特許第6881284号(P6881284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881284
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】吸着チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210524BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210524BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20210524BHJP
【FI】
   H01L21/68 P
   H01L21/304 622H
   B24B37/30 C
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-251496(P2017-251496)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117873(P2019-117873A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】神野 清治
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−78810(JP,A)
【文献】 特開2011−253841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B24B 37/30
B24B 41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の吸着面を有する吸着チャックステージと、
前記吸着面に設けられた吸着パッドと、を備え、
前記吸着面の内周部において、前記吸着パッドが前記吸着面上に延在し、
前記吸着面の外周部において、前記吸着面と前記吸着パッドとの間に弾性部材をさらに設け、前記吸着パッドが、前記弾性部材の頂面上に延在する水平部分と、前記水平部分と前記内周部に位置する前記吸着パッドとを接続する垂直部分とからなり、
ワークが前記水平部分にのみ接するように載置可能であり、
前記吸着面の内周部と前記弾性部材の最高点との間の距離である高さhが1mm以上であることを特徴とする、吸着チャック。
【請求項2】
前記吸着チャックステージは、前記外周部に段差部が形成されてなる、請求項1に記載の吸着チャック。
【請求項3】
前記弾性部材は、ゴム部材である、請求項1又は2に記載の吸着チャック。
【請求項4】
前記ゴム部材のショアA硬度は、50〜70である、請求項3に記載の吸着チャック。
【請求項5】
前記高さhは、3mm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸着チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大口径のシリコンウェーハにおいては、両面研磨によって表裏面を研磨面とする仕様が主流となっている。このため、表面側だけでなく、裏面側に対しても、汚れやキズ欠陥などの品質への要求が高まっている。
【0003】
一方で、シリコンウェーハの面取り部における鏡面品質への要求も高まっており、面取り研磨を実施することも通常行われている。面取り研磨は、通常、吸着チャックを用いて行われる。
【0004】
図1は、従来の吸着チャックを模式的に示す断面図である。図1に示すように、従来の吸着チャック11は、円形の吸着面12aを有する吸着チャックステージ12と、吸着面12aに設けられた吸着パッド13と、を備える。そして、吸着チャック11にシリコンウェーハWを載置し、真空引きすることで、吸着チャック11の上にシリコンウェーハWを吸着保持する。
【0005】
そして、吸着チャック11に保持した状態でシリコンウェーハWを高速回転させ、研磨スラリーを供給し、面取り部に、研磨パッドを備えた研磨手段を押し当てることで面取り部を研磨している。
【0006】
このような面取り研磨では、研磨スラリーがシリコンウェーハWと吸着パッド13との間に入り込むことによって、シリコンウェーハWに欠陥を生じさせる場合がある。
【0007】
これに対し、吸着パッドの外周部の裏面側に接着剤の無い部分を設けることにより、吸着パッドと吸着チャックステージとの間に研磨スラリーを捕捉し、研磨スラリーがシリコンウェーハと吸着パッドとの間に入り込むことを抑制することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−111116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の手法では、吸着パッドの外周部が吸着されないため、シリコンウェーハWの剥がれを招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、シリコンウェーハを安定的に吸着すると共に、吸着面の欠陥を低減することのできる、吸着チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の吸着チャックは、円形の吸着面を有する吸着チャックステージと、
前記吸着面に設けられた吸着パッドと、を備え、
前記吸着面の外周部において、前記吸着面と前記吸着パッドとの間に弾性部材をさらに設け、
前記吸着面の内周部と前記弾性部材の最高点との間の距離である高さhが1mm以上であることを特徴とする。
本発明の吸着チャックによれば、吸着するシリコンウェーハの吸着面の欠陥を低減することができる。
【0012】
ここで、「吸着面の外周部」とは、吸着面の外周端から径方向内側10mmまでの領域をいうものとする。また、「吸着面の内周面」とは、上記吸着面の外周部より径方向内側の領域をいうものとする。また、「吸着面」は、一平面である場合に限られず、例えば吸着チャックステージが段差を有することにより、二以上の平面からなる場合も含まれるものとする。
【0013】
本発明の吸着チャックでは、前記吸着チャックステージは、前記外周部に段差部が形成されてなることが好ましい。
【0014】
本発明の吸着チャックでは、前記弾性部材は、ゴム部材であることが好ましい。
【0015】
上記の場合において、前記ゴム部材のショアA硬度は、50〜70であることが好ましい。
【0016】
本発明の吸着チャックでは、前記高さhは、3mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸着するシリコンウェーハの吸着面の欠陥を低減することのできる、吸着チャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の吸着チャックを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる吸着チャックを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の他の実施形態にかかる吸着チャックを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態にかかる吸着チャックを模式的に示す断面図である。図2に示すように、この吸着チャック1は、円形の吸着面2aを有する吸着チャックステージ2と、吸着面2aに設けられた吸着パッド3と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、本実施形態では、吸着チャックステージ2は、外周部に段差部2bが形成されている。段差部2bの高さは、例えば、0.2〜1.2mmとすることができる。また、段差部2bの幅は、例えば、8.0〜9.0mmとすることができる。段差部2bの形状は、特に限定されないが、上面は平面であることが好ましい。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の吸着チャック1では、吸着面2aの外周部において、吸着面2aと吸着パッド3との間に弾性部材4を設けている。本実施形態では、弾性部材はゴム部材である。弾性部材4の形状や配置については特に限定されず、例えば、図2に示す例では、弾性部材4は、段差部2bの上面全面を覆うように配置されているが、上面の一部のみを覆うように配置することもできる。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態の吸着チャック1では、吸着面2aの内周部と弾性部材4の最高点(図2において、最も図示の上側に位置する点)との間の距離である高さhが1mm以上である。
以下、本実施形態の吸着チャック1の作用効果について説明する。
【0024】
図1に従来の吸着チャックを模式的に示したように、シリコンウェーハWの裏面の外周部にシリカ等の研磨剤が堆積した場合、シリコンウェーハWの裏面の外周部と、該外周部と接触する研磨パッド13の外周部との間の接触部に研磨剤が堆積し、該接触部が点接触になることでシリカとシリコンウェーハWによる局所摩擦が進行する場合がある。特に、図1に示す従来の吸着チャックや、図2に示す本実施形態では、吸着面12a、2aの外周部に段差部12b、2bが形成されているため、段差部12b、2bに研磨剤が堆積しやすく、このような現象が生じやすい。
これに対し、本実施形態の吸着チャック1によれば、吸着面2aの外周部において、吸着面2aと吸着パッド3との間に、上記高さhが1mm以上の弾性部材4を設けているため、弾性部材4により局所摩擦の衝撃を緩和し、接触痕や傷等の欠陥の発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態の吸着チャック1では、弾性部材4としてゴム部材を用いているため、弾性部材4が弾性変形に留まることにより、該弾性部材4と接触する吸着パッド3が経時劣化等しづらく、上記の効果及びシリコンウェーハWを吸着する効果を長期間に渡って確保することができる。
【0025】
図3は、本発明の他の実施形態にかかる吸着チャックを模式的に示す断面図である。図3に示す実施形態でも、吸着チャック1は、円形の吸着面2aを有する吸着チャックステージ2と、吸着面2aに設けられた吸着パッド3と、を備えている。一方で、図3に示す実施形態では、吸着面2aは段差部を有していない。そして、吸着チャック1は、吸着面2aの外周部において、吸着面2aと吸着パッド3との間に弾性部材4を有している。吸着面2aの内周部と弾性部材4の最高点(図3において、最も図示の上側に位置する点)との間の距離である高さhは、1mm以上である。
【0026】
図3に示す実施形態の吸着チャック1によっても、吸着面2aの外周部において、吸着面2aと吸着パッド3との間に、上記高さhが1mm以上の弾性部材4を設けているため、弾性部材により局所摩擦の衝撃を緩和し、接触痕や傷等の欠陥の発生を抑制することができる。また、ゴム部材を用いているため、弾性部材4が弾性変形に留まることにより該弾性部材4と接触する吸着パッド3が経時劣化等しづらく、外周部で部材が変形しづらく、上記の効果及びシリコンウェーハWを吸着する効果を長期間に渡って確保することができる。
【0027】
本発明の吸着チャックでは、図2に示すように、吸着チャックステージ2は、外周部に段差部2bが形成されてなることが好ましい。シリコンウェーハWを吸着するのに段差部2bを形成するのが有利であり、本発明の効果を特に有効に得ることができるからである。
【0028】
本発明の吸着チャックでは、弾性部材4は、ゴム部材であることが好ましい。経年劣化等しづらく、外周部で部材が変形しづらく、上記の効果及びシリコンウェーハWを吸着する効果を長期間に渡って確保することができるからである。この場合、ゴム部材のショアA硬度は、50〜70であることが好ましい。50以上とすることにより、弾性部材が一定の形状に保たれ、シリコンウェーハWを安定して吸着することができ、一方で、70以下とすることにより、上記の局所摩擦の衝撃を緩和する効果をより確実に得ることができるからである。
【0029】
本発明の吸着チャックは、上記高さhは、1mm以上とすればよいが、1mm以上3mm以下とすることが好ましい。1mm以上とすることにより、上記の局所摩擦の衝撃を緩和する効果を得ることができ、一方で、3mm以下とすることにより、シリコンウェーハWを安定して吸着することができるからである。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明においては、弾性部材4の少なくとも一部が、吸着チャックステージ2の外周部の少なくとも一部に配置されていればよい。
例えば、図2に示す実施形態においては、弾性部材4は、吸着チャックステージ2の外周部の上面にのみ存在するように配置してもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
本発明の効果を確かめるため、発明例1、2及び比較例にかかる吸着チャックを用いて面取り研磨を行った後のシリコンウェーハの吸着面の欠陥を評価する試験を行った。面取り研磨の使用装置、使用材料、及び、研磨条件は以下の通りである。
【0032】
<使用装置、使用材料>
使用装置:BBS金明社製、Fine Surface E−300
使用ウェーハ:φ300mm シリコンウェーハ
使用資材:吸着Pad POLYPAS(フジボウ社製)
【0033】
<加工条件>
エッジ研磨時間:80(sec)
スラリー(研磨液)流量:2.7±0.5(L/min)
ウェーハ吸着圧力:90(kPa)ほぼ一定
スラリー(研磨液)pH:9.0−12.00
【0034】
発明例では、図2に示す吸着チャックを用い、比較例では、図1に示す吸着チャックを用いた。なお、発明例1においては、上記高さhは、1.2mmとし、発明例2においては、上記高さhは、2mmとした。
【0035】
評価は、以下のように行った。
<吸着面外観>
サンプル数20枚(発明例10枚、比較例10枚)の上記面取り研磨後のシリコンウェーハについて、表裏面自動外観装置(Raytex社製:RXM−1200)を用いて、吸着面の欠陥個数を評価した。評価結果を以下の表1に示している。表1において、欠陥個数は、各10枚のサンプルの平均値を示している。
<吸着面LPD>
サンプル数20枚(発明例10枚、比較例10枚)の上記面取り研磨後のシリコンウェーハについて、LPD検査装置(KLA‐Tencor社製: Surfscan SP2)を用いて、吸着面のLPD個数を評価した。評価結果を表1に示している。表1において、欠陥個数は、各10枚のサンプルの平均値を示している。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、発明例1、2は、比較例に対して、シリコンウェーハの吸着面の欠陥が低減していることがわかる。なお、吸着面外観の評価において、比較例での欠陥は、外周部に主に発生していたことからも、発明の効果が裏付けられた。
【符号の説明】
【0038】
1:吸着チャック
2:吸着チャックステージ
2a:吸着面
2b:段差部
3:吸着パッド
4:弾性部材
図1
図2
図3