、ウエハWの搬送、ウエハWへの成膜処理及びキャリアC内の清浄化処理が進行するように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、記憶媒体例えばコンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカードなどに格納されて制御部10にインストールされる。
【0031】
続いて、上記の成膜装置1におけるウエハWの成膜処理及びキャリアC内の清浄化処理について、
図3〜
図6を参照しながら説明する。この
図3〜
図6ではダンパー42A〜42Dのうち、閉じているものと開いているものとを区別するために、閉じているものに斜線を付して示しており、また、ガスの流れを実線の矢印で示している。なお図示の便宜上、
図4では配管41Cの表示を
図1よりも反応容器設置領域15寄りに示している。
【0032】
ウエハWの処理を行うために反応容器5内の処理空間が所定の温度、例えば300℃以上になるようにヒーター52が発熱し、反応容器設置領域15のエアが加熱される。このとき、配管41A、41Bのダンパー42A、42Bは開かれており、配管41C、41Dのダンパー42C、42Dは閉じられている。また、キャリア搬送口25のシャッタ26が開かれ、キャリア搬入出領域12とキャリア待機領域13とが連通している。
【0033】
ダンパー42A及びシャッタ26が上記のように開かれることで、筐体11の外部のクリーンルーム内のエアがキャリア待機領域13の天井下部に流入し、当該キャリア待機領域13において下降流を形成し、キャリア搬送口25を介してキャリア搬入出領域12に流入した後、図示しない搬送口から排気される。また、ダンパー42Bが上記のように開かれることで、加熱された反応容器設置領域15のエアが、配管41Bを介して成膜装置1の外部へ放出される。なお、ダンパー42C、42Dが上記のように閉じられることで、反応容器設置領域15とキャリア待機領域13との間では、エアの通流が行われていない。
【0034】
このように成膜装置1の各部にエアの流れが形成された状態で、キャリアCがキャリア搬入出領域12に搬入され、前方側キャリアステージ22を介して後方側キャリアステージ23に搬送される。ドア61によりこのキャリアCの蓋C2が取り外された後、当該キャリアCに収納されているウエハWが、移載用ボートステージ62に載置されたウエハボート6に搬送されて保持される。収納されている全てのウエハWがそのようにウエハボート6に搬送されると、蓋C2が取り付けられた後にキャリアCは、キャリア待機領域13に搬送され、待機用キャリアステージ31に載置される。このキャリアCに続いてキャリア搬入出領域12に搬送されたキャリアCも同様に、収納されているウエハWがすべて搬出された後、待機用キャリアステージ31に載置される(
図3)。
【0035】
所定の個数のキャリアCからウエハWが取り出され、所定の枚数のウエハWがウエハボート6に保持されると、ウエハボート6は蓋64上の搬入用ボートステージ65に搬送される。そして蓋64が上昇し、ウエハボート6が反応容器5内の処理空間に収納されると共に反応容器5が気密に閉じられる。ヒーター52によりウエハWが加熱されて所定の温度となると共に処理空間が所定の圧力の真空雰囲気とされた後、成膜ガスが供給されて、ウエハWにCVDによる成膜が行われる。なお、キャリアCから取り出される際にウエハWに水分及び汚染物質などの異物が付着していても、この異物については成膜処理による加熱で気化することによって、ウエハWから除去される。
【0036】
例えばこの成膜処理中に、キャリア搬送機構32がキャリア待機領域13に位置する状態で、シャッタ26によりキャリア搬送口25が閉じられ、キャリア待機領域13とキャリア搬入出領域12とが区画される。さらに、配管41Aのダンパー42A及び配管41Bのダンパー42Bが閉じられ、キャリア待機領域13への筐体11の外部からのエアの供給が停止すると共に、反応容器設置領域15から成膜装置1の外部への加熱されたエアの放出が停止する。このようにダンパー42A、42Bが閉じられる一方で、配管41C、41Dのダンパー42C、42Dが開かれ、反応容器設置領域15で加熱されたエアが配管41Cのフィルタ44により清浄化されてキャリア待機領域13の上部に供給されると共に、キャリア待機領域13の下部から反応容器設置領域15への排気が行われる。
【0037】
このエアの供給と排気とにより、キャリア待機領域13の各キャリアCが載置される領域には下降流が形成され、この下降流に曝されてキャリアCは加熱され、その温度が例えば40℃〜80℃とされる。そのように加熱されることでキャリアC内では各部に吸着されていた異物が気化して当該各部から脱離した状態となる。そして、このようにキャリアCが加熱された状態で、キャリア搬送機構32によりキャリアCの蓋C2が開放され、気化した異物はキャリアC内から流出して、当該キャリアC内には上記の下降流をなす清浄なエアが流入する。つまり、キャリアC内のガスが、清浄なエアに置換される(
図4)。その後、キャリア搬送機構32はキャリアCの蓋C2を閉じる。キャリア待機領域13に待機しているすべてのキャリアCについて、順番に上記の蓋C2の開閉が行われ、蓋C2が開かれたときにキャリアC内のガスが置換される。
【0038】
然る後、キャリア搬送口25の開放、配管41Aのダンパー42A及び配管41Bのダンパー42Bの開放、及び配管41Cのダンパー42C及び配管41Dのダンパー42Dの閉鎖が行われ、反応容器設置領域15とキャリア待機領域13との間におけるエアの流通が停止して、再び反応容器設置領域15のエアは筐体11の外部へと排出されると共に、再びクリーンルームから供給されたエアによる下降流がキャリア待機領域13に形成される(
図5)。クリーンルームの温度は加熱されたキャリアCの温度より低いため、このクリーンルームから供給されたエアはキャリアCを冷却する冷却ガスとして作用し、キャリアCの温度が速やかに低下する。
【0039】
そして成膜処理が終了すると、反応容器5内の処理空間への成膜ガスの供給が停止すると共に当該処理空間の圧力が上昇した後、蓋64が下降して、ウエハボート6がウエハ搬送領域14へと搬出され、ウエハボート6に保持されるウエハWはウエハ搬送領域14のN2ガス雰囲気に曝されて冷却される。然る後、ウエハボート6が移載用ボートステージ62に搬送される一方で、キャリア待機領域13から内部が清浄化されたキャリアCが後方側キャリアステージ23に搬送されて、蓋C2が外される。そして、成膜済みのウエハWがこのキャリアCに搬送されて収納される。
【0040】
この収納されるウエハWの温度よりも、上記のキャリア待機領域13において蓋C2が開放された状態で加熱されたときのキャリアCの温度は高い。具体的に、キャリアCに搬入されるときのウエハWの温度が40℃であるとすると、上記の蓋C2が開放されたときに加熱されたキャリアCの温度は40℃よりも高い温度とされる。これは、キャリアC内に収納されるウエハWの熱により、上記のキャリアC内の清浄化処理時には気化しなかった異物が気化してウエハWに吸着することを防ぐためである。なお、このようにキャリアC内からの異物の気化を防ぐことができるように加熱時のキャリアCの温度が設定されるため、加熱時においてキャリアCの内壁と外壁とで温度が異なる場合には、このキャリアCの温度とは内壁の温度である。
【0041】
上記のように成膜済みのウエハWが収納されたキャリアCには蓋C2が取り付けられ、当該キャリアCは、前方側キャリアステージ22を介して成膜装置1から搬出される。キャリア待機領域13で待機していた各キャリアCについて順番に、既述した後方側キャリアステージ23への搬送と、成膜済みのウエハWの収納と、成膜装置1からの搬出とが行われる(
図6)。
【0042】
この成膜装置1によれば、収納されていたウエハWが反応容器5に搬送されることによって空となった状態でキャリア待機領域13にて待機しているキャリアCを、当該キャリアCに戻されるときの成膜処理済みのウエハWの温度よりも高い温度に加熱すると共に蓋C2を開放する。それにより、水分及び汚染物質などを含む異物を気化させた状態でキャリアC内から流出させて除去し、キャリアC内が清浄化される。従って、反応容器5内で成膜処理されたウエハWがこのキャリアCに戻されるとき、このウエハWの温度以下の温度で気化する異物は当該キャリアC内に残っていない。それ故に、ウエハWをキャリアCに戻すにあたり、当該ウエハWが異物により汚染されることを防ぐことができる。そして、キャリアC内が清浄化されているので、この成膜装置1における成膜処理の後段の各処理を行う装置へ当該キャリアCが搬送された後も、ウエハWが異物に汚染されることを抑制することができる。
【0043】
上記の処理例ではウエハWの成膜処理と、キャリアC内の清浄化処理とが同時に行われているが、これらは互いに異なるタイミングで行われてもよい。例えば成膜処理が終了し、ウエハボート6が反応容器5から搬出されてウエハ搬送領域14においてウエハWが冷却されている間に、
図4で説明したようにキャリア待機領域13への加熱されたエアの供給とキャリアCの蓋C2の開閉とを行い、キャリアCを清浄化するようにしてもよい。
【0044】
ところでキャリアC内の清浄化処理において、キャリアCの加熱温度を高くするほど、確実に異物を気化することができるが、この加熱温度が高すぎるとキャリアCの耐熱温度の限界を超え、変形などの不具合がキャリアCに生じるおそれが有る。また、異物となる有機物やイオン性気体は水和性(水溶性)を持つことから、キャリアCを加熱して水分をキャリアCの各部から脱離させる際に、この水分に溶解している有機物やイオン性気体についても脱離させることができると考えられる。つまりこれら有機物やイオン性気体のキャリアCの各部の吸着エネルギーは比較的低く、比較的低い温度であってもこれらを脱離させることができると考えられる。さらに、上記のキャリアCは上記のクリーンルーム内を搬送されるので、比較的高い温度環境に曝されるおそれは少ないので、比較的高い温度にしないと気化されない異物がキャリアCに吸着されていたとしても、そのような異物についてはキャリアCの使用中に気化してウエハWに付着する可能性は低いため、上記のキャリアC内の清浄化処理によって除去されなくてもよい。このような事情により、キャリアCを加熱温度としては過剰に高くする必要は無く、既述の範囲内の温度とすることが好ましい。
【0045】
また、上記の成膜装置1ではキャリアC内を清浄化処理した後、クリーンルーム内のエアをキャリア待機領域13に供給して、加熱されたキャリアCを冷却している。従って、キャリアCを加熱した後に当該キャリアCが搬送されるキャリア搬入出領域12の各部材についての耐熱性を高くする必要が無い。また、このように冷却されることで、キャリア搬入出領域12にキャリアCを搬送することができるタイミングの自由度が高い。それ故に、成膜処理済みのウエハWが冷却された後、速やかにキャリア搬入出領域12に搬送しておいたキャリアCに収納することができるため、スループットの向上を図ることができる。
【0046】
なお、キャリアC内の清浄化処理において蓋C2の開閉は、キャリア搬送機構32により行われることには限られない。例えば、キャリアCの前面がキャリア待機領域13を構成する側壁に向かうように待機用キャリアステージ31に載置されるようにする。そして、上記のキャリア待機領域13を構成する側壁には、ドア61と同様に蓋C2を開閉する開閉機構が設けられ、蓋C2が開閉されるようにしてもよい。
【0047】
ただしキャリアC内の清浄化処理を行うにあたり、蓋C2を開閉することには限られない。
図7は、蓋C2を開閉せずに清浄化処理を行うことができるように構成された待機用キャリアステージ31の縦断側面を示している。この待機用キャリアステージ31はガス流出機構をなすように構成され、その上面にはN
2ガス吐出口71と、排気口72とが設けられている。N
2ガス吐出口71は待機用キャリアステージ31に形成された流路73を介してN2ガス供給機構74に接続されており、排気口72は待機用キャリアステージ31に形成された流路75を介して排気機構76に接続されている。
【0048】
キャリアCの下部にはガス供給ポートC3、ガス排出ポートC4が設けられており、キャリアCが待機用キャリアステージ31に載置されるとき、N2ガス吐出口71がガス供給ポートC3に、排気口72がガス排出ポートC4に夫々接続される。
図4で説明したようにキャリア待機領域13に加熱されたエアの下降流が形成されて既述の温度にキャリアCが加熱された状態で、N2ガス吐出口71からガス供給ポートC3を介してキャリアC内、即ちウエハWが収納される空間にN2ガスが供給されると共に、排気口72及びガス排出ポートC4を介して当該空間が排気される。つまり、キャリアCの内部がN2ガスによってパージされ、気化した異物が除去される。なお、図中の点線の矢印は、キャリアC内のN2ガスの流れを概略的に示したものである。また、このキャリアC内のパージに用いるガスとしてはN2ガスに限られず、乾燥したエアやN2ガス以外の不活性ガスを用いてもよい。なお、上記のように加熱されたエアをキャリアCに供給した上で、さらにこのようなキャリアC内のパージを行うようにしてもよい。
【0049】
また、キャリアC内の清浄化処理はキャリア待機領域13において行われることには限られず、例えばキャリア搬入出領域12で行われてもよい。
図8は、キャリアC内の清浄化処理が行えるように構成されたキャリア搬入出領域12の平面図である。このキャリア搬入出領域12にはキャリアCを収納する筐体76が設けられており、筐体76内は清浄化処理を行う処理室として構成されている。筐体76内にはキャリアステージ77が設けられている。このキャリアステージ77は、
図7で説明した待機用キャリアステージ31と同様に構成されており、載置されたキャリアC内をパージすることができる。図中78は筐体76の側壁に設けられたキャリアCの搬送口であり、キャリア搬送機構32は当該搬送口78を介して、キャリアCをキャリアステージ77に載置することができる。筐体76内には、キャリアステージ77に載置されたキャリアCを加熱するヒーター79が設けられている。
【0050】
キャリアステージ77上に、ウエハボート6へのウエハWの払い出しを終えたキャリアCが搬送される。そして、ヒーター79によりキャリアCが加熱されると共にキャリアC内がパージされて清浄化処理が行われる。この清浄化処理は、キャリアCをキャリア待機領域13に搬送して待機させる前に行ってもよいし、キャリア待機領域13に搬送して待機させた後に行ってもよい。なお、このように筐体76内で清浄化処理を行うことで、キャリア待機領域13において蓋C2の開閉を行う必要が無いので、
図8に示すキャリア搬送機構32には多関節アーム36及び蓋保持部37が設けられていない。
【0051】
ところで、キャリア待機領域13でキャリアCの加熱を行うにあたり、上記のように加熱されたエアをキャリア待機領域13に供給する代わりに、キャリア待機領域13に設けたヒーターにより行うようにしてもよい。例えばキャリア待機領域13を構成する壁面や待機用キャリアステージ31に当該ヒーターを設けることができる。また、そのようにキャリアCを加熱する加熱部としては、ヒーターの代りに赤外線照射ランプやLED(発光ダイオード)など、キャリアCに電磁波を照射して加熱するものをキャリア待機領域13に設けてもよい。ただし、
図1で述べたようにウエハWを加熱処理することの副産物として得られる加熱されたエアを用いてキャリアCを加熱する構成とすれば、そのような加熱部を設ける必要が無く、加熱部に供給する電力が不要となる。従って、成膜装置1の運用コストを抑えることができるという利点が有る。なお、加熱されたエアのキャリアCへの供給と、キャリア待機領域13に設けた加熱部によるキャリアCの加熱とを共に行うようにしてもよい。
【0052】
また、
図7、
図8に示すようにキャリアC内にN2ガスを供給する場合、このN2ガスを供給するN2ガス供給機構74に、当該N2ガスを加熱する加熱部を設けてもよい。つまり加熱されたN2ガスをキャリアCに供給することで、キャリアC内が加熱されるようにしてもよい。ただし、ガスの比熱は比較的小さい。つまり温度が低下しやすいため、そのようにキャリアC内に局所的にN2ガスが供給された場合、供給されたN2ガスの温度は速やかに低下し、キャリアC内の温度を上昇させるために比較的長い時間を要する場合が有ることが考えられる。従って効率よくキャリアC内の温度を上昇させて、異物の除去効率を高めるためには、
図1に示したように加熱されたエアをキャリアCが置かれるキャリア待機領域13に供給することで、当該キャリア待機領域13全体を加熱する構成とすることが有効である。
【0053】
図9は、キャリア待機領域13と反応容器設置領域15とに跨がる液体の循環路81を設けた例を示している。この循環路81の一部は、キャリア待機領域13において待機用キャリアステージ31内に引き回されている。図中82はポンプであり、循環路81において液体を循環させる。循環路81のうち、反応容器設置領域15に設けられる部位は、当該反応容器設置領域15のエアで加熱されているので、液体はこの部位を流通中に加熱されて、キャリア待機領域13に供給される。そして、待機用キャリアステージ31及び当該待機用キャリアステージ31に載置されるキャリアCがこの液体の熱により加熱される。その後、液体は循環路81を流通して、反応容器設置領域15にて再度加熱された後、キャリア待機領域13に供給される。このようにポンプ82及び循環路はキャリアCを加熱する加熱流体供給機構をなす。つまり、キャリアC内の清浄化処理を行うために反応容器設置領域15からキャリア待機領域13に供給される加熱された流体としては気体であることに限られず、液体であってもよい。
【0054】
図10では、後方側キャリアステージ23にヒーター83を設けると共に、下方区画壁16においてドア61がウエハ搬送口24を開放するときに当該ドア61に保持される蓋C2と対向する部位にヒーター84を設けた例を示している。蓋C2が取り外されてウエハボート6へウエハWが搬出されたキャリアCについてヒーター83により容器本体C1を、ヒーター84により蓋C2を夫々加熱する。それによって、容器本体C1及び蓋C2から気化した異物が気化して脱離する。蓋C2が開かれていることにより容器本体C1内には、ウエハ搬送領域14におけるN2ガスが流入し、雰囲気が置換される。容器本体C1及び蓋C2から脱離した異物はウエハ搬送領域14に設けられる図示しない排気口からウエハ搬送領域14の雰囲気を形成するN2ガスと共に排気されて除去される。
【0055】
上記のヒーター83、84によりキャリアCを加熱して異物の除去を行うタイミングとしてはウエハWを払い出した直後、即ちキャリア待機領域13へ搬送されて待機する前であってもよいし、ウエハWが戻される直前、即ちキャリア待機領域13で待機した後であってもよい。また、ヒーター83、84のうち、ヒーター83のみが設けられて容器本体C1のみが加熱される構成であってもよいが、ヒーター84により蓋C2も加熱することで、より確実にウエハWの異物による汚染を防ぐことができる。なお、このように容器本体C1、蓋C2を加熱するための加熱部としては発熱抵抗体であるヒーター83、84を用いることに限られず、上記の赤外線照射ランプやLEDをウエハ搬送領域14、キャリア搬入出領域12に夫々設けて蓋C2、容器本体C1を加熱してもよい。
【0056】
ところで、加熱されたダミーウエハDを用いてキャリアCを加熱して清浄化処理を行ってもよい。具体的に説明すると、既述したようにウエハボート6にはウエハWの他にダミーウエハDが搭載された状態で成膜処理が行われるので、ウエハWへの成膜処理が終了し、反応容器5から搬出されたウエハボート6には加熱され、比較的高い温度にされたダミーウエハDが搭載されている。ウエハWを受け取るために待機用キャリアステージ31から後方側キャリアステージ23に搬送され、蓋C2が開かれたキャリアCに対して、
図11に示すように移載用ボートステージ62に搬送されたウエハボート6から、ウエハWよりも先にダミーウエハDが搬送されてキャリアC内に収納される。
【0057】
この収納時のダミーウエハDの温度は、キャリアCの耐熱限界を超えない温度、例えば80℃以下である。ダミーウエハDからの輻射熱、ダミーウエハDの接触による熱伝導、ダミーウエハDによって発生する熱対流により、キャリアC内が加熱し、異物が気化される。なお、ダミーウエハDについてはウエハWと同様、CVDによって水分及び汚染物質などの異物は気化して除去されているため、このダミーウエハDの搬入によってキャリアCが異物に汚染されることは無い。
【0058】
キャリアCの蓋C2が開放されているため、気化した異物はキャリアCから流出し、キャリアC内の雰囲気はウエハ搬送領域14の雰囲気であるN2ガス雰囲気に置換される。然る後、ダミーウエハDがキャリアCから搬出されてウエハボート6に戻され、キャリアCにはウエハボート6から成膜処理済みのウエハWが搬入される。ダミーウエハDよりも後にキャリアCに搬送される、つまりダミーウエハDよりも長い時間冷却されるので、このウエハWの温度は、上記のキャリアCへの搬入時のダミーウエハDの温度よりも低い。従って、このウエハWの温度よりも、ダミーウエハDによって加熱されるキャリアCの温度の方が高くなるため、ウエハWに異物は付着しない。なお、キャリアCに搬入されるダミーウエハDの枚数としては1枚でもよいが、キャリアC内をより確実に加熱するために多いほど好ましい。また、上記のダミーウエハDの搬送は、ウエハWと同様にウエハ搬送機構63により行われる。
【0059】
ところで蓋C2には、容器本体C1との間に形成される隙間をシールするための樹脂製のガスケットが設けられている。このガスケットが、容器本体C1に対して固着し、蓋C2を空ける際に容器本体C1が蓋C2に引っ張られて振動し、蓋C2を開く動作をやり直すことになるおそれが有るが、キャリアCを加熱することで、この固着現象が抑制される。つまり、成膜装置1はこの固着現象を抑制する効果も有する。
【0060】
また、成膜処理時にダミーウエハDの表面に水分が吸着していると、この水分が反応容器5内に拡散し、ウエハWに形成される膜の膜質を劣化させる場合が有る。それを防ぐために、以下の手順で処理を行うようにしてもよい。先ず、
図3で説明したようにキャリアCからウエハボート6にウエハWを搬出した後、ウエハボート6からこのキャリアCにダミーウエハDを搬送して収納する。続いて、ダミーウエハDが収納された状態で、
図4で説明したキャリアC内の清浄化処理を行う。この清浄化処理によってダミーウエハDも加熱され、吸着された水分が除去される。然る後、キャリアCからダミーウエハDをウエハボート6に搬送し、ダミーウエハDとウエハWとが搭載された状態でウエハボート6を反応容器5に搬送して成膜処理を行う。その後は、
図6で説明したように成膜処理済みのウエハWをキャリアCに戻す。つまり、この処理工程によれば、ダミーウエハDの表面とキャリアC内とを同時に清浄化することができる。
【0061】
ところで、反応容器5内ではALDによる成膜処理を行ってもよいし、成膜処理以外の処理が行われてもよい。例えば、ヒーター52によって加熱される反応容器5内へはエッチング用の処理ガスを供給してもよいし、アニール処理用の不活性ガスを供給してもよい。つまり上記の成膜装置1は、成膜装置とされる代わりにエッチング装置やアニール装置などの加熱処理装置として構成されていてもよい。なお、上記のようにキャリアCの加熱には、反応容器設置領域15のエアを用いることには限られないので、本発明は、常温でウエハWに処理液を供給して洗浄、成膜などの液処理を行う基板処理部を備えた、加熱処理装置以外の処理装置にも適用される。また、本発明は、既述した実施形態に限られるものでは無く、各実施形態は適宜変更したり、組み合わせたりすることができる。