【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1〜15]
(1)
ポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドの作製
全ての実施例に共通する信越化学工業社製のポリ塩化ビニル樹脂「TK−1000(平均重合度1000)」を使用し、所定の平均1次粒子径を有する炭酸カルシウム、衝撃強度改質剤、熱安定剤及び滑剤を、表1,2に示す配合材料及び配合量(質量部)で添加し、回転混合機として日本コークス工業社製10Lヘンシェルミキサー(FM10C/1型)を用いて、回転数1800rpm(但し、実施例12の回転数は2400rpm、実施例13の回転数は1200rpm)で回転混合させながら、0.1hrブレンドし、120℃でポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドを排出させた。なお、上記のヘンシェルミキサーには、上羽根としてST羽根(標準)、及び下羽根としてAO羽根(標準)をそれぞれ使用した。
【0034】
(2)
ロールシートの作製(予備溶融加工)
上記で得たポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドを6インチ2本ロールにて、ロール温度170℃及び20rpmの条件でコントロールし、5分間混練し、厚み0.7mmのロールシート化した。
【0035】
(3)
プレスシートの作製(本成形加工)
上記ロールシート(厚さ0.7mm)を所望の長さに切断し、所望の質量部となるように重ねあわせて180℃、圧力50kg/cm
2及び5分の条件でプレスし、所望の厚さのプレスシートを得た。
【0036】
[実施例16]
ポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドの作製については、実施例1と同様に実施したが、予備溶融加工、本成形加工については、下記方法により押出成形品を作製した。
【0037】
〈押出ペレットの作製(予備溶融加工)〉
作製した粉体コンパウンドを用いて50mmφ単軸押出機にて押出ペレットを作成した。L/D=25の50mmφ単軸押出機にて、スクリュー圧縮比CR:2.5、スクリーン:♯60×1枚、スクリュー回転数:40rpm、シリンダー設定温度C1:140℃、C2:150℃、C3:155℃、C4:160℃(C1が最もホッパーに近く、その後C2、C3、C4の順に通過する)、ダイス設定温度160℃で押出ペレットを作成した。
【0038】
〈押出成形品の作製(本成形加工)〉
作製した押出ペレットを用いて15mmφ異方向二軸押出機にて押出成形を行った。L/D=30の15mmφ異方向二軸押出機にて、スクリュー圧縮比CR:2.5、ダイス:4×10mm角棒、スクリュー回転数:40rpm、シリンダー設定温度C1:140℃、C2:150℃、C3:160℃、C4:170℃(C1が最もホッパーに近く、その後C2、C3の順に通過する)、ダイス設定温度180℃で押出成形を行った。
【0039】
[実施例17]
ポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドの作製については、実施例1と同様に実施したが、予備溶融加工を行わず、粉体コンパウンドを用いて実施例16と同様に本成形加工を実施した。
【0040】
[比較例1]
10Lヘンシェルミキサー(FM10C/1型)の回転数を400rpmとした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0041】
[比較例2]
炭酸カルシウムを全く配合しないこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0042】
[比較例3,4]
炭酸カルシウムを全く配合しないこと及び衝撃強度改質剤の種類を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0043】
[比較例5]
ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する炭酸カルシウムの配合量を20質量部とした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0044】
[比較例6]
衝撃強度改質剤の種類を全く配合しないこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0045】
上記の各実施例及び各比較例の成形品に対して、シャルピー衝撃強度及び耐薬品性の評価を下記の方法により行った。
【0046】
〈シャルピー衝撃強度〉
JIS K 7111に準拠して、23℃でのシャルピー衝撃試験を行い、衝撃強度を測定した。このシャルピー衝撃強度が20kJ/m
2以上の場合を「○」、20kJ/m
2未満の場合を「×」と評価した。その測定値及び評価を表1,2(実施例)及び表3(比較例)に併記した。
【0047】
〈耐薬品性〉
JIS K 6745に準拠して、各例の成形品を93質量%の硫酸に55℃14日間浸漬した際の質量変化率を求めた。各例の成形品の質量減少率が1.5mg/cm
2以下の場合を「○」、1.5mg/cm
2を超える場合を「×」と評価した。その測定値及び評価を表1,2(実施例)及び表3(比較例)に併記した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
上記表1〜3の樹脂配合の詳細は、以下のとおりである。
・ポリ塩化ビニル樹脂:「TK−1000」(信越化学工業社製、平均重合度1000)
・熱安定剤:Sn系安定剤(オクチル錫メルカプト、ブチル錫サルファイド)
・Caセッケン:カルシウムステアレート
・滑剤:パラフィンワックス、ポリエチレンワックス(酸化タイプ)
・炭酸カルシウム:下記(I)〜(III)の3種類の軽質炭酸カルシウムのうちいずれか1つを用いる。
(I)平均1次粒子径0.15μm、脂肪酸表面処理品
(II)平均1次粒子径0.10μm、脂肪酸表面処理品
(III)平均1次粒子径0.08μm、脂肪酸表面処理品
(上記の炭酸カルシウムの表面処理に用いられる脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸に代表される脂肪酸を混合したものである。)
・MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレングラフト共重合体)「B−562」(カネカ社製、D50=215μm、ブタジエン含有量70wt%)
・アクリル系ゴム:「FM−50」(カネカ社製、MMAグラフトアクリルゴム、D50=173μm)
・塩素化ポリエチレン:「エラスレン351A」〔昭和電工社製、塩素含有率35wt%、ムーニー粘度90M(121℃)〕
【0052】
表1,2の結果から、実施例1〜17では、衝撃強度改質剤と炭酸カルシウムとの添加量が所定の範囲内であることで23℃でのシャルピー衝撃強度が20kJ/m
2以上、且つ93質量%の硫酸液に14日間浸漬させた際の質量減少率が1.5mg/cm
2以下であるポリ塩化ビニル系樹脂成形品が得られることが分かる。
【0053】
また表3の結果から、比較例1〜6では、衝撃強度改質剤と炭酸カルシウムをそれぞれ単独で使用、或いは、炭酸カルシウムの添加量が多量の場合には、23℃でのシャルピー衝撃強度が20kJ/m
2以上、且つ93質量%の硫酸液に14日間浸漬させた際の質量減少率が1.5mg/cm
2以下の物性値が得られないことが分かる。