(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、流体デバイスと流体デバイスの製造方法の実施の形態を、
図1から
図37を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限られない。
【0015】
[流体デバイスの第1実施形態]
図1は、第1実施形態の流体デバイス100Aの正面図である。
図2は、流体デバイス100Aを模式的に示した平面図である。なお、
図1および
図2においては、液体を導入する際に、流路内の気体(例、空気)を排出又は導入するための気体流路の図示を省略している。なお、流体デバイス100Aは、数μmから数百mm程度の幅又は深さを有する流路を含む。
【0016】
本実施形態の流体デバイス100Aは、検体試料に含まれる検出対象である試料物質をハイブリダイズ、免疫反応および酵素反応などにより検出するデバイスを含む。試料物質は、例えば、核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、細胞外小胞体などの生体分子や粒子などである。流体デバイス100Aは、上板(基材、接合基材、第2接合基材)6および基板(基材、流路側基材、第1接合基材)9を備えている。上板6および基板9は、一例として、樹脂材(ポリプロピレン、ポリカーボネイト等の硬質材)で形成されている。
【0017】
例えば、上板6と基板9とは、後述するように、エネルギーダイレクター部(以下、ED部e1と称する)を介して超音波溶着で接合されている。上板6および基板9は、それぞれ接合方向に貫通し面方向の位置決めが行われる複数(例えば2つ)の位置決め孔(不図示)を有している。上板6および基板9は、位置決め孔に軸部材を挿通させることにより、面方向に互いに位置決めされた状態で積層(多層)可能である。
【0018】
なお、以下の説明においては、上板(例、蓋部、流路の上部又は下部、流路の上面又は底面)6および基板9は水平面に沿って配置され、上板6は基板9の上側に配置されるものとして説明する。ただし、これは、説明の便宜のために水平方向および上下方向を定義したに過ぎず、本実施形態に係る流体デバイス100Aの使用時の向きを限定しない。
【0019】
図2は、基板9を上板6側から視た平面図(上面図)である。
図3は、
図2におけるA−A線視断面図である。
【0020】
図3に示すように、基板9は、下面(一面)9a側にリザーバー層19A、上面(他面)9b側に反応層19Bを含む。リザーバー層19Aは、基板9の下面9aに配置された複数(
図2では3つ)のインレット29A、29B、29Cを有する。インレット29A、29B、29Cは、それぞれ互いに独立して溶液(例、検体試料、反応や洗浄に使う試薬)を収容可能である。各インレット29A、29B、29Cは、基板9の厚さ方向(例、下面9a又は上面9bと直交する方向又は交差する方向)に延び、下面9aに開口する空洞によって形成されている。空洞の断面は、一例として円形状である。インレット29A、29B、29Cの容積は、収容する溶液量に応じて設定されている。例えば、インレット29A、29B、29Cは、収容する溶液量に応じて断面積および深さが設定されている。なお、
図3では、インレット29Aのみが図示されているが、インレット29B、29Cはインレット29Aと同様の形状である。
【0021】
インレット29Aの一端側(底部側)は、基板9を厚さ方向(例、下面9a又は上面9bと直交する方向又は交差する方向)に貫通する貫通部39Aと接続されている。インレット29Bの一端側(底部側)は、基板9を厚さ方向(例、下面9a又は上面9bと直交する方向又は交差する方向)に貫通する貫通部39Bと接続されている。インレット29Cの一端側(底部側)は、基板9を厚さ方向(例、下面9a又は上面9bと直交する方向又は交差する方向)に貫通する貫通部39Cと接続されている。
【0022】
図2に示すように、反応層19Bは、基板9の上面9bに配置された循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7、定量バルブVA、VB、VC、導入バルブIA、IB、IC、廃液バルブOA、OB、OCを有している。以下の説明においては、上記の定量バルブVA、VB、VC、導入バルブIA、IB、IC、廃液バルブOA、OB、OCを適宜、バルブVと総称する。
【0023】
定量バルブVA、VB、VCは、定量バルブで区切られる循環流路10の区画のそれぞれが所定の体積となるように配置されている。例えば、定量バルブVA、VB、VCは、循環流路10を、第1定量区画18Aと第2定量区画18Bと第2定量区画18Cとに区画する。なお、定量バルブVA、VB、VCの構成については後述する。
【0024】
導入流路12Aは、一端側において貫通部(貫通流路)39Aを介してインレット29Aと接続され、他端側において外側から循環流路10に接続されている。例えば、導入流路12Aが循環流路10に接続される位置は、第1定量区画18Aにおける定量バルブVAの近傍である。例えば、導入流路12Aとインレット29Aとは、上面視(例えば、上板6および基板9の積層方向で上側から視たとき)において、一部が互いに重なっており、重なった部分に配置された貫通部39Aを介して接続されている。
【0025】
導入流路12Bは、一端側において貫通部39Bを介してインレット29Bと接続され、他端側において外側から循環流路10に接続されている。例えば、導入流路12Bが循環流路10に接続される位置は、第2定量区画18Bにおける定量バルブVBの近傍である。例えば、導入流路12Bとインレット29Bとは、上面視(例えば、上板6および基板9の積層方向で上側から視たとき)において、一部が互いに重なっており、重なった部分に配置された貫通部39Bを介して接続されている。
【0026】
導入流路12Cは、一端側において貫通部39Cを介してインレット29Cと接続され、他端側において外側から循環流路10に接続されている。例えば、導入流路12Cが循環流路10に接続される位置は、第3定量区画18Cにおける定量バルブVCの近傍である。例えば、導入流路12Cとインレット29Cとは、上面視(例えば、上板6および基板9の積層方向で上側から視たとき)において、一部が互いに重なっており、重なった部分に配置された貫通部39Cを介して接続されている。
【0027】
例えば、基板9において、導入流路12A、12B、12Cとインレット29A、29B、29Cとが互いに重なる部分に設けられた貫通部39A、39B、39Cを介してそれぞれ接続されることにより、各導入流路と各インレットとの距離(例、溶液が流れる距離)が短くなり、各インレットから導入流路に溶液を導入する際の圧力損失も小さくなり、容易、且つ、迅速に溶液を導入することが可能となる。
【0028】
[バルブの第1実施形態]
導入バルブIAは、導入流路12Aにおける貫通部39Aと循環流路10との間に配置されている。
図4は、バルブの第1実施形態としての導入バルブIAの構成を示す断面図である。なお、導入バルブIAの構成は、導入バルブIB、IC、定量バルブVA、VB、VCおよび廃液バルブOA、OB、OCの構成と、開閉対象の流路が異なること以外は同様であるため、
図4に導入バルブIB、IC、定量バルブVA、VB、VCおよび廃液バルブOA、OB、OCの符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
図4に示されるように、導入バルブIAは、導入流路12Aを分断して基板9に配置された曲面状(例、半球状)の窪み40A(
図3参照)と、上板6に窪み40Aと対向配置され弾性変形して窪み40Aに当接したときに導入流路12Aを閉塞し、窪み40Aと離間したときに導入流路12Aを開放する円板状のバルブ部50とを含む。バルブ部50は、一例として、下側に向かう方向の力(例、空気圧、液圧)が流体(例、気体、液体)の制御により加えられることによって弾性変形して窪み40Aに当接する。本実施形態では、上板6の上面6a側に配置されるバルブ駆動部(付与部)15によって、下側に向かう方向の空気圧が供給される(力が付与される)。
【0030】
バルブ部50の外径は、窪み40Aの外径よりも大きい。例えば、バルブ部50は、軟質材で形成され可撓性を有している。バルブ部50は、変形によって導入流路12Aの開閉状態を制御する。一例として、バルブ部50は、下側に向かう方向の力が加わったときに、
図4に曲線状の二点鎖線で示されるように下方に撓んで窪み40Aに接触して導入流路12Aを閉じ、下側に向かう方向の力から解放されたときに、弾性復元力により撓みが解消され導入流路12Aを開く。軟質材としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを例示することができる。このように、バルブ部50は、バルブ駆動部15によって変形する被バルブ駆動部として構成されている。
【0031】
上板6の下面(一面)6aには、窪み40Aと対向する位置に平面視円形の窪み51が形成されている。窪み51は、バルブ部50が収容されるための構造である。窪み51の内径は、バルブ部50の外周面が嵌合する大きさに形成されている。窪み51の深さは、バルブ部50の厚さと同一に形成されている。導入流路12Aが開いた状態である場合、窪み51に収容されたバルブ部50の下面(流路を閉じる時に窪み40Aと接する面)は、上板6の下面6aとほぼ面一である。また、上板6は、窪み51の底部に開口する開口部52を有している。開口部52は、上板6を厚さ方向(例、下面6a又は上面6bと直交する方向又は交差する方向)に貫通している。例えば、開口部52の内径は、窪み40Aの外径よりも大きい。
【0032】
上板6の上面(他面)6bには、開口部52を流体デバイス100Aの外気に対して気密にシールするシール領域SAが形成されている。例えば、シール領域SAは、上面6bにおいて、開口部52の周囲に環状に形成された溝部53を含む。溝部53には、シール部材54が収容される。シール部材54は、例えば、O−リングである。なお、シール領域SAは、開口部52の周囲の一部にのみ配置される構成であってもよい。この場合、シール領域が配置されない箇所については、例えば、後述のバルブ駆動部15(例、バルブ駆動部15の平面部)が上板6の上面6bに接触して開口部52を気密にシールすればよい。
【0033】
シール部材54には、バルブ駆動部15(例、バルブ駆動部15の平面部)が接触する。開口部52は、シール部材54とバルブ駆動部15との接触により、気密に封止されている。
【0034】
また、導入バルブIBは、導入流路12Bを分断して基板9に配置された窪み40Aと同様の形状の窪み(不図示、便宜上、窪み40Bと称する)と、上板6に窪み40Bと対向配置され変形によって導入流路12Bの開閉状態を制御するバルブ部50とを含む。例えば、バルブ部50は、弾性変形して窪み40Bに当接したときに導入流路12Bを閉塞し、窪み40Bと離間したときに導入流路12Bを開放する。導入バルブICは、導入流路12Cにおける貫通部39Cと循環流路10との間に配置されている。導入バルブICは、導入流路12Cを分断して基板9に配置された窪み40Aと同様の形状の窪み(不図示、便宜上、窪み40Cと称する)と、上板6に窪み40Cと対向配置され変形によって導入流路12Cの開閉状態を制御するバルブ部50とを含む。例えば、バルブ部50は、弾性変形して窪み40Cに当接したときに導入流路12Cを閉塞し、窪み40Cと離間したときに導入流路12Cを開放する。
【0035】
図2および
図3に示すように、例えば、廃液槽7は、循環流路10が形成された領域の内側領域に配置されている。これにより、流体デバイス100Aの小型化を図ることができる。上板6には、廃液槽7に開口するタンク吸引孔(不図示)が厚さ方向に貫通して設けられている。
【0036】
図2において、排出流路13Aは、循環流路10における第1定量区画18Aの溶液を廃液槽7に排出するための流路である。排出流路13Aの一端側は、循環流路10に接続されている。排出流路13Aが循環流路10に接続される位置は、第1定量区画18Aにおける定量バルブVBの近傍である。排出流路13Aの他端側は、廃液槽7に接続されている。また、排出流路13Bは、循環流路10における第2定量区画18Bの溶液を廃液槽7に排出するための流路である。排出流路13Bの一端側は、循環流路10に接続されている。排出流路13Bが循環流路10に接続される位置は、第2定量区画18Bにおける定量バルブVCの近傍である。排出流路13Bの他端側は、廃液槽7に接続されている。排出流路13Cは、循環流路10における第3定量区画18Cの溶液を廃液槽7に排出するための流路である。排出流路13Cの一端側は、循環流路10に接続されている。排出流路13Cが循環流路10に接続される位置は、第3定量区画18Cにおける定量バルブVAの近傍である。排出流路13Cの他端側は、廃液槽7に接続されている。
【0037】
廃液バルブOAは、排出流路13Aの中途(例、中間、循環流路10側)に配置されている。廃液バルブOAは、排出流路13Aを分断して基板9に配置された半球状の窪み41A(
図3参照)と、上板6に窪み41Aと対向配置され変形によって排出流路13Aの開閉状態を制御するバルブ部50とを含む。例えば、バルブ部50は、弾性変形して窪み41Aに当接したときに排出流路13Aを閉塞し、窪み41Aと離間したときに排出流路13Aを開放する。廃液バルブOBは、排出流路13Bの中途(例、中間、循環流路10側)に配置されている。廃液バルブOBは、排出流路13Bを分断して基板9に配置された窪み41Aと同様の形状の窪み(不図示、便宜上、窪み41Bと称する)と、上板6に窪み41Bと対向配置され変形によって排出流路13Bの開閉状態を制御するバルブ部50とを含む。例えば、バルブ部50は、弾性変形して窪み41Bに当接したときに排出流路13Bを閉塞し、窪み41Bと離間したときに排出流路13Bを開放する。廃液バルブOCは、排出流路13Cの中途(例、中間、循環流路10側)に配置されている。廃液バルブOCは、排出流路13Cを分断して基板9に配置された窪み41Aと同様の形状の窪み(不図示、便宜上、窪み41Cと称する)と、上板6に窪み41Cと対向配置され変形によって排出流路13Cの開閉状態を制御するバルブ部50とを含む。例えば、バルブ部50は、弾性変形して窪み41Cに当接したときに排出流路13Cを閉塞し、窪み41Cと離間したときに排出流路13Cを開放する。
【0038】
上記構成の流体デバイス100Aは、上板6に窪み51、開口部52、溝部53等を形成するとともに、窪み51、開口部52、溝部53等が形成された上板6とバルブ部50とを後述する二色成形(ダブルモールド)して一体化(互いに相対移動不能に固定)し、基板9に循環流路、導入流路、リザーバー、貫通部等を形成し、上板6および基板9を溶着、接着やレーザ融着等の接合手段により接合して一体化することにより製造される(例、
図1の構成など)。このように、例えば、上板6は、基板9に形成された窪みとともに、上記の各種流路を形成し、溶液の漏れ低減と流路形成とを兼用している。
【0039】
製造された流体デバイス100Aのインレット29Aには溶液LA(
図2参照)が収容され、インレット29Bには溶液LB(
図2参照)が収容され、インレット29Cには溶液LC(
図2参照)が収容される。各インレット29A、29B、29Cへの溶液LA、LB、LCの注入は、例えば、基板9の下面9a側に開口する各インレット29A、29B、29Cの開口部から行われる。
【0040】
流体デバイス100Aは、インレット29Aに溶液LAが収容され、インレット29Bに溶液LBが収容され、インレット29Cに溶液LCが収容され、例えば、基板9の下面9a側をシール部材でシールして各インレット29A、29B、29Cの開口部を密封している状態(例、各溶液が各インレットに収容された状態)で、溶液LA、LB、LCの混合・反応が行われる場所(例、検査機関、病院、自宅、車両など)まで流通させることが可能である。このような場合、インレット(例、インレット29A、29B、29C)は、溶液(例、溶液LA、LB、LC)が収容されたリザーバーとして構成される。
【0041】
[流体デバイスの製造方法の第1実施形態]
次に、
図5から
図8を参照して、上板(例、第1の成形部)6とバルブ部(例、第2の成形部)50とを第1金型M1と第2金型M2とを用いて二色成形して一体化する方法(成形方法)について説明する。上板6およびバルブ部50を成形する際に用いる金型の型開閉方向は水平方向または鉛直方向のいずれでもよい。本実施形態では、一例として、型開閉方向を鉛直方向として説明する。また、ここでは、上板6のうち、バルブ部50が設けられる箇所について図示、記載する。
【0042】
図5は、第1金型M1および第2金型M2の概略構成を示す断面図である。第1金型M1は、パーティングラインPL1を接合面として開閉する固定型M11と可動型M12とを備えている。固定型M11は、成型機のうち、1次側射出部IJ1を備える上側プラテン(不図示)に固定されている。可動型M12は、反転機RVを介して成型機の下側プラテンPTに固定されている。
【0043】
第2金型M2は、パーティングラインPL1と面一のパーティングラインPL2を接合面として開閉する固定型M21と可動型M22とを備えている。固定型M21は、成型機のうち、2次側射出部IJ2を備える上側プラテン(不図示)に固定されている。可動型M22は、反転機RVを介して成型機の下側プラテンPTに固定されている。反転機RVは、一回の成形処理の完了毎に可動型M12と可動型M22との位置を互いに反転させる。つまり、可動型M12および可動型M22は、一回の成形処理毎に1次側射出部IJ1および第1金型M1を用いて成形を行う第1位置と、2次側射出部IJ2および第2金型M2を用いて成形を行う第2位置とを反転して移動する。なお、以下の説明では、1次側射出部IJ1側に設置されている金型を、固定型M11および可動型M12を有する第1金型M1と称し、2次側射出部IJ2側に設置されている金型を、固定型M21および可動型M22を有する第2金型M2と称する。
【0044】
固定型M11、M21としては、二枚板型または三枚板型のいずれの型式でもよいが、第1金型M1および第2金型M2の型開き時にランナーと成型品とを分離できる点から三枚板型であることが好ましい。なお、固定型M11、M21には、それぞれ1次側射出部IJ1、2次側射出部IJ2から射出された溶融樹脂を導くための流路(ランナー部、ゲート部等)が形成されているが、ここでは流路の図示を省略する。
【0045】
固定型M11は、上板6の下面6aを形成する面6aMおよび上板6の窪み51を形成する突部51Mを有している。可動型M12は、上板6の開口部52を形成する突部52M、上板6の溝部53を形成する突部53M、および下面6a、窪み51以外の大部分の部位を成形するキャビティ(内部空間)6Mを有している。突部51Mの突出量は、バルブ部50の厚さに対応する値に設定されている。バルブ部50の厚さに対応する値とは、第1金型M1に充填された溶融樹脂が冷却されて収縮した後に、バルブ部50の厚さとなる値を含む。成形品の長さをL、樹脂の収縮率をr、金型における長さをLMとすると、LM=(1+r)×Lで表される値に金型の長さは形成される。以下の説明では、金型に関する長さ(厚さ、深さ等も含む)は、便宜上、成形品と同一であるものとして説明するが、実際には上記の式に基づいて形成されている。
【0046】
突部52Mの高さは、金型M1が型締めされたときに突部51Mに突き当たる値に設定されている。
【0047】
固定型M21は、バルブ部50の下面(上板6の下面6aとほぼ面一となる面)を形成する面50aMを有している。可動型M22は、可動型M12と同一の形状に形成されている。
【0048】
次に、第1金型M1および第2金型M2を用いて上板6およびバルブ部50を成形する手順について説明する。例えば、硬質材(例、バルブ部50と比較して硬い材質)の上板6および軟質材(例、上板6や基板9と比較して柔らかい材質)のバルブ部50のように、互いに異材質(例、2種類の材質)で構成される成形品を第1金型M1および第2金型M2を用いて二色成形で熱融着して一体化する際には、第1金型M1で成形した成形品(第1の成形部)が第2金型M2においてキャビティ(内部空間)を構成する部材の一部を形成する。そのため、第1金型M1で成形される成形品の融点は、第2金型M2で成形される成形品(第2の成形部)よりも融点が高いことが好ましい。例えば、上述の硬質材の融点は、約165〜250℃であり、上述の熱可塑性エラストマーの融点は、約85〜120℃であるため、本実施形態では、上板6を第1金型M1で成形し、バルブ部50を第2金型M2で成形する。上板6およびバルブ部50が相溶性を有する材料(例、樹脂材)で形成される場合には、成形した上板6およびバルブ部50の接合強度が高くなるため、バルブ部50の可撓性が確保される範囲内で上板6を第2金型M2で成形し、バルブ部50を第1金型M1で成形することも可能である。
【0049】
まず、
図6に示すように、固定型M11と可動型M12とで型締めされた状態(第1の型締め状態)において、第1位置の第1金型M1の内部に上板6を成形するための硬質材の溶融樹脂を1次側射出部IJ1からキャビティ6Mに充填する。なお、一回目の成形については、第2金型M2の内部に成形された成形品がないため、2次側射出部IJ2から溶融樹脂の射出は行われない。第1金型M1に充填された溶融樹脂を冷却することにより、第1金型M1側において上板6(例、第1の成形部)が成形される。第1金型M1により上板6が成形されると、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、反転機RVによって第1位置における第1金型M1の可動型M12と、第2位置における第2金型M2の可動型M22とを反転させる。
【0050】
図7には、可動型M12の位置と可動型M22の位置とが反転した後に型締めされた状態(第2の型締め状態)の第1金型M1および第2金型M2が示されている。
図7に示すように、第2位置の第2金型M2の内部には、第1金型M1で成形された上板6が設置されている。第2金型M2においては、第1金型M1で成形された上板6と、固定型M21の面50aMと、可動型M22の突部52Mとにより、バルブ部50と同一形状のキャビティ(内部空間)50Mが形成されている。つまり、成形された上板6は、キャビティ(内部空間)50Mを形成する構成部材の一部である。
【0051】
次に、
図8に示すように、1次側射出部IJ1から第1位置における第1金型M1のキャビティ6Mに硬質材の溶融樹脂を充填し、2次側射出部IJ2から第2位置における第2金型M2のキャビティ50Mに軟質材の溶融樹脂を充填する。この後、溶融樹脂を冷却することにより、第1金型M1では上板6が成形され、第2金型M2では、上板6と熱融着されて一体化されたバルブ部50(例、第2の成形部)が成形される。第1金型M1を用いた上板6の成形と、第2金型M2を用いた上板6とバルブ部50とを一体化させる成形とは同時に行われる。例えば、成形された上板6と第2金型M2とを用いた、上板6の一部に対するバルブ部50の成形と、当該成形の次の第2金型M2を用いた成形においてバルブ部50が上板6の一部へ成形される第1金型M1を用いた、上板6の成形とは同時に行われる。また、例えば、成形された基材(例、上板6や基板9など)とバルブ部50とのいずれか一方と第2金型M2とを用いた、基材とバルブ部50とのいずれか一方の一部に対する基材とバルブ部50とのいずれか他方の成形と、当該成形の次の成形における第1金型M1を用いた、基材とバルブ部50とのいずれか一方の成形と、は同時に行われる。この後、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、第2金型M2においては第1の成形部(例、基材としての上板6や基板9、バルブ部)と第2の成形部(例、基材としての上板6や基板9、バルブ部)とを含む成形品を離型させることにより、互いに異材質で熱融着して成形されて一体化(互いに固定)された上板6およびバルブ部50が得られる。以降については、第1位置における第1金型M1の可動型M12と、第2位置における第2金型M2の可動型M22との反転(第1位置で成形された上板6の第2位置への移動)、第1位置における第1金型M1を用いた上板6の成形、および第2位置における第2金型M2を用いた上板6とバルブ部50とを熱融着して一体化させる成形の同時成形、第2金型M2からの成形品の離型が繰り返して行われる。このように、例えば、流体デバイス100Aは、流体デバイス100Aを構成する部材のうち材質の異なる樹脂同士(例、上板6とバルブ部50など)を第1金型M1および第2金型M2を用いた二色成形によって製造される。なお、例えば、本実施形態における流体デバイスの製造方法は、基材(例、上板6、基板9など)とバルブ部(例、バルブ部50、後述のバルブ部71など)とのいずれか一方を第1金型で成形することと、成形された該基材と該バルブ部とのいずれか一方と第2金型とを用いて、該基材と該バルブ部とのいずれか一方の一部に、該基材と該バルブ部とのいずれか他方を成形することと、を含む。また、例えば、本実施形態における流体デバイスの製造方法は、流路を含む流体デバイスの製造方法であって、第1金型で第1の成形部を成形することと、第2金型で第2の成形部を成形することと、該第2金型による成形において、該第1の成形部の少なくとも一部に該第2の成形部を融着させて該第1の成形部と該第2の成形部とを一体成形することと、を含む。
【0052】
次に、上板6および基板9を接合して上板6と基板9とを積層状に一体化する手順について説明する。
【0053】
上板6および基板9は、例えば超音波溶着にて接合される。基板9と上板6との接合面が平坦面同士であった場合には、積層した基板9と上板6とに超音波振動を付与しても接触面が広いため、樹脂の溶け出し位置が不均一になってしまい、均一且つ安定した溶着強度を得ることが難しい場合がある。そのため、本実施形態では、流路を含む窪み(例、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)を囲む位置(例、周囲)に突出するエネルギーダイレクター部を介して上板6と基板9とを超音波溶着にて接合する。例えば、窪み(例、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)が基板9の上面9bに形成されており、基板9の上面9bに上板6を接合することにより流路が形成される場合には、エネルギーダイレクター部は基板9または上板6のどちらの接合面に設けてもよいが、窪み(例、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)とエネルギーダイレクター部との相対位置関係を保持するためには、窪み(例、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)が形成された基板9にエネルギーダイレクター部を設け、例えば、基板9を射出成形にて製造する場合に窪み(例、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)とエネルギーダイレクター部とを同時に成形することが好ましい。
【0054】
そこで、本実施形態では、
図9に示されるように、基板9の上面9bに、窪み(例えば、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7)を囲む位置に突出するエネルギーダイレクター部e1が設けられている。
【0055】
図10は、エネルギーダイレクター部e1が設けられた基板9の断面図である。
図10においては、例えば、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C、廃液槽7を代表的に窪み60として示している。
【0056】
図10に示されるように、エネルギーダイレクター部e1は、先端が先細る断面視三角形状にそれぞれ形成されている。エネルギーダイレクター部e1は、例えば、一辺の長さW1が数百μmの正三角形状の断面に形成されている。エネルギーダイレクター部e1の先端部から窪み60までの距離W2は、例えば、数百μmである。
【0057】
次に、上記の上板6と基板9とを超音波溶着にて接合する手順について、
図11から
図13を参照して説明する。
【0058】
まず、
図11に示すように、基板9と上板6とを各板の位置決め孔に軸部材を挿通させることにより、基板9と上板6とが面方向に互いに位置決めされ、且つエネルギーダイレクター部e1に上板6が接触した状態で積層する。そして、基板9と上板6との一方を支持した状態で基板9と上板6も他方にホーンを接触させて振動エネルギーを付与することにより、伝達された振動エネルギーによってエネルギーダイレクター部e1と上板6とを摩擦させることで境界面において強力な摩擦熱が発生する。エネルギーダイレクター部e1は、上板6に比べて断面積が小さいため振動エネルギーが集中し、
図12に示されるように、発生した摩擦熱により先端側から樹脂溶融温度まで短時間で加熱されて溶融する。この後、冷却されることにより、基板9と上板6とは溶着されて一体化されるが、エネルギーダイレクター部e1は、先端部に比べて基部の面積が大きく振動エネルギーの集中が緩和されるため、
図13に示されるように、溶着後においても微少厚さの溶着痕として残留する可能性がある。
【0059】
このように、
図1に示したように、上板6および基板9が積層されて一体化された流体デバイス100Aが製造される。なお、エネルギーダイレクター部e1は、準備工程として、流体デバイス100Aを製造する前に予め上板6又は基板9に形成しておいてもよい。
【0060】
次に、上述した
図1から
図4に基づき、上記流体デバイス100Aを用いて溶液LA、LB、LCの混合・反応を行う手順について説明する。最初に、溶液LAを第1定量区画18Aに導入して定量する手順について説明する。
【0061】
まず、循環流路10の定量バルブVA、VBを閉じ、排出流路13B、13Cの廃液バルブOB、OCを閉じ、排出流路13Aの廃液バルブOAおよび導入流路12Aの導入バルブIAを開く。
【0062】
上記のバルブの開閉状態の制御は、バルブの変形によって行われる。例えば、上記のバルブの閉塞は、
図4に示したように、シール部材54との接触により開口部52を気密に封止したバルブ駆動部15が開口部52を介して陽圧を付与することにより、バルブ部50が窪み40A側に撓んで接触することにより行われる。また、上記バルブの開放は、バルブ駆動部15による陽圧の付与を解除することによりバルブ部50の撓みが解消されて窪み40Aから離れることで行われる。以下で説明する各種バルブの開閉も同様である。
【0063】
これにより、循環流路10は、第1定量区画18Aが第2定量区画18Bおよび第3定量区画18Cに対して区切られた状態となる。また、廃液槽7は、排出流路13B、13Cに対して遮蔽され、排出流路13Aを介して循環流路10の第1定量区画18Aに開放されて接続される。さらに、インレット29Aは、貫通部39Aおよび導入流路12Aを介して循環流路10の第1定量区画18Aに開放されて接続される。
【0064】
この状態で、タンク吸引孔から廃液槽7内を負圧吸引することにより、インレット29Aに収容された溶液LAが貫通部39A、導入流路12A、循環流路10の第1定量区画18A、排出流路13Aおよび廃液槽7に順次導入される。溶液LAが廃液槽7まで導入される各流路には異物が残留している可能性があるが、当該異物は溶液導入時に溶液LAの導入先端側に巻き込まれ廃液槽7に流入されるため、循環流路10に異物が残留する可能性を抑制できる。
【0065】
そして、溶液LAの導入先端側が廃液槽7に流入し、導入後端側が導入流路12Aに残っている状態で廃液バルブOAおよび導入バルブIAを閉じる。これにより、溶液LAを第1定量区画18Aの容積に応じて定量することができる。上述したように、異物が存在している可能性がある導入先端側の溶液LAは廃液槽7に排出され、また、気泡についてはインレット29Aに残留した状態であるため、循環流路10の第1定量区画18Aには異物や気泡が混入していない溶液LAが定量される。
【0066】
次に、溶液LBを第2定量区画18Bに導入して定量するには、まず、循環流路10の定量バルブVB、VCを閉じ、排出流路13A、13Cの廃液バルブOA、OCを閉じ、排出流路13Bの廃液バルブOBおよび導入流路12Bの導入バルブIBを開く。これにより、循環流路10は、第2定量区画18Bが第1定量区画18Aおよび第3定量区画18Cに対して区切られた状態となる。また、廃液槽7は、排出流路13A、13Cに対して遮蔽され、排出流路13Bを介して循環流路10の第2定量区画18Bに開放されて接続される。さらに、インレット29Bは、貫通部39Bおよび導入流路12Bを介して循環流路10の第2定量区画18Bに開放されて接続される。
【0067】
この状態で、タンク吸引孔から廃液槽7内を負圧吸引することにより、インレット29Bに収容された溶液LBが貫通部39B、導入流路12B、循環流路10の第2定量区画18B、排出流路13Bおよび廃液槽7に順次導入される。溶液LBについても、溶液LBが廃液槽7まで導入される各流路に残留している異物は、溶液導入時に溶液LBの導入先端側に巻き込まれ廃液槽7に流入されるため、循環流路10に異物が残留する可能性を抑制できる。
【0068】
そして、溶液LBの導入先端側が廃液槽7に流入し、導入後端側が導入流路12Bに残っている状態で廃液バルブOBおよび導入バルブIBを閉じる。これにより、溶液LBを第2定量区画18Bの容積に応じて定量することができる。上述したように、異物が存在している可能性がある導入先端側の溶液LBは廃液槽7に排出され、また、気泡についてはインレット29Bに残留した状態であるため、循環流路10の第2定量区画18Bには異物や気泡が混入していない溶液LBが定量される。
【0069】
次に、溶液LCを第3定量区画18Cに導入して定量するには、まず、循環流路10の定量バルブVA、VCを閉じ、排出流路13A、13Bの廃液バルブOA、OBを閉じ、排出流路13Cの廃液バルブOCおよび導入流路12Cの導入バルブICを開く。これにより、循環流路10は、第3定量区画18Cが第1定量区画18Aおよび第2定量区画18Bに対して区切られた状態となる。また、廃液槽7は、排出流路13A、13Bに対して遮蔽され、排出流路13Cを介して循環流路10の第3定量区画18Cに開放されて接続される。さらに、インレット29Cは、貫通部39Cおよび導入流路12Cを介して循環流路10の第3定量区画18Cに開放されて接続される。
【0070】
この状態で、タンク吸引孔から廃液槽7内を負圧吸引することにより、インレット29Cに収容された溶液LCが貫通部39C、導入流路12C、循環流路10の第3定量区画18C、排出流路13Cおよび廃液槽7に順次導入される。溶液LCについても、溶液LCが廃液槽7まで導入される各流路に残留している異物は、溶液導入時に溶液LCの導入先端側に巻き込まれ廃液槽7に流入されるため、循環流路10に異物が残留する可能性を抑制できる。
【0071】
そして、溶液LCの導入先端側が廃液槽7に流入し、導入後端側が導入流路12Cに残っている状態で廃液バルブOCおよび導入バルブICを閉じる。これにより、溶液LCを第3定量区画18Cの容積に応じて定量することができる。上述したように、異物が存在している可能性がある導入先端側の溶液LCは廃液槽7に排出され、また、気泡についてはインレット29Cに残留した状態であるため、循環流路10の第3定量区画18Cには異物や気泡が混入していない溶液LCが定量される。
【0072】
循環流路10に溶液LA、LB、LCが定量されて導入された後、ポンプを用いて循環流路10内の溶液LA、LB、LCを送液して循環させる。循環流路10を循環する溶液LA、LB、LCは、流路内の流路壁面と溶液の相互作用(摩擦)により、壁面周辺の流速は遅く、流路中央の流速は速くなる。その結果、溶液LA、LB、LCの流速に分布ができるため、溶液の混合が促進される。例えば、ポンプを駆動させることによって、循環流路10内の溶液LA、LB、LCには、対流が生じ、複数の溶液LA、LB、LCの混合が促進される。ポンプとしては、バルブの開閉により溶液の送液が可能なポンプバルブであってもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の流体デバイス100Aの製造方法では、互いに異材質で構成されている上板6とバルブ部50とを、第1金型M1および第2金型M2とを用いた二色成形により熱融着して一体化(互いに固定)しているため、可撓性を有するシート材を貼り付ける場合のように手間と時間が掛かることなく、また、所望の流路開閉に支障を来すことなく上板6とバルブ部50とを一体化することができる。また、本実施形態の流体デバイス100Aの製造方法では、窪み60の周囲に設けたエネルギーダイレクター部e1を介して上板6と基板9とを超音波溶着にて接合しているため、樹脂の溶け出し位置が均一化され、均一、且つ安定した溶着強度で上板6および基板9を接合して一体化することができる。また、本実施形態の流体デバイス100Aの製造方法では、窪み60が形成された基板9にエネルギーダイレクター部e1を設けているため、窪み60とエネルギーダイレクター部e1とを同一工程にて形成してすることができ、窪み60とエネルギーダイレクター部e1との相対位置関係を高精度に保持できる。
【0074】
[バルブの第2実施形態]
図14は、バルブの第2実施形態としての導入バルブIAの構成を示す断面図である。なお、上述した他のバルブ(例、導入バルブIB、IC、定量バルブVA、VB、VCおよび廃液バルブOA、OB、OC)の構成は、本実施形態の導入バルブIAの構成と同じであってもよい。
図14において、
図4に示すバルブの第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図14に示す被バルブ駆動部70は、バルブ部50と同様の軟質材で形成されており、バルブ部(変形部)71、シール部(延出部)72および筒部(接続部)73を備えている。バルブ部71、シール部72および筒部73を備える被バルブ駆動部70は、同一材質(単一材質)で一体的に単一の部材として構成されている。バルブ部71は、開口部52における上板6の下面6a側を閉塞する。例えば、フランジ状に形成されたシール部72は、バルブ部71と単一の部材として一体的、且つ、同時(詳細は後述)に形成されており、開口部52を覆うように形成され、上板6の上面6b上を開口部52から離れる方向(例、径方向)に延出し(張り出し)ている。筒部73は、開口部52の内周面に沿って設けられ、上端においてシール部72と一体的に接続され、下端においてバルブ部71に一体的に接続されている。筒部73の内部空間は下端がバルブ部71によって閉塞され、上端が開口する開口部70aを形成している。シール部72は、開口部70aの周囲を囲む枠状に形成されている。シール部72の、例えば一方の面は、上述したバルブ駆動部15(例、バルブ駆動部15の平面部)が当接して密着する当接部172を有している。バルブ駆動部15が当接部172に当接することにより開口部70aは気密にシールされる。シール部72は、バルブ駆動部15が当接部172に当接したときに開口部70aを気密に封止するシール領域SAを構成している。また、例えば、筒部73は、中空や空間(例、バルブ部71の動作空間)を有する形状、円形の筒状、多角形の筒状などの形状を含む。
【0076】
次に、
図16から
図19を参照して、上板6と被バルブ駆動部70とを第1金型M1と第2金型M2とを用いて二色成形して一体化する方法(成形方法)について説明する。
図16から
図19において、
図5から
図8に示した、上板6とバルブ部50とを二色成形する際の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。また、上板6および被バルブ駆動部70を成形する際に用いる金型についても型開閉方向は水平方向または鉛直方向のいずれでもよいが、本実施形態は、一例として、型開閉方向を鉛直方向として説明する。また、ここでは、上板6のうち、被バルブ駆動部70が設けられる箇所について図示、記載する。
【0077】
図16は、上板6と被バルブ駆動部70とを二色成形するための第1金型M1および第2金型M2の概略構成を示す断面図である。第1金型M1の固定型M11は、上板6の上面6bを形成する面6bMおよび上板6の開口部52を形成する突部52Mを有している。突部52Mの突出量は、上板6の厚さに対応する値に設定されている。可動型M12は、上板6の上面6bおよび開口部52以外の大部分の部位を成形するキャビティ(内部空間)6Mを有している。キャビティ6Mの深さは、上板6の厚さに対応する値に設定されている。
【0078】
固定型M21は、被バルブ駆動部70のシール部72の形状および厚さに対応する形状および深さの窪み72Mと、被バルブ駆動部70の開口部70aの形状および深さに対応する形状および突出量に形成された突部70aMとを有している。可動型M22は、可動型M12と同一の形状に形成されている。
【0079】
次に、第1金型M1および第2金型M2を用いて上板6および被バルブ駆動部(例、第2の成形部)70を成形する手順について説明する。
【0080】
まず、
図17に示すように、第1の型締め状態において、第1金型M1の内部に上板6を成形するための硬質材の溶融樹脂を1次側射出部IJ1からキャビティ6Mに充填する。なお、一回目の成形については、第2金型M2の内部に成形された成形品がないため、2次側射出部IJ2から溶融樹脂の射出は行われない。第1金型M1に充填された溶融樹脂を冷却することにより、上板6が成形される。第1金型M1により上板6が成形されると、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、反転機RVによって第1金型M1における可動型M12の位置と第1金型M2における可動型M22の位置とを反転させる。
【0081】
図18には、可動型M12の位置と可動型M22の位置とが反転した後に型締めされた状態(第2の型締め状態)の第1金型M1および第2金型M2が示されている。
図18に示すように、第2金型M2の内部には、第1金型M1で成形された上板6が設置されている。第2金型M2においては、第1金型M1で成形された上板6と、固定型M21の窪み72Mおよび突部70aMと、可動型M22の面6aMとにより、被バルブ駆動部70と同一形状のキャビティ(内部空間)70Mが形成されている。つまり、成形された上板6は、キャビティ(内部空間)70Mを形成する構成部材の一部である。
【0082】
次に、
図19に示すように、1次側射出部IJ1から第1金型M1のキャビティ6Mに硬質材の溶融樹脂を充填し、2次側射出部IJ2から第2金型M2のキャビティ70Mに軟質材の溶融樹脂を充填する。この後、溶融樹脂を冷却することにより、第1金型M1では上板6が成形され、第2金型M2では、上板6と熱融着して一体化された被バルブ駆動部70が成形される。例えば、第2金型M2では、バルブ部71、シール部72および筒部73が同時に成形される。この後、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、第2金型M2においては成形品を離型させることにより、互いに異材質で成形されて一体化(互いに固定)された上板6および被バルブ駆動部70が得られる。
【0083】
上記構成の被バルブ駆動部70においては、バルブ部71の変形によって流路(例、窪み40A)の開閉状態を制御する。例えば、シール部72との接触により開口部70aを気密に封止したバルブ駆動部15が開口部70aを介して陽圧を付与することにより、バルブ部71が窪み40A側に撓んで接触することにより流路(例、窪み40A)を閉塞する(バルブが閉じた状態)。また、被バルブ駆動部70は、バルブ駆動部15による陽圧の付与を解除することによりバルブ部71の撓みが解消されて窪み40Aから離れることで流路(例、窪み40A)が開放される(バルブが開いた状態)。
【0084】
従って、被バルブ駆動部70は、上記第1実施形態のバルブ部50と同様の作用・効果が得られることに加えて、シール部72によって開口部70aを気密に封止するためのシール領域SAが形成されるため、別途シール部材を設ける必要がなくなり、デバイス製造工程の簡素化、短時間化を図ることができる。例えば 、流体デバイスがシール部72を備える構成の場合、本実施形態における流体デバイスは、バルブ駆動部15などを備える装置側に設けられる流体デバイス用のシール部材を使う必要性が低くなり、流体デバイスの流路などへの異物の混入をより低減することができる。なお、本実施形態における流体デバイスは、シール部72に加えて、シール部材(例、O−リング)を配置するための溝部を設ける構成としてもよい。
【0085】
なお、被バルブ駆動部70としては、
図15に示すように、シール部72の上面における開口部52よりも外側の位置に、開口部70aを全周で(周方向に環状に)囲んで上側に突出するリブ状の突部72Aを設ける構成としてもよい。例えば、この構成を採ることにより、突部72Aの先端部で構成される当接部172におけるバルブ駆動部15との接触面積を小さくすることができ、開口部7aを気密にシールするための接触圧を小さくすることができる。第1金型M1および第2金型を用いて突部72Aを有する被バルブ駆動部70を成形する際には、窪み72Mに突部72Aの形状、突出量に対応した形状および深さを有する窪みを形成すればよい。
【0086】
[バルブの第3実施形態]
図20は、バルブの第3実施形態としての導入バルブIAの構成を示す断面図である。なお、上述した他のバルブ(例、導入バルブIB、IC、定量バルブVA、VB、VCおよび廃液バルブOA、OB、OC)の構成は、本実施形態の導入バルブIAの構成と同じであってもよい。
図20において、
図14に示すバルブの第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図20に示すように、基板9は、下面(一面)9aに形成された窪み(例、流路)40Aと、窪み40Aの底部(例、
図20の窪み40Aの上側)および基板9の上面(他面)9bに開口(貫通)する開口部52とを有している。開口部52には、被バルブ駆動部170が設けられている。被バルブ駆動部170は、上述のバルブ部50と同様の軟質材で形成されており、バルブ部(変形部)171、および筒部(接続部)173を備えている。バルブ部171は、開口部52における基板9の下面9a側を閉塞する。例えば、筒部173は、バルブ部171と単一部材で構成され、開口部52の内周面に沿って設けられ、下端においてバルブ部171に一体的に接続されている。筒部173の内部空間は下端がバルブ部171によって閉塞され、上端が開口する開口部170aを形成している。例えば、
図20における窪み40Aが流路の場合、図面の左側から右側へ流体(例、試料物質を含む溶液、洗浄液等)が流れるように構成される。
【0088】
基板9の下面9aは、下板8の上面8bと接合されている。上面8bには、窪み40Aと対向する位置に曲面状(例、半球状)の凹面180が形成されている。
【0089】
上記構成の被バルブ駆動部170は、例えば、開口部170aを介してバルブ部171に下側への力(例、空圧、液圧、機械的な力など)が加わったときに、バルブ部171の変形によって流路(例、窪み40A)の開閉状態を制御する。一例として、
図21に示すように、バルブ部171が窪み40A側に変形して撓んで凹面180に接触することにより流路(例、窪み40A)を閉塞する(バルブが閉じた状態)。また、被バルブ駆動部170は、バルブ部171に下側への力が加わることが解除されることによりバルブ部171の変形(例、撓み)が解消されて凹面180から離れることで流路(例、窪み40A)が開放される(バルブが開いた状態)。
【0090】
次に、
図22から
図27を参照して、窪み40A(例、流路)を含む基板9と被バルブ駆動部170とを第1金型M1と第2金型M2とを用いて二色成形して一体化する方法(成形方法)について説明する。これらの図において、
図16から
図19に示した、上板6と被バルブ駆動部70とを二色成形する際の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。また、基板9と被バルブ駆動部170とを成形する際に用いる金型についても型の開閉方向は水平方向または鉛直方向のいずれでもよいが、本実施形態は、一例として、型の開閉方向を鉛直方向として説明する。また、ここでは、基板9のうち、被バルブ駆動部170が設けられる箇所について図示、記載する。
【0091】
図22から
図24は、基板9と被バルブ駆動部170とを二色成形するための第1金型M1の概略構成を示す断面図である。第1金型M1の固定型M11は、基板9の上面9bを形成する面9bMおよび基板9の開口部52を形成する突部52Mを有している。突部52Mの突出量は、基板9における窪み40Aの底部から上面9bまでの距離に対応する値に設定されている。可動型M12は、窪み40Aを形成する突部40AMと、基板9の上面9bおよび開口部52以外の大部分の部位を成形するキャビティ(内部空間)9Mとを有している。キャビティ9Mの深さは、基板9の厚さに対応する値に設定されている。
【0092】
図25および
図26は、基板9と被バルブ駆動部170とを二色成形するための第2金型M2の概略構成を示す断面図である。第2金型M2の固定型M21は、被バルブ駆動部170の開口部170aの形状および深さに対応する形状および突出量に形成された突部170aMを有している。可動型M22は、可動型M12と同一の形状に形成されている。
【0093】
次に、第1金型M1および第2金型M2を用いて基板9および被バルブ駆動部(例、第2の成形部)170を成形する手順について説明する。
【0094】
まず、
図23に示すように、第1の型締め状態において、例えば、第1金型M1の内部に基板9を成形するための硬質材の溶融樹脂を1次側射出部IJ1からキャビティ9Mに充填する。なお、一回目の成形については、第2金型M2の内部に成形された成形品がないため、2次側射出部IJ2から溶融樹脂の射出は行われない。第1金型M1に充填された溶融樹脂を冷却することにより、基板9が成形される。そして、例えば、第1金型M1により基板9が成形された後、第1金型M1および第2金型M2を型開きする。第1金型M1においては、固定型M11が可動型M12から離れることにより、
図24に示すように、可動型M12に保持された基板9の開口部52が露出する。この後、反転機RV(
図22から
図26では不図示)によって第1金型M1における可動型M12の位置(例、第1位置)と第1金型M2における可動型M22の位置(例、第2位置)とを反転させる。
【0095】
図25には、可動型M12の位置と可動型M22の位置とが反転した後に型締めされた状態(第2の型締め状態)の第2金型M2が示されている。
図25に示すように、第2金型M2の内部には、第1金型M1で成形された基板9が設置されている。第2金型M2においては、第1金型M1で成形された基板9と、固定型M21の突部170aMと、可動型M22の面40AMとにより、被バルブ駆動部170と同一形状のキャビティ(内部空間)170Mが形成されている。例えば、成形された基板9は、キャビティ(内部空間)170Mを形成する構成部材の一部である。
【0096】
次に、第2金型M2において、
図26に示すように、2次側射出部IJ2からキャビティ170Mに軟質材の溶融樹脂を充填する。この後、溶融樹脂を冷却することにより、第2金型M2では、基板9と熱融着して一体化された被バルブ駆動部170が成形される。例えば、第2金型M2では、バルブ部171および筒部173が同時に成形される。なお、第2金型M2における被バルブ駆動部170の成形と一体的に同時に、第1金型M1においては、上述した基板9の成形が行われる。この後、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、第2金型M2においては成形品を離型させることにより、
図27に示すように、互いに異材質で成形されて一体化(互いに固定)された基板9および被バルブ駆動部170が得られる。
【0097】
なお、第3実施形態のバルブとして、バルブ部171および筒部173を備えた被バルブ駆動部170を例示したが、
図14に示した被バルブ駆動部70と同様に、被バルブ駆動部170は、更にシール部172Aを備える構成でもよい。例えば、
図28に示すように、被バルブ駆動部170は、筒部173の上端に接続され、バルブ部171と単一の部材として一体的、且つ、同時に、開口部52を覆うように形成され、基板9の上面9b上を開口部52から離れる方向(例、径方向)に延出する(張り出す)シール部172Aを備える構成であってもよい。
【0098】
[バルブの第4実施形態]
図29は、バルブの第4実施形態としての導入バルブIAの構成を示す断面図である。なお、上述した他のバルブ(例、導入バルブIB、IC、定量バルブVA、VB、VCおよび廃液バルブOA、OB、OC)の構成は、本実施形態の導入バルブIAの構成と同じであってもよい。
図29において、
図20に示すバルブの第3実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
図29に示すように、基板9の開口部52には、被バルブ駆動部270が設けられている。被バルブ駆動部270は、バルブ部50と同様の軟質材で形成されており、バルブ部(変形部)271および支持部272を備えている。支持部272は、下面272aおよび上面272bを有し、薄膜状に形成されている。支持部272の下面272aは、流路(例、窪み40A)の底部と略面一に形成されている。支持部272は、バルブ部271の外周を支持し、バルブ部271と開口部52の内周面の下端とを接続している。バルブ部271および支持部272によって、開口部52は、下端側が閉塞されている。例えば、バルブ部271は、下面271aおよび上面271bを有し、断面視楕円状に形成されている。バルブ部271は、
図30に示すように、支持部272が変形することにより下方に移動したときに、下面271aが下板8の凹面180と嵌り合う。
【0100】
上記構成の被バルブ駆動部270は、例えば、開口部52を介してバルブ部271に下側への力(例、空圧、液圧、機械的な力など)が加わったときに、支持部272の変形によって流路(例、窪み40A)の開閉状態を制御する。一例として、
図30に示すように、バルブ部271が窪み40A側に移動して下面271aが凹面180に接触することにより流路(例、窪み40A)を閉塞する(バルブが閉じた状態)。また、被バルブ駆動部270は、バルブ部271に下側への力が加わることが解除されることにより支持部272の撓みが解消されて下面271aが凹面180から離れることで流路(例、窪み40A)が開放される(バルブが開いた状態)。
【0101】
次に、
図31から
図36を参照して、基板9と被バルブ駆動部270とを第1金型M1と第2金型M2とを用いて二色成形して一体化する方法(成形方法)について説明する。
図31から
図36において、
図22から
図27に示した、基板9と被バルブ駆動部170とを二色成形する際の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。また、基板9と被バルブ駆動部270を成形する際に用いる金型についても型開閉方向は水平方向または鉛直方向のいずれでもよいが、本実施形態は、一例として、型開閉方向を鉛直方向として説明する。また、ここでは、基板9のうち、被バルブ駆動部270が設けられる箇所について図示、記載する。
【0102】
図31から
図33は、基板9と被バルブ駆動部270とを二色成形するための第1金型M1の概略構成を示す断面図である。第1金型M1の固定型M11は、基板9の上面9bを形成する面9bMおよび基板9の開口部52を形成する突部52Mを有している。突部52Mの先端(下端)には、平坦面52aMと曲面52bMとが形成されている。平坦面52aの突出量は、基板9における窪み40Aの底部から上面9bまでの距離に対応する値に設定されている。曲面52bMの形状および位置は、バルブ部271の下面271aと対応する形状および位置に設定されている。
【0103】
可動型M12は、窪み40Aを形成する突部40AMと、基板9の上面9bおよび開口部52以外の大部分の部位を成形するキャビティ(内部空間)9Mとを有している。突部40AMには、バルブ部271の下面271aと対応する形状および位置に凹面271aMが形成されている。
【0104】
図34および
図35は、基板9と被バルブ駆動部270とを二色成形するための第2金型M2の概略構成を示す断面図である。第2金型M2の固定型M21は、型閉め時に基板9の開口部52に挿入され支持部272の上面272bを形成する突部272Mを有している。突部272Mの先端面(下面)には、バルブ部271の上面271bを形成する凹面271bMが形成されている。可動型M22は、上述の可動型M12と同一の形状に形成されている。
【0105】
次に、第1金型M1および第2金型M2を用いて基板9および被バルブ駆動部(例、第2の成形部)170を成形する手順について説明する。
【0106】
まず、
図32に示すように、第1の型締め状態において、第1金型M1の内部に基板9を成形するための硬質材の溶融樹脂を1次側射出部IJ1からキャビティ9Mに充填する。なお、一回目の成形については、第2金型M2の内部に成形された成形品がないため、2次側射出部IJ2から溶融樹脂の射出は行われない。第1金型M1に充填された溶融樹脂を冷却することにより、基板9が成形される。第1金型M1により基板9が成形されると、第1金型M1および第2金型M2を型開きする。第1金型M1においては、固定型M11が可動型M12から離れることにより、
図33に示すように、可動型M12に保持された基板9の開口部52が露出する。この後、反転機RV(
図31から
図35では不図示)によって第1金型M1における可動型M12の位置(例、第1位置)と第1金型M2における可動型M22の位置(例、第2位置)とを反転させる。
【0107】
図34には、可動型M12の位置と可動型M22の位置とが反転した後に型締めされた状態(第2の型締め状態)の第2金型M2が示されている。
図34に示すように、第2金型M2の内部には、第1金型M1で成形された基板9が設置されている。第2金型M2においては、第1金型M1で成形された基板9の開口部52と、固定型M21の突部272Mおよび凹面271bMと、可動型M22の面40AMおよび凹面271aMとにより、被バルブ駆動部270と同一形状のキャビティ(内部空間)270Mが形成されている。例えば、成形された基板9は、キャビティ(内部空間)270Mを形成する構成部材の一部である。
【0108】
次に、第2金型M2において、
図35に示すように、2次側射出部IJ2からキャビティ270Mに軟質材の溶融樹脂を充填する。この後、溶融樹脂を冷却することにより、第2金型M2では、基板9と熱融着して一体化された被バルブ駆動部270が成形される。例えば、第2金型M2では、バルブ部271および支持部272が一体的に同時に成形される。なお、第2金型M2における被バルブ駆動部270の成形と同時に、第1金型M1においては、上述した基板9の成形が行われる。この後、第1金型M1および第2金型M2を型開きし、第2金型M2においては成形品を離型させることにより、
図36に示すように、互いに異材質で成形されて一体化(互いに固定)された基板9および被バルブ駆動部270が得られる。
【0109】
本実施形態の被バルブ駆動部270は、質量が大きく、
図30に示したように、バルブ部271の下面271aが凹面180に接触することにより流路(例、窪み40A)を閉塞したとき(バルブが閉じた状態)の慣性力が大きいため、流路を流動する流体圧によって流路の閉塞が解除されてしまうことを抑制できる。
【0110】
なお、第4実施形態のバルブとして、バルブ部271および支持部272を備えた被バルブ駆動部270を例示したが、
図14に示した被バルブ駆動部70と同様に、被バルブ駆動部270は、シール部273を備える構成でもよい。例えば、被バルブ駆動部270は、
図37に示すように、下端において支持部272に接続する筒部274を開口部52の内周面に沿って設け、当該筒部274の上端に接続され、バルブ部171と単一の部材として一体的、且つ、同時に、開口部52を覆うように形成され、基板9の上面9b上を開口部52から離れる方向(例、径方向)に延出する(張り出す)シール部273を備える構成としてもよい。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更及び組み合わせは可能である。
【0112】
例えば、上記実施形態におけるバルブ駆動部15は、空圧によりバルブ部50、70を変形させてバルブを開閉する構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、モータ等の機械式駆動(例、アクチュエータ)によりバルブ部50、被バルブ駆動部70を変形させる構成であってもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、上板6に形成した窪み51に収容される構成のバルブ部50を例示したが、例えば、
図38に示すように、外周面が上板6の開口部52に保持される構成のバルブ部50Aを用いる構成であってもよい。バルブ部50Aを用いた場合は、バルブ部50を用いた場合と同様の作用・効果が得られることに加えて、上板6に窪み51を形成する手間を省けるとともに、バルブ部50Aの体積が減り材料使用量を低減することができる。また、
図39に示すように、開口部52の下端部を閉塞するバルブ部71Aと、閉塞部の周縁から上側に延び開口部52に外周面が保持される筒部73Aとを有する被バルブ駆動部70Aを用いる構成であってもよい。バルブ部71Aは、筒部73Aよりも薄く形成されている。被バルブ駆動部70Aを用いた場合は、バルブ部50Aを用いた場合と比較して、より強固に上板6と一体化することが可能となる。
【0114】
また、上記実施形態では、第1金型M1で上板を成形し、第2金型M2でバルブ部50、70を成形する手順を例示したが、バルブ部50、70を第1金型M1で成形し、上板を第2金型M2で成形する手順としてもよい。また、例えば、上記実施形態における第1金型M1及び第2金型M2は、二色成形に用いる流体デバイスの金型であり、流体デバイス100Aの第1の成形部(例、バルブ部50、被バルブ駆動部70、上板6)を成形するための第1金型M1と、該第1の成形部とは異なり第1の成形部の少なくとも一部に一体的に形成される流体デバイス100Aの第2の成形部(例、バルブ部50、被バルブ駆動部70、上板6)を成形するための第2金型M2と、を備える金型である。
【0115】
また、上記実施形態では、異材質として2種類の材質(硬質材と軟質材)の樹脂材を用いて二色成形する構成を例示したが、例えば、互いに同材質で複数色(例、同じ材質で互いに異なる2色)で一体的に構成される成形品を成形してもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、上板6とバルブ部50(または被バルブ駆動部70)とを二色成形する構成を例示したが、循環流路10、導入流路12A、12B、12C、排出流路13A、13B、13C等と対向する位置にバルブ部50(または被バルブ駆動部70)を設けるように、基板9とバルブ部50(または被バルブ駆動部70)とを二色成形する構成としてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、インレット29A、29B、29Cおよび貫通部39A、39B、39Cを基板9に設ける構成を例示したが、上板6に設ける構成であってもよい。この構成を採る場合には、上板6の下面6aにおける導入流路12A、12B、12Cと対向する位置にそれぞれ貫通部39A、39B、39Cを配置し、当該貫通部39A、39B、39Cとそれぞれ接続されるインレット29A、29B、29Cを上板6の上面6bに開口させて形成すればよい。インレット29A、29B、29Cを上板6の上面6bに開口させる場合には、上板6の上面6b側をシールして各インレット29A、29B、29Cの開口部を密封している状態で溶液LA、LB、LCの混合・反応が行われる場所(例、検査機関、病院、自宅、車両など)まで流通させることが可能である。
【0118】
また、上記実施形態では、可動型M12および可動型M22が、固定型M21および固定型M22に対して一回の成形処理毎に1次側射出部IJ1および第1金型M1を用いて成形を行う第1位置と、2次側射出部IJ2および第2金型M2を用いて成形を行う第2位置とを反転して相対移動する構成を例示したが、この構成の他に、固定型M21および固定型M22が可動型M12および可動型M22に対して、一回の成形処理毎に第1位置と第2位置とを反転して相対移動する構成であってもよい。