特許第6881139号(P6881139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6881139-光硬化型粘着シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881139
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】光硬化型粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210524BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210524BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210524BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/06
   C09J11/06
   B32B27/30 A
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-152224(P2017-152224)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-31598(P2019-31598A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152295(JP,A)
【文献】 特開2014−152294(JP,A)
【文献】 特開2015−105296(JP,A)
【文献】 特開2012−158632(JP,A)
【文献】 特開2016−027655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)を主成分樹脂として含む光硬化型粘着シートであって、
粘着シートのゲル分率が10%以下であり、
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定した、粘着シートの重量平均分子量(Mw)は20万以上50万以下であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4以上15以下であり、且つ、
ポリスチレン換算での分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域に最大ピークが存在し、且つ、分子量40万以上200万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在することを特徴とする光硬化型粘着シート。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)、架橋剤(b)及び光開始剤(c)を含むことを特徴とする請求項1記載の光硬化型粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)が、マクロモノマーを用いたグラフト共重合体である、請求項1又は2に記載の光硬化型粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)の重量平均分子量(Mw)が、5万以上40万以下である、請求項1〜3の何れかに記載の光硬化型粘着シート。
【請求項5】
前記光開始剤(c)が、水素引抜型光開始剤を1種以上含む、請求項1〜4の何れかに記載の光硬化型粘着シート。
【請求項6】
以下の(I)及び(II)の粘弾性特性を有する、請求項1〜5の何れかに記載の光硬化型粘着シート。
(I)周波数10−5Hz、基準温度20℃における貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上
(II)周波数10−3Hz、基準温度80℃における貯蔵弾性率G’が5×10Pa以下
【請求項7】
25mm×20mmの貼着面積でステンレス板に貼り付け、温度40℃で500gf(4.9N)の加重を鉛直方向に30分間加える保持力試験によるズレ長さが1.0mm以下である、請求項1〜6の何れかに記載の光硬化型粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の光硬化型粘着シートと、離型フィルムとを積層してなる、離型フィルム付光硬化型粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の光硬化型粘着シートの光硬化物としての粘着シートであって、そのゲル分率は30%以上である粘着シート。
【請求項10】
2つの画像表示装置用構成部材間を、請求項1〜8の何れかに記載の光硬化型粘着シートを介して積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体。
【請求項11】
2つの画像表示装置用構成部材間を、請求項9に記載の粘着シートを介して積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体。
【請求項12】
前記画像表示装置構成部材が、タッチセンサー、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせからなる積層体であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の画像表示装置構成用積層体。
【請求項13】
請求項1〜8の何れかに記載の光硬化型粘着シートを介して2つの画像表示装置構成部材を積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光照射し、該画像表示装置構成部材を介して、該光硬化型粘着シートを光硬化させる工程を有する、画像表示装置構成用積層体の製造方法。
【請求項14】
前記当該光硬化型粘着シートを光硬化させる際、光硬化後の粘着シートのゲル分率が30%以上となるように光硬化させることを特徴とする、請求項13に記載の画像表示装置構成用積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の画像表示装置構成用積層体を用いて構成される画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射することにより硬化する性能すなわち光硬化性を備えた光硬化型粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を接着剤で充填することにより、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
このような画像表示装置用構成部材間の空隙を粘着剤で充填する方法として、画像表示装置用構成部材間の空隙を、粘着シートを用いて充填する方法が知られている。
【0004】
上述のような画像表示装置構成部材は、被着面に印刷部が形成されているなど、被着面に凹凸部を有していることが多く、視認性を高めるためには、そのような凹凸部にも粘着剤が充填される性質(段差吸収性とも称する)を備えている必要がある。
【0005】
このような凹凸部に粘着剤を充填させるためには、粘着シートがそれだけ柔軟であることが求められる。
しかし、粘着シートが柔軟であると、画像表示装置構成部材側から発生するアウトガス等の圧に対して対抗できるだけの凝集力が不足し、耐発泡信頼性に劣るという問題が生じる。
【0006】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、紫外線によって1次硬化(仮硬化)した粘着シートを画像表示装置構成部材に貼合後、画像表示装置構成部材を介して粘着シートに紫外線照射し2次硬化(本硬化)させる方法が開示されている。
かかる粘着シートは、1次硬化(仮硬化)の段階では、さらに硬化される余地を残しており、それだけ柔軟であるため、被着体の表面に凹凸があったり、粘着界面に異物等が存在したりしても、これらの凹凸に十分に追従して馴染むことができる。
そして、前記1次硬化された粘着シートを、2次硬化(本硬化)することで、アウトガスのガス圧に対して十分に対抗できるだけの粘着力と凝集力を持たせることができる。
【0007】
近年、デザインの多様化に伴って、表面保護パネルの周縁部に設けられた枠状の隠蔽部を黒色以外の色で形成することが行われ始めている。黒色以外の色で隠蔽部を形成する場合、黒色以外の色では隠蔽性が低いため、黒色に比べて隠蔽部、すなわち印刷部の高さが高くなる傾向にある。そのため、そのような高さの大きな印刷部を備えた構成部材を貼り合わせるための粘着剤が必要とされるため、このような用途に用いる粘着シートには、より大きな印刷段差に追従して隅々まで充填することができる優れた印刷段差追従性が求められる。
【0008】
粘着シートが、大きな印刷段差に追従して隅々まで充填するには、画像表示装置構成部材に貼合する段階で、粘着シートには、さらに高い柔軟性乃至流動性が求められることになる。
しかしその一方で、これにより保管・運搬時に粘着層が流動して変形するという問題が生じる。
【0009】
そこで、例えば特許文献2においては、半硬化状態の粘着層と、前記半硬化状態の粘着層を挟むように積層された一対の基材層とを備える積層体を5〜100枚重ね、重ねた方向に対して側面側から波長360nm以下の光を照射する、画像表示装置用粘着シートの製造方法が開示されている。
【0010】
このような製造方法によれば、5〜100枚重ねられた積層体は、側面側に特定の光が照射され粘着剤層の端部のみが硬化されているため、保管・運搬時に粘着剤層が流動して変形する虞がない。
しかし、粘着シートを5〜100枚重ねて、重ねた方向に対して側面側から光を照射させて、該側面部を硬化させることで、粘着層のはみ出しを防止しており、粘着層が形成された後に、これを側面側から硬化させる工程を有することから極めて煩雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4971529号
【特許文献2】特許第5991531号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、段差に追随して変形し、画像表示装置用構成部材間の空隙を画像表示装置用構成部材間の空隙を充填することができる段差吸収性を保持しつつ、長期間保管しても、粘着シートの形状を維持して、粘着剤がはみ出るようなことがない保管安定性に優れた、新規な粘着シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)を主成分樹脂として含む光硬化型粘着シートであって、粘着シートのゲル分率が10%以下であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定した、粘着シートの重量平均分子量(Mw)は20万以上50万以下であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4以上15以下であって、且つ、ポリスチレン換算での分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域に最大ピークが存在し、且つ、分子量40万以上200万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在することを特徴とする光硬化型粘着シートを提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する光硬化型粘着シートは、重量平均分子量(Mw)が20万以上50万以下であり、その分子量分布(Mw/Mn)が4以上15以下であって、かつ、ゲル分率が10%以下であり、しかも、特定の分子量領域に最大ピークを有し、特に分子量40万以上200万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在するものであることにより、高い段差吸収性を有しながら、保管安定性に優れたものとすることができる。
また、本発明が提案する光硬化型粘着シートは、光硬化性を備えているから、被着体への貼合後に光照射させることで高凝集力を得ることができ、優れた耐発泡信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した、実施例1の粘着シートの分子量分布曲線を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明する。但し、ここで説明する実施態様は、あくまでも発明の実施の形態の代表例である。
【0017】
<本粘着シート>
本発明の実施の形態の一例としての光硬化型粘着シート(以下「本粘着シート」と称する。)は、光を照射することにより硬化する光硬化性を備えた光硬化型粘着シートであり、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)を主成分樹脂として含むものである。
ここで、当該「主成分樹脂」とは、本粘着シートを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きな樹脂を意味し、本粘着シートを構成する樹脂の50質量%以上、中でも70質量%以上、中でも80質量%以上、中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂であるのが好ましい。
【0018】
(ゲル分率)
本粘着シートは、3次元網目構造を形成しない状態であるのが好ましく、そのゲル分率は10%以下であるのが好ましい。
本粘着シートのゲル分率が10%以下であれば、圧力あるいは温度を加えながら被着体に貼合する際に、被着体の形状に合わせて粘着シートを変形させることが容易であるから、十分な段差吸収性を得ることができる。
かかる観点から、本粘着シートのゲル分率は10%以下であるのが好ましく、中でも5%以下、その中でも1%以下(0%を含む)であるのがさらに好ましい。
【0019】
本粘着シートは、光硬化型であるのが好ましい。すなわち、光により硬化する性質を有するものであれば未硬化状態のものであってもよく、中でも光により硬化する余地が残されているものであるのが好ましい。この際、本粘着シートは、光硬化する余地が残された状態に光硬化又は熱硬化(「仮硬化」とも称する)されたものであってもよい。このような本粘着シートは、被着体へ貼合した後、本粘着シートを光硬化(「本硬化」とも称する)させることができる。
本粘着シートを本硬化させた後のゲル分率は30%以上、特に40%以上であるのが好ましい。このような範囲に本粘着シートを硬化させることで、本粘着シートは過酷な高温高湿環境等においても高凝集力となり、耐発泡信頼性を高めることができる。
なお、「光硬化型」とは、放射線一般に対する反応性又は硬化性を備えることの意であり、中でも、紫外線及び/又は可視光線に対する反応性若しくは硬化性を備えることが好ましく、具体的には、波長200nm〜780nmの波長領域の光に対する反応性又は硬化性を備えることが好ましい。
【0020】
(分子量分布)
本粘着シートは、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定される、次の分子量分布特性(1)〜(3)を有するのが好ましい。
(1)重量平均分子量(Mw)が20万以上50万以下である。
(2)分子量分布(Mw/Mn)が4以上15以下である。
(3)ポリスチレン換算での分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域に最大ピークが存在し、且つ、分子量40万以上200万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在する。
【0021】
本粘着シートは、分子量分布特性において、上記の通り、20万以上50万以下の重量平均分子量(Mw)を有し、5万以上40万未満の領域に最大ピークを有するので、部材貼合時には段差に追従できる程度の柔軟性を備えていながら、さらに、分子量分布(Mw/Mn)が4以上15以下の範囲内で、40万以上200万未満の若干高分子量成分を含有しているため、室温〜40℃程度の保管雰囲気下でも変形や流動を起こさない。
よって、保管安定性に優れながら、高い段差吸収性を有するものとすることができる。
【0022】
上記観点から、本粘着シートの重量平均分子量(Mw)は20万以上50万以下であるのが好ましく、中でも22万以上或いは45万以下、その中でも25万以上或いは40万以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
同じく上記観点から、本粘着シートの分子量分布(Mw/Mn)は、4以上15以下であるのが好ましく、中でも5以上或いは12以下、その中でも6以上或いは10以下であるのがさらに好ましい。
【0024】
また、同じく上記観点から、ポリスチレン換算での分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域、中でも分子量8万以上35万未満の領域、その中でも分子量10万以上25万未満の領域に最大ピークが存在し、且つ、分子量40万以上200万未満の領域、中でも分子量60万以上180万未満の領域、その中でも分子量80万以上160万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在するのが好ましい。
【0025】
ここで、「ピーク」とは、分子量分布曲線上で曲率の符号(プラス・マイナス)が変化する点である。
また、上記「ショルダー」とは、分子量分布曲線において、なだらかな曲線斜面に対して上方に膨出した部分の変曲点もしくは停留点をいう。
【0026】
さらに、ポリスチレン換算での上記分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域における最大ピーク強度に対する、分子量40万以上200万未満の領域における最大ピーク強度の比は、1.1〜10であるのが好ましく、中でも1.5以上或いは5.0以下、その中でも2.0以上或いは4.0以下であるのがさらに好ましい。
【0027】
本粘着シートが、上記分子量分布特性(1)〜(3)を具備させるための方法として次の方法1,2を挙げることができる。
例えば後述するように、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)と、所定の架橋剤(b)及び光開始剤(c)とを含む本樹脂組成物に、僅かな光を照射して、三次元架橋しない程度に僅かに仮硬化させた高分子量の反応生成物を生成させ、上記特性(1)〜(3)を満足するように、該(a)〜(c)及び該反応生成物の配合量を調節した本樹脂組成物を調製してシートを形成する方法(方法1)を挙げることができる。
このような方法1によれば、本粘着剤組成物により分子量分布を調整しつつ、かつ、本粘着剤組成物を用いて高分子量体を生成させることで、上記分子量分布特性(1)〜(3)の全てを満足させることができる。
また、他にも前記方法1の技術思想から転じて、上記(1)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)の他に、低分子量成分あるいは高分子量ポリマーを、上記特性(1)〜(3)を満足するように適宜選択して、これらの混合物を含む本樹脂組成物を調製してシートを形成する方法(方法2)を挙げることができる。
これら方法1,2以外の方法でも、上記分子量分布特性(1)〜(3)を具備させることは可能である。
【0028】
なお、上記方法1により得られる光硬化型粘着シートおいて、分子量40万以上200万未満の領域に存在するピーク又はショルダーは、架橋剤と光開始剤、及び、架橋剤と(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)とが、3次元網目構造を形成しない程度に反応して分子量が上昇したことにより、形成されるものであると考えることができる。よって、分子量40万以上200万未満の領域に存在するピーク又はショルダーの分子量並びに最大ピーク強度は、架橋剤の分子量及び官能基数、その含有量に、大きく影響されるものと考えることができる。
【0029】
(厚さ)
本粘着シートの厚さは、0.02mm〜1mmであるのが好ましい。
本粘着シートの厚さが0.02mm以上であれば、被着体等に施されている印刷段差等の凹凸に追従可能である。また、薄肉化の要求にこたえる観点からは、厚さ1mm以下であるのが好ましい。
かかる観点から、本粘着シートの厚さは、0.02mm〜1mmであるのが好ましく、中でも0.05mm以上或いは0.8mm以下、その中でも0.1mm以上或いは0.5mm以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.075mm以上或いは0.25mm以下であるのがさらに好ましい。
【0030】
(粘弾性特性)
本粘着シートは、以下の(I)及び(II)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(I)周波数10−5Hz、基準温度20℃における貯蔵弾性率G’が1×10Pa以上である。
(II)周波数10−3Hz、基準温度80℃における貯蔵弾性率G’が5×10Pa以下である。
このような粘弾性特性を有することで、本粘着シートは、保管時の形状安定性と貼合時の段差吸収性能という、背反になりやすい2つの性能を同時に有することが可能となる。
本粘着シートがこのような粘弾性特性を有するためには、例えば(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の組成を調整したり、架橋剤量や光開始剤などの添加剤量を調整したり、粘着剤組成物の分子量や分子量分布を調整したりすればよい。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0031】
かかる観点から、上記(I)の貯蔵弾性率G’は、1×10Pa以上であるのが好ましく、中でも2×10Pa以上或いは1×10Pa以下であることがより好ましく、その中でも5×10Pa以上或いは1×10Pa以下であることがさらに好ましい。
また、同様の観点から、上記(II)の貯蔵弾性率G’は、5×10Pa以下であるのが好ましく、中でも1×10−1Pa以上或いは3×10Pa以下であるのがさらに好ましく、その中でも1×10Pa以上或いは2×10Pa以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本粘着シートは、25mm×20mmの貼着面積でステンレス板に貼り付け、温度40℃で500gf(4.9N)の加重を鉛直方向に30分間加える保持力試験によるズレ長さが1.0mm以下であることが好ましい。
このようなズレ長さを有することで、本粘着シートは、通常考えられる粘着シートの保管環境において十分な形状安定性を有するため、保管時の形状変化を抑えることが可能となる。
【0033】
かかる観点から、上記ズレ長さは、1.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。
なお、上記ズレ長さは、後述する実施例に記載の方法で求められる値である。
【0034】
<本樹脂組成物>
本粘着シートは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)を主成分樹脂として含む樹脂組成物(「本樹脂組成物」と称する)を光照射によって仮硬化させて得られる光硬化物であるのが好ましい。
すなわち、本樹脂組成物に光照射して、当該本樹脂組成物が3次元網目構造を形成しない程度に仮硬化することにより本粘着シートとすることができる。但し、その形成方法に限定するものではない。
【0035】
本樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)、架橋剤(b)及び光開始剤(c)を含む樹脂組成物であるのが好ましい。
【0036】
本樹脂組成物は、溶剤を含む溶剤系樹脂組成物であってもよいし、また、溶剤を含まない非溶剤系樹脂組成物であってもよい。
溶剤系樹脂組成物の場合、塗工時の粘度を溶剤によりコントロールできるため、高分子量ポリマーを含む組成物であっても取扱いが容易である。
これに対し、非溶剤系樹脂組成物は、高分子量ポリマーを含む組成物を扱おうとすると、粘度が上昇して取り扱い難くなるため、低分子量の組成物(たとえば分子量5〜40万)をシート化した後、3次元網目構造を形成しない程度に光硬化するのが有効である。
【0037】
[(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)]
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合可能なモノマー成分を重合することにより得られる共重合体を挙げることができる。例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体の他、これと共重合可能なモノマー成分を重合することにより得られる共重合体を挙げることができる。
【0038】
より具体的には、アルキル(メタ)アクリレートと、これと共重合可能な(a)カルボキシル基含有モノマー(以下「共重合性モノマーA」とも称する。)、(b)水酸基含有モノマー(以下「共重合性モノマーB」とも称する。)、(c)アミノ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーC」とも称する。)、(d)エポキシ基含有モノマー(以下「共重合性モノマーD」とも称する。)、(e)アミド基含有モノマー(以下「共重合性モノマーE」とも称する。)、(f)ビニルモノマー(以下「共重合性モノマーF」とも称する。)、(g)側鎖の炭素数が1〜3の(メタ)アクリレートモノマー(以下「共重合性モノマーG」とも称する。)及び(h)マクロモノマー(以下「共重合性モノマーH」とも称する。)から選択される何れか一つ以上のモノマーを含むモノマー成分の共重合体を挙げることができる。
【0039】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、側鎖の炭素数が4〜18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、側鎖の炭素数が4〜18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
上記共重合性モノマーAとしては、例えば(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0041】
上記共重合性モノマーBとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
上記共重合性モノマーCとしては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノイソプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、N−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
上記共重合性モノマーDとしては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0044】
上記共重合性モノマーEとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
上記共重合性モノマーFとしては、ビニル基を分子内に有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類並びに分子内にヒドロキシル基、アミド基及びアルコキシルアルキル基等の官能基を有する官能性モノマー類並びにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類並びに酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びラウリン酸ビニル等のビニルエステルモノマー並びにスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン及びその他の置換スチレン等の芳香族ビニルモノマーを例示することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
上記共重合性モノマーGとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0047】
上記共重合性モノマーHは、重合により(メタ)アクリル系(共)重合体となった際に側鎖の炭素数が20以上となるマクロモノマーである。
共重合性モノマーとしてマクロモノマーを用いることにより、(メタ)アクリル系(共)重合体をグラフト共重合体とすることができる。
したがって、共重合性モノマーHと、それ以外のモノマーの選択や配合比率によって、グラフト共重合体の主鎖と側鎖の特性を変化させることができる。
【0048】
上記共重合性モノマーHとしては、骨格成分がアクリル系重合体又はビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
マクロモノマーの骨格成分としては、例えば上記側鎖の炭素数が4〜18の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート、上記共重合性モノマーA、上記共重合性モノマーB、上記共重合性モノマーG等に例示されるものが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
マクロモノマーは、ラジカル重合性基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基又はチオール基等の官能基を有するものである。マクロモノマーとしては、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つあるいは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合も官能基は一つあるいは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。
また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合は、他のモノマーからなる重合物ユニットとの付加する官能基、または他のモノマーと共重合するラジカル重合性基の何れか以外の官能基、もしくはラジカル重合性基は二つ以上であってもよい。
よって、前記マクロモノマーの末端官能基としては、例えばメタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などのラジカル性重合基のほか、ヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を挙げることができる。
中でも、他のモノマーと共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。ラジカル重合性基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。マクロモノマーが官能基を有する場合においても、官能基は一つ或いは二つ以上含有していてもよく、中でも一つであるものが特に好ましい。
また、ラジカル重合性基と官能基は、どちらか一方でも、両方含有していてもよい。ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合は、他のモノマーからなる重合物ユニットとの付加する官能基、または他のモノマーと共重合するラジカル重合性基の何れか以外の官能基、もしくはラジカル重合性基は二つ以上であってもよい。
【0050】
上記共重合性モノマーHの数平均分子量は、500〜2万であるのが好ましく、中でも800以上あるいは8000以下、その中でも1000以上あるいは7000以下であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0051】
<より好ましい組成>
本樹脂組成物の好適な一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)、架橋剤(b)及び光開始剤(c)を含有する樹脂組成物を挙げることができる。
【0052】
このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)を用いて、3次元網目構造を形成しない程度に光硬化させることにより、室温状態でシート状を保持しつつ自着性を示すことができ、加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
よって、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50〜100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
しかも、このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)は、温度に対する溶融乃至流動性が高いので、例えば輸送下等での保管安定性に劣るが、本発明の思想に基づいて、これを微小架橋させることで、本来の粘着特性を阻害することなく、保管安定性を向上させることができる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での本粘着シートの柔軟性や、被着体への本粘着シートの濡れ性、すなわち接着性に影響するため、本粘着シートが室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、−70℃〜0℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上或いは−5℃以下、その中でも−60℃以上或いは−10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(a−1)の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらに、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等を用いることもできる。
また、前記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0055】
また、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)の幹成分は、疎水性のモノマーと、親水性のモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
【0056】
具体的には、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0057】
ここで、上記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、メチルメタクリレートを挙げることができる。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル等のアルキルビニルエステル、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0058】
中でも、後述する枝成分が成す相と適度な相分離構造を形成しやすい点と、適度な接着性(タック性)を付与する観点から、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上のアルキル(メタ)アクリレ−トであるのが好ましい。
【0059】
本粘着シートが、例えばタッチセンサー機能をもつ部材に用いられる場合、タッチ検出感度の変化を吸収して検出信号のノイズ発生を抑えるために、比誘電率の低い光硬化性組成物が求められる場合がある。このとき、樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の比誘電率を低く調整する観点から、疎水性モノマーとして、炭素数が5以上、中でも8以上、その中でも9以上、特に10以上のアルキル(メタ)アクリレ−トを用いるのが好ましい。
【0060】
炭素数8以上のアルキル(メタ)アクリレ−トとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト等を挙げることができる。
【0061】
上記の親水性のモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの他、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いることができる。
【0062】
上記の中でも、組成物の湿熱白化を防止しつつ、被着体への密着性を向上させる観点から、上記の親水性のモノマーとして、水酸基含有モノマーや、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0063】
他方、本粘着シートが金属又は金属酸化物等の腐食性を有する部材に用いられる場合は、被着体の腐食劣化を防ぐために、酸性度の高いカルボキシル基や酸無水物を含有しない親水性成分を用いるのが好ましい。かかる観点からは、上記の親水性のモノマーとして、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、フェニル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いるのが好ましい。
【0064】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマーを構成単位として含むことが好ましい。マクロモノマーとは、末端の官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0065】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、本粘着シートの加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
【0066】
マクロモノマーがこのようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、50℃から80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度を意味し、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0067】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って樹脂組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましい。
【0068】
かかる観点から、マクロモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a−1)中に5質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は、500〜10万であるのが好ましく、中でも8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
【0069】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド等の各種ビニルモノマーが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
[架橋剤(b)]
上記架橋剤(b)としては、少なくとも二重結合架橋を有する架橋剤が好ましい。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、架橋剤(b)が(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)と化学結合した態様も包含される。
【0071】
上述したように、分子量40万以上200万未満の領域に存在するピーク又はショルダーは、架橋剤と光開始剤、及び、架橋剤と(メタ)アクリル酸エステル共重合体とが、3次元網目構造を形成しない程度に反応して分子量が上昇したことにより、形成されるものであると考えることができる。よって、架橋剤の分子量、官能基数及び含有量は、本粘着シートの分子量分布において、分子量40万以上200万未満の領域に存在するピーク又はショルダーの分子量並びにピーク強度に影響する。
【0072】
かかる観点から、架橋剤(b)として多官能(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。ここで、多官能は2つ以上の架橋性官能基を有するものを指す。
なお、必要に応じて3つ以上、4つ以上の架橋性官能基を有してもよい。
また、上記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0073】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能(メタ)アクリル系モノマーの他、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
また、上記観点から、架橋剤の分子量は、100〜1000であるのが好ましく、中でも200以上或いは600以下であって、官能基数が2〜6、中でも2以上或いは4以下の架橋剤が特に好ましい。
【0075】
同じく上記観点から、架橋剤(b)の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)100質量部に対して0.5〜50質量部、中でも1質量部以上あるいは40質量部以下、その中でも5質量部以上あるいは30質量部以下の割合であるのが好ましい。
【0076】
[光開始剤(c)]
光開始剤(c)は、前述の架橋剤(b)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たすものである。光開始剤(c)の中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光開始剤は、高い光反応性を得られる点及び感応する光が本粘着シートの深部まで到達しやすい点で好ましい。
【0077】
光開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光開始剤と、に大別される。
【0078】
これらのうちの開裂型光開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着剤中に活性種として残存することがなく、粘着剤に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
【0079】
他方、水素引抜型光開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0080】
本発明においては、光開始剤(c)として、水素引抜型開始剤を使用することが、被着体へのダメージ低減の観点から好ましい。
また、例えば僅かな光を照射して仮硬化することで高分子量の反応生成物を生成させる場合には、仮硬化工程で光開始剤が失活することないため好ましい。
【0081】
上記開裂型光開始剤としては、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1,2−オクタンジオン,1−(4−(フェニルチオ),2−(o−ベンゾイルオキシム))、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−エタノン1−(O−アセチルオキシム)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0082】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4−メチル-ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3‘−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ビス(2−フェニル−2−オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、カンファーキノンやその誘導体などを挙げることができる。
ただし、光開始剤(c)として上記に挙げた物質に限定するものではない。上記に挙げた光開始剤(c)のうちのいずれか一種またはその誘導体を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
この中でも、光に対する感応性が高く、かつ反応後に分解物となり消色する点では、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
また、反応制御のし易さからは、光開始剤(c)として、ベンゾフェノン、4−メチル-ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3‘−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いるのが好ましい。
【0084】
光開始剤(c)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.5質量部以上あるいは5質量部以下、その中でも1質量部以上あるいは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
光開始剤(c)の含有量を上記範囲とすることで、光に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0085】
さらに、光開始剤(c)成分に加えて増感剤を使用することも可能である。増感剤としては、特に限定はなく、光開始剤に用いられる増感剤であれば問題なく使用できる。例えば芳香族アミンやアントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、クマリン誘導体、チオキサントン誘導体、フタロシアニン誘導体等や、ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10−フェナントラキノンなどの芳香族ケトン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0086】
[その他の成分]
上記本樹脂組成物は、上述した(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)、架橋剤(b)及び光開始剤(c)の他にも、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、消泡剤、無機粒子などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
【0087】
(防錆剤(d))
本樹脂組成物は、銀や銅などの金属腐食を防止するために、防錆剤(d)を含むことが好ましい。
具体的な防錆剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンズイミダゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、その他のトリアゾール誘導体等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールから選択されるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0088】
また、耐金属腐食性以外にも粘着シートとしての耐発泡信頼性に優れることから、1,2,3−トリアゾールや1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体が好ましく、特に1,2,3−トリアゾールが好ましい。その理由は、銅を含む金属材料で形成された導体パターン表面に、銅原子とトリアゾールの分子が化学的に結合した保護皮膜が形成されることで、腐食を防止することができると推察されるからである。また、銀を含む金属材料で形成された導体パターンを有する導電部材においても、トリアゾールによる保護皮膜の効果は同様に得ることができる。
【0089】
<離型フィルム付き両面粘着シートの構成>
本粘着シートは、離型フィルム付き両面粘着シートとすることもできる。
例えば離型フィルム上に単層又は多層のシート状の本粘着シート(硬化後の本粘着シート)を成形して離型フィルム付き両面粘着シートとすることもできる。
【0090】
かかる離型フィルムの材質としては、公知の離型フィルムを適宜用いることができる。例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等のフィルムに、シリコーン樹脂を塗布して離型処理したものや、離型紙などを適宜選択して用いることができる。
【0091】
本粘着シートの両側に離型フィルムを積層する場合、一方の離型フィルムは、他方の離型フィルムと同じ積層構成乃至材料のものであっても、異なる積層構成乃至材料のものであってもよい。
また、同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。
また、剥離力の異なる離型フィルムや厚さの異なる離型フィルムを本粘着シートの両側に積層することができる。
【0092】
離型フィルムの厚みは特に制限されない。中でも、例えば加工性及びハンドリング性の観点から、25μm〜500μmであるのが好ましく、その中でも38μm以上或いは250μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0093】
なお、本粘着シートは、上記の様に被着体や離型フィルムを使用せずに、例えば上記粘着剤組成物を直接に押出成形する方法や、型に注入することによって成形する方法を採用することもできる。
さらには、被着体である画像表示装置用構成部材間に上記粘着剤組成物を直接充填することによって、本粘着シートの態様とすることもできる。
【0094】
<本粘着シートの製造方法>
本樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)以外にも、必要に応じて、架橋剤(b)、光開始剤(c)及び防錆剤(d)並びにその他の成分をそれぞれ所定量混合することにより得られる。
これらの混合方法としては、特に制限されず、各成分の混合順序も特に限定されない。また、組成物製造時に熱処理工程を入れてもよく、この場合は、予め、本樹脂組成物の各成分を混合してから熱処理を行うことが望ましい。
また、各種の混合成分を濃縮してマスターバッチ化したものを使用してもよい。
【0095】
混合する際の装置も特に制限されず、例えば万能混練機、プラネタリミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ゲートミキサー、加圧ニーダー、三本ロール、二本ロールを用いることができる。必要に応じて溶剤を用いて混合してもよい。
また、本樹脂組成物は、溶剤を含まない無溶剤系として使用することできる。無溶剤系として使用することで溶剤が残存せず、耐熱性及び耐光性が高まるという利点を備えることができる。
かかる観点からも、本樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)、架橋剤(b)及び光開始剤(c)を含む形態であることが好ましい。
【0096】
本粘着シートは、上述したように調製した本樹脂組成物を、熱により溶融した状態で基材シート又は離型シート上に塗布(塗工)し、その後冷却することで製造することができる。
また、例えば積層構成の本粘着シートは、前記本樹脂組成物を、熱により溶融した状態で基材シート又は離型シート上に塗布(塗工)し、その後冷却して、第1番目の層を形成し、形成した第1番目の層上に該本樹脂組成物を塗布(塗工)し、その後冷却して、第2番目の層を形成することを繰り返す方法や、該本樹脂組成物を加熱により溶融し、前記と同様にして、第1番目と第2番目の層を形成しておき、その後、それぞれの塗布(塗工)面同士を貼り合せる方法や、該本樹脂組成物を加熱により溶融し、共押出成型により第1番目の層と第2番目の層を同時に形成する方法により作製することができる。
【0097】
上記塗布(塗工)方法としては、一般的な塗工方法であれば特に限定されることなく、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0098】
<画像表示装置構成用積層体>
本発明の画像表示装置構成用積層体(以下「本積層体」とも称する。)は、2つの画像表示装置用構成部材間を、本粘着シートを介して積層してなる構成を備えるものである。
【0099】
画像表示装置用構成部材としては、例えば画像表示パネル、表面保護パネル、タッチセンサー及び光学フィルムを挙げることができ、より具体的には、これら2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0100】
前記画像表示パネルとしては、例えば液晶、有機EL、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及び量子ドット方式のディスプレイを挙げることができ、これら以外の画像表示パネル、すなわち、画像を表示できる画像表示面を備えた装置乃至機器であってもよい。
【0101】
前記表面保護パネルとしては、例えば薄板ガラス、プラスチック等の材料で作製され、カバーフィルムと称されるような、最表層側に位置することで外部衝撃から保護する、屈曲又は湾曲可能な部材を挙げることができる。その他、タッチパネル機能が一体化したものであってもよく、例えば、タッチオンレンズ(TOL)型やワンガラスソリューション(OGS)型であってもよい。
また、前記表面保護パネルは、その周縁部に枠状に印刷された印刷段差部を有していてもよい。
【0102】
前記タッチセンサーとしては、例えば薄板ガラスやプラスチック等の基材にタッチセンサーが搭載され、センサー機能を有する、屈曲又は湾曲可能な部材を挙げることができる。
また、画像表示パネル内にタッチ機能を内蔵したインセル型や偏光板と画像表示パネルの間にタッチパネル機能を内蔵したオンセル型の画像表示パネルも、タッチセンサーに包含されるものとする。
【0103】
前記光学フィルムとしては、例えば偏光フィルム、位相差フィルム、光学フィルタ、反射防止フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルム等のフレキシブルディスプレイ内部に搭載され、光学機能を発現する屈曲又は湾曲可能な部材を挙げることができる。
【0104】
また、本積層体の構成としては、画像表示パネル/本粘着シート/タッチセンサー、画像表示パネル/本粘着シート/表面保護パネル、タッチセンサー/本粘着シート/表面保護パネル、画像表示パネル/本粘着シート/タッチセンサー/本粘着シート/表面保護パネル、光学フィルム/本粘着シート/タッチセンサー、光学フィルム/本粘着シート/タッチセンサー/本粘着シート/表面保護パネルの何れかが好ましい。
【0105】
<画像表示装置構成用積層体の製造方法>
本積層体は、本粘着シートを介して、2つの画像表示装置用構成部材を積層した後、少なくとも一方の画像表示装置構成部材側から光照射し、当該画像表示装置構成部材を介して、本粘着シートを光硬化して製造することができる。
この際、本粘着シートのゲル分率が30%以上となるように光硬化させることが好ましい。
【0106】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置(以下「本装置」とも称する。)は、本積層体を有する画像表示装置であって、例えばパソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレット等の画像表示装置を挙げることができる。
【0107】
<語句の説明など>
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートをそれぞれ包括する意味である。
【0108】
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0109】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例】
【0110】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0111】
<実施例1>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、枝成分がメチルメタクリレートからなるマクロモノマー(数平均分子量2500、Tg105℃)15質量部、幹成分がn−ブチルアクリレート81質量部/アクリル酸4質量部からなる共重合体(A−1、重量平均分子量30万)1kg、架橋剤(b)として、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート(「B−1」、分子量530g/mol)100g、光開始剤(c)として、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(c−1)15gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物1を作製した。
当該樹脂組成物1を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製ダイアホイルMRF、厚さ75μm/三菱ケミカル株式会社製ダイアホイルMRT、厚さ38μm)で挟み、厚さ150μmとなるように温度80℃でシート状に賦形した。
一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が100mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射して僅かに硬化させ、透明両面粘着シート1を作製した。
なお、透明両面粘着シート1は、仮硬化状態、言い換えれば光硬化性を備えたものであり、光照射によって硬化できる余地を残している。
【0112】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で作製した樹脂組成物1を、実施例1と同様に厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が250mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し僅かに硬化させて、透明両面粘着シート2を作製した。
なお、透明両面粘着シート2も、仮硬化状態、言い換えれば光硬化性を備えたものであり、光照射によって硬化できる余地を残している。
【0113】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で作製した樹脂組成物1を、実施例1と同様に厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、硬化させることなく、透明両面粘着シート3を作製した。
【0114】
<比較例2>
実施例1と同様の方法で作製した樹脂組成物1を、実施例1と同様に厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が600mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し、仮硬化させて、本硬化前の透明両面粘着シート4を作製した。
【0115】
<比較例3>
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)として、2−エチルヘキシルアクリレート55質量部/酢酸ビニル20質量部/アクリル酸5質量部からなる共重合体(A−2、重量平均分子量40万)1kg、架橋剤(b)として、ノナンジオールジアクリレート(b−2)50g、光開始剤(c)として、4−メチルベンゾフェノン(c−2)15gを均一に溶融混錬し、樹脂組成物2を作製した。
当該樹脂組成物2を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製ダイアホイルMRF、厚さ75μm/三菱ケミカル株式会社製ダイアホイルMRT、厚さ38μm)で挟み、厚さ150μmとなるように温度80℃でシート状に賦形した。
一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、波長365nmの積算光量が600mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し硬化させて、室温で12時間静置することで、透明両面粘着シート5を作製した。
【0116】
《物性評価》
実施例・比較例で得た透明両面粘着シート1〜5について次のように物性を評価した。
【0117】
<分子量>
4mgの透明両面粘着シート1〜5に対して、THF12mLを用いて溶解させたものを測定試料とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)分析装置(装置名:東ソー社製HLC−8320GPC)を用いて、下記の条件で分子量分布曲線を測定し、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、最大ピーク分子量(Mp)、分子量40万以上200万未満の領域のピーク又はショルダーの有無、最大ピーク分子量(Mp)のピーク強度に対する分子量40万以上200万未満の領域のピーク又はショルダー強度の比率を求めた。
・ガードカラム:TSKguardcolumnHXL
・分離カラム:
TSKgelGMHXL(4本)
・温度:40℃
・注入量:100μL
・ポリスチレン換算
・溶媒:THF
・流速:1.0mL/min
【0118】
<貯蔵弾性率G’>
透明両面粘着シート1〜5の貯蔵弾性率G’は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーRDAIIを用いて、下記の条件で測定した。
・温度:20〜150℃
・角振動数:ω=0.005〜500rad/sec
・パラレルプレート:20mmφ
・歪み量:3%
【0119】
温度20℃および80℃を基準温度として、温度−時間換算のマスターカーブを作成し、周波数f値はf(Hz)=ω/(2π)より算出し、それぞれの周波数における貯蔵弾性率G’を読み取った。
【0120】
<ゲル分率>
透明両面粘着シート1〜5の離型フィルムを両面剥離し、該透明両面粘着シート1〜5を、それぞれ約0.4g分採取し、予め質量(X)を測定したSUSメッシュ(#200)で袋状に包み、袋の口を折って閉じて、この包みの質量(Y)を測定した。その後、酢酸エチル50mL中に包みを24時間浸漬させたのち、取り出して70℃で4.5時間真空乾燥し、付着している酢酸エチルを蒸発させ、乾燥した包みの質量(Z)を測定し、求めた質量を下記式に代入して、ゲル分率(本硬化前)を求めた。
ゲル分率[%]=[(Z−X)/(Y−X)]×100
【0121】
透明両面粘着シート1〜5をさらに硬化させた後(本硬化後)のゲル分率については、該透明両面粘着シートの一方の離型フィルム側から、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射して硬化させたのち、室温で12時間静置したものを測定に使用した。
【0122】
<保持力試験>
実施例及び比較例で作製した厚さ150μmの透明両面粘着シート1〜5を40mm×50mmに裁断し、片面の離型フィルムを剥がし、裏打用のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイルS−100、厚さ38μm)をハンドローラーで背貼りした後、これを巾25mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る離型フィルムを剥がして、ステンレス板(120mm×50mm×厚さ1.2mm)に、貼着面積が25mm×20mmとなるようハンドローラーで貼着した。
その後、試験片を40℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に500gf(4.9N)の錘を鉛直方向に取り付けて掛けて静置した後、錘の落下時間(分)を測定した。
30分以内に落下しなかったものについては、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)、すなわちズレ量を測定した。
【0123】
<保管安定性>
上記透明両面粘着シート1〜5を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×50mmにカットした。片面離型フィルムを剥離したのち、粘着のみを30×30mmにカットし、改めて剥離した片面離型フィルムをロールで貼り合わせることで、両面離型フィルムが50×50mm、粘着が30×30mmの裁断加工品を作製した。
この粘着シート1〜5の裁断加工品を、50mm×50mm×厚さ1mmのガラス板間に挟むように積層し、天面のガラス板に500gの錘を乗せて40℃で200時間静置した。
養生後に粘着シートが顕著につぶれて、糊が端部から0.1mm以上はみ出したものを「×(poor)」、糊はみ出しが0.1mm以下に抑えられ、実用上問題ないものを「○(good)」と判定した。
【0124】
<段差吸収性>
上記透明両面粘着シート1〜5を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50×80mmにカットした。片側の離型フィルムを剥離し、露出した粘着面を、周縁部5mmに厚さ80μmの印刷を施したソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)の印刷面に、粘着シートの4辺が印刷段差にかかるようにして真空プレス機を用いてプレス圧着した(温度80℃、プレス圧0.04MPa)。次いで残る離型フィルムを剥がし、シクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン株式会社製、厚さ100μm)をプレス貼合した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、積層体を作製した。
作製した積層体を目視観察し、印刷段差近傍で粘着シートが追従せず気泡が残った、あるいはフィルムが段差近傍で屈曲し歪むことによる凹凸ムラが見えたものを「×(poor)」、気泡や凹凸ムラがなく平滑に貼合されたものを「○(good)」と判定した。
【0125】
<接着力>
透明両面粘着シート1〜5の一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイルT100、厚さ50μm)を貼合した。上記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面をソーダライムガラスにロール圧着した。
貼合品にオートクレーブ処理(80℃,ゲージ圧0.2MPa,20分)を施して仕上げ貼着した後、紫外線を365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるよう照射して粘着シートを硬化し、室温で12時間養生して、剥離力測定試料とした。
上記剥離力測定試料を、23℃40%RHの環境下にて、剥離角180°、剥離速度60mm/分で引き剥がしたときのガラスに対する剥離力(N/cm)を測定した。
【0126】
<耐発泡信頼性>
段差吸収性評価にて作製した段差付ガラス/粘着シート/COP積層体のうち、気泡や凹凸ムラがなく平滑に貼合できたサンプルについて、COP側から、波長365nmの積算光量が4000mJ/cmとなるように高圧水銀ランプにて光を照射し、本硬化させた。室温で12時間静置したのち、65℃、90%RHの環境で500時間保管した後の外観を目視評価した。
環境試験後に粘着シートの変形、発泡、剥離が生じたものを「×(poor)」、粘着シートの変形、発泡、剥離が生じなかったものを「○(good)」と判定した。
【0127】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示した。
【0128】
【表1】
【0129】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体が3次元網目構造を形成させない程度にわずかに硬化(仮硬化)させて高分子量の反応生成物を生成させた、実施例1及び2の透明両面粘着シートは、高い保持力を示し保管安定性に優れるものであった。
さらに、仮硬化した後も加熱による流動性も十分に維持しており、被着体の一方がフィルムのような剛性の低い素材であっても段差近傍で屈曲を生じず、平滑な積層体を得ることができた。
さらには、積層体とした後に光を照射して、粘着シートをさらに本硬化させることが可能であり、高温高湿下等の苛酷な環境試験下においても剥離や発泡、変形を生じず、高い信頼性をもつ積層体を得ることができた。
【0130】
これに対し、比較例1のように、硬化を施さない透明両面粘着シート3では、やや保持力が低く、高いレベルでの保管安定性を得ることはできず、夏場の過酷な保管環境を想定した40℃長時間の環境では、顕著に糊のはみ出しが生じる結果となった。
また、比較例2及び3のように、ゲル分率が10%以上になるまで仮硬化させた透明両面粘着シートについては、保管安定性は十分に得られるものの、仮硬化後の粘着シートの3次元網目構造によって流動性が損なわれるため、積層体を作製する際に、印刷段差が交差する角部付近で一部粘着剤が充填しきれず気泡が残ったり、印刷段差近傍でフィルムが屈曲して平滑性が損なわれたりして、段差吸収性や貼合後の信頼性に劣る結果となった。
【0131】
よって、上記実施例及びこれまで行ってきた試験結果から、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)を主成分樹脂として含む光硬化型粘着シートであって、粘着シートのゲル分率が10%以下であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)で測定した、粘着シートの重量平均分子量(Mw)は20万以上50万以下であり、その分子量分布(Mw/Mn)は4以上15以下であって、且つ、ポリスチレン換算での分子量分布曲線において、分子量5万以上40万未満の領域に最大ピークが存在し、且つ、分子量40万以上200万未満の領域に1つ以上のピーク又はショルダーが存在することを特徴とする光硬化型粘着シートであれば、段差に追随して変形し、画像表示装置用構成部材間の空隙を画像表示装置用構成部材間の空隙を充填することができ、長期間保管しても、粘着シートの形状を維持して、粘着剤がはみ出るようなことがないものとすることができると考えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の粘着シートは、段差吸収性、接着力、耐発泡信頼性等の、粘着シートに求められる各種特性を維持しながら、保管安定性を有することが可能となるため、光学用途、特に画像表示装置用途にも適用できる。
図1