(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鞘を構成する重合体が、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位(C)としてメチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート由来の繰り返し単位(A)を15〜60質量%、式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(B)を20〜70質量%、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)を10〜30質量%、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を0.1〜10質量%含む、請求項2に記載の光ファイバ。
鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート由来の繰り返し単位(A)を10〜50質量%、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)を40〜80質量%、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を0.1〜10質量%含む、請求項1に記載の光ファイバ。
鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を1.5質量%以上含む、請求項3又は4に記載の光ファイバ。
芯を構成する材料が、メチルメタクリレート単独重合体、又はメチルメタクリレート由来の繰り返し単位を50質量%以上含む共重合体である、請求項1から10のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案されるプラスチック光ファイバは、耐熱性が改善されるものの、更なる改善が望まれる。また、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレートの原料の製造過程で、第一種特定化学物質であるパーフルオロオクタンスルホン酸や第二種監視物質であるパーフルオロオクタン酸等、規制物質が副反応等で生成する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れ、安全性が高い光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[17]である。
【0008】
[1]芯と、芯の外周に少なくとも1層の鞘とを有する光ファイバであって、
鞘が、下記式(1)又は下記式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(A)を含む重合体を含む、光ファイバ。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、mは1又は2、nは5〜7の整数、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【0011】
【化2】
【0012】
(式(2)中、mは1又は2、nは5〜8の整数、Rは水素原子又はメチル基を示す。)。
【0013】
[2]式(1)又は式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートが、式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートである、[1]に記載の光ファイバ。
【0014】
[3]式(1)又は式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートが、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートである、[1]に記載の光ファイバ。
【0015】
[4]鞘を構成する重合体が、更に下記式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(B)を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0016】
【化3】
【0017】
(式(3)中、pは1又は2、qは1〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Xは水素原子又はフッ素原子を示す。)。
【0018】
[5]鞘を構成する重合体が、更にフッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0019】
[6]鞘を構成する重合体が、更に親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0020】
[7]鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、式(1)又は式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(A)を15〜60質量%、式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(B)を20〜70質量%、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)を10〜30質量%、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を0.1〜10質量%含む、[4]に記載の光ファイバ。
【0021】
[8]鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、式(1)又は式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(A)を10〜50質量%、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)を40〜80質量%、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を0.1〜10質量%含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0022】
[9]鞘を構成する重合体が、鞘を構成する重合体100質量%中、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)を1.5質量%以上含む、[6]に記載の光ファイバ。
【0023】
[10]鞘を構成する重合体のガラス転移温度Tg(℃)と鞘を構成する重合体の屈折率nとが下記式(4)を満たす、[1]〜[9]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0024】
Tg≧375×n−455 (4)。
【0025】
[11]1層のみ鞘を有する、[1]〜[10]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0026】
[12]2層以上の鞘を有する、[1]〜[10]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0027】
[13]単数の芯を有する、[1]〜[12]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0028】
[14]複数の芯を有する、[1]〜[12]のいずれかに記載の光ファイバ。
【0029】
[15][1]〜[14]のいずれかに記載の光ファイバと、光ファイバの外周に被覆層とを有する、光ファイバケーブル。
【0030】
[16]被覆層が、ポリオレフィン樹脂又は塩素化ポリオレフィン樹脂を50質量%以上含む、[15]に記載の光ファイバケーブル。
【0031】
[17][1]〜[14]のいずれかに記載の光ファイバを含む、通信機器。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、耐熱性に優れ、安全性が高い光ファイバを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[光ファイバ]
本発明の光ファイバは、芯と、芯の外周に少なくとも1層の鞘とを有する。光ファイバの種類としては、例えば、ステップ・インデックス型光ファイバ、マルチステップ・インデックス型光ファイバ、グレーテッド・インデックス型光ファイバ、多芯光ファイバ等が挙げられる。これらの光ファイバの種類の中でも、耐熱性に優れることから、ステップ・インデックス型光ファイバ、多芯光ファイバが好ましく、より長距離の通信を可能とすることから、ステップ・インデックス型光ファイバがより好ましい。
【0035】
ステップ・インデックス型光ファイバは、芯と鞘との界面で光を全反射させ、芯内で光を伝播させる。ステップ・インデックス型光ファイバとしては、例えば、
図1(a)に示すような芯11と芯11の外周に1層の鞘12を有するステップ・インデックス型光ファイバ、
図1(b)に示すような芯11と芯11の外周に2層の鞘12a、鞘12bを有するステップ・インデックス型光ファイバ等が挙げられる。鞘は1層でもよく、2層以上でもよい。
【0036】
多芯光ファイバは、芯と鞘との界面で光を全反射させ、複数の芯内で光を伝播させる。多芯光ファイバとしては、例えば、
図2(a)に示すような複数の芯11を1つの鞘(海部)12cで取り囲んで一纏めにした多芯光ファイバ、
図2(b)に示すような複数の芯11のそれぞれが外周に鞘12を有し、更に1つの鞘(海部)12cで取り囲んで一纏めにした多芯光ファイバ等が挙げられる。芯は単数でも複数でもよい。
【0037】
(芯)
芯を構成する材料(以下、「芯材」という。)は、透明性の高い材料であれば特に限定されず、使用目的等に応じて適宜選択することができる。透明性の高い材料としては、例えば、ガラス;アクリル樹脂、スチレン樹脂、カーボネート樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの透明性の高い材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの透明性の高い材料の中でも、柔軟性に優れることから、樹脂が好ましく、より長距離の通信を可能とすることから、アクリル樹脂がより好ましい。
【0038】
アクリル樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート単独重合体(PMMA)、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を50質量%以上含む共重合体等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのアクリル樹脂の中でも、光学性能、機械強度、耐熱性、透明性に優れることから、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を50質量%以上含む共重合体が好ましく、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を60質量%以上含む共重合体がより好ましく、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を70質量%以上含む共重合体が更に好ましく、メチルメタクリレート単独重合体が特に好ましい。尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。
【0039】
芯材の製造方法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等が挙げられる。これらの芯材の製造方法の中でも、不純物の混入を抑制できることから、塊状重合法、溶液重合法が好ましい。
【0040】
(鞘)
鞘は、芯の外周に少なくとも1層形成される。鞘を構成する材料(以下、「鞘材」という。)は、下記式(1)又は下記式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(A)(以下、「単量体単位(A)」という。)を含む重合体(以下、「重合体」という。)を含む。鞘材は、前記重合体からなってもよい。
【0042】
(式(1)中、mは1又は2、nは5〜7の整数、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【0044】
(式中、mは1又は2、nは5〜8の整数、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
単量体単位(A)を構成するための単量体は、上記式(1)又は上記式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートである。上記式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘプチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記式(2)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体単位(A)を構成するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体単位(A)を構成するための単量体の中でも、単量体の製造が容易であることから、上記式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、コストが低く、光ファイバの耐熱性、機械特性に優れることから、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートが更に好ましい。
【0045】
重合体は、単量体単位(A)以外にも、更に下記式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(B)(以下、「単量体単位(B)」という。)を含むことが、光ファイバの耐熱性、機械特性の観点から好ましい。
【0047】
(式(3)中、pは1又は2、qは1〜4の整数、Rは水素原子又はメチル基、Xは水素原子又はフッ素原子を示す。)
単量体単位(B)を構成するための単量体は、上記式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートである。上記式(3)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体単位(B)を構成するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体単位(B)を構成するための単量体の中でも、単量体の製造が容易であることから、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートが好ましく、コストが低く、光ファイバの耐熱性、機械特性に優れることから、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレートがより好ましく、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレートが更に好ましい。
【0048】
重合体は、単量体単位(A)以外にも、更にフッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートの由来の繰り返し単位(C)(以下、「単量体単位(C)」という。)を含むことが、重合反応性、製造コスト、光ファイバの耐熱性、機械特性の観点から好ましい。
【0049】
単量体単位(C)を構成するための単量体は、フッ素原子を含まないアルキル(メタ)アクリレートであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体単位(C)を構成するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体単位(C)を構成するための単量体の中でも、単量体の製造が容易で、コストが低く、重合反応性に優れ、光ファイバの耐熱性、機械特性に優れることから、メチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルメタクリレートがより好ましい。
【0050】
重合体は、単量体単位(A)以外にも、親水性の単量体の由来の繰り返し単位(D)(以下、「単量体単位(D)」という。)を含むことが、芯と鞘との密着性、光ファイバの耐熱性の観点から好ましい。ここで、親水性の単量体の「親水性」とは、水との親和性が大きいことを示す。親水性の単量体は、カルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を有することが好ましい。尚、単量体単位(C)は、親水性の単量体の単位(D)以外とする。
【0051】
単量体単位(D)を構成するための単量体は、親水性の単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体単位(D)を構成するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単量体単位(D)を構成するための単量体の中でも、芯と鞘の密着性に優れ、光ファイバの耐熱性に優れることから、(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0052】
重合体は、単量体単位(A)以外にも、必要に応じて、単量体単位(A)〜(D)以外の他の単量体由来の繰り返し単位(E)(以下、「単量体単位(E)」という。)を含んでもよい。
【0053】
単量体単位(E)を構成するための単量体は、単量体単位(A)を構成するための単量体、必要に応じて、単量体単位(B)を構成するための単量体、単量体単位(C)を構成するための単量体、単量体単位(D)を構成するための単量体と共重合可能であればよい。但し、単量体単位(E)を構成するための単量体として、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートは除く。
【0054】
単量体単位(E)を構成するための単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン等のオレフィン類;フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフッ素オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類等が挙げられる。これらの単量体単位(E)を構成するための単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
重合体に含まれる各単位の組成は、芯材の種類や所望の光ファイバの特性に応じて、適宜設定すればよい。
【0056】
重合体が単量体単位(A)、単量体単位(B)、単量体単位(C)及び単量体単位(D)を含む場合、重合体は、芯と鞘の密着性に優れ、光ファイバの耐熱性、機械特性に優れることから、重合体100質量%中、単量体単位(A)を15〜60質量%、単量体単位(B)を20〜70質量%、単量体単位(C)を10〜30質量%、単量体単位(D)を0.1〜10質量%含むことが好ましく、単量体単位(A)を25〜50質量%、単量体単位(B)を30〜55質量%、単量体単位(C)を15〜25質量%、単量体単位(D)を0.1〜5質量%含むことがより好ましい。
【0057】
重合体が単量体単位(A)、単量体単位(C)及び単量体単位(D)を含む場合、重合体は、光ファイバの耐熱性、伝送帯域に優れることから、重合体100質量%中、単量体単位(A)を10〜50質量%、単量体単位(C)を40〜80質量%、単量体単位(D)を0.1〜10質量%含むことが好ましく、単量体単位(A)を15〜40質量%、単量体単位(C)を60〜80質量%、単量体単位(D)を0.1〜5質量%含むことがより好ましい。
【0058】
重合体が単量体単位(D)を含む場合、重合体は、芯と鞘との密着性、光ファイバの耐熱性に優れることから、重合体100質量%中、単量体単位(D)を1.5質量%以上含むことが好ましく、1.6質量%以上含むことがより好ましい。また、この場合、重合体は、単量体単位(D)を5質量%以下含むことが好ましい。
【0059】
重合体が単量体単位(E)を含む場合、重合体は、光ファイバ本来の性能を損なわないことから、重合体100質量%中、単量体単位(E)を10質量%以下含むことが好ましく、5質量%以下含むことがより好ましい。尚、重合体は、単量体単位(E)を含まなくてもよい。
【0060】
重合体の質量平均分子量は、30000〜600000が好ましく、50000〜400000がより好ましい。尚、質量平均分子量は、高速液体クロマトグラフにより測定した値とする。
【0061】
重合体が単量体単位(A)以外にも単量体由来の繰り返し単位を含む場合、鞘材は、各単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体を含んでもよく、各単量体由来の繰り返し単位を含む重合体の混合物を含んでもよいが、製造が容易であることから、共重合体を含むことが好ましい。
【0062】
重合体のガラス転移温度Tg(℃)と重合体の屈折率nとは、下記式(4)を満たすことが光ファイバの耐熱性、機械特性の観点から好ましい。尚、重合体のガラス転移温度Tg(℃)と重合体の屈折率nは、後述する方法により測定した値とする。
【0063】
Tg≧375×n−455 (4)
鞘を複数有する光ファイバの場合、単量体単位(A)を含む重合体を含む鞘材は、透明性、柔軟性、耐熱性に優れ、光ファイバの耐熱性、機械特性に優れることから、芯を直接被覆する鞘に用いられることが好ましい。例えば、
図1(b)に示すステップ・インデックス型光ファイバの場合、単量体単位(A)を含む重合体を含む鞘材は、芯11を直接被覆する鞘12aに用いられることが好ましい。また、例えば、
図2(b)に示す多芯光ファイバの場合、単量体単位(A)を含む重合体を含む鞘材は、芯11を直接被覆する鞘12に用いられることが好ましい。
【0064】
鞘を2層有する光ファイバで、1層目(内側の層、
図1(b)の場合鞘12a)が単量体単位(A)を含む重合体を含む鞘材で構成される場合、2層目(外側の層、
図1(b)の場合鞘12b)を構成する鞘材は、1層目の鞘材より屈折率が低ければ特に限定されない。しかし、コストが低く、透明性、柔軟性、耐衝撃性、耐薬品性に優れることから、フッ化ビニリデン(VDF)単独重合体、VDF−トリフルオロエチレン共重合体、VDF−テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、VDF−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VDF−TFE−HFP共重合体、VDF−TFE−HFP−(パーフルオロ)アルキルビニルエーテル共重合体、VDF−ヘキサフルオロアセトン共重合体、VDF−TFE−ヘキサフルオロアセトン共重合体、エチレン−VDF−TFE−HFP共重合体、エチレン−TFE−HFP共重合体が好ましく、VDF−TFE共重合体、VDF−HEP共重合体、VDF−TFE−HFP共重合体、エチレン−VDF−TFE−HFP共重合体、エチレン−TFE−HFP共重合体がより好ましい。
【0065】
(光ファイバの製造方法)
光ファイバの製造方法としては、例えば、溶融紡糸法等が挙げられる。これらの光ファイバの製造方法の中でも、簡便な工程で製造できることから、溶融紡糸法が好ましい。溶融紡糸法によるステップ・インデックス型光ファイバの製造方法は、例えば、芯材及び鞘材をそれぞれ溶融し、複合紡糸を行う方法が挙げられる。
【0066】
光ファイバを温度差の大きい環境で用いる場合、ピストニングを抑制するため、光ファイバをアニール処理することが好ましい。アニール処理の処理条件は、光ファイバの材料によって適宜設定すればよい。アニール処理は連続で行ってもよく、バッチで行ってもよい。
【0067】
(径)
光ファイバの直径は、光ファイバの取り扱い性に優れ、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、0.1〜5mmが好ましく、0.2〜4.5mmがより好ましく、0.3〜4mmが更に好ましい。
【0068】
ステップ・インデックス型光ファイバにおける芯の直径は、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、ステップ・インデックス型光ファイバの直径に対して85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。芯の直径は、ステップ・インデックス型光ファイバの直径に対して99.99%以下とすることが好ましい。
【0069】
ステップ・インデックス型光ファイバにおける鞘の厚さは、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、ステップ・インデックス型光ファイバの直径に対して15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。鞘の厚さは、ステップ・インデックス型光ファイバの直径に対して0.01%以上とすることが好ましい。
【0070】
ステップ・インデックス型光ファイバの鞘を2層とする場合、1層目と2層目とで、厚さの範囲を自由に設定することができる。ステップ・インデックス型光ファイバの鞘を2層とする場合、1層目と2層目の厚さの比(1層目:2層目)は、光ファイバの柔軟性、耐衝撃性、耐薬品性に優れ、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、1:0.1〜1:5が好ましく、1:0.5〜1:4がより好ましく、1:1〜1:3が更に好ましい。
【0071】
(屈折率)
芯材と鞘材の屈折率は、芯材の屈折率より鞘材の屈折率が低ければ特に限定されないが、光が伝播できる最大角度に対する開口数を大きくできることから、芯材の屈折率が1.45〜1.55、鞘材の屈折率が1.35〜1.51が好ましく、芯材の屈折率が1.46〜1.53、鞘材の屈折率が1.37〜1.49がより好ましく、芯材の屈折率が1.47〜1.51、鞘材の屈折率が1.39〜1.47が更に好ましい。尚、屈折率は、25℃でナトリウムD線を用いて測定した値とする。
【0072】
(用途)
本発明の光ファイバは、耐熱性に優れ、安全性が高いことから、例えば、通信機器、照明、装飾、ディスプレイ等に用いることができ、特に、通信機器に好適に用いることができる。
【0073】
[光ファイバケーブル]
本発明の光ファイバケーブルは、本発明の光ファイバと、光ファイバの外周に被覆層とを有する。
【0074】
被覆層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等の塩素樹脂;フッ素樹脂;ウレタン樹脂;スチレン樹脂;ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの被覆層を構成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの被覆層を構成する材料の中でも、光ファイバケーブルの機械特性に優れることから、ポリオレフィン樹脂、塩素樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0075】
被覆層は、1層でもよく、2層以上でもよい。
【0076】
[通信機器]
本発明の通信機器は、本発明の光ファイバを含む。通信機器としては、例えば、FA機器;OA機器;携帯機器;オーディオ;LAN;産業用ロボット;列車内、航空機内、自動車内等の光情報伝送体;センサ等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
(屈折率の測定)
製造例で得られた鞘材の屈折率を、アッベ屈折計(機種名「NAR−3T」、(株)アタゴ製)を用いて、25℃でナトリウムD線により測定した。
【0079】
(ガラス転移温度の測定)
製造例で得られた鞘材のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(機種名「DSC−200」、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。具体的には、鞘材を測定用パンに10mg入れ、昇温温度50℃/分で200℃まで昇温させ、5分間保持して溶融させた。その後、測定用パンをドライアイス上に配置して鞘材を急冷固化させ、昇温温度10℃/分で25℃から200℃まで昇温させ、ショルダー値よりガラス転移温度を求めた。尚、前記ガラス転移温度は光ファイバの耐熱性の指標となる。
【0080】
(伝送損失の測定)
実施例及び比較例で得られた光ファイバ及び光ファイバケーブルの伝送損失(dB/km)を、波長650nm、入射光のNA(開口数)0.1の光を用い、25m−1mのカットバック法により測定した。
【0081】
25m−1mのカットバック法による測定は、IEC 60793−1−40:2001に準拠して行った。具体的には、25mの光ファイバ又は光ファイバケーブルを測定装置にセットし、出力パワーP2を測定した。その後、光ファイバ又は光ファイバケーブルをカットバック長(入射端から1m)に切断し、出力パワーP1を測定した。以下の数式(1)を用いて光の伝送損失を算出した。
【0082】
【数1】
【0083】
(繰返屈曲の測定)
繰返屈曲の測定は、IEC 60794−1:1993に準拠して行った。具体的には、長さ4mの光ファイバケーブルを繰返屈曲装置(恒温槽付き光ファイバ屈曲試験機、(株)安田精機製作所製)に取り付け、一端に荷重500gf(4.9N)をかけ、この光ファイバケーブルの中央を直径15mmの2本の円管にて挟持した。この光ファイバケーブルの他端を一方の円管側に移動させて、光ファイバケーブルが90度折れ曲がるように円管外周に巻き付けた後、他方の円管側に移動させて光ファイバケーブルが90度折れ曲がるように円管外周に巻き付けて合計180度屈曲させ、これを繰り返した。初期値より1dB伝送損失が増加した時点で試験終了とし、終了時点の繰返屈曲回数を確認した。
【0084】
[製造例1]
2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート35質量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート47質量部、メチルメタクリレート17質量部、メタクリル酸1質量部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量部、n−オクチルメルカプタン0.037質量部を混合した。この混合溶液に窒素ガスを1時間バブリングした。次いで、この混合溶液を密封した重合容器に注入し、この重合容器を65℃の浴槽に5時間入れた。その後この重合容器を120℃の蒸気乾燥器に2時間入れ、重合体組成物を得た。得られた重合体組成物を、ベント式一軸押出機を用いて、残存単量体等を除去しつつ溶融混練して、重合体からなる鞘材Aを得た。
【0085】
[製造例2〜7]
鞘材の原料である単量体の組成を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様に操作を行い、鞘材B〜Gを得た。
【0086】
[製造例8〜9]
n−オクチルメルカプタンの量を0.285質量部とし、鞘材の原料である単量体の組成を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様に操作を行い、鞘材H〜Iを得た。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例1]
芯材としてポリメチルメタクリレート(PMMA、屈折率1.492)、鞘材として鞘材A(屈折率1.417)を用い、それぞれを溶融して225℃の紡糸ヘッドへ供給した。これらを2層構造の同心円状複合紡糸ノズルを用いて紡糸し、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、鞘の厚さが10μmの直径1.0mmの光ファイバを得た。得られた光ファイバの耐熱性(鞘材のガラス転移温度)、伝送損失を表2に示す。
【0089】
[実施例2〜7、比較例1〜2]
鞘材の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、光ファイバを得た。得られた光ファイバの耐熱性(鞘材のガラス転移温度)、伝送損失を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
[実施例8]
芯材としてポリメチルメタクリレート(PMMA、屈折率1.492)、1層目の鞘材として鞘材E(屈折率1.417)、2層目の鞘材としてフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(フッ化ビニリデン由来の繰り返し単位:テトラフルオロエチレン由来の繰り返し単位=80:20(モル比)、屈折率1.405)を用い、それぞれを溶融して225℃の紡糸ヘッドへ供給した。これらを3層構造の同心円状複合紡糸ノズルを用いて紡糸し、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、1層目の鞘の厚さが5μm、2層目の鞘の厚さが10μmの直径1.0mmの光ファイバを得た。得られた光ファイバの耐熱性(鞘材(1層目)のガラス転移温度)、伝送損失を表3に示す。
【0092】
[実施例9、比較例3]
鞘材(1層目)の種類を表3に示すように変更した以外は、実施例8と同様に操作を行い、光ファイバを得た。得られた光ファイバの耐熱性(鞘材(1層目)のガラス転移温度)、伝送損失を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
実施例で得られた光ファイバは、比較例で得られた光ファイバに対し、伝送損失が低減され、耐熱性に優れることが確認できた。
【0095】
[実施例10]
ポリエチレン樹脂(PE)を樹脂被覆用クロスヘッド型被覆装置に供給し、実施例8で得られた光ファイバの外周に被覆することで、厚さ0.6mmの被覆層を形成した。これにより、直径2.2mmの光ファイバケーブルを得た。得られた光ファイバケーブルの伝送損失及び繰返屈曲を表4に示す。
【0096】
[実施例11〜12、比較例4〜6]
光ファイバ及び被覆層の種類を表4に示すように変更した以外は、実施例10と同様に操作を行い、光ファイバケーブルを得た。得られた光ファイバケーブルの伝送損失及び繰返屈曲を表4に示す。尚、表4において、CPEは塩素化ポリエチレン樹脂を、PAはポリアミド樹脂を示す。
【0097】
【表4】
【0098】
この出願は、2014年1月23日に出願された日本出願特願2014−010042を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0099】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。