(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反射防止膜は、前記高屈折率層をなすNbの酸化物を主成分とする層と、前記低屈折率層をなすSiの酸化物を主成分とする層とを4層以上10層以下交互に積層させた積層構造である、請求項1に記載の反射防止膜付透明基体。
前記透明基体の他方の主面の周縁に遮光層を有し、該遮光層の少なくとも一部に波長800nm〜950nmの内部透過率が80%以上の領域を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止膜付透明基体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本明細書における光学特性は、特に断りが無い限り反射防止膜付透明基体の、透明な領域の値であり、遮光層を有する領域の値ではない。
【0018】
本発明の一態様は、透明基体の一方の主面に反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体である。
【0019】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、反射防止膜の視感反射率が1%以下である。反射防止膜の視感反射率が上記範囲であり、画像表示装置のカバーガラスとして使用した場合に、画面への外光の映り込み防止効果が高い。
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、反射防止膜の視感反射率が0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましい。
反射防止膜の視感反射率は、後述する実施例に記載の手順で測定される。
【0020】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、波長700nm〜950nmの透過率が全て85%以上である。波長700nm〜950nmは、IRセンサに通常使用される赤外光の波長域である。この波長域の透過率が全て85%以上であると、IRセンサの感度が良好になる。
反射防止膜付透明基体の波長700nm〜950nmの透過率は、後述する実施例に記載の手順で測定される。
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、波長700nm〜950nmの透過率が全て
87%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0021】
本発明に係る反射防止膜付透明基体は、波長450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、波長750nm〜900nmの範囲で反射率の最大値を有する。
反射防止膜付透明基体の波長450nm〜950nmの反射スペクトルは、後述する実施例に記載の手順で測定される。
波長450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、視感反射率に主に影響するのは、波長450nm〜700nmの反射率である。後述する比較例1,2に示すように、従来のカバーガラスに設けられている反射防止膜は、視感反射率が低かったが、波長700nm〜950nmの領域(以下、IR領域ともいう)においては、反射率は高かった。そのため、視感反射率を下げて、視認性を向上することと、IR領域の透過率を上げることを両立できなかった。また、単に反射防止膜の視感反射率を低くする場合、波長700nm〜950nmの反射率が高くなり、波長700nm〜950nmの透過率を全て85%以上とすることができなかった。
これに対し、後述する実施例1〜3に示すように、波長450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、波長750nm〜900nmの範囲で反射率の最大値を有する光学特性とすることで、視感反射率を低くすることと、波長700〜950nmの透過率を高くできることの両立を実現した。
【0022】
このような反射防止膜を有する反射防止膜付透明基体は、視感反射率を1%以下としながら、波長700nm〜950nmの透過率を全て85%以上とすることができる。
【0023】
以下、本発明に係る反射防止膜付透明基体についてさらに記載する。
【0025】
透明基体は、透光性に優れた透明の基体である限り特に限定されない。透明基体としては、樹脂基板およびガラス基板が挙げられる。透明基体は、ガラス基板であることが強度および耐熱性の点から好ましい。
ガラス基板としては、種々の組成を有するガラスを利用可能である。たとえば、本発明で使用されるガラスはナトリウムを含んでいることが好ましく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成であることが好ましい。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
【0026】
ガラス基板の厚みは、特に制限されるものではないが、化学強化処理を行う場合はこれを効果的に行うために、通常5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
【0027】
ガラス基板は、カバーガラスの強度を高めるために強化処理されていることが好ましい。強化処理としては、化学強化処理および物理強化処理が挙げられる。ガラス基板の板厚が薄い場合、化学強化処理による強化処理を行うことが好ましい。
強化処理を施されたガラス基板は、表層に圧縮応力層を有する。強化処理が施されたガラス基板としては、強度の面で、圧縮応力値(CS)は300MPa〜1200MPaであることが好ましい。また、傷に対する耐久性を高める点で、圧縮応力深さ(DOL)は、10μm〜70μmが好ましい。
【0028】
(反射防止膜)
本発明に係る反射防止膜付透明基体における反射防止膜は、上記した光学特性を有すればよい。中でも、反射防止膜は下記構成により、光学特性を好適に実現できるため好ましい。
図2は、反射防止膜付透明基体の一構成例を模式的に示した断面図である。
図2は、反射防止膜付透明基体10において、透明基体20上に反射防止膜40が形成されている。
図2に示す反射防止膜40は、高屈折率層41a,41bと、低屈折率層42a,42bと、を交互に合計で4層積層させた積層構造である。上記の積層構造により、光の反射を抑制する。
なお、本願明細書における高屈折率層とは、例えば、波長550nmでの屈折率が1.6超の層であり、低屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の層である。
【0029】
反射防止膜40を構成する高屈折率層41a,41b、および低屈折率層42a,42bは、主として、Si、Nb、Ti、Zr、Ta、Al、Sn、およびInからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物、あるいは、SiおよびAlからなる群から選択される少なくとも1つの窒化物で構成されていることが好ましい。すなわち、波長550nmの屈折率が1.6超の層、若しくは、波長550nmの屈折率が1.6以下の層となるように、上記の群から高屈折率層41a,41b、および低屈折率層42a,42bの構成材料を適宜選択すればよい。一例を挙げると、高屈折率層としては、Nbの酸化物を主成分とする層、Tiの酸化物を主成分とする層、Taの酸化物を主成分とする層、Siの窒化物を主成分とする層が挙げられる。低屈折率層としては、Siの酸化物を主成分とする層が挙げられる。上記で例示した高屈折率層の中でも、Nbの酸化物を主成分とする層が好ましい。Nbの酸化物は、比較的屈折率を高くでき、かつ、スパッタリング成膜において、成膜レートを大きくできるので生産性に優れる。また、他の酸化物よりも安価に成膜できる。
本明細書において、「主として」とは、高屈折率層41a,41b、および低屈折率層42a,42bの構成材料に占める上記の酸化物あるいは窒化物の比率が70質量%以上であることを指す。
なお、高屈折率層41a,41b、および低屈折率層42a,42bは、上記の酸化物あるいは窒化物のうち1種のみで構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。
【0030】
図2に示す反射防止膜40は、高屈折率層41a,41bと、低屈折率層42a,42bとを交互に積層させた4層構造であるが、各層の積層数はこれに限定されない。反射防止膜40は、積層数の合計が4層以上10層以下であることが好ましい。すなわち、高屈折率層および低屈折率層をそれぞれ2層ずつ交互に積層させた積層構造から、高屈折率層および低屈折率層をそれぞれ5層ずつ交互に積層させた積層構造が好ましい。各層の積層数の合計を4層未満では、視感反射率と赤外光の波長域の透過率を両立できる反射防止膜を実現することが難しく、また、反射防止膜の色味の調整が困難である。一方で、各層の積層数の合計を10層超とすると、反射防止膜の膜厚が厚くなり過ぎて、膜応力によって膜が剥がれるおそれがある。
上記の積層構造を構成する2層以上の高屈折率層、および低屈折率層は、それぞれ同一の屈折率であってもよく、異なる屈折率であってもよい。もしくは、高屈折率層または低屈折率層の一方のみが同一の屈折率であってもよい。4層積層構造の場合、透明基体20の主面から順に、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層の4層積層構造や、透明基体20の主面から順に、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層積層構造とすることができる。これらの場合、それぞれ2層存在する低屈折率層、および、高屈折率層が同一の屈折率であってもよい。
【0031】
反射防止膜40は、乾式法または湿式法などの公知の成膜方法を用いて、透明基体20の主面に形成できる。乾式法としては、スパッタリング法、蒸着法(PVD)、および化学気相成長法などが挙げられる。
【0032】
なお、
図1および
図2に示す反射防止膜付透明基体10では、透明基体20の少なくとも一方の主面に反射防止膜40が形成されていればよいが、透明基体の両方の主面に反射防止膜が設けられていてもよい。
【0033】
本発明に係る反射防止膜付透明基体10は、上記以外の構成を有していてもよい。例えば、反射防止膜付透明基体10の表面の汚れを落としやすくするために、反射防止膜40上にさらに防汚膜を有することが好ましい。外光を散乱して視認性を向上するために、防眩層を有することが好ましい。さらに、反射防止膜付透明基体10の加飾性能を向上するために、遮光部を有することが好ましい。また、透明基体20と反射防止膜40との間には、反射防止膜付き透明基体10の光学特性を損なわない範囲で、透明基体20から反射防止膜40へのイオンの拡散を防止する拡散防止層を有してもよい。
【0034】
<防汚膜>
防汚膜は例えば、含フッ素有機ケイ素化合物の膜により構成できる。含フッ素有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性、撥油性を付与するものであれば特に限定されず使用でき、例えば、フルオロポリエーテル基、フルオロアルキレン基、およびフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する含フッ素有機ケイ素化合物が挙げられる。なお、フルオロポリエーテル基とは、フルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。また、フルオロポリエーテル基、フルオロアルキレン基、およびフルオロアルキル基との用語は、炭素に少なくとも1つのフッ素が結合されているポリエーテル基、アルキレン基およびアルキル基を意味する。
【0035】
防汚膜は、反射防止膜上に積層されることが好ましい。透明基体の両主面に反射防止膜を成膜した場合には、両方の反射防止膜に防汚膜を成膜することもできるが、何れか一方の面についてのみ防汚膜を積層する構成としてもよい。これは、防汚膜は人の手等が接触する可能性がある場所について設けられていればよいためであり、その用途等に応じて選択できる。
【0036】
市販されているフルオロポリエーテル基、フルオロアルキレン基及びフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する含フッ素有機ケイ素化合物としては、KP−801(商品名、信越化学社製)、KY178(商品名、信越化学社製)、KY−130(商品名、信越化学社製)、KY−185(商品名、信越化学社製)、オプツ−ル(登録商標)DSXおよびオプツールAES(いずれも商品名、ダイキン社製)などがあり、これらは好ましく使用できる。
【0037】
<防眩層>
透明基体の一方の主面には、防眩層を有することが好ましい。防眩層を設けることで、外光を散乱することができ、その結果、表示装置の表示性能を向上できる。
防眩層は、透明基体の上に、光散乱能を有する粒子を樹脂層で固定すること、または、透明基体の表層を化学的処理することにより、凹凸形状を設けることで形成できる。
透明基体の表層の凹凸形状は、表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.01μm以上であることが好ましい。これにより、十分な外光の散乱能を発現できる。一方で、表面粗さRaは5μm以下が好ましい。これにより、外光が過剰に散乱され、反射防止膜付透明基体が白っぽく見えることを防止できる。表面粗さRaは、0.03μm〜1μmがより好ましく、0.05μm〜0.5μmがさらに好ましい。
【0038】
透明基体の凹凸形状は、表面粗さRMS(二乗平均平方根高さ)が、0.01μm〜1μmであることが好ましい。表面粗さRMSが上記した範囲にあれば、ぎらつき防止と防眩性とを両立できる。同様の理由から、表面粗さRMSが、0.03μm〜0.7μmであることがより好ましく、0.05〜0.5μmであることがさらに好ましい。
【0039】
透明基体の凹凸形状は、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、1μm〜50μmであることが好ましい。これにより、透明基体を透過する光の鮮明性を向上でき、透明基体を反射する光の拡散性を向上できる。同様の理由から、RSmは、3μm〜30μmであることがより好ましく、5μm〜27μmであることがさらに好ましい。
【0040】
透明基体の凹凸形状の上記した表面粗さRa、表面粗さRMSおよび粗さ曲線要素の平均長さRSmはいずれも、JIS B 0601(2001)に準拠して測定した値である。
【0041】
透明基体がガラス基板の場合にガラス基板表層に凹凸を設ける化学的処理としては、具体的には、ガラス基板の主面をエッチングする方法、例えばフロスト処理を施す方法が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、被処理体であるガラス基板を浸漬し、浸漬面を化学的に表面処理することで実施可能である。また、このような化学的処理による方法以外にも、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気でガラス基板表面に吹きつけるいわゆるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせたもので磨く等の物理的処理による方法も利用できる。
【0042】
<遮光層>
透明基体の他方の主面には、遮光層を有することが好ましい。遮光層を設けることで、反射防止膜付透明基体に加飾できる。また、表示装置などの配線を表示面側から視認できないようにして、表示装置全体の意匠性を向上できる。遮光層は、透明基体の他方の主面の周縁に設け、透明基体の他方の主面の中央の領域では光が透過できることが好ましい。
遮光層は、上記した観点から、光学濃度(OD値)が高いことが好ましく、視感透過率が低いことが好ましい。具体的には、OD値は、4以上が好ましい。
【0043】
表示装置が、IRセンサを有する場合、遮光層は少なくとも一部に波長800nm以上の透過率が高い領域を有することが好ましい。
具体的には、遮光層の少なくとも一部に、波長800nm〜950nmの内部透過率が80%以上の領域を有することが好ましく、90%以上の領域を有することがより好ましく、95%以上の領域を有することがさらに好ましい。このような構成は、硬化した際の波長800nm〜950nmの透過率が高いインク(以下、IR透過インクという)、具体的には、硬化した際に波長800nm〜950nmの透過率が80%以上のインクと、視感透過率が低いインクを用いることで実現できる。なお、使用するIRセンサに応じて、遮光層の少なくとも一部は、波長950nmより長い波長における内部透過率を高くしてもよい。例えば、波長950nmより長い波長においても内部透過率は80%以上とすることが好ましい。
視感透過率が低いインクとしては、公知の着色顔料または着色染料を含むインクが挙げられる。視感透過率が低いインクは、IR透過インクに比べて、硬化した際の波長800nm〜950nmの透過率が低いものであること、具体的には、硬化した際に波長800nm〜950nmの透過率が80%未満であることが好ましい。なお、視感透過率が低いインクとしては、インクが黒色の場合、具体的には、チタンブラックやカーボンブラックなどが挙げられる。
【0044】
遮光層は、硬化すると所望の光学特性を有するインクを使用して、公知の印刷法により形成できる。例えば、スクリーン印刷法、インクジェット法、カーテンコート法などが挙げられる。
また、遮光層は、1種類のインクを1層だけ塗布して形成してもよく、1種類のインクを2層以上塗布して形成してもよく、2種以上のインクを2層以上塗布して形成してもよい。
さらに、上記したとおり、遮光層の少なくとも一部に波長800nm〜950nmの内部透過率が高い領域を設けるためには、遮光層の中に、IR透過インクを使用した層を有することが好ましい。
【0045】
さらに、遮光層は、IRセンサを設ける領域における波長800nm以上の透過率を他の領域よりも高くして、IR透過窓を有する構成としてもよい。なお、IR透過窓を有する場合は、IR透過窓以外領域のOD値は4以上が好ましい。
IR透過窓は、例えば、透明基体の他方の主面に、IR透過窓を設ける領域以外に視感透過率の低いインクで形成された層を設け、その後、IR透過窓の部分にIR透過インクで形成された層を設ける方法が挙げられる。また、IR透過窓は、透明基体の他方の主面にIR透過インクで形成された層を設け、この層の上に視感透過率の低いインクで形成された層を積層して設け、この際に、所定の領域だけ視感透過率の低いインクで形成された層を設けない領域を有する方法、または視感透過率の低いインクで形成された層の一部だけ視感透過率の低いインクの層の層厚を薄くする方法などで得られる。なお、IR透過窓は、遮光層の中に一つだけ設けてもよく、複数設けてもよい。
【0046】
なお、反射防止膜付透明基体が遮光層を有する場合、上記した波長700nm〜950nmの透過率および波長450nm〜950nmの反射スペクトルは、反射防止膜付透明基体の遮光層を有さない領域において測定した値である。
【0047】
(表示装置)
図11は、本実施形態の表示装置200を示す断面図である。表示装置200としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末などの表示装置、カーナビゲーション装置、リアシートの乗員が映像等を視聴するためのRSE(リアシートエンターテインメント)装置などの車載表示装置、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電製品の開閉扉に取り付けられる表示装置等が挙げられる。
【0048】
表示装置200は、表示パネル210、IRセンサ260および反射防止膜付透明基体270を有する。
図11においては、反射防止膜付透明基体270の透明基体220と表示パネル210とは、粘着層230を介して一体化されている。ただし、本発明の表示装置はこの形態に限定されず、粘着層を介して一体化されていなくてもよい。
本実施形態において表示装置200は、各部を収納する筐体(図示しない)を有し、筐体の中に、表示パネル210、IRセンサ260が収納される。また、本実施形態においては、表示パネル210は液晶パネルであり、筐体の中には、表示パネル210とバックライトユニット(図示しない)が収納される。
【0049】
本発明の表示装置においては、表示パネルは、液晶パネルに限定されず、有機ELパネル、PDP、電子インク型パネル等でもよい。したがって、本発明の表示装置は、表示パネルの種類に応じて、バックライトユニットを有さない場合もある。
さらに、本発明の表示装置は、図示しないタッチパネル等を有していてもよい。タッチパネルとしては、静電容量式のタッチパネルや、抵抗膜方式のタッチパネル等が挙げられる。
【0050】
本実施形態の表示装置200は、本実施形態の反射防止膜付透明基体を有するため、透明基体において、可視光の波長域の反射率が低くでき、かつ、赤外光の波長域の透過率を高くできる。その結果、本実施形態の表示装置200は、表示性能に優れかつ、IRセンサの感度が高い。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
(実施例1)
以下の方法で、透明基体の一方の主面に反射防止膜を形成して、反射防止膜付透明基体を作製した。
【0053】
透明基体には、縦50mm×横50mm×厚さ2mmの化学強化用ガラス基板(ドラゴントレイル:登録商標、旭硝子社製)を用いた。
【0054】
マグネトロンスパッタリング法を用いて、化学強化用ガラス基板の一方の主面に10層積層構造の反射防止膜(下記)を形成した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ14nm)
2層目:SiO
2層(厚さ32nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ130nm)
4層目:SiO
2層(厚さ35nm)
5層目:Nb
2O
5層(厚さ18nm)
6層目:SiO
2層(厚さ230nm)
7層目:Nb
2O
5層(厚さ25nm)
8層目:SiO
2層(厚さ33nm)
9層目:Nb
2O
5層(厚さ37nm)
10層目:SiO
2層(厚さ100nm)
【0055】
(実施例2)
積層構造の反射防止膜を下記構成の8層積層としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止膜付透明基体を作製した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ7nm)
2層目:SiO
2層(厚さ35nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ12nm)
4層目:SiO
2層(厚さ25nm)
5層目:Nb
2O
5層(厚さ34nm)
6層目:SiO
2層(厚さ23nm)
7層目:Nb
2O
5層(厚さ129nm)
8層目:SiO
2層(厚さ91nm)
【0056】
(実施例3)
積層構造の反射防止膜を下記構成の6層積層としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止膜付透明基体を作製した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ13nm)
2層目:SiO
2層(厚さ41nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ37nm)
4層目:SiO
2層(厚さ22nm)
5層目:Nb
2O
5層(厚さ131nm)
6層目:SiO
2層(厚さ93nm)
【0057】
(比較例1)
積層構造の反射防止膜を下記構成の6層積層としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止膜付透明基体を作製した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ10nm)
2層目:SiO
2層(厚さ45nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ33nm)
4層目:SiO
2層(厚さ28nm)
5層目:Nb
2O
5層(厚さ31nm)
6層目:SiO
2層(厚さ88nm)
【0058】
(比較例2)
積層構造の反射防止膜を下記構成の4層積層としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止膜付透明基体を作製した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ10nm)
2層目:SiO
2層(厚さ40nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ120nm)
4層目:SiO
2層(厚さ85nm)
【0059】
(比較例3)
積層構造の反射防止膜を下記構成の4層積層としたこと以外は実施例1と同様にして、反射防止膜付透明基体を作製した。
1層目:Nb
2O
5層(厚さ25nm)
2層目:SiO
2層(厚さ20nm)
3層目:Nb
2O
5層(厚さ125nm)
4層目:SiO
2層(厚さ90nm)
【0060】
上記のとおり作製した反射防止膜付透明基体について、以下の評価を実施した。
(反射防止膜の視感反射率および反射防止膜付透明基体の視感透過率)
分光光度計(島津製作所社製、商品名:SolidSpec−3700)により、反射スペクトルと透過スペクトルを測定した。
視感反射率は、JIS Z 8701の反射刺激値Yとして求めた。その際に、光源はD65光源、視野角が10°とした。
JIS Z 8701に基づいて透過スペクトルを得た。光源はD65光源を使用した。透過スペクトルにおいて波長700nm〜950nmの範囲での透過率の最小値T
minを表1に示す。
反射スペクトルにおいて、波長450nm〜950nmの範囲での反射率の最大値を有する波長λ
maxを表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜3の反射防止膜付透明基体は、いずれも、反射防止膜の視感反射率が1%以下であり、450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、750nm〜900nmの範囲で反射率の最大値を有する。そして、反射防止膜付透明基体は、波長700nm〜950nmの透過率が全て85%以上となる。
このような反射防止膜付透明基体を使用すれば、表示装置の視認性を高くでき、かつ、IRセンサの感度を高くできる。
一方、比較例1および2の反射防止膜付透明基体は、反射防止膜の視感反射率は1%以下であるが、450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、750nm〜900nmの範囲で反射率の最大値を有さない。そして、これらの反射防止膜付透明基体は、波長700nm〜950nmの全ての波長において透過率が85%以上とならない。
このような反射防止膜付透明基体を使用すれば、表示装置の視認性を高くできるが、IRセンサの感度が低下するおそれがある。
さらに、比較例3の反射防止膜付透明基体は、波長450nm〜950nmの反射スペクトルにおいて、800nm〜900nmの範囲で反射率の最大値を有さない。波長700nm〜950nmの透過率が全て85%以上となるが、反射防止膜の視感反射率が1%超である。
このような反射防止膜付透明基体を使用すれば、IRセンサの感度を高くできるが、表示装置の視認性が低下するおそれがある。