(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<定義>
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0023】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、分子量210以上のホスホン酸化合物と、アミノ酸及びアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸成分と、を含有し、前記砥粒のシラノール基密度が6.5個/nm
2以下であり、前記砥粒の会合度が1.5以上である。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液として用いることができる。本実施形態に係る研磨液は、二酸化ケイ素と、窒化ケイ素及びポリシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含む被研磨面を研磨するために用いることが可能であり、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及びポリシリコンを含む被研磨面を研磨するために用いることもできる。
【0024】
本実施形態に係る研磨液によれば、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨することができる。このような効果が発現される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。すなわち、上記特定の分子量のホスホン酸化合物とアミノ酸成分との存在下では、ホスホン酸化合物が窒化ケイ素表面に配位しやすく、アミノ酸成分がポリシリコン表面に配位しやすい。そして、それぞれの化合物が配位することで被研磨面の濡れ性が変化し、シラノール基密度の低い砥粒が被研磨面に作用しやすい。また、会合度の大きい砥粒は表面積が大きいために、このような作用が発現しやすい。以上より、二酸化ケイ素の研磨速度と同等の研磨速度に至るまで窒化ケイ素及びポリシリコンの研磨速度が向上する。
【0025】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨液は、砥粒を含有する。砥粒の材質としては、シリカ、アルミナ、セリア等が挙げられる。砥粒としては、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、シリカを含むことが好ましく、コロイダルシリカを含むことがより好ましい。
【0026】
砥粒のシラノール基密度の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨する観点から、6.5個/nm
2以下である。砥粒のシラノール基密度の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、5.0個/nm
2以下が好ましく、4.2個/nm
2以下がより好ましく、4.0個/nm
2以下が更に好ましく、3.0個/nm
2以下が特に好ましく、2.0個/nm
2以下が極めて好ましく、1.7個/nm
2以下が非常に好ましく、1.6個/nm
2以下がより一層好ましい。砥粒のシラノール基密度の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、1.0個/nm
2以上が好ましく、1.1個/nm
2以上がより好ましく、1.2個/nm
2以上が更に好ましく、1.4個/nm
2以上が特に好ましく、1.5個/nm
2以上が極めて好ましい。
【0027】
シラノール基密度(ρ[個/nm
2])は、下記の滴定により測定及び算出することができる。まず、粒子(A[g])を15g量り取り、適量(100ml以下)の水に分散させる。次に、0.1mol/l塩酸でpHを3.0〜3.5に調整する。その後、塩化ナトリウムを30g添加した後、超純水を更に添加して全量を150gに調整する。次に、0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液でpHを4.0に調整して滴定用サンプルを得る。pHが9.0になるまでこの滴定用サンプルに0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を滴下し、pHが4.0から9.0になるまでに要した水酸化ナトリウム量(B[mol])を求め、下記式(1)よりシラノール基密度を算出する。
【0028】
ρ=B・N
A/A・S
BET …(1)
[式中、N
A(単位:個/mol)はアボガドロ数、S
BET(単位:m
2/g)は粒子のBET比表面積をそれぞれ示す。BET比表面積の測定方法については後述する。]
【0029】
コロイダルシリカのように、水等の媒体に分散された状態で入手できるシリカ粒子の場合は、シリカ粒子量(A[g])が15gになる量を量り取り、以後は同じ手順でシラノール基密度を測定することができる。また、研磨液に含まれるシリカ粒子については、磨液からシリカ粒子を単離・洗浄し、以後は同様の手順でシラノール基密度を測定することができる。
【0030】
前記シラノール基密度の算出方法の詳細については、例えば、Analytical Chemistry、1956年、第28巻、12号、p.1981−1983及びJapanese Journal of Applied Physics、2003年、第42巻、p.4992−4997に開示されている。
【0031】
砥粒の会合度(平均二次粒径/平均一次粒径)の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨する観点から、1.5以上である。砥粒の会合度の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、1.7以上が好ましく、1.9以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.1以上が特に好ましく、2.2以上が極めて好ましい。砥粒の会合度の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下が更に好ましい。
【0032】
砥粒の平均一次粒径の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。砥粒の平均一次粒径の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、25nm以上が更に好ましい。
【0033】
砥粒の「平均一次粒径」とは、BET比表面積から算出できる粒子の平均直径をいい、ガス吸着法による吸着比表面積(以下、「BET比表面積」という)の測定から、下記式(2a)により算出される。
D1=6/(ρ×V) …(2a)
[式中、D1は平均一次粒径(単位:m)、ρは粒子の密度(単位:kg/m
3)、VはBET比表面積(単位:m
2/g)をそれぞれ示す。]
【0034】
より具体的には、まず、粒子を真空凍結乾燥機で乾燥した後、残分を乳鉢(磁性、100ml)で細かく砕いて測定用試料を得る。次に、ユアサアイオニクス株式会社製のBET比表面積測定装置(商品名:オートソーブ6)を用いて測定用試料のBET比表面積Vを測定する。そして、上記式(2a)に基づき平均一次粒径D1を算出する。
【0035】
なお、粒子がコロイダルシリカである場合には、粒子の密度ρは、「ρ=2200(kg/m
3)」である。この場合、下記式(2b)が得られ、式(2b)にBET比表面積V(m
2/g)を代入することにより、平均一次粒径D1を求めることができる。
D1=2.727×10
−6/V(m)=2727/V(nm) …(2b)
【0036】
砥粒の平均二次粒径の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、80nm以下が好ましく、75nm以下がより好ましく、70nm以下が更に好ましい。砥粒の平均二次粒径の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、30nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、60nm以上が特に好ましい。
【0037】
砥粒の「平均二次粒径」は、動的光散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製の商品名:COULTER N5型)で測定することができる。COULTERの測定条件は、測定温度20℃、溶媒屈折率1.333(水に相当)、粒子屈折率Unknown(設定)、溶媒粘度1.005mPa・s(水に相当)、Run Time200sec、レーザ入射角90°であり、Intensity(散乱強度、濁度に相当)が5E+04〜4E+05の範囲に入るように調整して測定する。Intensityが4E+05よりも高い場合には、水で希釈して測定する。
【0038】
研磨液中における砥粒のゼータ電位は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、正であることが好ましく、+4mV以上がより好ましく、+6mV以上が更に好ましく、+8mV以上が特に好ましく、+10mV以上が極めて好ましい。研磨液中における砥粒のゼータ電位は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、+16mV以下が好ましく、+14mV以下がより好ましく、+12mV以下が更に好ましい。
【0039】
ゼータ電位(ζ[mV])は、ゼータ電位測定装置を用いて測定することができる。その際、測定サンプルの散乱強度が1.0×10
4〜5.0×10
4cps(「cps」とは、counts per second(すなわち、カウント毎秒)を意味し、粒子の計数の単位である。)となるように研磨液を純水で希釈して測定サンプルを得る。そして、測定サンプルをゼータ電位測定用セルに入れてゼータ電位を測定する。散乱強度を前記範囲に調整するには、例えば、研磨液100質量部に対して砥粒が1.7〜1.8質量部となるように研磨液を希釈する。
【0040】
砥粒の含有量の下限は、被研磨材料の研磨速度を向上させる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.10質量%以上が特に好ましく、0.20質量%以上が極めて好ましく、0.50質量%以上が非常に好ましく、0.70質量%以上がより一層好ましい。砥粒の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点から、研磨液の全質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以下が特に好ましく、3.0質量%以下が極めて好ましく、1.5質量%以下が非常に好ましい。
【0041】
(ホスホン酸化合物)
本実施形態に係る研磨液は、分子量210以上のホスホン酸化合物を含有する。ホスホン酸化合物は、ホスホン酸基を有する化合物である。
【0042】
ホスホン酸化合物の分子量は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、220以上が好ましく、240以上がより好ましく、260以上が更に好ましく、270以上が特に好ましく、280以上が極めて好ましく、290以上が非常に好ましい。ホスホン酸化合物の分子量は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、350以下が好ましく、320以下がより好ましく、310以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
【0043】
ホスホン酸化合物におけるホスホン酸基の数は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。ホスホン酸化合物におけるホスホン酸基の数は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
【0044】
ホスホン酸化合物は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、窒素原子を含む化合物であってもよく、第三級アミン化合物であってもよい。
【0045】
ホスホン酸化合物は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、カルボキシル基を有していてもよい。ホスホン酸化合物がカルボキシル基を有する場合、カルボキシル基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。カルボキシル基の数は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
【0046】
ホスホン酸化合物としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、ベンズヒドリルホスホン酸、(4−ブロモブチル)ホスホン酸、(4−ブロモフェニル)ホスホン酸、1,4−ブチレンジホスホン酸、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、グリシン−N,N−ビス(メチレンホスホン酸)、1,6−ヘキシレンジホスホン酸、1,5−ペンチレンジホスホン酸、1,4−フェニレンジホスホン酸、o−キシリレンジホスホン酸、m−キシレンジホスホン酸、p−キシレンジホスホン酸、1−ヒドロキシ−2−(1−イミダゾリル)エタン−1,1−ジホスホン酸等が挙げられる。ホスホン酸化合物としては、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、及び、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、ニトリロトリスメチレンホスホン酸がより好ましい。
【0047】
ホスホン酸化合物の含有量の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.05質量%以上が極めて好ましく、0.10質量%以上が非常に好ましく、0.20質量%以上がより一層好ましい。ホスホン酸化合物の含有量の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が極めて好ましく、0.30質量%以下が非常に好ましい。
【0048】
(アミノ酸成分:アミノ酸及びアミノ酸誘導体)
本実施形態に係る研磨液は、アミノ酸及びアミノ酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノ酸成分(ホスホン酸化合物に該当する化合物を除く)を含有する。アミノ酸誘導体としては、アミノ酸のエステル、アミノ酸の塩、ペプチド等が挙げられる。アミノ酸は、アミノ基及びカルボキシル基の両方の官能基を有する化合物である。
【0049】
アミノ酸成分としては、α−アラニン、β−アラニン(別名:3−アミノプロパン酸)、2−アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リシン、セリン、トレオニン、アロトレオニン、ホモセリン、チロシン、3,5−ジヨード−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アラニン、チロキシン、4−ヒドロキシ−プロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−システイン、4−アミノ酪酸、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ−ヒドロキシ−リシン、クレアチン、キヌレニン、ヒスチジン、1−メチル−ヒスチジン、3−メチル−ヒスチジン、エルゴチオネイン、トリプトファン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、バソプレシン、オキシトシン、カッシニン、エレドイシン、グルカゴン、セクレチン、プロオポオメラノコルチン、エンケファリン、プロジノルフィン等が挙げられる。
【0050】
アミノ酸成分の中でも、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、低分子量のアミノ酸が好ましい。具体的には、分子量が300以下のアミノ酸が好ましく、分子量が250以下のアミノ酸がより好ましく、分子量が200以下のアミノ酸が更に好ましい。このようなアミノ酸としては、α−アラニン(分子量89)、β−アラニン(分子量89)、セリン(分子量105)、ヒスチジン(分子量155)、グリシルグリシン(分子量132)、グリシルグリシルグリシン(分子量189)等が挙げられる。
【0051】
アミノ酸成分の含有量の下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.05質量%以上が極めて好ましく、0.10質量%以上が非常に好ましく、0.20質量%以上がより一層好ましい。アミノ酸成分の含有量の上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましく、0.50質量%以下が極めて好ましく、0.30質量%以下が非常に好ましい。
【0052】
(その他の成分)
本実施形態に係る研磨液は、その他の添加剤(前記ホスホン酸化合物及び前記アミノ酸化合物を除く)を更に含有していてもよい。添加剤としては、分子量210未満のホスホン酸化合物、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)等が挙げられる。
【0053】
水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩等のポリアクリル酸系ポリマ;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩等のポリメタクリル酸系ポリマ;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマ;ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る研磨液は、水を含有することができる。水としては、脱イオン水、超純水等が挙げられる。水の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよく、特に限定されない。
【0055】
(pH)
本実施形態に係る研磨液のpHの下限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.2以上が特に好ましく、2.4以上が極めて好ましく、2.5以上が非常に好ましく、2.7以上がより一層好ましい。pHの上限は、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨しやすい観点から、6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下が更に好ましく、3.0以下が特に好ましく、3.0未満が極めて好ましい。前記観点から、研磨液のpHは、1.0〜6.0であることが好ましく、2.0〜5.0であることがより好ましい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0056】
研磨液のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン等のアルカリ成分などによって調整できる。また、pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。また、緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0057】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model F−51)で測定することができる。具体的には例えば、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01;中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86;ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18)を用いて3点校正した後、電極を研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0058】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、ホスホン酸化合物と、アミノ酸成分と、を少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒と、水とを少なくとも含む。添加液は、例えば、ホスホン酸化合物と、アミノ酸成分と、水とを少なくとも含む。なお、前記研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0059】
前記研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0060】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて、二酸化ケイ素と、窒化ケイ素及びポリシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含む被研磨面を研磨する研磨工程を備える。例えば、本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及びポリシリコンを含む被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程において用いる研磨液としては、前記一液式研磨液であってもよく、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液であってもよい。研磨工程では、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及びポリシリコンを同時に研磨することができる。この場合、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及びポリシリコンを含む被研磨面を平坦化しつつ研磨することができる。
【0061】
研磨工程では、例えば、基体の被研磨面を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、前記研磨液を被研磨面と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素及びポリシリコンのそれぞれの少なくとも一部を研磨により除去する。
【0062】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨材料としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ポリシリコン等が挙げられる。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってもよく、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、ポリシリコン膜等であってもよい。
【0063】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてあってもよい。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0064】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。
【0065】
二酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素及びポリシリコンの研磨速度の比率の下限は、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上が更に好ましく、0.95以上が特に好ましい。二酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素及びポリシリコンの研磨速度の比率の上限は、1.20以下が好ましく、1.20未満がより好ましく、1.15以下が更に好ましく、1.10以下が特に好ましく、1.05以下が極めて好ましい。前記観点から、前記比率は、0.80〜1.20が好ましく、0.80以上1.20未満がより好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。但し、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。例えば、研磨液の材料の種類及びその配合比率は、本実施例に記載の種類及び比率以外の種類及び比率でも差し支えなく、研磨対象の組成及び構造も、本実施例に記載の組成及び構造以外の組成及び構造でも差し支えない。
【0067】
<砥粒の準備>
表1の物性を有するコロイダルシリカA〜Cを準備した。
【0068】
<CMP研磨液の調製>
(実施例1)
表2の添加剤A(ニトリロトリスメチレンホスホン酸、分子量:299.05)及び添加剤B(グリシン)を容器にそれぞれ0.20質量部入れた。続いて、超純水をX質量部注いだ後、攪拌・混合して添加剤A及び添加剤Bを溶解させた。次に、シリカ粒子として1.0質量部に相当するコロイダルシリカAを添加し、実施例1のCMP研磨液を得た。なお、前記超純水のX質量部は、CMP研磨液の合計が100質量部になるよう計算して求めた。
【0069】
(実施例2〜4及び比較例1〜7)
表2及び表3に示す各成分を用いて実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜4及び比較例1〜7のCMP研磨液を得た。2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸の分子量は270.13であり、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸の分子量は206.03である。
【0070】
<評価>
(CMP研磨液のpH)
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。結果を表2及び表3に示す。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model F−51
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18(25℃))を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0071】
(ゼータ電位)
CMP研磨液中における砥粒のゼータ電位を下記のとおり測定した。ゼータ電位測定装置としては、ベックマンコールター社製の商品名:DELSA NANO Cを用いた。ゼータ電位測定装置において測定サンプルの散乱強度が1.0×10
4〜5.0×10
4cpsとなるようにCMP研磨液を純水で希釈して測定サンプルを得た。そして、測定サンプルをゼータ電位測定用セルに入れてゼータ電位を測定した。結果を表2及び表3に示す。
【0072】
(研磨速度)
得られたCMP研磨液を用いて、下記3種類のブランケット基板を下記研磨条件で研磨した。
【0073】
[ブランケット基板]
・厚さ10000Åの二酸化ケイ素膜をシリコン基板上に有するブランケット基板。
・厚さ2500Åの窒化ケイ素膜をシリコン基板上に有するブランケット基板。
・厚さ5000Åのポリシリコン膜をシリコン基板上に有するブランケット基板。
【0074】
[研磨条件]
・研磨装置:CMP用研磨機Reflexion LK(APPLIED MATERIALS社製)
・研磨パッド:ポリウレタン製パッドFujibo H800(フジボウ愛媛株式会社製)
・研磨圧力:10kPa
・定盤回転数:93rpm
・ヘッド回転数:87rpm
・CMP研磨液の供給量:300ml/min
・研磨時間:60秒
【0075】
[研磨速度及び研磨選択比の算出]
フィルメトリクス株式会社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:F80)を用いて、研磨前後の被研磨膜(二酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜及びポリシリコン膜)の膜厚を測定して膜厚の変化量を算出した。79点の膜厚を測定し、膜厚の平均値を用いて膜厚の変化量を算出した。膜厚の変化量と研磨時間とに基づき、下記式により被研磨膜の研磨速度を算出した。結果を表2及び表3に示す。
研磨速度[Å/min]=(研磨前の膜厚[Å]−研磨後の膜厚[Å])/研磨時間[min]
【0076】
また、二酸化ケイ素の研磨速度を1.00としたときの窒化ケイ素及びポリシリコンの研磨選択比を算出した。結果を表2及び表3に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
実施例では、二酸化ケイ素の研磨速度を1.00としたときに窒化ケイ素及びポリシリコンの研磨速度が0.80〜1.20であり、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨できることが分かる。
【0081】
砥粒の会合度が小さい比較例1では、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を非選択的に研磨できないことが分かる。砥粒のシラノール基密度が大きい比較例2では、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨できないことが分かる。ホスホン酸化合物及びアミノ酸成分の少なくとも一方を用いていない比較例3〜7では、二酸化ケイ素に対して窒化ケイ素及びポリシリコンを非選択的に研磨できないことが分かる。