特許第6881179号(P6881179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881179
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20210524BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20210524BHJP
   C08J 7/044 20200101ALI20210524BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20210524BHJP
   C08F 283/02 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C08F2/50
   C08J7/044CEP
   G02B1/04
   !C08F283/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-178514(P2017-178514)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-52267(P2019-52267A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】永島 潤一
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 孝則
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−074884(JP,A)
【文献】 特開2005−272773(JP,A)
【文献】 特開2010−189534(JP,A)
【文献】 特開2010−265346(JP,A)
【文献】 特開2013−091751(JP,A)
【文献】 特開2007−216525(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172841(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08J 7/04−7/06
G02B 1/04
C08F 6/00−246/00、251/00−283/00、
283/02−289/00、291/00−297/08、
301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基と少なくとも1つ以上の芳香環構造を有し、かつ、屈折率が1.50〜1.70である1−フェノキシベンジル基を有する化合物(A)と、ラクトン環を開環重合させた構造と四級アンモニウム塩基とを有し、かつ、ラクトン環を開環重合させた構造の分子量が100〜10,000である化合物(B)と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(C)とを含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
化合物(A)が、芳香環構造に直接エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基から誘導される構造を有さない(メタ)アクリレート化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
化合物(C)が、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである、請求項1および請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に重合開始剤を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物よりなるハードコート層を有する光学フィルム。
【請求項7】
請求項5に記載の硬化物において、JIS B7751に準じた耐候性試験前後のイエローインデックスの差が1.0以下である硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのディスプレイは、太陽光や蛍光灯などの外部からの光が入射する環境下で使用されることから、反射や背景等の映り込みの防止を目的として、ディスプレイ表面等に反射防止機能が付与されている。
また、埃等の付着によるディスプレイ表面への汚染だけでなく、ディスプレイ表面の帯電による内部への影響がされているため、帯電防止性能も要求されている。
さらに近年は、大画面化や高精細化に伴いより優れた透明性のほか、実際に使用されていく上で耐黄変等の耐光性を求める声も大きくなっている。
【0003】
通常、反射防止機能は、高屈折率層と低屈折率層の交互の積層構造をコート材等で形成することにより、屈折率の違いを利用して反射光を干渉させることで付与している。
【0004】
高屈折率層を形成するコート材の例として、ITO等の金属酸化物を使用した無機系フィラーを用いたコート材が提案されている(特許文献1)。該文献において導電性の金属酸化物を使用する事により、高屈折率化だけでなく帯電防止機能を付与することも可能であるが、この技術では透明性が損なわれるといった問題があった。
【0005】
一方、特許文献2には透明性を損なわず、高屈折率化する有機系コート材が提案されている。このコート材は帯電防止性を付与することを目的に、4級アンモニウム塩ポリマーが使用され、透明性と帯電防止性を両立できることが記載されている。しかしながら、本発明者の検討では、条件によっては透明性に問題があることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−217873号公報
【特許文献2】特開2016−88943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高屈折率性と高い透明性とを有し、かつ優れた耐光性を有する硬化性樹脂組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、この硬化性樹脂組成物を用いた光学材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、透明性低下の原因を、特許文献2に記載されている4級アンモニウム塩ポリマーでは、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物及び芳香環構造を持つ(メタ)アクリレート化合物との相溶性があまり良くないと推定し、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物及び芳香環構造を持つ(メタ)アクリレート化合物との相溶性を高めるために、ラクトン環を開環重合させた構造ユニットを持つ四級アンモニウム塩ポリマーに注目した。
【0009】
上記のポリマーを使用することで、2官能以上のアクリレート及び芳香環構造を持つアクリレートとの相溶性を高めることが可能となった。このことにより、従来の課題であった透明性と帯電防止性を両立した高屈折率コート材を開発できた。
さらに、芳香環構造を持つアクリレートを限定することで、透明性と帯電防止性の他に、耐光性も十分兼ね備えた高屈折率コート材を見出すことが出来た。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、(メタ)アクリロイル基と少なくとも1つ以上の芳香環構造を有し、かつ、それ自体の硬化物の屈折率が1.50〜1.70である化合物(A)と、ラクトン環を開環重合させた構造と四級アンモニウム塩基とを有し、かつ、ラクトン環を開環重合させた構造の分子量が100〜10,000である化合物(B)と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(C)とを含む、硬化性樹脂組成物に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば前記の課題が解決される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<化合物(A)>
本発明で使用する化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基と少なくとも1つ以上の芳香環構造を有し、かつ、屈折率が1.50〜1.70である。斯かる化合物(A)としては、実質的には、特開2016−88943号公報において、成分(A)、すなわち、「少なくとも芳香環構造と(メタ)アクリロイル基とを有し、かつ屈折率が1.50〜1.70である化合物」を使用することが出来る。前記公報の段落[0024]〜[0027]には各種の芳香環構造の具体例と共に成分(A)について記載されている。
【0014】
本発明において、芳香環構造として1−フェノキシベンジル基またはビフェニル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を使用するのが好ましい。具体的には、アクリル酸(CH=CH−COOH)又はメタクリル酸(CH=C(CH)−COOH)とフェノキシベンジルアルコール又はビフェニルアルコールとのエステル化反応で得られる(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリレート化合物は市販品から選択することが出来る。例えば、以下の式(i)で表される3−フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学社製の「ライトアクリレート POB−A」)、以下の式(ii)で表されるビフェニルメタクリレート(三菱ケミカル社製)、以下の式(iii)式で表されるEO変成オルソフェニルフェノールアクリレート(第一工業製薬社の商品名「OPPE」等が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
化学式(i)で表される化合物は、3−フェノキシベンジルアルコールとアクリル酸とのエステル化反応で得られ、化学式(ii)で表される化合物は、ビフェニルアルコールとメタクリル酸とのエステル化反応で得られ、化学式(iii)で表される化合物は、EO変成オルソフェニルフェノールとアクリル酸とのエステル化反応で得られる。化学式(i)又は(ii)で表される化合物は、芳香族化合物のOH基と(メタ)アクリル酸のCOOH基とがエステル化反応直接で結合した構造を有する。これに対し、化学式(iii)で表される化合物は、EO変成により、アクリロイル基と芳香環構造との間にエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有する点で化学式(i)又は(ii)で表される化合物と異なる。
【0018】
化合物(A)の屈折率の測定は、後述の実施例に記載した硬化組成物の「屈折率の測定方法」に準じて行うことが出来る。
【0019】
本発明において、特に好ましい化合物(A)は、化学式(i)又は(ii)で表される化合物のように、芳香環構造に直接エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基から誘導される構造を有さない(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0020】
斯かる(メタ)アクリレート化合物を使用した硬化性組成物は、その硬化物のJIS B7751に準じた耐候性試験前後のイエローインデックスの差が1.0以下、つまり、着色し難い傾向がある。
【0021】
<化合物(B)>
本発明で使用する化合物(B)は、ラクトン環を開環重合させた構造と四級アンモニウム塩基とを有し、かつ、ラクトン環を開環重合させた構造の分子量が100〜10,000である。
【0022】
上記の化合物(B)は、例えば、4級アンモニウム塩基を合有する重合性基を有するモノマーと、他の重合性基を有する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー)との共重合によって得ることが出来る。このような4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)の具体例としては、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
【0023】
(i)4級アンモニウム塩基を含有した重合性基を有するモノマーと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体
(ii)4級アンモニウム塩基を合有した重合性基を有するオリゴマーと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体
(iii)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又はスチレン系モノマーとの共重合体
(iv)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又はスチレン系オリゴマーとの共重合体
(v)4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル酸エステルと、他の(メタ)アクリル酸エステル及び/又は他の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマーとの共重合体
【0024】
4級アンモニウム塩基を含有した重合性基を有するモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級塩の如きエステル結合を有する化合物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの4級塩の如きアミド結合を有する化合物などが挙げられる。
【0025】
上記の4級アンモニウム塩基含有ポリマー(B)は2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
化合物(B)としては、例えば、日本化成株式会社製の商品「ニッカタイボー」(登録商標)が好適に使用される。
【0027】
本発明の硬化組成物においては、前記の化合物(B)を使用することにより、後記の実施例に示す様に、表面抵抗が大きくて帯電防止性に優れ、しかも透明性と耐光性にも優れている硬化物を得ることが出来る。
【0028】
化合物(B)のラクトン環を開環重合させた構造の分子量が100未満の場合は、ポリマー自身のイオン性が増加することにより配合する他成分との溶解性が低下する。一方、10,000を超える場合は、ポリマー自身の分子量が大きくなることにより配合する他成分との溶解性が低下する。以上の観点から、開環重合させた構造の分子量の好ましい範囲は100〜5000である。
【0029】
<化合物(C)>
本発明で使用する化合物(C)は2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。斯かる化合物(C)としては、特開2016−88943号公報において、成分(C)、すなわち、「多官能(メタ)アクリレート化合物」として段落[0071]〜[0072]に記載された各種の化合物を使用することが出来る。化合物(C)としては、特に、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好適に使用される。
【0030】
本発明の硬化性組成物は、通常、重合開始剤を含む。重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することが出来、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0031】
また、本発明の硬化性組成物は、通常、有機溶媒を含む。機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、2,3−ジメチルヘキサン、2−メチルヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フエネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0032】
本発明の硬化性組成物における前記各成分の割合は次の通りである。すなわち、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(C)の合計量に対する割合として、化合物(A)は、通常1〜98重量%、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは10〜80重量%化合物(B)は、通常0.5〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、化合物(C)は、通常1〜98重量%、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは10〜85重量%である。重合開始剤の使用割合は、硬化性組成物100重量部に対し、通常0.01〜5重量部である。また、有機溶媒は、固形分濃度が5〜95重量%程度となる量で使用される。
【0033】
本発明の硬化性組成物の硬化は、基材上に塗布した後、活性エネルギー線を照射することによって行われる。塗布方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等が挙げられる。活性エネルギー線として、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が挙げられるが、紫外線及び電子線が好適に使用される。
【0034】
本発明の硬化性組成物より得られる硬化物は、高屈折率で、帯電防止性、透明性に優れるため、反射防止フィルム等の光学フィルムのハードコート層(高屈折率層)として有用である。なお、高屈折率層としての用途において、本発明の硬化性組成物よりなる硬化膜の膜厚には特に制限はないが、通常1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
【0035】
<用途>
本発明の硬化性組成物より得られる硬化物は、高屈折率で、帯電防止性、透明性に優れるため、反射防止フィルム等の光学フィルムのハードコート層(高屈折率層)として有用である。なお、高屈折率層としての用途において、本発明の硬化性組成物よりなる硬化膜の膜厚には特に制限はないが、通常1〜20μmであり、好ましくは1〜10μm程度である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1、参考例1及び比較例1:
各構成成分を表1に示す割合で配合した組成物を、トリアセチルセルロースフィルム(40μm)上にバーコーターにて塗布し、約80℃で1分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀ランプを使用し、積算光量400mJ/cm、ピーク強度200mW/cmの条件で硬化させ、5〜6μmの硬化膜を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
(※1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(※2):ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物のコハク酸変性物(東亜合成社「M−510」)
(※3):3−フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学社「ライトアクリレートPOB−A」(屈折率:1.57)
(※4):ビフェニルメタクリレート(三菱ケミカル社製商品)(屈折率:1.58)
(※5):EO変性オルトフェニルフェノールアクリレート(第一工業製薬社「OPPE」)
(※6):4級アンモニウム塩基含有ポリマー(日本化成社「ニッカタイボー」:ラクトン環を開環重合させた構造体の重量平均分子量:1,200)
(※7):下記の合成例で得たポリマーA(比較例の四級アンモニウム塩ポリマー)
(※8):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社「イルガキュア184」)
【0040】
(ポリマーA 合成例)
特開2016−88943号公報の[0059]に記載された「DQ100/SLMA/DMMA=60/5/35(重量比)の共重合体であるポリマーB−1」に相当する四級アンモニウム塩ポリマーを[0105]に記載された(B−1)製造例に準じた以下の方法により合成した。
【0041】
攪拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、DQ−100:18重量部、SLMA:1.5重量部、DMMA:10.5重量部、メチルエチルケトン(MEK):20重量部、イソプロピルアルコール(IPA):50重量部を仕込み、攪拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):0.09重量部を添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間反応を実施した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル:和光純薬社製「V−65」)0.09重量部を添加して、さらに65℃で3時間反応後、系内を80℃まで昇温、80℃で2時間反応後、室温まで冷却しポリマーAの溶液を得た。なお、上記の略号の意義は以下の通りである。
【0042】
DQ−100:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物(共栄社化学社製「ライトエステル(登録商標)DQ−100」)
DMMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ケミカル社製「アクリエステル(登録商標)DM」)
SLMA:ラウリルメタクリレートとトリデシルメタクリレートの45:55(重量比)の混合物(三菱レイヨン社製「アクリエステル(登録商標)SL)
【0043】
実施例1、参考例1及び比較例1で得られた硬化膜が形成されたフィルムについて、以下の項目について評価し、結果を表2に示した。
【0044】
(1)耐光性試験(フェードメーター):
スガ試験機株式会社製耐光性試験機(塗料用退色試験機 FM−1型)にて、フィルムの硬化膜側をランプ側に向けて設置し、40℃以下の条件下で100時間試験を実施した。
【0045】
(2)耐光試験:
(a)イエローインデックス:
JIS K−7373に準拠した試験を硬化膜に対し実施し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製「NDH 7000」)にて試験前後のイエローインデックスを測定した。試験前後での評価基準は以下の通りとした。
◎:0.5以下
○:0.5〜1.0
×:1.0〜5.0
××:5.0以上
【0046】
(3)透明性(ヘーズ):
JIS K−7136に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製「NDH 7000」)にて、硬化膜のヘーズを測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:0.2%以下
○:0.2〜0.5%以下
×:0.5%以上
【0047】
(4)表面抵抗の測定:
23℃、50%RHの環境下、三菱化学アナリティック社製ハイレスタUP/URSプロープを使用し、印加電圧500Vで測定した。
【0048】
(5)屈折率の測定:
表1に示す割合で配合した硬化性組成物を、東洋紡績社製PETフィルム(コスモシャインA4100)上に#14バーコーターにて塗布し、約80℃で1分間乾燥後、80W/cmの高圧水銀ランプを使用し、積算光量400mJ/cm、ピーク強度200mW/cmの条件で硬化させた。硬化膜が形成されたフィルムの硬化膜側をATAGO社製屈折率計(DR−M2 波長:589nm)で測定した。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から分かるように、実施例1及び参考例1は、ラクトン環を開環重合させた構造ユニットを有する四級アンモニウム塩ポリマー(日本化成社「ニッカタイボー」)を使用したことにより、ラクトン環を開環重合させた構造ユニットを有しない比較例1と比べ、表面抵抗が大きくて帯電防止性に優れ、しかも透明性と耐光性にも優れている。以上の結果から、本発明の硬化性組成物を使用することにより、高い透明性と帯電防止性を両立した、光学フィルムを満足する高屈折率硬化性樹脂組成物を提供することが可能となった。