(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二次シートを50mm×50mmの正方形とし、その平面上に55mm×55mm、65gの重りを10秒間乗せ、該重りを外した後、該二次シートの平面から垂直方向へのカール高さを測定し、該カール高さ(mm)を該二次シートの一辺の長さ(50mm)で除して得られるカール指数が、0.33以下である、請求項2に記載の二次シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
【0023】
(積層体)
本発明の積層体は、樹脂と粒子状炭素材料とを含み、該粒子状炭素材料の含有量が50質量%以下であり、かつ引張強度が1.5MPa以下である一次シートを2層以上積層してなることを特徴とする。本発明の積層体は、二次シートの製造に使用することができる。そして、本発明の積層体は、例えば本発明の積層体の製造方法を用いて製造することができる。
【0024】
(一次シート)
本発明の積層体を形成する一次シートは、樹脂と粒子状炭素材料とを含み、該粒子状炭素材料の含有量が50質量%以下であり、かつ引張強度が1.5MPa以下であることを特徴とする。一次シートが粒子状炭素材料を含有しない場合には、十分な熱伝導性を得ることができない。また、一次シートが樹脂を含有しない場合には、十分な柔軟性が得られない。
【0025】
[樹脂]
ここで、樹脂としては、特に限定されることなく、積層体の形成に使用され得る既知の樹脂を用いることができるが、中でも熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いれば、粒状炭素材料の分散性および一次シートの成形性を向上させることができ、また、積層した2層以上の一次シート同士を、接着剤や溶剤を使用することなく、熱圧着により接着することができる。また、一次シートおよび積層体の特性および効果を損なわないことを条件として、熱硬化性樹脂を併用することができる。
なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
【0026】
[[熱可塑性樹脂]]
一次シートに含有され得る既知の熱可塑性樹脂としては、常温固体の熱可塑性樹脂、常温液体の熱可塑性樹脂などが挙げられる。本発明では、一次シートに含有される熱可塑性樹脂として、特に限定されないが、常温液体の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。ここで、「常温」とは、23℃を指す。熱可塑性樹脂として常温液体の熱可塑性樹脂を用いると、積層体の内部応力をより低減することができ、二次シートのカールを更に抑制することができる。また、比較的低い圧力下(例えば、0.1MPa以下)でも、界面密着性を高めて界面熱抵抗を低下させることができ、二次シートの熱伝導性(すなわち、放熱特性)を向上させることができる。
【0027】
常温液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、一次シートおよび積層体の特性および効果を損なわないことを条件として、常温固体の熱可塑性樹脂を併用することもできる。常温固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
[[熱可塑性フッ素樹脂]]
本発明の一次シートに含有される熱可塑性樹脂は、熱可塑性フッ素樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性フッ素樹脂からなることがより好ましい。熱可塑性樹脂として熱可塑性フッ素樹脂を用いることにより、積層体および二次シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性を向上させることができる。また、本発明の一次シートに含有される熱可塑性樹脂は、常温液体の熱可塑性フッ素樹脂であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂として常温液体の熱可塑性フッ素樹脂を用いることにより、積層体および二次シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性を向上させることに加え、積層体の内部応力をより低減することができ、二次シートのカールを更に抑制することができる。また、比較的低い圧力下でも、界面密着性を高めて界面熱抵抗を低下させることができ、二次シートの熱伝導性(すなわち、放熱特性)を向上させることができる。
【0030】
常温液体の熱可塑性フッ素樹脂は、常温(23℃)で液体状のフッ素樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。これら常温液状の熱可塑性フッ素樹脂として、例えば、バイトン(登録商標)LM(デュポン株式会社製)、ダイエル(登録商標)G101(ダイキン工業株式会社製)、ダイニオンFC2210(スリーエム株式会社製)、SIFELシリーズ(信越化学工業株式会社製)などの市販品を使用することもできる。
【0031】
常温液体の熱可塑性フッ素樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れるという点から、105℃における粘度が、500〜30,000cpsであることが好ましく、550〜25,000cpsであることがより好ましい。
【0032】
また、一次シートおよび積層体の特性および効果を損なわないことを条件として、常温固体の熱可塑性フッ素樹脂を併用することもできる。常温固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系、テトラフルオロエチレン−プロピレン系、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物等が挙げられる。これらの中でも、加工性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好ましい。
【0033】
[[熱硬化性樹脂]]
本発明の一次シートおよび積層体の特性および効果を失わないことを条件として、樹脂として、任意に使用し得る熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
[粒子状炭素材料]
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、一次シートの面方向に配向し易く、二次シートの熱伝導性を向上させることができるからである。
【0035】
[[膨張化黒鉛]]
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0036】
[[粒子状炭素材料の性状]]
ここで、本発明の一次シートに含有されている粒子状炭素材料の平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、50μm以上であることがより更に好ましい。また、粒子状炭素材料の平均粒子径は、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることが更に好ましい。粒子状炭素材料の平均粒子径が上記範囲内であれば、二次シートの硬さおよび粘着性のバランスをより向上させて取扱い性を向上させることができるとともに、二次シートの熱抵抗をより低下させて熱伝導性を向上させることができるからである。
また、本発明の一次シートに含有されている粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
【0037】
なお、本発明において「平均粒子径」は、二次シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について最大径(長径)を測定し、測定した長径の個数平均値を算出することにより求めることができる。また、本発明において、「アスペクト比」は、二次シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0038】
[[粒子状炭素材料の含有割合]]
一次シート中の粒子状炭素材料の含有割合は、50質量%以下であり、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが更に好ましく、また、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一次シート中の粒子状炭素材料の含有割合が50質量%以下であれば、一次シートの引張強度を所定の範囲とすることと組み合わせることによって、積層体の内部応力を十分に低減することができ、積層体を積層方向に45°以下の角度でスライスして得られる二次シートのカールを十分に抑制することができる。また、一次シート中の粒子状炭素材料の含有割合が5質量%以上であれば、二次シートに十分な熱伝導率を付与することができる。
【0039】
[繊維状炭素材料]
一次シートは、任意に繊維状炭素材料を含有してもよい。任意に含有される繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、一次シートに繊維状炭素材料を含有させれば、二次シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを防止することもできる。なお、繊維状炭素材料を配合することで粒子状炭素材料の粉落ちを防止することができる理由は、明らかではないが、繊維状炭素材料が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ粒子状炭素材料の脱離を防止しているためであると推察される。
【0040】
上述した中でも、繊維状炭素材料としては、カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、二次シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
【0041】
[[カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体]]
ここで、繊維状炭素材料として好適に使用し得る、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)のみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状の炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状の炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、二次シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
【0042】
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超の炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満のCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても二次シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。したがって、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合により二次シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、二次シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができる。
なお、「繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状の炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状の炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
【0043】
そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
【0044】
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状の炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
【0045】
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても二次シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。したがって、繊維状の炭素ナノ構造体の配合により二次シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、二次シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができる。
【0046】
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。また、繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、二次シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。
【0047】
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上5000μm以下であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時にCNTに破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
【0048】
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積は、600m
2/g以上であることが好ましく、800m
2/g以上であることが更に好ましく、2500m
2/g以下であることが好ましく、1200m
2/g以下であることが更に好ましい。更に、繊維状の炭素ナノ構造体中のCNTが主として開口したものにあっては、BET比表面積が1300m
2/g以上であることが好ましい。CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が600m
2/g以上であれば、二次シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができる。また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m
2/g以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して二次シート中のCNTの分散性を高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0049】
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状の炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm
3以上0.2g/cm
3以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm
3以下であれば、繊維状の炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、二次シート中で繊維状の炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm
3以上であれば、繊維状の炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
【0050】
そして、上述した性状を有するCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
【0051】
ここで、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
【0052】
[[繊維状炭素材料の性状]]
そして、一次シートに含まれうる繊維状炭素材料の平均繊維径は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。繊維状炭素材料の平均繊維径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性、柔軟性および強度を十分に高いレベルで並立させることができるからである。ここで、繊維状炭素材料のアスペクト比は、10を超えることが好ましい。
【0053】
なお、本発明において、「平均繊維径」は、二次シートの厚み方向における断面をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の繊維状炭素材料について繊維径を測定し、測定した繊維径の個数平均値を算出することにより求めることができる。特に、繊維径が小さい場合は、同様の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することが好適である。
【0054】
[[繊維状炭素材料の含有割合]]
そして、一次シート中の繊維状炭素材料の含有割合は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。一次シート中の繊維状炭素材料の含有割合が0.05質量%以上であれば、二次シートの熱伝導性および強度を十分に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを十分に防止することができるからである。更に、一次シート中の繊維状炭素材料の含有割合が5質量%以下であれば、繊維状炭素材料の配合により二次シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、本発明の二次シートの熱伝導性および柔軟性を十分に高いレベルで並立させることができるからである。
【0055】
[添加剤]
一次シートには、必要に応じて、一次シートの形成に使用され得る既知の添加剤を配合することができる。そして、一次シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤りん系難燃剤、りん酸エステル系難燃剤などの難燃剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
【0056】
[一次シートの引張強度]
そして、本発明の積層体を形成する一次シートの引張強度は、1.5MPa以下であり、1.0MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましく、0.3MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましい。一次シートの引張強度が1.5MPa以下であると、一次シート中の粒子状炭素材料の含有割合が50質量%以下あることと組み合わせて、積層体の内部応力を十分に低減することができ、積層体を積層方向に45°以下の角度でスライスして得られる二次シートのカールを十分に抑制することができる。また、一次シートの引張強度が0.3MPa以上であると、一次シート自体および積層体の取扱いに十分な強度を付与することができる。
一次シートの引張強度は、JIS K6251に準拠して測定することができ、引張試験機(例えば、株式会社島津製作所製、商品名「AG−IS20kN」)などで測定することができる。
【0057】
[二次シートの性状]
そして、本発明の積層体を用いて製造される二次シートは、特に限定されることなく、以下の性状を有していることが好ましい。
【0058】
[[二次シートのカール]]
本発明の二次シートのカールの程度は、次のカール試験を行い、求められるカール指数によって評価することができる。積層体を積層方向に45度以下の角度でスライスして得られた二次シートを正方形(50mm×50mm)とし、その平面上に重り(55mm×55mm、65g)を10秒間乗せ、当該重りを外した後、二次シート平面から垂直方向へのカール高さを測定し、測定したカール高さ(mm)を二次シート一辺の長さ(50mm)で除して得られた数値によって、評価することができる。カールの程度を示す当該数値を、本明細書中では「カール指数」と称する。カール指数は、0より大きく、1より小さい数値として表される。カール高さは、デジタルノギス(例えば、株式会社ミツトヨ製、商品名「ABSインサイドデジマチックキャリパ」)などを用いて測定することができる。
二次シートのカール指数は、0.33以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。二次シートのカール指数が0.33以下であれば、二次シートのカールが十分抑制されているといえる。
二次シートのカールが十分抑制されていると、使用時の取扱い性に優れ、更には、当該二次シートからなる製品や当該二次シートを含む製品の性能を向上させることができる。
【0059】
[[二次シートの熱抵抗]]
二次シートは、0.05MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であることが好ましい。0.05MPa加圧下の熱抵抗の値が0.20℃/W以下であると、比較的低い圧力が加えられる使用環境下で、優れた熱伝導性を有することができる。
ここで、熱抵抗の値は、熱伝導性シートの熱抵抗を測定するのに通常用いられる既知の測定方法を用いて測定することができ、樹脂材料熱抵抗試験器(例えば、日立テクノロジーアンドサービス社製、商品名「C47108」)などで測定することができる。
【0060】
また、二次シートは、加圧力を0.50MPaから0.05MPaへ変化させたときの熱抵抗値の変化率が+150.0%以下であることが好ましい。加圧力を0.50MPaから0.05MPaへ変化させたときの熱抵抗値の変化率が+150.0%以下であると、加圧力の低下に伴う熱抵抗値の増加の幅が小さく、一定以上の硬さを有する。そのため、硬さと粘着性とのバランスを向上させ、取扱い性を向上させることができる。
尚、加圧力を0.5MPaから0.05MPaへ低下させたときの熱抵抗値の変化率は、次式で算出することができる:100×(0.05MPa加圧下での熱抵抗値−0.5MPa加圧下での熱抵抗値)/0.5MPa加圧下での熱抵抗値(%)。
【0061】
[[二次シートのタック]]
二次シートは、プローブタック試験で測定したタックが0.80N以下であることが好ましい。「タック」とは、JIS Z0109:2015で規定される通り、軽い力で短時間に被着体に接着する特性を意味し、本明細書中では「接着性」とも称する。二次シートのタックは、プローブタック試験で測定される。具体的には、25℃の温度条件で、φ10mmの平らなプローブを荷重0.5Nの圧力を加えながら測定対象の二次シートに10秒間押し付けた後、プローブを該二次シートから引き離すときに要する力として測定される。プローブタック試験で測定したタックが0.80N以下であると、使用時には良好な密着性を示しつつ、取り付け時および交換時に良好な剥離性を有し、発熱体や放熱体などの取付物から、二次シートを破壊することなく、すなわち、当該取付物に二次シート成分を残存させることなく、二次シートを取り外すことができる。
なお、二次シートのタックは、プローブタック試験機(例えば、株式会社レスカ製、商品名「TAC1000」)などで測定することができる。
【0062】
[[二次シートの硬度]]
二次シートは、25℃でのアスカーC硬度が、60以上であり、65以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。25℃でのアスカーC硬度が60以上であれば、室温で適度な硬さを有することができ、取り付け時および交換時の作業性を良好なものとすることができる。
また、二次シートは、25℃でのアスカーC硬度が、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。25℃でのアスカーC硬度が90以下であれば、室温環境下で十分な粘着性を有することができ、取り付け時および交換時の作業性をより向上させることができる。
【0063】
尚、「アスカーC硬度」は、日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し、硬度計を用いて所定の温度で測定することができる。
【0064】
[[二次シートの熱伝導率]]
二次シートは、厚み方向の熱伝導率が、25℃において、20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましく、40W/m・K以上であることが更に好ましい。熱伝導率が20W/m・K以上であれば、例えば熱伝導シートを発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用した場合に、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えることができる。
【0065】
[[二次シートの厚み]]
二次シートの厚みは、好ましくは0.05mm(50μm)以上10mm以下であり、より好ましくは0.2mm(200μm)以上5mm以下である。二次シートは、取扱い性を損なわない限りにおいて、厚みを薄くする程、二次シートのバルク熱抵抗を小さくすることができ、熱伝導性および放熱装置に使用した場合の放熱特性を向上させることができる。
【0066】
[[二次シートの密度]]
さらに、二次シートは、密度が1.8g/cm
3以下であることが好ましく、1.6g/cm
3以下であることがより好ましい。このような二次シートは、汎用性が高く、例えば電子部品などの製品に実装した際に、かかる電子部品の軽量化に寄与することができるからである。
【0067】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、樹脂と、粒子状炭素材料とを含み、該粒子状炭素材料の含有量が50質量%以下である組成物を加圧してシート状に成形し、引張強度が1.5MPa以下の一次シートを得る工程(以下、「一次シート成形工程」とも称する)と、該一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、該一次シートを折畳または捲回して、該一次シートが2層以上積層してなる積層体を得る工程(以下、「積層体形成工程」とも称する)とを含むことを特徴とする。
【0068】
[一次シート成形工程]
一次シート成形工程では、樹脂および粒子状炭素材料を含み、任意に繊維状炭素材料および/または添加剤を更に含有する組成物を加圧してシート状に成形し、一次シートを得る。
【0069】
[[組成物]]
ここで、組成物は、樹脂および粒子状炭素材料と、任意の繊維状炭素材料および/または添加剤とを混合して調製することができる。そして、樹脂、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料および添加剤としては、本発明の積層体を形成する一次シートに含まれ得る樹脂、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料および添加剤として上述したものを用いることができる。因みに、二次シートの樹脂を架橋型の樹脂とする場合には、架橋型の樹脂を含む組成物を用いて一次シートを形成してもよいし、架橋可能な樹脂と硬化剤とを含有する組成物を用いて一次シートを形成し、一次シート成形工程後に架橋可能な樹脂を架橋させることにより、二次シートに架橋型の樹脂を含有させてもよい。
【0070】
なお、混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解または分散させて樹脂溶液として、他の炭素材料および任意の添加剤と混合してもよい。混合時間は、例えば5分以上6時間以下とすることができる。また、混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
【0071】
なお、上述した成分のうち、特に繊維状炭素材料は、凝集し易く、分散性が低いため、そのままの状態で樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すると、組成物中で良好に分散し難い。一方、繊維状炭素材料は、溶媒(分散媒)に分散させた分散液の状態で樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分と混合すれば凝集の発生を抑制することはできるものの、分散液の状態で混合した場合には混合後に固形分を凝固させて組成物を得る際などに多量の溶媒を使用するため、組成物の調製に使用する溶媒の量が多くなる虞が生じる。そのため、一次シートの形成に用いる組成物に繊維状炭素材料を配合する場合には、繊維状炭素材料は、溶媒(分散媒)に繊維状炭素材料を分散させて得た分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素材料の集合体(易分散性集合体)の状態で他の成分と混合することが好ましい。繊維状炭素材料の分散液から溶媒を除去して得た繊維状炭素材料の集合体は、一度溶媒に分散させた繊維状炭素材料で構成されており、溶媒に分散させる前の繊維状炭素材料の集合体よりも分散性に優れているので、分散性の高い易分散性集合体となる。従って、易分散性集合体と、樹脂や膨張化黒鉛などの他の成分とを混合すれば、多量の溶媒を使用することなく効率的に、組成物中で繊維状炭素材料を良好に分散させることができる。
【0072】
ここで、繊維状炭素材料の分散液は、例えば、溶媒に対して繊維状炭素材料を添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供して得ることができる。なお、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波ホモジナイザーによる分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌装置による分散処理が挙げられる。また、解砕効果が得られる分散処理は、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素材料の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素材料を溶媒中に均一に分散させる分散方法である。そして、解砕効果が得られる分散処理は、市販の分散システム(例えば、商品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)など)を用いて行うことができる。
【0073】
また、分散液からの溶媒の除去は、乾燥やろ過などの既知の溶媒除去方法を用いて行うことができるが、迅速かつ効率的に溶媒を除去する観点からは、減圧ろ過などのろ過を用いて行うことが好ましい。
【0074】
[[組成物の成形]]
そして、上述のようにして調製した組成物は、任意に脱泡および解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0075】
ここで、組成物は、圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を用いてシート状に成形することができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に形成することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
【0076】
[[一次シート]]
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなる一次シートでは、粒子状炭素材料が主として面内方向に配列し、特に一次シートの面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。
なお、一次シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。また、二次シートの熱伝導性を更に向上させる観点からは、一次シートの厚みは、粒子状炭素材料の平均粒子径の20倍超5000倍以下であることが好ましい。
【0077】
[積層体形成工程]
積層体形成工程では、一次シート成形工程で得られた一次シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、一次シートを折畳または捲回して、一次シートが2層以上積層してなる積層体を得る。ここで、一次シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いて一次シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、一次シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、一次シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに一次シートを捲き回すことにより行うことができる。
【0078】
ここで、通常、積層体形成工程で得られる積層体において、一次シートの表面同士の接着力は、一次シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、一次シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体形成工程を行ってもよいし、一次シートの表面に接着剤を塗布した状態または一次シートの表面に接着層を設けた状態で積層体形成工程を行ってもよい。
【0079】
なお、一次シートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、一次シート中に含まれている樹脂成分を溶解可能な既知の溶剤を用いることができる。
【0080】
また、一次シートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。中でも、接着剤としては、一次シート中に含まれている樹脂成分と同じ組成の樹脂を用いることが好ましい。そして、一次の表面に塗布する接着剤の厚さは、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。
更に、一次シートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。
【0081】
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.05MPa以上1.0MPa以下の圧力で押し付けながら、20℃以上200℃以下で1〜30分プレスすることが好ましい。
【0082】
なお、組成物に繊維状炭素材料を加えた場合、あるいは粒子状炭素材料として膨張化黒鉛を使用した場合には、一次シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体にて、膨張化黒鉛や繊維状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
【0083】
<二次シートの製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、上述のようにして得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次シートを得る工程(以下、「スライス工程」とも称する)を含むことを特徴とする。
【0084】
[スライス工程]
スライス工程では、積層体形成工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる二次シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、二次シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを備えたスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
【0085】
ここで、前記刃部として用いることができる刃の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
刃部を備える1枚の刃は、刃先の表裏両側が切刃となっている「両刃」であってもよく、刃の表側のみが切刃となっている「片刃」であってもよい。刃先1の断面図である
図1〜4を参照すると、両刃は左右両側が切刃2,3となっており(
図1〜3)、片刃は左右のうち表側に相当する片側のみが切刃2となっている(
図4)。
【0086】
また、刃先1の断面形状は、特に限定されず、刃先1の最先端を通る中心軸4に対して、非対称でも対称でもよい。ここで、刃先の形状が中心軸に対して対称な刃を「対称刃」(
図2)、刃先の形状が中心軸に対して非対称な刃を「非対称刃」(
図3)と称する。刃先の断面図において、中心軸に対し左右両側の切刃がそれぞれ構成する角度を、それぞれ、「中心角」と称し、それら中心角の和が、刃先の角度(以下、「刃角」とも称する)である。例えば、両刃の刃先の断面図である
図1〜3において、中心軸4に対して左側の切刃2が構成する角度が中心角aであり、中心軸4に対して右側3の切刃が構成する角度が中心角bである。刃角は60度以下であることが好ましい。中心角a,bの角度は、特に限定されないが、好ましくは、刃角が60度以下となるように、それぞれ選択することができる。例えば、
図2のような両刃の対称刃で、両側の中心角a,bがそれぞれ20度の場合、刃角はaとbとの和である40度となる。
図3のような両刃の非対称刃の場合、中心角a,bは、それぞれ0度より大きく互いに異なる角度を有し、好ましくは、aとbの和(刃角)が60度以下となるように選択することができる。また、
図4のように、非対称刃で片側の中心角aが0度より大きく、他方の中心角bが0度である場合は、1つの切刃2と1つの峰6とを有する片刃となる。
【0087】
尚、中心軸4は、次のように設定される。刃全体7を横から見た
図5(a)において、刃先の最先端から刃の根元までを「刃高」10とし、刃の表側8から裏側9までを「刃厚」11とする。
図5(b)は、
図5(a)に示す刃全体7を、刃の表側8から見た図である。刃全体を横から見た
図6および7において、刃高10に対して垂直な面で刃を切断した断面において、刃高10から刃厚11の方向に垂線13を引き、垂線13の長さが最長となる垂線を「基準線」14とする(
図6(a),7(a))。この基準線14から刃の先端方向に垂線15を引き、垂線15の長さが最長となる垂線およびその延長線を「中心軸」4とする(
図6(b),7(b))。上述するように、中心軸4は、刃先の最先端を通る。
【0088】
また、刃は、
図1〜7に示すような、1つの切刃2または3が刃の中心軸4に対して1つの面を有する1段刃であってもよく、
図8に示すような、1つの切刃2または3が刃の中心軸4に対して傾斜角度の異なる2つの面を有する2段刃でも構わない。2段刃の場合、刃先の最先端(2段目)を構成する中心角a,bの和が刃角5である。ここで、2段刃の刃角を便宜的に「刃角α」と称する。また、刃の中心軸4に対して、刃先の根元側(1段目)の傾斜角度の面を刃先の最先端方向に延長させた二点鎖線で構成される中心角をc,dとし、c、dの和である刃角16を便宜的に「刃角β」と称する。2段刃において、刃角αと刃角βの角度は、互いに異なり、好ましくは0度より大きく60度以下である(0度<刃角α,刃角β≦60度)。特に限定されないが、刃角αが刃角βより大きい(刃角α>刃角β)ことが好ましい。これによりカールを抑制する効果があるからである。一方、刃角αが刃角βより小さい(刃角α<刃角β)の場合、先端が鋭利になる反面、局所的に力がかかるため刃が折れやすくなるという欠点がある。従って、刃角αおよび刃角βは、0度<刃角β<刃角α≦60度であることが好ましい。
【0089】
当該刃部を構成する刃の枚数は、特に限定されず、例えば、1枚の刃からなる1枚刃で構成されていてもよく、2枚の刃からなる2枚刃で構成されていてもよい。
図9(a),9(b)に例示するように、2枚刃は、1枚の表刃17と1枚の裏刃18とで構成され、表刃17と裏刃18とは刀身同士が接触して配置される。切削の際に、切削対象物に近い側に位置する刃が表刃17であり、切削対象物から遠い方の刃が裏刃18である。表刃と裏刃は、当該2枚刃が刃として機能を果たす(すなわち、切削機能を有する)限りにおいて、スリット部から突出した刃先の最先端同士の高さが、同じでも異なってもよい(すなわち、揃っていても、上下にずれていてもよい)。
【0090】
また、2枚の刃は、それぞれ、片刃であっても両刃であってもよい。例えば、表刃と裏刃の双方が片刃であってもよく(
図9(a))、表刃と裏刃の双方が両刃であってもよく、表刃と裏刃のいずれか一方が片刃であり他方が両刃であってもよい(
図9(b))。表刃と裏刃の一方または両方が片刃である場合、当該2枚刃が刃として機能を果たす(すなわち、切削機能を有する)限りにおいて、他方の刃の刀身と接触する側は、切刃(表)側と峰(裏)側のどちらにも限定されない。
例えば、
図9(a)は、表刃17と裏刃18双方が片刃であり、互いに峰側同士で接触し、裏刃の刃先の最先端が表刃の刃先の最先端より低く(すなわち、下に)ずれて配置された2枚刃の一実施形態である。また、
図9(b)は、表刃17が片刃で裏刃18が両刃であり、表刃が峰側で裏刃と接触し、裏刃の刃先の最先端が表刃の刃先の最先端より低く(すなわち、下に)ずれて配置された2枚刃の一実施形態である。
また、2枚の刃のうちの一方または両方の刃が両刃の場合、当該両刃は、対称刃であっても非対称刃であってもよい。
また、2枚の刃は、それぞれ、1段刃であっても2段刃であってもよい。
【0091】
また、刃の材質は特に特定されず、金属、セラミック、プラスチックいずれでもよいが、特に衝撃に耐える観点から超硬合金が望ましい。すべり性向上、切削性向上目的で、刃の表面にシリコーン、フッ素等をコーティングしてもよい。
【0092】
なお、二次シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
【0093】
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上40℃以下とすることが好ましく、10℃以上30℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。このようにして得られた二次シート内では、粒子状炭素材料や繊維状炭素材料が厚み方向に配列していると推察される。従って、上述の工程を経て調製された二次シートは、厚み方向の熱伝導性だけでなく、導電性も高い。
【0094】
また、上述のように調製した二次シートを厚み方向に複数枚重ね合わせて、所定の時間静置することによって一体化させたものを、二次シートとして使用してもよい。このようにして得られた二次シート内では、粒子状炭素材料や繊維状炭素材料が厚み方向に配列したままであると推察される。従って、上述のように調製した二次シートを厚み方向に複数枚重ね合わせて一体化させることにより、厚み方向の熱伝導性や導電性を損なうことなく、使用目的に応じて所望の厚さの二次シートを得ることができる。
【0095】
(二次シートの用途)
本発明の積層体を用いて製造された二次シートは、熱伝導性、強度、導電性に優れ、カール(反り)が小さいため、複合材料シートや熱伝導シートなどとして好適に使用することができる。当該二次シートを使用した複合材料シートおよび熱伝導シートは、例えば、各種機器および装置などにおいて使用される放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁波シールド部材、電磁波吸収部材、被圧着物を加熱圧着する場合に被圧着物と加熱圧着装置との間に介在させる熱圧着用ゴムシートとして好適である。
ここで、各種機器および装置などとしては、特に限定されることなく、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器;ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器;液晶ディスプレイ(バックライトを含む)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器;インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置;半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品;リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(配線板にはプリント配線板なども含まれる);真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置;断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置;DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器;カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置;充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等が挙げられる。
【0096】
(放熱装置)
本発明の積層体を用いて製造された二次シートを熱伝導シートとして用いる場合は、発熱体と、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体との間に介在させて共に放熱装置を構成することができる。放熱装置の使用温度は、250℃を超えないことが好ましく、−20〜200℃の範囲であるのがより好ましい。使用温度が250℃を超えると、樹脂成分の柔軟性が急激に低下し、放熱特性が低下する場合があるからである。当該使用温度の発熱体としては、例えば、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、電灯等が挙げられる。
【0097】
一方、放熱体としては、例えば、アルミ、銅のフィン・板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミや銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミや銅のブロック、ペルチェ素子およびこれを備えたアルミや銅のブロック等が挙げられる。
【0098】
放熱装置は、発熱体と放熱体との間に、二次シートを介在させて、その各々の面を接触させることで得ることができる。発熱体と放熱体との間に二次シートを介在させ、それらを充分に密着させた状態で固定できる方法であれば、接触させる方法に特に制限はないが、密着を持続させる観点から、ばねを介してねじ止めする方法、クリップで挟む方法等のように押し付ける力が持続する接触方法が好ましい。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、一次シートとしてのプレ熱伝導シートと、積層体と、二次シートとしての熱伝導シートとを作製し、プレ熱伝導シート(一次シート)の引張強度を測定し、熱伝導シート(二次シート)のカールの程度を評価した。測定および評価は、それぞれ以下の方法を使用した。
【0100】
(評価方法)
<引張強度>
プレ熱伝導シートを、JIS K6251に準拠してダンベル2号にて打ち抜き成型し、試料片を作製した。引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG−IS20kN」)を用い、試料片の両末端から1cmの箇所をつまみ、温度23℃で、試料片の表面から出る法線に対して垂直な方向に、500mm/分の引張速度で引っ張り、破断強度(引張強度)を測定した。
【0101】
<カール評価>
スライスして得られた50mm×50mmの熱伝導シートに対して重り(55mm×55mm、65g)を10秒間乗せた。重りを除去した後、デジタルノギス(株式会社ミツトヨ製、商品名「ABSインサイドデジマチックキャリパ」)にてカール高さを測定し、得られた値(mm)を熱伝導シート一辺の長さである50mmで除した値を評価した。尚、重りを除去した後に1周以上カールしている熱伝導シートは「評価不能」と表記する。
【0102】
<膜厚>
膜厚計(株式会社ミツトヨ製、商品名「デジマチックシックネス」)を用いて、10点測定した時の平均値を記載した。
【0103】
(CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体Aの調製)
国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体Aを得た。
得られた繊維状の炭素ナノ構造体Aは、G/D比が3.0、BET比表面積が800m
2/g、質量密度が0.03g/cm
3であった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状の炭素ナノ構造体Aの直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)が1.9nm、それらの比(3σ/Av)が0.58、平均長さが100μmであった。また、得られた繊維状の炭素ナノ構造体Aは、主に単層CNT(「SGCNT」とも称する)により構成されていた。
【0104】
(繊維状の炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体の調製)
<分散液の調製>
繊維状炭素材料としての繊維状の炭素ナノ構造体Aを400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。湿式ジェットミル(株式会社常光製、商品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体Aをメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液Aを得た。
<溶媒の除去>
その後、得られた分散液Aをキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、シート状の易分散性集合体を得た。
【0105】
(実施例1)
<組成物の調製>
繊維状炭素材料としての炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体を0.1質量部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−100」、平均粒子径:190μm)を50質量部と、樹脂としての常温液体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)100質量部とをホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」、容量:5L)で80℃に加温し、30分間混合した。混合した組成物をワンダークラッシュミル(大阪ケミカル株式会社製、商品名「D3V−10」)にて1分間解砕した。
【0106】
<プレ熱伝導シートの作製>
次いで、解砕した組成物5gを、サンドブラスト処理を施した厚さ50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形し、厚さ500μmのプレ熱伝導シートを得た。得られたプレ熱伝導シートの引張強度を上記評価方法に従って測定した。結果を表1に示す。
<積層体の作製>
得られたプレ熱伝導シートを6cm×6cm×500μmに裁断し、厚み方向に120枚積層し、120℃で3分間、0.1MPaでプレスして熱圧着させ、厚さ約6cmの積層体を得た。
【0107】
<熱伝導シートの作製>
その後、プレ熱伝導シートの積層体の6cm×6cmの積層断面を、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いてスライスし、厚みが250μmと500μmのスライスシート(二次シート)を得た。二次シートの厚みは、木工用スライサーのナイフの突出量を調整することによって制御した。ナイフは、2枚の片刃が、切刃の反対側(峰)同士で接触し、表刃の刃先の最先端が裏刃の刃先の最先端よりも0.5mm高く配置された、2枚刃のものを用いた。スライスは、積層体温度10℃、加工速度54m/分、表刃の刃角21°、逃げ角3°の条件で、ナイフを固定し、樹脂成形体に垂直方向から0.3MPaの圧縮力をかけて水平方向に移動させることによって行った。
得られた熱伝導シートについて、上記評価方法に従って、カールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例2)
木工用スライサーのナイフを片刃の1枚刃(刃角21°)に変更した以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例3)
プレ熱伝導シートの圧着方法を熱圧着ではなく1枚ずつ両面テープ(日栄化工株式会社製、商品名「NeoFix−10」)で貼り合わせた以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
(実施例4)
樹脂として、常温液体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)90質量部と、常温固体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―704BP」)10質量部をメチルエチルケトン(MEK)で固形分30%に希釈したものとを用い、プレ熱伝導シート成形前にMEKを真空脱泡によって除去した以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例5)
粒子状炭素材料の量を70質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0112】
(実施例6)
樹脂として、常温液体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)70質量部と、常温固体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―704BP」)30質量部をメチルエチルケトン(MEK)で固形分30%に希釈したものとを用い、粒子径炭素材料の量を70質量部に変更し、プレ熱伝導シート成形前にMEKを真空脱泡によって除去した以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例7)
熱伝導シートの作製工程において、かんな装置の代わりに、押し切り装置(株式会社ファインテック製)を用いて片刃の1枚刃(先端角=30°)を3mm/sの速さで垂直に降ろすことで積層体をスライスした以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0114】
(比較例1)
<組成物の調製>
繊維状炭素材料としての炭素ナノ構造体Aの易分散性集合体を0.1質量部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を85質量部と、樹脂として常温固体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―704BP」)40質量部と、樹脂として常温液体の熱可塑性フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)45質量部と、可塑剤としてのセバシン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「DOS」)5質量部とを、溶媒としての酢酸エチル100質量部の存在下においてホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」)を用いて5分攪拌混合した。そして、得られた混合物を30分真空脱泡し、脱泡と同時に酢酸エチルの除去を行って組成物を得た。そして、得られた組成物を解砕機に投入し、10秒間解砕した。
【0115】
<プレ熱伝導シート・積層体・熱伝導シートの作製>
以降の手順は、熱伝導シートの作製工程において木工用スライサーのナイフを片刃の1枚刃のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0116】
(比較例2)
木工用スライサーのナイフを片刃の2枚刃のものに変更した以外は比較例1と同様にしてプレ熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造し、プレ熱伝導シートの引張強度を測定し、熱伝導シートのカールの程度を評価した。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
表1より、樹脂と粒子状炭素材料とを含み、粒子状炭素材料の含有量が50質量%以下であり、かつ引張強度が1.5MPa以下の一次シート(プレ熱伝導シート)で形成された実施例1〜7の積層体は、得られた二次シート(熱伝導シート)のカールが、スライス方法や厚みに関わらず、十分抑制されていることが分かる。一方、樹脂と粒子状炭素材料とを含み、粒子状炭素材料の含有量が50質量%であるが、引張強度が1.5MPa超である一次シート(プレ熱伝導シート)で形成された比較例1および2の積層体は、得られた二次シート(熱伝導シート)のカールが、スライス方法や厚みに関わらず抑制されておらず、重りを除去した後も1周以上カールしていることが分かる。