特許第6881452号(P6881452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6881452コーティング用組成物の製造方法およびフォトレジスト積層体の製造方法
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  • 特許6881452-コーティング用組成物の製造方法およびフォトレジスト積層体の製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6881452
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】コーティング用組成物の製造方法およびフォトレジスト積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/10 20060101AFI20210524BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20210524BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C09D129/10
   C09D7/20
   G03F7/11 501
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-527503(P2018-527503)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023643
(87)【国際公開番号】WO2018012283
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-138762(P2016-138762)
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 龍二郎
(72)【発明者】
【氏名】坂根 好彦
【審査官】 河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−145658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0311868(US,A1)
【文献】 特開2007−025634(JP,A)
【文献】 特開2012−088574(JP,A)
【文献】 特開2011−215546(JP,A)
【文献】 特開2010−39260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
G03C 3/00
G03F 7/004−7/04
7/06
7/075−7/115
7/16−7/18
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される単位を有する含フッ素重合体と溶媒とを含有し、水を含有しない被処理溶液を、フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材で濾過してコーティング用組成物を得ることを特徴とするコーティング用組成物の製造方法。
−[CX−CY(Rf−COOM)]− ・・・(1)
(式中、X およびX は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子を示し、Y は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Rf は炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでもよい直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキレン基、または炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでもよい直線状もしくは分岐状のオキシペルフルオロアルキレン基を示し、Rf の炭素数は前記エーテル性酸素原子を有しない場合は1〜10であり、前記エーテル性酸素原子を有する場合は2〜10であり、−COOM は−COOHまたはCOOZ 1(Z 1は置換されていてもよいアンモニウムイオン)を示す。)
【請求項2】
、X およびY が、すべてフッ素原子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)で表される単位の含有量が、含フッ素重合体を構成する全単位に対して50〜100モル%である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記含フッ素重合体の数平均分子量が1,000〜30,000である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記被処理溶液中の前記含フッ素重合体の含有量が1〜25質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング用組成物に含まれる溶媒が親水性有機溶媒からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記親水性有機溶媒がアルコール類を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記親水性有機溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、及び含フッ素アルコールからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記親水性有機溶媒が含フッ素アルコールを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記濾材が、ポリビニリデンフルオライド、ポリアミド、ポリプロピレンまたはガラス繊維である、請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記濾材の孔径が、0.2〜5.0μmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法で得られたコーティング用組成物を、フォトレジスト層の表面上に設けられた反射防止膜の形成に使用する、コーティング用組成物の使用方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法で得られたコーティング用組成物から該組成物を含むコーティング液を得て、次いで前記コーティング液をフォトレジスト層の表面上に塗布して、フォトレジスト層の表面上に反射防止膜が設けられたフォトレジスト積層体を製造することを特徴とするフォトレジスト積層体の製造方法。
【請求項14】
前記コーティング液中の前記含フッ素重合体を含む重合体の含有量が1〜10質量%であり、前記重合体の含有量中の前記含フッ素重合体の含有量が50〜100質量%である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記コーティング液をスピンコート法により塗布する、請求項13または14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング用組成物の製造方法に関し、特にフォトレジスト層上に反射防止膜を形成するために有用なコーティング用組成物の製造方法に関する。また表面に反射防止膜を有するフォトレジスト積層体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の製造工程においてはフォトリソグラフィ技術が用いられ、たとえば半導体回路の製造工程には、フォトレジストのパターン(レジストパターン)を形成する工程が含まれる。
基板上に形成されたレジスト層に露光光を照射すると、レジスト層に入射する光の他に、基板表面からの反射光、該反射光がさらにレジスト層の表面で反射した光等が発生し、これらの反射光が干渉して定在波が発生する。このような定在波は、レジストパターンの寸法変動や形状の崩れ等の原因となる。
また段差が存在する面上に微細なレジストパターンを形成することもある。このような場合には、特に定在波による寸法変動や形状の崩れが大きくなる(定在波効果)。
【0003】
これまで、定在波効果を抑制する方法として、レジスト材料に吸光剤を入れる方法、レジスト層上面に反射防止膜を設ける方法(TARC法)、レジスト層下面に反射防止膜を設ける方法(BARC法)等が提案された。
TARC法またはBARC法は、レジスト層に隣接して該レジスト層よりも屈折率が低い反射防止膜層を設ける方法であり、反射防止膜の屈折率が低いほど高い反射防止効果が得られる。
【0004】
特許文献1には、TARC法に使用するコーティング用組成物として、CF=CFOCFCFCFCOOCHを重合させて、直鎖状のオキシペルフルオロアルキレン基を側鎖として有する前駆重合体を得た後、該前駆重合体の側鎖末端のメチルエステル基を−COOHに変換して重合体を得、該重合体を水とメタノールの混合溶媒に溶解させた組成物が記載されている。
【0005】
一般的にTARC法において優れた反射防止効果を得るための、反射防止膜の理想的な屈折率はフォトレジスト層の屈折率nの平方根(√n)であり、理想的な膜厚はλ/4m(λは放射線の波長、mは反射防止膜の屈折率)の奇数倍であるとされていることが知られている(たとえば、特許文献2の段落[0004])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3965740号公報
【特許文献2】特許第4910829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、半導体回路の微細化が求められている。これに対応するために、レジストパターンを形成する際に使用する露光光源の短波長化が進行している。
たとえば64MビットDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産プロセスにおいては、露光光源としてKrFエキシマレーザ(248nm)が使用されたが、256Mビットや1Gビット以上のDRAMの製造には、より短波長なArFエキシマレーザ(193nm)またはFレーザ(157nm)が使用される。
【0008】
このように半導体回路がより微細化されると、従来の太い線幅では無視できた程の僅かな欠陥でも大きな影響を受ける。よって、それら僅かな欠陥も抑制するほどの高い反射防止効果がTARCには求められており、反射防止膜の膜厚をより微細に調整する技術がますます重要となっている。
反射防止膜の膜厚を調整する方法として、たとえば膜厚を薄くするには、コーティング液中の膜構成物質の濃度を低くする方法が有効かつ簡便である。一方、膜厚を厚くするには、膜構成物質の濃度を高くする方法が最も簡便ではあるが、コーティング液の粘度が高くなるため装置に対する負荷が増しその結果工程数が増え、コストの大幅な上昇を招いてしまう。そこで増粘剤を添加して粘度を高くする方法が考えられるが、増粘剤を添加すると反射防止膜の屈折率が高くなる問題がある。
本発明は、膜構成物質濃度を高くせずに、かつ増粘剤等の添加剤を使用すること無く、膜厚を厚くできるコーティング用組成物の製造方法、およびこれを用いたフォトレジスト積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の[1]〜[1]の構成を有するコーティング用組成物の製造方法および使用方法ならびにフォトレジスト積層体の製造方法を提供する。
[1] 下式(1)で表される単位を有する含フッ素重合体と溶媒とを含有し、水を含有しない被処理溶液を、フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材で濾過してコーティング用組成物を得ることを特徴とするコーティング用組成物の製造方法。
−[CX−CY(Rf−COOM)]− ・・・(1)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子を示し、Yは水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、Rfは炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでもよい直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキレン基、または炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでもよい直線状もしくは分岐状のオキシペルフルオロアルキレン基を示し、Rfの炭素数は前記エーテル性酸素原子を有しない場合は1〜10であり、前記エーテル性酸素原子を有する場合は2〜10であり、−COOMは−COOHまたはCOOZ(Zは置換されていてもよいアンモニウムイオン)を示す。)
【0010】
[2] X、XおよびYが、すべてフッ素原子である、[1]の製造方法。
[3] 前記式(1)で表される単位の含有量が、含フッ素重合体を構成する全単位に対して50〜100モル%である、[1]または[2]の製造方法。
[4] 前記含フッ素重合体の数平均分子量が1,000〜30,000である、[1]〜[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記被処理溶液中の前記含フッ素重合体の含有量が1〜25質量%である、[1]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記コーティング用組成物に含まれる溶媒が親水性有機溶媒からなる、[1]〜[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記親水性有機溶媒がアルコール類を含む、[6]の製造方法。
[8] 前記親水性有機溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、及び含フッ素アルコールからなる群より選択される少なくとも1つを含む、[6]の製造方法。
[9] 前記親水性有機溶媒が含フッ素アルコールを含む、[6]の製造方法。
10] 前記濾材が、ポリビニリデンフルオライド、ポリアミド、ポリプロピレンまたはガラス繊維である、[1]〜[]のいずれかの製造方法。
11] 前記濾材の孔径が、0.2〜5.0μmである、[1]〜[10]のいずれかの製造方法。
【0011】
12] 前記[1]〜[11]のいずれかの製造方法で得られたコーティング用組成物を、フォトレジスト層の表面上に設けられた反射防止膜の形成に使用する、コーティング用組成物の使用方法。
13] 前記[1]〜[11]のいずれかの製造方法で得られたコーティング用組成物から該組成物を含むコーティング液を得て、次いで前記コーティング液をフォトレジスト層の表面上に塗布して、フォトレジスト層の表面上に反射防止膜が設けられたフォトレジスト積層体を製造することを特徴とするフォトレジスト積層体の製造方法。
14] 前記コーティング液中の前記含フッ素重合体を含む重合体の含有量が1〜10質量%であり、前記重合体の含有量中の前記含フッ素重合体の含有量が50〜100質量%である、[13]の製造方法。
15]前記コーティング液をスピンコート法により塗布する、[13]または[14]の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコーティング用組成物の製造方法によれば、膜構成物質濃度を高くせずに、かつ増粘剤等の添加剤を使用すること無く、膜厚を厚くできるコーティング用組成物が得られる。
本発明のフォトレジスト積層体の製造方法によれば、コーティング液中の膜構成物質濃度を高くせずに、かつ増粘剤等の添加剤を使用すること無く、フォトレジスト層の表面上に形成される反射防止膜の膜厚を厚くできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例および比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[コーティング用組成物の製造方法]
本発明のコーティング用組成物の製造方法では、上式(1)で表される単位(以下、「単位(1)」とも記す。)を有する含フッ素重合体(以下、「含フッ素重合体(A)」とも記す。)と溶媒とを含有する被処理溶液を濾過し、得られた濾液をコーティング用組成物に用いる。
コーティング用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素重合体(A)以外の重合体(以下、「他の重合体」とも記す。)を含有してもよい。含フッ素重合体と他の重合体とを合わせて、単に「重合体」ということがある。他の重合体をコーティング用組成物に含有させる場合、濾過前に添加してもよく、濾過後に添加してもよい。組成の安定性を向上させる点からは、濾過前に添加することが好ましい。
コーティング用組成物は、必要に応じて上記重合体以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)を含有してもよい。他の成分をコーティング用組成物に含有させる場合、濾過前に添加してもよく、濾過後に添加してもよい。組成の安定性を向上させる点からは、濾過前に添加することが好ましい。
【0015】
単位(1)において、XおよびXは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子を示す。原料の入手容易性の点からは水素原子またはフッ素原子が好ましい。XおよびXは、含フッ素重合体(A)におけるフッ素原子含有量が充分高く、含フッ素重合体(A)を用いて製造した反射防止膜の短波長帯域における屈折率が低くなりやすい点からはフッ素原子が好ましい。
は水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。原料の入手容易性の点からはフッ素原子が好ましい。
【0016】
Rfは直鎖状もしくは分岐状のペルフルオロアルキレン基、または直鎖状もしくは分岐状のオキシペルフルオロアルキレン基である。該ペルフルオロアルキレン基またはオキシペルフルオロアルキレン基は、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、アルキレン基の炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子で置換されている基を意味する。
オキシペルフルオロアルキレン基は、式(1)におけるYが結合した炭素原子に、エーテル結合(−O−)を介して、ペルフルオロアルキレン基が結合していることを意味する。
「炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子を含む」とは、ペルフルオロアルキレン基またはオキシペルフルオロアルキレン基を構成している炭素鎖の途中(炭素−炭素原子間)にエーテル結合性の酸素原子が挿入されていることを意味する。
Rfの炭素数はRfが炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子有しない場合、1〜10であり、1〜6が好ましく、3〜6が特に好ましい。Rfの炭素数はRfが炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子有する場合、Rfの炭素数は2〜10であり、2〜6が好ましく、3〜6が特に好ましい。該炭素数が前記範囲の下限値以上であると、含フッ素重合体(A)におけるフッ素原子含有量が充分高くなり、含フッ素重合体(A)を用いて製造した反射防止膜の短波長帯域における屈折率が低くなる。前記範囲の上限値以下であると、含フッ素重合体(A)は水に対する溶解性に優れる。
【0017】
単位(1)において、−COOMは−COOHまたはCOOZ(Zは水素原子が置換されていてもよいアンモニウムイオン)である。
1としては、NH、またはNHの水素原子の1以上をアルキル基または水酸基を有するアルキル基で置換したものが挙げられる。アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。Z1としては、−NR4+(R〜Rは、それぞれ独立に水素原子か炭素数1〜3のアルキル基である。)が好ましく、特に種々の用途に使用できる点、低コストの点でNHが特に好ましい。
【0018】
単位(1)の好ましい例として、下記の単位(a1)〜(a6)が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
含フッ素重合体(A)は、−COOMを有しない単位(以下、「単位(2)」とも記す。)を含んでもよい。
単位(2)としては、CF=CF、CH=CF、CF=CFCl等のフルオロエチレン類、ペルフルオロビニルエーテル類、炭素数3以上のペルフルオロオレフィン類等の重合性ペルフルオロ化合物類に基づく単位等が挙げられる。
【0021】
含フッ素重合体(A)における単位(1)の含有量は、含フッ素重合体(A)を構成する全単位に対して50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、100モル%が特に好ましい。単位(1)の含有量が前記範囲の下限値以上であると、含フッ素重合体(A)はアルカリ水溶液への溶解性に優れる。
【0022】
含フッ素重合体(A)の数平均分子量は1,000〜30,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましく、2,500〜3,500が特に好ましい。
数平均分子量が前記下限値以上であると、含フッ素重合体(A)は造膜性に優れ、平坦部における膜厚の均一性に優れる。前記上限値以下であると、含フッ素重合体(A)は塗布時の段差への追従性に優れ、フォトレジスト層の表面に凹凸がある場合に、凸部および凹部の表面全部を覆うのに必要な塗布量が少なくて済む。また、アルカリ水溶液への溶解性に優れる。
【0023】
含フッ素重合体(A)であって−COOMが−COOHである重合体の製造方法は、特に限定されないが、以下の方法(1)または方法(2)が好ましい。
方法(1):「−COOH」に変換可能な前駆官能基を有する単量体を重合させて前駆重合体を重合した後、前駆官能基を「−COOH」に変換する方法。
方法(2):前駆官能基を有しない含フッ素単量体を重合させた後、該重合体の一部に「−COOH」を導入する方法。
【0024】
方法(1)としては、CX=CY(Rf−COOCH)[ここで、X、X、Y、Rfは式(1)と同じである。]で表される含フッ素単量体(以下、「含フッ素単量体(1)」とも記す。)を重合して前駆重合体を得た後、−COOCH部分を加水分解する方法が挙げられる。
【0025】
前駆重合体の−COOCH部分を加水分解して含フッ素重合体(A)を得る方法は特に限定されない。たとえば前駆重合体を水または水を含む媒体とともに撹拌する方法が挙げられる。前記撹拌は加熱下で実施することが好ましい。その際の水または前記媒体の温度は50〜150℃が好ましい。
前記媒体としては、水と親水性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。親水性有機溶媒としては、水との溶解性に優れる点から、アルコール類が好ましく、中でも前駆重合体との溶解性にも優れる点から含フッ素アルコールが好ましい。含フッ素アルコールとしては、フッ素原子含有量が50重量%以上の化合物が好ましく、たとえば、2−(ペルフルオロブチル)エタノール、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等が挙げられる。混合溶媒における水と親水性有機溶媒との質量比率は、3:7〜9:1であることが好ましく、4:6〜6:4が特に好ましい。前記範囲であると前駆重合体が溶解しやすい。
【0026】
方法(2)の例としては、CX=CY(Rf−CCl)で表される含フッ素単量体を重合した後、硫酸と水を加えて、−CClをCOOHに変換する方法が挙げられる。
【0027】
含フッ素重合体(A)であって−COOMが−COOZである重合体の製造方法としては、方法(1)または方法(2)で−COOHを有する重合体を得て、次にアンモニアや有機アミンを加えて、−COOHを−COOZに変換する方法が挙げられる。
有機アミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン等のモノアルキルアミン類;ジエチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
他の重合体としては、ポリアクリル酸が挙げられる。他の重合体の数平均分子量は1,000〜30,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましく、2,500〜3,500が特に好ましい。
本発明において、含フッ素重合体(A)と他の重合体の合計を重合体の含有量という。重合体の含有量中、含フッ素重合体(A)の含有量は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0029】
他の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で界面活性剤や界面活性剤以外の添加剤を含有してもよい。
界面活性剤は、たとえば、塗布時の濡れ性、形成される膜の均一性改善に寄与する。
界面活性剤としては、フッ素系有機酸のアミン塩等が挙げられる。具体的には、ポリフルオロアルキル基とポリオキシエチレン基を有する化合物(3M社製、製品名:フロラード「FC−430」、「FC−4430」等)、アセチレングリコールおよびそれにポリオキシエチレンを付加した化合物(エアープロダクツ社製、製品名:「サーフィノール104」、「サーフィノール420」)、アルキルスルホン酸およびアルキルベンゼンスルホン酸類(たとえば、日光ケミカルズ社製、製品名:ニッコール「SBL−2N−27」等)、および水酸基を含みポリオキシエチレン基を含まない化合物(ポリグリセリン脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、多すぎると反射防止膜の白化を招き、さらには反射防止膜下層のフォトレジスト層中に拡散して露光不良を引き起こすおそれがある。加えて、ペルフルオロ化合物ではない界面活性剤の添加は反射防止膜の屈折率を高くするため、界面活性剤の含有量は、重合体の含有量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0030】
界面活性剤以外の添加剤としては、反射防止膜形成用のコーティング用組成物において公知の添加剤が挙げられる。
具体例としては、オニウム塩、ハロアルキル基含有化合物、o−キノンジアジド化合物、ニトロベンジル化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホン化合物等の光酸発生剤が挙げられる。
ペルフルオロ化合物ではない添加剤の添加は反射防止膜の屈折率を高くするため、コーティング用組成物中における界面活性剤以外の添加剤の合計の含有量は、重合体の含有量中、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0031】
濾材で濾過される被処理溶液は、含フッ素重合体(A)と溶媒とを含有する。含フッ素重合体(A)は前記方法(1)または方法(2)で製造されたものが好ましい。
被処理溶液中の溶媒としては、水、親水性有機溶媒、および水と親水性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、含フッ素アルコール等のアルコール類が挙げられる。含フッ素アルコールとしては、前記加水分解で用いられる親水性有機溶媒として挙げた含フッ素アルコールが例示される。
被処理溶液中の溶媒は、含フッ素重合体(A)の製造時に使用された溶媒でもよく、含フッ素重合体(A)の製造後に添加された溶媒でもよく、それら両方の混合物でもよい。
すなわち、溶媒を用いて含フッ素重合体(A)を製造して得られる液を被処理溶液として濾過に供してもよい。溶媒を用いて含フッ素重合体(A)を製造して得られる液に溶媒を加えて被処理溶液としてもよい。溶媒を用いて含フッ素重合体(A)を製造して得られる液を乾燥させた後、溶媒を加えて被処理溶液としてもよい。また、溶媒を用いずに含フッ素重合体(A)を製造し、必要に応じて乾燥させた後、溶媒を加えて被処理溶液としてもよい。
【0032】
被処理溶液中の含フッ素重合体の含有量は1〜25質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。含フッ素重合体の含有量が上記範囲の下限値以上であると反射防止膜の膜厚が充分に厚くなり、上限値以下であると溶液粘度が充分低くなることで濾過時間が短くなり、目詰まり等のトラブルが生じにくくなる。
【0033】
本発明では、フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材を用いて、被処理溶液を濾過する。濾過後にも濾液中の含フッ素重合体の含有量は殆ど変化しない。
濾材のフッ素原子含有量を小さくすることにより、濾液を含むコーティング液を製膜したときの膜厚が増大する。濾材のフッ素原子含有量は70質量%以下が好ましく、60質量%以下が特に好ましい。ゼロでもよい。濾材のフッ素原子含有量が70質量%以下であると、濾過を行うことによる膜厚の増加量が充分に大きく、膜厚をコントロールする方法として有効である。
フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材の材質の例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリアミド、ポリプロピレン(PP)等の有機材料、ガラス等の無域材料が挙げられる。組成物中の金属不純物の濃度上昇の可能性が低い点からは有機材料が好ましい。
1つの濾材が、フッ素原子含有量が異なる2種以上の材料からなる場合は、少なくとも1種の材料のフッ素原子含有量が上記の範囲内であればよい。
【0034】
濾材の孔径は0.2〜5.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましく、0.2〜0.5μmが特に好ましい。
濾材の形状や濾過方法は特に限定されない。公知の濾過装置、濾過方法を用いて実施することができる。濾過は常温で行うことができる。
たとえば、一般的に用いられている、カプセルフィルターを用いた加圧濾過でも効果を発揮する。
濾過速度(線速)は特に限定されないが、たとえば0.001〜1.0cm/秒が挙げられ、0.003〜0.5cm/秒が好ましい。
【0035】
[コーティング液]
本発明におけるコーティング液は、前記コーティング用組成物を用いて得られる。コーティング液とは塗布対象物(フォトレジスト層等)に塗布される溶液である。
コーティング液として、コーティング用組成物をそのまま用いてもよく、さらに溶媒を添加して用いてもよい。コーティング液中の溶媒は、被処理溶液中の溶媒と好ましい態様も含めて同様である。
前記他の重合体および前記他の成分の一部または全部をコーティング用組成物には含有させずコーティング液を調製する際に添加してもよい。
前記他の重合体および前記他の成分の一部をコーティング用組成物に含有させ、コーティング液を調製する際に残りを添加してもよい。
コーティング液中の重合体の含有量は、塗布性に優れる点で10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。必要な膜厚を有する反射防止膜が形成されやすい点で1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上が特に好ましい。
コーティング液中の含フッ素重合体(A)と他の重合体との合計に対する含フッ素重合体(A)の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0036】
[フォトレジスト積層体の製造方法]
本発明においてフォトレジスト積層体とは、フォトレジスト層の表面上に反射防止膜が設けられた積層体である。
本発明のフォトレジスト積層体の製造方法では、本発明の製造方法でコーティング用組成物を得て、次に前記コーティング用組成物を含むコーティング液を得て、次に前記コーティング液を塗布して、フォトレジスト層の表面上に反射防止膜が設けられたフォトレジスト積層体を製造する。
【0037】
フォトレジスト層の表面上にコーティング液を塗布する方法は、公知の方法を用いることができる。反射防止膜の均一性および製造の簡便性の点からスピンコート法が好ましい。
コーティング液を塗布した後、必要に応じて溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、たとえばホットプレートまたはオーブンを用いて加熱乾燥を行うことが好ましい。乾燥条件としては、たとえばホットプレートの場合、80〜150℃の温度で5〜30分の条件が好ましい。
【0038】
本発明のフォトレジスト積層体の製造方法は、基板上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層の表面上に反射防止膜を形成してフォトレジスト積層体とし、該フォトレジスト積層体を露光した後、次にアルカリ水溶液を用いて現像を行ってレジストパターンを形成する方法に好適に用いることができる。
本発明の製造方法でコーティング液を得て、これを用いて前記反射防止膜を形成することにより、定在波効果が抑制され、レジストパターンの寸法変動や形状の崩れを抑えることができる。また該反射防止膜はアルカリ水溶液への溶解性が良好であり、現像と反射防止膜の除去を同時に行うことができる。
またフォトレジスト層が、露光により生成するプロトンの触媒作用を利用する、いわゆる化学増幅型レジストからなる層である場合、露光後にフォトレジスト層が大気中に放置されるとフォトレジスト層表面の変質が生じ易い。かかるフォトレジスト層の表面上に、本発明の製造方法で得た反射防止膜を有すると、保護膜としても機能して、フォトレジスト層表面の変質を防止できる。
【0039】
[作用・機序]
本発明によれば、後述の実施例に示されるように、フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材で濾過して得られるコーティング用組成物は、濾過前の被処理溶液をそのままコーティング用組成物とした場合に比べて、重合体の含有量が同等であっても製膜したときの膜厚が厚くなる。
かかる効果が得られる理由は明かではないが、本発明者等が濾過前後における成分組成の変化を詳細に調べたところ、濾材のフッ素原子含有量が70質量%以下であるとき、濾過操作を経ることによって、19F−NMRにおいてトリフルオロクロロメタン基準で−119(マイナス119)ppm近辺にピークを持つ化合物(以下、「−119ppmの化合物」とも記す。)の含有量が顕著に低減することが判明した。この化合物の含有量の低減が膜厚の増大に寄与していると考えられる。またこの化合物はフッ素原子含有量が70質量%以下である濾材に吸着されやすいと考えられる。
具体的に、コーティング液中の−119ppmの化合物の含有量が0.95質量%未満であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0041】
[数平均分子量]
重合体の数平均分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によるポリスチレン(PS)換算分子量である。
[重合体の含有量]
コーティング用組成物の2mLをバイアル瓶(20mL)に採取して、80℃、3時間真空乾燥した。バイアル瓶の乾燥前後の質量を測定することで、溶液中の重合体の含有量(単位:質量%)を算出した。
[膜厚と屈折率]
コーティング液を、シリコンウェハ上にスピンコート法(毎分3,000回転、180秒)により塗布し、150℃に温度調節したホットプレート上で5分間乾燥させて、膜(反射防止膜)を形成した。膜厚と193nmの屈折率をエリプソメータにより測定した。コーティング液の使用量は2mLで一定とした。
ここでは、コーティング液の使用量およびコーティング条件を一定にして、得られた膜の膜厚を比較した。
【0042】
[−119ppmの化合物の含有量]
コーティング用組成物に、重水と1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノール(HFIP)とを混合して、重合体の含有量が2質量%となるように調整した後に、19F−NMRを測定した。
得られたチャートから、HFIPを標準物質として、トリフルオロクロロメタン基準で−119ppm近辺にピークを持つ化合物(−119ppmの化合物)の含有量(単位:質量%)を算出した。
【0043】
[製造例1:含フッ素重合体(A1)および溶液(1)の製造]
反応容器に、単量体としてCF=CFOCFCFCFCOOCH(分子量306)の50gと、開始剤溶液としてジイソプロピルペルオキシジカーボネート溶液(濃度50質量%、溶媒はCFCHOCFCFH)の0.60gを仕込んだ後、系内を窒素により置換した。次に、内温が40℃になるように加熱しながら撹拌し、72時間重合反応を行った。重合反応終了後、80℃、3時間真空乾燥して前駆重合体の21.5gを得た。前駆重合体の数平均分子量は3,300であった。
続いて、前駆重合体の側鎖末端のメチル基を加水分解してカルボキシ基に変換した。すなわち、セパラブルフラスコ内で、前駆重合体と水とを80℃で12時間撹拌して加水分解を行い、含フッ素重合体(A1)の含有量が18質量%である水溶液(溶液(1))を得た。
溶液(1)を80℃、3時間真空乾燥することで含フッ素重合体(A1)単体を取り出すことができる。
【0044】
[製造例2:被処理溶液(2)〜(4)およびそれらを用いたコーティング用組成物の製造]
製造例1で得た含フッ素重合体(A1)を含み、溶媒が異なる被処理溶液(2)〜(4)を製造した。各被処理溶液における含フッ素重合体の含有量はスピンコート法で製膜しやすい濃度とした。
被処理溶液(2)の製造:溶液(1)を水で希釈して、含フッ素重合体(A1)の含有量が5質量%である被処理溶液(2)を製造した。
被処理溶液(3)の製造:溶液(1)から含フッ素重合体(A1)単体を取り出し、2−ブタノールを加えて、含フッ素重合体(A1)の含有量が3質量%である被処理溶液(3)を製造した。
被処理溶液(4)の製造:溶液(1)から含フッ素重合体(A1)単体を取り出し、2、2、3、3−テトラフルオロプロパノール(TFPO)を加え、含フッ素重合体(A1)の含有量が4質量%である被処理溶液(4)を製造した。
【0045】
被処理溶液(2)〜(4)を用いてコーティング用組成物(2)〜(4)を製造し、そのままコーティング液(2)〜(4)とした。
例1、11、21は濾過しない比較例、例2、12、17、22は濾材のフッ素原子含有量が70%を超える比較例、例3〜5、例13〜16、例23〜28が実施例である。
濾過工程では、濾材として材質が異なる下記の濾材(1)〜(5)を用いた。各濾材のフッ素原子含有量は表1〜3に示すとおりである。
【0046】
[使用した濾材]
濾材(1):材質はポリテトラフルオロエチレン、トムシック社製、TITAN2−PTFE(製品名)。孔径1.0μm、0.45μm、0.2μmの3種を用意した。
濾材(2):材質はポリフッ化ビニリデン、トムシック社製、TITAN2−PVDF(製品名)。0.45μm、0.2μmの2種を用意した。
濾材(3):材質はポリアミド、トムシック社製、TITAN2−NYLON(製品名)。孔径1.5μm、0.45μm、0.2μmの3種を用意した。
濾材(4)PP:材質はポリプロピレン、トムシック社製、TITAN2−Polypropyren(製品名)。0.45μm、0.2μmの2種を用意した。
濾材(5):材質はホウケイ酸ガラス、トムシック社製、TITAN2−Glass Microfiber(製品名)、孔径1.0μm。
【0047】
[例1:濾過なし]
被処理溶液(2)を濾過せずに、そのままコーティング液(2)として用いた。
コーティング液(2)中の重合体の含有量および−119ppmの化合物の含有量を測定した。スピンコート法で製膜し膜厚を測定した。結果を表1に示す(以下、同様)。
【0048】
[例2〜5]
表1に示す濾材を用いて被処理溶液(2)を、濾過速度0.2cm/秒でシリンジ濾過し、濾液をコーティング液(2)とした。例1と同様の測定を行った。
【0049】
[例11:濾過なし]
被処理溶液(3)を濾過せずに、そのままコーティング液(3)として用いた。
コーティング液(3)中の重合体の含有量および−119ppmの化合物の含有量を測定した。スピンコート法で製膜し膜厚および屈折率を測定した。結果を表2に示す(以下、同様)。
【0050】
[例12〜16]
表2に示す濾材を用いて被処理溶液(3)を濾過速度(線速)0.2cm/秒でシリンジ濾過し、濾液をコーティング液(3)とした。例11と同様の測定を行った。表中の「‐」は未測定を意味する(以下、同様)。
【0051】
[例17]
被処理溶液(3)にポリアクリル酸を濃度が0.2質量%となるように添加した液を、表2に示す濾材を用いて濾過速度(線速)0.2cm/秒でシリンジ濾過し、濾液をコーティング液(3)とした。例11と同様の測定を行った。
【0052】
[例21:濾過なし]
被処理溶液(4)を濾過せずに、そのままコーティング液(4)として用いた。
コーティング液(4)中の重合体の含有量を測定した。スピンコート法で製膜し膜厚を測定した。結果を表3に示す(以下、同様)。
【0053】
[例22〜25]
表3に示す濾材を用いて被処理溶液(4)を濾過速度(線速)0.2cm/秒でシリンジ濾過し、濾液をコーティング液(4)とした。例21と同様の測定を行った。
【0054】
[例26〜28]
濾材(4)を取り付けたカプセルフィルターを用い、表4に示した濾過速度で被処理溶液(3)を加圧濾過し、濾液をコーティング液(5)とした。例1と同様の測定を行った。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
図1は、例1〜5について、コーティング液中の−119ppmの化合物の含有量と製膜後の膜厚との関係をグラフに表したものである。
【0060】
表1の結果に示されるように、濾材のフッ素原子含有量が70質量%以下である例3〜5は、コーティング液中の−119ppmの化合物の含有量が0.95質量%未満であり、例1に対して重合体の含有量が同等であるのに膜厚が顕著に増加した。
一方、濾材のフッ素原子含有量が76質量%である例2は、コーティング液中の−119ppmの化合物の含有量が0.95質量%以上であり、例1の膜厚との差が小さい。具体的には、例1の製膜後の膜厚の平均値は33.5nm(サンプル数5)、3σ=1.5(σは標準偏差)であったことから、例2の製膜後の膜厚35.0nmは有意差無しと判定した。
表2および3の結果でも、濾材のフッ素原子含有量と膜厚との関係について同様の傾向が見られる。
図1の結果より、コーティング用組成物中の−119ppmの化合物の含有量と製膜後の膜厚との間には相関があり、−119ppmの化合物の含有量が低いほど膜厚が厚くなることがわかる。
表2に示されるように、−119ppmの化合物はフッ素原子含有量が低い濾材で濾過したときに、より低減される。
濾材の材質が同じである場合、孔径が小さいほど−119ppmの化合物はより低減される傾向がある。
表2の例11、12および15を比較すると、濾過によって−119ppmの化合物の含有量が減少しても、膜の屈折率には影響が無いことがわかる。
例17で得たコーティング用組成物は、増粘作用があるポリアクリル酸が添加されているため、例12と比べて膜厚は増加しているがが、屈折率が上昇した。
例15および26〜28の結果から、濾材と孔径が同一ならば、濾過速度と濾過方法には関係なく膜厚を増加させる効果があることを確認できた。
このように、フッ素原子含有量が70質量%以下である濾材を用いて濾過を行うことによって、コーティング用組成物中の重合体の含有量を増大させなくとも、かつ増粘剤等の添加剤を使用すること無く、膜厚を増加させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のコーティング用組成物は、フォトレジスト層の表面上に設けられる反射防止膜の形成に有用である。
なお、2016年07月13日に出願された日本特許出願2016−138762号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1