(54)【発明の名称】ポリ(イミド−アミド)コポリマー、ポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法、ポリ(イミド−アミド)コポリマーを含む成形品、前記成形品を含む電子素子
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1ジアミンとジアンハイドライドとの反応生成物であるイミド構造単位と、第2ジアミンとジアシルハライドとの反応生成物であるアミド構造単位とを含み、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンはそれぞれ、2,2’−ビス−トリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)を含み、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンのうちの少なくとも1つは、下記化学式1で表される化合物をさらに含み、前記ジアンハイドライドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)を含み、前記ジアシルハライドは、テレフタロイルクロライド(TPCl)を含み、下記化学式1で表される化合物は、第1ジアミンと第2ジアミンの全体含有量の約10モル%以下で含まれるポリ(イミド−アミド)コポリマー:
(化学式1)
NH2−A−NH2
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)2−、−Si(CH3)2−、−(CH2)p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF2)q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素原子、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素原子ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
前記化学式1で表されるジアミンは、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーを構成する全体ジアミン含有量を基準として、約0.1モル%〜約8.0モル%の範囲で含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ(イミド−アミド)コポリマー。
前記イミド構造単位と前記アミド構造単位は、0.2〜0.8:0.8〜0.2のモル比で含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリ(イミド−アミド)コポリマー。
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法は、前記化学式10で表される化合物と、前記化学式1で表されるジアミン、BPDA、および6FDAを反応させた後、前記反応物をイミド化することをさらに含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法。
前記成形品は、フィルムであり、前記フィルムは、50μm〜100μmの厚さにおいて、3.5以下の黄色指数(YI)、および4.0GPa以上の弾性モジュラスを有する、請求項17に記載の成形品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、粘着剤との接着力を強化しながらも、硬化後、高い機械的強度および光学的特性を維持するポリ(イミド−アミド)コポリマーを提供する。
他の実施形態は、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法を提供する。
【0005】
他の実施形態は、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーを含む成形品を提供する。
【0006】
さらに他の実施形態は、前記実施形態に係る成形品を含む電子素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、第1ジアミンとジアンハイドライドとの反応生成物であるイミド構造単位と、第2ジアミンとジアシルハライドとの反応生成物であるアミド構造単位とを含み、前記第1ジアミンと前記第2ジアミンはそれぞれ、2,2’−ビス−トリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)を含み、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンのうちの少なくとも1つは、下記化学式1で表される化合物をさらに含み、前記ジアンハイドライドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)を含み、前記ジアシルハライドは、テレフタロイルクロライド(TPCl)を含み、下記化学式1で表される化合物は、第1ジアミンと第2ジアミンの全体含有量の約10モル%以下で含まれる:
(化学式1)
NH
2−A−NH
2
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0008】
前記Aは、下記グループ1の化学式から選択される:
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式において、
Lは、単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、C1〜C4アルキル基、フェニル基、C1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基、フェニル基で置換されたC1〜C4アルキル基、1つ以上のフッ素原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基であり、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0011】
前記Aは、下記化学式2または下記化学式3で表される:
【0012】
【化2】
【0013】
前記化学式2および化学式3において、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0014】
前記化学式1で表されるジアミンは、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーを構成する全体ジアミン含有量を基準として、約0.1モル%〜約8.0モル%の範囲で含まれる。
【0015】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーにおいて、前記イミド構造単位と前記アミド構造単位は、0.2〜0.8:0.8〜0.2のモル比で含まれる。
【0016】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーにおいて、前記イミド構造単位と前記アミド構造単位は、0.2〜0.4:0.8〜0.6のモル比で含まれる。
【0017】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーは、(i)下記化学式4で表される構造単位、(ii)下記化学式5で表される構造単位、(iii)下記化学式6で表される構造単位、および(iv)下記化学式7で表される構造単位、下記化学式8で表される構造単位、および下記化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上を含み、前記(iv)化学式7で表される構造単位、化学式8で表される構造単位、および化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上の総含有量は、前記(i)〜(iv)の構造単位の総モル数を基準として、約10モル%以下で含まれる:
【0018】
【化3】
【0019】
前記化学式4〜9において、*は、窒素原子または炭素原子に連結される部分である。
【0020】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーは、(i)前記化学式4で表される構造単位、(ii)前記化学式5で表される構造単位、(iii)前記化学式6で表される構造単位、および(iv)前記化学式8で表される構造単位、および前記化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上を含み、前記(iv)化学式8で表される構造単位、および前記化学式9で表される構造単位の総含有量は、前記(i)〜(iv)で表される構造単位の総モル数を基準として、約0.1モル%〜約8.0モル%含まれる。
【0021】
他の実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、下記化学式10で表される化合物、下記化学式1で表されるジアミン、およびBPDAと6FDAを含むジアンハイドライドの反応生成物であって、前記反応時、下記化学式10で表される化合物内のTFDB由来の構造単位のモル数、および下記化学式1で表されるジアミンのモル数の総和を基準として、下記化学式1で表されるジアミンは約10モル%以下で含まれる:
【0022】
【化4】
【0023】
前記化学式10において、n
0は、0以上の整数である。
【0024】
(化学式1)
NH
2−A−NH
2
【0025】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0026】
前記Aは、下記グループ1の化学式から選択される:
【0027】
【化5】
【0028】
前記化学式において、
Lは、単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、C1〜C4アルキル基、フェニル基、C1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基、フェニル基で置換されたC1〜C4アルキル基、1つ以上のフッ素原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基であり、
*は、窒素原子に連結される部分である。
【0029】
前記Aは、下記化学式2または下記化学式3で表される:
【0030】
【化6】
【0031】
前記化学式2および化学式3において、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0032】
さらに他の実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法は、TFDBとTPCLとを反応させて下記化学式10で表される化合物を製造し、前記製造された化学式10の化合物と、下記化学式1で表されるジアミン、BPDA、および6FDAを反応させることを含む:
【0033】
【化7】
【0034】
前記化学式10において、n
0は、1以上の整数である。
【0035】
(化学式1)
NH
2−A−NH
2
【0036】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、C7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0037】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法において、前記化学式1で表されるジアミンは、TFDBと前記化学式1で表されるジアミンの総モル数を基準として、約10モル%以下で含ませて反応させることを含むことができる。
【0038】
前記Aは、下記グループ1の化学式から選択される:
【0039】
【化8】
【0040】
前記化学式において、
Lは、単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、C1〜C4アルキル基、フェニル基、C1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基、フェニル基で置換されたC1〜C4アルキル基、1つ以上のフッ素原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基であり、
*は、窒素原子に連結される部分である。
【0041】
前記Aは、下記化学式2または下記化学式3で表される:
【0042】
【化9】
【0043】
前記化学式2および化学式3において、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0044】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法は、前記化学式10で表される化合物と、前記化学式1で表されるジアミン、BPDA、および6FDAを反応させた後、前記反応物をイミド化することをさらに含むことができる。
【0045】
前記イミド化は、化学的イミド化または熱的イミド化を含むことができる。
【0046】
さらに他の実施形態に係る成形品は、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーを含む。
【0047】
前記成形品は、フィルムであるとよく、前記フィルムは、50μm〜100μmの厚さにおいて、3.5以下の黄色指数(YI)、および4.0GPa以上の弾性モジュラスを有することができる。
【0048】
さらに他の実施形態に係る電子素子は、前記実施形態に係る成形品を含む。
【発明の効果】
【0049】
高い硬度と優れた光学的特性を維持しながらも、汎用粘着剤との接着力が向上することでフレキシブル素子の接着信頼性を向上させることが可能なポリ(イミド−アミド)コポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0052】
本明細書において特別な言及がない限り、「置換」または「置換の」とは、本発明の官能基のうちの1つ以上の水素原子がハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(NH
2、NH(R
100)、またはN(R
101)(R
102)であり、ここで、R
100、R
101、およびR
102は、同一または互いに異なり、それぞれ独立に、C1〜C10アルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環族有機基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換のヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていることを意味し、前記置換基は互いに連結されて環を形成してもよい。
【0053】
本明細書において特別な言及がない限り、「アルキル基」とは、C1〜C30アルキル基を意味し、具体的には、C1〜C15アルキル基を意味し、「シクロアルキル基」とは、C3〜C30シクロアルキル基を意味し、具体的には、C3〜C18シクロアルキル基を意味し、「アルコキシ基」とは、C1〜C30アルコキシ基を意味し、具体的には、C1〜C18アルコキシ基を意味し、「エステル基」とは、C2〜C30エステル基を意味し、具体的には、C2〜C18エステル基を意味し、「ケトン基」とは、C2〜C30ケトン基を意味し、具体的には、C2〜C18ケトン基を意味し、「アリール基」とは、C6〜C30アリール基を意味し、具体的には、C6〜C18アリール基を意味し、「アルケニル基」とは、C2〜C30アルケニル基を意味し、具体的には、C2〜C18アルケニル基を意味し、「アルキニル基」とは、C2〜30アルキニル基、特に、C2〜C18アルキニル基を意味し、「アルキレン基」とは、C1〜C30アルキレン基を意味し、具体的には、C1〜C18アルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、C6〜C30アリーレン基を意味し、具体的には、C6〜C16アリーレン基を意味する。
【0054】
また、本明細書において特別な言及がない限り、「脂肪族有機基」とは、C1〜C30アルキル基、C2〜C30アルケニル基、C2〜C30アルキニル基、C1〜C30アルキレン基、C2〜C30アルケニレン基、またはC2〜C30アルキニレン基を意味し、具体的には、C1〜C15アルキル基、C2〜C15アルケニル基、C2〜C15アルキニル基、C1〜C15アルキレン基、C2〜C15アルケニレン基、またはC2〜C15アルキニレン基を意味し、「脂環族有機基」とは、C3〜C30シクロアルキル基、C3〜C30シクロアルケニル基、C3〜C30シクロアルキニル基、C3〜C30シクロアルキレン基、C3〜C30シクロアルケニレン基、またはC3〜C30シクロアルキニレン基を意味し、具体的には、C3〜C15シクロアルキル基、C3〜C15シクロアルケニル基、C3〜C15シクロアルキニル基、C3〜C15シクロアルキレン基、C3〜C15シクロアルケニレン基、またはC3〜C15シクロアルキニレン基を意味し、「芳香族有機基」とは、1つの芳香族環、2以上の芳香族環が共に縮合環をなすもの、または2以上の芳香族環が単一結合、または、フルオレニレン基、−O−、−S−、C−(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、pの範囲は1≦p≦10である)、−(CF
2)
q−(ここで、qの範囲は1≦q≦10である)、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、および−C(=O)NH−から選択される官能基、特に−S(=O)
2−で連結されたものを含む、C6〜C30の基、例えば、C6〜C30アリール基、またはC6〜C30アリーレン基を意味し、具体的には、C6〜C16アリール基、またはフェニレン基のようなC6〜C16アリーレン基を意味し、「ヘテロ環基」とは、O、S、N、P、Si、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1個〜3個含有するC2〜C30シクロアルキル基、C2〜C30シクロアルキレン基、C2〜C30シクロアルケニル基、C2〜C30シクロアルケニレン基、C2〜C30シクロアルキニル基、C2〜C30シクロアルキニレン基、C2〜C30ヘテロアリール基、またはC2〜C30ヘテロアリーレン基を意味し、具体的には、O、S、N、P、Si、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1個〜3個含有するC2〜C15シクロアルキル基、C2〜C15シクロアルキレン基、C2〜C15シクロアルケニル基、C2〜C15シクロアルケニレン基、C2〜C15シクロアルキニル基、C2〜C15シクロアルキニレン基、C2〜C15ヘテロアリール基、またはC2〜C15ヘテロアリーレン基を意味する。
【0055】
本明細書において特別な言及がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。
【0056】
本明細書において、「*」は、窒素または他の原子に連結される部分を意味する。
【0057】
また、図中の同じ物質や同じ部分は同一の符号で表す。図面における各部分の大きさは、説明の便宜のために、実際より誇張して大きく、または小さく表すことができる。
【0058】
一実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、第1ジアミンとジアンハイドライドとの反応生成物であるイミド構造単位と、第2ジアミンとジアシルハライドとの反応生成物であるアミド構造単位とを含み、ここで、前記第1ジアミンと前記第2ジアミンはそれぞれ、2,2’−ビス−トリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミン(TFDB)を含み、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンのうちの少なくとも1つは、下記化学式1で表される化合物をさらに含み、前記ジアンハイドライドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)を含み、前記ジアシルハライドは、テレフタロイルクロライド(TPCl)を含み、下記化学式1で表される化合物は、第1ジアミンと第2ジアミンの全体含有量の約10モル%以下で含まれる:
【0060】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0061】
フレキシブル素子の基板素材としては、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate)、ポリカーボネート(Poly−carbonate)、ポリイミド(Poly−imide)、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane)など、多様なポリマーフィルムが用いられている。このうち、使用温度に応じた機械的、化学的物性の安定性に優れたポリイミドが重点的に研究されている。また、使用される基板の機械的物性向上のために、アミド(amide)構造単位を導入したポリ(イミド−アミド)フィルムがフレキシブル素子の基板素材として注目されている。このような高硬度、高強度のフィルムを用いて既存の電子素材のガラス基板を代替することで、柔軟なフレキシブル素子、特にフレキシブルディスプレイ素子を開発しようとする努力が進められている。
【0062】
上述のように、フレキシブル素子を構成するためには、様々な層の多様なフィルムの積層が必要である。現在、このような積層および接合は、粘着フィルムを用いて実現しているが、フレキシブル素子の場合、特に、機器使用中の屈曲部位における欠陥の発生を減少させるためのフィルム間の接着力の改善が必要である。このような接着力改善のために、主に粘着剤の接着特性を向上させようとする試みがあるが、各種基板素材の表面特性が異なることにより、全ての基板素材との優れた接着力を実現する粘着剤を開発するには限界がある。
【0063】
本願発明者らは、基板素材、特に、透明ウィンドウ基板素材に使用されるポリ(イミド−アミド)コポリマーの粘着剤との接着力を向上させた新たなポリ(イミド−アミド)コポリマーを提供することによって、汎用粘着剤を使用しても、接着力が改善されて接着信頼性に問題がなく、また、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの有する光学的特性および機械的特性も低下しない新たな基板素材を提供しようとした。
【0064】
上述のように、一実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、第1ジアミンとジアンハイドライドから形成されるイミド構造単位と、第2ジアミンとジアシルハライドから形成されるアミド構造単位とを含むが、前記イミド構造単位および前記アミド構造単位を形成する第1ジアミンと第2ジアミンがそれぞれTFDB、つまり、2,2’−ビス−トリフルオロメチル−4,4’−ビフェニルジアミンを含み、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンのうちの少なくとも1つが前記化学式1で表されるジアミンをさらに含み、前記ジアンハイドライドは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)を含み、前記ジアシルハライドは、テレフタロイルクロライド(TPCl)を含み、前記化学式1で表される化合物が全体ジアミン含有量の10モル%以下、例えば、0.1モル%〜10モル%含まれることを特徴とする。
【0065】
つまり、前記第1ジアミンおよび前記第2ジアミンともTFDBを含むが、これらの1つまたは2つともが前記化学式1で表されるジアミンをさらに含み、この時、第1ジアミンと第2ジアミンに含まれる全体ジアミン含有量中、前記化学式1で表されるジアミンの含有量は10モル%以下の第1ジアミン、第2ジアミン、前記ジアンハイドライド、およびTPCLから製造されるポリ(イミド−アミド)コポリマーを提供する。
【0066】
一実施形態では、前記第1ジアミンがTFDBと前記化学式1で表されるジアミンを含み、前記第2ジアミンは、TFDBを含むことができる。
【0067】
他の実施形態では、前記第1ジアミンがTFDBを含み、前記第2ジアミンは、TFDBと前記化学式1で表されるジアミンを含むことができる。
【0068】
さらに他の実施形態では、前記第1ジアミンがTFDBと前記化学式1で表されるジアミンを含み、前記第2ジアミンも、TFDBと前記化学式1で表されるジアミンを含むことができる。
【0069】
前記化学式1で表される化合物は、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換されたことを特徴とし、前記芳香族環は、単一環、2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または上述した特定の連結基によって連結された2以上の芳香族環を含む。
【0070】
前記化学式1で表される化合物は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換された少なくとも1つの芳香族環を含むことによって、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーのイミド構造単位を形成するジアンハイドライドまたは前記コポリマーのアミド構造単位を形成するジアシルハライド化合物と反応して前記イミド構造単位または前記アミド構造単位内に含まれる場合、前記イミド構造単位および前記アミド構造単位を含むポリ(イミド−アミド)コポリマーは、ポリマー鎖に置換された少なくとも1つのヒドロキシル基を含む。このように置換された少なくとも1つのヒドロキシル基は、汎用粘着剤、または前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーが高硬度ウィンドウフィルムに使用される場合、ウィンドウフィルムの上部にコーティングされるハードコート層内に含まれているアミノ基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基などに結合された水素と水素結合を形成する。したがって、ポリ(イミド−アミド)コポリマー鎖内に基本的に含まれているアミノ基と前記粘着層または前記ハードコート層内の官能基に結合された水素との水素結合のほか、前記化学式1で表される化合物によって導入された少なくとも1つのヒドロキシル基と前記官能基に結合された水素との追加の水素結合が形成される。これにより、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムは、その上に適用される粘着剤またはハードコート層との接着力がより向上できる。
【0071】
したがって、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーに含まれる前記化学式1で表されるジアミンは、化学式1のAで表される部分が少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC6〜C30芳香族環を含むと十分であり、これに特別な制限があるわけではないが、例えば、2以上のヒドロキシル基で置換されてもよく、特に、Aが2以上の芳香族環を含む場合、2以上の芳香族環中の両末端に位置する芳香族環にそれぞれ1つ以上ずつのヒドロキシル基が置換されてもよい。
【0072】
一実施形態において、前記Aは、下記グループ1の化学式から選択される:
【0074】
前記化学式において、
Lは、単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、C1〜C4アルキル基、フェニル基、C1〜C4アルキル基で置換されたフェニル基、フェニル基で置換されたC1〜C4アルキル基、1つ以上のフッ素原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基であり、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0075】
前記化学式において、それぞれのヒドロキシル基は、窒素原子が連結される位置のオルト位に位置してもよい。
【0076】
一実施形態において、前記Aは、下記化学式2または下記化学式3で表される:
【0078】
前記化学式2および化学式3において、*は、窒素原子に連結される部分である。
【0079】
一実施形態において、前記化学式1で表されるジアミンは、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーを形成する全体ジアミンの含有量を基準として、約0.1モル%〜約8.0モル%含まれる。前記化学式1で表されるジアミンが前記範囲で含まれる場合、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの優れた機械的特性および光学的特性を維持しながらも、前記化学式1で表されるジアミンを含まないポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムに比べて増加した接着力を有することができる。
【0080】
一実施形態において、前記化学式1で表されるジアミンは、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーを構成する全体ジアミン含有量を基準として、約0.5モル%〜約7.0モル%、例えば、約0.5モル%〜約2.0モル%含まれる。前記化学式1で表されるジアミンが前記範囲で含まれる場合、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの接着力が改善されると同時に、機械的特性および光学的特性は優れたものに維持できる。
【0081】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーにおいて、前記イミド構造単位と前記アミド構造単位は、0.2〜0.8:0.8〜0.2のモル比で含まれる。例えば、前記イミド構造単位と前記アミド構造単位は、0.2〜0.4:0.8〜0.6のモル比で含まれ、イミド構造単位とアミド構造単位が前記範囲で含まれる場合、ポリ(イミド−アミド)コポリマーの光学的特性および機械的物性が低下することなく優れたものに維持できる。
【0082】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーは、(i)下記化学式4で表される構造単位、(ii)下記化学式5で表される構造単位、(iii)下記化学式6で表される構造単位、および(iv)下記化学式7で表される構造単位、下記化学式8で表される構造単位、および下記化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上を含み、前記(iv)化学式7で表される構造単位、化学式8で表される構造単位、および化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上の総含有量は、前記(i)〜(iv)の構造単位の総モル数を基準として、約10モル%以下で含まれる:
【0084】
前記化学式4〜9において、*は、窒素原子または炭素原子に連結される部分である。
【0085】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーは、(i)前記化学式4で表される構造単位、(ii)前記化学式5で表される構造単位、(iii)前記化学式6で表される構造単位、および(iv)前記化学式8で表される構造単位、および前記化学式9で表される構造単位のうちの1つ以上を含み、前記(iv)化学式8で表される構造単位、および前記化学式9で表される構造単位の総含有量は、前記(i)〜(iv)で表される構造単位の総モル数を基準として、約0.1モル%〜約8.0モル%含まれる。
【0086】
他の実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、下記化学式10で表される化合物、下記化学式1で表されるジアミン、およびBPDAと6FDAを含むジアンハイドライドの反応生成物であって、下記化学式10で表される化合物内のTFDB由来の構造単位のモル数および下記化学式1で表されるジアミンのモル数の総和を基準として、下記化学式1で表されるジアミンは約10モル%以下で含まれる:
【0088】
前記化学式10において、n
0は、0以上の整数である。
【0090】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、置換もしくは非置換のC7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0091】
従来のポリ(イミド−アミド)コポリマーは、イミド構造単位を形成するモノマー、つまり、ジアミン(TFDB)とジアンハイドライド(BPDAおよび/または6FDA)、およびアミド構造単位を形成するモノマー、つまり、ジアミン(TFDB)とジアシルジクロライド(TPCL)を1つの反応器に共に添加して、反応溶媒内で重合させることによって製造することができた。しかし、一実施形態において、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーは、アミド構造単位を形成するモノマー、つまり、例えば、TFDBとTPCLとを先に反応させて、両末端がアミノ基のアミドオリゴマーを形成し、このように形成されたアミドオリゴマーに、前記化学式1で表されるジアミン、およびジアンハイドライドのBPDAと6FDAを添加して追加反応させることによって、ポリ(イミド−アミド)コポリマーの前駆体であるポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを製造することができる。
【0092】
したがって、さらに他の実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法は、TFDBとTPCLとを反応させて下記化学式10で表される化合物を製造し、前記製造された化学式10の化合物と、下記化学式1で表されるジアミン、BPDA、および6FDAを反応させることを含む:
【0094】
前記化学式10において、n
0は、0以上の整数である。
【0096】
前記化学式1において、
Aは、置換もしくは非置換のC6〜C30芳香族環を含むが、前記芳香族環は、少なくとも1つのヒドロキシル基によって置換され、前記芳香族環は、単一環、または2以上の単一環が接合されて縮合された縮合環、または2以上の単一環もしくは2以上の縮合環が単一結合、または−O−、−S−、−C(=O)−、−CH(OH)−、−S(=O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−(CH
2)
p−(ここで、1≦p≦10)、−(CF
2)
q−(ここで、1≦q≦10)、−CRR’−(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立に、互いに同一または異なる水素、置換もしくは非置換のC1〜C10脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換のC6〜C20芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換のC3〜C20脂環族炭化水素基、置換もしくは非置換のC7〜C20アリールアルキル基、C7〜C20アルキルアリール基、または1つ以上のハロゲン原子で置換されたC1〜C4アルキル基であり、ただし、RとR’が同時に水素ではない)、−C(=O)NH−、およびフルオレニレン基から選択される連結基によって連結されている2以上の芳香族環を含む環である。
【0097】
前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーの製造方法は、前記化学式1で表されるジアミンを、TFDBと化学式1で表されるジアミンの総モル数を基準として、約10モル%以下添加して反応させることを含むことができる。
【0098】
前記化学式10で表される化合物は、一般的なポリアミドの製造方法、例えば、非プロトン性極性溶媒内で、TFDBとTPCLとを重合させることによって製造することができる。前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。しかし、これに限定されるものではなく、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素を使用してもよく、また、ポリマーの溶解を促進させるために、前記溶媒に、溶媒総量に対して約50重量%以下のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をさらに添加してもよい。
【0099】
前記製造される化学式10で表される化合物の数平均分子量は、約400〜約2,500であるとよいし、これに制限されない。前記化合物の数平均分子量は、反応物のTFDBとTPCLの投入比率を調節して容易に調節可能である。前記化合物の分子量を前記範囲に調節することによって、以降、ジアンハイドライド化合物との反応時、重合当量比の調節や重合粘度の調節などに有利であり得る。
【0100】
前記製造された化学式10で表される化合物は、化学式10のn
0が0の場合、TPCLと反応しない未反応のTFDBを含むことができる。したがって、前記化合物の製造後、反応溶液内には、両末端がアミノ基であり、アミド基を含有するオリゴマーと未反応のTFDBが共に存在してもよく、これに、前記化学式1で表されるジアミンと、ジアンハイドライドのBPDAと6FDAを添加して反応させることによって、ポリ(イミド−アミド)コポリマーの前駆体であるポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを製造することができる。前記ポリ(アミック酸−アミド)コポリマーの製造段階は、公知のイミド製造工程と同様に、前記反応物を前記非プロトン性極性溶媒内で重合することによって行われる。
【0101】
一方、上記では、TFDBとTPCLとを反応させて化学式10で表されるアミドオリゴマーの化合物を製造することについてのみ説明したが、前記アミドオリゴマーを製造するためのジアミンとして、TFDBと共に前記化学式1で表されるジアミンをTPCLと共に反応させることによって、前記化学式10で表した化合物と類似のアミドオリゴマーを製造してもよいことを、当該技術分野における通常の知識を有する技術者であればよく理解するであろう。
【0102】
前記製造されたポリ(アミック酸−アミド)コポリマーは、化学的または熱的イミド化を行って部分的または全体的にイミド化することによって、部分的または全体的にイミド化されたポリ(イミド−アミド)コポリマーを製造することができる。
【0103】
前記化学的イミド化は、前記ポリ(アミック酸−アミド)コポリマーにイミド化触媒を添加して撹拌することを含むことができる。また、前記熱的イミド化は、前記製造されたポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを一定温度で一定時間加熱することを含むことができる。
【0104】
イミド化触媒は、当該技術分野で公知のものを制限なく使用することができ、例えば、酢酸無水物のような酸無水物、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン、アゾール、ホスフィン、マロノニトリル、2,6−ジメチルピペリジン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、4−ジメチルアミノピリジン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,2,4−トリアゾール、およびトリイソブチルアミンなどを使用することができる。
【0105】
前記イミド化は、化学的イミド化と熱的イミド化を併用して進行させてもよい。例えば、ポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを含む溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入し、加熱して脱水剤およびイミド化触媒を活性化することによって、部分的にイミド化することができる。前記イミド化は、50℃〜400℃で進行させるとよく、例えば、200℃〜400℃で30分以上加熱して、90%以上イミド化することができる。
【0106】
前記イミド化触媒は、ポリアミック酸に対して1:1以上のモル比で添加することができ、例えば、1:3以上のモル比で添加することができる。イミド化触媒がアミック酸より過剰添加されてこそ、脱水反応を効果的に誘導してイミド化が円滑に行われ、より低い温度でイミド化を進行させることができて、高温での長時間反応によるコポリマーの色変化および熱安定性の低下を防ぐことができる。
【0107】
部分的または全体的イミド化が完了したポリ(イミド−アミド)コポリマーは、前記重合溶媒より極性の低い水、メタノール、またはエチルエーテルなどの溶媒に入れて沈殿させることによって、固形分を得ることができる。このように製造された固形分形態のポリ(イミド−アミド)コポリマーは、これを再び溶媒に溶かして支持体上にキャスティングし、イミド化することによって、フィルムなどの成形品に製造される。
【0108】
前記成形品は、前記ポリ(イミド−アミド)コポリマーを用いて、乾湿式法、乾式法、湿式法などで形成することができるが、これに限定されるものではない。
【0109】
前記成形品のうち、フィルムを乾湿式法により製造する場合、前記コポリマーを溶解した溶液を口金からドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押出して膜に形成し、次に、このような膜から溶媒を蒸発させて、膜が自己維持性を有するまで乾燥する。前記乾燥は、常温、例えば、約25℃から約300℃までの温度に前記膜を約1時間以内に昇温処理して行うことができる。前記乾燥工程で用いられるドラムおよびエンドレスベルトの表面が平滑であれば、表面の平滑な膜が得られる。前記乾燥工程を終えた膜は支持体から剥離され、湿式工程に導入されて、脱染、脱溶媒などが行われ、また、延伸、乾燥、および熱処理を行って最終フィルムに形成される。
【0110】
前記延伸は、延伸倍率として、面倍率で約0.8〜約8の範囲内であるとよく、具体的には約1.3〜約8であるとよい。前記面倍率とは、延伸後の膜の面積を延伸前の膜の面積で割った値で定義し、1以下はリラックスを意味する。一方、前記延伸は、面方向だけでなく、厚さ方向にも行うことができる。
【0111】
前記熱処理は、約200℃〜約500℃、例えば、約250℃〜約400℃の温度で数秒〜数分間行うことができる。
【0112】
また、延伸および熱処理後の膜は、ゆっくり冷却するのが良く、例えば、約50℃/秒以下の速度で冷却するのが良い。
【0113】
前記膜は、単層に形成してもよく、複数層に形成してもよい。
【0114】
前記成形品は、フィルムに製造時、約50μm〜約100μmの厚さにおいて、例えば、約50μmの厚さにおいて、ASTM D1926で測定した黄色指数(YI)が約3.5以下であるとよい。
【0115】
前記成形品は、フィルムに製造時、約50μm〜約100μmの厚さにおいて、例えば、約50μmの厚さにおいて、ASTM D882で測定した引張弾性率が約4.0GPa以上であるとよい。
【0116】
つまり、前記成形品は、ポリ(イミド−アミド)コポリマーの有する優れた光学的特性、特に低い黄色指数(YI)、および高い引張弾性率を維持しながらも、後述する実施例から確認されるように、汎用の粘着剤との接着力が改善できる。
【0117】
したがって、前記一実施形態に係る成形品は、様々な層のフィルムを積層して製造可能なフレキシブル素子、例えば、フレキシブルディスプレイ素子に有用に使用できる。
【0118】
前記フレキシブルディスプレイ素子において、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーは、高い機械的特性および光学特性によってウィンドウフィルムに使用できるが、本発明はこれに制限されず、フレキシブル素子内の多様な基板素材として有用に使用できる。前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムをウィンドウ基板に使用する場合、前記ウィンドウ基板の上部にコーティングされるハードコート層、またはウィンドウフィルムの下に置かれる透明粘着フィルムと前記ウィンドウ基板との間の接着力がより向上できる。
【0119】
一方、前記実施形態に係るポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムと共に用いて、これらを含む素子内の接着力を向上させることが可能な粘着剤としては、当該技術分野でフレキシブル素子、またはフレキシブルディスプレイ素子の製造時に使用される公知の多様な粘着剤を使用することができ、これに特別な制限はないが、使用可能な粘着剤の例として、光硬化型ポリアクリレート系粘着フィルムとして3M社のOptically clear adhesive8146などが挙げられる。
【0120】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、下記の実施例は単に本発明を例として説明するためのものであり、これによって本発明の範囲が制限されるわけではない。
【実施例】
【0121】
合成例:アミド基含有オリゴマーの製造
丸底フラスコに、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(N,N−dimethylacetamide)(DMAc)1942.38g内に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’−bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)0.312モル(100g)とピリジン0.8744モル(69.16g)を溶かした後、100gのDMACをさらに添加し、残っているTFDBを完全に溶解させて、TPCl0.2186モル(44.38g)を10回に分けて常温のTFDB溶液に混合し、2時間激しく撹拌して反応させる。
【0122】
得られた溶液を窒素雰囲気で2時間撹拌した後、710gのNaClを含有した14.2Lの水に入れて10分間撹拌する。固形物をろ過し、10Lの脱イオン水に2回にわたって再懸濁および再ろ過する。ろ過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限に除去し、80℃、真空下で乾燥して、生成物として下記化学式10で表される化合物(TFDBまたはアミド基含有オリゴマー)を得た。
【0123】
【化15】
(化学式10において、n
0は、0以上の整数である。)
【0124】
比較例1:bis−APAFを含まないポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムの製造
窒素雰囲気下、反応器に120gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を入れて、前記合成例で製造された前記化学式10で表されるアミド基含有オリゴマー0.0146モル(20.19g)を添加して、30℃で完全に溶解する。前記溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)0.0073モル(2.15g)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)0.0073モル(3.25g)を添加して溶解する。前記溶液に、全体固形分の含有量が16重量%となるように、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を追加添加して反応させることによって、ポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを製造する。
【0125】
前記反応が完了した後、酢酸無水物0.0439モルを投入して、30分撹拌後、同モルのピリジンを投入し、30℃で36時間さらに撹拌して化学的イミド化を行う。化学的イミド化を終えた溶液を、沈殿過程によりパウダー形態に精製する。前記パウダーを、120℃で24時間真空乾燥し、N,N−ジメチルアセトアミドに再び溶解してポリ(イミド−アミド)コポリマー溶液を製造する。
【0126】
前記製造されたポリ(イミド−アミド)コポリマー溶液を、ガラス板にドクターブレードを用いてフィルムに製造する。製造されたフィルムは、80℃の熱板で1時間プリベーク(pre−baking)した後、炉(furnace)にて分あたり3℃昇温で250℃まで加熱して、フィルムの乾燥および熱的イミド化を進行させてフィルムに製造する。
【0127】
実施例1:Bis−APAF0.5モル%を含むポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムの製造
ジアミン部分として、前記合成例で製造された化学式10で表される化合物とbis−APAF((2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン)を使用し、これらの総和を100モル%とする時、前記合成例で製造された化学式10で表される化合物を99.5モル%、そしてbis−APAFを0.5モル%使用して、bis−APAF0.5モル%を含むポリ(イミド−アミド)コポリマー、およびそれから製造されるフィルムを製造する。
【0128】
具体的には、窒素雰囲気下、反応器に120gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を入れて、合成例1で製造された前記化学式10で表されるアミド基含有オリゴマー0.0147モル(20.25g)を添加した後、30℃で溶解する。前記溶液にbis−APAFを0.000075モル(0.0270g)添加して完全に溶解する。その後、前記溶液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド(BPDA)0.0074モル(2.1684g)と4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタリックアンハイドライド(6FDA)0.0074モル(3.2741g)を添加して溶解する。前記溶液に、全体固形分の含有量が16重量%となるように、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を追加添加して反応させることによって、ポリ(アミック酸−アミド)コポリマーを製造する。
【0129】
前記反応が完了した後、酢酸無水物0.0441モルを投入して、30分撹拌後、同モルのピリジンを投入し、30℃で36時間さらに撹拌して化学的イミド化を行う。化学的イミド化を終えた溶液は、沈殿過程によりパウダー形態に精製する。前記パウダーを、120℃で24時間真空乾燥し、N,N−ジメチルアセトアミドに再び溶解してポリ(イミド−アミド)コポリマー溶液を製造する。
【0130】
前記製造されたポリ(イミド−アミド)コポリマー溶液を、ガラス板にドクターブレードを用いてフィルムに製造する。製造されたフィルムは、80℃の熱板で1時間プリベーク(pre−baking)した後、炉(furnace)にて分あたり3℃昇温で250℃まで加熱して、フィルムの乾燥および熱的イミド化を進行させてフィルムに製造する。
【0131】
実施例2〜5:Bis−APAFを含むポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムの製造
ジアミン部分として、前記合成例で製造された化学式10で表される化合物とbis−APAFを使用し、これらの総和を100モル%とする時、bis−APAFを、それぞれ1.0モル%、2.0モル%、3.0モル%、および7.0モル%使用したことを除いては、実施例1と同じ反応物質および同じ方法を用いて、実施例2〜実施例5によるポリ(イミド−アミド)コポリマーフィルムを製造する。
【0132】
評価1:フィルムの接着力テスト
前記比較例1と実施例1〜実施例3で製造されたフィルムの接着力をテストする。接着力テストは次のような方法で行われる。
【0133】
まず、各実施例で製造されたフィルムを150mmX25mmの大きさに2枚ずつ切断し、前記フィルムのうちの1つに、全体長さ150mm中の端40mmを残して、残りの110mmまで全体幅にわたって3M社のPSA粘着剤3M8126を50μmの厚さに塗布する。その後、残っている1枚のフィルムを、前記粘着剤の塗布されたフィルム上に、粘着剤が塗布されていない端40mmを残して、同様に重ねて合紙する。前記合紙したフィルムを常温で24時間維持して完全に乾燥させた後、Instron社のInstron3365を180°Peel Test Modeで用いた。
【0134】
具体的には、前記粘着剤2によって合紙された2枚のフィルム1において、粘着剤が塗布されていないフィルムの前部分を、試験機の前端で上下垂直に分離して延長させる(
図1参照)。つまり、下側フィルムの粘着剤が塗布されていない部分は、試験機の前端で垂直下に固定し、上側フィルムの端を垂直上方に引張することによって、接着力テストを実施する。テストは、引張長さあたりに所要する力を測定する方式でフィルムと粘着剤との間の接着力を測定する。各実施例および比較例によるフィルムに対してそれぞれ計4回ずつテストし、その平均値をフィルムの剥離長さ(引張長さ)に応じて下記表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
前記表1の結果から、bis−APAFを0.5モル%〜2.0モル%含む実施例1〜3によるフィルムは、bis−APAFを含まない比較例1のフィルムに比べて、50mm、70mm、および90mmの長さだけ剥離する全ての場合に、剥離に必要な力がはるかに多く消耗することが分かる。つまり、フィルムがbis−APAFを含まない場合に比べて、これを含む場合、2つのフィルムの間の接着力が増加したことを意味する。
【0137】
また、比較例1によるフィルムの場合、50mmだけ剥離する場合に比べて、70mm、90mmに剥離長さが増加する場合、接着力が急激に減少することが分かる。これは、フィルムと粘着剤との間の接着力が弱く、フィルムの端をつかんで剥離しても、一定期間持続的に力が加えられると、粘着剤2とフィルム1との間の界面での接着が破壊されてしまうことを意味する。これを概略的に示したのが
図2である。
【0138】
反面、表1から明らかなように、50mm、70mm、および90mmの長さだけ剥離する場合、実施例1〜実施例3によるフィルムの接着力はある程度均一に維持され、特に、bis−APAFを1.0モル%および2.0モル%含む実施例2と実施例3によるフィルムは、フィルムの引張長さが増加しても接着力がほぼ同等水準に維持されることが分かる。これは、2枚のフィルムを粘着剤を介して接着させる時、粘着剤とフィルムとが全体にわたって均一に強い結合を維持することを意味し、したがって、剥離時、フィルム1と粘着剤2との間の界面での接着が破壊されず、粘着剤の内部亀裂によってフィルムが剥離されることが考えられる。これを概略的に示したのが
図3である。
【0139】
比較例1によるフィルム4対の剥離長さに応じた接着力の変化をグラフで示したのが
図4である。
【0140】
図4から、bis−APAFを含まない場合、フィルムを20mm以上剥離する場合、接着力が急激に減少することが分かる。つまり、20mm以上剥離する場合、フィルムと粘着剤との間の界面が剥がれやすいことが分かる。
【0141】
図5は、bis−APAFを0.5モル%含む実施例1によるフィルム4対の剥離長さに応じた接着力の変化を示すグラフである。
【0142】
Bis−APAFを0.5モル%含む場合、実施例2や実施例3に比べて接着力はやや減少するが、最小40mmまで剥離する間に接着力がある程度均一に維持され、接着力の絶対値も比較例1に比べて高いことが分かる。
【0143】
図6は、bis−APAFを1.0モル%含む実施例2によるフィルム4対の剥離長さに応じた接着力の変化を示すグラフである。
【0144】
Bis−APAFを1.0モル%含む場合、最も高い接着力および最も均一な接着力を示すことが分かる。100mmまで延長して剥離する場合にも、接着力がほぼ同一に維持され、4対のフィルムともの接着力の絶対値もほぼ同一である。つまり、bis−APAFを全体ジアミン含有量対比1.0モル%含む場合、接着力は最も優れていることが分かる。
【0145】
図7は、bis−APAFを2.0モル%含む実施例3によるフィルム4対の剥離長さに応じた接着力の変化を示すグラフである。
【0146】
Bis−APAFを2.0モル%含む場合、実施例2に比べて接着力はやや減少するが、実施例1や比較例に比べて顕著に高い接着力を維持し、また、約70mmまで剥離する間に接着力が均一に維持されることが分かる。さらに、4対のフィルムの接着力もある程度均一に高いことが分かる。
【0147】
評価2:フィルムの光学的特性および機械的特性評価
ジアミン成分として、bis−APAFを0.5モル%〜7.0モル%含む実施例1〜実施例5によるフィルムと、bis−APAFを含まない比較例1のフィルムに対する光学的特性および機械的特性を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0148】
下記表2において、それぞれの測定値は次のような方法で測定する:
【0149】
[1]厚さの測定
Micrometer(Mitutoyo社)を用いて測定する。
【0150】
[2]モジュラス
Instron3365の装備で、常温で、幅10mm、長さ50mmのフィルム試験片を0.5mm/mm/minの速度で引張して、サンプルあたり5回、ASTM D882方法で測定後、平均値を記載する。
【0151】
[3]黄色度(YI)
UV分光計(Spectrophotometer、コニカミノルタ社、cm−3600d)を用いて、ASTM E313規格で測定する。
【0152】
[4]ヘイズ
ASTM E313方法で測定する。
【0153】
[5]鉛筆硬度
鉛筆硬度測定器と三菱鉛筆を用いて、ASTM D3363規格で鉛筆スクラッチ硬度を測定する。具体的には、厚さ2mmのガラス板上にフィルムを固定した後、垂直荷重1kgに鉛筆速度を60mm/minとして、10mmずつ計5回測定後、キズのない最も高い硬度を確認する。
【0154】
【表2】
【0155】
前記表2から明らかなように、bis−APAFを0.5モル%〜7.0モル%含む実施例1〜実施例5によるフィルムは、高い機械的強度(6.0以上の弾性率)および高い光学特性(3.5以下のYI)を有する。これは、bis−APAFを含まない比較例1のフィルムと比較する時、bis−APAFを少量含むフィルムの光学的特性および機械的強度において大きな低下がないことを表す。
【0156】
つまり、一実施形態により、bis−APAFを10モル%以下含むポリ(イミド−アミド)コポリマーは、光学的特性および機械的特性の減少なしに、粘着剤との接着力を向上させてフレキシブル素子などの製造に有用に使用できることが分かる。
【0157】
評価3:フィルムの吸湿性評価
Bis−APAFを含まない場合と比較して、bis−APAFを1モル%含むフィルムの吸湿性の変化を観察した。
【0158】
つまり、比較例1によるフィルムと実施例2によるフィルムをそれぞれ、60℃、相対湿度93%の条件で24時間放置した後、再び各フィルムを150℃で30分間処理して重量変化(TGA)を測定した。その結果、比較例1と実施例2によるフィルムとも、TGA変化量は約2.3%と同一であった。つまり、bis−APAFを含むことによる吸湿率の変化はないことが分かる。
【0159】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲と発明の詳細な説明および図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。