(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<樹脂組成物>
本発明の実施形態の一例に係る樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称することがある)は、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)、及び、下記一般式(1)のジオール成分を含むポリエステル(B)を有する樹脂組成物であって、前記ジオール成分を1〜20質量%有する樹脂組成物である。
【0015】
従来より、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)に対して、紫外線吸収性を付与する方法としては、紫外線吸収剤を添加する方法が知られている。しかしながら、この方法では長期使用時に紫外線吸収剤がブリードアウトするため、透明性が悪化するという問題があった。
本発明においては、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)と特定のポリエステル(B)を含む樹脂組成物が互いに相溶し、優れた紫外線吸収性のみならず、透明性をも発現することを見出したものである。本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは添加剤のブリードアウトによる透明性の低下を起こすこともなく、紫外線吸収性、機械特性にも優れるので、光学特性が必要な用途にも長期使用が可能である。
【0016】
本樹脂組成物は一般式(1)で表されるジオール成分を、1〜20質量%有することが好ましく、5〜18質量%有することがより好ましく、7〜15質量%有することが特に好ましい。1質量%以上であることで、樹脂組成物の紫外線吸収性が優れたものとなる。一方、20質量%以下であることにより、耐熱性が良好となる。
【0017】
本樹脂組成物は、単一のガラス転移温度であることが好ましい。単一のガラス転移温度を有するとは、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った際、本樹脂組成物は損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つだけ存在することを意味する。樹脂組成物のガラス転移温度が単一であれば、樹脂組成物に含まれる樹脂は相溶しており、透明性を有した樹脂組成物となる。
【0018】
ここで、主分散についてさらに説明する。
図1で示すように、一般に、樹脂の温度を低温から徐々に上げていくと、側鎖全体の熱運動(γ分散)、主鎖の局所的運動(β分散)、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)、結晶内分子鎖の運動(αc分散)、融解、流動といった緩和機構にそれぞれ対応したピークが観察される。これらの中でも、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)は、他の緩和機構に比べて活性化エネルギーが高く、それに対応するピークも大きくなる事から、主分散と呼ばれる(それより低温の緩和機構は副分散と呼ばれる)。ガラス転移温度は、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動が生じる際の温度であるので、動的粘弾性の温度分散測定における主分散のピークは、ガラス転移温度を示しているということができる。
【0019】
続いて、ポリマーブレンド系の動的粘弾性挙動について説明する。ポリマーブレンド系は、相溶系の組み合わせと非相溶系の組み合わせとに分けられる。
相溶系とは、混合する2種類以上の樹脂が分子レベルで完全に混ざり合う系を意味する。この際、分子レベルで混ざり合っている非晶領域は単一の相と見なす事ができ、ミクロブラウン運動も単一の温度で生じる。従って、相溶系の場合、ガラス転移温度が単一であり、主分散のピークも単一となる。また、その温度は、ブレンド比率に応じて、ブレンドするそれぞれの樹脂の間の範囲に値をとる。
一方、非相溶系の場合、混合する2種類以上の樹脂が混ざり合っておらず、二相系(あるいはそれ以上)として存在する。従って、ガラス転移温度を示す主分散のピークは、ブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。非相溶の場合、それぞれの樹脂の屈折率が極めて近い値になければマトリックスとドメインの界面で光が散乱し、樹脂組成物の透明性が損なわれる。また、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招く。さらに、延伸フィルムの製造の際、延伸時に界面剥離が生じ、破断や白化の原因となる。
本発明においては、本樹脂組成物を構成するビスフェノール系ポリカーボネート(A)とポリエステル(B)は相溶しているのが好ましく、本樹脂組成物及び該組成物を用いて得られる成形品、フィルムは優れた透明性を有する。
【0020】
本樹脂組成物のガラス転移温度が単一である場合、その温度の下限については100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方上限は160℃以下、好ましくは155℃以下である。本樹脂組成物のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、本樹脂組成物は耐熱性と延伸成型性のバランスに優れる。
ガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価されるものである。
【0021】
本発明の樹脂組成物のヘーズの値は、5%以下である事が好ましく、4%以下ある事がより好ましく、3%以下である事が更に好ましく、2%以下である事が特に好ましく、1.5%以下である事がとりわけ好ましい。本発明の樹脂組成物のヘーズの値がかかる範囲にあれば十分な透明性を有する。
なお、本発明におけるヘーズの値は、以下の式で計算するものである。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
【0022】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、本樹脂組成物は、前記ビスフェノール系ポリカーボネート(A)、及び、上記ポリエステル(B)以外の他の樹脂を含むことを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0023】
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、本樹脂組成物は一般的に配合される添加剤を適宜含むことができる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0024】
以下、本樹脂組成物を構成するビスフェノール系ポリカーボネート(A)、及び、ポリエステル(B)についてそれぞれ説明する。
【0025】
<ビスフェノール系ポリカーボネート(A)>
本樹脂組成物に含まれるビスフェノール系ポリカーボネート(A)とは、ジオールに由来する構造単位中50モル% 以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が、ビスフェノールであるものをいう。
ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂は、単独重合体または共重合体のいずれであってもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。
【0026】
本発明に用いるビスフェノール系ポリカーボネート樹脂の製造方法は、例えば、ホスゲン法、エステル交換法およびピリジン法などの公知のいずれの方法を用いてもかまわない。以下一例として、エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。
【0027】
エステル交換法は、ビスフェノールと炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。
【0028】
前記ビスフェノールの代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールA が好ましく用いられる。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他のビスフェノールで置き換えてもよい。
【0029】
ビスフェノールの具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(しビスフェノールAF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン(ビスフェノールBP)、2,2−ビス(3−メチルー4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3−イソプロピルフェニル)プロパン(ビスフェノールG)、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン(ビスフェノールM)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン(ビスフェノールP)、5,5’−(1−メチルエチリデン)−ビス[1,1’−(ビスフェニル)−2−オール]プロパン(ビスフェノールPH)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、及び、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)などが挙げられる。
【0030】
一方、炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、及び、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0031】
本発明に用いられるビスフェノール系ポリカーボネート(A)の粘度平均分子量は、力学特性と成形加工性のバランスから、通常、10,000以上、100,000以下、好ましくは20,000以上、50,000以下の範囲である。なお、本発明においては、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)を1種のみを単独、又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
<ポリエステル(B)>
本樹脂組成物に含まれるポリエステル(B)は、下記一般式(1)で示されるジオール成分を含むポリエステルである。このポリエステル(B)はベンゾトリアゾール基を有するため、本樹脂組成物は紫外線吸収能を有する。
【0034】
上記一般式で表されるベンゾトリアゾールを有するジオール成分の含量は全ジオール成分に対して5〜20モル%であるのが好ましい。5モル%以上の場合、フィルムに十分な紫外線吸収性能を与えることができる。一方、20モル%を以下の場合、フィルムの機械強度を向上することが可能となる。
またベンゾトリアゾールを有するジオールの含量が上記範囲であることにより、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)とポリエステル(B)を混合した樹脂組成物は相溶性を示し、透明性を有する組成物となる。
【0035】
ポリエステル(B)を構成するジカルボン酸成分及びジオール成分について詳述する。
ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分の主成分として芳香族ジカルボン酸を含み、全ジオール成分に対して1,4−ブタンジオールを50モル%〜95モル%含むことが好ましい。
【0036】
前記ポリエステル(B)を構成するジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を主成分とする。
ここで主成分とは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が90モル%以上であることを指し、好ましくは92モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上であり、特に好ましくはジカルボン酸成分の全て(100モル%)が芳香族ジカルボン酸である。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などがあげられる。これら芳香族ジカルボン酸はそれぞれ単独で、あるいは必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
またこれらのうち、得られる樹脂組成物の透明性の観点からテレフタル酸をもっとも好適に使用することができる。ジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、92モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、ジカルボン酸成分の全て(100モル%)がテレフタル酸であることが特に好ましい。
【0037】
芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族カルボン酸等があげられる。これらは、全ジカルボン酸成分に対して5モル%未満の範囲で用いてもよく、それぞれ単独であるいは必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記ポリエステル(B)は、既に説明した一般式(1)で示されるジオール以外のジオール成分として、1,4−ブタンジオールを含むことが好ましい。1,4−ブタンジオールの含有量は、全ジオール成分に対して50モル%〜95モル%であるのが好ましく、60〜95モル%であるであることがより好ましい。1,4−ブタンジオールの含量が50モル%以上の場合は樹脂が着色する懸念がなくなる。
【0039】
また、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、あるいは必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0040】
本発明に使用されるビスフェノール系ポリカーボネート(A)、及び、前記ポリエステル(B)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0041】
<本樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法について説明するが、以下の説明は、本樹脂組成物を製造する方法の一例であり、本樹脂組成物はかかる製造方法により製造される本樹脂組成物に限定されるものではない。
【0042】
上記樹脂を混練する方法は特に限定されないが、なるべく簡便に本樹脂組成物を得る為に、押出機を用いて溶融混練する事によって製造するのが好ましい。
更に、ビスフェノール系ポリカーボネート(A)とポリエステル(B)とを均一に混合するために、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
ビスフェノール系ポリカーボネート(A)とポリエステル(B)の混合比については、特に定めないが通常は質量比で、ポリカーボネート(A):ポリエステル(B)=5:95〜99:1、好ましくはポリカーボネート(A):ポリエステル(B)=20:80〜95:5である。
【0043】
混練温度は、用いる全ての樹脂のガラス転移温度以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その樹脂の結晶融解温度以上である事が必要である。使用する樹脂のガラス転移温度や結晶融解温度に対して、なるべく混練温度が高い方が、樹脂の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こる為好ましくない。この事から、混練温度は200℃以上320℃以下であり、220℃以上300℃以下が好ましく、240℃以上280℃以下がより好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解を生じる事なく、相溶性や溶融成形性を向上させる事ができる。
【0044】
得られた本樹脂組成物を、以下の方法でフィルム、プレート、射出成型品等の成形体とすることができる。
【0045】
フィルム及びプレートは、ロール延伸、テンター延伸法、チューブラー法、インフレーション法のほか、フィルムやプレートの成形方法として一般的なTダイキャスト法、プレス法などにより得ることができる。
【0046】
また、射出成形体は、例えば熱可塑性樹脂用の一般射出成形法、ガスアシスト成形法及び射出圧縮成形法等の射出成形法により得ることができる。その他目的に合わせて、上記の方法以外でインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法等により射出成形体が得られる。
【0047】
また、本発明の樹脂組成物からなるフィルム、プレート、射出成形体などの成形体は多層体としても広く使用することができる。本多層体の成形方法としては公知の方法、例えば、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の方法を用いることができる。この中でも、押出成形の場合には共押出法を用いることが好ましい。
【0048】
共押出の場合、本多層体の各層を構成する樹脂、及び、添加剤を複数台の押出機を用いてフィードブロック、あるいは、マルチマニホールドダイを通じ樹脂を合流させ、多層体を成形する。本多層体の強度や耐衝撃性をさらに向上するには、前記工程で得られた多層体をロール法、テンター法、チューブラー法等で一軸、あるいは、二軸に延伸することもできる。
【0049】
本発明の多層体においては、本樹脂組成物からなる層を少なくとも1層以上有することが重要である。この層を少なくとも1層以上有することで、優れた耐紫外線変色性を付与することができる。
本樹脂組成物からなる層を最外層に少なくとも一層有する多層体であることが好ましく、耐紫外線変色性の観点から、本樹脂組成物からなる層を両最外層に有する多層体であることが特に好ましい。
【0050】
多層体において、本樹脂組成物からなる層の厚みとしては、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。この層の厚みが5μm以上であれば多層体に優れた耐紫外線変色性を付与することができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物からなるフィルム、プレート、または、射出成形品などの成形体は、耐紫外線変色性、二次加工性、耐熱性、透明性に優れるため、例えば、建材、内装部品、透明シート、樹脂被覆金属板用シート、成型(真空・圧空成型、熱プレス成型など)用シート、カード基材、着色プレート、透明プレート、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シュリンクチューブや、自動車内装材、ディスプレイ等の家電製品部材、OA機器部材等に使用できる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0053】
それぞれ、以下の方法で評価を行った。
【0054】
(1)ガラス転移温度
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った。そして損失正接(tanδ)の主分散のピークを示す温度をガラス転移温度とした。
【0055】
(2)ヘーズ
JIS K7105に基づいて、厚み0.1mmのサンプルで全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0056】
(3)耐紫外線変色性(YI)
JIS K7373に準拠し、厚み100μmにおけるイエローインデックス(YI値)を測定した。続いて、岩崎電気(株)のアイスーパーUVテスターSUV−W151を用いて、照射強度70mW/cm
2、照射温度63℃、照射湿度50%RHの条件で紫外線を400時間照射した後、同様の方法でYI値を測定した。紫外線の照射前後におけるYI値の変化ΔYI(=「紫外線照射後のYI」―「紫外線照射前のYI」)を評価した。
【0057】
(4)耐ブリードアウト性
岩崎電気(株)のアイスーパーUVテスターSUV−W151を用いて、照射強度70mW/cm
2、照射温度63℃、照射湿度50%RHの条件で紫外線を400時間照射した後の外観を目視にて評価した。紫外線照射前の状態と変化がなかったものを合格(〇)、白化等、外観に変化があったものを不合格(×)とした。
【0058】
<ビスフェノール系ポリカーボネート(A)>
(A)−1:三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンS2000(ビスフェノールA系ポリカーボネート、ガラス転移温度=162℃、平均屈折率=1.58)
<ポリエステル(B)>
(B)−1:酸成分:テレフタル酸=100モル%、ジオール成分:1,4−ブタンジオール/2,2−メチレンビス[4−(2−ヒドロキシエチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]=83.5/16.5モル%(ガラス転移温度=88℃、Tm=187℃、平均屈折率=1.62)
【0059】
(実施例1)
ポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比90:10の割合でドライブレンドし、40mmφ同方向二軸押出機を用いて250℃で混練した後、Tダイより押出し、次いで約120℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み0.1mmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて評価を行った結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
ポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比80:20の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
ポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比70:30の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
ポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比60:40の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
ポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比40:60の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例6)
ポリカーボネート(A)−1を、40mmφ単軸押出機を用いて2種3層のマルチマニホールド式の口金より第2層として260℃で押出した。また、同時にポリカーボネート(A)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドしたものを、φ30mm単軸押出機を用いて、同様の口金より第1層、及び、第3層として260℃で押出した。また、この時それぞれの層の厚みは、第1層/第2層/第3層が0.01/0.08/0.01(mm)となるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。次いで、この共押出フィルムを約120℃ のキャスティングロールにて急冷し、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて評価を行った結果を表1に示す。
【0065】
(比較例1)
ポリカーボネート(A)−1を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。なお、耐紫外線変色性(ΔYI)、及び、耐ブリードアウト性の評価のため、作成したフィルムに紫外線を400時間照射したとき、シートが粉々になった。ポリカーボネートの分子構造が紫外線によって分解されたものと考えられる。
【0066】
(比較例2)
ポリエステル(B)−1の代わりにBASF社製チヌビン1577(2−[4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(ヘキシルオキシ)フェノール。以下(M)−1とする。)を用い、ポリカーボネート(A)−1、及び、(M)−1を混合質量比90:10の割合で混合し、実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
ビスフェノール系ポリカーボネート(A)の代わりに、三菱ケミカル(株)の商品名DURABIO(ガラス転移温度=101℃、平均屈折率=1.50、イソソルビド/1,4−シクロヘキサンジメタノール=50/50モル%、以下、(J)−1とする)を用い、(J)−1、及び、ポリエステル(B)−1を混合質量比70:30の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。評価結果を表1に示す。なお、透明性が著しく悪かったため、耐紫外線変色性、耐ブリード性の評価は未実施とした。
【0068】
【表1】